説明

コンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント、およびこの高靱性ポリマーセメントを用いたコンクリート躯体の曲げ補強工法

【課題】本発明はコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント、およびこの高靱性ポリマーセメントを用いたコンクリート躯体の曲げ補強工法に関し、コンクリート躯体の断面補修材としてかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制し、シート、プレート、ロッド、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著であり、増厚材として補強筋の付着割裂破壊が抑制され、変形、曲げ性状が増加する等、きめ細かな曲げ補強を施すのに適する。
【解決手段】コンクリート躯体1の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントPCMは、セメントと珪砂を含む粉体Coを、主成分として水溶性高分子を含む水溶性エマルションEmに調合して所定時間、混練し、之に混和材料として、高炉スラグ微粉末Sgと、二水石膏Gyと、高性能AE減水剤Spとを所定割合混練し、短繊維Fを混入した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント、およびこの高靱性ポリマーセメントを用いたコンクリート躯体の曲げ補強工法に関し、例えば建築物の柱、梁、壁、床、天井、基礎等また、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物のコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材、および増厚材として、ポリマーセメントモルタルに短繊維を混入した高靱性ポリマーセメントを用いることにより、断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制し、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著であり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊が抑制され、また、変形、および曲げ性状が大きく増加し、また、補強機能が安定し、施工を効率良く行うためのものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリ−ト等により形成された構造物を補修・補強を行う方法として、構造物面に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が含浸されてなる、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ガラス繊維等よりなる補強繊維シートを貼り、前記熱硬化性樹脂を硬化せしめて構造物を補修・補強するにあたって、前記補強繊維シートの外表面を気密性シートで被覆したことにより、熱硬化性樹脂の樹脂塗布作業の完了後の臭いの発生を抑制し、補強繊維表面の平滑性を保証することで、構造物が長年の使用により劣化した場合に、補修または補強して寿命を延ばしたり、地震による損傷や、より大きな地震を想定した耐震基準の見直しなどによって、補修・補強を行うようにしたものがあった。そして、この構造物の補修・補強方法は、必要に応じて前記気密性シートを熱硬化性樹脂の硬化後に前記補強繊維シートから剥ぎ取り、その後に、結合材としてセメントと、ポリアクリル酸エステル等のポリマーとを用いるとともに、混和材料として砂を混合したポリマーセメントモルタルを増厚材として用いることにより増厚し、補修・補強を行うものであった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−296615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、コンクリート等により形成された構造物は、長年の使用によるコンクリート性状の劣化、例えば耐圧縮強度の劣化、耐曲げ強度の劣化、耐引張強度の劣化、また、補強繊維シートに対する付着耐力を引き起こす構造物のかぶり部分での斜めひび割れの発生状況、また、構造物の内部の補強筋の付着割裂破壊を引き起こす補強筋への付着性、構造物の変形等はそれぞれ構造物の構築現場毎に異にするのが実情であるのに対し、上記特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法は、このような実情に即応して構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリートの構造物に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すというにはほど遠く、補強機能が不安定なものであった。
【0004】
また、上記特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法は、コンクリート等の構造物により形成された構造物を補強・補修するために、補強繊維シートよりなる補強部材をエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて接着、硬化することを必要不可欠とし、構造物に補強繊維シートを貼り付け後の熱硬化樹脂の硬化時の臭いの発生を抑えることを主眼に発明がなされたものであるので、補強繊維シートに対する気密性シートの貼り付け、又は取外しに多くの手間、および労力を必要とし、施工には作業能率が低いものであった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決するとともに、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制し、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著であり、しかも、増厚材としては、コンクリート躯体内部の補強筋の付着割裂破壊が抑制され、また、変形、および曲げ性状が大きく増加する等、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリートによりなる構造物に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定し、そして、施工性に優れ、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価なコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント、およびこの高靱性ポリマーセメントを用いたコンクリート躯体の曲げ補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされ請求項1に記載の発明は、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等のコンクリート躯体の曲げ補強を行うコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにして、無機主材としてセメントと珪砂を含む粉体を、主成分として水溶性高分子を含む水溶性エマルションに調合して所定時間、混練し、之に混和材料として、高炉スラグ微粉末と、二水石膏と、高性能AE減水剤とを所定割合調合して混練するとともに、短繊維を混入して分散することにより、前記コンクリート躯体の断面修復材、または増厚材として用いることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ前記二水石膏の、前記セメント、および高炉スラグ微粉末との結合剤に対する混合割合が、10重量%程度、混入されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ混和材料として高炉スラグ微粉末を前記水溶性エマルションに対して150重量%以上混入して繊維を分散させたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1−3において、前記短繊維の、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末との結合材に対する繊維体積率が、約0.5〜1.5%であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1−4において、前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1−4において、前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、水溶性のエポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポパール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニール樹脂等の重合体、または、それらのエステル、或いはそれらの共重合体であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1−4において、前記水溶性高分子が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブチレンゴム等の合成ゴム系ラテックス、または、天然ゴム、或いは、アセチルセルロース、ニトロセルロースであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項5において、前記ポリアクリル酸、前記ポリメタクリル酸、前記ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1−8の何れかにおいて、連続繊維により形成されるシート、プレート、または、炭素繊維強化プラスチックのロッド、或いは鉄筋等の何れかの補強部材であり、何れかの該補強部材が、前記コンクリート躯体の外側面に添設され、該補強部材、または/および前記コンクリート躯体には曲げ補強用の前記高靱性ポリマーセメントが塗布されるか、または、吹き付けるか、打設されることにより固着して補強を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項10に記載の発明は、請求項1−9の何れかにおいて、前記セメントが、白色セメント、普通・早強・超早強ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメントから選ばれる何れかであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項11に記載の発明は、請求項1−10の何れかにおいて、前記短繊維が、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリスチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリカーボネート繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリル繊維から選ばれる何れかであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項12に記載の発明は、請求項1−11の何れかにおいて、前記補強部材が鉄筋であるか、また、補強部材を形成する繊維が、炭素繊維、またはガラス繊維であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項13に記載の発明は、請求項1−12の何れかにおいて、前記増厚材が、増し打ち厚さを5mm以上に形成されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項14に記載の発明は、無機主材として、セメントと珪砂を含む粉体を、主成分として水溶性高分子を含む水溶性エマルションに調合して所定時間、混練する工程と、之に混和材料として高炉スラグ微粉末と、二水石膏と、高性能AE減水剤とを所定割合調合して混練するとともに、短繊維を混入して分散する工程と、を有して製造された高靱性ポリマーセメントをコンクリート躯体の断面修復材、または増厚材として用いることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項15に記載の発明は、請求項13において、前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ前記二水石膏の、前記セメント、および高炉スラグ微粉末との結合材に対する混合割合が、10重量%程度、混入されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項16に記載の発明は、請求項14または15において、前記短繊維の、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末との結合剤に対する繊維体積率が、約0.5〜1.5%であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項17に記載の発明は、請求項14−16の何れかにおいて、前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項18に記載の発明は、請求項14−16の何れかにおいて、前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、水溶性のエポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポパール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニール樹脂、の重合体、または、それらのエステル、或いは共重合体であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項19に記載の発明は、請求項14−16の何れかにおいて、前記水溶性高分子が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブチレンゴム等の合成ゴム系ラテックス、または、天然ゴム、或いは、アセチルセルロース、ニトロセルロースであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項20に記載の発明は、請求項17において、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項21に記載の発明は、請求項14−20において、連続する炭素繊維、ガラス繊維等の繊維により形成されるシート、プレート、または、ロッド、或いは、鉄筋等のうちの何れかが補強部材として、前記コンクリート躯体の外側面に添設され、該補強部材、または/および前記コンクリート躯体には曲げ補強用の前記高靱性ポリマーセメントが塗布されるか、または、吹き付けるか、打設されることにより固着して補強を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、請求項1に記載の発明によれば、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等のコンクリート躯体の曲げ補強を行うコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにして、無機主材としてセメントと珪砂を含む粉体を、主成分として水溶性高分子を含む水溶性エマルションに調合して所定時間、混練し、之に混和材料として、高炉スラグ微粉末と、二水石膏と、高性能AE減水剤とを所定割合調合して混練するとともに、短繊維を混入して分散することにより、前記コンクリート躯体の断面修復材、または増厚材として用いるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材の連続する無機繊維、および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、またはロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0028】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ前記二水石膏の、前記セメント、および高炉スラグ微粉末との結合材に対する混合割合が、10重量%程度、混入されるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、低流動性でありながら、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材、および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度が増加され、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されて繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を大幅に向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、コンクリート躯体内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0029】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ混和材料として高炉スラグ微粉末を前記水溶性エマルションに対して150重量%以上混入して繊維を分散させたので、得られる高靱性ポリマーセメントは、低流動性でありながら、混入した短繊維の繊維補強機能が大きくなり、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材への境界面組織の付着強度が増加され、強度、例えば圧縮強度、曲げ強度がを大幅に向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0030】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記短繊維の、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末との結合材に対する繊維体積率が、約0.5〜1.5%であるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、低流動性でありながら、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度等が大きくなり、高弾性、および高靱性が発揮され、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されることなく、繊維境界面の付着強度を大幅に向上することができるとともに、混和材料として混入した高炉スラグのアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材の連続する繊維、および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度が大幅に増加することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、コンクリート躯体内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0031】
また、本発明の請求項5の記載の発明によれば、前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体であるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材の連続する無機繊維、および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、またはロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0032】
また、本発明の請求項6の記載の発明によれば、前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、水溶性のエポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポパール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニール樹脂等の重合体、または、それらのエステル、或いはそれらの共重合体であるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材の連続する無機繊維、および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、またはロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0033】
また、本発明の請求項7に記載の発明によれば、前記水溶性高分子が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブチレンゴム等の合成ゴム系ラテックス、または、天然ゴム、或いは、アセチルセルロース、ニトロセルロースであるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材の連続する無機繊維、および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構築物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、またはロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0034】
また、請求項8に記載の発明によれば、前記ポリアクリル酸、前記ポリメタクリル酸、前記ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体であるので、低流動性でありながら、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度等が大きくなり、高弾性、および高靱性が発揮され、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されることなく、繊維境界面の付着強度を大幅に向上することができるとともに、混和材料として混入した高炉スラグのアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ部粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材、および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度が大幅に増加することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構築物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続する無機繊維により形成されるシート、または、プレート、ロッド等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、コンクリート躯体内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。
【0035】
また、本発明の請求項9に記載の発明によれば、連続繊維により形成されるシート、プレート、または、ロッド、或いは、鉄筋等の何れかが補強部材であり、何れかの該補強部材が、前記コンクリート躯体の外側面に添設され、該補強部材、または/および前記コンクリート躯体には曲げ補強用の前記高靱性ポリマーセメントが塗布されるか、または、吹き付けるか、打設されることにより固着して補強を行うので、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になって高弾性、高靱性、高引張を発揮でき、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状を大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定するともに、補強部材自体耐薬品性に優れる。
【0036】
また、本発明の請求項10に記載の発明によれば、前記セメントが、白色セメント、普通・早強・超早強ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメントから選ばれる何れかであるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、低流動性でありながら、混和材料として混入した高炉スラグ部粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度が増加され、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、圧縮強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されて繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を大幅に向上するのに寄与できる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続する繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。
【0037】
また、本発明の請求項11に記載の発明によれば、前記短繊維が、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリスチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリカーボネート繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリル繊維から選ばれる何れかであるので、短繊維によりポリマーセメントモルタルを低流動性でありながら、高弾性、高靱性のものにすることができ、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度等を大きくすることができる。そして、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材と協同して高靱性ポリマーセメントの繊維境界面組織の付着強度が増加され、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されることなく繊維境界面の付着強度を大幅に向上するのに寄与できる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。しかも、廃棄処分をしても、公害を起こすことはない。
【0038】
また、本発明の請求項12に記載の発明によれば、前記補強部材が鉄筋であるか、また、補強部材を形成する繊維が、炭素繊維、またはガラス繊維であるので、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材によりコンクリート躯体への付着耐力が顕著になって高弾性、高靱性、高引張を発揮でき、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状を大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定するとともに、補強部材自体耐薬品性に優れている。
【0039】
また、本発明の請求項13に記載の発明によれば、前記増厚材が、増し打ち厚さを5mm以上に形成されることを特徴とするので、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材によりコンクリート躯体への付着耐力が顕著になって高弾性、高靱性、高引張を発揮でき、しかも、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状を大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。
【0040】
また、本発明の請求項14に記載の発明によれば、無機主材として、セメントと珪砂を含む粉体を、主成分として水溶性高分子を含む水溶性エマルションに調合して所定時間、混練する工程と、之に混和材料として高炉スラグ微粉末と、二水石膏と、高性能AE減水剤とを所定割合調合して混練するとともに、短繊維を混入して分散する工程と、を有して製造された高靱性ポリマーセメントをコンクリート躯体の断面修復材、または増厚材として用いるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、建築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0041】
また、本発明の請求項15に記載の発明によれば、前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ前記二水石膏の、前記セメント、および高炉スラグ部粉末との結合剤に対する混合割合が、10重量%程度、混入されるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、低流動性でありながら、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度が増加され、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度等を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されて繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を大幅に向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0042】
また、本発明の請求項16に記載の発明によれば、前記短繊維の、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末との結合剤に対する繊維体積率が、約0.5〜1.5%であるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、低流動性でありながら、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度等が大きくなり、高弾性、および高靱性が発揮され、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されることなく、繊維境界面の付着強度を大幅に向上することができるとともに、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度が大幅に増加することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0043】
また、本発明の請求項17に記載の発明によれば、前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体であるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、建築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0044】
また、本発明の請求項18に記載の発明によれば、前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、水溶性のエポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポパール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニール樹脂、の重合体、または、それらのエステル、或いは共重合体であるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、建築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0045】
また、本発明の請求項19に記載の発明によれば、前記水溶性高分子が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブチレンゴム等の合成ゴム系ラテックス、または、天然ゴム、或いは、アセチルセルロース、ニトロセルロースであるので、得られる高靱性ポリマーセメントは、混和材として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度の増加と、によりポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度を大きくし、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度を低下して繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、建築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。そして、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0046】
また、本発明の請求項20によれば、前記ポリアクリル酸、前記ポリメタクリル酸、前記ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体であることを特徴とするので、低流動性でありながら、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度、引張強度等が大きくなり、高弾性、および高靱性が発揮され、また、短繊維を混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されることなく、繊維境界面の付着強度を大幅に向上することができるとともに、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末のアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末と二水石膏との反応で生じる強度発現促進、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材および高靱性ポリマーセメント内に混入される短繊維の繊維境界面組織の付着強度が大幅に増加することができる。このため、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、または、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著になり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。
【0047】
また、本発明の請求項21に記載の発明によれば、連続する炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等のうちの何れかが補強部材として、前記コンクリート躯体の外側面に添設され、該補強部材、または/および前記コンクリート躯体には曲げ補強用の前記高靱性ポリマーセメントが塗布されるか、または、吹き付けるか、打設されることにより固着して補強を行うので、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材として、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制でき、また、連続繊維により形成されるシート、または、プレート、ロッド、或いは鉄筋等の補強部材によりコンクリート躯体への付着耐力が顕著になって高弾性、高靱性、高引張を発揮でき、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊を抑制することができ、また、変形、および曲げ性状を大きく増加することができる。従って、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定するとともに、補強部材自体耐薬品性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面に従って本発明を実施するための最良の形態につき、詳細に説明する。
【0049】
図1は本発明のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントを用いてコンクリート躯体を補強する場合の一実施形態を説明的に示した正面図、図2は同じく側面図、図3は同じく本実施形態のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントを用いてコンクリート躯体を補強する場合の他例を説明的に示した正面図、図4は同じく側面図、図5は同じく同じく本発明のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントを用いてコンクリート躯体を補強する場合の更なる他例を説明的に示した正面図、図6は同じく側面図、図7は本実施形態の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにおいて、水溶性エマルションに対する高炉スラグ微粉末の混入比が100重量%の供試体について荷重と、変位との関係を繊維体積率が、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる毎に変位する様子を示した荷重−変位曲線を示すグラフ、図8は本実施形態の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにおいて、水溶性エマルションに対する高炉スラグ微粉末の混入比が150重量%の供試体について荷重と、変位との関係を繊維体積率が、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる毎に変位する様子を示した荷重−変位曲線を示すグラフ、図9は同じく本実施形態の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにおいて、水溶性エマルションに対する高炉スラグ微粉末の混入比が200重量%の供試体について荷重と、変位との関係を繊維体積率が、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる毎に変位する様子を示した荷重−変位曲線を示すグラフ、図10は同じく載架試験に用いられる供試体としてのコンクリート躯体を示す正面図、図11は同じく図10のQ−Q断面図、図12は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材にて補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な正面図、図13は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートにより補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な下面図、図14は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートにより補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な下面図、図15は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートにより補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な背面図、図16は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより荷重−変位曲線を示したグラフ、図17は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより曲げモーメント−曲率曲線を示したグラフ、図18は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより荷重−変位曲線を示したグラフ、図19は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより曲げモーメント−曲率曲線を示したグラフ、図20は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより荷重−変位曲線を示したグラフ、図21は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより曲げモーメント−曲率曲線を示したグラフ、図22は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工により補強したNo1のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図、図23は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを上向施工により補強したNo4のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図、図24は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートを下向施工により補強したNo2のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図、図25は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートを上向施工により補強したNo5のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図、図26は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてロッドを下向施工により補強したNo3のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図、図27は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてロッドを上向施工により補強したNo6のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図である。
【0050】
本発明のコンクリート躯体1の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントPCMの好適な実施形態は、無機主材としてセメントと珪砂を含む粉体Coを、主成分として水溶性高分子としてのポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体を含む水溶性エマルションEmに調合して所定時間、混練し、之に混和材料として、高炉スラグ微粉末Sgと、二水石膏Gyと、高性能AE減水剤Spとを所定割合調合して混練するとともに、短繊維Fを混入して分散させた構成である。そして、建築物の柱、梁、壁、基礎、床、天井、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体Kの曲げ補強を行うために前記コンクリート躯体Kの断面修復材T1、または増厚材T2として用いられる。
【0051】
前記セメントが、白色セメント、普通・早強・超早強ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメントから選ばれる何れかであり、本実施形態では、白色セメントを用いたが、これは例示であり前記の何れかであってもよい。
【0052】
そして、上記高靱性ポリマーセメントPCMについての組成、調合の割合を例えば表[1]、および表[2]について、二例を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
上記表[1]、および表[2]から、前記粉体Coと、前記水溶性エマルションEmとの混合割合が、3〜5:1.0であり、調合による検証を便宜にするために、粉体Coと、前記水溶性エマルションEmとの混合比を3.5:1.0の一定とした。そして高炉スラグ微粉末Sgを水溶性エマルションEmに対する質量比で表[1]においては0.0〜3.0の割合に混入させているが、好ましくは150重量%以上混入して短繊維Fを分散させるのが良い。また、表[2]に示される一例では高炉スラグ微粉末Sgの水溶性エマルションEmに対する混合比は、1.0、1.5、2.0の3水準とした。そして、表[1]、および表[2]の調合例においては、前記二水石膏Gyの、前記セメント、および高炉スラグ微粉末Sgとの結合材Bに対する混合割合が、10重量%程度、混入される。
【0056】
また、表[2]の調合例においては、前記短繊維Fの、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末Sgとの結合剤Bに対する繊維体積率Vfが、約0.5〜1.5重量%である。
【0057】
前記高炉スラグ微粉末Sgは、本実施形態では、密度が、2.89g/cm、比表面積が6140cm/gのものが用いられる。これは、例示であり、その材料は、本発明範囲を逸脱しない限り制限されない。
【0058】
そして、前記短繊維Fとしては、容易に且つ安価に多量に入手でき、コンクリート躯体1に対する断面補修材T1、または、増厚材T2の付着性と、圧縮性、曲げ性、引張性、作業性、補強性等を良くするために、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリスチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリカーボネート繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリル繊維から選ばれる何れかが使用される。そして、本実施形態では、短繊維Fとして、密度0.97g/cm、寸法が12μ×18mm、引張強度が2580N/mmのポリエチレン繊維を用いることとしたが、これは例示であり、その材料、繊維太さ、長さは本発明範囲を逸脱しない限り制限されない。
【0059】
また、水溶性高分子としての前記ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体である。
【0060】
そして、本実施形態のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントPCMを混練するには、オムニミキサーを使用し、粉体Co、高炉スラグ微粉末Sg、二水石膏Gyを30秒間空練りし、次いで水溶性エマルションEmを投入し、90秒間練り混ぜた後に短繊維Fを混入し、3分間練り混ぜた。
【0061】
図1〜図6において、2はコンクリート躯体1を補強するための補強部材であり、この補強部材2は連続する繊維F1により形成されるシートS、または、前記無機繊維F2により形成されるプレートP、およびロッドR、或いは鉄筋Kのうちの何れかであり、何れかの該補強部材2が、補強を施すべき前記コンクリート躯体1の外側面(図1〜図6においてはコンクリート躯体1を供試体として載架試験に供することもあってコンクリート躯体1の下面個所)に添設され、該補強部材2、または/および前記コンクリート躯体1には曲げ補強用の前記高靱性ポリマーセメントPCMが、(例えばこてを用いて塗布されるか、または、吹き付けるか、図には示さない)型枠内に打設されることによりコンクリート躯体1に固着して補強が行われる。この補強部材2に用いられる繊維F1が、炭素繊維、またはガラス繊維である。このように、補強部材2に炭素繊維、またはガラス繊維のような繊維F1を用いたのは、高靱性ポリマーセメントPCMのアルカリ分、また、酸性雨等に対して劣化されずに、繊維F1自体が耐薬品性に優れ、圧縮、引張、曲げに充分に耐える。
【0062】
上記表[2]の調合例により得られた本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを、圧縮強度試験、引張強度試験、曲げ強度試験等の強度試験を供試体(テストピース)につき実施した結果、下記表[3]を得た。
【0063】
【表3】

【0064】
表[3]に示される圧縮強度試験、および引張強度試験においては、φ50×100mmの円柱形状の供試体を用い、また、曲げ強度試験においては40×40×160mmの角柱を用い、それぞれ繊維体積率Vfが0.5%、1.0%、1.5%と異なる3個づつを用意して試験を行った。
【0065】
上記表[3]から、水溶性エマルションEmに対する高炉スラグ微粉末Sgの混入比が異なる3種において、短繊維Fの繊維体積率Vfが、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる3個づつの前記供試体につき検証した結果、圧縮強度、引張強度、曲げ強度の試験項目につき、気乾密度が高いほど、高い測定値を示していることが分かる。
【0066】
図7、図8、図9は、上記表[3]に示すような水溶性エマルションEmに対する高炉スラグ微粉末Sgの混入比がそれぞれ100重量%、150重量%、200重量%と異なる3種の前記供試体について加える荷重と、変位との関係を短繊維Fの繊維体積率Vfが、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる毎に変位する様子をグラフに示した荷重−変位曲線である。
【0067】
上記表[3]、および図7、図8、図9に示す荷重−変位曲線から総じて、高炉スラグ微粉末の混入比が増加するのに伴って、繊維堆積率Vfが大きいほど、強度性状、特に曲げ性状が良好であることがわかつた。
【0068】
本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMでは、上記表[1]、および表[2]の調合例に見られるように、粉体Coと、水溶性エマルションEmとに対して高炉スラグ微粉末Sgと、二水石膏Gyとを混和材として調合例に示すように混入しているので、高炉スラグ微粉末Sgがアルカリ刺激による潜在水硬性を発揮するのと、高炉スラグ微粉末Sgと二水石膏Gyとが反応することにより生ずるエトリンガイトによる強度発現促進性、および強度向上と、水酸化カルシウムの消費に伴う繊維界面組織の緻密化による付着強度を増加させること、により、コンクリート躯体1に対する断面補修材T1、および増厚材T2として用いる場合の圧縮強度、引張強度、曲げ強度等の強度を向上し、短繊維F、並びに連続する繊維F1よりなる補強部材2としてのシートS、プレートP、ロッドR、鉄筋Kに対する繊維界面の付着強度の向上をはかることができる。
【0069】
以下、本実施形態で得られた高靱性ポリマーセメントPCMが補強部材2とともに使用された場合に、建築物の例えば柱、梁、基礎、壁、床、天井、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体1の曲げ補強を行うための前記コンクリート躯体1の断面修復材T1、または増厚材T2として適しているかどうかを載架試験を実施することにより検証した。
【0070】
試験は図10、および図11に示すコンクリート躯体よりなる供試体20について行われた。図10、および図11において、供試体20は、柱や梁を想定して正面において縦Xの長さL1が150mm、横Yの長さL2が2400mmであり、高さHが250mmの長さL3にて全体形状が略直方体形状に、レディーミクストコンクリート(N−30−18−20)により成形される。そして、供試体20は、その上面20aおよび下面20bから30mmの内部に、すなわち内部上方には、3本の主筋21,21,21を長手方向に配筋するとともに、内部下方には、2本の主筋21,21を長手方向に配筋し、且つ前記主筋21,21,21;21,21の周囲には、横Yの二等分個所を中央基準線Iとして、左右に11本づつ、合計23本のあばら筋22,22・・・・を前記主筋21,21,21;21,21を横切って長手方向に交叉して配筋し、溶接が行われた構造材が内蔵されている。前記主筋21は、SD295A、10Dが使用される。また、前記あばら筋22は、φ5のみがき棒鋼が使用される。この際、用いられる主筋21の降伏強度は、370(N/mm)、引張強度は520(N/mm)、破断伸びは35.8(%)であり、また、あばら筋22の引張強度は789(N/mm)、破断伸びは10.3(%)である。
【0071】
そして、コンクリート躯体1としての上記供試体20に対する本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMについての連続繊維補強法を検証するために、補強部材2として断面修復材T1に炭素繊維による連続する繊維F1により形成されるシートS、または、プレートPを用いる場合につき検証し、また、補強部材Aとして増厚材T2に炭素繊維による連続する繊維F1により形成されたロッドRを用いる場合につき検証することとした。
【0072】
このうち、断面修復材T1に連続する繊維F1により形成されるシートSを用いる場合には、施工方法として下向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを60mm、供試体20に、積層した後、例えば公称厚さが0.167mm、引張強度が3430N/mm、ヤング係数が230kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断して形成された2枚のシートS,Sを層状に貼付けたものをNo1のサンプルとした。また、施工方法として下向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に60mm、積層した後、例えば公称厚さが2.0mm、幅が50mm、引張強度が1200N/mm、ヤング係数が450kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに形成された1枚のプレートPを貼付けたものをNo2のサンプルとした。また、供試体20の上面20aに、例えば公称断面積が73.3mm、引張強度が2450N/mm程度、ヤング係数が147kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断して形成された3本のロッドR,R,R、または3−D10の3本の異径の鉄筋K,K,Kを補強筋として3本配筋後、施工方法として下向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に30mm、積層して増圧材T2として増圧したものをNo3のサンプルとした。また、施工方法として上向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを60mm供試体20に、積層した後、例えば公称厚さが0.167mm、引張強度が3430N/mm、ヤング係数が230kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断して形成された2枚のシートS,Sを層状に貼付けたものをNo4のサンプルとした。また、施工方法として上向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に60mm、積層した後、例えば公称厚さが2.0mm、幅が50mm、引張強度が1200N/mm、ヤング係数が450kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに形成された1枚のプレートPを貼付けたものをNo5のサンプルとした。また、供試体20の下面20bに、例えば公称断面積が73.3mm、引張強度が2450N/mm程度、ヤング係数が147kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断した3本のロッドR,R,R、または、外周に螺旋溝を施して形成された3−D10の3本の鉄筋K,K,Kを配筋後、施工方法として上向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に30mm、積層して増圧材T2として増圧したものをNo6のサンプルとすることにより、それぞれ荷重、スパン中央変位、主筋ひずみ、補強部材2としてのシートS、プレートP、ロッドR、鉄筋Kの表面のひずみについて測定をおこなった。この際、図12に示すように、荷重は、ロードセル23を用いて測定を行い、変位は変位計24を用いて行い、また、図15に示すように、主筋ひずみは主筋21の配筋位置に対応する供試体20の表面に貼付けたパイ型変位計25を用いて測定し、さらに、シートS、プレートP、ロッドR、鉄筋Kのひずみは、図13、図14に示すように、これらに等間隔に貼付けたゲージ26を用いて測定した。
【0073】
これらの荷重、スパン中央変位、主筋ひずみ、補強部材AとしてのシートS、プレートP、ロッドR、鉄筋Kの表面のひずみについての測定項目を上記No1のサンプル〜No6のサンプルにつき測定した結果を整理してまとめると、図16に、上記No1のサンプルと、No4のサンプルとの荷重−変位曲線を示すグラフが得られ、また、図17には上記No1のサンプルと、No4のサンプルとの曲げモーメント−曲率を示すグラフが得られた。
【0074】
同様に、図18には上記No2のサンプルと、No5のサンプルとの荷重−変位曲線を示すグラフが得られ、図19には上記No2のサンプルと、No5のサンプルとの曲げモーメント−曲率を示すグラフが得られた。
【0075】
さらに、図20には上記No3のサンプルと、No6のサンプルとの荷重−変位曲線を示すグラフが得られ、図21は上記No3のサンプルと、No6のサンプルとの曲げモーメント−曲率を示すグラフが得られた。
【0076】
本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMは、無機主材としてセメントと珪砂を含む粉体Coを、水溶性高分子として主成分に、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体を含む水溶性エマルションEmに調合して所定時間、混練し、之に混和材料として、高炉スラグ微粉末Sgと、二水石膏Gyと、高性能AE減水剤Spとを所定割合調合して混練するとともに、短繊維Fを混入して分散することにより、コンクリート躯体1の断面修復材T1として用いるので、得られる高靱性ポリマーセメントPCMは、混和材料として混入した高炉スラグ微粉末Sgのアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ部粉末Sgと二水石膏Gyとの反応で生じる強度発現促進、および強度向上と、また、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材2としての連続する繊維F1としての炭素繊維、および高靱性ポリマーセメントPCM内に混入される短繊維Fの繊維境界面組織の付着強度が増加されることにより、強度、例えば圧縮強度、引張強度、曲げ強度が大きくなり、また、短繊維Fを混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下されて繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を向上することができる。
【0077】
また、本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMは、前記粉体Coと、前記水溶性エマルションEmとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ前記二水石膏Gyの、セメント、および高炉スラグ微粉末Sgとの結合材Bに対する混合割合が、10重量%程度、混入されることと、粉体Coと、前記水溶性エマルションEmとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ混和材料として高炉スラグ微粉末Sgを前記水溶性エマルションEmに対して150重量%以上混入して繊維を分散させるのとから、得られる高靱性ポリマーセメントPCMは、低流動性でありながら、圧縮強度、引張強度、曲げ強度は大きくなって強度が向上し、また、前述の高炉スラグ微粉末Sgのアルカリ刺激による潜在水硬性と、高炉スラグ微粉末Sgと二水石膏Gyとの反応で生じる強度発現促進、水酸化カルシウムの消費に伴う補強部材2としての繊維F1、および高靱性ポリマーセメントPCM内の短繊維Fの繊維境界面組織の付着強度が増加され、短繊維Fを混入するのに伴う連行空気量の増大によるマトリックス強度が低下され、繊維境界面の付着強度を低下させることなく強度を大幅に向上することができる。
【0078】
また、本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMは、前記短繊維Fの、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末Sgとの結合材Bに対する繊維体積率Vfが、約0.5〜1.5%であるのと、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体であるのとから、得られる高靱性ポリマーセメントPCMは、低流動性でありながら、ポリマーセメントの強度、例えば圧縮強度、曲げ強度等が大きくなり、高弾性、および高靱性が発揮される。
【0079】
そのため、建築物の例えば柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構築物よりなるコンクリート躯体1の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体1の断面補修材T1としては、例えばコンクリート躯体1のかぶり部分での斜めひび割れ30の発生を抑制でき、また、連続する繊維F1により形成されるシートS、または、プレートP、ロッドR、鉄筋K等の補強部材2に対する付着耐力が顕著になり、また、変形、および曲げ性状が大きく増加することができる。
【0080】
測定の結果、施工方法として下向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを60mm供試体20に、積層した後、例えば公称厚さが0.167mm、引張強度が3430N/mm、ヤング係数が230kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断して形成された2枚のシートS,Sを層状に貼付けたNo1のサンプルでは、曲げひび割れがサンプルに発生し、せん断ひび割れが発生後、シートS,Sの端部の高靱性ポリマーセメントPCMにひび割れが生じ、コンクリート躯体1よりなる供試体20と、高靱性ポリマーセメントPCMよりなる断面補修材T1との接合面に一部、ズレが見られ、コンクリート躯体1よりなる供試体20に対する断面修復部分に斜めひび割れ30が発生するが、高靱性ポリマーセメントPCMの斜めひび割れ強度が大きいために、シートS,Sの付着耐力が大きくなり、斜めひび割れ30の発生を抑制し、終局的にはシートS,Sの付着剥離に至った(図22参照)。
【0081】
このように、本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMは、建築物の例えば柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構造物よりなるコンクリート躯体Kの曲げ補強を行うために、コンクリート躯体Kの断面補修材T1として、例えばコンクリート躯体1のかぶり部分での斜めひび割れ30の発生を抑制でき、また、連続する繊維F1により形成されるシートSよりなる補強部材2に対する付着耐力が顕著になり、また、変形、および曲げ性状が大きく増加する。
【0082】
そして、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体1に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。従って、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、コンクリート躯体を補強・補修するために、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0083】
同様に、本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを60mm、供試体20に、施工方法として上向きにこてを用いて塗布する等して積層した後、例えば公称厚さが0.167mm、引張強度が3430N/mm、ヤング係数が230kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断して形成された2枚のシートS,Sを層状に貼付けたNo4のサンプルでは、No1の前記サンプルと同様、コンクリート躯体1よりなる供試体20と、高靱性ポリマーセメントPCMよりなる断面補修材T1との接合面に、ズレが見られたものの、高靱性ポリマーセメントPCMの斜めひび割れ強度が大きいために、シートS,S の付着耐力が大きくなり、斜めひび割れ30の発生を抑制し、最終的にはシートS,Sの付着剥離により終局状態に到った(図23参照)。
【0084】
このように、No4のサンプルは、高靱性ポリマーセメントPCMが、建築物の例えば柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構築物よりなるコンクリート躯体1の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体1の断面補修材T1として、例えばコンクリート躯体1のかぶり部分での斜めひび割れ30の発生を抑制でき、また、連続する繊維F1により形成されるシートSよりなる補強部材Aに対する付着耐力が顕著になり、また、変形、および曲げ性状が大きく増加する。
【0085】
そして、No4のサンプルも構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリート躯体1に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定する。従って、特許文献1に記載の上記従来のコンクリート等により形成された構造物の補修・補強方法とは異なり、補強繊維シート等よりなる補強部材の外表面に気密シートをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いて貼り付けなくても済むので、補強部材に対する気密性シートの貼り付け、又は取外しが省略されるため、その手間、および労力が不要になり、施工性が優れるとともに、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる。
【0086】
また、本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に60mm、施工方法として下向きに積層した後、例えば公称厚さが2.0mm、幅が50mm、引張強度が1200N/mm、ヤング係数が450kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに形成された1枚のプレートPを貼付けたNo2のサンプルでは、補強部材2としてシートSを用いた前述のNo1のサンプル、およびNo4のサンプルとの断面補修材と同様に、供試体20と断面補修材との間の接合面に、ズレが見られたものの、最終的にはプレートPの付着剥離により終局状態に到った(図24参照)。
【0087】
また、供試体20の上面20aに、例えば公称断面積が73.3mm、引張強度が2450N/mm程度、ヤング係数が147kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断して形成された3本のロッドR,R,R、または3−D10の異径な3本の鉄筋K,K,Kを補強筋として配筋後、本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に30mm、施工方法として下向きに積層して増圧材T2として増圧したNo3のサンプルでは、コンクリート躯体1としての供試体20内の主筋21やあばら筋22等の鉄筋の降伏が先行し、補強材部材2としてのロッドRの付着割裂破壊から供試体20と増厚材T2との接合面の剥離が進展し、曲げ厚縮破壊を生じて剪断ひび割れが進展拡大したことにより、載架点近傍のコンクリート躯体1よりなる供試体20の圧壊が見られたが、最終的には補強部材2としてのロッドRの付着割裂破壊により終局状態に到った(図26参照)。しかしながら、高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に対する増厚材T2として用いたことにより、補強筋としてのロッドR、または鉄筋Kの付着割裂破壊が抑制され、降伏先行による靱性とひび割れ強度が大きくなり、終局曲げ耐力を大きく向上できることがわかった。
【0088】
さらに、供試体20の下面20bに、例えば公称断面積が73.3mm、引張強度が2450N/mm程度、ヤング係数が147kN/mmの炭素繊維より、1800mmの長さに裁断した3本のロッドR,R,R、または3−D10の異径の3本の鉄筋K,K,Kを補強筋として3本配筋後、施工方法として上向きに本実施形態の高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に30mm、積層して増圧材T2として増圧したNo6のサンプルでは、同様に補強部材2としてのロッドR、または鉄筋Kの付着割裂破壊により終局状態に到った(図27参照)。また、増厚材T2が、一部において引張破断し、ロッドR、また鉄筋Kの引き抜けが見られたが、高靱性ポリマーセメントPCMを供試体20に対する増厚材T2として用いたことにより、同様にロッドR、または鉄筋Kの付着割裂破壊が抑制され、降伏先行による靱性とひび割れ強度が大きくなり、終局曲げ耐力を大きく向上できることがわかった。
【0089】
上記実施形態での説明では、高靱性ポリマーセメントPCMを形成するために、粉体Coを所定量混入して混練するための水溶性高分子として、主成分にポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体を含む水溶性エマルションEmが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体である場合を好適例として説明したけれども、これは代表的な例示であり、本発明の高靱性ポリマーセメントPCMを形成するための水溶性高分子としては、上記のほかに、例えばアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、水溶性のエポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポパール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニール樹脂等の重合体、または、それらのエステル、或いはそれらの共重合体であったり、さらには、前記水溶性高分子が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブチレンゴム等の合成ゴム系ラテックス、または、天然ゴム、或いは、アセチルセルロース、ニトロセルロースである場合にも粉体Coを混練することにより高靱性ポリマーセメントPCMを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等の土木構築物よりなるコンクリート躯体の曲げ補強を行うために、コンクリート躯体の断面補修材としては、例えばコンクリート躯体のかぶり部分での斜めひび割れの発生を抑制し、また、連続繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等の補強部材に対する付着耐力が顕著であり、しかも、増厚材としては、増厚材内部の補強筋の付着割裂破壊が抑制され、また、変形、および曲げ性状が大きく増加する等、構築現場毎にそれぞれ異なるコンクリートによりなる構造物に個別に具体的にきめ細かな曲げ補強を施すのに適し、補強機能が安定し、そして、施工性に優れ、施工期間が短く、施工費、および設備費は安価になる用途・機能に適する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は本発明のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントを用いてコンクリート躯体を補強する場合の一実施形態を説明的に示した正面図である。
【図2】図2は同じく側面図である。
【図3】図3は同じく本実施形態のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントを用いてコンクリート躯体を補強する場合の他例を説明的に示した正面図である。
【図4】図4は同じく側面図である。
【図5】図5は同じく同じく本発明のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントを用いてコンクリート躯体を補強する場合の更なる他例を説明的に示した正面図である。
【図6】図6は同じく側面図である。
【図7】図7は本実施形態の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにおいて、水溶性エマルションに対する高炉スラグ微粉末の混入比が100重量%の供試体について荷重と、変位との関係を繊維体積率が、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる毎に変位する様子を示した荷重−変位曲線を示すグラフである。
【図8】図8は本実施形態の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにおいて、水溶性エマルションに対する高炉スラグ微粉末の混入比が150%の供試体について荷重と、変位との関係を繊維体積率が、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる毎に変位する様子を示した荷重−変位曲線を示すグラフである。
【図9】図9は同じく本実施形態の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにおいて、水溶性エマルションに対する高炉スラグ微粉末の混入比が200重量%の供試体について荷重と、変位との関係を繊維体積率が、それぞれ0.5%、1.0%、1.5%と異なる毎に変位する様子を示した荷重−変位曲線を示すグラフである。
【図10】図10は同じく載架試験に用いられる供試体としてのコンクリート躯体を示す正面図である。
【図11】図11は同じく図10のQ−Q断面図である。
【図12】図12は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材にて補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な正面図である。
【図13】図13は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートにより補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な下面図である。
【図14】図14は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートにより補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な下面図である。
【図15】図15は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートにより補強して載架試験を実施する状態を示す説明的な背面図である。
【図16】図16は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより荷重−変位曲線を示したグラフである。
【図17】図17は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより曲げモーメント−曲率曲線を示したグラフである。
【図18】図18は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより荷重−変位曲線を示したグラフである。
【図19】図19は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより曲げモーメント−曲率曲線を示したグラフである。
【図20】図20は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより荷重−変位曲線を示したグラフである。
【図21】図21は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工、および上向施工により補強して載架試験を実施することにより曲げモーメント−曲率曲線を示したグラフである。
【図22】図22は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを下向施工により補強したNo1のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図である。
【図23】図23は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてシートを上向施工により補強したNo4のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図である。
【図24】図24は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートを下向施工により補強したNo2のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図である。
【図25】図25は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてプレートを上向施工により補強したNo5のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図である。
【図26】図26は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてロッドを下向施工により補強したNo3のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図である。
【図27】図27は同じく供試体としてのコンクリート躯体を補強部材としてロッドを上向施工により補強したNo6のサンプルに載架試験を実施した場合の終局破壊性状を示した正面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 コンクリート躯体
2 補強部材
20 供試体
20a 上面
20b 下面
21 主筋
22 あばら筋
23 ロードセル
24 変位計
25 パイ変位計
26 ゲージ
30 斜めひび割れ
B 結合材
Co 粉体
Em 水溶性エマルション
F 短繊維
F1 繊維
Gy 二水石膏
K 鉄筋
PCM 高靱性ポリマーセメント
P プレート
R ロッド
S シート
Sg 高炉スラグ微粉末
Sp 高性能AE減水剤
T1 断面修復材
T2 増厚材
Vf 繊維体積率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の柱、梁、床、天井、基礎、または、高架道路、橋梁、トンネル、ボックスカルバート、水路等のコンクリート躯体の曲げ補強を行うコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメントにして、無機主材としてセメントと珪砂を含む粉体を、主成分として水溶性高分子を含む水溶性エマルションに調合して所定時間、混練し、之に混和材料として、高炉スラグ微粉末と、二水石膏と、高性能AE減水剤とを所定割合調合して混練するとともに、短繊維を混入して分散することにより、前記コンクリート躯体の断面修復材、または増厚材として用いることを特徴とするコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項2】
前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ前記二水石膏の、前記セメント、および高炉スラグ微粉末との結合材に対する混合割合が、10重量%程度、混入されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項3】
前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ混和材料として高炉スラグ微粉末を前記水溶性エマルションに対して150重量%以上混入して繊維を分散させたことを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項4】
前記短繊維の、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末との結合材に対する繊維体積率が、約0.5〜1.5%であることを特徴とする請求項1−3に記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項5】
前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体であることを特徴とする請求項1−4の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項6】
前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、水溶性のエポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポパール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニール樹脂等の重合体、または、それらのエステル、或いはそれらの共重合体であることを特徴とする請求項1−4の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項7】
前記水溶性高分子が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブチレンゴム等の
合成ゴム系ラテックス、または、天然ゴム、或いは、アセチルセルロース、ニトロセルロースであることを特徴とする請求項1−4の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項8】
前記ポリアクリル酸、前記ポリメタクリル酸、前記ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体であることを特徴とする請求項5に記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項9】
連続繊維により形成されるシート、プレート、または、炭素繊維強化プラスチックのロッド、或いは鉄筋等の何れかの補強部材であり、何れかの該補強部材が、前記コンクリート躯体の外側面に添設され、該補強部材、または/および前記コンクリート躯体には曲げ補強用の前記高靱性ポリマーセメントが塗布されるか、または、吹き付けるか、打設されることにより固着して補強を行うことを特徴とする請求項1−8の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項10】
前記セメントが、白色セメント、普通・早強・超早強ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメントから選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1−9の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項11】
前記短繊維が、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリスチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリカーボネート繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリル繊維から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1−10の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項12】
前記補強部材が鉄筋であるか、または補強部材に用いられる繊維が、炭素繊維、またはガラス繊維であることを特徴とする請求項1−11の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項13】
前記増厚材が、増し打ち厚さを5mm以上に形成されることを特徴とする請求項1−12の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強用の高靱性ポリマーセメント。
【請求項14】
無機主材として、セメントと珪砂を含む粉体を、主成分として水溶性高分子を含む水溶性エマルションに調合して所定時間、混練する工程と、之に混和材料として高炉スラグ微粉末と、二水石膏と、高性能AE減水剤とを所定割合調合して混練するとともに、短繊維を混入して分散する工程と、を有して製造された高靱性ポリマーセメントをコンクリート躯体の断面修復材、または増厚材として用いることを特徴とするコンクリート躯体の曲げ補強工法。
【請求項15】
前記粉体と、前記水溶性エマルションとの混合割合が、3〜5:1.0であり、且つ前記二水石膏の、前記セメント、および高炉スラグ微粉末との結合に対する混合割合が、10重量%程度、混入されることを特徴とする請求項14に記載のコンクリート躯体の曲げ補強工法。
【請求項16】
前記短繊維の、前記セメント、および、前記高炉スラグ微粉末との結合材に対する繊維体積率が、約0.5〜1.5%であることを特徴とする請求項14または15に記載のコンクリート躯体の曲げ補強工法。
【請求項17】
前記水溶性高分子が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体であることを特徴とする請求項14−16の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強工法。
【請求項18】
前記水溶性高分子が、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、EVA樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、水溶性のエポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポパール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニール樹脂、の重合体、または、それらの共重合体、或いはエステルであることを特徴とする請求項14−16の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強工法。
【請求項19】
前記水溶性高分子が、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブチレンゴム等の
合成ゴム系ラテックス、または、天然ゴム、或いは、アセチルセルロース、ニトロセルロースであることを特徴とする請求項14−16の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強工法。
【請求項20】
前記ポリアクリル酸、前記ポリメタクリル酸、前記ポリアクリロニトリル、またはそれらのエステル、或いはそれらの共重合体が、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキサンアクリレート、アクリル酸、ポリアクリル酸、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、スチレン、ポリスチレン、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、ポリアクリロニトリル等からなる重合体、または、それらの2種以上を組み合わせた共重合体であることを特徴とする請求項17に記載のコンクリート躯体の曲げ補強工法。
【請求項21】
連続する炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維により形成されるシート、プレート、ロッド、或いは、鉄筋等のうちの何れかが補強部材として、前記コンクリート躯体の外側面に添設され、該補強部材、または/および前記コンクリート躯体には曲げ補強用の前記高靱性ポリマーセメントが塗布されるか、または、吹き付けるか、打設されることにより固着して補強を行うことを特徴とする請求項14−20の何れかに記載のコンクリート躯体の曲げ補強工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−203106(P2009−203106A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46491(P2008−46491)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(508061309)株式会社フジコンケミカル (1)
【Fターム(参考)】