説明

コンタクトレンズの製造方法と、それに用いる製造装置

【課題】型の浪費を無くして、安価にコンタクトレンズw0を製造する。
【解決手段】上側に雄型1a,101a,201aを、そして下側に雌型1b,101b,201bを位置させて、雌型に重合性材料w1を供給し、次に雄型と雌型とを上下へ相対変位させて成形キャビティCTを形成させる。成形キャビティCT内にて、前記重合性材料w1を、雌型と雄型とで上下から挟みつけた状態のまま重合させて、コンタクトレンズw0の成形を行う

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズの成形を合理的に実施することを可能としたコンタクトレンズの製造方法と、この方法の実施に使用されるコンタクトレンズの成形型及びそれに用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズの成形手法として、例えば、特許文献1〜5に開示されているようなキャストモールド法がある。
このキャストモールド法では、例えば、射出成形機に取り付けた金型により、プラスチック材料からなる雌雄の成形型を作成する。そして、成形型を嵌合状に組み合わせて成形型の内側に成形キャビティを形成する。この成形キャビティ内に重合性材料(モノマー)を供給して重合させることにより、コンタクトレンズ半製品を成形する。
ここで使用される成形型は一般には使い捨てとされ、例えば、1個のコンタクトレンズの成形に雌雄一対の成形型が消費される。
【0003】
この手法には、次に示すような問題点がある。
a:成形型に使用されるプラスチック材料は、医療用中間材料として高度に管理されて生産されたもので高価であり、また使い捨てであるので成形型の各部の寸法精度を確保するには高いコストが要求される。
b:成形型のみで成形されたコンタクトレンズの外周縁(エッジ部)の形状を安定的に滑らかな曲面とするには、雌雄の成形型の嵌合状態を注意深く管理することが必要であり、コンタクトレンズの外周縁の全面を滑らかな曲面とすることは殆ど不可能である。
c:雌雄の成形型の内方に形成された成形キャビティ内には、成形キャビティの容量よりも多い量の重合性材料を供給し、オーバーフローさせた状態で重合させるが、成形済みのコンタクトレンズ半製品のエッジ部の、重合後の重合性材料を分離させるさいに生じるバリやリング状の不要物を、分別し廃棄する処理を行う必要がある。
d:重合後の重合性材料を型から分離させるさいに、型を変形させたり、また破壊したりする処理が必要であると、型の使い捨ては必然的となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−166436号公報
【特許文献2】特開2000−289041号公報
【特許文献3】特開2000−185325号公報
【特許文献4】特開平11−320699号公報
【特許文献5】特開平06−170857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のキャストモールド法の利点を維持しながら、既述の問題点を改良することの出来るコンタクトレンズの製造方法と、その成形型及び製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、コンタクトレンズの製造方法は、コンタクトレンズの、ベースカーブを成形するための凸面部分を有する雄型と、コンタクトレンズの、フロントカーブを成形するための凹面部分を有する雌型とからなる成形型を形成し、前記雄型及び前記雌型は前記凸面部分が上側に、そして凹面部分が下側に位置されて、前記雄型及び前記雌型を非接触状態で対向させて、前記凸面部分と前記凹面部分との間に、周囲が開放された状態に保持される成形キャビティを形成し、該成形キャビティ内の重合性材料が重合硬化する過程で、前記雄型及び前記雌型の相対距離を短縮することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコンタクトレンズの製造装置は、コンタクトレンズのベースカーブを成形する凸面部分を有する雄型と、コンタクトレンズのフロントカーブを成形する凹面部分を有する雌型と、前記雄型及び前記雌型を上下へ相対変位させるとともに、前記雄型及び前記雌型を非接触状態で対向させる型駆動部と、前記雄型及び前記雌型内に挟まれた重合性材料の、重合開始から終了までの、前記雄型及び前記雌型の相対距離を狭める制御をする制御部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重合性材料の重合が進むにつれて収縮してゆく重合性材料を、雌型と雄型とが相対距離を狭めながら挟みつけた状態のまま重合させる。従って、重合性材料は常に雌型と雄型と密着した状態に保たれるため、形状をコンタクトレンズ側に写し取ることができる。また、剥離装置を具備し、剥離のために雄型及び雌型を変形させることなく剥離させるので、雄型及び雌型は多数回使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るコンタクトレンズの製造装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】上記製造装置の一部を示す拡大図である。
【図3】上記製造装置の一部である雄型及び雌型などを示す断面図である。
【図4】上記製造装置で製造されるコンタクトレンズの断面図である。
【図5】上記製造装置の型駆動部の作動を示す図である。
【図6】上記製造装置の雄型及び雌型と検出センサの関係を示す図である。
【図7】上記製造装置のリング部材とコンタクトレンズとの関係を示す図である。
【図8】本発明に係るコンタクトレンズの製造装置の第2の実施例を示す図である。
【図9】本発明に係るコンタクトレンズの製造装置の第3の実施例の一部を示す図である。
【図10】上記第3の実施例の製造装置で製造されたコンタクトレンズ半製品の断面を示す図である。
【図11】上記第3の実施例で使用される切削装置の図である。
【図12】本発明に係るコンタクトレンズの製造装置の第4の実施例の一部を示す図である。
【図13】上記第4の実施例の製造装置の一部を変更した製造装置を示す図である。
【図14】上記第5の実施例の製造装置の一部を変更した製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
先ず、本発明に係るコンタクトレンズの製造装置の一実施例について説明する。
〈全体概要〉
図1は上記製造装置の一実施例を示す図であり、図2は図1の一部を拡大して示す拡大図である。
製造装置100は雄型1aと雌型1bからなる成形型1、雄型1a及び雌型1bを上下へ相対変位させる型駆動部2、成形型1を加熱する加熱部3、成形型1に対し重合性材料を供給する材料供給部4、及び、型駆動部2が落下させたコンタクトレンズw0を後工程へ搬出するレンズ搬出部5を備えている。
【0011】
〈成形型1の説明〉
図3Aにおいて、雄型1aは全体として底壁a1付の円筒形状を呈するもので、底壁a1の下面が下方へ凸となる湾曲面からなる成形面a2を有し、周面壁a3の上部に径大部a4を形成されている。成形面a2は図4に示すコンタクトレンズw0の角膜側の曲面であるベースカーブBCを成形するためのもので、例えば型中心線回りb1の回転軌跡面であり、鏡面状に加工され、外周の直径は、コンタクトレンズw0の直径よりやや小さい大きさである。
【0012】
一方、雌型1bは、全体として頂壁c1付の円筒形状を呈するもので、頂壁c1の上面が下方へ凹となる湾曲面からなる成形面c2を有し、周面壁c3の下部に径大部c4を形成されている。成形面c2は図4に示すコンタクトレンズw0の前側の曲面であるフロントカーブFCを成形するためのもので、例えば型中心線b2回りの回転軌跡面であり、外周の直径は、コンタクトレンズw0の外周に大略合致した大きさである。このように、成形面a2の直径よりも成形面c2の直径の方がやや大きい。
【0013】
これら雄型1aと雌型1bでコンタクトレンズw0を製造するときは、雄型1aの型中心線b1と、雌型1bの型中心線b2とを合致させ、図3Aに示すように、これら雄型1aと雌型1bとの間に重合性材料w1を供給した後、これら雄型1a及び雌型1bを図3Bに示すように近接させ、非接触状態で対向させる。これにより、雄型1aと雌型1bとの間に外周縁の全周範囲が型外空間に開放された状態の成形キャビティCTが形成される。この成形キャビティCT内に分注した重合性材料w1は、図3Cに示すように、雄型1a及び雌型1bで挟圧されて、雄型1a及び雌型1bに忠実に倣いコンタクトレンズ状になる。ここで、重合性材料w1を、加熱或いは紫外線照射などして重合させると、コンタクトレンズw0が成形される。この後、雄型1aと雌型1bとを離反させてコンタクトレンズw0をこれら雄型1a及び雌型1bから離脱させ型外へ取り出す。
【0014】
このような製造処理において、コンタクトレンズw0の外周縁d1は成形型1によってはその外形は成形されず、重合性材料w1の性状(比重、粘度、表面張力など)に従い自由状態下で成形される。コンタクトレンズw0の外周縁d1は、雄型1aよりもレンズ半径方向の外方へ張り出した態様として、成形される。
尚、上記したコンタクトレンズw0の製造において重合性材料w1を紫外線で重合させる場合には、雄型1a及び又は雌型1bは紫外線を透過させる材料を使用する必要がある。
【0015】
型材料は、紫外線透過率、熱伝導率、重合性材料との撥水性、離型性、濡れ性、表面張力、表面処理との相性、耐久性、素材の加工性、などの特性から選択される。使用される材料として、アルミ、銅、真鍮、ステンレス等合金鋼、などの金属材料、石英ガラス、水晶などの非金属材料、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリ四弗化エチレン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料が使用出来る。雄型雌型は同じ材料である必要はなく、雌型雄型それぞれに要求される特性を有する材料を選択する。
【0016】
型表面処理は撥水性、離形性などモノマーとの相性を目的として行うコーティング、耐久性向上、防錆、コーティングの下地を目的として行うメッキ、密着力の向上を目的として行うプラズマ処理がある。表面処理は雌型/雄型への処理方法の組み合わせ、処理範囲は全体、または部分へ、光学特性、生体安全性を考慮の上選択する。型材料の選択、型表面処理の選択は、硬化した重合性材料と型との付着力に影響を与える。
【0017】
〈型駆動部2の説明〉
型駆動部2は、定置される本体フレーム6、上軸7、駆動機構8、及び、型位置制御部9を備えている。
本体フレーム6は縦長いもので、方形ブロックからなる台部6a、この台部6aから起立された支柱部6b、及び、支柱部6bから前方へ片持ち状に張り出された梁部6cを有している。台部6aの上面中央位置には上下向きの円形孔e1が形成されており、この円形孔e1は上端に径大箇所を形成されている。この径大箇所にはこれと同心に雌型1bの径大部c4が嵌合状に圧入されて固定されており、また台部6aの上面のうち、雌型1bを取り巻く環状範囲には、環状の溝形部材11が固定されている。
【0018】
梁部6cは台部6aの真上に位置されており、円形孔e1と同心にこれよりも大きな径の円形透孔e2が形成されている。この円形透孔e2には案内筒12が同心に挿着されている。そして、この案内筒12内にはこれと同心に上下向きの上軸7がこれの中心線b3回りの回転を規制された状態で上下摺動のみ可能に挿入されており、上軸7の下端面には下向きの円形孔e3が形成されている。この円形孔e3は下端に径大箇所を形成され、この径大箇所には雌型1bと同心に雄型1aの径大部a4が嵌合状に圧入されて固定されている。
【0019】
図5は型駆動部2の作動を示す図である。上軸7の下端面で雄型1aの全周を取り囲む環状範囲にはリング部材13が雄型1aと同心に固定されている。リング部材13の内孔は円形とされ、雄型1aの径大部a4より下方の外周面に、上下摺動自在に外嵌されると共に、図示しないスプリングの弾力或いは磁石の磁力などで上向きへ付勢された状態となっている。したがって、上軸7が案内筒12に対して図5Aに示すようにその最上位置まで上昇されたときは、リング部材13は、これの上面が上軸7の下端面に押されて雄型1aの周面壁a3に外嵌された状態で、上向きの付勢力に抗して一定距離だけ降下変位した状態となる。一方、上軸7が案内筒12に対して図5Bに示すように一定距離以上に降下されると、図示しないスプリング又は磁石などの上向きの付勢力によりリング部材13が上昇変位されてこれの上面が上軸7の下端面に衝接されて上軸7に対するリング部材13のそれ以上の相対的な上昇変位が規制される。したがって、リング部材13の上面は案内筒12の下端面から離反した状態になる。
【0020】
駆動機構8は梁部6cの上側にボルトを介して固定された支持部材14と、この支持部材14の上部に固定されたサーボモータ15と、このサーボモータ15の出力軸であり上軸7の雌ネジ7aに螺入されたネジ軸16とを備えている。そして、サーボモータ15が正逆に回転作動されることによりネジ軸16が正逆に回転されて、上軸7が上下駆動されるようになっている。
【0021】
型位置制御部9(図2)は、図3Aに示すように、雄型1aと雌型1bとの間に供給された重合性材料w1が、雄型1a及び雌型1bの近接作動により、図3Cに示すように、雄型1a及び雌型1bに忠実に倣いコンタクトレンズ状になるとき、この重合性材料w1の外周縁d1の位置を検出する光学式の検出センサ9aを有しており、この検出センサ9aの検出信号に関連してサーボモータ15を、その検出信号に対応した量だけ回転させる。
【0022】
図6Aは、雌型1bと検出センサ9aとの関係を示す図である。検出センサ9aは、光線f1の出射と入射との時間関係で重合性材料w1の外周縁d1の位置を検出して、外周縁d1の直径を把握し、この直径が目的とするコンタクトレンズw0の直径に合致するようにサーボモータ15を制御する。
【0023】
図6Bは、重合性材料w1が、重合が進むにつれて収縮して硬化するとき、重合開始時点(時刻t0)から完了(時刻t1)までの変化を、外周縁d1の位置の、初期値(p0)から目標値(p1)までの変化については実線iにより、雄型1a、雌型1bの中央における重合性材料w1の厚さTHの初期値(TH0)から目標値(TH1)までの変化については二点鎖線kにより示している。
【0024】
尚、点線jは、サーボモータ15によって型1a、1bの近接制御を行わないときの、外周縁d1位置であって、重合が進むにつれて収縮し、検出センサ9aから離れ、最終的にはp2に到達する様子を示している。この際、収縮による形状変化により雄型1aと雌型1bからの剥離が発生する。
【0025】
本実施例では、重合を進めていく過程で、序々に雄型1aと雌型1bとの相対距離THをTH0からTH1まで狭めてゆく。この狭める距離は、検出センサ9aによって検出され、重合性材料w1の外周縁d1の位置に基づいて制御される。この動作により、重合性材料w1は常に雄型1aと雌型1bとに押し付けられた状態となり、外周縁d1は雄型1aから序々にはみ出してくる。外周縁d1の位置が、位置p1に達することを検出センサ9aで検出するまで制御装置9がサーボモータ15を制御作動させる。すなわち、重合性材料w1の厚さに合致する前記相対距離THを2点鎖線kのように変化させたときに、実線iとなるような変化が観測されれば、重合性材料w1の重合は計画通りに行われていると判断出来る。
【0026】
検出センサ9aによって検出される外周縁d1のはみ出し位置が実線iに従ったはみ出し位置の状態を保っているかどうかを監視し、はみ出し位置の変化が起こったときには次回のコンタクトレンズの製造において、重合性材料w1の分注量を増減させる。はみ出し位置の変化が少ないのは(或いは多い)、分注量が少ないからであり(或いは多い)、これを反映することにより、実線iとなるような変化が観測されるまで修正を繰り返す。
【0027】
〈加熱部3の説明〉
図2に示すように、加熱部3は雄型1aを電力で加熱するヒータ17aと、雌型1bを電力で加熱するヒータ17bとを具備すると共に、これらヒータ17a、17bに通電することで雄型1aと雌型1bのそれぞれを独立して自動的に任意な温度に加熱調整出来る構成とされている。このさい、一方のヒータ17aは雄型1aの内孔に埋設されて円形孔e3内に位置されており、また他方のヒータ17bは雌型1bの内孔に埋設されて円形孔e1内に位置されている。
【0028】
〈材料供給部4の説明〉
図1及び図2に示すように、材料供給部4は、上軸7に結合部材18を介して同体状に固定されたシリンダ装置19と、雌型1bの成形面c2上に重合性材料w1を分注する分注ノズル20と、重合性材料w1を分注ノズル20へ供給するためのポンプ21と、重合性材料w1を貯溜するための容器22とを備えている。シリンダ装置19は型駆動部2の作動に関連したタイミングで空気圧などにより左右方向へ出入り作動される出力ロッド19aを具備しており、この出力ロッド19aの先端に分注ノズル20が固定されている。ポンプ21は容器22内の重合性材料w1を適当なタイミングで必要量だけ吸引し分注ノズル20まで送り出すものである。
【0029】
〈レンズ搬出部5の説明〉
図2に示すように、レンズ搬出部5は、型駆動部2の雄型1aの真下位置に落下された重合硬化の終了した重合性材料w1を受け入れるための多数のトレー23と、これらのトレー23を適当なタイミングで一定経路上を移動させるための搬送装置24とからなっている。トレー23は底面を軟質材で形成して、受け入れる重合性材料w1に過大な衝撃が付与されないようにするのがよい。搬送装置24は、供給コンベア24a、供給滑りガイド24b、水平搬送部24c、搬出滑りガイド24d、及び、搬出コンベア24eを備えている。供給コンベア24aはトレー23を型駆動部2の右側位置に移動させ、型駆動部2の作動に関連した適当なタイミングで、供給滑りガイド24b上を滑り移動させて水平搬送部24cの搬送始端g1に移動させる。水平搬送部24cは複数の案内車25a、25b、25c、25dに巻き掛けられた搬送チェーン26を介して、搬送始端g1に位置したトレー23を上軸7が一定高さ以上に上昇された時点で左側へ水平移動させ、雄型1aの真下で一時停止させた後、再び水平移動させて搬送終端g2に移動させ、ここからは搬出滑りガイド24d上を滑り移動させて搬出コンベア24eの搬送始端に移動させる。搬送チェーン26はトレー23の両脇下面を支持して搬送するが、雄型1aとは干渉しない形態とされている。搬出コンベア24eはこれの搬出始端に位置したトレー23を後工程まで搬出する。
【0030】
次に上記した本実施例の製造装置を使用することによるコンタクトレンズの製造例について説明する。
重合性材料w1を容器22内に貯溜させておく。重合性材料w1としては、例えばn−ブチルアクリレート、メチルメタアクリレートなどのアクリル酸エステル、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジメチルメタアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類、アクリル酸、メタアクリル酸などのアクリル酸系、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2.3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどのアクリル酸系エステル類、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレートなどのシリコーン化合物などが挙げられる。
【0031】
これらの材料は単独で使用しても或いは2種以上を混合して使用してもよい。また重合性材料w1は好ましい重合を行わせるため、架橋剤、重合開始剤、増感剤などの必要な添加剤が混合されたものとされる。
【0032】
カルボニル基を含むメタクリル酸などのイオン性モノマーの使用量は1%未満に控え、FDA分類でII類となるN−ビニルピロリドン、メチルメタクリレートからなる非イオン性素材を用いることが好ましい。その理由は、イオン性ソフトコンタクトレンズは脂質が付着し汚れやすく、アレルギー障害などの眼障害の原因となりやすく、また脂質が付着すると酸素透過性が落ち、眼にとっては良くないからである。その点、非イオン性ソフトコンタクトレンズは、脂質が付着しにくいため、眼障害の発生率も下がり、レンズの使用開始時と比較しても酸素透過性の低下が小さい。
【0033】
製造装置全体の制御は、制御部9により行われる。
初期状態では、水平搬送部24c上にはトレー23が存在しておらず、雄型1aは上軸7と共に図1及び図5Aに示すように最上位置に位置され、また材料供給装置4のシリンダ装置19は図1に示す高さに保持されるのであり、この時点では出力ロッド19aはシリンダ装置の本体内に退入した状態となっている。
【0034】
この状況の下で、製造装置100の作動を開始させると、先ず材料供給部4のシリンダ装置19の出力ロッド19aが図2に示すように左方へ進出し、分注ノズル20を通じて図3Aに示すように雌型1bの成形面c2上に一定量の重合性材料w1を供給する。この供給が終了した後、出力ロッド19aは元位置に復帰されてシリンダ装置19は短縮状態となる。
【0035】
一方で、各ヒータ17a、17bに通電され、雄型1a及び雌型1bがその対応するヒータ17a、17bで加熱され予め計画された温度に制御される。
次にサーボモータ15が作動され、上軸7が降下される。これにより、雄型1aの成形面a2が図5Bに示すように雌型1bの成形面c2に近づき、成形面c2上の重合性材料w1を図3Bに示すように押圧し、雄型1a及び雌型1bに忠実に倣いコンタクトレンズ状に径大化させる。そして、重合性材料w1の外周縁d1が図3Cに示すように雄型1aの成形面a2の外周まで拡大されたとき、検出センサ9aがこれを検出してサーボモータ15を停止させ、雄型1aの下降を停止させる。この停止時点を初回停止時点と呼ぶこととする。この初回停止時点の後、雄型1aと雌型1bの間の空間は最終段階の成形キャビティCTとして機能するのであり、この成形キャビティCTは重合性材料w1の成形中、常に、外周縁が型外空間に開放された状態に保持される。
【0036】
成形キャビティCT内では重合性材料w1が成形面a2、c2から熱を付与されて温度上昇すると、重合性材料w1のラジカル重合が開始される。
並行してサーボモータ15が作動され雄型1aを下降させる。この下降により重合性材料w1がコンタクトレンズ状に成形されて、重合物の外周縁d1は雄型1aの成形面a2の外周からその半径方向へはみ出す。このときのはみ出しは、リング部材13により引き剥がしを行うため、雄型1aの外周からはみ出させている。はみ出した外周縁d1が位置p1に達したことを検出センサ9aが検出すると制御部9により、サーボモータ15を停止させる。
【0037】
重合が終了するに必要な時間が経過したとき、成形キャビティCT内の重合性材料w1は、目的とする形状の、コンタクトレンズw0となる。
またコンタクトレンズw0の外周縁d1は表面張力により形成されるため、ベースカーブとフロントカーブを結ぶ滑らかな曲面となる。
重合性材料w1の重合が終了するのに必要な時間が経過した後、雄型1aと雌型1bを型中心線方向b1、b2へ離反させると、表面処理効果及び重合性材料w1の重合による収縮により先に雌型1bから離脱する。従って、コンタクトレンズは雄型1a側に残った状態となり、雄型1aとともに上昇する。このように、雄型1aと雌型1bは、繰り返し使用出来るため、成形面a2、c2はコーティングやプラズマ処理などによる表面処理を施しても、コストの上昇分は分散される。
【0038】
上軸7が最上位置の近傍まで上昇したとき、リング部材13の上面が案内筒12の下端面に衝接する。以後、上軸7が最上位置に到達するまで、リング部材13は案内筒12により下方へ押されて雄型1aの周面壁a3に案内されつつ雄型1a上をこれに付与される上向きの付勢力に抗しつつ略水平姿勢のまま維持される。図7はリング部材13と重合性材料w1との関係を示す図であるが、リング部材13の姿勢の維持により、リング部材13は雄型1aに密着されたコンタクトレンズw0のうち雄型1aの半径の外側へ張り出した外周部d2に衝接し、重合性材料w1を下方へ押して雄型1aから離脱させ真下へ落下させる。雄型1aと雌型1bは次のコンタクトレンズw0の作成に利用される。
この一方では、上軸7の上昇が適当に進行したとき、供給コンベア24aから1つのトレー23が供給滑りガイド24b上を滑り移動されて水平搬送部24cの搬送チェーン26上に供給され、水平搬送部24cはこのトレー23を雄型1aの真下に移動させ一時停止させる。そして、雄型1aから離脱されて落下する重合性材料w1をこのトレー23内に受け取り、一時停止の時間が経過した後、再びこのトレー23を搬出側へ移動させ、搬出滑りガイド24d上を滑り移動されて搬出コンベア24e上に送り出される。搬出コンベア24eはこのトレー23を次工程へ向け搬送する。
こうして実施例の製造装置100から搬出された重合性材料w1は次工程以降で、膨潤、水和、外観検査、ブリスタ容器内への収納などの処理を受けて製品化される。
【0039】
本実施例においては、ガイドされて離合する雄型、雌型により、全外周縁が型外空間に開放された態様の成形キャビティが形成され、重合性材料は雄型と雌型とで上下から挟みつけられた状態のまま重合されてコンタクトレンズの成形を行うため、サーボモータの押圧により型自体が変形することがない。
また、余分となる重合性材料が無いため、バリとして雄型、雌型に付着して残ってしまうこともなく、雄型及び雌型は連続的に多数回使用出来る。
雄型及び雌型を多数回繰り返し使用する事により、雄型及び雌型の材料や表面処理にコストをかけることが可能になり、より生産性が高まるという効果がある。
コンタクトレンズの外周の縁は表面張力により形成されるため、ベースカーブとフロントカーブが接合する外周の縁が滑らかな曲面のコンタクトレンズを製造することが出来る。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明に係わるコンタクトレンズ製造装置の、印刷を含む実施例について説明する。
印刷には、眼の美容効果を目的にした、装用者の瞳孔範囲に、装飾用の独特のパターンを1種類以上の着色剤で着色したカラーコンタクトレンズ、及び、製造管理するための、製品の識別用の回転マーク、反転マーク、製品名、ブランド名、ロットNo、”サンプル”等の装飾用以外のパターンまたはマークの印刷がある。
これらの製品を提供することが出来ることが本装置の特徴である。
図8に実施例の製造装置200を示す。製造装置200は雄型101aと雌型101bを上下へ相対変位させる型駆動部102、重合性材料を供給する分注ノズル111、印刷装置110及びコンタクトレンズw0を後工程へ搬出するレンズ搬出部5を備えている。
【0041】
印刷装置110は、ハ方向に回転自在に支持された金属又はナイロン製の印刷凹版プレート117、インクカップ124、印刷パット116を有している。印刷凹版プレート117の凹部に、インクカップ124内のインク(カラーインク)121を付着させ、ハ方向に回転させる。軸109を中心に印刷パット116を印刷凹版プレート117に押し付け、印刷凹版プレート117に付着したインクを転写させる。その後、印刷パット116を180度反転させ、シリンダ128でロ方向に前進させる。この状態で雄型101aを下降すると、雄型101aにインクを付着させることが出来る。
【0042】
印刷装置110をロ方向逆方向に後退させた後、シリンダ112により、分注ノズル111の先端を容器120に漬け、分注装置119により重合性材料w1を吸い上げ、雌型101bの直上に位置させ分注する。重合性材料w1の重合を開始させて、重合終了するまでに雄型101aと雌型101bの隙間を僅ずつ狭める。隙間を狭めることにより重合性材料w1が偏平化されて、重合物の外周縁d1が雄型101aの成形面の外周からその半径方向へはみ出す。このときの外周縁d1のはみ出し量を検出センサ9aで監視しながら、雄型101aと雌型101bの隙間を僅ずつ狭める。外周縁d1が位置p1に達したことを検出センサ9aが検出すると、雄型101aと雌型101bの近接を停止する。尚、重合性材料w1が変形不可能な状態となった後には雄型1a及び雌型1bと重合性材料w1との密着が維持されるように成形型1を重合性材料w1に押圧させる。次に雄型101aを上昇させ、容器搬入ハンド104をホ方向に移動し直下に位置させる。その後、剥離リング113により剥離させて落下により検査容器105に収容する。
【0043】
上記実施例においては、インク121が付着した印刷パット116をニ方向に回転させて上を向かせたが、インク121が付着した面を下向きのまま、雌型101bの真上に位置させて雌型101bに押し付ければ、雌型101bに対してインク121を供給出来る。同様にして、雄型101a、雌型101bの両方にインクを付着させても良い。
【0044】
重合性材料の間にインクを挟んだサンドイッチ構造とすることも出来る。
この場合、まずシリンダ112を下降(方向イ)することにより、重合性材料w1を保有した容器120に分注ノズル111の先端を漬け、分注装置119によりレンズ体積の1/3から1/2の重合性材料w1を吸い上げて、分注ノズル111を上昇させる(方向イ逆方向)。
【0045】
シリンダ128により、分注ノズル111を雌型101bの上に位置させ、重合性材料w1を雌型101bの凹部に分注する。シリンダ128を後退させ、サーボモータ115により、雄型101aと雌型101bの隙間を最終レンズ厚さの1/2まで狭める。重合性材料w1の重合を開始させて、ほぼ重合が終了するまで、雄型101aと雌型101bの隙間を僅ずつ狭める。狭めるのは、先の実施例と同様に、収縮する重合性材料w1を収縮による体積の減少よりもやや大きく圧縮して、雄型101aと雌型101bに押し付け続ける為である。隙間を狭めることにより重合性材料w1が偏平化されて、重合物の外周縁d1が雄型101aの成形面の外周からその半径方向へはみ出す。このときの外周縁d1のはみ出しは、先の実施例における位置p1より手前(図6B、p11)となる程度である。重合がほぼ終了する時点で、サーボモータ15を停止させる。尚、この最初の重合においては、検出センサ9aを用いた外周縁d1の監視を行っても行わなくても良い。次の重合により最終的に形が決められるからである。
【0046】
印刷装置110により、印刷凹版プレート117に付着したインクを転写させる。その後、印刷パット116を180度反転させ、シリンダ128でロ方向に前進させる。
この状態で雄型101aを下降する事により、雄型101aに張り付いたままの状態の薄い中心厚レンズの凸側を、印刷パット116に押し付け、インクを付着させる。
【0047】
印刷装置110をロ方向逆方向に後退させた後、シリンダ112により、分注ノズル111の先端を容器120に漬け、分注装置119によりレンズ体積の残り分の重合性材料w1を追加分として吸い上げる。分注ノズル111を雌型101bの直上に位置させ、分注装置119によりレンズ体積残り分を計量分注する。
【0048】
再度、雄型101aと雌型101bの間隔を狭め中心隙間を目標中心厚の寸前で停止して、成形キャビティを形成する。重合性材料w1の重合を開始させて、ほぼ重合終了するまでに雄型101aと雌型101bの隙間を僅ずつ狭める。隙間を狭めることにより重合性材料w1が偏平化されて、重合物の外周縁d1が雄型101aの成形面の外周からその半径方向へはみ出す。このときの外周縁d1のはみ出し量を検出センサ9aで監視しながら、雄型101aと雌型101bの隙間を僅ずつ狭める。外周縁d1が位置p1に達したことを検出センサ9aが検出すると、雄型101aと雌型101bの近接を停止する。雄型101aを上昇させ、容器搬入ハンド104をホ方向に移動し直下に位置させる。その後、剥離リング113により剥離させて落下させ、検査容器105に収容する。
【0049】
尚、上記実施例において、サーボモータ15或いは115により、一対の雄型1a、雌型1b、或いは、一対の雄型101a、雌型101bの相対間隔を制御する例を示したが、1つの駆動系により複数の雄型、雌型の相対距離を同時に制御しても良い。
【0050】
上記実施例において、雄型1a、101a、雌型1b、101bの材料、或いは型表面処理を適宜選択することにより、重合性材料に対する雄型1a、101a、の付着力を、雌型1b、101bの付着力よりも高くしておくことも可能である。このようにすれば、雄型1a、101a、と雌型1b、101bとを離間させたときに、より確実に重合性材料を雄型1aに付着させて雌型1bから引き剥がすことが出来る。
以上の実施例1、実施例2の方法は、ハード及びソフトコンタクトレレンズの何れでも製造を可能とするものである。
【実施例3】
【0051】
先の実施例1及び2では、コンタクトレンズw0の外周縁の形体を表面張力により完成させる場合について説明したが、この実施例3では、外周縁の形体については切削加工により完成させる場合について説明する。
【0052】
この実施例3で使用する製造装置は、先の実施例で使用される図1又は図8に示す製造装置100、200において雌型1b又は101bの一部のみに変更を加えた構造とする。
図9はこのような構造とした製造装置300を部分的に示している。
図9Aにおいて、雄型201aは実施例1又は実施例2の雄型1a、101aと同一のものである。一方、雌型201bは、成形面c2の外周の直径、及び、成形面c2の最下点から外周までの高さh01が、実施例1又は実施例2で使用した雌型1b又は101bのそれに較べて大きい。
【0053】
次に図9に係わる製造装置300を使用することによる、コンタクトレンズw0の製造例について説明する。以下の説明において実施例1及び2の場合と同一のものには同一の符号を付して説明を省略する。
制御部9(図1)の制御により、雌型201bの成形面c2上に重合性材料w1が分注ノズル20を通じて供給される。実施例1及び2の場合には雌型1b、101bに分注される重合性材料w1の量はコンタクトレンズw0の体積に合致した量としていたが、本実施例の場合における重合性材料w1の量はコンタクトレンズw0の体積に対応する量よりも多い量である。
【0054】
次に実施例1の場合に準じて、サーボモータ15が作動され、雄型201aが下降される。この下降により雄型201aと雌型201bとの間に外周縁の全周範囲が型外空間に開放された状態の成形キャビティCTが形成され、この成形キャビティCT内において重合性材料w1が上下方向から圧縮されて扁平化される。
【0055】
雄型201aは重合性材料w1の重合がほぼ完了するまでの間、下降させる。この際、雄型201aと雌型201bの相対距離THは、実施例1のように検出センサ9aの検出信号により制御するのではない。本実施例の場合は、重合性材料w1が重合する過程において、雄型201aを重合性材料w1の重合による体積減少(図6Bの破線j)の収縮量と同一若しくはそれ以上の速度で減少させる。相対距離THは雄型201aの凸面部分や雌型201bの凹面部分に分注された重合性材料w1が体積減少により剥離しようとする速度或いはそれよりも大きい速度にする。これにより重合性材料w1の外周縁d3は、重合性材料w1が重合する過程で、その位置を維持するか、或いは成形キャビティCTの半径方向へ拡大し続けるようになる。
【0056】
このように相対速度を制御することにより、雄型201aの凸面部分と雌型201bの凹面部分は成形キャビティCT内の重合性材料w1が重合硬化する過程で、重合性材料w1の体積減少にも拘わらず、常に、重合性材料w1における図10に示す外周縁d3以外の範囲において隙間の生じないように密接した状態に保持される。剥離しようとする速度或いはそれよりも大きい速度にした場合は、常に雄型201aと雌型201bで重合性材料w1を押し続ける状態になる。
溝形部材11は、雌型201bの外周縁から溢れ出た重合性材料w1を受ける。尚、重合性材料w1はこのように溢れ出ないような量において分注するのが好ましい。
【0057】
成形キャビティCT内の重合性材料w1が重合終了すると、成形キャビティCT内の重合性材料w1は、図10に示すようにコンタクトレンズw0の全体の形体を内包した硬化成形物w1’となる。
この硬化成形物w1’の外周縁d3の上面部分は、雄型201aや雌型201bの成形面a2、c2の濡れ性や表面張力の作用により環状溝d4の形成された形状となる。雌型201bは、先に説明したように実施例1や2の雌型1bや雄型101bより大きいため、硬化成形物w1’がコンタクトレンズw0の全体の形体を内包し且つ、外周縁d3以外の範囲ではコンタクトレンズw0の対応する部分の形体をもつことができる。
【0058】
重合性材料w1が重合終了した後に、雄型201aと雌型201bを上下方向へ離反させると、実施例1の場合の重合硬化後の重合性材料w1(コンタクトレンズw0)と同様に、硬化成形物w1’は雄型201a側に接着した状態となって、雄型201aと同体状に上昇される。
【0059】
上軸7がこれの移動範囲の最上位置へ向け上昇する過程で、リング部材13は実施例1の場合に準じて硬化成形物w1’を雄型201aから離脱させる。このような製造装置による硬化成形物w1’の製造処理は雄型201a及び雌型201bを取り替えることなく連続的に繰り返される。
【0060】
雄型201aから離脱した硬化成形物w1’は実施例1の場合に準じてトレー23に受け取られ、次工程の作業場所まで搬送される。
次工程ではトレー23で搬送された硬化成形物w1’を受け取り、これの外周縁d3を図11Aに示す切削装置301により切削する。
【0061】
切削装置301は、上面部にワーク固定部202aが形成された縦向きの主軸202、主軸202を回転自在に支持する支持部203、主軸202を回転させる駆動部204、ワーク固定部202aに真空圧を付与する真空圧付与部205、及び、ワーク固定部202aに固定された硬化成形物w1’を切削するための切削部206を備えている。
【0062】
主軸202は上部に径大部202bを有すると共に径大部202bの下面からは小径部202cが下方へ同心状に延出されている。支持部203は本体部203aの上下箇所に一対のボールベアリング207a、207bを装着され、これらボールベアリング207a、207bの内孔内に小径部202cが挿設され下端部を本体部203aの下側へ延出されている。
【0063】
駆動部204は電動モータ208とこれの回転を主軸202に伝達するためのベルト伝動手段209とを備え、ベルト伝動手段209は電動モータ208の出力軸に固定されたプーリ210と主軸202の小径部202cの下端に固定されたプーリ211と、これらプーリ210、211間に掛け回された伝動ベルト212とからなっている。
【0064】
ワーク固定部202aは図11Bに示すように、径大部202bの上面箇所に下細り状の雌テーパ面n1が形成されると共に、径大部202bの外周最上部に小径段部n2が形成され、この小径段部n2にゴム質のOリング213を嵌着され固定化されている。Oリング213の上部は径大部202bの上端面よりも上方へ張り出している。
【0065】
真空圧付与部205は電動式の真空ポンプ214と、これの発生した真空圧をワーク固定部202aに付与するための通気路215とを備えている。通気路215は、主軸202の中心位置に形成され雌テーパ面n1の底部の内側に開口された直状孔p1と、この直状孔p1の下端開口と真空ポンプ214とを相対回転自在に連通させた管215aとで形成されている。
【0066】
切削部206は硬化成形物w1’の外周縁d3を切削するためのバイト206aを矢印方向n3の回動可能に設けている。
切削装置301で硬化成形物w1’を切削するときは、硬化成形物w1’をワーク固定部202aの雌テーパ面n1の上側端縁部に、凸面側を下向きにして主軸202と同心に載置し、硬化成形物w1’の凸面側の外周寄り位置の環状箇所をOリング213の上部に当接させた後、真空圧付与部205を作動させる。これにより真空ポンプ214の発生した真空圧が通気路215を通じることにより雌テーパ面n1と硬化成形物w1’とで囲まれた空間内に付与され、硬化成形物w1’はOリング213に圧接されて主軸202と同心状に位置され強力に固定された状態となる。
【0067】
次に電動モータ208を作動させるのであり、これにより硬化成形物w1’は主軸202と共に回転される。この回転中、バイト206aが予め定められた軌跡を経て動作されることにより、硬化成形物w1’の外周縁d3が切削され、予定された形体のコンタクトレンズw0となる。
上記した切削装置301による一連の処理は全自動的或いは半自動的に行わせることが生産の能率化を図る上で好ましいが、これに限定するものではない。
【実施例4】
【0068】
この実施例4では上記実施例3における製造装置300の一部を変形した製造装置によりコンタクトレンズw0を製造する場合ついて説明する。図12はこの実施例4に係わる製造装置400を部分的に示している。
先の実施例3では、雄型201aと雌型201bで形成される成形キャビティCTは外周縁の全周範囲が型外空間に開放されていたが、この実施例では図12に示すように成形キャビティCTの全外面が型で包囲される。
【0069】
この実施例4の製造装置400は、図1に示すリング部材13に代えて、図12に示すように、エッジ型216を設けている。エッジ型216は外周面の上端箇所に外方へ張り出した鍔部216aを形成されたものであって、雄型201aの径大部a4より下方部位の外周面を取り囲むように雄型201aと同心に配置された環状である。エッジ型216は、雄型201aの径大部a4より下方の外周面箇所に上下摺動自在に外嵌されている。そして、エッジ型216と、雄型201aの径大部a4との間には、雌型201bに対するエッジ型216の作用を変化させるための型保持部217が形成されている。
【0070】
この型保持部217は、上下端箇所に内周側へ張り出した鍔部218a、218bを有する環状部材218、上側の鍔部218aと雄型201aの径大部a4の上面との間に設けられた流体圧伸縮部219、及び、エッジ型216と雄型201aの径大部a4の下面との間に設けられた圧縮バネ220とからなっている。この圧縮バネ220は流体圧伸縮部219に準じたものに置き換えて、該圧縮バネ220と同様に機能させることも差し支えない。
【0071】
流体圧伸縮部219は空気圧などの流体圧を付与され或いは消失されることにより伸縮作動する。流体圧伸縮部219が流体圧を付与されて伸張作動されたときは、環状部材218が上昇して環状部材218の鍔部218b、及び、雄型201aの径大部a4の下面が衝接し、エッジ型216は環状部材218に連動しつつ圧縮バネ220の弾力に抗して上方へ変位される。一方、流体圧伸縮部219に付与されていた流体圧が消失されたときは、圧縮バネ220の弾力が環状部材218を介して流体圧伸縮部219を短縮作動させると共にエッジ型216を圧縮バネ220の弾力で下方へ変位させる状態となる。
【0072】
雄型201aの固定された上軸7は外周面の下端部に環状の切欠部q1を形成されており、この切欠部q1は上軸7に対する環状部材218の上方変位を可能としている。その他の点は図9に示す実施例3の製造装置300と同一の構成とされている。
【0073】
次に図12に示す製造装置400を使用することによる、コンタクトレンズw0の製造例について説明する。以下の説明において実施例1、2及び3の場合と同一のものには同一の符号を付して説明を省略する。
上軸7が最高位置まで上昇して雄型201aと雌型201bが離反している状態で、雌型201bの成形面c2上に重合性材料w1が供給される。この重合性材料w1の量は後述の成形キャビティCTの容積よりも幾分多いものとする。
【0074】
次に流体圧伸縮部219に流体圧が付与されない状態のまま、雄型201aを実施例3の場合と同様に漸次に下降させる。雄型201aと雌型201bの相対距離THが図6BにおけるTH0に到達したとき、エッジ型216の下面は雌型201bの外周縁に隙間の生じない状態に接触する。これにより、雄型201a、雌型201b及びエッジ型216により全ての外表面体を囲った状態の成形キャビティCTが形成される。この後も、雄型201aの下降が継続されると、これに伴ってエッジ型216は圧縮バネ220の弾力に抗しつつ上方へ相対変位され、一方では雄型201aが雌型201bに近接していく。したがって成形キャビティCTの容積は漸次に減少される。
【0075】
成形キャビティCTの容積を超える重合性材料w1は、圧縮バネ220の弾力に抗してエッジ型216を押し上げ、雌型201bの外周縁から漸次に溢れ落ち溝形部材11の溝内に流れ込む。以後、雄型201aは、成形キャビティCT内に重合性材料w1が満たされ続けるような速度で降下される。
【0076】
重合性材料W1の重合硬化が終了したとき、雄型201aと雌型201bの相対距離THが図6Bに示すTH1に到達し、雄型201aの下降が停止される。この状態に至る過程において、成形キャビティCT内には重合性材料w1が満たされ続けるため、成形キャビティCT内の硬化成形物w1’は成形キャビティCTの表面の形体に合致したものとなる。
【0077】
この後、上軸7が雄型201a及びこれに接着した状態の硬化成形物w1’と一緒に上昇されるが、この上昇の前に、流体圧伸縮部219に流体圧が付与されて、エッジ型216が図12Bに示すように雄型201aに対して距離r1だけ上昇変位されるのであり、これによりエッジ型216の下面は雌型201bから離れ、成形キャビティCT内の硬化成形物w1’に触れない状態となる。この状態を維持されつつ、上軸7がこれの作動範囲内の最上位置に上昇される。上軸7が該最上位置に到達した時点で、それまで流体圧伸縮部219に付与されていた流体圧が消失される。これにより、エッジ型216は図12Cに示すように圧縮バネ220の弾力により雄型201aに対して下降変位され、環状部材218の鍔部218aが流体圧伸縮部219やエッジ型216の径大部216aによりその下降を規制されるまで下降される。エッジ型216はこの下降中に、雄型201aに接着している硬化成形物w1’の外周縁d3を圧縮バネ220の弾力で下方へ押し下げることにより、硬化成形物w1’を雄型201aから離脱させる。このような製造装置400による硬化成形物w1’の製造は雄型201a、雌型201b及びエッジ型216を取り替えることなく連続的に繰り返される。そして雄型201aから落下した硬化成形物w1’は実施例3の場合と同様に、トレー23に受け止められて次の工程に搬送され、切削装置301により切削加工されてコンタクトレンズw0となる。
エッジ型216を設けたことにより、切削加工すべき硬化成形物w1’は、ほぼ揃った形で切削装置301に供給されることになる。
【実施例5】
【0078】
図13はこの実施例4の製造装置400をさらに変形した製造装置500を示している。雄型201a、雌型201b及びエッジ型216のそれぞれの成形面a2、c2、s1はコンタクトレンズw0の形体に可能な限り近似したものにすることが好ましい。このようにすれば、切削装置301による切削加工の手間が軽減される。
上記実施例3及び4の製造装置300、400によるコンタクトレンズw0の製造において、実施例2の製造装置200による印刷処理に準じた印刷処理を実行させることも可能である。
【実施例6】
【0079】
図14は、実施例5の製造装置500をさらに変形した製造装置600を示している。本実施例においては、エッジ型316はコンタクトレンズw0の端部の型となっており、雄型201a、雌型201b及びエッジ型316の成形面s2(316を拡大した図14A’参照)により、コンタクトレンズw0自体の形体を形成し、図11で示した切削装置301による切削工程を省略する。
【0080】
雄型201aは金属材料を使用し、エッジ型316はエンジニアリングプラスチック材料を使用し、雄型201aとの嵌めあい寸法は重合温度において雄型201aに止まり嵌めとし、追い重合温度で隙間嵌めとする。プラスチック材料は雄型201aに対して膨張率が大きいので、金属材料である雄型201aとの隙間が広がるのである。ここにおいて、重合温度は50度程度であり、追い重合温度は100度であって、重合温度50度において重合性材料w1はほぼ硬化し、追い重合温度100度においてはさらなる重合による収縮は少なく、それよりも熱膨張による体積増加の方が大きくなる。エッジ型316は、何れの温度においても雄型201aの側面を移動可能である。
【0081】
エッジ型316には、成形面s2が形成されており、コンタクトレンズw0の端部の最終形体を形成する型であり、雄型201aの下側の鍔部a5と上側の径大部a4の間で摺動し、径大部a4の下面との間に設けられた圧縮バネ220により支持されている(図14A)。
【0082】
重合性材料w1を、雌型201bに分注して、雄型201aを下降する。雄型201aと雌型201bの相対距離THが図6BにおけるTH0に到達したとき、エッジ型316の下面は雌型201bの外周縁に隙間の生じない状態に接触する。このとき、エッジ型316と雄型201aとの嵌めあい寸法は雄型201aに止まり嵌めであるため、成形キャビティCTは密閉された空間となる。そして、余分な重合性材料w1は落下し、完成品となるコンタクトレンズw0に匹敵する量だけが、成形キャビティCTに残る(図14B)。
この後、重合性材料w1は重合により体積を縮減させるが、これに対応した量だけ雄型201aを下降させる。一方、エッジ型316は、雌型201bの外周縁に接触しているため、雄型201aはエッジ型316の内周を滑って下降する。このときの重合温度は、50度である。重合が終了した状態では、雄型201a、雌型201b及びエッジ型316により全ての外表面体を囲った状態の成形キャビティCTは、完成品のコンタクトレンズw0の形状となっている。
【0083】
この後100度にまで加温する追い重合を行う。この工程においては、重合性材料w1は熱により膨張する。このため、雄型201aは膨張にあわせて上昇させるが、エッジ型316は雌型201bに接触したままとなる。この状態のままであると、膨張した重合性材料w1がエッジ型316の角部に当り、重合性材料w1を傷つけることになるため、エッジ型316の材料としてはプラスチックを使用する。プラスチックであるために、エッジ型316も追い重合による加温で膨張し、雄型201aとの間に隙間を生じさせる。このため、膨張した重合性材料w1がエッジ型316に当り、重合性材料w1を傷つけることが無い(図14C)。
【0084】
追い重合が終了すると温度を下げ、エッジ型316と雄型201aとの嵌めあい寸法が雄型201aに止まり嵌めの状態に戻してから、雄型201aと雌型201bとを引き離す(図14D)。その後は、エッジ型316を実施例1のリング部材13と同じように用いて、重合性材料w1の引き剥がしを行う。引き剥がされた重合性材料w1は、成品のコンタクトレンズw0となっており、その後の切削工程は不要である。
【符号の説明】
【0085】
1 成形型
1a,101a、201a 雄型
1b,101b、201b 雌型
2 型駆動部
3 加熱部
4 材料供給部
5 レンズ搬出部
6 本体フレーム
7 上軸
8 駆動機構
9 型位置制御部
13 リング部材
23 トレー
24 レンズ搬出部
BC ベースカーブ
CT 成形キャビティCT
FC フロントカーブ
a2 雄型成形面(処理面)
c2 雌型成形面(処理面)
d1 重合性材料w1の外周縁
d2 重合性材料w1の外周部
d3 重合性材料w1の外周部
TH 相対距離
w0 コンタクトレンズ
w1 重合性材料
w1’硬化成形物
100、200、300、400、500、600 製造装置
110 印刷装置
216、316 エッジ型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズの、ベースカーブを成形するための凸面部分を有する雄型と、コンタクトレンズの、フロントカーブを成形するための凹面部分を有する雌型とからなる成形型を形成し、前記雄型及び前記雌型は前記凸面部分が上側に、そして凹面部分が下側に位置されて、前記雄型及び前記雌型を非接触状態で対向させて、前記凸面部分と前記凹面部分との間に、周囲が開放された状態に保持される成形キャビティを形成し、
該成形キャビティ内の重合性材料が重合硬化する過程で、前記雄型及び前記雌型の相対距離を短縮することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。

【請求項2】
請求項1において、前記雄型及び前記雌型の相対距離の短縮は、該重合性材料の外周縁が前記成形キャビティの半径外方向へ向け拡大し続ける量を短縮することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。

【請求項3】
コンタクトレンズの、ベースカーブを成形するための凸面部分を有する雄型と、コンタクトレンズの、フロントカーブを成形するための凹面部分を有する雌型からなる成形型であって、前記凸面部分が上側に、そして凹面部分が下側に位置されて、前記雄型及び前記雌型を非接触状態で対向させて、前記凸面部分と前記凹面部分との間に、周囲が開放された状態に保持される成形キャビティを形成し、
成形キャビティ内の重合性材料が重合硬化する過程における、重合性材料の外周縁の位置が前記成形キャビティからはみ出し続けるように前記雄型及び前記雌型の相対距離を制御することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。

【請求項4】
請求項1又は3に記載のコンタクトレンズの製造方法において、前記制御部は前記重合性材料の外周縁の位置が前記成形キャビティからはみ出す量が、前記雄型及び前記雌型の間隔を狭めたときに予想される量と相違する場合に、次のコンタクトレンズ製造の際、前記成形キャビティ内に分注する重合性材料を修正することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。

【請求項5】
請求項1又は3に記載のコンタクトレンズの製造方法において、前記雄型に付着した状態で重合硬化した重合性材料に対して、その凸側となる面にカラー印刷を行い、
さらに、前記雌型に重合性材料を追加して、カラー印刷された重合性材料が付着したままの雄型との間に再度成形キャビティを形成することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。

【請求項6】
請求項1又は3に記載のコンタクトレンズの製造方法において、前記成形キャビティ内の前記雄型、前記雌型或いは両方にカラー印刷を行い、前記重合性材料を前記成形キャビティ内に分注することを特徴とするコンタクトレンズの製造方法。

【請求項7】
コンタクトレンズの、ベースカーブを成形する凸面部分を有する雄型と、
コンタクトレンズの、フロントカーブを成形する凹面部分を有する雌型と、
前記雄型及び前記雌型を上下へ相対変位させるとともに、前記雄型及び前記雌型を非接触状態で対向させる型駆動部と、
前記雄型及び前記雌型内に挟まれた重合性材料の重合開始から終了までの、前記雄型及び前記雌型の相対距離を狭める制御をする制御部を備えたことを特徴とするコンタクトレンズの製造装置。

【請求項8】
請求項7記載のコンタクトレンズの製造装置において、前記制御部は、重合の過程で、重合性材料の外周縁の位置が、前記雄型及び前記雌型からはみ出し続けるように前記雄型及び前記雌型の相対距離を制御することを特徴とするコンタクトレンズの製造装置。

【請求項9】
請求項7記載のコンタクトレンズの製造装置において、前記重合性材料に対する雄型の付着力が、雌型の付着力よりも大きいことを特徴とするコンタクトレンズの製造装置。

【請求項10】
請求項7記載のコンタクトレンズの製造装置において、前記雄型からはみ出した重合性材料に衝接することにより、重合性材料を該雄型から離脱させるリング部材を備えていることを特徴とするコンタクトレンズの製造装置。

【請求項11】
請求項7記載のコンタクトレンズの製造装置において、前記凸面部分と前記凹面部分との間に形成された空間の外周部に形成される環状開口を包囲するエッジ型を備え、該エッジ型は前記相対距離が狭められるとき、該エッジ型により包囲される前記成形キャビティ内の容積を超える分の重合性材料を該成形キャビティ外へ溢れ出させることを特徴とするコンタクトレンズの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−189992(P2012−189992A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9605(P2012−9605)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(500256510)株式会社メック技研 (1)
【Fターム(参考)】