説明

コンクリート組成物とその製造方法

【課題】2種類の水溶性低分子化合物を組合わせて成る増粘性混和剤が配合されたコンクリート組成物の流動性、材料分離抵抗性、耐水性に優れた特性をそのまま維持するとともに、早強性にも優れたコンクリート組成物を提供する。
【解決手段】セメントを含む結合材と水と骨材とに、増粘性混和剤として、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性分子化合物化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性分子化合物とを組み合わせた添加剤を添加して成るコンクリート組成物に、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材を結合材に対して10〜20重量%の割合で配合して上記コンクリート組成物に急硬性を付与するとともに、凝結時間調整剤を、上記急硬材に対して、0.8〜1.6重量%の割合で配合して、そのフレッシュ性を保持する時間を調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直打ちコンクリートライニング材などに用いられるコンクリート組成物とその製造方法に関するもので、特に、水中不分離性、高流動性に加えて早強性にも優れたコンクリート組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド工法の直打ちコンクリートライニング材などに使用されるコンクリート組成物には、流動性、材料分離抵抗性、及び、早強性に優れるとともに、フレッシュコンクリート経時保持性(以下、フレッシュ保持性という)に優れていることが要求されている。この早強性とフレッシュ保持性とは、従来、両立が困難な特性であって、上記高流動コンクリートでは流動性、材料分離抵抗性に優れており、また、減水剤を適宜選択するなどして、早強性を発揮させることも可能であるが、フレッシュ保持性については問題があった。また、上記水中不分離性コンクリートは、流動性、材料分離抵抗性、フレッシュ保持性には優れているが、早強性に問題があった。
【0003】
そこで、このような問題点を解決するため、高流動コンクリートと上記水中不分離性コンクリートの利点を併せ持つ高流動耐水コンクリート組成物が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このコンクリート組成物は、具体的には、セメント、水、骨材にコンクリート用化学混和剤を添加するとともに、第1の水溶性低分子化合物(A)と第2の水溶性低分子化合物(B)とを含有する添加剤であり、上記化合物(A)と化合物(B)とが、両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)とアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組み合わせ、または、カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)とアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)との組み合わせ、カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)と臭素化合物から選ばれる化合物(B)との組み合わせ、から選択される添加剤のうちのいずれかの添加剤を増粘性混和剤として配合したもので、これにより、早強性、流動性、材料分離抵抗性に優れるとともに、耐水性にも優れたコンクリート組成物を得ることができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
一方、コンクリート二次製品工場の早期脱型を必要とするコンクリートや、吹きつけコンクリートとして急硬性コンクリートが使用されている。この急硬性コンクリートは、セメントの一部を、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、珪酸ナトリウム,アルミン酸ナトリウムなどの珪酸塩もしくはアルミン酸塩、消石灰,水酸化カリウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、などのようなセメントの反応を促進させる無機塩、または、アルミナセメントなどのセメント系鉱物 (いわゆる、急結材、急硬材)に置き換えることにより、コンクリートの強度を早期に発現させる方法が提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【特許文献1】特開2005−281088号公報
【特許文献2】特開2005−281089号公報
【特許文献3】特開平8−239282号公報
【特許文献4】特開平8−333145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シールド工法の直打ちコンクリート工法においては、通常、シールド掘進機の後方に型枠を設けて打設するが、掘削する地盤が弱い場合などには、シールド掘進機に近い側に型枠を設けるとともに、打設したコンクリートを早期に脱型する必要があるため、打設するコンクリートに対して急硬性が要求されている。
しかしながら、上記の増粘性混和剤を配合した高流動耐水コンクリート組成物は、流動性、材料分離抵抗性、耐水性はもとより、早強性においても、従来の水中不分離性コンクリートより優れているものの、急硬性に関しては不十分であった。
一方、従来の急硬性コンクリートは、急硬性の条件は満たすものの、水中不分離性を有していないため、現場である湧水のある部分への打込みに対応できないだけでなく、流動性も有していないので、一般の直打ちコンクリートへの適用は困難であった。
そこで、上記の高流動耐水コンクリート組成物に上記急硬材を配合すれば、上記高流動耐水コンクリート組成物に急硬性を付与することができると考えられる。
ところで、上記高流動耐水コンクリート組成物の優れた特性は、最初にセメント、水、骨材に上記第2の水溶性低分子化合物を添加して混練した後、この混練物に上記第1の水溶性低分子化合物とを添加して再度混練し、この再混練時に、上記第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物との分子会合が起きることにより得られるが、上記コンクリート組成物の特性を保持しながら、急硬性を付与することのできる急硬材については、未だ特定されていないのが現状である。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、2種類の水溶性低分子化合物を組合わせて成る増粘性混和剤が配合されたコンクリート組成物の流動性、材料分離抵抗性、耐水性に優れた特性をそのまま維持するとともに、早強性にも優れたコンクリート組成物とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、急硬材として、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材を用いるとともに、上記急硬材を結合材に対して10〜20重量%配合することにより、優れた早強性、流動性、耐水性を保持しながら、急硬性をも備えたコンクリート組成物を得ることができることを見いだし、本発明に到ったものである。
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、セメントを含む結合材と水と骨材とに、増粘性混和剤として、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組合わせた添加剤を添加して成るコンクリート組成物であって、水結合材比を30〜70%とするとともに、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材を、結合材に対して10〜20重量%の割合で配合したことを特徴とするものである。ここで、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材とはカルシウムアルミネートと石膏の混合物を指す。カルシウムアルミネートは、結晶質、非晶質のいずれも使用可能であるが、反応性の面からは非晶質のものを用いることが望ましい。一方、石膏は、無水、半水、二水のいずれの石膏も使用可能だが、強度発現性の面からは無水石膏を用いることが望ましい。
また、結合材とは、セメント、高炉スラグ微粉末、シリカヒューム、膨張材、急硬材等の自己水硬性のある材料を指す。また、結合材に対する急硬材の割合は、いわゆる「内割り」で、結合材と急硬材との和に対する急硬材の割合である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンクリート組成物において、凝結時間調整剤を、上記急硬材に対して、0.8〜1.6重量%の割合で配合したものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のコンクリート組成物において、上記第1の水溶性低分子化合物と上記第2の水溶性低分子化合物とを、単位水量に対して、それぞれ0.1〜5.0重量%の割合で配合したものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンクリート組成物において、カルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤を、結合材に対して、0.1〜5.0重量%の割合で配合したものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法であって、セメント、水、骨材にカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤と上記第2の水溶性低分子化合物とを添加して混練した後、この混練物に上記第1の水溶性低分子化合物と上記急硬材とを添加して再度混練することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セメントを含む結合材と水と骨材とに、増粘性混和剤として、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組合わせた添加剤を添加して成るコンクリート組成物において、水結合材比を30〜70%とするとともに、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材を、結合材に対して10〜20重量%の割合で配合したので、優れた流動性、材料分離抵抗性、耐水性を示すとともに、早強性にも優れたコンクリート組成物を得ることができる。
更に、上記コンクリート組成物に凝結時間調整剤を配合し、硬化反応時間を調整するようにすれば、フレッシュ保持時間を調整することができ、作業性が向上する。このとき、上記凝結時間調整剤としては、上記急硬材に対して、0.8〜1.6重量%の割合で配合することが好ましい。
【0010】
また、上記第1の水溶性低分子化合物と上記第2の水溶性低分子化合物とを、単位水量に対して、それぞれ0.1〜5.0重量%の割合で配合することにより、流動性、材料分離抵抗性、及び、フレッシュ保持性を更に向上させることができる。
上記コンクリート組成物に添加する減水剤としては、上記増粘性混和剤との相溶性に優れたカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤を用い、これを結合材に対して、0.1〜5.0重量%の割合で配合することが好ましい。これにより、フレッシュ保持性、高流動性を有しつつ、早強性を確実に発現させることができる。
また、請求項1に記載のコンクリート組成物を製造する際に、セメント、水、骨材にカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤と上記第2の水溶性低分子化合物とを添加して混練した後、この混練物に上記第1の水溶性低分子化合物と上記急硬材とを添加して再度混練するようにしたので、上記コンクリート組成物を効率よくかつ安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の形態について、コンクリート組成物を例にとって説明する。
本発明の最良の形態に係るコンクリート組成物は、普通ポルトランドセメント、水、粗骨材、細骨材に、コンクリート用化学混和剤(減水剤)を配合するとともに、増粘性混和剤として、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物と、アニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを含有する添加剤を用いている。また、急硬材としてはカルシウムサルフォアルミネート系急硬材を用いている。
上記コンクリート組成物は、はじめに、セメント、水、骨材に、コンクリート用化学混和剤と、上記第2の水溶性低分子化合物とを練り混ぜて混練物を作製した後、この混練物に上記第1の水溶性低分子化合物と上記急硬材と凝結調整剤とを添加して再度混練し、最後に粗骨材を加えて混練し、コンクリート組成物を作製する。
このとき、水結合材比比(W/B)としては、30〜50%とすることが好ましく、40〜45%とすることが特に好ましい。水結合材比が30%未満であると粘性が高くなり流動性が低下するだけでなく、結合材の割合が多くなるため水和発熱が大きくなり、温度ひび割れが発生し易くなる。また、50%を超えると、同じ粘性を得るためには上記第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とを余分に入れる必要があるが、それでも早強性は低下してしまうので、30〜50%とすることが好ましい。
また、本発明に用いられる第1の水溶性低分子化合物としては、4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、特に、アルキルアンモニウム塩を主成分とする添加剤が好ましい。また、第2の水溶性低分子化合物としては、芳香環を有するスルフォン酸塩が好ましく、特に、アルキルアリルスルホン酸塩を主成分とする添加剤が好ましい。
【0012】
一方、上記急硬材として、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材を用い、これを、結合材に対して10〜20重量%の割合で配合することが好ましい。すなわち、上記急硬材が10重量%未満である場合には、コンクリートにこわばりは見られるものの、1時間以内には硬化しない。上記急硬材の効果はセメントを含む結合材に対して10重量%以上ではっきりと確認でき、配合比を増やしていくと硬化時間は次第に短くなる。一方、硬化時間の減少率は徐々に小さくなり、20重量%を超えるとその変化は更に小さくなる。したがって、上記急硬材の割合としては、10〜20重量%とするのがよい。
また、凝結時間調整剤は、フレッシュ保持時間を長くするために配合されるもので、急硬材の投入後打込みに必要な時間(30〜45分)はフレッシュ性を保持し、打込み終了から約1時間後には自立に必要な強度が得られることが望ましい。そのためには、上記急硬材に対して0.8〜1.6重量%の割合で配合することが好ましい。凝結時間調整剤の添加率が0.8未満である場合には、急硬材の反応が始まってからの性状変化が非常に早く、フローロスが始まって約30分でゼロスランプになるので、作業がしずらいといった問題がある。逆に、1.6重量%を超えると反応が遅く、1時間以上経っても自立に必要な強度が得られなので、急硬材を配合した意味がない。
なお、上記急硬材と凝結時間調整剤とは、事前に80%スラリーとして投入することが好ましく、これにより、練り上げ時において急硬材と凝結時間調整剤とが十分に混練物内に分散されるので、必要な時間はフレッシュ性を保持することができるとともに、打込み終了から約1時間後にコンクリートが自立し、その後急速にその強度を発現させることができる。
【0013】
また、上記第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物との配合の割合については、1:1の場合が最適であり、その配合量についても、総水量に対して、それぞれ0.1〜5.0重量%の割合で配合すればよい。これにより、優れた自己充填性、早強性、水中不分離性を得ることができる。
また、上記コンクリート用化学混和剤としては、リグニン系、ポリカルボン酸系、メラミン系、ナフタリン系、あるいは、アミノスルホン酸系などのポリエーテル系減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などの、通常使用されているコンクリート用化学混和剤の中から適宜選択することができる。中でも、上記混和剤との相溶性に優れたカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤を、結合材であるセメントと急硬材との和に対して、好ましくは0.1〜5.0重量%の割合、特に好ましくは0.5〜1.5重量%の割合で配合することにより、フレッシュ保持性、高流動性を有しつつ、確実に早強性を発現させることができる。
【0014】
このように、本実施の形態によれば、セメントを含む結合材と水と骨材とに、増粘性混和剤として、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性分子化合物化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性分子化合物とを組み合わせた添加剤を添加して成るコンクリート組成物に、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材を結合材に対して10〜20重量%の割合で配合して上記コンクリート組成物に急硬性を付与するとともに、凝結時間調整剤を、上記急硬材に対して、0.8〜1.6重量%の割合で配合して、そのフレッシュ性を保持する時間を調整するようにしたので、優れた流動性、水中不分離性に加えて早強性をも備えたコンクリート組成物を得ることができる。
【0015】
なお、上記実施の形態では、急硬性を要求される直打ちコンクリートライニング材に使用されるコンクリート組成物の製造方法について説明したが、本願発明は、一般の急硬性を必要とするコンクリート組成物にも適用可能であるだけでなく、モルタルやセメントペーストなどにも適用するようにすれば、流動性や耐水性に優れた超速硬性モルタルや超速硬性グラウトを得ることができる。
なお、本発明をモルタルやセメントペーストなどにも適用する場合には、水結合材比を70%まであげてもよいが、70%を超えるとセメント量が過小となってブリーディングが大きくなり、必要強度が得られないので、70%以下にする必要がある。
【実施例】
【0016】
下記の表1、表2に示すように、単位水量230kg/m3から混和剤分を差し引いた水に普通ポルトランドセメント(住友大坂社製:密度;3.15g/cm3)470kg/m3を加え、最終的な水結合材比が44%になるように調整した後、これに混和剤として、高性能特殊混和剤(花王株式会社製、カルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤、商品名「マイティ4000FA」登録商標)、アルキルアリルスルホン酸塩を主成分とする添加剤(花王株式会社製、商品名「ビスコトップ100FA」登録商標)とを配合し、これに、砂(細骨材)691kg/m3を加えて練り混ぜた後、この混練物にアルキルアンモニウム塩を主成分とする添加剤(花王株式会社製、商品名「ビスコトップ100FB」)、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材(電気化学工業社製、商品名「ビフォーム」登録商標)及び凝結時間調整剤(電気化学工業社製、商品名「D−300」)を添加して再度混練し、最後に砂利(粗骨材)763kg/m3とを加えて混練し、コンクリート組成物を作製する。本例では、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材と凝結時間調整剤の配合量をそれぞれ変化させてコンクリート組成物を作製し、各コンクリート組成物についてフレッシュ性状試験と圧縮強度の測定とを行った。
なお、表1,2のVT−Aは「ビスコトップ100FA」、VT−Bは「ビスコトップ100FB」である。
【表1】

【表2】

(1)可使時間に対する影響を確認するため、練り上げ直後、30分後,45分後,60分後,90分後,120分後のスランプフローを測定した。
(2)圧縮強度試験は、2時間後、3時間後、24時間後、28日後に行った。
図1は急硬材の配合比とスランプまたはスランプフローとの関係を示すグラフ、図2(a),(b)は急硬材の配合比と圧縮強度の関係を示すグラフである。
また、図3(a)は、凝結時間調整剤の配合比とスランプまたはスランプフローとの関係を示すグラフ、図3(b)は凝結時間調整剤の配合比と圧縮強度との関係を示すグラフである。
図1及び図2のグラフから明らかなように、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材の結合材に対する配合割合が10重量%以上になると40分以内に硬化するとともに、十分な圧縮強度を得ることができること、また、その効果は、10重量%以上であれば、急硬材の量を増やしてもあまり変わりないことが確認された。
また、図3(a),(b)のグラフから明らかなように、急硬材に対する凝結時間調整剤の割合が0.8重量%に満たないと45分以内で固まって作業性が悪く、逆に、1.6重量%を超えると固まるまで2時間以上かかるだけでなく、圧縮強度の発現にも時間がかかる。これらの結果から、急硬材はその結合材に対する配合割合が10重量%以上であれば可使時間に影響を及ぼさず、可使時間は凝結時間調整剤に依存することが分かる。施工に必要な可使時間としては40分程度が必要であること、かつ、打設終了の1時間後(練り上がり後90分)に自立する必要があることから、凝結時間調整剤の配合割合としては、0.8〜1.6重量%が適量であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、流動性、水中不分離性にも優れるとともに、早強性にも優れたコンクリート組成物を得ることができるので、地盤が弱い場合などに使用されるシールド工法の直打ちコンクリートライニング材などに好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】急硬材の配合比とスランプまたはスランプフローとの関係を示すグラフである。
【図2】急硬材の配合比と圧縮強度の関係を示すグラフである。
【図3】凝結時間調整剤の配合比とスランプまたはスランプフローとの関係及び圧縮強度との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含む結合材と水と骨材とに、増粘性混和剤として、カチオン性界面活性剤から選ばれる第1の水溶性低分子化合物とアニオン性芳香族化合物から選ばれる第2の水溶性低分子化合物とを組合わせた添加剤を添加して混練したコンクリート組成物において、水結合材比を30〜70%とするとともに、カルシウムサルフォアルミネート系急硬材を、結合材に対して10〜20重量%の割合で配合したことを特徴とするコンクリート組成物。
【請求項2】
凝結時間調整剤を、上記急硬材に対して、0.8〜1.6重量%の割合で配合したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート組成物。
【請求項3】
上記第1の水溶性低分子化合物と第2の水溶性低分子化合物とを、単位水量に対して、それぞれ0.1〜5.0重量%の割合で配合したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート組成物。
【請求項4】
カルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤を、上記結合材に対して、0.1〜5.0重量%の割合で配合したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンクリート組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のコンクリート組成物の製造方法であって、セメント、水、骨材にカルボキシル基含有ポリエーテル系減水剤と上記第2の水溶性低分子化合物とを添加して混練した後、この混練物に上記第1の水溶性低分子化合物と上記急硬材とを添加して再度混練することを特徴とするコンクリート組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−247663(P2008−247663A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90580(P2007−90580)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】