説明

コンタクトレンズ用眼科組成物

【課題】 カルシウム塩と水溶性高分子化合物を含有したコンタクトレンズ用組成物において、コンタクトレンズの汚れが抑制されたコンタクトレンズ用眼科組成物を提供する。
【解決手段】(A)カルシウム塩、及び(B)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、酸性ムコ多糖、デキストラン、ポリエチレングリコール、アルギン酸及びそれらの塩から選択される1種又は2種以上を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物をコンタクトレンズに接触することによって、コンタクトレンズの蛋白質汚れやカルシウム等に起因する汚れを抑制することができる組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ汚れが抑制されたコンタクトレンズ用眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
常に涙液で湿っている角膜上にコンタクトレンズを的確かつ安全に装着し長時間の装用を快適にするためには、コンタクトレンズの素材が親水性で表面が濡れ易い性質であることが望ましい。しかしながら、コンタクトレンズの使用に伴って汚れが付着したり蓄積したりするにつれてコンタクトレンズが白濁する。また、コンタクトレンズの汚れは、レンズ表面の濡れ性を悪化させる。さらに、汚れが付着し蓄積したコンタクトレンズの使用は、眼に刺激を与えたり炎症や障害を引き起こす原因となるため、問題であった。
【0003】
コンタクトレンズの汚れの原因として、蛋白質や脂質の他、カルシウムがある。カルシウムは、涙液中に含まれておりコンタクトレンズに沈着する汚れの一つであるだけでなく、汚れとなる蛋白質や脂質のコンタクトレンズ表面への付着に関与して、コンタクトレンズや蛋白質等の親水基との電気的相互作用で強固な付着物を形成することが知られている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
また、カルシウム塩を配合した眼科組成物は、例えば特許文献1に記載されており、コンタクトレンズへの適用についても示唆されている。しかしながら、特許文献1に記載された組成物は、涙液成分の一部である無機塩類を単に混合したに過ぎず、コンタクトレンズの汚れの問題については全く解決されていない。
【0005】
ところで、コンタクトレンズ用眼科組成物においては、薬物の滞留性を改善し生物学的利用能を高めるため、また、コンタクトレンズ表面の保水効果を高めるため、ヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系高分子化合物、ポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールなどのビニル系高分子化合物、酸性ムコ多糖、デキストラン、ポリエチレングリコール等の粘稠化剤を配合する処方設計が行われている。
しかしながら、これらの水溶性高分子化合物について、コンタクトレンズへの汚れが付着するのを抑制する効果は知られていない。むしろ、本発明者らは、これらの水溶性高分子化合物が蛋白質等と共にコンタクトレンズ表面に付着し、汚れの悪化の一因となる事を見出した。
【0006】
【非特許文献1】コンタクトレンズの基礎と臨床、水谷由紀夫等編、診断と治療社、p101
【非特許文献2】ハードコンタクトレンズ処方と苦情処理、湖崎克等編、金原出版、p42-45
【特許文献1】特公平7−108856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、コンタクトレンズ用眼科組成物へのカルシウム塩(以下、カルシウムと称する事もある)配合を可能にし、コンタクトレンズ汚れを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、課題解決のために鋭意検討の結果、カルシウム塩と水溶性高分子化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物において、コンタクトレンズの汚れが抑制できることを見出した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。
すなわち本発明は、下記に掲げる発明である:
(1)カルシウム塩、及び水溶性高分子化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物、
(2)水溶性高分子化合物が、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、デキストラン、ポリエチレングリコール、酸性ムコ多糖、アルギン酸及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上である(1)に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(3)水溶性高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩及びアルギン酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である(1)又は(2)に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(4)水溶性高分子化合物が、セルロース系高分子化合物、酸性ムコ多糖及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上である(1)又は(2)に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(5)水溶性高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コンドロイチン硫酸又はその塩及びヒアルロン酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である(1)乃至(4)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(6)カルシウム塩を0.001mmol/L〜10mmol/L、水溶性高分子化合物を0.001(w/v)%〜10(w/v)%で含有する(1)乃至(5)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(7)点眼薬、装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である(1)乃至(6)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(8)ソフトコンタクトレンズ用である(1)乃至(7)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(9)カルシウム塩が塩化カルシウムである(1)乃至(8)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物、
(10)カルシウム塩及び水溶性高分子化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物とコンタクトレンズを接触することによって、コンタクトレンズへの汚れを抑制する方法、
(11)コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズである(10)に記載の方法。
なお、本明細書中、特に言及しない限り、%はw/v%を意味するものとする。また、本明細書中でコンタクトレンズとは、ハード、酸素透過性ハード、ソフト、カラー等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、カルシウム塩と水溶性高分子化合物を組成物中に含有し、コンタクトレンズに当該組成物を接触させることで、コンタクトレンズへの汚れを抑制することができる。さらには、涙液中のカルシウムによって引き起こされるコンタクトレンズの汚れを抑制し、ならびに水溶性高分子化合物が蛋白質等と共にコンタクトレンズ表面に付着する事による汚れを抑制することができ、装用中のコンタクトレンズを清潔に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明におけるカルシウム塩は、通常、塩化カルシウムや炭酸カルシウムなどの無機塩や、パントテン酸カルシウムなどの有機塩としてコンタクトレンズ用組成物中に配合されるものである。組成物中の他の成分との関係上、なかでも、塩化カルシウムが好ましい。
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物におけるカルシウム塩は、他の成分に応じて適宜設定することができるが、下限として0.001mmol/L以上、好ましくは0.01mmol/L以上、より好ましくは0.05mmol/Lである。含有する範囲として0.001〜10mmol/L、好ましくは0.01〜5mmol/L、より好ましくは0.05〜5mmol/L、さらに好ましくは0.1〜3mmol/L、特に好ましくは0.2〜2mmol/Lである。
【0012】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物は、カルシウム塩及び水溶性高分子化合物を含有することで、コンタクトレンズの汚れを予防するなど、汚れの抑制効果が得られる。本発明の水溶性高分子化合物としては、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、デキストラン、ポリエチレングリコール、酸性ムコ多糖、アルギン酸及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上を利用できる。水溶性高分子化合物が、セルロース系高分子化合物、酸性ムコ多糖及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上であることがより好ましい。例えば、本発明に利用できる水溶性高分子化合物として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩及びアルギン酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上が例示できる。なかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コンドロイチン硫酸又はその塩及びヒアルロン酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0013】
本発明の水溶性高分子化合物を2種以上で組み合わせて用いる場合には、セルロース系高分子化合物とセルロース系高分子化合物、酸性ムコ多糖と酸性ムコ多糖、ビニル系高分子化合物とビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物とビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物と酸性ムコ多糖、ビニル系高分子化合物と酸性ムコ多糖を組み合わせて用いるのが好ましく、中でもコンタクトレンズの汚れをより効果的に抑制し、装用を快適にする観点から、セルロース系高分子化合物とセルロース系高分子化合物、酸性ムコ多糖と酸性ムコ多糖、セルロース系高分子化合物と酸性ムコ多糖を組み合わせて用いるのがより好ましい。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとコンドロイチン硫酸又はその塩、ヒドロキシエチルセルロースとコンドロイチン硫酸又はその塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒアルロン酸又はその塩、ヒドロキシエチルセルロースとヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩とヒアルロン酸又はその塩を組み合わせて用いるのが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとコンドロイチン硫酸又はその塩、ヒドロキシエチルセルロースとコンドロイチン硫酸又はその塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒアルロン酸又はその塩、ヒドロキシエチルセルロースとヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩とヒアルロン酸又はその塩を組み合わせて用いるのがより好ましい。
【0014】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中の水溶性高分子化合物の含有量は、化合物の種類や分子量によっても異なるので限定されるものではないが、化合物の総量で、通常0.0001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜7%、特に好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.01〜1%である。カルシウム塩1mmolに対して、水溶性高分子化合物の総量を好ましくは0.025〜6250重量部、より好ましくは0.25〜2500重量部、さらに好ましくは1.25〜1750重量部で含有する。
【0015】
本発明における水溶性高分子化合物をより詳細に説明する。
セルロース系高分子化合物としては、セルロースのヒドロキシル基を他の官能基で置き換えることで得られるセルロース系高分子化合物であって、水性組成物に粘性を付与することができるコンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。セルロースのヒドロキシル基を置換する官能基としてはメトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、カルボキシメトキシ基、カルボキシエトキシ基等がある。セルロース系高分子化合物を例示すると、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの塩などを挙げることができる。なかでも、コンタクトレンズの汚れをより効果的に抑制し、装用を快適にする観点から、好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である。特に好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種である。ここで、塩としては薬理学的に許容される塩が好ましく、中でもアルカリ金属塩がさらに好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩などが特に好ましい。本発明に用いるセルロース系高分子化合物は、置換基の置換度や分子量に制限はないが、例えば、重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜10万程度のものを使用することができる。また、これらのセルロース系高分子化合物は、市販のものを用いることができ、これらの化合物を1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中のセルロース系高分子化合物の含有量は、化合物の種類や分子量によっても異なるので限定されるものではないが、これらの化合物の総量で、通常0.001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜7%、特に好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.01〜1%である。
【0017】
酸性ムコ多糖としては、アミノ糖(グルコサミンなど)を含んでいる多糖であって、水性組成物に粘性を付与することができるコンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。コンタクトレンズの汚れをより効果的に抑制し、装用を快適にする観点から、好ましい酸性ムコ多糖を例示すると、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種である。酸性ムコ多糖の分子量に制限はないが、好ましくは重量平均分子量0.01万〜10万、より好ましくは0.01万〜5万、さらに好ましくは0.1万〜5万程度のものを使用する。より具体的に、コンドロイチン硫酸又はその塩の場合、好ましくは0.5万〜5万の範囲であり、より好ましくは1万〜4万の範囲であり、さらに好ましくは1.5万〜3.5万の範囲である。ヒアルロン酸又はその塩の場合、好ましくは0.01万〜5万の範囲であり、より好ましくは0.01万〜3.5万の範囲であり、さらに好ましくは0.1万〜3.5万の範囲であり、よりさらに好ましくは0.5万〜3.5万の範囲であり、特に好ましくは1.5万〜3万の範囲である。
【0018】
また、これらの酸性ムコ多糖は、市販のものを用いることができ、これらの化合物を1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の眼科組成物に用いるヒアルロン酸又はその塩或いはコンドロイチン硫酸又はその塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。これらは、例えばサケ等の動物から得られたものや微生物から得られたもの等、由来はいずれであってもよく、市販のものを利用することもできる。
【0019】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中の酸性ムコ多糖の含有量は、化合物の種類や分子量によっても異なるので限定されるものではないが、これらの化合物の総量で、通常0.0005〜10%、好ましくは0.0005〜5%、さらに好ましくは0.001〜3%、特に好ましくは0.001〜1%である。
【0020】
ビニル系高分子化合物としては、水性組成物に粘性を付与することができコンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。ビニル系高分子化合物を例示すると、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン等から選ばれる少なくとも1種である。水溶性高分子化合物としてビニル系高分子化合物を用いる場合その分子量に制限はないが、例えば重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜40万程度のものを使用することができる。また、これらのビニル系高分子化合物は、市販のものを用いることができ、これらの化合物を1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中のビニル系高分子化合物の含有量は、化合物の種類や分子量によっても異なるので限定されるものではないが、これらの化合物の総量で、通常0.001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜7%、特に好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.01〜1%である。
【0022】
デキストランはショ糖を原料としてある種の乳酸菌が生産する多糖を部分的に加水分解して得られる水溶性高分子化合物である。デキストランは重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜10万程度のものを使用することができる。また、これらのデキストランは、市販のものを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中のデキストランの含有量は、総量で通常0.001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.01〜10%、特に好ましくは0.05〜7%、さらに好ましくは0.05〜5%である。
【0024】
ポリエチレングリコールは、置換基の置換度や分子量に制限はないが、重量平均分子量100〜5万、好ましくは400〜2万、さらに好ましくは2000〜1万程度のものを使用することができる。また、これらのポリエチレングリコールは、市販のものを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中のポリエチレングリコールの含有量は、総量で通常0.001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.01〜10%、特に好ましくは0.05〜7%、さらに好ましくは0.05〜5%である。
【0026】
アルギン酸またはその塩を用いる場合は、天然物、合成品のいずれを使用してもよい。また、アルギン酸又はその塩のマンヌロン酸/グルロン酸比(M/G比)は特に規定されず使用することができるが、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。分子量としては、重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜10万程度のものを使用することができる。アルギン酸は市販品も使用することができる。本発明におけるアルギン酸の塩としては、たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられるがこれらに限定されない。アルギン酸またはその塩は、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中のアルギン酸またはその塩の含有量は、総量で通常0.001〜5%、さらに好ましくは0.005〜5%、より好ましくは0.005〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
【0028】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、カルシウム塩や水溶性高分子化合物と協働してコンタクトレンズの汚れをより効果的に抑制し、装用を快適にする観点から、緩衝剤を配合することが好ましい。本発明に用いる緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、HEPES緩衝剤、MOPS緩衝剤などが挙げられる。より具体的には、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、HEPES、MOPSなどの化合物や、これらの群から選ばれる2種以上の化合物の組み合わせ等が挙げられる。
好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤及びクエン酸緩衝剤である。特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤またはリン酸緩衝剤である。 特に好ましい緩衝剤はより具体的には、ホウ酸緩衝剤としてはホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩,ホウ酸アルカリ土類金属塩などのホウ酸塩、ホウ酸とホウ酸塩との組み合わせが挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、リン酸アルカリ金属塩,リン酸アルカリ土類金属塩などのリン酸塩、リン酸とリン酸塩との組み合わせが挙げられる。
【0029】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、緩衝剤として用いる化合物の総量として、通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜3%、より好ましくは0.005〜1.5%で用いられる。またコンタクトレンズケア用剤においては、通常0.001〜15%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.001〜7%で用いられる.緩衝剤によって、組成物のpHを、pH4.0〜10.0、好ましくは5.0〜9.0、特に好ましくは5.5〜8.5に調整するとよい。
【0030】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、カルシウム塩や水溶性高分子化合物と協働してコンタクトレンズの汚れをより効果的に抑制し、装用を快適にする観点から、無機塩類を配合することが好ましい。無機塩類としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中の無機塩類の含有量は、無機塩類の種類などによって異なるので一概に規定できないが、総量で通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜1%、より好ましくは0.005〜0.5%で用いられる。
【0032】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、カルシウム塩や水溶性高分子化合物と協働してコンタクトレンズの汚れをより効果的に抑制し、装用を快適にする観点から、非イオン性界面活性剤を配合することが好ましい。本発明に用いる非イオン性界面活性剤としては、通常当業者がコンタクトレンズ用眼科組成物に利用しうるものを用いることができ、例えばポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)−ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう。)ブロックコポリマー (例えば、ポロクサマー407 、ポロクサマー235 、ポロクサマー188 など) ;ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20) ,モノオレイン酸POE(20)ソルビタン (ポリソルベート80) ,POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60),POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65) などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5 ,POE硬化ヒマシ油10 ,POE硬化ヒマシ油20 ,POE硬化ヒマシ油40 ,POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60 ,POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;POE(9) ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4) セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類などが挙げられる。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0033】
なかでも好ましくは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、POEソルビタン脂肪酸エステル類又はPOE硬化ヒマシ油類から選ばれる非イオン性界面活性剤であり、特に好ましくは、ポロクサマー407、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油60である。
【0034】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜1%、より好ましくは0.005〜0.5%で用いられる。
【0035】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、カルシウム塩や水溶性高分子化合物と協働してコンタクトレンズの汚れをより効果的に抑制し、装用を快適にする観点から、エチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩を配合することが好ましい。また、さらに効果的にコンタクトレンズの汚れを抑制し、装用をより快適にするために、エチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩、非イオン性界面活性剤、無機塩類、緩衝剤を組み合わせて配合することがより好ましい。かかるエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩としては、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸,EDTA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)などが例示できる。これらは、1種又は2種以上配合でき、薬理学的に又は生理学的に許容される塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等)として使用してもよい。なかでも好ましくは、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であり、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(以下、エデト酸ナトリウムともいう。)である。
【0036】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中のエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩の含有量は分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、総量で好ましくは0.0001〜1%、より好ましくは0.0005〜0.5%、特に好ましくは0.001〜0.3%である。
【0037】
本発明におけるコンタクトレンズ用眼科組成物中のエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩、非イオン性界面活性剤、無機塩類、緩衝剤は、総量として、0.01〜5%配合するのが好ましく、特に好ましくは0.05〜3%である。
【0038】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、発明の効果を利用するものであればその使用用途は特定されず、医薬品、医薬部外品、雑品等の各種分野において利用することができる。例えば、点眼薬(剤)(コンタクトレンズを装用中にも使用することができる点眼剤を含む、また、点眼液ともいう。)、洗眼薬(剤)(コンタクトレンズを装用中にも使用することができる洗眼剤を含む、また、洗眼液ともいう。)、眼軟膏剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(洗浄液、保存液、殺菌液、マルチパーパスソリューションなど)などが挙げられる。好ましくは、コンタクトレンズ装用中に用いることができる点眼薬(人工涙液型点眼薬を含む)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ装用中に用いることができる洗眼薬又は、コンタクトレンズケア用剤であり、特に好ましくは、コンタクトレンズ装用中に用いることができる点眼薬や洗眼薬、コンタクトレンズ装着液である。
【0039】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、コンタクトレンズのなかでも特に、汚れ易く、汚れの効果的除去が必要とされるソフトコンタクトレンズ用に用いるのが好適である。ソフトコンタクトレンズは一般にハードコンタクトレンズ、酸素透過性ハードコンタクトレンズよりも、汚れ易いとされている。ソフトコンタクトレンズの中でも、高含水のグループIVのソフトコンタクトレンズでは汚れ易さが顕著になる。またソフトコンタクトレンズの1種であるシリコンハイドロゲル素材のレンズについても、汚れ易いと言われている。それ故、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物はグループIVのソフトコンタクトレンズとシリコンハイドロゲル素材のレンズに好適に用いられる。
【0040】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有するのに適している。コンタクトレンズ用眼科組成物に通常用いられる充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸、局所麻酔成分などが例示できる。具体的には、以下に挙げる成分が例示できる。
【0041】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなど。
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなど。
アミノ酸:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸など。
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなど。
【0042】
また、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物には、発明の効果を損なわない範囲でその用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、糖アルコール類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調整剤、等張化剤、香料または清涼化剤、安定剤などの各種添加剤を挙げることができる。
【0043】
以下に本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリンなど。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
界面活性剤:例えば、上記した非イオン性界面活性剤以外にも、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。)など。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニドなど)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
香料又は清涼化剤:テルペン類(例えば、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、メントール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)など。
【0044】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、所望の効果を得るために適切な粘度に初期設定して設定粘度を長期的に安定に保持することができる。コンタクトレンズ用眼科組成物の粘度を設定する場合において、20℃における粘度が1.5mPa・s以上に保持して設計することが好ましく、通常1.5〜300mPa・s、好ましくは、2〜200mPa・s、特に好ましくは5〜100mPa・s、更に好ましくは10〜80mPa・s、更に特に好ましくは10〜30mPa・sに設計することができる。
【0045】
粘度の測定は、円すい一平板形回転粘度計を用いる方法(第十四改正日本薬局法に記載の、一般試験法、45.粘度測定法、第2法回転粘度計法、「(3)円すい−平板形回転粘度計」の項に記載の方法)に従い、具体的には、市販の円すい−平板形回転粘度計と適宜選択されたロータとを用いて測定することができる。例えば、市販のE型粘度計[トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本)から販売]と適宜選択されたローターを用い、披検試料測定毎にJIS Z8809により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として調整することにより、20℃における粘度を測定することができる。
具体的には、円すいと平円板との間の角度αの隙間に試料を入れ、円すい又は平円板を一定の角速度ω若しくはトルクTで回転させ、定常状態に達したときの平円板又は円すいが受けるトルク若しくは角速度を測定し、試料の粘度ηを次式により算出することによって粘度を測定した(図1)。
η =100×(3α/2πR)・(T /ω)
η :試料の粘度(mPa ・s)(Pa ・s =10 mPa・s )
α :平円板と円すいがなす角度(rad)
π :円周率
R :円すいの半径(cm)
T :平円板又は円すい面に作用するトルク(10−7N・m)
ω :角速度(rad/s)
【0046】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧に調整して用いる。浸透圧は、100〜1200mOsm、好ましくは100〜600mOsm、特に好ましくは150〜400mOsmであり、生理食塩液に対する浸透圧比は、通常、0.4〜4.1、好ましくは0.3〜2.1、特に好ましくは0.5〜1.4である。
【0047】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、必要に応じて、生体に適用可能な範囲内のpHに調整して用いる。pHは、通常、pH4.0〜9.0、好ましくは5.0〜8.5、特に好ましくは5.5〜8.5である。pHの調整は、前記緩衝剤、pH調整剤などを用いて行うことができる。
【0048】
本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物は、公知の方法により製造でき、必要により、ろ過滅菌処理工程や、容器への充填工程等を加えることができる。
【0049】
本発明は、カルシウム塩及び水溶性高分子化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物とコンタクトレンズを接触することによって、コンタクトレンズの汚れを抑制する方法(予防する方法を含む)を包含する。さらに、本発明の方法は、汚れが付着しやすいソフトコンタクトレンズ用に用いるのが好適である。なお、本発明の方法におけるカルシウムや水溶性高分子化合物については、本発明のコンタクトレンズ用眼科組成物に関する前述の記載と同様のものを使用することができる。
【0050】
本発明の方法により組成物とコンタクトレンズを接触させる場合、1秒以上、好ましくは5秒以上の接触が好ましい。本発明の方法によれば、短時間の接触により十分な効果を奏することができる。本発明の組成物とコンタクトレンズとの接触は、コンタクトレンズケア用剤にコンタクトレンズを数分間〜数時間浸漬して行ってもよく、点眼薬や洗眼薬とコンタクトレンズが接触するように、数秒から数分間、組成物の眼内滞留性が高い場合には数時間、眼に装用中のコンタクトレンズに適用して行ってもよく、コンタクトレンズ装着液としてコンタクトレンズを眼に適用する際にコンタクトレンズに適用して行ってもよい。
【実施例】
【0051】
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
尚、各実施例及び比較例の粘度は、E型粘度計の1種であるTVE−20L形粘度計コーンプレートタイプ(トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本))を用いて、以下の測定条件の下で測定を行った。
測定条件:
TVE−20L形粘度計コーンプレートタイプに付属の標準コーンロータ(図1における円すい1に相当)(平円板と円すいがなす角度=1°34’、半径(R)=2.4cm)をフルスケール・トルク673.7×10−7 Nm のスプリングを介してモータで回転させる。測定時、粘度計は回転軸が水平面に対して垂直になるように設置する。
被検試料1mlをコーンロータの所定の位置(平円板)に載置し、温度が20℃になるまで放置する。次いで、装置を被検試料の粘度に応じた回転数で回転させ、表示された粘度を読み取る。高精度の測定結果を得るために、被検試料測定前に、JIS Z 8809 により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として用い、測定値が標準液の粘度に一致するように調整する。なお、TVE−20L形粘度計コーンプレートタイプ以外の市販の機種を用い、上記と同様にコーンロータを選択して実施し、適宜校正することにより、同等の結果を得ることもできる。
使用ローター:標準ローター(1°34′、R=2.4cm)
回転数 :5rpm
試料量 :1ml
測定温度 :20℃
時間 :3分後の粘度を測定値とした。
【0052】
試験例1 レンズ白濁汚れ抑制効果 ソフトコンタクトレンズ(ワンデイアキュビュー(登録商標)ジョンソン&ジョンソン株式会社)を試験液(比較例及び実施例)に5秒間浸漬後に試験液からレンズを取り出して余分な液を軽く拭き取った後、表1に記載のタンパク質擬似汚れ液2mLに浸漬して34度で8時間以上静置した。 これらの処理を5回繰り返した後、生理食塩水4mLでレンズをすすぎ、レンズの濁度を測定して試験前のレンズ濁度との差を算出した。レンズ濁度の測定には日本電色工業製濁度計(NDH−300A)を用いた。白濁汚れの判定は、比較例1の試験液で処理したレンズの濁度を1として、各試験液処理レンズの濁度との比で行った。1.00未満であった場合を◎、1.00以上1.05未満であった場合を○、1.05以上1.10未満であった場合を△、1.10以上であった場合を×とした。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
試験の結果、比較例1の試験液に浸漬したコンタクトレンズに比して、カルシウム塩のみや水溶性高分子化合物のみを配合している試験液(比較例2〜比較例6)に浸漬したコンタクトレンズでは濁度が増加しており、このようにカルシウム塩単独または水溶性高分子化合物単独で配合した処方においては汚れの増加が見られた。これに対して、カルシウム塩と水溶性高分子化合物が配合された試験液(実施例1〜4)に浸漬したコンタクトレンズでは、比較例2〜比較例6に比して、全ての処方について濁度が低く、白濁汚れが改善されている事が示され、また比較例1に比しても白濁汚れは同等か減少していた。さらに、結果は示さないが、シリコンハイドロゲルレンズ(O2オプティクス(登録商標)チバビジョン株式会社)を用いた試験でも同様の結果であった。
カルシウムと水溶性高分子化合物を含有する組成物において、コンタクトレンズの白濁汚れが抑制されていることが確認された。本発明の組成物は、カルシウムが原因となりレンズが汚れるのを予防し抑制するのみならず、蛋白質が強固に結合した汚れをも抑制できることを示している。ならびに水溶性高分子化合物が蛋白質等と共にコンタクトレンズ表面に付着する事による汚れをも抑制することができることを示している。
【0056】
表3及び表4に、本発明をソフトコンタクトレンズ(表中はSCL)用点眼薬、ソフトコンタクトレンズ(表中はSCL)用装着液、ソフトコンタクトレンズ(表中はSCL)用ケア用剤とする場合の実施例を示す。これらの点眼剤は、日本薬局方製剤総則に従って製することができ、濾過滅菌等を施して無菌とした製剤をプラスチック製容器に充填して製することができる。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】円すい−平板形回転粘度計の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム塩、及び水溶性高分子化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項2】
水溶性高分子化合物が、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、デキストラン、ポリエチレングリコール、酸性ムコ多糖、アルギン酸及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項3】
水溶性高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩及びアルギン酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項4】
水溶性高分子化合物が、セルロース系高分子化合物、酸性ムコ多糖及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項5】
水溶性高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コンドロイチン硫酸又はその塩及びヒアルロン酸又はその塩からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1乃至4のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項6】
カルシウム塩を0.001mmol/L〜10mmol/L、水溶性高分子化合物を0.001(w/v)%〜10(w/v)%で含有する請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項7】
点眼薬、装着液、洗眼薬又はコンタクトレンズケア用剤である請求項1乃至6のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項8】
ソフトコンタクトレンズ用である請求項1乃至7のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項9】
カルシウム塩が塩化カルシウムである請求項1乃至8のいずれかに記載のコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項10】
カルシウム塩及び水溶性高分子化合物を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物とコンタクトレンズを接触することによって、コンタクトレンズへの汚れを抑制する方法。
【請求項11】
コンタクトレンズがソフトコンタクトレンズである請求項10に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−264622(P2007−264622A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50265(P2007−50265)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】