説明

コンクリート用添加剤

【課題】単位体積あたりのペースト量の少ないコンクリート組成物に対して、作業者の感覚に優れるコンクリー組成物が得られるコンクリート添加剤が提供される。
【解決手段】特定のオキシアルキレン基を有する単量体と、特定のポリカルボン酸系で単量体とを重合して得られる重量平均分子量が15000〜30000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0〜1.6である重合体からなるコンクリート用添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート用添加剤、及びそれを含有するコンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリカルボン酸系重合体はコンクリート用減水剤として用いられてきており、幅広い配合領域のコンクリートに使用可能である。
【0003】
特許文献1には、水/セメント比が大きい高流動性のコンクリート組成物のブリーティングを改善するための特定のセメント分散剤を含有するコンクリート組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、間隙通過性が優れるため作業性が良好で尚かつ、流動性及び強度発現性が高いセメント分散剤として、特定のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と特定のカルボン酸系単量体を反応して得られる重量平均分子量5000以上10000未満で、重量平均分子量を数平均分子量で割った値が1.0以上1.5以下のセメント分散剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの重合体は、基本的には高強度(例えば、水/セメント比(W/C)が0.40以下)領域での流動性付与と粘性低減を重要視して設計されており、例えば水/セメント比が大きくペースト量の少ない貧配合コンクリートの打ち込み時の作業性は必ずしも良いとはいえなかった。
【特許文献1】特開平11−79814号公報
【特許文献2】特開2005−281022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単位体積あたりのペースト量の少ないコンクリート組成物に関して、同じスランプ値でもスランプフローが大きくなり、作業者の感覚として打ち込みや混練時のさらさら感やフカフカ感が優れたコンクリート組成物が得られるコンクリート用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式(1)で表される単量体1と、一般式(2)で表される単量体2とを重合して得られる共重合体からなるコンクリート用添加剤であって、
該共重合体の重量平均分子量が15000〜30000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0〜1.6であるコンクリート用添加剤に関する。
【0008】
【化3】

【0009】
〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は−(CH2)q(CO)pO(AO)r−R4、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0〜2の数、pとqは同時に0ではなく、rはAOの平均付加モル数であり、3〜150の数、R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
【0010】
【化4】

【0011】
〔式中、R11〜R13は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
【0012】
また、本発明は前記コンクリート用添加剤を含有するコンクリート組成物であって、コンクリート組成物1m3当たりの水の重量が170〜185kg/m3であり、ペースト体積(水と水硬性粉体の体積の合計)が250〜320L/m3であるコンクリート組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、単位体積あたりのペースト量の少ないコンクリート組成物に関して、同じスランプ値でもスランプフローが大きくなり、作業者の感覚として打ち込みや混練時のさらさら感やフカフカ感が優れるコンクリート組成物及び該組成物を得るためのコンクリート用添加剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者は、アルキレンオキサイドを有するポリカルボン酸系分散剤をセメントと水を含むコンクリート組成物に添加した際に、分散剤が吸着したセメント表面のアルキレンオキサイド鎖の吸着密度(本/m2)を多くする事によりペースト量の少ない貧配合コンクリートのフレッシュ状態の改善効果に優れる事を見出した。ここで、フレッシュ状態の改善とは、打ち込みや混練時に作業者が扱い易い感じるさらさら感やフカフカ感のあるコンクリートが得られることを意味する。即ち、セメント表面に均一にアルキレンオキサイド鎖を密度高く分布させる事により、セメント粒子同士の凝集を妨げ、良好な分散状態のセメントペーストが得られると推定される。このようなペーストはコンクリート中の骨材表面を均一に被覆する事が出来るため、少ないペースト量でも状態の良好なコンクリート状態を創り出す事ができると考えられる。そこで、セメント表面のアルキレンオキサイド鎖吸着密度を高くする為には、(1)セメント粒子表面に分散剤を多く吸着させる事、(2)分散剤分子中のアルキレンオキサイド鎖を短くする事が重要と考えられる。
【0015】
土木・建築分野では、コンクリートはスランプ(流動性)で管理され、流動性には規格値がある。この流動性は分散剤の添加量で調整される。分散性能(流動性付与効果、減水効果)で最適化されたポリカルボン酸系分散剤は、分散性能に優れる為に、少ない添加量(及びセメントへの吸着量)で所定の流動性が得られる。即ち、所定の流動性を維持しつつ添加量を多くしてセメント表面のアルキレンオキサイド鎖の吸着密度を高くすることができない。本発明のコンクリート用添加剤では、分散性をある程度低くする事により、分散剤の添加量を多くすることができ、セメント表面のアルキレンオキサイド鎖の吸着密度を高くすることが可能になり、そして打ち込みや混練時に作業者が扱い易い感じるさらさら感やフカフカ感のあるコンクリートを得ることができる。
【0016】
[単量体1]
単量体1において、一般式(1)中のR1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基である。R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r−R4であり、水素原子が好ましい。pが0の場合はAOは(CH2)qとエーテル結合、pが1の場合はエステル結合をする。qは0〜2であり、好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、オキシエチレン基(以下、EO基ともいう)を含むことがより好ましく、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、特に全AOがEO基であることが好ましい。rはAOの平均付加モル数であり、3〜150の数であり、好ましくは4〜50、更に好ましくは5〜30、より好ましくは5〜25、更に好ましくは5〜15である。また、平均r個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。例えばAOは、EO基以外にもオキシプロピレン基等を含むこともできる。単量体1は、p=1でq=0の化合物が好ましい。また、p=0のとき、q=1が好ましい。
【0017】
4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であり、更に1〜12、更に1〜4、更に1、2のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0018】
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物付加物が好ましく用いられる。
【0019】
より好ましくはアルコキシ、ポリエチレングリコール、特にはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。具体的には、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω−メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。
【0020】
[単量体2]
単量体2において、一般式(2)中のR11〜R13は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよい。その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。R11は水素原子が好ましく、R12はメチル基が好ましい。R13は水素原子又は(CH2)sCOOM2が好ましい。
【0021】
1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基である。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属が好ましい。
【0022】
具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である(以下同様)。
【0023】
[共重合体]
共重合体は、例えば反応容器に水を仕込み昇温し、その中で単量体1と単量体2とを連鎖移動剤等の存在下、モル比及び重量比を一定として反応させ、熟成することにより製造することができる。必要により熟成後中和する。
【0024】
共重合体の製造に用いる単量体1と単量体2の重量比(単量体1/単量体2)は95/5〜2/98が好ましく、80/20〜5/95がより好ましく、60/40〜10/90が更に好ましく、50/50〜20/80がより好ましい。
【0025】
共重合体の製造においては、上記単量体1及び単量体2の他に、1種以上の共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。共重合可能な他の単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スルホエチルメタクリレートこれら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩。(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。更に、特許第3336456号公報に記載の如くポリアルキレンポリアミンと二塩基酸または二塩基酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルと、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはアクリル酸もしくはメタクリル酸と炭素原子数1ないし4の低級アルコールとのエステルを縮合させて得られたポリアマイドポリアミンのアミノ残基に対して炭素原子数2ないし4のアルキレンオキサイドを付加して成るポリアマイドポリアミン系単量体、特開2004−2174号公報に記載の如くポリアルキレンポリアミンと二塩基酸及び/又は二塩基酸と炭素数1〜4のアルコールとのエステル、並びに(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルコールとのエステルを反応させて得られる不飽和結合を有するポリアミドポリアミンのアミノ残基及びイミノ基に対して炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加して成るポリアミドポリアミン系単量体、特開2003−335563号公報に記載の如くアミンアルキレンオキシド付加物単量体、特開2004−342050号公報に記載の如くポリアルキレンイミンアルキレンオキシド付加物単量体、特開2004−67934号公報に記載の如くポリ(ポリオキシアルキレン)系不飽和単量体等が挙げられる。単量体1及び2の合計の割合は、全単量体中30〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましく、75〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がより好ましく、実質100%がより好ましい。
【0026】
共重合体の分散性能の観点から重量平均分子量(Mw)は15000以上であり、セメント等の水硬性粉体上への吸着数の観点からMwは30000以下である。従って、分散性能と混練時の扱い易い感覚の観点から、Mwは15000〜30000であり、好ましくは18000〜25000である。また、共重合体が密に水硬性粉体表面に吸着できるためには、分子量分布が狭いことが好ましく、Mwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は1.0〜1.6であり、混練時の扱い易い感覚の観点から、1.0〜1.4が好ましい。
【0027】
共重合体のMw及びMnは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定する。Mw及びMnは該重合体のピークに基づいて算出する。
【0028】
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0029】
共重合体のMw及びMw/Mnは、例えば、重合時の用いる連鎖移動剤の使用量で調整することができる。連鎖移動剤を多くするほど重量平均分子量Mwが小さくなり、Mw/Mnも小さくなる傾向がある。
【0030】
連鎖移動剤は、ラジカル重合における連鎖移動反応(成長しつつある重合体ラジカルが他の分子と反応してラジカル活性点の移動が起こる反応)をもたらす機能を有し、連鎖単体の移動を目的として添加される物質であり、好適分子量の調整及び水硬性組成物用分散剤の性能設計の観点から、重合の際に使用することが好ましい。
【0031】
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0032】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
また、Mw/Mnを小さくする観点から、単量体1と単量体2とを共重合性高い組み合わせを採用することが好ましい。例えば、単量体1としてメトキシポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル化物と、単量体2として、メタクリル酸との組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明の添加剤は、水硬性粉体100重量部に対し、共重合体の固形分濃度で0.05〜2重量部、更に0.1〜1.5重量部、更に0.2〜1重量部、更に0.35〜0.8の用いることが、分散性と作業性を両立する点で好ましい。
【0036】
本発明の添加剤の対象となる水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。
【0037】
本発明の添加剤は、特に水/セメント比の大きなペースト量の少ない貧配合コンクリートに対して効果が顕著であり、このようなコンクリート用に適用することが好ましい。コンクリート組成物として以下の要件を満たすものが好ましい。
【0038】
コンクリート組成物1m3当たりの水の重量は好ましくは170〜185kg/m3であり、より好ましくは175〜185kg/m3である。1m3当たりのペースト体積(水と水硬性粉体の体積)は好ましくは250〜320L/m3であり、より好ましくは255〜315L/m3、更に好ましくは260〜310L/m3である。
【0039】
従って、コンクリート組成物としては1m3当たりの水の重量は170〜185kg/m3であって、ペースト体積(水と水硬性粉体の体積の合計)が250〜320L/m3であることが好ましい。
【0040】
また、コンクリート組成物1m3当たりの水硬性粉体の重量は190〜420kg/m3であることが好ましく、より好ましくは200〜410kg/m3、特に好ましくは210〜400kg/m3である。水/水硬性粉体比(重量比)は0.40〜0.70、更に0.42〜0.65、特に0.45〜0.65であることが好ましい。
【0041】
コンクリート組成物の骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。特に砕砂は形状として角が多く比表面積も大きいためペースト量の少ないコンクリートで混練の作業が困難になる。本発明の添加剤は、作業性向上効果を顕著に発揮できる点で、骨材に砕砂を含有するコンクリート組成物に対して使用することがより好ましい。細骨材率〔s/a=細骨材容積/(細骨材容積+粗骨材容積)×100(%)〕は好ましくは40〜60であり、より好ましくは45〜55である。
【0042】
また、本発明のコンクリート組成物の製造にあたっては、本発明の添加剤の他に、公知の添加剤(材)を使用することができる。一例を挙げれば、AE剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、保水剤、増粘剤、防水剤、消泡剤、収縮低減剤、水溶性高分子、界面活性剤各種等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
製造例1
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水363gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数9)220g(有効分99.9重量%、水分0.1重量%)とメタクリル酸56.9gと3−メルカプトプロピオン酸2.3gを混合したものと、過硫酸アンモニウム2.5gを水45gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。80℃で1時間熟成後、過硫酸アンモニウム0.75gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後80℃で1.5時間熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pH6まで中和し、重量平均分子量46000の重合体A−1を得た。(反応率99.6%)
【0044】
製造例2
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に仕込む水を366gとし、3−メルカプトプロピオン酸を4.1gとした以外は、製造例1と同様に重合体を製造した。そして、重量平均分子量33000の重合体A−2を得た。(反応率98.9%)
【0045】
製造例3
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に仕込む水を375gとし、3−メルカプトプロピオン酸を5.8gとし、過硫酸アンモニウム5.0gを水45gに溶解したものを用いた以外は、製造例1と同様に重合体を製造した。そして、重量平均分子量25000の重合体A−3を得た。(反応率99.5%)
【0046】
製造例4
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に仕込む水を386gとし、3−メルカプトプロピオン酸を9.4gとし、過硫酸アンモニウム7.5gを水45gに溶解したものを用いた以外は、製造例1と同様に重合体を製造した。そして、重量平均分子量19000の重合体A−4を得た。(反応率100%)
【0047】
製造例5
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水215gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)340g(有効分64.5重量%、水分35.5重量%)とメタクリル酸40.5gと3−メルカプトプロピオン酸1.4gを混合したものと、過硫酸アンモニウム1.5gを水45gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。80℃で1時間熟成後、過硫酸アンモニウム0.8gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後80℃で1.5時間熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、PH6まで中和し、重量平均分子量57000の重合体B−1を得た。(反応率99.7%)
【0048】
製造例6
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に仕込む水を216gとし、3−メルカプトプロピオン酸を2.5gとした以外は製造例5と同様に重合体を製造した。そして、重量平均分子量38000の重合体B−2を得た。(反応率99.2%)
【0049】
製造例7
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に仕込む水を221gとし、3−メルカプトプロピオン酸を3.6gとし、過硫酸アンモニウム3.1gを水45gに溶解したものを用い、80℃で1時間熟成後、過硫酸アンモニウム1.5gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下した以外は、製造例5と同様に重合体を製造した。そして、重量平均分子量29000の重合体B−3を得た。(反応率99.6%)
【0050】
製造例8
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に仕込む水を228gとし、3−メルカプトプロピオン酸を5.7gとし、過硫酸アンモニウム4.6gを水45gに溶解したものを用い、80℃で1時間熟成後、過硫酸アンモニウム2.3gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下した以外は、製造例5と同様に重合体を製造した。そして、重量平均分子量23000の重合体B−4を得た。(反応率99.6%)
【0051】
<実施例1〜4、比較例1〜4>
さらさら感やフカフカ感のコンクリートのフレッシュ状態を数値化する為に、コンクリートのスランプ値一定時のスランプフロー値を用いた。即ち、状態が良い場合は、セメントのペーストと骨材との混合性が良好であるため、ペースト層が骨材全体を均一に包む為にスランプが同じ場合はスランプフロー値が大きくなる傾向がある。一方、状態が悪い場合は粗骨材がブロッキングする為、スランプフロー値が小さくなる傾向がある。
【0052】
スランプフロー値は、スランプフロー値の最大値と、該最大値を与える線分の1/2の長さで直交する方向で測定したスランプフロー値との平均値を採用した。コンクリートのスランプフロー試験は、JIS A 1150(粗骨材(G)の最大寸法20mm、コンクリート温度20〜22℃、試料の詰め方:3層に分けて詰め、各層25回突き棒で一様に突いた)に従った。
【0053】
状態判断は、スランプフロー値が、310mm未満:×、310〜330mm未満:△、330〜350mm未満:○、350mm以上:◎、とした。
【0054】
(1)コンクリート配合
コンクリート配合は表1に示す通り。
【0055】
【表1】

【0056】
表1中の使用材料は以下のものである。
W:水道水
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株))、密度=3.16g/cm3
S1:瀬戸内産海砂、表乾密度=2.54g/cm3
S2:茨木産砕砂、表乾密度=2.64g/cm3
G:茨木産砕石、表乾密度=2.64g/cm3
【0057】
(2)コンクリート組成物の調製
IHI社製強制二軸ミキサーDAM60を用いて30リットルのコンクリート組成物を調整した。調整は、室温(約20℃)で、パドル回転速度44回転/分で混練した。ミキサーに表1のC、S1、S2及びGを投入し、10秒間空練りを行い、予め重合体とWとを混合した混合溶液を投入した。その後90秒間混練を行い、コンクリート組成物を得た。その際、スランプ値は20cmとなるように重合体の添加量を調整した。
結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
重合体A−1〜A−4を比較すると、重量平均分子量の小さい方がスランプフロー値が大きくコンクリートの状態が良い傾向にあり、重量平均分子量が15000〜30000の範囲でコンクリート状態が良好である。重合体B−1〜B−4でも同様な傾向がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される単量体1と、一般式(2)で表される単量体2とを重合して得られる共重合体からなるコンクリート用添加剤であって、
該共重合体の重量平均分子量が15000〜30000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0〜1.6であるコンクリート用添加剤。
【化1】


〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は−(CH2)q(CO)pO(AO)r−R4、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0〜2の数、pとqは同時に0ではなく、rはAOの平均付加モル数であり、3〜150の数、R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
【化2】


〔式中、R11〜R13は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
【請求項2】
共重合体の重合に用いる単量体中、単量体1と単量体2の合計が90モル%以上である請求項1記載のコンクリート用添加剤。
【請求項3】
単量体1がメタクリル酸であり、単量体2が(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステルである請求項1又は2記載のコンクリート用添加剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載のコンクリート用添加剤と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有するコンクリート組成物であって、
コンクリート組成物1m3当たりの水の重量が170〜185kg/m3であり、ペースト体積(水と水硬性粉体の体積の合計)が250〜320L/m3であるコンクリート組成物。
【請求項5】
コンクリート組成物1m3当たりの水硬性粉体の重量が190〜420kg/m3であり、水/水硬性粉体比(重量比)が0.45〜0.70である請求項5記載のコンクリート組成物。
【請求項6】
骨材が砕砂を含有する請求項4又は5記載のコンクリート組成物。

【公開番号】特開2008−127221(P2008−127221A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311146(P2006−311146)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】