コンバインによる収穫方法とこの収穫方法に使用するコンバイン
【課題】刈取り前処理部の圃場への突っ込みや沈み込みを防止しながら収穫作業できるコンバインによる収穫方法を提供する。
【解決手段】刈取り前処理部10に作用する下降ストッパー手段8を効かせ、刈取り前処理部10を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持させながら、かつ、刈取り前処理部10が接地反力によって上昇操作されることを許容しながら収穫走行する。
【解決手段】刈取り前処理部10に作用する下降ストッパー手段8を効かせ、刈取り前処理部10を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持させながら、かつ、刈取り前処理部10が接地反力によって上昇操作されることを許容しながら収穫走行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法と、この収穫方法に使用するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法として、従来、たとえば特許文献1に示されるものを提案した。
特許文献1に示される収穫方法は、昇降シリンダ14の制御弁31を下降位置に操作して刈取り部3(刈取り前処理部に相当)を接地体25が接地するまで下降させ、刈取り部3が圃場に突っ込むことを回避しやすいように、刈取り部3が圃場面の起伏に接地追従して昇降するようにしながら収穫走行するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−34051号公報(段落〔0028〕―〔0032〕、図1,13など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の収穫方法にあっては、圃場が軟弱であると、刈取り前処理部が泥土に沈み込みやすく、この点で改善の余地があった。刈取り前処理部が接地反力によって軽く上昇するように、刈取り部に上昇操作力を付与するバランスバネを採用しても、刈取り前処理部が圃場面にバウンドしにくいように安定的に接地追従するようにするためには、バランスバネによって付与される上昇操作力を極端に強力にすることができず、沈み込みを回避しにくくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、自走機体の前傾などに起因した刈取り前処理部の圃場への突っ込みが回避しやすいのみならず、刈取り前処理部の泥土への沈み込みも回避しやすい状態で収穫作業することができるコンバインによる収穫方法、及びこの収穫方法を採用しやすいコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法において、
前記刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する状態で効かせながら収穫走行する。
【0007】
すなわち、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を効かせながら収穫走行するものだから、圃場が軟弱であっても、刈取り前処理部を泥土に沈み込みにくいように浮上支持させながら収穫走行することができる。
【0008】
下降ストッパー手段は、刈取り前処理部が地面からの接地反力によって設定刈り高さの連結高さから上昇することを許容するものだから、自走機体の前傾や隆起部の存在によって刈取り前処理部が接地しても、刈取り前処理部が接地反力によって上昇して圃場に突っ込みにくくなり、かつ、刈り高さが低くなり過ぎることを回避しやすい。
【0009】
従って、本第1発明によると、刈取り前処理部が圃場に突入して変形や破損することを回避しやすくしながら、かつ、刈り高さ変化を抑制しながら収穫作業することができるのみならず、比較的軟弱な圃場でも、刈取り前処理部が泥土に沈下して刈取り前処理部の駆動不良や、刈取り前処理部に付着した泥土による茎稈の汚れが発生することも回避しやすくしながら収穫作業することができる。しかも、下降ストッパー手段を効かせるだけの簡単な操作で済むように、操作面でも有利なものに得ることができる。
【0010】
本第2発明によるコンバインにあっては、自走機体の前部に昇降自在に連結された刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容するように構成して装備してある。
【0011】
すなわち、下降ストッパー手段を装備してあるものだから、下降ストッパー手段を準備する特別な手間を掛けずに下降ストッパー手段を作用させることができる。そして、下降ストッパー手段を作用させることにより、刈取り前処理部が地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持され、圃場が軟弱であっても、刈取り前処理部を泥土に沈み込みにくくしながら収穫走行することができる。下降ストッパー手段は、刈取り前処理部が地面からの接地反力によって設定刈り高さの連結高さから上昇することを許容するものだから、自走機体の前傾や隆起部の存在によって刈取り前処理部が接地しても、刈取り前処理部が接地反力によって上昇して圃場に突っ込みにくいようにすることができ、かつ、刈り高さが低くなり過ぎることを回避しやすい。
【0012】
従って、本第2発明によると、刈取り前処理部が圃場に突入して変形や破損することを回避しやすく、かつ、刈り高さ変化を抑制しやすいのみならず、比較的軟弱な圃場でも、刈取り前処理部が泥土に沈下して刈取り前処理部の駆動不良や、刈取り前処理部に付着した泥土による茎稈の汚れが発生することを回避しやすくなる。しかも、下降ストッパー手段を準備する特別な手間が不要なように操作面でも有利な状態に得ることができる。
【0013】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において、前記下降ストッパー手段は、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し、作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する油圧シリンダである。
【0014】
すなわち、油圧シリンダを下降側に操作して刈取り前処理部を下降させ、刈取り前処理部が下降作業状態に下降して設定刈り高さになると、油圧シリンダを停止状態に操作することにより、油圧シリンダが下降ストッパー手段になって刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持し、かつ、刈取り前処理部の接地反力による上昇を許容するものである。
【0015】
従って、本第3発明によると、刈取り前処理部を設定刈り高さの対地浮上状態に支持させながら、かつ、刈取り前処理部の接地反力による上昇を許容しながら収穫作業するに当たり、刈取り前処理部が上昇非作業状態から設定刈り高さの下降作業状態まで下降するように油圧シリンダを操作するだけで操作簡単に行うことができる。
【0016】
本第4発明にあっては、本第2又は第3発明の構成において、前記刈取り前処理部に、地面に接触して接地反力を受ける接地平面部を設けてある。
【0017】
すなわち、刈取り前処理部が接地した場合、接地平面部で地面に接触し、圃場が比較的軟弱であっても、接地平面部の平面のために地面に沈み込みにくい状態で接地反力を受けて上昇するものである。
【0018】
従って、本第4発明によると、刈取り前処理部が接地平面部によって地面に沈み込みにくい状態で接地反力を受けて刈取り前処理部に泥土が付着しにくく、付着泥土に起因した駆動不良や茎稈汚れなどを回避しやすくなる。
【0019】
本第5発明にあっては、本第2〜第4発明のいずれか一つの構成において、前記設定刈り高さの連結高さにある刈取り前処理部に上昇操作力を付与するバランスバネを設けてある。
【0020】
すなわち、刈取り前処理部が接地反力を受けた場合、接地反力と、バランスバネによって付与される上昇操作力との合力が刈取り前処理部の重力に抗して刈取り前処理部を上昇操作するものである。これにより、刈取り前処理部が接地反力によって上昇操作される際、刈取り前処理部は、刈取り前処理部の重量の大きさの割には軽く地面に接触するだけで上昇操作されて地面に沈み込みにくくなる。
【0021】
従って、本第5発明によると、刈取り前処理部が接地して上昇操作される際に地面に沈み込みにくく、この面からも、刈取り前処理部に泥土が付着しにくくて、付着泥土に起因した駆動不良や茎稈汚れなどを回避しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】コンバイン全体の平面図
【図3】収穫方法及び油圧回路の説明図
【図4】バランス機構の側面図
【図5】バランス機構の正面図
【図6】バランスバネの断面図
【図7】バランス機構の作用範囲を説明する分草杆の側面図
【図8】バネ圧調整板を装着したバランス機構の側面図
【図9】バネ圧調整板を装着したバランスバネの正面図
【図10】刈取り前処理部の強制分草装置を装着した状態での側面図
【図11】刈取り前処理部の強制分草装置を装着した状態での正面図
【図12】下降検出スイッチ配設部の側面図
【図13】下降検出スイッチ配設部の正面図
【図14】(イ)は、コンバインを圃場に搬入する要領を示す側面図、(ロ)は、コンバイン搬入時に刈取り前処理部が圃場に接地した状態を示す側面図
【図15】バランス機構のバネ圧調節要領を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、クローラ式の走行装置1、運転座席2が装備された運転部などを備えた自走機体の機体フレーム3の前部に位置する支持台4に、刈取り前処理部10の前処理部フレーム11の基部を回動自在に連結するとともに、自走機体の運転座席2の下方に設けたエンジン(図示せず)の駆動力を刈取り前処理部10の伝動ケースに兼用の前記前処理部フレーム11に入力して刈取り前処理部10を駆動するように構成し、前記機体フレーム3の後部側に、脱穀装置5及び穀粒タンク6を設けて、コンバインを構成してある。
【0024】
このコンバインは、稲、麦などの収穫を行うものであり、刈取り前処理部10の前記前処理部フレーム11に一端側が連結され、他端側が機体フレーム3のシリンダブラケット3aに連結された油圧シリンダ8を自走機体に装備してあり、この油圧シリンダ8を操作すると、この油圧シリンダ8が前処理部フレーム11を軸芯Xまわりで機体フレーム3に対して上下に揺動操作することにより、刈取り前処理部10を刈取り装置12が地面上近くに位置した下降作業状態と、前記刈取り装置12などが地面から上方に高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。刈取り前処理部10を下降作業状態にして自走機体を走行させると、刈取り前処理部10は、この刈取り前処理部10の下部で機体横方向に並んでいる複数本の分草杆13の前端部に支持されている分草具14によって植立穀稈を刈り取り対象と非刈取り対象の植立穀稈に分草し、かつ、刈り取り対象の複数の植付け条数の植立穀稈を複数の引き起こし経路15のうちの対応する引き起こし経路15に分かれて入るように分草するとともに案内し、各引き起こし経路15に導入された植立穀稈を各引き起こし経路15に対応した引き起こし装置16によって引き起こし処理するとともにバリカン形の前記刈取り装置12によって刈取り処理し、刈取り装置12からの刈取り穀稈を供給装置17によって機体後方向きに搬送して脱穀装置5の脱穀フィードチェーン5aの始端部に供給する。脱穀装置5は、脱穀フィードチェーン5aによって刈取り穀稈の株元側を機体後方向きに挟持搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給し、その穂先側を回動する扱胴(図示せず)によって脱穀処理する。穀粒タンク6は、脱穀装置5から搬送された脱穀粒を回収して貯留していく。
【0025】
図3に示すように、前記油圧シリンダ8は、単動形シリンダに構成してあり、この油圧シリンダ8に接続された制御弁Vが「上昇」に切り換え操作されることにより、この制御弁Vによって油圧ポンプPからの圧油が供給され、この作動油によって伸長側に駆動されて刈取り前処理部10を上昇操作し、制御弁Vが「下降」に切り換え操作されることにより、この制御弁Vによって作動油が排出され、刈取り前処理部10の重量のために短縮側に作動して刈取り前処理部10を下降操作し、制御弁Vが「中立」に切り換え操作されることにより、この制御弁Vによって作動油の供給及び排出が停止され、刈取り前処理部10を上昇非作業状態や、下降作業状態の任意の操作位置にこの操作位置から下降しないように停止操作する。
【0026】
これにより、油圧シリンダ8は、刈取り前処理部10が刈取り装置12による刈り高さが設定刈り高さになった連結高さで停止操作されると、刈取り前処理部10をその連結高さから下降しないようにストップさせる下降ストッパーになる。また、油圧シリンダ8は、刈取り前処理部10に対する下降ストッパーになっている状態において、刈取り前処理部10が接地して接地反力を受けた際、この接地反力のために伸長側に操作され、刈取り前処理部10が接地反力によって設定刈り高さの連結高さから上昇操作されることを許容する。
【0027】
図1,2に示すように、刈取り前処理部10の前記複数本の分草杆13のうち、刈取り前処理部10の最も両横外側に位置する分草杆13などの一部の複数本の分草杆13の分草具14よりもやや後方側の下部に橇体18を取付けることにより、この橇体18の底面で成る接地平面部18aを前記一部の複数本の分草杆13に設けてある。
【0028】
図4に示すように、刈取り前処理部10の前記前処理部フレーム11と、自走機体の機体フレーム3の前端部との間に、バランスバネ21を備えたバランス機構20を設けてある。
【0029】
バランス機構20は、前記油圧シリンダ8よりも自走機体上方側の部位に自走機体横方向に並べて設けた2個の前記バランスバネ21、前処理部フレーム11の自走機体後方側に設けたバネ当て部22を備えて構成してある。
【0030】
前記各バランスバネ21は、コイルバネによって構成してある。前記バネ当て部22の当接作用面23は、刈取り前処理部10の上下揺動によって刈取り前処理部10の上下揺動軸芯Xを中心にした円弧軌跡Tを描きながら移動する。刈取り前処理部10の上昇非作業状態からの下降に伴ってバネ当て部22が各バランスバネ21の先端側ホルダー28で成る荷重受け部に当接し始めたときに前記円弧軌跡Tに接する接線Lを設定し、各バランスバネ21は、このバランスバネ21のバネ軸芯21aが前記接線Lに沿った配置にして、かつ、バネホルダー24の基端側ホルダー25が機体フレーム3に固定のバネ受け台26の座板26aに受け止め支持されるようにして前記バネ受け台26に固定のバネ伸縮ガイド27に前記バネホルダー24を介して支持させてある。各バランスバネ21は、バランスバネ21の伸縮を許容するように可撓性を備えたバネカバー30によって覆われている。
【0031】
図4,5,6に示すように、前記バネホルダー24は、各バランスバネ21の先端側に係止筒部28aが入り込んで係止した前記先端側ホルダー28、各バランスバネ21の基端側にバネ座屈防止に兼用の係止筒部25aが入り込んで係止した前記基端側ホルダー25、先端側ホルダー28と基端側ホルダー25の一方のバランスバネ21に入り込んでいる係止筒部28a,25aどうしや、他方のバランスバネ21に入り込んでいる係止筒部25a,28aどうしを締め付け連結することによって先端側ホルダー28と基端側ホルダー25を連結するとともに締め付け力によって各バランスバネ21を圧縮変形させている連結ロッド29を備えて構成してあり、2個のバランスバネ21を纏めて、各バランスバネ21に初期圧縮変形を付与した状態にして保持している。バネホルダー24の前記先端側ホルダー28は、各バランスバネ21の前処理部フレーム11のバネ当て部22によって荷重を受ける荷重受け部を構成している。バネ受け台26の座板26aから延出している一対の前記バネ伸縮ガイド杆27が前記基端側ホルダー25及び前記先端側ホルダー28を挿通し、各バネ伸縮ガイド杆27の先端側ホルダー28から突出している端部に装着してある抜け止めピン27aによってバネホルダー24の抜け止めを行っていることにより、各バランスバネ21は、初期圧縮変形が付与された状態でバネ受け台26に支持されている。
【0032】
前処理部フレーム11のバネ当て部22は、前処理部フレーム11に取り付け部材31を介して取付けた自走機体横向きの丸棒材によって構成してあり、刈取り前処理部10が下降作業状態に下降操作されると、前記丸棒材の周面で成る前記当接作用面23によって各バランスバネ21の荷重受け部(先端側ホルダー28)に当接し、刈取り前処理部10の重量によって決まる荷重によって各バランバネ21を押圧操作する。バネ当て部22の当接作用面23は、自走機体横向きの丸棒材の周面でなっていることから、刈取り前処理部10の上下揺動軸芯Xに沿う方向視で突形円弧の当接作用面になっており、バネ当て部22及び各バランスバネ21を前処理部フレーム11や機体フレーム3に姿勢変化がない状態で支持させるものでありながら、刈取り前処理部10の下降作業状態での連結位置が上下に変化してバネ当て部22とバランスバネ21の間に相対姿勢の変化が発生しても、バランスバネ21の荷重の掛かる方向がバランスバネ21のバネ軸芯21aに極力沿った方向になった状態で刈取り前処理部10の荷重がバランスバネ21に掛かる。これにより、刈取り前処理部10の下降作業状態での連結位置が上下に変化しても、各バランスバネ21は、こじれのない状態でスムーズに伸縮して刈取り前処理部10に上昇操作力を付与する。
【0033】
刈取り前処理部10が上昇非作業状態から下降操作されて下降作業状態における最高位置の連結高さになると、前処理部フレーム11のバネ当て部22が各バランスバネ21の荷重受け部(先端側バネホルダー28)に当接し、刈取り前処理部10がさらに下降していくと、油圧シリンダ8が下降側のストロークエンドになって刈取り前処理部10が下降作業状態における最低位置の連結高さになるまで、前処理部フレーム11のバネ当て部22が刈取り前処理部10の荷重によって各バランスバネ21を押圧して圧縮操作していくように構成してある。これにより、バランス機構20は、刈取り前処理部10が下降作業状態に操作された状態において、2個のバランスバネ21によって刈取り前処理部10に上昇操作力を付与し、刈取り前処理部10が前記接地平面部18aによって接地して地面からの接地反力を受けた際、接地反力が刈取り前処理部10の重量の割には軽くても、刈取り前処理部10が接地反力によって上昇操作されることを可能にしている。
尚、各バランスバネ21は、油圧シリンダ8が下降側のストローク限界になっても、弾性変形の限界に達しておらず、まだ短縮側に弾性変形し得る状態にして組み付けられている。
【0034】
つまり、このコンバインは、図3に示す収穫方法に基づいて収穫作業を行うものである。
すなわち、図3に示す如く油圧シリンダ8の制御弁Vの電磁操作部に制御手段35を介して連係された昇降レバー36を下げ位置に切り換え操作し、制御弁Vを「下降」に切り換え操作して油圧シリンダ8を下降状態に操作し、油圧シリンダ8によって刈取り前処理部10を上昇非作業状態から下降操作させる。刈取り前処理部10が下降作業状態の最高位置まで下降すると、前処理部フレーム11のバネ当て部22が各バランスバネ21の荷重受け部(先端側ホルダー28)に当接し、この後、各バランスバネ21が下降抵抗になって刈取り前処理部10の下降速度がそれまでよりも低下する。これにより、刈取り前処理部10が下降作業状態に入ったことを容易に認識し、この後、刈取り前処理10が下がり過ぎないように注意しながら刈取り前処理部10をさらに下げ操作する。刈取り前処理部10がさらに下降して分草杆13の先端側が設定標準刈り高さh(図7参照)になった標準連結高さなど、所望の設定刈り高さになった設定連結高さになると、昇降レバー36を中立位置に切り換え操作し、制御弁Vを「中立」に切り換え操作して油圧シリンダ8を中立状態に維持操作し、油圧シリンダ8を刈取り前処理部10に対する下降ストッパーとして効かせて刈取り前処理部10を地面から設定刈り高さに浮上した設定連結高さに支持させながら収穫走行し、植立穀稈を設定刈り高さで刈り取っていく。そして、自走機体が前傾したり地面に隆起部が存在したりした場合、刈取り前処理部10が接地平面部18aによって接地して受けた地面からの接地反力と、バランス機構20の2個のバランスバネ21による上昇操作力とによって刈取り前処理部10を設定連結高さよりも高く上昇操作させ、分草具14などが地面や隆起部に突っ込むことを防止しながら収穫走行する。
【0035】
前記バランス機構20によって上操作力が付与される刈取り前処理部10の分草杆先端側の昇降範囲Aと、自走機体が水平面上に位置した状態での水平面Bとの関係が図7に示す関係になるように前記昇降範囲Aを設定してある。すなわち、前記昇降範囲Aの中心aが前記水平面Bよりも低く位置するように、かつ、分草杆先端側が前記水平面Bから設定標準刈り高さhに浮上するとともに水平姿勢になった状態での分草杆先端側が前記昇降範囲中心aよりも高い箇所に位置するように設定してある。
【0036】
つまり、図14(イ)に示すように、畦Cから傾斜地Sを自走させて圃場Eに進入させる際、刈取り前処理部10を前下がり姿勢の連結高さにしておき、刈取り前処理部10の前下がりによって重心が低くなるとともに走行装置1が畦Cから傾斜地Sに乗り移った際に刈取り前処理部10が接地して衝撃の発生が抑制されるようにしながら自走移動させることを可能にしてある。図14(ロ)に示すように、このように傾斜地Sに入った後、傾斜地Sから圃場Eに入る際、刈取り前処理部10は圃場面に接地して受ける接地反力のために自走機体に対して上昇し、分草具14が圃場面に突っ込むことを回避しながら圃場Eに入ることができる。
【0037】
図5に示すように、前記バネホルダー24の先端側ホルダー28にボルト孔40及びピン孔41を設け、先端側ホルダー28の表面側にバネ圧調整板42を脱着することを可能にしてある。図8,9に示すように、バネ圧調整板42は、ボルト孔43及び回り止めピン44を備え、回り止めピン44を先端側ホルダー28のピン孔41に係入させ、バネ圧調整板42と先端側ホルダー28のボルト孔43,40に連結ボルト45を装着することによって、先端側ホルダー28に装着するようになっている。
【0038】
すなわち、図10,11に示す如く刈取り前処理部10の引き起こし装置16の前側に強制分草装置46を装着した場合、刈取り前処理部10全体の重量が強制分草装置46の重量のために増大する。これにより、強制分草装置46を装着した場合、バネホルダー24の先端側ホルダー28にバネ圧調整板42を装着する。すると、たとえば、刈取り前処理部10が設定標準刈り高さhの連結高さになった際、強制分草装置46を備えない状態で設定標準刈り高さhの連結高さになった場合に比し、各バランスバネ21が刈取り前処理部10の荷重によって弾性変形操作される変形量が増大して、各バランスバネ21によって刈取り前処理部10により大きな上昇操作力が付与され、刈取り前処理部10が重量増大にかかわらず、接地反力によって軽く上昇操作されるようになる。
【0039】
このように、バネ圧調整板42を装着しても、刈取り前処理部10が重すぎ、バランス機構20を適正な上昇操作力を発揮する状態に調整することができない場合、図15に示すように、各バランスバネ21と同心状に配置した補助バランスバネ21aをバランスバネ21に装備させることにより、バネ圧調整を行うとよい。
【0040】
図12,13に示すように、機体フレーム3に固定の支持部材50に下降検出スイッチ51を支持させてある。この下降検出スイッチ51は、刈取り前処理部10が下降作業状態に下降操作されると、下降検出スイッチ51の操作アーム51aが前処理部フレーム11の前記バネ当て部22を構成している丸棒材によって押圧操作されてオン操作されることによって検出状態になる。検出状態になった下降検出スイッチ51は、前記制御手段35に刈取りクラッチ52を入り状態に操作させるべき信号を出力することにより、刈取りクラッチ52を入り状態に切り換え操作して刈取り前処理部10を駆動させる(図3参照)。
【0041】
〔別実施例〕
上記実施例の如く刈取り前処理部10を昇降操作する油圧シリンダ8を下降ストッパーとして採用する他、刈取り前処理部を設定刈り高さの浮上状態に受け止め支持したり、吊り下げ支持したりする専用のストッパーや吊り下げ具を採用して実施しても、本発明の目的を達成することができる。従って、これら油圧シリンダ8、ストッパー、吊り下げ具などを総称して下降ストッパー手段8と呼称する。
【符号の説明】
【0042】
8 下降ストッパー
10 刈取り前処理部
18a 接地平面部
21 バランスバネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法と、この収穫方法に使用するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法として、従来、たとえば特許文献1に示されるものを提案した。
特許文献1に示される収穫方法は、昇降シリンダ14の制御弁31を下降位置に操作して刈取り部3(刈取り前処理部に相当)を接地体25が接地するまで下降させ、刈取り部3が圃場に突っ込むことを回避しやすいように、刈取り部3が圃場面の起伏に接地追従して昇降するようにしながら収穫走行するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−34051号公報(段落〔0028〕―〔0032〕、図1,13など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の収穫方法にあっては、圃場が軟弱であると、刈取り前処理部が泥土に沈み込みやすく、この点で改善の余地があった。刈取り前処理部が接地反力によって軽く上昇するように、刈取り部に上昇操作力を付与するバランスバネを採用しても、刈取り前処理部が圃場面にバウンドしにくいように安定的に接地追従するようにするためには、バランスバネによって付与される上昇操作力を極端に強力にすることができず、沈み込みを回避しにくくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、自走機体の前傾などに起因した刈取り前処理部の圃場への突っ込みが回避しやすいのみならず、刈取り前処理部の泥土への沈み込みも回避しやすい状態で収穫作業することができるコンバインによる収穫方法、及びこの収穫方法を採用しやすいコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法において、
前記刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する状態で効かせながら収穫走行する。
【0007】
すなわち、刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を効かせながら収穫走行するものだから、圃場が軟弱であっても、刈取り前処理部を泥土に沈み込みにくいように浮上支持させながら収穫走行することができる。
【0008】
下降ストッパー手段は、刈取り前処理部が地面からの接地反力によって設定刈り高さの連結高さから上昇することを許容するものだから、自走機体の前傾や隆起部の存在によって刈取り前処理部が接地しても、刈取り前処理部が接地反力によって上昇して圃場に突っ込みにくくなり、かつ、刈り高さが低くなり過ぎることを回避しやすい。
【0009】
従って、本第1発明によると、刈取り前処理部が圃場に突入して変形や破損することを回避しやすくしながら、かつ、刈り高さ変化を抑制しながら収穫作業することができるのみならず、比較的軟弱な圃場でも、刈取り前処理部が泥土に沈下して刈取り前処理部の駆動不良や、刈取り前処理部に付着した泥土による茎稈の汚れが発生することも回避しやすくしながら収穫作業することができる。しかも、下降ストッパー手段を効かせるだけの簡単な操作で済むように、操作面でも有利なものに得ることができる。
【0010】
本第2発明によるコンバインにあっては、自走機体の前部に昇降自在に連結された刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容するように構成して装備してある。
【0011】
すなわち、下降ストッパー手段を装備してあるものだから、下降ストッパー手段を準備する特別な手間を掛けずに下降ストッパー手段を作用させることができる。そして、下降ストッパー手段を作用させることにより、刈取り前処理部が地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持され、圃場が軟弱であっても、刈取り前処理部を泥土に沈み込みにくくしながら収穫走行することができる。下降ストッパー手段は、刈取り前処理部が地面からの接地反力によって設定刈り高さの連結高さから上昇することを許容するものだから、自走機体の前傾や隆起部の存在によって刈取り前処理部が接地しても、刈取り前処理部が接地反力によって上昇して圃場に突っ込みにくいようにすることができ、かつ、刈り高さが低くなり過ぎることを回避しやすい。
【0012】
従って、本第2発明によると、刈取り前処理部が圃場に突入して変形や破損することを回避しやすく、かつ、刈り高さ変化を抑制しやすいのみならず、比較的軟弱な圃場でも、刈取り前処理部が泥土に沈下して刈取り前処理部の駆動不良や、刈取り前処理部に付着した泥土による茎稈の汚れが発生することを回避しやすくなる。しかも、下降ストッパー手段を準備する特別な手間が不要なように操作面でも有利な状態に得ることができる。
【0013】
本第3発明にあっては、本第2発明の構成において、前記下降ストッパー手段は、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し、作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する油圧シリンダである。
【0014】
すなわち、油圧シリンダを下降側に操作して刈取り前処理部を下降させ、刈取り前処理部が下降作業状態に下降して設定刈り高さになると、油圧シリンダを停止状態に操作することにより、油圧シリンダが下降ストッパー手段になって刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持し、かつ、刈取り前処理部の接地反力による上昇を許容するものである。
【0015】
従って、本第3発明によると、刈取り前処理部を設定刈り高さの対地浮上状態に支持させながら、かつ、刈取り前処理部の接地反力による上昇を許容しながら収穫作業するに当たり、刈取り前処理部が上昇非作業状態から設定刈り高さの下降作業状態まで下降するように油圧シリンダを操作するだけで操作簡単に行うことができる。
【0016】
本第4発明にあっては、本第2又は第3発明の構成において、前記刈取り前処理部に、地面に接触して接地反力を受ける接地平面部を設けてある。
【0017】
すなわち、刈取り前処理部が接地した場合、接地平面部で地面に接触し、圃場が比較的軟弱であっても、接地平面部の平面のために地面に沈み込みにくい状態で接地反力を受けて上昇するものである。
【0018】
従って、本第4発明によると、刈取り前処理部が接地平面部によって地面に沈み込みにくい状態で接地反力を受けて刈取り前処理部に泥土が付着しにくく、付着泥土に起因した駆動不良や茎稈汚れなどを回避しやすくなる。
【0019】
本第5発明にあっては、本第2〜第4発明のいずれか一つの構成において、前記設定刈り高さの連結高さにある刈取り前処理部に上昇操作力を付与するバランスバネを設けてある。
【0020】
すなわち、刈取り前処理部が接地反力を受けた場合、接地反力と、バランスバネによって付与される上昇操作力との合力が刈取り前処理部の重力に抗して刈取り前処理部を上昇操作するものである。これにより、刈取り前処理部が接地反力によって上昇操作される際、刈取り前処理部は、刈取り前処理部の重量の大きさの割には軽く地面に接触するだけで上昇操作されて地面に沈み込みにくくなる。
【0021】
従って、本第5発明によると、刈取り前処理部が接地して上昇操作される際に地面に沈み込みにくく、この面からも、刈取り前処理部に泥土が付着しにくくて、付着泥土に起因した駆動不良や茎稈汚れなどを回避しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】コンバイン全体の平面図
【図3】収穫方法及び油圧回路の説明図
【図4】バランス機構の側面図
【図5】バランス機構の正面図
【図6】バランスバネの断面図
【図7】バランス機構の作用範囲を説明する分草杆の側面図
【図8】バネ圧調整板を装着したバランス機構の側面図
【図9】バネ圧調整板を装着したバランスバネの正面図
【図10】刈取り前処理部の強制分草装置を装着した状態での側面図
【図11】刈取り前処理部の強制分草装置を装着した状態での正面図
【図12】下降検出スイッチ配設部の側面図
【図13】下降検出スイッチ配設部の正面図
【図14】(イ)は、コンバインを圃場に搬入する要領を示す側面図、(ロ)は、コンバイン搬入時に刈取り前処理部が圃場に接地した状態を示す側面図
【図15】バランス機構のバネ圧調節要領を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、クローラ式の走行装置1、運転座席2が装備された運転部などを備えた自走機体の機体フレーム3の前部に位置する支持台4に、刈取り前処理部10の前処理部フレーム11の基部を回動自在に連結するとともに、自走機体の運転座席2の下方に設けたエンジン(図示せず)の駆動力を刈取り前処理部10の伝動ケースに兼用の前記前処理部フレーム11に入力して刈取り前処理部10を駆動するように構成し、前記機体フレーム3の後部側に、脱穀装置5及び穀粒タンク6を設けて、コンバインを構成してある。
【0024】
このコンバインは、稲、麦などの収穫を行うものであり、刈取り前処理部10の前記前処理部フレーム11に一端側が連結され、他端側が機体フレーム3のシリンダブラケット3aに連結された油圧シリンダ8を自走機体に装備してあり、この油圧シリンダ8を操作すると、この油圧シリンダ8が前処理部フレーム11を軸芯Xまわりで機体フレーム3に対して上下に揺動操作することにより、刈取り前処理部10を刈取り装置12が地面上近くに位置した下降作業状態と、前記刈取り装置12などが地面から上方に高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。刈取り前処理部10を下降作業状態にして自走機体を走行させると、刈取り前処理部10は、この刈取り前処理部10の下部で機体横方向に並んでいる複数本の分草杆13の前端部に支持されている分草具14によって植立穀稈を刈り取り対象と非刈取り対象の植立穀稈に分草し、かつ、刈り取り対象の複数の植付け条数の植立穀稈を複数の引き起こし経路15のうちの対応する引き起こし経路15に分かれて入るように分草するとともに案内し、各引き起こし経路15に導入された植立穀稈を各引き起こし経路15に対応した引き起こし装置16によって引き起こし処理するとともにバリカン形の前記刈取り装置12によって刈取り処理し、刈取り装置12からの刈取り穀稈を供給装置17によって機体後方向きに搬送して脱穀装置5の脱穀フィードチェーン5aの始端部に供給する。脱穀装置5は、脱穀フィードチェーン5aによって刈取り穀稈の株元側を機体後方向きに挟持搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給し、その穂先側を回動する扱胴(図示せず)によって脱穀処理する。穀粒タンク6は、脱穀装置5から搬送された脱穀粒を回収して貯留していく。
【0025】
図3に示すように、前記油圧シリンダ8は、単動形シリンダに構成してあり、この油圧シリンダ8に接続された制御弁Vが「上昇」に切り換え操作されることにより、この制御弁Vによって油圧ポンプPからの圧油が供給され、この作動油によって伸長側に駆動されて刈取り前処理部10を上昇操作し、制御弁Vが「下降」に切り換え操作されることにより、この制御弁Vによって作動油が排出され、刈取り前処理部10の重量のために短縮側に作動して刈取り前処理部10を下降操作し、制御弁Vが「中立」に切り換え操作されることにより、この制御弁Vによって作動油の供給及び排出が停止され、刈取り前処理部10を上昇非作業状態や、下降作業状態の任意の操作位置にこの操作位置から下降しないように停止操作する。
【0026】
これにより、油圧シリンダ8は、刈取り前処理部10が刈取り装置12による刈り高さが設定刈り高さになった連結高さで停止操作されると、刈取り前処理部10をその連結高さから下降しないようにストップさせる下降ストッパーになる。また、油圧シリンダ8は、刈取り前処理部10に対する下降ストッパーになっている状態において、刈取り前処理部10が接地して接地反力を受けた際、この接地反力のために伸長側に操作され、刈取り前処理部10が接地反力によって設定刈り高さの連結高さから上昇操作されることを許容する。
【0027】
図1,2に示すように、刈取り前処理部10の前記複数本の分草杆13のうち、刈取り前処理部10の最も両横外側に位置する分草杆13などの一部の複数本の分草杆13の分草具14よりもやや後方側の下部に橇体18を取付けることにより、この橇体18の底面で成る接地平面部18aを前記一部の複数本の分草杆13に設けてある。
【0028】
図4に示すように、刈取り前処理部10の前記前処理部フレーム11と、自走機体の機体フレーム3の前端部との間に、バランスバネ21を備えたバランス機構20を設けてある。
【0029】
バランス機構20は、前記油圧シリンダ8よりも自走機体上方側の部位に自走機体横方向に並べて設けた2個の前記バランスバネ21、前処理部フレーム11の自走機体後方側に設けたバネ当て部22を備えて構成してある。
【0030】
前記各バランスバネ21は、コイルバネによって構成してある。前記バネ当て部22の当接作用面23は、刈取り前処理部10の上下揺動によって刈取り前処理部10の上下揺動軸芯Xを中心にした円弧軌跡Tを描きながら移動する。刈取り前処理部10の上昇非作業状態からの下降に伴ってバネ当て部22が各バランスバネ21の先端側ホルダー28で成る荷重受け部に当接し始めたときに前記円弧軌跡Tに接する接線Lを設定し、各バランスバネ21は、このバランスバネ21のバネ軸芯21aが前記接線Lに沿った配置にして、かつ、バネホルダー24の基端側ホルダー25が機体フレーム3に固定のバネ受け台26の座板26aに受け止め支持されるようにして前記バネ受け台26に固定のバネ伸縮ガイド27に前記バネホルダー24を介して支持させてある。各バランスバネ21は、バランスバネ21の伸縮を許容するように可撓性を備えたバネカバー30によって覆われている。
【0031】
図4,5,6に示すように、前記バネホルダー24は、各バランスバネ21の先端側に係止筒部28aが入り込んで係止した前記先端側ホルダー28、各バランスバネ21の基端側にバネ座屈防止に兼用の係止筒部25aが入り込んで係止した前記基端側ホルダー25、先端側ホルダー28と基端側ホルダー25の一方のバランスバネ21に入り込んでいる係止筒部28a,25aどうしや、他方のバランスバネ21に入り込んでいる係止筒部25a,28aどうしを締め付け連結することによって先端側ホルダー28と基端側ホルダー25を連結するとともに締め付け力によって各バランスバネ21を圧縮変形させている連結ロッド29を備えて構成してあり、2個のバランスバネ21を纏めて、各バランスバネ21に初期圧縮変形を付与した状態にして保持している。バネホルダー24の前記先端側ホルダー28は、各バランスバネ21の前処理部フレーム11のバネ当て部22によって荷重を受ける荷重受け部を構成している。バネ受け台26の座板26aから延出している一対の前記バネ伸縮ガイド杆27が前記基端側ホルダー25及び前記先端側ホルダー28を挿通し、各バネ伸縮ガイド杆27の先端側ホルダー28から突出している端部に装着してある抜け止めピン27aによってバネホルダー24の抜け止めを行っていることにより、各バランスバネ21は、初期圧縮変形が付与された状態でバネ受け台26に支持されている。
【0032】
前処理部フレーム11のバネ当て部22は、前処理部フレーム11に取り付け部材31を介して取付けた自走機体横向きの丸棒材によって構成してあり、刈取り前処理部10が下降作業状態に下降操作されると、前記丸棒材の周面で成る前記当接作用面23によって各バランスバネ21の荷重受け部(先端側ホルダー28)に当接し、刈取り前処理部10の重量によって決まる荷重によって各バランバネ21を押圧操作する。バネ当て部22の当接作用面23は、自走機体横向きの丸棒材の周面でなっていることから、刈取り前処理部10の上下揺動軸芯Xに沿う方向視で突形円弧の当接作用面になっており、バネ当て部22及び各バランスバネ21を前処理部フレーム11や機体フレーム3に姿勢変化がない状態で支持させるものでありながら、刈取り前処理部10の下降作業状態での連結位置が上下に変化してバネ当て部22とバランスバネ21の間に相対姿勢の変化が発生しても、バランスバネ21の荷重の掛かる方向がバランスバネ21のバネ軸芯21aに極力沿った方向になった状態で刈取り前処理部10の荷重がバランスバネ21に掛かる。これにより、刈取り前処理部10の下降作業状態での連結位置が上下に変化しても、各バランスバネ21は、こじれのない状態でスムーズに伸縮して刈取り前処理部10に上昇操作力を付与する。
【0033】
刈取り前処理部10が上昇非作業状態から下降操作されて下降作業状態における最高位置の連結高さになると、前処理部フレーム11のバネ当て部22が各バランスバネ21の荷重受け部(先端側バネホルダー28)に当接し、刈取り前処理部10がさらに下降していくと、油圧シリンダ8が下降側のストロークエンドになって刈取り前処理部10が下降作業状態における最低位置の連結高さになるまで、前処理部フレーム11のバネ当て部22が刈取り前処理部10の荷重によって各バランスバネ21を押圧して圧縮操作していくように構成してある。これにより、バランス機構20は、刈取り前処理部10が下降作業状態に操作された状態において、2個のバランスバネ21によって刈取り前処理部10に上昇操作力を付与し、刈取り前処理部10が前記接地平面部18aによって接地して地面からの接地反力を受けた際、接地反力が刈取り前処理部10の重量の割には軽くても、刈取り前処理部10が接地反力によって上昇操作されることを可能にしている。
尚、各バランスバネ21は、油圧シリンダ8が下降側のストローク限界になっても、弾性変形の限界に達しておらず、まだ短縮側に弾性変形し得る状態にして組み付けられている。
【0034】
つまり、このコンバインは、図3に示す収穫方法に基づいて収穫作業を行うものである。
すなわち、図3に示す如く油圧シリンダ8の制御弁Vの電磁操作部に制御手段35を介して連係された昇降レバー36を下げ位置に切り換え操作し、制御弁Vを「下降」に切り換え操作して油圧シリンダ8を下降状態に操作し、油圧シリンダ8によって刈取り前処理部10を上昇非作業状態から下降操作させる。刈取り前処理部10が下降作業状態の最高位置まで下降すると、前処理部フレーム11のバネ当て部22が各バランスバネ21の荷重受け部(先端側ホルダー28)に当接し、この後、各バランスバネ21が下降抵抗になって刈取り前処理部10の下降速度がそれまでよりも低下する。これにより、刈取り前処理部10が下降作業状態に入ったことを容易に認識し、この後、刈取り前処理10が下がり過ぎないように注意しながら刈取り前処理部10をさらに下げ操作する。刈取り前処理部10がさらに下降して分草杆13の先端側が設定標準刈り高さh(図7参照)になった標準連結高さなど、所望の設定刈り高さになった設定連結高さになると、昇降レバー36を中立位置に切り換え操作し、制御弁Vを「中立」に切り換え操作して油圧シリンダ8を中立状態に維持操作し、油圧シリンダ8を刈取り前処理部10に対する下降ストッパーとして効かせて刈取り前処理部10を地面から設定刈り高さに浮上した設定連結高さに支持させながら収穫走行し、植立穀稈を設定刈り高さで刈り取っていく。そして、自走機体が前傾したり地面に隆起部が存在したりした場合、刈取り前処理部10が接地平面部18aによって接地して受けた地面からの接地反力と、バランス機構20の2個のバランスバネ21による上昇操作力とによって刈取り前処理部10を設定連結高さよりも高く上昇操作させ、分草具14などが地面や隆起部に突っ込むことを防止しながら収穫走行する。
【0035】
前記バランス機構20によって上操作力が付与される刈取り前処理部10の分草杆先端側の昇降範囲Aと、自走機体が水平面上に位置した状態での水平面Bとの関係が図7に示す関係になるように前記昇降範囲Aを設定してある。すなわち、前記昇降範囲Aの中心aが前記水平面Bよりも低く位置するように、かつ、分草杆先端側が前記水平面Bから設定標準刈り高さhに浮上するとともに水平姿勢になった状態での分草杆先端側が前記昇降範囲中心aよりも高い箇所に位置するように設定してある。
【0036】
つまり、図14(イ)に示すように、畦Cから傾斜地Sを自走させて圃場Eに進入させる際、刈取り前処理部10を前下がり姿勢の連結高さにしておき、刈取り前処理部10の前下がりによって重心が低くなるとともに走行装置1が畦Cから傾斜地Sに乗り移った際に刈取り前処理部10が接地して衝撃の発生が抑制されるようにしながら自走移動させることを可能にしてある。図14(ロ)に示すように、このように傾斜地Sに入った後、傾斜地Sから圃場Eに入る際、刈取り前処理部10は圃場面に接地して受ける接地反力のために自走機体に対して上昇し、分草具14が圃場面に突っ込むことを回避しながら圃場Eに入ることができる。
【0037】
図5に示すように、前記バネホルダー24の先端側ホルダー28にボルト孔40及びピン孔41を設け、先端側ホルダー28の表面側にバネ圧調整板42を脱着することを可能にしてある。図8,9に示すように、バネ圧調整板42は、ボルト孔43及び回り止めピン44を備え、回り止めピン44を先端側ホルダー28のピン孔41に係入させ、バネ圧調整板42と先端側ホルダー28のボルト孔43,40に連結ボルト45を装着することによって、先端側ホルダー28に装着するようになっている。
【0038】
すなわち、図10,11に示す如く刈取り前処理部10の引き起こし装置16の前側に強制分草装置46を装着した場合、刈取り前処理部10全体の重量が強制分草装置46の重量のために増大する。これにより、強制分草装置46を装着した場合、バネホルダー24の先端側ホルダー28にバネ圧調整板42を装着する。すると、たとえば、刈取り前処理部10が設定標準刈り高さhの連結高さになった際、強制分草装置46を備えない状態で設定標準刈り高さhの連結高さになった場合に比し、各バランスバネ21が刈取り前処理部10の荷重によって弾性変形操作される変形量が増大して、各バランスバネ21によって刈取り前処理部10により大きな上昇操作力が付与され、刈取り前処理部10が重量増大にかかわらず、接地反力によって軽く上昇操作されるようになる。
【0039】
このように、バネ圧調整板42を装着しても、刈取り前処理部10が重すぎ、バランス機構20を適正な上昇操作力を発揮する状態に調整することができない場合、図15に示すように、各バランスバネ21と同心状に配置した補助バランスバネ21aをバランスバネ21に装備させることにより、バネ圧調整を行うとよい。
【0040】
図12,13に示すように、機体フレーム3に固定の支持部材50に下降検出スイッチ51を支持させてある。この下降検出スイッチ51は、刈取り前処理部10が下降作業状態に下降操作されると、下降検出スイッチ51の操作アーム51aが前処理部フレーム11の前記バネ当て部22を構成している丸棒材によって押圧操作されてオン操作されることによって検出状態になる。検出状態になった下降検出スイッチ51は、前記制御手段35に刈取りクラッチ52を入り状態に操作させるべき信号を出力することにより、刈取りクラッチ52を入り状態に切り換え操作して刈取り前処理部10を駆動させる(図3参照)。
【0041】
〔別実施例〕
上記実施例の如く刈取り前処理部10を昇降操作する油圧シリンダ8を下降ストッパーとして採用する他、刈取り前処理部を設定刈り高さの浮上状態に受け止め支持したり、吊り下げ支持したりする専用のストッパーや吊り下げ具を採用して実施しても、本発明の目的を達成することができる。従って、これら油圧シリンダ8、ストッパー、吊り下げ具などを総称して下降ストッパー手段8と呼称する。
【符号の説明】
【0042】
8 下降ストッパー
10 刈取り前処理部
18a 接地平面部
21 バランスバネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法であって、
前記刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する状態で効かせながら収穫走行するコンバインによる収穫方法。
【請求項2】
自走機体の前部に昇降自在に連結された刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容するように構成して装備してあるコンバイン。
【請求項3】
前記下降ストッパー手段は、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し、作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する油圧シリンダである請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記刈取り前処理部に、地面に接触して接地反力を受ける接地平面部を設けてある請求項2又は3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記設定刈り高さの連結高さにある刈取り前処理部に上昇操作力を付与するバランスバネを設けてある請求項2〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項1】
自走機体の前部に刈取り前処理部を昇降自在に連結したコンバインによる収穫方法であって、
前記刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容する状態で効かせながら収穫走行するコンバインによる収穫方法。
【請求項2】
自走機体の前部に昇降自在に連結された刈取り前処理部を地面から設定刈り高さに浮上した連結高さに支持する下降ストッパー手段を、前記刈取り前処理部が地面からの接地反力によって前記連結高さから上昇することを許容するように構成して装備してあるコンバイン。
【請求項3】
前記下降ストッパー手段は、作動油が供給されることによって前記刈取り前処理部を上昇操作し、作動油が排出されることによって前記刈取り前処理部を下降操作する油圧シリンダである請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記刈取り前処理部に、地面に接触して接地反力を受ける接地平面部を設けてある請求項2又は3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記設定刈り高さの連結高さにある刈取り前処理部に上昇操作力を付与するバランスバネを設けてある請求項2〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−183923(P2010−183923A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129215(P2010−129215)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2009−289480(P2009−289480)の分割
【原出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2009−289480(P2009−289480)の分割
【原出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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