説明

コンバイン

【課題】 脱穀装置の横側に配置した穀粒回収タンクの前側に運転部を設け、穀粒回収タンクに貯留された穀粒を穀粒搬出装置で搬送して機外に排出するよう構成し、穀粒搬出装置を、穀粒回収タンクの底部から送出された穀粒を揚送する縦搬送機構と、揚送された穀粒を横送りして先端排出口から排出する横搬送機構とで構成し、横搬送機構を、その基部の縦向き支点周りに駆動旋回可能、かつ、基部の横向き支点周りに駆動上下揺動可能に構成したコンバインにおいて、穀粒排出位置を変更する手動操作部を固定配備して安価に実施することができるものでありながら、手動操作部の操作性を高める。
【解決手段】 横搬送機構13Bを旋回作動させる旋回駆動機構と横搬送機構13Bを上下揺動作動させる揺動駆動機構45とを操作する手動操作部83を、運転部6における機体横外側近くに配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒回収タンクを備えたコンバインに係り、詳しくは、脱穀装置と穀粒回収タンクとを左右に並列して機体フレームに搭載支持するとともに、穀粒回収タンクの前側に運転部を設け、穀粒回収タンクに貯留された穀粒を穀粒搬出装置で搬送して機外に排出するよう構成し、この穀粒搬出装置を、穀粒回収タンクの底部から送出された穀粒を揚送する縦搬送機構と、揚送された穀粒を横送りして先端排出口から排出するよう構成し、横搬送機構を、その基部の縦支点周りに駆動旋回可能、かつ、基部の横支点周りに駆動上下揺動可能に構成したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成のコンバインにおいては、横搬送機構を旋回作動させる旋回駆動機構と、横搬送機構を上下揺動作動させる揺動駆動機構とを、運転部における機体横内側の後方に設置した位置固定の手動操作部で操作するように構成しており、無線式通信装置によっても操作できるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−217891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
機体後方の横外方にトラックなどの運搬車両を横付けし、その荷台に搭載した回収容器や回収袋に搬出穀粒を投入する穀粒搬出作業を一人で行う場合、機体後方の横外方に位置させた横搬送機構の先端排出口の近くで投入情況を監視し、横搬送機構の先端排出口の位置を変更することになるが、横搬送機構の姿勢位置を変更する操作スイッチを運転部における機体横内側の後方に固定設置した構造においては、横搬送機構の先端排出口の位置を変更する度に作業者が運転部に乗り上り、操作後に再び運転部から降りて横搬送機構の先端排出口の位置まで移動することになり、頻繁に運転部に乗り降りする必要があって煩わしいものとなる。
【0004】
これに対して、横搬送機構の旋回及び上下揺動作動を無線式通信装置のスイッチ操作で行う場合は、作業者は無線式通信装置を持って横搬送機構の先端排出口の近くに居て、必要に応じて横搬送機構の先端排出口の位置を変更することができ、前者の構造に比べて操作性に優れたものとなっているのであるが、その反面、無線式通信装置と機体側の制御装置との間での無線信号の授受を行うための構造や信号処理手段を要するために、全体として高価になる問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、横搬送機構の先端排出口の位置を変更する手動操作部を固定配備して安価に実施することができるものでありながら、手動操作部の操作性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、脱穀装置と穀粒回収タンクとを左右に並列して搭載支持し、穀粒回収タンクの前側に運転部を設け、穀粒回収タンクに貯留された穀粒を穀粒搬出装置で搬送して機外に排出するよう構成し、この穀粒搬出装置を、穀粒回収タンクの底部から送出された穀粒を揚送する縦搬送機構と、揚送された穀粒を横送りして先端排出口から排出する横搬送機構とで構成し、横搬送機構を、その基部の縦向き支点周りに駆動旋回可能、かつ、基部の横向き支点周りに駆動上下揺動可能に構成したコンバインにおいて、
横搬送機構を旋回作動させる旋回駆動機構と横搬送機構を上下揺動作動させる揺動駆動機構とを操作する手動操作部を、運転部における機体横外側近くに配置してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、横搬送機構の先端排出口を運転部の横外方近くに位置させて穀粒搬出作業を一人で行う場合は、作業者は運転部に搭乗したままで横搬送機構の先端排出口の監視をしながら、手動操作部を操作して横搬送機構の先端排出口の位置を変更することができる。横搬送機構の先端排出口を運転部から後方に離れた位置に置いて穀粒搬出作業を一人で行う場合は、作業者は地上に降りて横搬送機構の先端排出口の近くに居て排出状況を監視し、必要に応じて運転部横まで移動して地上から手動操作部を操作し、横搬送機構の先端排出口の位置を変更することができる。
手動操作部が機体側に固定配備されているので、配線構造も簡単なものですますことができる。
従って、第1の発明によると、横搬送機構の先端排出口の位置を変更する手動操作部を固定配備して安価に実施することができるものでありながら、手動操作部の操作性を高めることができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
運転部にエンジンとこれを覆うボンネットを配備し、ボンネットの上に運転座席を設置するとともに、ボンネットの機体横外側にエンジン冷却風取り入れ用の吸気ダクトを配備し、この吸気ダクトの上部外周部に手動操作部を設けてあるものである。
【0009】
上記構成によると、吸気ダクトの上部外周部は、運転座席に着座した状態でも、運転部から降りて地上に立った状態でも容易に手が届く位置であり、上記第1の発明を好適に実施することができるとともに、手動操作部の電気配線を吸気ダクトの内部に通すことで、配線トラブルを未然に回避する上でも有効となる。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、
穀粒回収タンクの底部に穀粒送出用の底スクリューを配備し、この底スクリューの終端部と穀粒搬出装置とを連動連結し、底スクリューへの動力伝達系に搬出クラッチを備えるとともに、この搬出クラッチを入り切り操作する操作具を手動操作部に近接して配備してあるものである。
【0011】
上記構成によると、横搬送機構の先端排出口の位置変更操作のみならず、穀粒搬出作動をも地上からの操作で行うことができ、一層使い勝手の優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に自脱型のコンバインの機体右側から見た側面図が、図2にその平面図がそれそれ示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体フレーム2の前部に複数条刈り仕様の刈取り部3が昇降自在に連結され、機体フレーム2の右側前部に、エンジン4を内装したボンネット5および運転部6が配備されている。機体フレーム2の左側に脱穀装置7が搭載され、かつ、脱穀装置7の右側で運転部6の後側となる箇所に板金構造の穀粒回収タンク8が装備された構造となっており、刈取り部3で刈取った穀稈を脱穀装置7に供給して脱穀処理し、脱穀装置7で選別回収した穀粒をスクリュー式の揚穀装置9によって揚送して穀粒回収タンク8に投入するように構成されている。
【0013】
図8に示すように、前記穀粒回収タンク8は、前後方向視で、その下部が下窄まり状に形成され、この下窄まり部8eの下端内部には、貯留した穀粒を後方に向けて送り出す底スクリュー10が支軸10aを介して前後水平に支架されるとともに、底スクリュー10の上方に沿って、断面形状が山形に形成された流下案内板11が回動支軸12を介して揺動可能に支持されている。
【0014】
穀粒回収タンク8における下窄まり部8eは、貯留した穀粒を残すことなく底スクリュー10に導くよう、穀粒の流下安息角以上の傾斜角度が与えられるとともに、下窄まり部8aの下端部がタンク横幅中心よりも大きく横外方に偏って配置されている。
【0015】
穀粒回収タンク8の後方には、底スクリュー10によって送出された穀粒を揚送した後に、横搬送して機外に搬出するスクリュー式の穀粒搬出装置13が装備されている。この穀粒搬出装置13は、穀粒回収タンク8の後面下端に連通接続されたスクリュー式の縦搬送機構13Aと、この縦搬送機構13Aの上端に連通接続されたスクリュー式の横搬送機構13Bとから構成されており、穀粒搬出装置13全体が、縦搬送機構13Aのスクリュー軸心と同芯の縦向き支点Pを中心にして旋回可能となっている。
【0016】
図6に示すように、前記穀粒回収タンク8の下部後端には底スクリュー10における支軸10aの後端部を支承する搬出ケース14が連結されるとともに、機体フレーム2から機体横外方に突設された支持部2aに、前記搬出ケース14の下端ボス部14aが回動可能に嵌合支持されて、穀粒回収タンク8が前記縦向き支点P周りに旋回可能に支持されている。図16に示すように、穀粒回収タン8の下部前面には厚板材からなる支持板15が備えられ、この支持板15の下端部が機体フレーム2の上面に載置支持されて、穀粒回収タンク8の全重量が前後2箇所において機体フレーム2と支持部2aに支持されるようになっている。
【0017】
前記支持板15にはロックピン20が上下スライド可能に備えられている。ロックピン20はバネ21によって下方にスライド付勢されており、機体フレーム2側に設けられたロック孔22にロックピン20の下端部を挿入することで穀粒回収タンク8が所定の穀粒回収位置に固定され、ロックピン20をバネ21に抗してロック孔22から抜き上げることで、穀粒回収タンク8を縦向き支点P周りに旋回して脱穀装置7の右側部を大きく開放したメンテナンス位置に移動させることができるようになっている。なお、前記ロックピン20は、抜き上げて回動することで、支持板15に備えた受け金具23に係止保持しておくことができるようになっている。
【0018】
図3,図4,図8,図11に示すように、穀粒回収タンク8の横外側にはタンク側面を覆うサイドカバー25が連結固定されている。サイドカバー25の下端部には、穀粒回収タンク8における外向きの下窄まり部8eを横外方から覆う下部サイドカバー26が連結されるとともに、サイドカバー25の後端部には、穀粒搬出装置13における縦搬送機構13Aの大部分を横側から覆うとともに、作業灯28や車幅灯29などを備えた後部サイドカバー27が連結されている。縦搬送機構13Aの後側箇所には、角パイプ製の縦フレーム31が機体フレーム2から立設され、この縦フレーム31に縦搬送機構13Aを後方から覆うリヤカバー30が連結固定されている。穀粒回収タンク8が縦向き支点P周りに横外方に旋回される際、図3中の仮想線で示すように、穀粒回収タンク8と一体に旋回移動する後部サイドカバー27が固定のリヤカバー30に干渉することなく後方に回り込むようになっている。図12に示すように、下部サイドカバー26の前端部には、縦向きの支点a周りに揺動開閉可能に可動カバー32が装着されており、この可動カバー32を開くことで、前記ロックピン20が露出されて、穀粒回収タンク8のロック操作およびロック解除操作を行うことができるようになっている。
【0019】
前記穀粒搬出装置13における縦搬送機構13Aは、丸パイプ材からなる縦向きの搬送ケース35に縦送りスクリュー36を内装して構成されており、図6に示すように、搬送ケース35の下端部が前記搬出ケース14に対して縦向き支点P周りに回動可能に挿嵌支持されるとともに、前記縦フレーム31の上下2箇所に備えた筒形支持部材37に回動可能に支持されて、縦搬送機構13Aの起立姿勢が保持されている。縦送りスクリュー36における支軸36aの下端が前記搬出ケース14に挿入されて、前記底スクリュー10における支軸10aの後端部にベベルギヤ連動され、底スクリュー10と同速度で縦送りスクリュー36が駆動されるようになっている。
【0020】
図6,図10に示すように、前記搬出ケース14の下部には、底スクリュー10によって送出された穀粒を縦搬送機構13Aにおける縦送りスクリュー36の搬送域に導く連通路Rが形成されており、この連通路Rが、底スクリュー10の上端より上方に拡張された縦長形状となるように、搬出ケース14の下部形状および穀粒回収タンク8の搬出口8fの形状がそれぞれ縦長の長円形に形成されている。
【0021】
図7に示すように、前記穀粒搬出装置13の横搬送機構13Bは、丸パイプ材からなる搬送ケース38に横送りスクリュー39を内装して構成されており、搬送ケース38の先端部には下向きに開口した先端排出口40が備えられている。縦搬送機構13Aにおける搬送ケース35の上端と、横搬送機構13Bにおける搬送ケース38の基端部とは接続ケース41で連通接続されている。接続ケース41は、縦搬送機構13Aにおける搬送ケース35の上端部に固着された上端接続ケース部41aと、横搬送機構13Bにおける搬送ケース38の基端部に固着された基端接続ケース部41bとからなり、上端接続ケース部41aに対して基端接続ケース部41bが横向き支点Q周りに回動可能に嵌合連結されて、横搬送機構13Bが前記横向き支点Q周りに上下揺動可能となっている。
【0022】
前記横向き支点Q上には、両端を前記上端接続ケース部41aと基端接続ケース部41bに支承された中継軸42が配備されている。この中継軸42には横向き支点Qに対して傾斜する送り羽根43が装備されるとともに、中継軸42の両端がそれぞれ縦送りスクリュー36における支軸36aの上端と、横送りスクリュー39における支軸39aの基端とに等速でベベルギヤ連動されている。これによって、底スクリュー10の回転に連動して縦送りスクリュー36および横送りスクリュー39が同調駆動され、穀粒回収タンク8から送出された穀粒が縦搬送機構13Aによって揚送された後、横搬送機構13Bによって横搬送されて先端排出口40から排出されるようになっている。
【0023】
前記縦搬送機構13Aに固定された上端接続ケース部41aと横搬送機構13Bの搬送ケース38とに亘って揺動駆動機構としての油圧シリンダ45が架設され、この油圧シリンダ45の伸縮作動によって横搬送機構13Bが横向き支点Q周りに所定範囲内で上下に駆動揺動されるようになっている。
【0024】
図9に示すように、穀粒回収タンク8の下部に連結固定された前記搬出ケース14には旋回駆動機構としての電動モータ46が取付けられるとともに、その回転出力によって正逆に回転駆動されるピニオンギヤ47が、縦搬送機構13Aの搬送ケース36にフランジ状に固着されたリングギヤ48に咬合さており、電動モータ46の正逆転作動によって穀粒搬出装置13の全体が縦向き支点P周りに駆動旋回されるようになっている。このように穀粒搬出装置13の旋回および横搬送機構13Bの上下揺動によって先端排出口40の旋回位置および高さ位置を移動させて、穀粒排出位置を任意に変更することが可能となっている。
【0025】
次に、前記穀粒搬出装置13を駆動する原動軸である前記底スクリュー10へ動力伝達構造について説明する。
図13,図15に示すように、穀粒回収タンク8の前面下部に備えた前記支持板15には底スクリュー10における支軸10aの前端部を軸受け支承するブラケット50が固着されるとともに、このブラケット50の前面に入力ケース51が連結されている。入力ケース51には、前記支軸10aに連結された出力ベベルギヤ52と、これに咬合された入力ベベルギヤ53が装備され、入力ベベルギヤ53に連結された入力軸54が機体内方に向けて突設されている。
【0026】
前記ブラケット50と入力ケース51とは脚部50a,51aを突合せて連結されており、脚部50a,51aの間に形成された空間において、外周にベアリング55を装着した偏芯カム56が底スクリュー10の支軸10aに外嵌固着されている。前記流下案内板11の回動支軸12が支持板15の前方に突出され、その突出端に連結された操作アーム57が上下長孔58を介して前記偏芯カム56のベアリング55に係合されている。この構成によって、底スクリュー10の支軸10aが回転駆動されて偏芯カム56が回動することで、この偏芯カム56に係合された操作アーム57が偏芯カム56の偏芯量に応じた振幅で往復揺動され、流下案内板11が所定角度で往復揺動駆動されることで、穀粒回収タンク8に貯留された穀粒がブリッジ現象をもたらすことなく底スクリュー10の作用域に流下するようになっている。
【0027】
穀粒回収タンク8とその前方に配置された前記エンジン4との間における機体フレーム2上に軸受けブラケット60が立設され、この軸受けブラケット60に回転自在に装着支持された横向き軸心の入力プーリ61にエンジン動力が伝達されるようになっている。
【0028】
図5の動力伝達系統図に示すように、横向きに搭載配備された前記エンジン4には、機体内方に向けて突出する主出力軸62と、機体外方に向けて突出する補機駆動用の副出力軸63とが備えられており、主出力軸62から取り出された動力でクローラ走行装置1、刈取り部3、および、脱穀装置7が駆動される。外向きの副出力軸63には、3本掛けの出力プーリ64が備えられており、この出力プーリ64に巻回された伝動ベルト65で、エンジン冷却用のウオーターポンプ66、ラジエータ冷却ファン67、発電機68が駆動されるとともに、前記出力プーリ64に巻回された別の伝動ベルト69が前記入力プーリ61に巻回されて底スクリュー10および穀粒搬出機構13への動力伝達系が構成されている。なお、図示されていないが、3本掛けの前記出力プーリ64の最外側には更に別の伝動ベルトを巻回することができ、キャビン仕様に構成された場合に装備される空調装置における冷媒圧縮用のコンプレッサを駆動することができるようになっている。
【0029】
底スクリュー10へのベルト式の動力伝達系には搬出クラッチ77が備えられている。この搬出クラッチ77は、テンションローラ78を前記伝動ベルト69に押圧作用させるテンションクラッチに構成されており、後述するよう、前記運転部6からのレバー操作で搬出クラッチ77の入り切り操作が行われる。
【0030】
上記のようしてエンジン動力を受ける前記入力プーリ61の中心には中間伝動軸71が軸心方向にスライド可能にスプライン内嵌されている。中間伝動軸71は、前記入力ケース51に支架された前記入力軸54と同芯に突合せ配置されるとともに、外嵌装着したバネ72によって中間伝動軸71が入力軸54に向けてスライド付勢されている。中間伝動軸71と入力軸54とは、その突合せ対向部位において噛み合い式の自動断続クラッチ73を介して連動連結されている。
【0031】
前記自動断続クラッチ73は、中間伝動軸71の先端部に連結固定したボス状のクラッチ部材74と、入力軸54の先端部外周に打ち込み貫通した係合ピン75とで構成されている。クラッチ部材74が入力軸54の先端部に外嵌されることにより、図13に示すように、入力軸54の係合ピン75がクラッチ部材74の端部対角位置に形成された係合凹部76に噛み合い係入し、これによって中間伝動軸71から入力軸54への動力伝達がなされるようになっている。
【0032】
穀粒回収タンク8が穀粒回収位置からメンテナンス位置に旋回移動されると、図14に示すように、入力軸54の横外方への移動に伴って係合ピン75がクラッチ部材74から抜き出され、中間伝動軸71と入力軸54との連結が解除される。穀粒回収タンク8がメンテナンス位置から元の穀粒回収位置に旋回復帰されると、入力軸54の横内方への移動に伴って係合ピン75がクラッチ部材74に軸心方向から係合されて、中間伝動軸71と入力軸54とが自動的に連動連結される。穀粒回収タンク8がメンテナンス位置から穀粒回収位置に旋回復帰された際、回転停止しているクラッチ部材74の係合凹部76と入力軸54の係合部材75との回転位相がズレていることがあり、このような場合には、係合ピン75がクラッチ部材74の外端縁を接当押圧して中間伝動軸71がバネ72に抗して機体内方にスライド後退され、次に、搬出クラッチ77が入れられて中間回転軸71が回転され始めると、クラッチ部材74の係合凹部76が係合ピン75の位相まで移動したところで中間回転軸71が付勢スライドして自動断続クラッチ73が入れられ、自動的に中間回転軸71と入力軸54とが連動連結状態になる。
【0033】
前記穀粒搬出装置13の起動および停止を司る前記搬出クラッチ77、横搬送機構13Bを旋回する電動モータ46、および、横搬送機構13Bを上下揺動する油圧シリンダ45の操作構造が以下のように構成されている。
図17に示すように、前記ボンネット5は箱形に構成され、その上に運転座席16が設置されるとともに、ボンネット5の横外端部に、防塵構造の吸気口17を備えた中空縦壁状の吸気ダクト18が連設されており、この吸気ダクト18を通して取り入れられた外冷気がエンジン冷却に使われるようになっている。
【0034】
吸気ダクト18の機体内側におけるボンネット5の上には、搬出操作具としての搬出クラッチレバー79を備えた操作ユニット80が設置され、この搬出クラッチレバー79と前記搬出クラッチ77とが操作ワイヤ81を介して連動連結されている。吸気ダクト18の上部外周部の前下がり傾斜箇所には、前記電動モータ46および前記油圧シリンダ45の電磁制御弁82を切換え作動させる手動操作部83が設置されている。
【0035】
手動操作部83には、電動モータ46を正逆作動させ旋回用スイッチ84と、電磁制御弁82を正逆に切換え作動させる上下動用スイッチ85とが装備され、これら旋回用スイッチ84および上下動用スイッチ85の配線は、吸気ダクト18の内部を通して図示されていない制御装置に接続されている。運転座席16より機体外側に位置するこれら旋回用スイッチ84および上下動用スイッチ85は、運転座席16に着座して操作できるとともに、地上からでも操作可能となっている。
【0036】
旋回用スイッチ84は、中立復帰された正逆押し込み操作型に構成されて横向き姿勢で配備されており、左右いずれかの押し込み部を押し込み操作している間だけ押し込んだ方向に横搬送機構13Bを旋回作動させ、押し込みを解除すると旋回が停止されるようになっている。上下動用スイッチ85は、中立復帰された正逆押し込み操作型に構成されて縦向き姿勢で配備されており、上下いずれかの押し込み部を押し込み操作している間だけ押し込んだ方向に横搬送機構13Bを上下揺動作動させ、押し込みを解除すると上下動が停止されるようになっている。
【0037】
従って、横搬送機構13Bの先端排出口40を運転部6の横外方近くに位置させて穀粒搬出作業を一人で行う場合は、作業者は運転部6に搭乗した状態で先端排出口40の監視を行いながら手動操作部83を操作して先端排出口40を移動させることができるとともに、搬出クラッチレバー79を操作して穀粒搬出作動の起動および停止を行うことができる。
【0038】
先端排出口40を運転部6から後方に離れた位置にして穀粒搬出作業を一人で行う場合は、作業者は地上に降りて先端排出口40の近くに居て排出状況を監視し、必要に応じて運転部6の横まで移動して地上から手を伸ばして手動操作部83を操作し、先端排出口40を移動させることができるとともに、搬出クラッチレバー79を操作して穀粒搬出作動の起動および停止を行うこともできる。
【0039】
〔他の実施例〕
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
(1)前記手動操作部83の設置箇所は、必ずしも前記吸気ダクト18の上部外周部に限られるものではなく、運転座席16および地上から操作できる箇所であれば如何なる箇所でもよい。
【0040】
(2)前記手動操作部83に上下左右に十字操作可能なスイッチレバーを配備して、スイッチレバーの左右操作で横搬送機構13Bを旋回作動させ、スイッチレバーの上下操作で横搬送機構13Bを起伏揺動させる形態で実施することもできる。
【0041】
(3)前記搬出操作具としての搬出クラッチレバー77は前記手動操作部83に近接して設けることが好ましいが、搬出操作具77のみを運転座席16の機体内側箇所に設けて実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】穀粒回収タンクの側面図
【図4】穀粒回収タンクの平面図
【図5】伝動系の概略図
【図6】底スクリューと縦搬送機構との連係構造を示す縦断側面図
【図7】縦搬送機構と横搬送機構との連係構造を示す展開断面図
【図8】穀粒回収タンクの背面図
【図9】穀粒搬出装置の旋回駆動構造を示す平面図
【図10】穀粒回収タンクの搬出部を示す背面図
【図11】穀粒回収タンクの後部を示す斜視図
【図12】穀粒回収タンク下部の可動カバーが開放された状態を示す斜視図
【図13】エンジンから底スクリューへの伝動系の動力伝達状態を示す横断平面図
【図14】エンジンから底スクリューへの伝動系の伝動遮断状態を示す横断平面図
【図15】底スクリュー前端部の伝動構造を示す縦断側面図
【図16】流下案内板の駆動構造を示す正面図
【図17】運転部の斜視図
【符号の説明】
【0043】
4 エンジン
5 ボンネット
6 運転部
7 脱穀装置
8 穀粒回収タンク
10 底スクリュー
13 穀粒搬出装置
13A 縦搬送機構
13B 横搬送機構
16 運転座席
18 吸気ダクト
40 先端排出口
45 揺動駆動機構(油圧シリンダ)
46 旋回駆動機構(電動モータ)
77 搬出クラッチ
79 搬出操作具(搬出クラッチレバー)
83 手動操作部
P 縦向き支点
Q 横向き支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置と穀粒回収タンクとを左右に並列して搭載支持するとともに、前記穀粒回収タンクの前側に運転部を設け、前記穀粒回収タンクに貯留された穀粒を穀粒搬出装置で搬送して機外に排出するよう構成し、この穀粒搬出装置を、穀粒回収タンクの底部から送出された穀粒を揚送する縦搬送機構と、揚送された穀粒を横送りして先端排出口から排出する横搬送機構とで構成し、前記横搬送機構を、その基部の縦向き支点周りに駆動旋回可能、かつ、基部の横向き支点周りに駆動上下揺動可能に構成したコンバインにおいて、
前記横搬送機構を旋回作動させる旋回駆動機構と前記横搬送機構を上下揺動作動させる揺動駆動機構とを操作する手動操作部を、前記運転部における機体横外側近くに配置してあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記運転部にエンジンとこれを覆うボンネットを配備し、前記ボンネットの上に運転座席を設置するとともに、ボンネットの機体横外側にエンジン冷却風取り入れ用の吸気ダクトを配備し、この吸気ダクトの上部外周部に前記手動操作部を設けてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記穀粒回収タンクの底部に穀粒送出用の底スクリューを配備し、この底スクリューの終端部と前記穀粒搬出装置とを連動連結し、前記底スクリューへの動力伝達系に搬出クラッチを備えるとともに、この搬出クラッチを入り切り操作する搬出操作具を前記手動操作部に近接して配備してある請求項1または2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−207413(P2009−207413A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53520(P2008−53520)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】