説明

コンタクトレンズ、及びその製造方法

【課題】セルロース誘導体を必須成分とした高含水性コンタクトレンズを提供することである。
【解決手段】セルロース誘導体と前記セルロース誘導体に結合し得る重合可能な化合物と水とを含む混合物に、放射線照射が行われて得られた高含水性コンタクトレンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
角膜は酸素を必要とする。従って、角膜上にコンタクトレンズが装着された場合でも、酸素はコンタクトレンズを介して角膜に供給される必要が有る。角膜への酸素供給形態は、コンタクトレンズの種類によって異なる。すなわち、含水性コンタクトレンズと、非含水性コンタクトレンズとでは、酸素供給形態が異なる。
【0003】
前記非含水性コンタクトレンズは、一般的には、ハードコンタクトレンズとして知られている。ハードコンタクトレンズは、例えばシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂で構成されている。なぜならば、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂は酸素透過性が高いからである。この種の酸素透過性ハードコンタクトレンズが、例えば特公昭63−36646号公報や特公昭62−55122号公報で提案されている。しかしながら、ハードコンタクトレンズは装用感が悪い。特に、眼にゴミが入ると、非常に痛みを感じる。
【0004】
前記含水性コンタクトレンズは、一般的には、ソフトコンタクトレンズとして知られている。ハードコンタクトレンズに比べて、ソフトコンタクトレンズは柔らかである。従って、ソフトコンタクトレンズは装用感に優れている。このようなことから、含水性ソフトコンタクトレンズの普及が著しい。含水性ソフトコンタクトレンズの場合、水に溶け込んだ酸素が前記レンズを介して角膜に供給される。従って、含水性ソフトコンタクトレンズの場合、前記レンズの含水率が高い方が好ましい。すなわち、含水率が高いことは酸素供給量(酸素透過量)が多いことを意味する。しかしながら、含水率が70%を上回ると、コンタクトレンズの機械的強度が低下する。例えば、引き裂かれ易くなる。従って、単に、含水率を多くすれば良いと言うものでは無い。
【0005】
酸素透過性を向上させる目的で、シリコーンを含有させたシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが提案(米国特許5,486,579、特表平7−505169)されている。しかしながら、シリコーン化合物と親水性化合物とは相溶性が悪い。この為、均一重合が困難である。従って、多くの溶出物が検出される。更に、シリコーン特有のゴム弾性が生じ、柔軟性が損なわれる。この為、ソフトコンタクトレンズ最大の特長(優れた装用感)が得られない。又、シリコーンは疎水性が強い。この為、レンズ表面の水濡れ性が悪い。この点からも、装用感が良く無い。又、タンパク質や脂質が付着し易い。この為、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは表面処理を必要とする。しかしながら、表面処理の耐久性は良く無い。
【0006】
一方、今日、コンタクトレンズの取扱性の観点から、使い捨て型コンタクトレンズが普及した。すなわち、短期間(1日、1週間、2週間、又は1カ月)での取り替えを前提とした使い捨て型コンタクトレンズが普及した。このような使い捨て型コンタクトレンズの数が増大すると、石油資源を原料とした分解し難いプラスチック製のコンタクトレンズは環境破壊の懸念が有る。従って、例えば植物資源(植物由来高分子材料)からコンタクトレンズが作製されることが好ましい。
【0007】
このようなことから、含水性ソフトコンタクトレンズの新たな材料開発が進められた。特に、高含水性で、酸素透過性に優れ、かつ、機械的強度に富み、更には水濡れ性が良く、装用感が良く、生体への安全性も高い植物由来高分子材料の開発が進められた。
【0008】
例えば、セルロースを原料とした含水性ソフトコンタクトレンズが提案(特開平8−184786号公報)された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−184786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、「親水性(メタ)アクリルアミドを含有したビニルモノマー成分を架橋重合させてなるポリマー」と、「1分子中のヒドロキシプロポキシル基の含有量が3〜75重量%のセルロース誘導体」とからなる含水性ソフトコンタクトレンズが開示されている。その段落番号[0066]〜[0071]の実施例では、「セルロース誘導体(HPC)と、親水性(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチルアクリルアミド:DMAA)と、架橋性ビニルモノマー(エチレングリコールジメタクリレート:EDMA)とがフラスコに入れられた。そして、混合により、HPCとDMAAとの相溶が行われた。この後、重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイド:BPO)が添加された。この混合溶液に対して130℃で重合処理が行われた。」旨の記載が有る。
【0011】
本発明者によって、特許文献1の追試が行われた。その結果、特許文献1には記載が無いものの、特許文献1のコンタクトレンズの機械的強度は劣っていた。特に、破断伸度は非常に劣っていた。特許文献1には、セルロース誘導体を用いた含水性ソフトコンタクトレンズの含水率は69.9wt%〜89.7wt%である旨の記載が有る。しかしながら、更に高い含水率のコンタクトレンズが求められた。
【0012】
従って、本発明が解決しようとする第1の課題は、セルロース誘導体を必須成分とした高含水性ソフトコンタクトレンズを提供することである。
【0013】
本発明が解決しようとする第2の課題は、酸素透過性に優れた高含水性ソフトコンタクトレンズを提供することである。
【0014】
本発明が解決しようとする第3の課題は、機械的強度に優れた高含水性ソフトコンタクトレンズを提供することである。
【0015】
本発明が解決しようとする第4の課題は、形状保持性に優れた高含水性ソフトコンタクトレンズを提供することである。
【0016】
本発明が解決しようとする第5の課題は、透明性に優れた高含水性ソフトコンタクトレンズを提供することである。
【0017】
本発明が解決しようとする第6の課題は、水濡れ性(親水性)に優れた高含水性ソフトコンタクトレンズを提供することである。
【0018】
本発明が解決しようとする第7の課題は、装用感に優れた高含水性ソフトコンタクトレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記特許文献1の材料の問題点についての検討が、鋭意、推し進められた。その結果、特許文献1の材料は、「親水性(メタ)アクリルアミドを含有したビニルモノマー成分を架橋重合させてなるポリマー」と「1分子中のヒドロキシプロポキシル基の含有量が3〜75重量%のセルロース誘導体」とのブレンドに過ぎないことから、機械的強度が乏しいのでは無いかと考えられた。
【0020】
そして、セルロース誘導体が架橋した材料は機械的強度が向上するであろうと想像された。
【0021】
しかしながら、セルロース誘導体が架橋した材料は、ハードであるか、ソフトであるかは、全く判らなかった。全く判らないと言うより、前記材料はソフト性が失われるであろうと想像された。その結果、前記材料製のコンタクトレンズの装用感が低下するのでは無いかと想像された。又、前記材料の含水率が、低くなるのか、それとも、同程度であるのかの予想も全く出来なかった。更には、前記材料の透明性についての予想も全く出来なかった。
【0022】
取り敢えず、セルロース誘導体自体が架橋した構造の材料開発が進められた。例えば、水の存在下でHPCに放射線照射が行われた。放射線照射によりセルロース誘導体が架橋した構造の材料は、予想と異なり、脆く、機械的強度が劣っていた。すなわち、この材料はコンタクトレンズ材料として好ましいものでなかった。
【0023】
そこで、更なる検討が推し進められた。その結果、セルロース誘導体の架橋に、セルロース誘導体による架橋と、セルロース誘導体以外の化合物による架橋とを組み込んだならば、機械的強度の改善が図れるのではとの知見を得るに至った。
【0024】
この知見を基にした材料が試作され、機械的強度などの特性が調べられた。その結果、予想以上の特性を持つことが判り、コンタクトレンズ材料として優れていることが判った。
【0025】
すなわち、前記の課題は、
コンタクトレンズの製造方法において、
セルロース誘導体と、前記セルロース誘導体に結合し得る重合可能な化合物(但し、該化合物は前記セルロース誘導体とは異なる。)と、水とを含む流動性混合物に、放射線照射が行われる工程
を具備することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0026】
前記の課題は、
コンタクトレンズの製造方法において、
セルロース誘導体と、前記セルロース誘導体に結合し得る重合可能な化合物(但し、該化合物は前記セルロース誘導体とは異なる。)と、生理食塩水とを含む流動性混合物に、放射線照射が行われる工程
を具備することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0027】
又、前記コンタクトレンズの製造方法であって、前記流動性混合物がコンタクトレンズ成形型に充填される充填工程と、前記充填工程の後、前記流動性混合物に放射線照射が行われる放射線照射工程とを具備することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0028】
又、前記コンタクトレンズの製造方法であって、前記放射線照射により、前記化合物が前記セルロース誘導体に結合する結合反応と、前記化合物が重合する重合反応と、前記セルロース誘導体同士が架橋する架橋反応とが生ずることを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0029】
又、前記コンタクトレンズの製造方法であって、前記セルロース誘導体100質量部に対して、好ましくは、前記化合物が1〜17.6質量部の割合であることを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0030】
又、前記コンタクトレンズの製造方法であって、前記セルロース誘導体が、好ましくは、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びアルキルセルロースの群の中から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0031】
又、前記コンタクトレンズの製造方法であって、前記化合物は、好ましくは、不飽和結合(例えば、二重結合)を有するモノマーであることを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0032】
又、前記コンタクトレンズの製造方法であって、前記放射線は、好ましくは、γ線、X線、及び電子線の群の中から選ばれる放射線であり、線量が、好ましくは、1〜200kGyであることを特徴とするコンタクトレンズの製造方法によって解決される。
【0033】
前記の課題は、
前記コンタクトレンズの製造方法によって得られてなるコンタクトレンズによって解決される。
【0034】
前記の課題は、
セルロース誘導体が架橋してなるコンタクトレンズであって、
前記架橋は、
セルロース誘導体を介しての架橋と、
前記セルロース誘導体に結合し得る重合可能な化合物の重合体を介しての架橋
とを具備してなる
ことを特徴とするコンタクトレンズによって解決される。
【0035】
又、前記コンタクトレンズであって、前記セルロース誘導体100質量部に対して、好ましくは、前記化合物が1〜17.6質量部の割合であることを特徴とするコンタクトレンズによって解決される。
【0036】
又、前記コンタクトレンズであって、前記セルロース誘導体が、好ましくは、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びアルキルセルロースの群の中から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とするコンタクトレンズによって解決される。
【0037】
又、前記コンタクトレンズであって、前記化合物は、好ましくは、不飽和結合(例えば、二重結合)を有するモノマーであることを特徴とするコンタクトレンズによって解決される。
【0038】
又、前記コンタクトレンズであって、含水率が85〜95%、破断伸度が150〜270%、破断強度が2〜15Kg/cmであることを特徴とするコンタクトレンズによって解決される。
【発明の効果】
【0039】
高含水性ソフトコンタンクトレンズである。ゲル分率が高い。高含水性である。酸素透過性が良い。水濡れ性が良い。装用感が良い。透明性も問題が無い。高含水性であるにも拘らず、形状保持性が良い。実用上問題のない充分な強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】セルロース誘導体(B)と化合物(C)との架橋構造の概略図
【図2】セルロース誘導体(B)と化合物(C)との架橋構造の概略図
【発明を実施するための形態】
【0041】
第1の発明はコンタクトレンズの製造方法である。特に、高含水性ソフトコンタクトレンズの製造方法である。この製造方法は放射線照射工程を具備する。この放射線照射工程は、流動性混合物(A)に放射線照射が行われる工程である。前記流動性混合物(A)は、セルロース誘導体(B)と、前記セルロース誘導体に結合し得る重合可能な化合物(C)とを含む。好ましくは、更に、水を含む。前記水は、単なる水である。或いは、電解質物質を含有する水溶液(例えば、生理食塩水)である。又は、水溶性有機系希釈剤を含有する水溶液である。前記セルロース誘導体(B)は、好ましくは、植物由来高分子である。前記化合物(C)は前記セルロース誘導体(B)とは異なる。本発明の製造方法は、好ましくは、前記放射線照射工程に先立って、前記流動性混合物(A)がコンタクトレンズ成形型に充填される充填工程を有する。そして、前記充填工程後に、前記流動性混合物(A)に放射線照射が行われる。前記セルロース誘導体(B)と前記化合物(C)との配合割合は、前者100質量部に対して、好ましくは、後者が1〜17.6質量部である。より好ましくは、後者が2.5〜17.5質量部である。更に好ましくは、後者が5〜17質量部である。水(水溶液)の配合割合は、前記セルロース誘導体(B)100質量部に対して、好ましくは、水(水溶液)が50〜1900質量部である。より好ましくは、65〜1900質量部である。更に好ましくは、200〜1000質量部である。前記セルロース誘導体(B)は、好ましくは、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びアルキルセルロースの群の中から選ばれる一種または二種以上である。前記化合物(C)は不飽和結合を有するモノマーである。例えば、二重結合を有するモノマーである。特に、−C=C−を有するモノマーである。例えば、CH=C基(例えば、ビニル基)を有するモノマーである。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、或いは前記カルボン酸のエステルである。前記放射線は、γ線、X線、又は電子線の群の中から選ばれる。その線量は、好ましくは、1〜200kGyである。前記放射線照射により、前記化合物(C)が前記セルロース誘導体(B)に結合する結合反応と、前記化合物(C)が重合する重合反応と、前記セルロース誘導体(B)同士が架橋する架橋反応とが生ずる。
【0042】
第2の発明はコンタクトレンズである。特に、高含水性ソフトコンタクトレンズである。例えば、前記製造方法によって得られてなるコンタクトレンズ(高含水性ソフトコンタクトレンズ)である。又は、セルロース誘導体(B)が架橋してなるコンタクトレンズである。前記架橋は、セルロース誘導体(B)を介しての架橋と、前記セルロース誘導体(B)に結合し得る重合可能な化合物(C)の重合体を介しての架橋とを具備してなる。この架橋構造の例が図1や図2に示される。勿論、この形態に限られるものではない。前記セルロース誘導体(B)と前記化合物(C)との割合は、前者100質量部に対して、好ましくは、後者が1〜17.6質量部である。より好ましくは、後者が2.5〜17.5質量部である。更に好ましくは、後者が5〜17質量部である。前記セルロース誘導体(B)は、好ましくは、植物由来高分子である。前記セルロース誘導体(B)は、好ましくは、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びアルキルセルロースの群の中から選ばれる一種または二種以上である。前記化合物(C)は不飽和結合を有するモノマーである。例えば、二重結合を有するモノマーである。特に、−C=C−を有するモノマーである。例えば、CH=C基(例えば、ビニル基)を有するモノマーである。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、或いは前記カルボン酸のエステルである。前記コンタクトレンズの含水率は、好ましくは、85〜95%である。従って、酸素透過性が優れている。前記コンタクトレンズの破断伸度は、好ましくは、150〜270%である。前記コンタクトレンズの破断強度は、好ましくは、2〜15Kg/cmである。従って、機械的強度が優れている。又、形状保持性が良い。前記コンタクトレンズは、溶出物が少ない。従って、生体への安全性が高い。前記コンタクトレンズは水濡性(親水性)が優れている。従って、装用感が良い。前記コンタクトレンズは透明性が良い。
【0043】
以下、更に詳しく説明する。
【0044】
本発明になる高含水性ソフトコンタクトレンズの製造方法にあっては、電離放射線の照射により、重合反応と架橋反応とが起きる。これにより、高含水性ゲルが得られる。すなわち、重合開始剤(ラジカル重合開始剤、パーオキサイド系熱重合開始剤、又は光重合開始剤)を使用しないでも、高含水性ゲルが得られる。そして、ゲル分率が高く、溶出物が少ない。従って、生体への安全性も高い。
【0045】
セルロース誘導体(B)は、電離放射線が照射されると、架橋助剤が無くても、セルロース誘導体(B)の分子鎖間で架橋反応が起こる。そして、ゲルが形成される。尚、セルロース誘導体(B)の濃度が低すぎると、架橋反応よりも、分解反応が優位に進行する。従って、ゲルが得られ難い。逆に、セルロース誘導体(B)の濃度が高すぎると、セルロース誘導体(B)が均一に分散し難く、架橋反応が起き難い。好ましい濃度は、例えば5〜60%である。更に好ましい濃度は10〜30%である。より好ましい濃度は15〜25%である。架橋の程度は、原料(セルロース誘導体(B)、重合可能な化合物(C))の量や、照射線量によって、ほぼ、決まる。照射線量が増加すると、架橋度は増加する。照射線量が増加すると、含水率は低下する。
【0046】
セルロース誘導体(B)のみから成る試料に電離放射線を照射して得られたゲルは、機械的強度が不十分であった。これを改善する為、化合物(C)も用いられた。この化合物(C)は、セルロース誘導体(B)と反応して結合が起こり、かつ、重合が起きる化合物(モノマー)である。この化合物(C)とセルロース誘導体(B)との混合物に電離放射線を照射して得られたゲルは、含水率は高く、機械的強度も優れたものであった。好ましい配合割合は上述した通りである。
【0047】
本発明はセルロース誘導体(B)を用いる。セルロース誘導体(B)は、好ましくは、植物由来のセルロース誘導体である。前記セルロース誘導体(B)は自己架橋型セルロース誘導体である。前記セルロース誘導体(B)は電離放射線照射で架橋が起きるセルロース誘導体である。このようなセルロース誘導体(B)として、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース)が挙げられる。或は、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が挙げられる。又は、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチル化またはカルボキシルエチル化したセルロース誘導体)が挙げられる。前記セルロース誘導体(B)は、好ましくは、非イオン性である。前記セルロース誘導体(B)は、好ましくは、水溶性である。最も好ましいセルロース誘導体(B)はヒドロキシプロピルセルロースである。
【0048】
化合物(C)は、重合反応が起き、かつ、前記セルロース誘導体(B)に結合して架橋が起きる化合物である。化合物(C)は、不飽和結合を有するモノマーである。例えば、二重結合を有するモノマーである。特に、−C=C−を有するモノマーである。例えば、CH=C基(例えば、ビニル基)を有するモノマーである。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、或いは前記カルボン酸のエステルである。次の化合物が挙げられる。アルコール(例えば、炭素数が1〜11の一価(又は多価)アルコール)とカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸)とのエステル類が挙げられる。1〜20のフッ素原子を有する直鎖状(又は分岐鎖状)のフルオロアルキルアルコールとカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸)とのエステル類も挙げられる。フルオロアルキルベンジルアルコールとカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸)とのエステル類も挙げられる。シリコーン含有モノマー類やN−ビニル複素環式モノマー類も挙げられる。橋かけ助剤となる架橋性多官能モノマー類も挙げられる。他にも前記化合物に類似の化合物が用いられる。前記化合物(C)は疎水性の基を持つ化合物であることが好ましい。
【0049】
炭素数が1〜11の一価(又は多価)アルコールとアクリル酸(メタクリル酸)とのエステル((メタ)アクリル酸エステル)は次の化合物が挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノプロピルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートである。
【0050】
炭素数が1〜11の一価(又は多価)アルコールとイタコン酸とのエステル(イタコン酸モノエステルやイタコン酸ジエステル)は次の化合物が挙げられる。例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジn−プロピル、イタコン酸モノn−プロピル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸モノイソプロピル、イタコン酸ジn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸ジペンチル、イタコン酸モノペンチル、イタコン酸ジネオペンチル、イタコン酸モノネオペンチル、イタコン酸ジn−ヘキシル、イタコン酸モノn−ヘキシル、イタコン酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸ジ2−エチルヘキシル、イタコン酸モノ2−エチルヘキシル、イタコン酸ジ2−ヒドロキシエチル、イタコン酸モノ2−ヒドロキシエチル、イタコン酸ジ2−ヒドロキシプロピル、イタコン酸モノ2−ヒドロキシプロピル、イタコン酸ジ3−ヒドロキシプロピル、イタコン酸モノ3−ヒドロキシプロピル、イタコン酸ジ2−ヒドロキシブチル、イタコン酸モノ2−ヒドロキシブチル、イタコン酸ジ4−ヒドロキシブチル、イタコン酸モノ4−ヒドロキシブチルである。
【0051】
前記エステルに類似の化合物は次の化合物が挙げられる。例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチルアシッドホスフェート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、イタコン酸ジフェニル、イタコン酸モノフェニル、イタコン酸ジ−メチルフェニル、イタコン酸モノ−メチルフェニル、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド類、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート類、N−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−ビニルホルムアミド、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、フマル酸エステル類、マレイン酸エステル類である。
【0052】
前記1〜20のフッ素原子を有する直鎖状(又は分岐鎖状)のフルオロアルキルアルコール、又はフルオロアルキルベンジルアルコールと、カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸)とのエステルは次の化合物が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸フルオロエステルである。イタコン酸ジフルオロエステルである。イタコン酸モノフルオロエステルである。(メタ)アクリル酸フルオロエステルは、例えば2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロ−5−トリフルオロメチルヘキシル(メタ)アクリレート、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、o−トリフルオロメチルベンジル(メタ)アクリレート、p−トリフルオロメチルベンジル(メタ)アクリレートである。イタコン酸ジフルオロエステルやイタコン酸モノフルオロエステルとしては、例えばビス−2,2,2−トリフルオロエチルイタコネート、2,2,2−トリフルオロエチルイタコネート、ビス−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルイタコネート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルイタコネート、ビス−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルイタコネート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルイタコネート、ビス−1H,1H,−ペンタフルオロプロピルイタコネート、1H,1H,−ペンタフルオロプロピルイタコネート、ビスヘキサフルオロイソプロピルイタコネート、ヘキサフルオロイソプロピルイタコネート、ビス−1H,1H−ヘプタフルオロブチルイタコネート、1H,1H−ヘプタフルオロブチルイタコネート、ビス−パーフルオロ−t−ブチルイタコネート、パーフルオロ−t−ブチルイタコネート、ビス−1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルイタコネート、1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルイタコネート、ビス−1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルイタコネート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルイタコネート、ビス−o−トリフルオロメチルベンジルイタコネート、o−トリフルオロメチルベンジルイタコネート、ビス−p−トリフルオロメチルベンジルイタコネート、p−トリフルオロメチルベンジルイタコネートである。
【0053】
シリコーン含有モノマー類は次の化合物が挙げられる。例えば、オルガノシロキサンである。オルガノシロキサンとしてはシリコーン含有(メタ)アクリレート、シリコーン含有多官能(メタ)アクリレート、シリコーン含有(メタ)アクリルアミド、シリコーン含有イタコネート、シリコーン含有スチレンである。
【0054】
シリコーン含有(メタ)アクリレートは、例えば(メタ)アクリロキシエトキシプロピルペンタメチルジシロキサン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルヘプタメチルトリシロキサン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルフェニルテトラメチルジシロキサン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルn−ペンチルヘキサメチルトリシロキサン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルフェニルオクタメチルテトラシロキサン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルイソブチルテトラメチルジシロキサン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルトリス(ジメチルシクロヘキシルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルペンタメチルジシロキシビス(トリメチルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピル−トリス(アセトキシエチルジメチルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシエトキシプロピル−トリス(カルボキシエチルジメチルシロキシ)シラン、1−(メタ)アクリロキシエトキシプロピル−3−(ヒドロキシエトキシプロピル)−1,1,3,3−(テトラメチル)ジシロキサン、1−(メタ)アクリロキシエトキシプロピル−3−〔(ヒドロキシエチルカルボニル)プロピル〕−1,1,3,3−(テトラメチル)ジシロキサン、1−(メタ)アクリロキシエトキシプロピル−5−[(ジヒドロキシプロピルオキシ)プロピル]−1,1,3,3,5,5−(ヘキサメチル)トリシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−1,1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシプロピル−3−フェニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−1,1−ジエチル−3,3,3−トリベンジルジシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−3−ペンチルトリシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−7−フェニルテトラシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−3−イソブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリス(ジメチルシクロヘキシルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシプロピル(ペンタメチルジシロキシ)ビス(トリメチルシロキシ)シラン、(メタ)アクリロキシプロピルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチル−3,5,7−トリプロピルシクロテトラシロキサン、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレートである。
【0055】
シリコーン含有多官能(メタ)アクリレートは、例えば1,3−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,1,3,3−(テトラメチル)ジシロキサン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,1,3,3,5,5−(ヘキサメチル)トリシロキサン、1,7−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,1,7,7−テトラキス(トリメチルシロキシ)−3,3,5,5−(テトラメチル)−テトラシロキサン、1,3−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,1,3,3−テトラキス[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキシ]ジシロキサン、1,3−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3−(テトラフェニル)ジシロキサン、1,3−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3−(テトラメチル)ジシロキサン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3,5,5−(ヘキサメチル)トリシロキサン、1,7−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,7,7−テトラキス(トリメチルシロキシ)−3,3,5,5−(テトラメチル)−テトラシロキサン、1,3−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3−テトラキス[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキシ]ジシロキサン、1,3−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3−(テトラフェニル)ジシロキサン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,3,5−(トリメチル)−1,3,5−(トリプロピル)トリシロキサン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,3,5,7−(テトラメチル)−3,7−(ジプロピル)シクロテトラシロキサン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,1,3,3,5,5−(ヘキサメチル)トリシロキサン、1,3−ビス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,1,3,3−テトラキス(アセトキシエチルジメチルシロキシ)ジシラン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,3,5−(トリメチル)−1,3,5−(トリプロピル)トリシロキサン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,3,5,7−(テトラメチル)−3,7−(ジプロピル)シクロテトラシロキサン、1,5−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3,5,5−(ヘキサメチル)トリシロキサン、1,3−ビス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,1,3,3−テトラキス(アセトキシエチルジメチルシロキシ)ジシラン、1,3,5−トリス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,3,5,7−(テトラメチル)−7−(プロピル)シクロテトラシロキサン、1,3,5−トリス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,3,5,7−(テトラメチル)−7−(プロピル)シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラキス[(メタ)アクリロキシエトキシプロピル]−1,3,5,7−(テトラメチル)シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラキス[(メタ)アクリロキシプロピル]−1,3,5,7−(テトラメチル)シクロテトラシロキサンである。
【0056】
シリコーン含有(メタ)アクリルアミドは、例えば3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミドである。
【0057】
シリコーン含有イタコネートは、例えばトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイタコネート、ビス[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]イタコネート、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイタコネート、ビス[メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]イタコネート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールイタコネート、ビス[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール]イタコネート、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールイタコネート、ビス[メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール]イタコネートである。
【0058】
その他にも、例えばメチル=3−(3−(3・3・3−トリメチル−1・1−ビス((トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル)オキシカルボニル−3−ブテナート、イソプロピル=3−(3−(3・3・3−トリメチル−1・1−ジフェニルジシロキサニル)プロピル)オキシカルボニル−3−ブテナート、3−(3・3・3−トリメチル−1・1−ビス((トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル=3−フェネチルオキシカルボニル−3−ブテナート、3−(3・3・3−トリメチル−1・1−ビス((トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル=3−メトキシカルボニル−3−ブテナート、3−(3・3・3−トリメチル−1・1−ビス((トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル=3−(3−(3・3・3−トリメチル−1・1−ビス((トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル)オキシカルボニル−3−ブテナート、3−(1・3・3・3−テトラメチル−1−((トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル=3−(3−(1・3・3・3−テトラメチル−1−((トリメチルシリル)オキシ)ジシロキサニル)プロピル)オキシカルボニル−3−ブテナート、3−(1・1・3・3−テトラメチル−3−フェニルジシロキサニル)プロピル=3−(3−(1・1・3・3−テトラメチル−3−フェニルジシロキサニル)プロピル)オキシカルボニル−3−ブテナートも用いられる。
【0059】
シリコーン含有スチレンは、例えばトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルエチルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシジメチルシリルエチルスチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキシ]ジメチルシリルエチルスチレン、ヘプタメチルトリシロキサニルエチルスチレン、ノナメチルテトラシロキサニルエチルスチレン、ペプタコサメチルトリデカシロキサニルエチルスチレン、ヘントリアコンタメチルペンタデカシロキサニルエチルスチレン、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シリルエチルスチレン、(トリストリメチルシロキシ)シロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルスチレン、ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)メチルシリルエチルスチレン、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルエチルスチレン、トリメチルシロキシビス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルエチルスチレン、ヘプタキス(トリメチルシロキシ)トリシロキサニルエチルスチレン、トリス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルエチルスチレン、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシロキサニルエチルスチレン、ビス(トリデカメチルヘキサシロキシ)メチルシリルエチルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサニルエチルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルスチレン、トリプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサニルエチルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキサニルジメチルシリルスチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキサニル]ジメチルシリルスチレン、ペンタメチルジシロキサニルスチレン、ヘプタメチルトリシロキサニルスチレン、ノナメチルテトラシロキサニルスチレン、ペプタコサメチルトリデカシロキサニルスチレン、ヘントリアコンタメチルペンタデカシロキサニルスチレン、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シリルスチレン、(トリストリメチルシロキシ)シロキサニルビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)メチルシリルスチレン、ヘプタキス(トリメチルシロキシ)トリシロキサニルスチレン、トリス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、ビス(トリデカメチルヘキサシロキシ)メチルシリルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、トリプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサニルスチレンである。
【0060】
その他にも、片末端(或いは両末端)に炭素−炭素不飽和結合を有するポリシロキサンマクロモノマー類、シリコーン含有フマル酸エステル類が用いられる。
【0061】
N−ビニル複素環式モノマー類は、環状N−ビニルラクタムである。例えばN−ビニル−2−ピロリドン類、N−ビニル−2−ピペリドン類、N−ビニル−3−ピペリドン類、N−ビニル−4−ピペリドン類、N−ビニル−2−カプロラクタム類、N−ビニル−オキサゾリドン類である。
【0062】
N−ビニル−2−ピロリドン類は、例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,4,5−トリメチル−3−エチル−2−ピロリドンである。
【0063】
N−ビニル−2−ピペリドン類は、例えばN−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドンである。
【0064】
N−ビニル−2−カプロラクタム類は、例えばN−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−6−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−5−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−6−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタムである。
【0065】
N−ビニル−オキサゾリドン類は、例えばN−ビニル−オキサゾリドン、N−ビニル−4−メチルオキサゾリドン、N−ビニル−5−メチルオキサゾリドン、N−ビニル−4−エチルオキサゾリドン、N−ビニル−5−エチルオキサゾリドンである。
【0066】
その他にも、N−ビニルイミダゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルジグリコリルイミド、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−5−メチル−3−モルホリノンも用いられる。
【0067】
架橋性多官能モノマー類として、多官能(メタ)アクリル酸エステル、多官能ビニル化合物、多官能アリル化合物、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0068】
多官能(メタ)アクリル酸エステルは、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリコサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートである。
【0069】
多官能ビニル化合物は、例えばビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N−ジビニルビスラクタムである。
【0070】
多官能アリル化合物は、例えばアリル(メタ)アクリレート、ジアリルイタコネート、モノアリルイタコネート、ジアリルスクシネート、ジアリルアジピネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、トリメリット酸トリアリルである。
【0071】
N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド類は、例えばN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレン−ビス(メタ)アクリルアミドである。
【0072】
その他にも、例えばアリロキシエチル(メタ)アクリレート、ジアリロキシエチルイタコネート、モノアリロキシエチルイタコネート、3−ブテノイックアシッド(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、2−ブテノイックアシッド(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ペンタエリスリトールテトラ(3−ブテネート)、ペンタエリスリトールテトラ(クロトネート)、1,3,5−トリ(3−ブテノイックアシッド)フェニルエステル、1,3,5−トリ(2−ブテノイックアシッド)フェニルエステル、トリ(3−ブテノイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(2−ブテノイルオキシエチル)イソシアヌレート、[2−(1’−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−4−アリル]−N,N−トリレンカルバマート、4−アリル−2−(N−(メタ)アクリロイルアミノトリイル)−N’−カルバマート、2,4−ジアリル−N,N’−トリレンビスカルバマート、[2−アリル−4−(1’−(メタ)アクリロイルオキシエチル)]−N,N’−トリレンカルバマート、2−アリル−4−(N−(メタ)アクリロイルアミノトリイル)−N’−カルバマート、2,4−(1’,1’’−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N’−トリレンビスカルバマートが用いられる。
【0073】
前記化合物は、一種類でも、二種類以上が用いられても良い。
【0074】
又、前記流動性混合物に必要に応じて、前記セルロース誘導体以外の他の水溶性高分子が用いられても良い。中でも、ポリビニルアルコールの使用は好ましかった。
【0075】
本発明の実施に際して、先ず、水溶性化合物(C)が水に溶解される。次いで、セルロース誘導体(B)が添加される。この際、ままこが出来ないような注意が必要である。セルロース誘導体添加後に、十分な混練が行われる。その結果、ペースト状の試料が得られる。化合物(C)として水溶性化合物が選択されなかった場合、化合物(C)はペースト状試料中で適度に均一に分散しておれば良い。すなわち、セルロース誘導体(B)および化合物(C)が適度に均一に分散しておれば、電離放射線照射による反応で得られたゲルは、透明性に優れている。尚、化合物(C)が疎水性の基を持つ化合物(モノマー)である場合、得られたゲルは機械的強度が富んでいた。
【0076】
セルロース誘導体(B)および化合物(C)のペースト状サンプルに照射する放射線には、α線、β線、γ線、電子線、X線が用いられる。工業的生産の観点からすると、Co60からのγ線、加速器による電子線、X線の使用が好ましい。1MeV以下の低エネルギー電子線加速器を用いることも出来るが、1MeV以上の中エネルギー(又は高エネルギー)電子線加速器の使用が好ましい。電離放射線の照射線量は、好ましくは、1〜200kGyである。より好ましくは、5〜100kGyである。照射線量が少なすぎると、架橋度が十分でない。この為、得られたコンタクトレンズの機械的強度が十分でない。照射線量が多すぎると、架橋度が過度になる。かつ、分解が進行する。この為、得られたコンタクトレンズは脆い。
【0077】
前記ペースト状試料の作成に際して、水溶性の有機系希釈剤が用いられても良い。水溶性の有機系希釈剤は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。有機系希釈剤の量は、例えば0.1〜10重量%である。好ましくは、0.2〜5重量%である。このような有機系希釈剤を併用することで、分散性が向上した。
【0078】
尚、本発明の実施に際して、紫外線吸収剤、着色剤が、必要に応じて、用いられる。これらの剤が用いられた場合、特定波長の光がカットされる。尚、前記剤は重合性タイプであっても良い。
【0079】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明が説明される。但し、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0080】
尚、下記実施例のヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬工業株式会社製)の2重量%水溶液(20℃)の粘度は1,000〜5,000mPa・sであった。下記実施例のメチルセルロース(信越化学工業株式会社製)の2重量%水溶液(20℃)の粘度は4,000mPa・sであった。下記実施例のヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製)の2重量%水溶液(20℃)の粘度は4,000mPa・sであった。下記実施例のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製)の4重量%水溶液(20℃)の粘度は40〜48mPa・sであった。前記ポリビニルアルコールのケン化度は87〜89%、重合度は2,400であった。
【0081】
[実施例1]
0.2gのトリコサエチレングリコールジメタクリレート(23GDMA)が79.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)が加えられた。特に、ままこが出来ないように加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。このペースト状試料がコンタクトレンズ成形型に充填された。脱気が行なわれた。この後、電離放射線が照射(照射線量10kGy)された。これにより、重合反応と架橋反応が進行した。得られたゲルは24時間に亘って多量の水中に浸けられた。更に、生理食塩液中に数時間浸けられた。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0082】
[実施例2]
0.03gのエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)が77.97gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。更に、2gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)が加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は50kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0083】
[実施例3]
0.2gの23GDMAが77.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。更に、2gの2−HEMAが加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は50kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0084】
[実施例4]
1gの2−HEMAが77gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。更に、2gのメチルメタクリレート(MMA)が加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は20kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0085】
[実施例5]
0.2gの23GDMAが76.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。更に、2gの2−エトキシエチルメタクリレート(EEMA)及び1gのMMAが加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は20kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0086】
[実施例6]
0.2gの23GDMAが76.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。更に、2gの2−メトキシエチルメタクリレート及び1gのEEMAが加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は20kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0087】
[実施例7]
0.2gの23GDMAが76.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。更に、1gのトリエチレングリコールモノメチルエーテルモノメタクリレート及び2gのEEMAが加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は20kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0088】
[実施例8]
0.2gのテトラエチレングリコールジメタクリレート(4GDMA)が78.5gのエタノール(2重量%)水溶液に加えられ、攪拌が十分に行われた。1gの片末端メタクリル基含有ポリジメチルシロキサン(分子量約1,000)と0.3gのMMAとの混合物が、前記混合水溶液中に加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は50kGyである。得られたゲルの水中浸漬時間は48時間である。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0089】
[実施例9]
1gの両末端メタクリル基含有ポリジメチルシロキサン(分子量約1,000)と0.5gのMMAとの混合物が、78.5gのエタノール(2重量%)水溶液に加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は50kGyである。得られたゲルの水中浸漬時間は48時間である。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0090】
[実施例10]
0.2gの23GDMAが57.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。更に、20gのポリビニルアルコール(5wt%)水溶液が加えられ、攪拌が十分に行われた。又、2gのMMAが加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、20gの粉末状HPCが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は20kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0091】
[実施例11]
0.2gの23GDMAが79.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、15gの粉末状HPC及び5gのメチルセルロースが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は30kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0092】
[実施例12]
0.2gの23GDMAが79.8gの水に加えられ、攪拌が十分に行われた。次いで、15gの粉末状HPC及び5gのヒドロキシプロピルメチルセルロースが加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は30kGyである。得られたコンタクトレンズは柔軟性に富む高含水性ソフトコンタクトレンズであった。その他の特性が表−1に示される。
【0093】
[比較例1]
20gの粉末状HPCが80gの水に加えられた。混合が十分に行われ、ペースト(糊)状の試料が得られた。この後、実施例1に準じて行なわれた。但し、照射線量は50kGyである。得られたコンタクトレンズは脆かった。その他の特性が表−1に示される。本比較例は本発明の化合物(C)が用いられなかった例である。
【0094】
[比較例2]
66gの粉末状HPCと、33gのN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)と、1gのEDMAとが充分に混合された。特に、HPCとDMAAとは相溶状態である。更に、0.2gのベンゾイルパーオキサイド(BPO:重合開始剤)が加えられた。十分な混合が行われた後、この混合物がコンタクトレンズ成形型に充填された。130℃で10分間の保持がなされ、重合反応が行われた。得られたゲルが多量の水中に24時間に亘って浸けられた。更に、生理食塩液中に数時間に亘って浸けられた。得られたコンタクトレンズは脆かった。その他の特性が表−1に示される。本比較例のコンタクトレンズは特許文献1のコンタクトレンズに相当する。
【0095】
[比較例3]
50gの粉末状HPCと、40gのDMAAと、9gのMMAと、1gのEDMAとが充分に混合された。特に、HPCとDMAAとは相溶状態である。更に、0.3gのBPOが加えられた。この後、比較例2に準じて行われた。得られたコンタクトレンズは脆かった。その他の特性が表−1に示される。本比較例のコンタクトレンズは特許文献1のコンタクトレンズに相当する。
【0096】
[特性]
上記各例のソフトコンタクトレンズの特性が表−1に示される。
表−1

*酸素透過係数:単位は(cm/sec)・(mLO/mL・mmHg)
*ゲル分率 :得られたゲルが恒量に達するまで凍結乾燥された。この乾燥試料が秤量(初期乾燥重量)された。200メッシュのステンレス網に入れられ、大量の水に24時間浸漬された。未架橋成分は水側に移る。不溶解分のみが金網中に残る。不溶解分が真空乾燥された後、不溶解分が秤量された。下式に従ってゲル分率が算出された。ゲル分率が高いことは、溶出物が少ないことを示す。従って、ゲル分率が高い方が好ましい。
ゲル分率(%)=(不溶解分の重量/初期乾燥重量)×100
*装用感 :コンタクトレンズが10人のパネラーに装着された。バネラーの自覚症状(異物感や濡れ不良による曇りの不快感)を基に評価が行われた。自覚症状が1名以下の場合は◎印、2〜3名の場合は○印、4〜5名の場合は△印、6名以上の場合は×印で示される。
*形状保持性 :10人のパネラーによるコンタクトレンズ装着前でのレンズ取扱い易さ(レンズ形状を保持している方が取扱い易い)で評価が行われた。取扱い難いが1名以下の場合は◎印、2〜3名の場合は○印、4〜5名の場合は△印、6名以上の場合は×印で示される。
*比較例4のコンタクトレンズは、1日使い捨て型(デイスポーザブル)の市販のソフトコンタクトレンズ
*比較例5のコンタクトレンズは、市販のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ
【0097】
表−1から判る通り、上記実施例のコンタクトレンズは次の特長を有する。高含水性ソフトコンタンクトレンズである。ゲル分率が高い。従って、溶出物が少ない。これは、安全性が高いことを意味する。高含水性(含水率85%以上)であることから、酸素透過性が良い。水濡れ性に優れ、装用感に優れている。高含水性であるにも拘らず、形状保持性に優れている。実用上問題のない充分な強度を有する。透明性に優れている。
【0098】
これに対して、セルロース誘導体のみが用いられた比較例1のコンタクトレンズは、破断伸度が小さい。かつ、破断強度も小さい。かつ、形状保持性も劣っている。
【0099】
特許文献1に相当する比較例2,3のコンタクトレンズは、破断伸度が小さい。かつ、形状保持性も劣っている。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズの製造方法において、
セルロース誘導体と、前記セルロース誘導体に結合し得る重合可能な化合物と、水とを含む流動性混合物に、放射線照射が行われる工程
を具備することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。
【請求項2】
前記流動性混合物がコンタクトレンズ成形型に充填される充填工程と、
前記充填工程の後、前記流動性混合物に放射線照射が行われる放射線照射工程
とを具備することを特徴とする請求項1のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項3】
前記放射線照射により、前記化合物が前記セルロース誘導体に結合する結合反応と、前記化合物が重合する重合反応と、前記セルロース誘導体同士が架橋する架橋反応とが生ずる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項4】
水が電解質物質及び/又は水溶性有機系希釈剤を含有する水溶液である
ことを特徴とする請求項1のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項5】
前記セルロース誘導体100質量部に対して、前記化合物が1〜17.6質量部、前記水が50〜1900質量部である
ことを特徴とする請求項1のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項6】
前記セルロース誘導体が、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びアルキルセルロースの群の中から選ばれる一種または二種以上である
ことを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4、又は請求項5のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項7】
前記化合物は炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーである
ことを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4、又は請求項5のコンタクトレンズの製造方法。
【請求項8】
前記放射線はγ線、X線、及び電子線の群の中から選ばれる放射線であり、線量が1〜200kGyである
あることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかのコンタクトレンズの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8いずれかのコンタクトレンズの製造方法によって得られてなるコンタクトレンズ。
【請求項10】
セルロース誘導体が架橋してなるコンタクトレンズであって、
前記架橋は、
セルロース誘導体を介しての架橋と、
前記セルロース誘導体に結合し得る重合可能な化合物の重合体を介しての架橋
とを具備してなる
ことを特徴とするコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記セルロース誘導体100質量部に対して前記化合物が1〜17.6質量部の割合である
ことを特徴とする請求項10のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記セルロース誘導体が、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びアルキルセルロースの群の中から選ばれる一種または二種以上である
ことを特徴とする請求項10又は請求項11のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記化合物は炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーである
ことを特徴とする請求項10又は請求項11のコンタクトレンズ。
【請求項14】
含水率が85〜95%、破断伸度が150〜270%、破断強度が2〜15Kg/cmである
ことを特徴とする請求項9〜請求項13いずれかのコンタクトレンズ。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−203389(P2011−203389A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68944(P2010−68944)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000152848)株式会社日本コンタクトレンズ (1)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】