説明

コンテナ用岸壁クレーン

【課題】ガーダの内側とブームの内側とにそれぞれ設けられたトロリレールの継目をトロリが走行する際の衝撃音と振動を防止すると共に、ガーダの外側とブームの外側とにそれぞれ設けられたトラバーサレールの継目をトラバーサが走行する際の衝撃音と振動を防止し、更に、レールのメンテナンス性を向上させたコンテナ用岸壁クレーンを提供する。
【解決手段】海側トロリと陸側トロリとこれらのトロリの間でコンテナを中継をするトラバーサとを備えたコンテナ用岸壁クレーンにおいて、前記トロリの車輪とトラバーサの車輪が走行するそれぞれの本レール11G、11B、12G、12Bの継目に補助レール3を設け、更に、前記本レール11G、11B、12G、12Bより、前記トロリの車輪あるいはトラバーサの車輪を転動可能に補助レール3を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾におけるコンテナの荷役を行うコンテナ用岸壁クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、港湾やコンテナターミナル等において、コンテナ船31のコンテナ35の荷役をするコンテナ用岸壁クレーン1が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載のコンテナ用岸壁クレーン1は、コンテナ船31側のコンテナ35の荷役を行う海側トロリ5aと、岸壁41(コンテナヤード)側のコンテナ35の荷役を行う陸側トロリ5bとを備え、更に、海側トロリ5aと陸側トロリ5bとの間でコンテナ35を中継するトラバーサ4を備えているので、それぞれの機器(海側トロリ5a、陸側トロリ5b、トラバーサ4)で個別に荷役作業が行われるようになり、一台のトロリで荷役をしていた従来のクレーンよりも飛躍的に荷役速度が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−89254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1記載のコンテナ用岸壁クレーン1は、図7(a),(b)に示すように、海側トロリ5aと陸側トロリ5bとが、ブームBの内側とガーダGの内側とにそれぞれ設けられたトロリレール11B,11G上を走行可能に設けられ、前記トラバーサ4が、ブームBの外側とガーダGの外側とにそれぞれ設けられたトラバーサレール12B,12G上を走行可能に設けられている。
【0006】
また、前記ブームBは、コンテナ用岸壁クレーン1の休止時や待機時に、図6の一点鎖線で示されるように立ち上げた状態とするために、ヒンジ部21を介してガーダGに連結されている。従って、前記トロリレール11B,11Gとトラバーサレール12B,12Gとは、前記ヒンジ部21近傍で互いに切断された状態で形成されている。
【0007】
従って、図7(a)に示すように、海側トロリ5aとコンテナ35との荷重(約120t)によってブームBが内側に捻れるように変形し、また、図7(b)に示すように、トラバーサ4とコンテナ35との荷重(約120t)によってガーダGが外側に捻れるように変形する。荷役するコンテナ35の大きさや個数によってその捻れ変形が変動するが、ブームBの捻れ角αは−0.2〜+0.2°、ガーダGの捻れ角βは−0.1〜+0.1°となる。
【0008】
(レール面が不連続となる問題)
このような捻れ現象が発生すると、図8(a)に示すように、ブームB側のトロリレール11Bの端部あるいはトラバーサレール12Bの端部が前記捻れ角αの傾斜となり、その結果、図8(b)に示すように、ガーダG側のトロリレール11Gの端縁部あるいはトラバーサレール12Gの端縁部よりも上昇することになる。その上昇高さhは実際には0.3〜0.6mmと僅かではあるが変位を生じ、0.3mm以上になると、トロリ5a,5bおよびトラバーサ4がブームB側からガーダ側Gに走行する際に、前記高さh分落下して衝撃音と振動を生ずる。
【0009】
このようにトラバーサ10がガーダG側にある場合には、海側トロリ5aのあるブームBと逆向きにガーダGが捩られるため、各レール11,12の端縁部Kの高さの差が、トラバーサ10の無い岸壁クレーンと比べて大きくなる。また、トロリ5a,5bやトラバーサ4の重量が120tと大きいこともあって、その衝撃音が90dB以上と大きく、振動もある為、トロリレール11Gおよびトラバーサレール12Gの端部の金属疲労が進行し、その端部が欠けたり割れたりすることがあった。また、衝撃音と振動がトロリ5a,5bの運転席7の作業者に伝達され、これが作業者へのストレスとして蓄積する一因となっていた。
【0010】
また、トロリレール11B,Gやトラバーサレール12B,Gは前述の高所に設置されており、容易に交換作業を行うことができない上にその作業期間が長いため、一旦レール11,12に破損が生じ交換を行う際には、コンテナ用岸壁クレーン1の休止期間が長くなっていた。
【0011】
本発明は、前述の課題に鑑み、ガーダの内側とブームの内側とにそれぞれ設けられたトロリレールの継目をトロリが走行する際の衝撃音と振動とを防止すると共に、ガーダの外側とブームの外側とにそれぞれ設けられたトラバーサレールの継目をトラバーサが走行する際の衝撃音と振動とを防止し、更に、前記トロリレールおよびトラバーサレールのメンテナンス性を向上させたコンテナ用岸壁クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンは、次のように構成されている。
【0013】
1)岸壁に沿って走行可能なクレーン本体と、このクレーン本体の陸側と海側とに向けて延長されそのクレーン本体に固設されたガーダと、このガーダにヒンジ部を介して連結されたブームと、陸側トロリと、海側トロリと、コンテナを受継運搬するトラバーサとを有し、前記ガーダとトラバーサの両側面のそれぞれに前記トロリの車輪とトラバーサの車輪とがそれぞれ転動するレールが設けられ、更に、前記レールの継目の側方に、前記車輪がそのレールの転動面より迂回して転動する補助レールを併設したことを特徴としている。
【0014】
2)前記補助レールは、本体と、この本体の下部に敷設される可撓性部材とを有し、前記本体が可撓性部材を介してガーダ上に固定されていることを特徴としている。
【0015】
3)前記補助レールは、上部に前記車輪を転動させる転動面が形成され、下部に円弧状突条が形成された本体と、この本体の下部の円弧状突条を受け入れる凹条が形成された支持体と、前記本体の下方の側面に設けられた可撓性部材と、この可撓性部材を保持する保持部材とを備え、前記本体が、保持部材と支持体とを介してガーダ上に固定されていることを特徴としている。
【0016】
4)前記補助レールは、上部に前記車輪を転動させる転動面が形成され、下部にピン留め穴が形成された本体と、前記本体を受け入れる受入凹部が形成され、この凹部の側面に可撓性部材が設けられた支持体とを備え、前記本体が、ガーダ上に固定された前記支持体に枢支されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
前述の構成により、レールの転動面より補助レールの転動面にトロリの車輪あるいはトラバーサの車輪が転動し、次いで、その補助レールの転動面より、レールの転動面に前記車輪が転動するようになる。
【0018】
従って、トロリやトラバーサの重量によりガーダとブームとの間に捻れ現象が発生し、これに伴ってレールの継目で転動面に高低差を生じ、その転動面が不連続となる問題が発生しても、トロリの車輪およびトラバーサの車輪が前記高低差で落下したり、レールの端縁部と衝突したりすることが防止される。
【0019】
結果、トロリおよびトラバーサがレールの継目を通過する際に振動や衝撃音が著しく小さくなるので、作業者へその振動や衝撃音が伝達されることによるストレスの蓄積が防止される。
【0020】
また、レールの端縁部が振動や衝撃によって金属疲労することが防止されるので、従来よりも長期に亘ってレールの交換をすることなくコンテナ用岸壁クレーンを稼働させることが可能となる。
【0021】
更に、補助レールが摩耗した場合には、その補助レールのみを交換するだけでメンテナンスが完了するので、レールそのものを交換していた従来に比べてメンテナンス性が著しく向上すると共に、その交換作業が簡単且つ短時間に行えるので、レールのメンテナンスに伴うコンテナ用岸壁クレーンの休止期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンの要部を示す概略図である。
【図2】本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンの要部を示す概略斜視図である。
【図3】本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンにおける補助レールとレールとの関係を示す図である。
【図4】本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンにおける補助レールとレールとの関係を示す図である。(a)は車輪がレール上を走行している状態を示し、(b)は車輪が補助レール上を走行している状態を示す。
【図5】本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンにおける補助レールとレールとの関係を示す他の実施態様を示す図である。(a)は球面支承により補助レールを支持したものを示し、(b)は補助レールを軸支したものを示す。
【図6】コンテナ用岸壁クレーンの概略構成図である。
【図7】コンテナ用岸壁クレーンのブームとガーダの撓みを示す図である。(a)は海側トロリの重量によるブームの撓みを示し、(b)はトラバーサの重量によるガーダの撓みを示している。
【図8】従来のコンテナ用岸壁クレーンのガーダ側のレールとブーム側のレールとの関係を示す図である。(a)はブーム側の撓みによるレールの傾斜を示し、(b)はブーム側の撓みによる両レールの高さのズレを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンについて説明する。
【0024】
本発明に係るコンテナ用岸壁クレーンは、図6に示すように、ガーダGとブームBとがヒンジ部21を介して連結されており、海側トロリ5aと陸側トロリ5bとの中間でコンテナ35を中継するトラバーサ4を有しており、図1および図7に示すように、前記トロリ5a,5bが一対のガーダGの内側と一対のブームBの内側とにそれぞれ設けられたトロリレール11G,11B上を横行し、前記トラバーサ4がガーダGの外側とブームBの外側とにそれぞれ設けられたトラバーサレール12G,12B上を走行するように構成されている。
【0025】
前記トロリレール11G,11Bは、図2に示すように、ガーダG側のトロリレール1
1Gの端部Kと、ブームB側のトロリレール11Bの端部Kとの継目Tuに、それらのレール11に沿って補助レール3が設けられている。前記トロリレール11G,11Bのそれぞれの端部Kは、それぞれの一部が長手方向に切除された切除部Mが形成されており、この切除部Mの長さはそれぞれ約300mmである。
【0026】
前記補助レール3は、図3に示すように、断面略L字形状の本体3aと、この本体3aの下部に敷設される可撓性部材gとを有し、前記本体3aが可撓性部材gを介してガーダG上に固定手段16により固定されている。また、図4(b)に示すように、補助レール3の転動面R2が、ガーダG側のレール11Gの転動面R1およびブームB側のレール11Bの転動面R3よりトロリ5aの車輪18が円滑に連続して転動するように、その補助レール3の転動面R2の高さh1が0.2〜0.4mmに調整されている。
【0027】
また、補助レール3の転動面R2は、その両端では前記レール11B,11Gの転動面R1,R2よりも低くなると共に、中心部ではレール11B,11Gの端部K,Kよりも高くなるように円弧状に形成されている。可撓性部材gは、前記補助レール3がトロリ5aの荷重によって僅かに可動とするものであり、硬質ゴムに限定されるものではない。
【0028】
また、補助レール3の他の実施態様としては、図5(a)に示すように、上部にトロリ5a,5bの車輪18およびトラバーサ4の車輪19を転動させる転動面R2が形成され下部に円弧状突条rが形成された本体3aと、この本体3aの下部の円弧状突条rを受け入れる凹条r2が形成された支持体15Aと、前記本体3aの下方の側面に設けられた可撓性部材gと、この可撓性部材gを保持する保持部材3c(レールクリップ)とを備え、前記本体3aが、保持部材3cと支持体15Aとを介してガーダ上に固定手段16により固定されているものでもよい。このように構成された補助レール3は、本体3aに作用する側方力が前記可撓性部材gを有する保持部材3cにより規制されるようになっていると共に、車輪18,19をその転動面R2に誘導するようになっている。更に、補助レール3は、その本体3aが保持部材3cの上部でクリップされて上下の動きを制限している。
【0029】
補助レール3の更に他の実施態様としては、図5(b)に示すように、上部に前記車輪18,19を転動させる転動面R2が形成され下部にピン留め穴pが形成された本体3aと、前記本体3aを受け入れる受入凹部15dが形成されこの凹部15dの側面に可撓性部材gが設けられた支持体15Bとを備え、前記本体3aが、ガーダG上に固定手段16により固定された前記支持体15Bに枢支されていることものでもよい。このように構成された補助レール3は、本体3aに作用する側方力が、可撓性部材gが設けられた支持体15Bにより規制されるようになっていると共に、車輪18,19をその転動面R2に誘導するようになっている。
【0030】
図4(a),(b)に示しているように、ガーダG側のレール11Gの端部KとブームB側のレール11Bの端部Kとの隙間Sは約6mmに形成されており、図1,2,4に示すように、ブームB側の台座板Dは、ガーダG側の台座板Dの補助レール3を設けた突出部分を受け入れる形状に形成されている。
【0031】
前記レール11B,11Gとしては、トロリ5の走行速度や転動荷重に応じて適切なものが使用され、本実施例においては、例えば、JIS30〜37kg/mレールが使用される。また、補助レール3は前述のレールと同等の機械強度や硬度を有するものが使用される。
【0032】
また、トラバーサ4が走行するトラバーサレール12についても、前述のトロリレール11と同様に、図1に示すように、トラバーサレール12の端部に補助レール3が設けられている。
【0033】
このように構成された本発明に係るコンテナ用岸壁クレーン1は、図1にトロリ5の車輪がレールと接触している部分を記号Fで示すように、トロリレール11B,11Gの端部K,Kにトロリ5の車輪18が接触することなく、その車輪18を補助レール3に乗り移らせることができる。また、補助レール3は支承15によって可動となっているので、前記車輪18を円滑に受け入れると共に他のレールへ円滑に乗り移らせることができる。同様に、トラバーサレール12についても、図1に記号Fで示すように、レール12B,12Gの端部にトラバーサ4の車輪19が接触することなく、その車輪19を補助レール3に乗り移らせることができる。
【0034】
従って、トロリ5aの重量によるブームBの撓みと、トラバーサレール4の重量によるガーダGの撓みとによるレール11,12の端部の段差(高低差)が発生しても、補助レール15によって車輪18,19を滑らかに乗り移らせることができるようになり、レール11,12の端部に車輪18,19が接触しなくなる。
【0035】
結果、レール11,12の端部の金属疲労による欠けや割れが防止され、衝撃音や振動が防止される。また、補助レールを交換することでメンテナンスを行えるようになるので、レールのメンテナンス性が向上する。
【符号の説明】
【0036】
1 コンテナ用岸壁クレーン
2 クレーン本体
G ガーダ
B ブーム
3 補助レール
4 トラバーサ
5a 海側トロリ
5b 陸側トロリ
6 吊具
7 運転席
11,11B,11G トロリレール
12,12B,12G トラバーサレール
16 固定手段
18 車輪
31 コンテナ船
32 シャーシ
35 コンテナ
41 岸壁
g 可撓性部材
h1 高さ(高低差)
R1,R2,R3 転動面
K 端部
D 台座板
M 切除部
Tu 継目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁に沿って走行可能なクレーン本体と、このクレーン本体の陸側と海側とに向けて延長されそのクレーン本体に固設されたガーダと、このガーダにヒンジ部を介して連結されたブームと、陸側トロリと、海側トロリと、コンテナを受継運搬するトラバーサとを有し、前記ガーダとトラバーサの両側面のそれぞれに前記トロリの車輪とトラバーサの車輪とがそれぞれ転動するレールが設けられ、
更に、前記レールの継目の側方に、前記車輪がそのレールの転動面より迂回して転動する補助レールを併設したことを特徴とするコンテナ用岸壁クレーン。
【請求項2】
前記補助レールは、本体と、この本体の下部に敷設される可撓性部材とを有し、前記本体が可撓性部材を介してガーダ上に固定されていることを特徴とする請求項1記載のコンテナ用岸壁クレーン。
【請求項3】
前記補助レールは、上部に前記車輪を転動させる転動面が形成され、下部に円弧状突条が形成された本体と、この本体の下部の円弧状突条を受け入れる凹条が形成された支持体と、前記本体の下方の側面に設けられた可撓性部材と、この可撓性部材を保持する保持部材とを備え、前記本体が、保持部材と支持体とを介してガーダ上に固定されていることを特徴とする請求項1記載のコンテナ用岸壁クレーン。
【請求項4】
前記補助レールは、上部に前記車輪を転動させる転動面が形成され、下部にピン留め穴が形成された本体と、前記本体を受け入れる受入凹部が形成され、この凹部の側面に可撓性部材が設けられた支持体とを備え、前記本体が、ガーダ上に固定された前記支持体に枢支されていることを特徴とする請求項1記載のコンテナ用岸壁クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−235309(P2010−235309A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88224(P2009−88224)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】