説明

コンデンサの放電回路

【課題】体格の増大を抑制することのできるコンデンサの放電回路を提供する。
【解決手段】高圧バッテリ16と、一対の入力端子を有して且つ一対の入力端子を介して高圧バッテリ16と接続されるインバータ12と、一対の入力端子間に接続されるコンデンサ20と、放電回路22とを備える電力変換システムがある。ここで、放電回路22のフォトダイオード26a及び放電抵抗体24の直列接続体がインバータ12の一対の入力端子間に接続される。また、フォトトランジスタ26bの一端は、抵抗体28を介して電源30に接続され、他端は接地されている。さらに、放電抵抗体24の抵抗値は、放電抵抗体24が正常な場合、フォトトランジスタ26bがオンするように設定されている。こうした構成において、抵抗体28及びフォトトランジスタ26b間の電圧に基づき、放電抵抗体24の異常(オープン故障)の有無を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサとを備えるシステムに適用されるコンデンサの放電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に見られるように、リレーを介してバッテリがインバータ、コンデンサ及び一対の放電抵抗体に並列接続されるシステムが知られている。詳しくは、上記システムに備えられるコンデンサは、インバータの一対の入力端子間の電圧変動を抑制する機能を有する。また、放電抵抗体は、リレーがオフされてバッテリ及びインバータ間が遮断される状況下においてコンデンサの放電を行う機能を有する。
【0003】
ここで、放電抵抗体に断線(オープン故障)等の異常が生じると、コンデンサの放電を適切に行うことができなくなる懸念がある。こうした事態を回避するために、下記特許文献1には、一対の放電抵抗体によって分圧されたインバータの入力電圧を検出する電圧検出回路を備え、電圧検出回路によって検出された電圧に基づき放電抵抗体の異常の有無を判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−172862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記技術において、電圧検出回路として例えば差動増幅回路を用いると、電圧検出回路を構成する素子等の数が多くなることがある。この場合、放電抵抗体の異常の有無を判断するための回路の体格が増大することが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、体格の増大を抑制することのできるコンデンサの放電回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサとを備えるシステムに適用され、前記一対の入力端子間に接続される放電抵抗体と、入力部及び出力部を有して且つ該入力部及び該出力部の間を絶縁しつつ該入力部に流れる電流に応じた信号を該出力部に伝達する絶縁素子とを備え、前記絶縁素子の入力部は、前記放電抵抗体と直列接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、絶縁素子の入力部を放電抵抗体に直列接続している。ここで、放電抵抗体に何らかの異常(オープン故障又はショート故障)が生じると、放電抵抗体に直列接続される入力部を流れる電流値が変化することで、出力部に伝達される信号が変化する。すなわち、出力部に伝達される信号の変化によって放電抵抗体の異常の有無を判断することができる。このように、上記発明によれば、放電抵抗体の異常の発生によって出力部に伝達される信号を変化させる構成を入力部及び放電抵抗体の直列接続体からなる簡易な構成によって実現することができる。これにより、放電抵抗体の異常の有無を判断するための放電回路の体格の増大を抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記絶縁素子は、前記入力部としてのフォトダイオードと、前記出力部としてのフォトトランジスタとを備えるフォトカプラであることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、放電抵抗体に異常が生じる場合、放電抵抗体に直列接続されるフォトダイオードを流れる電流が変化し、これに応じてフォトトランジスタの動作状態(オン又はオフ)が切り替えられることとなる。すなわち、放電抵抗体の異常の有無をフォトカプラによって適切に伝達させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記放電抵抗体の抵抗値は、該放電抵抗体に異常が生じることによって前記フォトトランジスタの動作状態が切り替わるように設定され、前記フォトトランジスタの動作状態の切替に応じて出力論理値を反転させる論理値出力手段と、前記論理値出力手段から出力される論理値が反転することに基づき、前記放電抵抗体に異常が生じている旨判断する異常判断手段とを更に備えることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、放電抵抗体の抵抗値を上記態様にて設定している。このため、論理値出力手段から出力される論理値が反転することに基づき、放電抵抗体に異常が生じている旨判断することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記放電抵抗体の抵抗値は、該放電抵抗体が正常な場合に前記フォトトランジスタがオンするように設定されることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、放電抵抗体が正常な場合に、フォトトランジスタがオンするように放電抵抗体の抵抗値が設定されている。換言すれば、放電抵抗体にオープン故障が生じることによってフォトトランジスタがオフすることとなる。このため、論理値出力手段から出力される論理値が反転することに基づき、放電抵抗体にオープン故障が生じている旨判断することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、前記フォトカプラを第1のフォトカプラとし、前記論理値出力手段を第1の論理値出力手段とし、第2のフォトカプラと、前記第2のフォトカプラのフォトトランジスタの動作状態の切替に応じて出力論理値を反転させる第2の論理値出力手段とを更に備え、前記第2のフォトカプラのフォトダイオードは、前記第1のフォトカプラのフォトダイオードに並列接続され、前記コンデンサ、前記放電抵抗体及び前記第1のフォトカプラのフォトダイオードを含む第1の閉ループ回路の抵抗値は、該放電抵抗体が正常な場合に前記第1のフォトカプラのフォトトランジスタがオンするように設定され、前記コンデンサ、前記放電抵抗体及び前記第2のフォトカプラのフォトダイオードを含む第2の閉ループ回路の抵抗値は、該放電抵抗体が正常な場合に前記第2のフォトカプラのフォトトランジスタがオフして且つ、該放電抵抗体にショート故障が生じることによって前記第2のフォトカプラのフォトトランジスタがオンするように設定され、前記異常判断手段は、前記第1の論理値出力手段及び第2の論理値出力手段の双方から出力される論理値に基づき、前記放電抵抗体の異常の有無を判断することを特徴とする。
【0017】
上記発明では、上記態様にて各閉ループ回路の抵抗値を設定することで、第1の論理値出力手段及び第2の論理値出力手段の双方の出力論理値に基づき、放電抵抗体のオープン故障及びショート故障の双方を検出することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記第1の閉ループ回路を開閉する第1のスイッチと、前記第2の閉ループ回路を開閉する第2のスイッチとを更に備え、前記異常判断手段は、前記第1のスイッチがオンされて且つ前記第2のスイッチがオフされる場合における前記第1の論理値出力手段の出力論理値と、前記第1のスイッチがオフされて且つ前記第2のスイッチがオンされる場合における前記第2の論理値出力手段の出力論理値とに基づき、前記放電抵抗体の異常の有無を判断することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、第1のスイッチ及び第2のスイッチが設けられている。こうした上記発明によれば、各閉ループ回路のフォトトランジスタを放電抵抗体の異常の有無に応じた動作態様とするために要求される各閉ループ回路の抵抗値の設定自由度を向上させる等、放電回路の設計自由度を向上させることができる。
【0020】
しかも、放電抵抗体の異常判断を行う場合に各閉ループ回路を形成させるべく、第1,第2のスイッチを操作する手段を備えるならば、例えば各閉ループ回路が常時形成される回路構成と比較して、直流電源から放電回路に電流が流れることによる消費電力を低減させることもできる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項3〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記異常判断手段によって前記放電抵抗体に異常が生じている旨判断された場合、その旨を外部に通知する通知手段を更に備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる異常判断処理に用いる真理値表。
【図3】第2の実施形態にかかるコンデンサの放電回路。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかるコンデンサの放電回路を、ハイブリッド車両の主機回転機に接続される電力変換システムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0025】
図示されるように、モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータ12及び昇圧コンバータ14を介して高圧バッテリ16に接続されている。
【0026】
詳しくは、高圧バッテリ16は、例えば百V以上となる端子電圧を有する蓄電池である。また、昇圧コンバータ14は、一対のスイッチング素子等を備えて構成され、これらスイッチング素子の操作によって高圧バッテリ16の直流電圧を所定の直流電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧する機能を有する。なお、高圧バッテリ16及び昇圧コンバータ14間には、これらの間を導通及び遮断するリレー18が設けられている。
【0027】
昇圧コンバータ14の一対の出力端子には、インバータ12の一対の入力端子(U,V,W相を接続する点)が接続されている。インバータ12は、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えて構成されており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、これらスイッチング素子S*#(*=u,v,w、#=p,n)として、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。また、これらスイッチング素子S*#にはそれぞれ、ダイオードD*#が逆並列に接続されている。
【0028】
インバータ12の一対の入力端子間には、コンデンサ20が接続されている。コンデンサ20は、例えばモータジェネレータ10が電動機として機能することで高圧バッテリ16の電力が消費されるに際し、インバータ12の入力電圧の急激な変動を抑制する機能を有する。
【0029】
また、インバータ12の一対の入力端子間には、放電回路22が接続されている。放電回路22は、放電抵抗体24及びフォトカプラ26等を備えて構成され、後述する放電制御処理を行うことができなくなる非常時においてコンデンサ20の放電を行うためのものである。
【0030】
詳しくは、放電抵抗体24は、複数(図中、4つを例示)の抵抗体の直列接続体である。放電抵抗体24の一端は、インバータ12の一対の入力端子のうち高電位側に接続され、他端は、フォトカプラ26の1次側(フォトダイオード26a)のアノード側に接続されている。そして、フォトダイオード26aのカソード側は、インバータ12の一対の入力端子のうち低電位側に接続されている。
【0031】
フォトカプラ26の2次側(フォトトランジスタ26b)の一端(コレクタ)は、抵抗体28を介して電源30に接続され、他端(エミッタ)は接地されている。
【0032】
ハイブリッド制御装置(HVECU32)は、モータジェネレータ制御装置(MGECU34)よりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求からみて上流側)の制御装置である。
【0033】
一方、MGECU34は、インバータ12のスイッチング素子S*#を操作することでモータジェネレータ10の制御量(例えばトルク)を所望に制御するための制御装置である。MGECU34は、マイクロコンピュータ(マイコン34a)と、スイッチング素子S*#のゲート電圧を調節するためのゲート駆動回路34bとを備えている。
【0034】
MGECU34(マイコン34a)は、モータジェネレータ10を駆動させる際にリレー18をオンする(閉状態とする)処理や、昇圧コンバータ14の操作による高圧バッテリ16の電圧の昇圧処理等を行う。
【0035】
特に、マイコン34aは、放電制御処理を行う。この処理は、リレー18がオフされて(開状態とされて)高圧バッテリ16及び昇圧コンバータ14間が遮断される状況下、コンデンサ20の放電を行うものであり、その後の車両メンテナンス等に備えて安全を確保することを目的とするものである。本実施形態では、放電制御処理を、モータジェネレータ10に無効電流を流すように(モータジェネレータ10の生成トルクを0とするように)インバータ12を操作する処理とする。こうした放電制御処理によれば、迅速にコンデンサ20の放電を行うことができる。
【0036】
ところで、車両の衝突等によって電力変換システムが損傷することがある。具体的には、例えば、マイコン34aの電力供給源が断たれたり、スイッチング素子S*#の実装される回路基板が損傷したりする。電力変換システムが損傷すると、インバータ12を適切に通電操作できなくなること等によって放電制御処理を行うことができなくなる懸念がある。こうした非常時に備えて上記放電回路22が備えられるものの、この回路の放電抵抗体24に異常が生じる場合には、コンデンサ20の放電を適切に行うことができなくなる懸念がある。
【0037】
こうした事態を回避すべく、本実施形態では、放電回路22における抵抗体28及びフォトトランジスタ26b間の電圧を異常判断用電圧dig1として取り込み、これに基づき放電抵抗体24の異常判断処理を行う。以下、この処理について説明する。
【0038】
本実施形態では、異常判断処理として、放電抵抗体24の断線(オープン故障)の有無を判断する処理を行う。
【0039】
詳しくは、放電回路22の放電抵抗体24の抵抗値を、放電抵抗体24が正常な場合にフォトトランジスタ26bをオンさせる(フォトカプラ26をオンさせる)ように設定する。具体的には、例えば、電力変換システムの通常使用時に想定される昇圧コンバータ14の出力電圧(インバータ12の入力電圧)の最小値となる場合にフォトトランジスタ26bをオンさせるように放電抵抗体24の抵抗値を設定すればよい。
【0040】
こうした構成において、図2に示すように、放電抵抗体24が正常な場合、フォトダイオード26aの発光によってフォトトランジスタ26bがオンされる。これにより、抵抗体28及びフォトトランジスタ26b間の電圧が接地電位に引き下げられ、放電回路22からマイコン34aへと論理「L」の異常判断用電圧dig1が出力される。
【0041】
これに対し、放電抵抗体24にオープン故障が生じる場合には、フォトダイオード26aに電流が流れずこれが発光しないことから、フォトトランジスタ26bがオンからオフに切り替えられる。これにより、抵抗体28及びフォトトランジスタ26b間の電圧が電源30の電位に引き上げられ、放電回路22からマイコン34aへと出力される異常判断用電圧dig1の論理が「L」から「H」に反転することとなる。
【0042】
すなわち、異常判断用電圧dig1によれば、放電抵抗体24のオープン故障の有無を判断することができる。
【0043】
なお、マイコン34aは、放電抵抗体24に異常が生じている旨判断した場合、先の図1に示すフェール処理部34cからフェール信号FLをHVECU32に対して出力するフェール処理を行う。これにより、HVECU32側で異常が生じたことを把握することができ、ひいてはHVECU32からユーザにその旨を通知することなどができる。
【0044】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0045】
(1)フォトダイオード26a及び放電抵抗体24の直列接続体を備えて且つこの直列接続体がインバータ12の一対の入力端子間に接続される放電回路22を電力変換システムに備えた。そして、放電抵抗体24の抵抗値を、放電抵抗体24が正常な場合にフォトトランジスタ26bがオンするように設定した。このため、例えば放電抵抗体24の異常判断に用いる電圧検出用に差動増幅回路を用いる場合と比較して、電圧を検出したり、高圧バッテリ16を備える車載高圧システム側から高圧バッテリ16よりも端子電圧が十分に低い低圧バッテリを備える車載低圧システム側へと信号を伝達したりするために用いる素子や配線の数を低減させることができる。これにより、回路基板上における放電回路22の構成部品(素子等)の実装面積を低減させることができる。すなわち、放電抵抗体24の異常の有無を判断するための放電回路22の体格の増大を好適に抑制することができる。
【0046】
(2)異常判断用電圧dig1の伝達にフォトカプラ26を用いた。このため、高圧システムと低圧システムとの間を絶縁しつつ高圧システム側から低圧システム側へと異常判断用電圧dig1を簡易な構成で適切に伝達することができる。そして、伝達された異常判断用電圧dig1の論理によって放電抵抗体24のオープン故障の有無を簡易に判断することもできる。
【0047】
(3)放電抵抗体24に異常が生じている旨判断された場合、フェール処理を行った。これにより、電力変換システムの信頼性が低下した状態でこのシステムが継続して使用される事態を回避することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0049】
本実施形態では、異常判断処理として、放電抵抗体24のオープン故障に加えて、放電抵抗体24の短絡(ショート故障)の有無を判断する処理を行う。
【0050】
図3に、本実施形態にかかる放電回路22の構成を示す。なお、図3において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を示している。また、本実施形態にかかる放電回路22において、放電抵抗体24の異常の有無を判断するための回路構成が上記第1の実施形態にかかる回路構成と同様な部分がある。このため、上記第1の実施形態にかかるフォトカプラ26、フォトダイオード26a及びフォトトランジスタ26bを、本実施形態では、第1のフォトカプラ26、第1のフォトダイオード26a及び第1のフォトトランジスタ26bと称すこととする。
【0051】
図示されるように、第1のフォトダイオード26aのカソード側は、インバータ12の入力端子のうち低電位側に第1のスイッチSW1を介して接続されている。第1のスイッチSW1は、電気経路を開閉(オンオフ)する電子制御式の開閉手段である。
【0052】
第1のフォトダイオード26a及び第1のスイッチSW1の直列接続体には、抵抗体36、第2のフォトカプラ38のフォトダイオード(第2のフォトダイオード38a)及び第2のスイッチSW2の直列接続体が並列接続されている。ここで、第2のスイッチSW2は、第1のスイッチSW1と同様に、電気経路を開閉する電子制御式の開閉手段である。
【0053】
第2のフォトカプラ38のフォトトランジスタ(第2のフォトトランジスタ38b)の一端(コレクタ)は、抵抗体40を介して電源42に接続され、他端(エミッタ)は接地されている。
【0054】
ちなみに、本実施形態では、第1のフォトカプラ26及び第2のフォトカプラ38として同一構造のものを用いている。また、第1のスイッチSW1及び第2のスイッチSW2として電界効果トランジスタを用いている。特に、第1のスイッチSW1として、デプレッション型MOSFETを用いている。
【0055】
マイコン34aは、第1のスイッチSW1及び第2のスイッチSW2をオン・オフ操作する。ここで、第1のスイッチSW1について説明すると、マイコン34aによる通電操作によって第1のスイッチSW1のゲート電位を低下させることで第1のスイッチSW1をオフする。一方、通電操作の停止によって第1のスイッチSW1のゲート電位を上昇させることで第1のスイッチSW1をオンする。すなわち、第1のスイッチSW1は、いわゆるノーマリオン型のスイッチとして動作することとなる。
【0056】
さらに、マイコン34aは、抵抗体28及び第1のフォトトランジスタ26b間の電圧に加えて、抵抗体40及び第2のフォトトランジスタ38b間の電圧に基づき、放電抵抗体24のオープン故障及びショート故障の有無を判断する異常判断処理を行う。以下、本実施形態にかかる異常判断処理について説明する。
【0057】
まず、本実施形態にかかる異常判断処理に用いる異常判断用電圧について説明する。
【0058】
本実施形態では、異常の有無を判断するために第1の異常判断用電圧dig1及び第2の異常判断用電圧dig2を用いる。ここで、第1の異常判断用電圧dig1は、第1のスイッチSW1がオンされて且つ第2のスイッチSW2がオフされる状況下、コンデンサ20、放電抵抗体24及び第1のフォトダイオード26aを含む第1の閉ループ回路が形成される場合の抵抗体28及び第1のフォトトランジスタ26b間の電圧である。また、第2の異常判断用電圧dig2は、第1のスイッチSW1がオフされて且つ第2のスイッチSW2がオンされる状況下、コンデンサ20、放電抵抗体24、抵抗体36及び第2のフォトダイオード38aを含む第2の閉ループ回路が形成される場合の抵抗体40及び第2のフォトトランジスタ38b間の電圧である。
【0059】
また、本実施形態では、上記第2の閉ループ回路が形成される状況下において、放電抵抗体24及び抵抗体36の合計抵抗値を、放電抵抗体24が正常な場合に第2のフォトトランジスタ38bをオフさせて且つ放電抵抗体24の一部にショート故障が生じることによって第2のフォトトランジスタ38bをオンさせるように設定する。具体的には、例えば、電力変換システムの通常使用時に想定される昇圧コンバータ14の出力電圧の最大値となる場合に第2のフォトトランジスタ38bをオフさせるように上記合計抵抗値を設定すればよい。
【0060】
次に、第1,第2の異常判断用電圧dig1,dig2を用いた放電抵抗体24の具体的な異常判断手法について説明する。
【0061】
第1の異常判断用電圧dig1の論理が「L」であって且つ第2の異常判断用電圧dig2の論理が「H」であると判断された場合、放電抵抗体24に異常が生じていない(放電抵抗体24が正常である)旨判断する。これは、放電抵抗体24が正常である場合、第2のフォトダイオード38aがオフされ、抵抗体40及び第2のフォトトランジスタ38b間の電位が接地電位まで引き下げられないことによるものである。
【0062】
次に、第1の異常判断用電圧dig1の論理及び第2の異常判断用電圧dig2の論理がともに「H」であると判断された場合、放電抵抗体24にオープン故障が生じている旨判断する。これは、オープン故障が生じる場合、第1,第2のフォトトランジスタ26b,38bの双方がオフされることによるものである。
【0063】
そして、第1の異常判断用電圧dig1の論理及び第2の異常判断用電圧dig2の論理がともに「L」であると判断された場合、放電抵抗体24にショート故障が生じている旨判断する。これは、ショート故障が生じる場合、第1,第2のフォトトランジスタ26b,38bの双方がオンされることによるものである。
【0064】
なお、本実施形態において、第1,第2の閉ループ回路のそれぞれの抵抗値を実際には以下のように設定している。
【0065】
まず、第1のスイッチSW1がオンされて且つ第2のスイッチSW2がオフされる状況下において、放電抵抗体24が正常な場合に第1のフォトトランジスタ26bをオンさせるために必要な第1のフォトダイオード26aへの入力電流と、第1のフォトダイオード26aの信頼性とを考慮しつつ、放電抵抗体24の抵抗値を設定する。
【0066】
そして、第1のスイッチSW1がオフされて且つ第2のスイッチSW2がオンされる状況下において、放電抵抗体24が正常な場合に第2のフォトトランジスタ38bをオフさせるために必要な第2のフォトダイオード38aへの入力電流と、第2のフォトダイオード38aの信頼性とを考慮しつつ、抵抗体36の抵抗値を設定する。
【0067】
これに対し、第1、第2のスイッチSW1,SW2が備えられず、第1,第2の閉ループ回路の双方が常時形成される回路構成とする場合には、放電抵抗体24の異常の有無に応じたフォトトランジスタの動作状態とするために要求される放電抵抗体24及び抵抗体36の抵抗値を、第1の閉ループ回路及び第2の閉ループ回路の双方を考慮して設定することが要求される。このため、抵抗体36の抵抗値の選択自由度が狭められる等、放電回路22の設計自由度が低下する懸念がある。
【0068】
ちなみに、本実施形態では、第1のスイッチSW1をノーマリオン型のスイッチとして動作させるため、例えば車両の衝突等によってマイコン34aとこの電力供給源とが遮断される場合であっても、第1のスイッチSW1をオンさせて上記第1の閉ループ回路を形成させることができる。ここでは、高圧システムと低圧システムとを絶縁しつつ第1,第2のスイッチSW1,SW2を操作するためのフォトカプラ等を備える絶縁手段41を備えることで、これらシステムの間を絶縁しつつスイッチを操作することができる。
【0069】
また、本実施形態では、例えばモータジェネレータ10の制御処理等が行われる周期よりも十分長い所定周期(例えば数時間)で異常判断処理が実行される。すなわち、第1の閉ループ回路と第2の閉ループ回路とが常時形成されない。このため、高圧バッテリ16に放電抵抗体24が常時並列接続されることを回避することができ、高圧バッテリ16から放電抵抗体24に電流が流れることによる消費電力を低減させることができる。
【0070】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0071】
(3)上記第1の異常判断用電圧dig1及び第2の異常判断用電圧dig2に基づく異常判断処理を行った。これにより、放電抵抗体24のオープン故障及びショート故障の双方の有無を適切に判断することができる。
【0072】
さらに、第1のスイッチSW1及び第2のスイッチSW2を設ける構成としたため、放電抵抗体24及び抵抗体36の抵抗値の設定の容易化を図ることができる等、放電回路22の設計自由度を向上させることもできる。
【0073】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0074】
・上記第1の実施形態では、異常判断用電圧dig1の論理が「H」となる場合に放電抵抗体24にオープン故障が生じている旨判断したがこれに限らない。例えば、異常判断用電圧dig1の論理が「L」となる場合にオープン故障が生じている旨判断可能な回路構成としてもよい。この場合、フォトトランジスタ26bの一端を電源に接続し、他端を抵抗体を介して接地し、フォトトランジスタ26b及び抵抗体の間の電圧を異常判断用電圧として用いることとなる。
【0075】
・上記第2の実施形態において、放電抵抗体24のショート故障のみを判断する回路構成としてもよい。
【0076】
・絶縁素子としては、光絶縁素子としてのフォトカプラに限らず、例えばフォトMOSFETであってもよい。
【0077】
また、絶縁素子としては、光絶縁素子に限らず、例えば磁気絶縁素子であってもよい。具体的には、例えば、1対のコイル(1次側コイル及び2次側コイル)を備えるトランスを採用すればよい。
【0078】
この場合、例えば、インバータ12の一対の入力端子間に放電抵抗体24及びトランスの1次側コイルの直列接続体を接続して且つ、2次側コイルの両端の電圧を検出可能な回路を備える放電回路を採用すればよい。この回路では、リレー18がオフされて且つコンデンサ20の放電を放電回路のみを用いて行う状況下において、放電抵抗体24が正常の場合、コンデンサ20の放電とともに1次側コイルに流れる電流の漸減に応じた電圧が2次側コイルに印加されることとなる。
【0079】
これに対し、放電抵抗体24のオープン故障が生じる場合には、1次側コイルに電流が流れなくなることから、2次側コイルの印加電圧が0となる。また、放電抵抗体24のショート故障が生じる場合には、放電抵抗体24が正常である場合と比較して、コンデンサ20の放電とともに1次側コイルを流れる電流の低下率が大きくなると考えられることから、2次側コイルの印加電圧が大きくなる傾向になる。放電抵抗体24の異常の有無に応じたこうした2次側コイルの印加電圧の変化に鑑みれば、例えば2次側コイルの印加電圧が0であると判断された場合に放電抵抗体24のオープン故障が生じている旨判断する等、2次側コイルの印加電圧に基づき放電抵抗体24のオープン故障及びショート故障の有無を判断することができると考えられる。
【0080】
・上記第1の実施形態において、高圧バッテリ16と昇圧コンバータ14との間にコンデンサを接続してもよい。この場合、インバータ12及び昇圧コンバータ14の間に設けられるコンデンサ20に加えて、高圧バッテリ16及び昇圧コンバータ14の間に設けられるコンデンサが放電回路22の放電抵抗体24によって放電されることとなる。
【0081】
・電力変換回路(インバータ)としては、駆動輪に機械的に連結される回転機に接続されるものに限らない。例えば、高圧バッテリ16を直接の電源とする空調装置のコンプレッサに内蔵される回転機等に接続されるものであってもよい。また、例えば、高圧バッテリ16の電圧を降圧して低圧システム内のバッテリに出力するDCDCコンバータであってもよい。
【0082】
・電力変換システムに備えられる電力変換回路としては、インバータ12及び昇圧コンバータ14の双方に限らない。例えば、インバータのみ備えられてもよい。
【0083】
・本願発明が適用される車両としてはハイブリッド車に限らず、例えば車載主機としての内燃機関を備えない電気自動車や燃料電池車等であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
12…インバータ、14…昇圧コンバータ、16…高圧バッテリ、20…コンデンサ、22…放電回路、24…放電抵抗体、26…フォトカプラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、一対の入力端子を有して且つ該一対の入力端子を介して前記直流電源と接続される電力変換回路と、前記一対の入力端子間に接続されるコンデンサとを備えるシステムに適用され、
前記一対の入力端子間に接続される放電抵抗体と、
入力部及び出力部を有して且つ該入力部及び該出力部の間を絶縁しつつ該入力部に流れる電流に応じた信号を該出力部に伝達する絶縁素子とを備え、
前記絶縁素子の入力部は、前記放電抵抗体と直列接続されていることを特徴とするコンデンサの放電回路。
【請求項2】
前記絶縁素子は、前記入力部としてのフォトダイオードと、前記出力部としてのフォトトランジスタとを備えるフォトカプラであることを特徴とする請求項1記載のコンデンサの放電回路。
【請求項3】
前記放電抵抗体の抵抗値は、該放電抵抗体に異常が生じることによって前記フォトトランジスタの動作状態が切り替わるように設定され、
前記フォトトランジスタの動作状態の切替に応じて出力論理値を反転させる論理値出力手段と、
前記論理値出力手段から出力される論理値が反転することに基づき、前記放電抵抗体に異常が生じている旨判断する異常判断手段とを更に備えることを特徴とする請求項2記載のコンデンサの放電回路。
【請求項4】
前記放電抵抗体の抵抗値は、該放電抵抗体が正常な場合に前記フォトトランジスタがオンするように設定されることを特徴とする請求項3記載のコンデンサの放電回路。
【請求項5】
前記フォトカプラを第1のフォトカプラとし、
前記論理値出力手段を第1の論理値出力手段とし、
第2のフォトカプラと、
前記第2のフォトカプラのフォトトランジスタの動作状態の切替に応じて出力論理値を反転させる第2の論理値出力手段とを更に備え、
前記第2のフォトカプラのフォトダイオードは、前記第1のフォトカプラのフォトダイオードに並列接続され、
前記コンデンサ、前記放電抵抗体及び前記第1のフォトカプラのフォトダイオードを含む第1の閉ループ回路の抵抗値は、該放電抵抗体が正常な場合に前記第1のフォトカプラのフォトトランジスタがオンするように設定され、
前記コンデンサ、前記放電抵抗体及び前記第2のフォトカプラのフォトダイオードを含む第2の閉ループ回路の抵抗値は、該放電抵抗体が正常な場合に前記第2のフォトカプラのフォトトランジスタがオフして且つ、該放電抵抗体にショート故障が生じることによって前記第2のフォトカプラのフォトトランジスタがオンするように設定され、
前記異常判断手段は、前記第1の論理値出力手段及び第2の論理値出力手段の双方から出力される論理値に基づき、前記放電抵抗体の異常の有無を判断することを特徴とする請求項3又は4記載のコンデンサの放電回路。
【請求項6】
前記第1の閉ループ回路を開閉する第1のスイッチと、
前記第2の閉ループ回路を開閉する第2のスイッチとを更に備え、
前記異常判断手段は、前記第1のスイッチがオンされて且つ前記第2のスイッチがオフされる場合における前記第1の論理値出力手段の出力論理値と、前記第1のスイッチがオフされて且つ前記第2のスイッチがオンされる場合における前記第2の論理値出力手段の出力論理値とに基づき、前記放電抵抗体の異常の有無を判断することを特徴とする請求項5記載のコンデンサの放電回路。
【請求項7】
前記異常判断手段によって前記放電抵抗体に異常が生じている旨判断された場合、その旨を外部に通知する通知手段を更に備えることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のコンデンサの放電回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−31259(P2013−31259A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164270(P2011−164270)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】