説明

コンバイン

【課題】 オペレータが路上走行時に、逐一、刈取部を設定高さに昇降操作する手間を不要となすこと。
【解決手段】 左右一対の走行部により機体フレームを支持させ、同機体フレーム上に、少なくとも運転部と原動機部と脱穀部と選別部と穀粒貯留部とを設けると共に、同機体フレームの前端部に刈取部を昇降位置調節可能に取り付けたコンバインにおいて、機体フレームに制御手段を設けると共に、同制御手段の入力側に路上走行用スイッチを接続する一方、同制御手段の出力側に刈取部昇降手段を接続して、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して刈取部昇降手段を作動させて、刈取部を路上走行用設定高さに保持させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの一形態として、左右一対の走行部により機体フレームを支持させ、同機体フレーム上に、運転部と原動機部と脱穀部と選別部と穀粒貯留部とを設けると共に、同機体フレームの前端部に刈取部を昇降位置調節可能に取り付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、格納庫から圃場まで路上走行を行う際には、あらかじめ刈取部を地上から一定高さに上昇させた状態となし、同状態にて路上走行を行うようにしている。
【特許文献1】特開平11−151015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、路上走行を行う際には、オペレータが刈取部を自分の好みの地上高に上昇させた状態にて走行を行っており、刈取部を不必要に高く上昇させた状態にて走行している場合や、また、刈取部を路面に近接させた状態にて走行している場合等、まちまちの状態であるのが実状である。
【0005】
そのために、刈取部を不必要に高く上昇させた状態にて走行している場合には、刈取部が運転部に着座して走行操作を行っているオペレータの前側方の視界性を悪くするという不具合が生じたり、また、刈取部を路面に近接させた状態にて走行している場合には、同刈取部が路面上の突部に衝突して、同刈取部が損傷等されるという不具合が生じることがある。
【0006】
また、オペレータが、オーガやサイドデバイダを使用位置に配置したまま、すなわち、オーガやサイドデバイダを収納位置に配置するのを忘れたまま路上走行を行って、オーガやサイドデバイダを他物に衝突させて損傷等させる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明では、左右一対の走行部により機体フレームを支持させ、同機体フレーム上に、少なくとも運転部と原動機部と脱穀部と選別部と穀粒貯留部とを設けると共に、同機体フレームの前端部に刈取部を昇降位置調節可能に取り付けたコンバインにおいて、
機体フレームに制御手段を設けると共に、同制御手段の入力側に路上走行用スイッチを接続する一方、同制御手段の出力側に刈取部昇降手段を接続して、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して刈取部昇降手段を作動させて、刈取部を路上走行用設定高さに保持させるようにしたことを特徴とするコンバインを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、以下の構成にも特徴を有する。
【0009】
(1)制御手段の出力側に、独立的に昇降して機体フレームの地上高及び姿勢を制御する左右一対の走行部の姿勢変更手段と、穀粒貯留部に貯留した穀粒を搬出するオーガの姿勢変更手段と、圃場の穀稈を機体の側方に案内するサイドデバイダの姿勢変更手段と、刈取部に設けた縦搬送体の姿勢変更手段とを接続して、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して各姿勢変更手段を作動させて、走行部とオーガとサイドデバイダと縦搬送体の内の少なくともいずれか一つを路上走行用姿勢に保持させるようにしたこと。
【0010】
(2)原動機部に作業部クラッチを介して脱穀部と選別部と穀粒貯留部と刈取部とをそれぞれ連動連結すると共に、上記作業部クラッチは制御手段の出力側に接続し、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して作業部クラッチを動力切断動作させるようにしたこと。
【発明の効果】
【0011】
(1)請求項1記載の本発明では、左右一対の走行部により機体フレームを支持させ、同機体フレーム上に、少なくとも運転部と原動機部と脱穀部と選別部と穀粒貯留部とを設けると共に、同機体フレームの前端部に刈取部を昇降位置調節可能に取り付けたコンバインにおいて、機体フレームに制御手段を設けると共に、同制御手段の入力側に路上走行用スイッチを接続する一方、同制御手段の出力側に刈取部昇降手段を接続して、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して刈取部昇降手段を作動させて、刈取部を路上走行用設定高さに保持させるようにしている。
【0012】
このようにして、オペレータが路上走行用スイッチのON操作した際には、制御手段を介して刈取昇降手段が刈取部を路上走行用設定高さに移動させて、同刈取部が路上走行用設定高さに保持されるため、オペレータは、路上走行時に、逐一、刈取部を設定高さに昇降操作する手間が不要となる。その結果、操作の簡便化が図れる。
【0013】
しかも、路上走行用スイッチのON操作により、自動的に刈取部が路上走行用設定高さに保持されるため、路上走行時に刈取部の先端部等が地上の突起部に衝突して、損傷等されるという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0014】
(2)請求項2記載の本発明では、制御手段の出力側に、独立的に昇降して機体フレームの地上高及び姿勢を制御する左右一対の走行部の姿勢変更手段と、穀粒貯留部に貯留した穀粒を搬出するオーガの姿勢変更手段と、圃場の穀稈を機体の側方に案内するサイドデバイダの姿勢変更手段と、刈取部に設けた縦搬送体の姿勢変更手段とを接続して、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して各姿勢変更手段を作動させて、走行部とオーガとサイドデバイダと縦搬送体の内の少なくともいずれか一つを路上走行用姿勢に保持させるようにしている。
【0015】
このようにして、オペレータが路上走行用スイッチのON操作を行った際には、左右一対の走行部とオーガとサイドデバイダと縦搬送体の内の少なくともいずれか一つが制御手段を介してそれぞれ姿勢変更手段により姿勢変更、例えば、初期設定位置に自動復帰されるため、オペレータは、路上走行時に、逐一、走行部とオーガとサイドデバイダと縦搬送体の内の少なくともいずれか一つを所要の姿勢に変更操作する手間が不要となる。
【0016】
その結果、その手間の分だけ操作性が向上するものであり、走行部とオーガとサイドデバイダと縦搬送体の全てを初期設定位置に自動復帰させるようにした場合には、最大限に操作性が向上する。
【0017】
しかも、路上走行用スイッチのON操作により、自動的にオーガとサイドデバイダが所要の姿勢、例えば、収納姿勢に保持されるようにした場合には、路上走行時にオーガとサイドデバイダを他物に衝突させて、損傷等させるという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0018】
(3)請求項3記載の本発明では、原動機部に作業部クラッチを介して脱穀部と選別部と穀粒貯留部と刈取部とをそれぞれ連動連結すると共に、上記作業部クラッチは制御手段の出力側に接続し、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して作業部クラッチを動力切断動作させるようにしている。
【0019】
このようにして、オペレータが路上走行用スイッチのON操作を行った際には、制御手段を介して作業部クラッチが自動的に動力切断動作されて、原動機部から脱穀部と選別部と穀粒貯留部と刈取部の各種作業部に動力が伝達されることがないため、オペレータは、路上走行時に、逐一、これらの各種作業部を作動停止させる操作を行う手間が不要となる。その結果、操作性が向上する。
【0020】
しかも、路上走行時に各種作業部が誤動作するという不具合の発生を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の最良の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すAは、本発明に係るコンバインであり、同コンバインAは、機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式の走行部2,2を配設すると共に、機体フレーム1の前端部に昇降機構4を介して刈取部3を昇降回動自在に取り付け、同昇降機構4の左側後方位置に搬送機構5を配置し、同搬送機構5の後方位置に脱穀部6を配設して、同脱穀部6の直下方位置に選別部7を配設している。
【0023】
このようにして、刈取部3により穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を搬送機構5により脱穀部6へ搬送し、同脱穀部6にて穀稈を脱穀し、脱穀した穀粒を選別部7にて選別するようにしている。
【0024】
この際、刈取部3は、昇降機構4により適宜昇降位置調節して、刈り高さを調節することができるようにしている。
【0025】
また、コンバインAは、機体フレーム1の右側前部に運転部8を配設し、同運転部8の後下方位置に原動機部9を配設し、同原動機部9の後方位置に穀粒貯留部10を配設し、同穀粒貯留部10の後方に穀粒搬出部11を連通連設している。
【0026】
このようにして、前記選別部7にて選別された一番穀粒を穀粒貯留部10に搬送して、同穀粒貯留部10に貯留しておき、この貯留した一番穀粒を搬出する際には、穀粒搬出部11により搬出することができる。
【0027】
この際、上記した各種作業部である刈取部3と搬送機構5と脱穀部6と選別部7と穀粒貯留部10と穀粒搬出部11は、原動機部9に連動連結して、同原動機部9からの動力を受けて作動するようにしている。
【0028】
走行部2は、図1に示すように、前後方向に伸延する走行フレーム12の前端部に駆動輪13を連動連結する一方、同走行フレーム12の後端部に、遊動輪14を回転自在に軸支し、これら駆動輪13と遊動輪14との間に履帯15を巻回している。図中、16は転動輪である。
【0029】
そして、機体フレーム1と各走行部2,2の走行フレーム12,12との間には、左右一対の姿勢変更手段17,17を介設して、各姿勢変更手段17,17を独立的に作動させることにより、各走行部2,2の走行フレーム12,12を昇降させて、機体フレーム1の地上高及び姿勢を制御することができるようにしている。
【0030】
すなわち、姿勢変更手段17は、図1及び図2に示すように、走行フレーム12を昇降させて機体フレーム1の地上高を変更させる昇降リンク機構18と、同昇降リンク機構18を昇降作動させる電動式の走行部昇降シリンダ19とを具備して、同走行部昇降シリンダ19を伸縮作動させることにより、昇降リンク機構18を介して走行フレーム12を昇降させて、機体フレーム1の地上高を変更して、機体の姿勢を変更することができるようにしている。図2中、20は、昇降リンク機構18の回動支点に取り付けて、車高を検出するポテンショメータ等の車高センサである。
【0031】
刈取部3は、図1及び図2に示すように、機体フレーム1の前部に立設した刈取部支持体21の上端部に刈取部支持フレーム22の基端部を枢支して、同刈取部支持フレーム22を左右方向の軸線廻りに上下方向に昇降回動自在となし、同刈取部支持フレーム22と機体フレーム1との間に刈取部昇降手段としての昇降用シリンダ23を介設して、同昇降用シリンダ23を伸縮作動させることにより、刈取部支持フレーム22を昇降位置調節することができるようにしている。図2中、24は、刈取部支持フレーム22の基端部に取り付けて、同刈取部支持フレーム22の昇降回動位置を検出するポテンショメータ等の昇降センサである。
【0032】
そして、刈取部支持フレーム22には、前端部に分草体25を設け、同分草体25の後方位置に穀稈引起体26を設け、同穀稈引起体26の後方位置に前記搬送機構5を配置し、同搬送機構5の下方位置に刈刃27を設けている。
【0033】
また、搬送機構5は、穂先搬送体28と株元搬送体29と縦搬送体30と補助搬送体31とを具備しており、同縦搬送体30は、図2に示すように、姿勢変更手段としての電動式の姿勢変更駆動モータ32により深扱ぎ姿勢と浅扱ぎ姿勢とに姿勢変更可能となしている。なお、本実施の形態では、縦搬送体30の深扱ぎ姿勢を収納位置となしている。33は、縦搬送体30の収納位置を検出する縦搬送体収納センサである。
【0034】
ここで、前記した穀稈引起体26の左・右側端部の中途部には、図1及び図2に示すように、左右一対の前照灯体34,34を左右方向に軸線を向けた首振り支軸35,35を介して上下方向に上下首振り自在に取り付けており、各首振り支軸35,35には、前照灯体34,34をそれぞれ上下首振り作動させる前照灯体首振り手段としての電動式の前照灯体首振り作動モータ36,36を連動連結して、同前照灯体首振り作動モータ36,36により首振り支軸35,35を介して前照灯体34,34を上下首振り作動させることができるようにしている。図2中、37は、前照灯体34の上下首振り角度を検出する上下首振り角度センサである。
【0035】
しかも、本実施の形態では、前照灯体34,34は、後述するように、刈取部3の昇降動作に上下首振り動作を連動させて、同前照灯体34,34の照射光線の方向a,aを、略一定(本実施の形態では路面Gと略平行)に保持させるように制御している。
【0036】
このようにして、上下首振り自在に取り付けた前照灯体34,34の上下首振り動作を、刈取部3の昇降動作に連動させて、同前照灯体34,34の照射光線の方向a,aを路面Gと略平行に保持させるように制御しているため、刈取部3の昇降位置調節にかかわりなく、前照灯体34,34により所要の位置を確実に照射することができる。その結果、走行操作性と安全性とを良好に確保することができる。
【0037】
脱穀部6は、図1に示すように、搬送機構5の直後方位置に配設して、搬送機構5により搬送されてきた穀稈の株元部をフィードチェン38により受け継いで、同脱穀部6内に配置した扱胴39(図2参照)と、同扱胴39の直下方位置に配置したクリンプ網(図示せず)との間にて、穀稈の穂先部を前方から後方へ向けて移送させることにより脱穀することができるようにしている。
【0038】
選別部7は、図1に示すように、脱穀部6のクリンプ網の直下方位置に揺動選別体40(図2参照)を配置して、同クリンプ網を通して漏下してくる穀粒を一番穀粒を二番穀粒とに選別して、一番穀粒は穀粒貯留部10に搬送する一方、二番穀粒は再度揺動選別体40上に戻して再選別するようにしている。
【0039】
運転部8は、図1に示すように、略矩形箱型状のキャビン42内の前部にフロントコラム43を配置し、同フロントコラム43の上端部にステアリングホイール44を設け、同ステアリングホイール44の左側方位置にサイドコラム45を配置し、同サイドコラム45に変速レバー46を設けると共に、ステアリングホイール44の後方位置に運転席47を配置している。
【0040】
そして、サイドコラム45の上面には、図1及び図2に示すように、路上走行用スイッチ48と警報手段としての警報ブザー49及び各作業部用確認ランプ50a〜50gを設けると共に、運転席47の下方位置に制御手段としてのコントローラ51を配置して、同コントローラ51の入力側に上記路上走行用スイッチ48を接続する一方、出力側に警報ブザー49及び各作業部用確認ランプ50a〜50gを接続している。
【0041】
原動機部9は、図1に示すように、運転部8の後下方に位置する機体フレーム1上にエンジン52等を搭載しており、同エンジン52には、図2に示すように、連動機構53を介してミッションケース54を連動連結しており、同ミッションケース54には、刈取部伝動機構55を介して刈取部3の刈取部支持フレーム22内に設けた刈取駆動機構(図示せず)を連動連結すると共に、脱穀部伝動機構56を介して脱穀部6の扱胴39を連動連結し、かつ、選別部伝動機構57を介して選別部7の揺動選別体40等を連動連結し、かつ、穀粒貯留部伝動機構58を介して後述する穀粒貯留部10の貯留部駆動機構(図示せず)を連動連結している。
【0042】
そして、連動機構53は、図2に示すように、エンジン52から突出させた出力軸60と、ミッションケース54から突出させた入力軸62との間に、出力プーリ63と入力プーリ64とを介して伝動ベルト65を巻回し、同伝動ベルト65に電動式のテンションクラッチである作業部クラッチ66を設けている。
【0043】
また、作業部クラッチ66は、図2に示すように、コントローラ51の出力側に接続して、同コントローラ51に制御されるようにしており、同作業部クラッチ66が切断作動すると、エンジン52からミッションケース54に動力が伝達されないようにしている。図2中、67は、作業部クラッチ66の接続・切断動作を検出する作業部クラッチセンサである。
【0044】
その結果、ミッションケース54に各伝動機構55,56,57、58を介して連動連結している刈取駆動機構と扱胴39と揺動選別体40と貯留部駆動機構には動力が伝達されず、これらの刈取部3と脱穀部6と選別部7と穀粒貯留部10は作動停止状態となる。
【0045】
穀粒貯留部10は、前記したように選別部7において選別された一番穀粒を貯留しておき、この貯留した一番穀粒を後述する穀粒搬出部11により適宜搬出することができるようにしている。
【0046】
穀粒搬出部11は、穀粒貯留部10内の下部まで伸延させた横搬出用スクリューコンベア体(図示せず)を前後方向に軸線を向けて横架し、同横搬出用スクリューコンベアの後端部に下端部を連通連結した縦搬出用スクリューコンベア70を上下方向に軸線を向けて配置し、同縦搬出用スクリューコンベア70の上端部に後端部を連通連結したオーガ71を前方へ向けて伸延させ、かつ、後端部を中心に旋回及び上下回動自在となしている。
【0047】
そして、穀粒搬出部11には、図2に示すように、オーガ71の姿勢を変更するための姿勢変更手段として、回転機構72と上下回動機構73とを設けている。
【0048】
回転機構72は、縦搬出用スクリューコンベア70の外周面に回転用大径ギヤ74を設ける一方、機体フレーム1に設けたモータ支持体75に電動式の回転駆動用モータ76を取り付け、同回転駆動用モータ76の駆動軸77にピニオンギヤ78を取り付け、同ピニオンギヤ78を上記大径ギヤ74に歯合させている。79は、大径ギヤ74の回転量を検出する回転量センサである。
【0049】
このようにして、回転駆動用モータ76を駆動させることにより、ピニオンギヤ78と大径ギヤ74とを介して縦搬出用スクリューコンベア70を上下方向の軸線廻りに回転させて、同縦搬出用スクリューコンベア70の上端部に連通連結したオーガ71の先端部を回転移動させることができるようにしている。
【0050】
また、上下回動機構73は、図2に示すように、縦搬出用スクリューコンベア70の上端部とオーガ71の基端部との間に、電動式の上下回動用シリンダ80を連結ブラケット81,82を介して介設している。83は、オーガ71の上下回動量を検出する上下回動量センサである。
【0051】
このようにして、上下回動用シリンダ80を伸縮作動させることにより、オーガ71を水平方向の軸線廻りに上下方向に回動作動させて、オーガ71の先端部を上下回動移動させることができるようにしている。
【0052】
その結果、オーガ71は、姿勢変更手段としての回転機構72と上下回動機構73とにより、回転移動と上下回動移動とを組み合わせて所要の姿勢に変更することができる。
【0053】
そして、図1に示すように、穀粒貯留部10の天井壁10aにはオーガ受体84を設けており、同オーガ受体84にオーガ71の中途部を上方から係合・載置して、同オーガ71を横臥状態となすことにより、同オーガ71を収納状態(収納位置)となすことができるようにしている。
【0054】
また、図1及び図2に示すように、刈取部支持フレーム22の左側先端部と機体フレーム1の左側部との間にはサイドデバイダ85を介設すると共に、同サイドデバイダ85と機体フレーム1との間に、姿勢変更手段としての前後一対の電動式の進退用シリンダ86,86を、左右方向に伸縮自在に介設している。87は、進退用シリンダ86の進退量を検出する進退量センサである。
【0055】
このようにして、両進退用シリンダ86,86を伸張作動させることにより、サイドデバイダ85をに左側外方へ張り出した使用位置(イ)に配置することも、また、両進退用シリンダ86,86を短縮作動させることにより、サイドデバイダ85を機体フレーム1側に近接させた収納位置(ロ)に配置することもできるようにして、これらの使用位置(イ)と収納位置(ロ)との間でサイドデバイダ85の姿勢を変更することができるようにしている。
【0056】
上記のような構成において、本実施の形態では、図2に示すように、コントローラ51の入力側に、前記した路上走行用スイッチ48と車高センサ20と昇降センサ24と縦搬送体収納センサ33と上下首振り角度センサ37と作業部クラッチセンサ67と回転量センサ79と上下回動量センサ83と進退量センサ87とを接続している。
【0057】
そして、コントローラ51の出力側に、警報ブザー49及び各作業部用確認ランプ50a〜50gと走行部昇降シリンダ19,19と昇降用シリンダ23と姿勢変更駆動モータ32と前照灯体首振り作動モータ36,36と前記した作業部クラッチ66と回転駆動用モータ76と上下回動用シリンダ80と進退用シリンダ86,86とを接続している。
【0058】
しかも、路上走行用スイッチ48をON操作することにより、コントローラ51を介して刈取部3を路上走行用設定高さH1(例えば、地上高20cm)に設定・保持させることができると共に、各種作業部を路上走行用姿勢、すなわち、本実施の形態では初期設定状態に強制復帰させるようにしている。H2は最高地上高、H3は最低地上高である。
【0059】
ここで、初期設定状態とは、走行部2,2を走行部昇降シリンダ19,19により下降させて、最低地上高に設定・保持させ、かつ、作業部クラッチ66を切断動作させることにより、刈取部3と脱穀部6と選別部7と穀粒貯留部10の作動を強制的に停止させ、かつ、姿勢変更駆動モータ32を作動させることにより、縦搬送体30を収納位置である深扱ぎ姿勢に強制的に復帰させ、かつ、回転駆動用モータ76と上下回動用シリンダ80とを作動させることにより、オーガ71を収納位置に強制的に復帰させ、かつ、進退用シリンダ86,86を短縮作動させることにより、サイドデバイダ85を収納位置(ロ)に強制的に復帰させるようにしている。
【0060】
この際、上記した初期設定状態への強制復帰が確実になされた場合には、各作業部に対応する各作業部用確認ランプ50a〜50gが点灯するようにして、いずれの作業部も初期設定状態に復帰されていることを、オペレータは運転席47に着座した状態にて視認することができるようにしている。
【0061】
また、初期設定状態への強制復帰が確実になされていない場合には、警報ブザー49が鳴動して警報を発すると共に、各作業部に対応する各作業部用確認ランプ50a〜50gが消灯したままとなるようにして、いずれの作業部に不具合があるかをオペレータは運転席47に着座した状態にて視認することができるようにしている。
【0062】
このようにして、本実施の形態では、オペレータは、路上走行時に、逐一、刈取部3を設定高さに昇降操作する手間が不要となるため、操作の簡便化が図れる。
【0063】
そして、路上走行用スイッチ48のON操作により、自動的に刈取部3が路上走行用設定高さH1に保持されるため、路上走行時に刈取部3の先端部である分草体25等が地上の突起部に衝突して、損傷等されるという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0064】
また、左右一対の走行部2,2と縦搬送体30とオーガ71とサイドデバイダ85とがコントローラ51を介してそれぞれ姿勢変更手段により姿勢変更、すなわち、初期設定位置に強制的に自動復帰されるため、オペレータは、路上走行時に、逐一、走行部2,2と縦搬送体30とオーガ71とサイドデバイダ85を所要の姿勢に変更操作する手間が不要となる。その結果、操作性が向上する。
【0065】
しかも、路上走行用スイッチ48のON操作により、自動的にオーガ71とサイドデバイダ85が所要の姿勢、すなわち、収納姿勢(収納位置)に保持されるため、路上走行時にオーガ71とサイドデバイダ85を他物に衝突させて、損傷等させるという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0066】
さらには、オペレータが路上走行用スイッチ48のON操作を行った際には、コントローラ51を介して作業部クラッチ66が自動的に動力切断動作されて、エンジン52から刈取部3と脱穀部6と選別部7と穀粒貯留部10の各種作業部に動力が伝達されることがないため、オペレータは、路上走行時に、逐一、これらの各種作業部を作動停止させる操作を行う手間が不要となる。その結果、操作性が向上する。
【0067】
そして、路上走行時に各種作業部が誤動作するという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0068】
次に、図3〜図6に示すフローチャートを参照しながら路上走行制御について説明する。
【0069】
(1)図3に示すように、路上走行に先立って、オペレータが路上走行用スイッチ48をON操作すると(100YES)、コントローラ51を介して昇降用シリンダ23が伸縮作動して(101)、刈取部3を路上走行用設定高さH1に移動させる。
【0070】
そして、路上走行用設定高さH1に到達した刈取部3を昇降センサ24が検出すると(102YES)、昇降用シリンダ23の作動を停止させて(103)、同刈取部3を路上走行用設定高さH1に保持する。
【0071】
そして、刈取部3の確認ランプ50aが点灯して(104)、オペレータに刈取部3が路上走行用設定高さH1に保持されていることを報知する。
【0072】
また、昇降センサ24が路上走行用設定高さH1に到達した刈取部3を検出できなかった場合には(102N0)、一定時間(例えば、2秒間)が経過した後に(105YES)、警報ブザー49を作動させて、オペレータに注意を喚起する(106)。
【0073】
(2)続いて、図3に示すように、コントローラ51を介して前照灯体首振り作動モータ36,36が作動して(107)、前照灯体34,34を首振り作動させる。
【0074】
そして、照射光線の方向a,aが路面Gと略平行になった両前照灯体34,34を上下首振り角度センサ37が検出すると(108YES)、前照灯体首振り作動モータ36,36を作動停止させて(109)、両前照灯体34,34を照射光線の方向a,aが路面Gと略平行になった状態に保持する。
【0075】
さらに、前照灯体34,34の確認ランプ50bが点灯して(110)、オペレータに両前照灯体34,34の照射光線の方向a,aが路面Gと略平行になった状態に保持されていることを報知する。
【0076】
また、上下首振り角度センサ37が、照射光線の方向a,aが路面Gと略平行になった状態の前照灯体34,34を検出できなかった場合には(108N0)、一定時間(例えば、2秒間)が経過した後に(111YES)、警報ブザー49を作動させて、オペレータに注意を喚起する(112)。
【0077】
(3)続いて、図4に示すように、コントローラ51を介して走行部昇降用シリンダ19,19が作動して(113)、走行部2,2を下降させる。
【0078】
そして、最低地上高となった走行部2,2を車高センサ20,20が検出すると(114YES)、走行部昇降シリンダ19,19を作動停止させて(115)、走行部2,2を最低地上高の状態に保持する。
【0079】
さらに、走行部2,2の確認ランプ50cが点灯して(116)、オペレータに走行部2,2が最低地上高の状態に保持されていることを報知する。
【0080】
また、車高センサ20,20が、最低地上高の走行部2,2をを検出できなかった場合には(114N0)、一定時間(例えば、2秒間)が経過した後に(117YES)、警報ブザー49を作動させて、オペレータに注意を喚起する(118)。
【0081】
(4)続いて、図4に示すように、コントローラ51を介して姿勢変更駆動モータ32が作動して(119)、縦搬送体30を収納位置に移動させる。
【0082】
そして、収納位置に移動された縦搬送体30を縦搬送体収納センサ33が検出すると(120YES)、姿勢変更駆動モータ32を作動停止させて(121)、縦搬送体30を収納位置に保持する。
【0083】
さらに、縦搬送体30の確認ランプ50dが点灯して(122)、オペレータに縦搬送体30が収納位置に保持されていることを報知する。
【0084】
また、縦搬送体収納センサ33が、収納位置に縦搬送体30を検出できなかった場合には(120N0)、一定時間(例えば、2秒間)が経過した後に(123YES)、警報ブザー49を作動させて、オペレータに注意を喚起する(124)。
【0085】
(5)続いて、図5に示すように、コントローラ51を介して回転駆動用モータ76と上下回動用シリンダ80が作動して(125)、オーガ71を収納位置に移動させる。
【0086】
そして、収納位置に移動されたオーガ71を回転量センサ79と上下回動量センサ83が検出すると(126YES)、回転駆動用モータ76と上下回動用シリンダ80を作動停止させて(127)、オーガ71を収納位置に保持する。
【0087】
さらに、オーガ71の確認ランプ50eが点灯して(128)、オペレータにオーガ71が収納位置に保持されていることを報知する。
【0088】
また、回転量センサ79と上下回動量センサ83が、収納位置にオーガ71を検出できなかった場合には(126N0)、一定時間(例えば、2秒間)が経過した後に(129YES)、警報ブザー49を作動させて、オペレータに注意を喚起する(130)。
【0089】
(6)続いて、図5に示すように、コントローラ51を介して進退用シリンダ86,86が収縮作動して(131)、サイドデバイダ85を収納位置に移動させる。
【0090】
そして、収納位置に移動されたサイドデバイダ85を進退量センサ87が検出すると(132YES)、進退用シリンダ86,86の収縮作動を停止させて(133)、サイドデバイダ85を収納位置に保持する。
【0091】
さらに、サイドデバイダ85の確認ランプ50fが点灯して(134)、オペレータにサイドデバイダ85が収納位置に保持されていることを報知する。
【0092】
また、進退量センサ87が、収納位置にサイドデバイダ85を検出できなかった場合には(132N0)、一定時間(例えば、2秒間)が経過した後に(135YES)、警報ブザー49を作動させて、オペレータに注意を喚起する(136)。
【0093】
(7)続いて、図6に示すように、コントローラ51を介して作業部クラッチ66が切断作動して(137)、各作業部を作動停止させる。
【0094】
そして、切断作動された作業部クラッチ66を作業部クラッチセンサ67が検出すると(138YES)、作業部クラッチ66の確認ランプ50gが点灯して(139)、オペレータに各作業部を作動停止されていることを報知する。
【0095】
また、作業部クラッチセンサ67が、切断作動された作業部クラッチ66を検出できなかった場合には(138N0)、一定時間(例えば、2秒間)が経過した後に(140YES)、警報ブザー49を作動させて、オペレータに注意を喚起する(141)。
【0096】
なお、本実施の形態では、オペレータが路上走行用スイッチのON操作を行った際には、左右一対の走行部2,2とオーガ71とサイドデバイダ85と縦搬送体30の全てがコントローラ51を介して各姿勢変更手段により姿勢変更、すなわち、初期設定位置に自動復帰されるようにしているが、これらの内の少なくともいずれか所要の一つが初期設定位置に自動復帰されるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るコンバインの側面説明図。
【図2】同コンバインの制御ブロック説明図。
【図3】路上走行制御のフローチャート
【図4】路上走行制御のフローチャート(S1)
【図5】路上走行制御のフローチャート(S2)
【図6】路上走行制御のフローチャート(S3)
【符号の説明】
【0098】
A コンバイン
1 機体フレーム
2 走行部
3 刈取部
4 昇降機構
5 搬送機構
6 脱穀部
7 選別部
8 運転部
9 原動機部
10 穀粒貯留部
11 穀粒搬出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行部により機体フレームを支持させ、同機体フレーム上に、少なくとも運転部と原動機部と脱穀部と選別部と穀粒貯留部とを設けると共に、同機体フレームの前端部に刈取部を昇降位置調節可能に取り付けたコンバインにおいて、
機体フレームに制御手段を設けると共に、同制御手段の入力側に路上走行用スイッチを接続する一方、同制御手段の出力側に刈取部昇降手段を接続して、路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して刈取部昇降手段を作動させて、刈取部を路上走行用設定高さに保持させるようにしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
制御手段の出力側に、独立的に昇降して機体フレームの地上高及び姿勢を制御する左右一対の走行部の姿勢変更手段と、穀粒貯留部に貯留した穀粒を搬出するオーガの姿勢変更手段と、圃場の穀稈を機体の側方に案内するサイドデバイダの姿勢変更手段と、刈取部に設けた縦搬送体の姿勢変更手段とを接続して、
路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して姿勢変更手段を作動させて、走行部とオーガとサイドデバイダと縦搬送体の内の少なくともいずれか一つを路上走行用姿勢に保持させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
原動機部に作業部クラッチを介して脱穀部と選別部と穀粒貯留部と刈取部とをそれぞれ連動連結すると共に、上記作業部クラッチは制御手段の出力側に接続し、
路上走行用スイッチのON操作により、制御手段を介して作業部クラッチを動力切断動作させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−254755(P2006−254755A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74833(P2005−74833)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】