説明

コンバイン

【課題】本発明は、刈高検出装置が引起し装置の持ち上げに邪魔にならず、引起し装置を分草フレームに着脱自在に固定する固定手段の取り付けを容易に行えるようにする。
【解決手段】走行機体の前部に機体横軸心周りに昇降自在に刈取前処理部を備え、引起し装置27の下部部分の後方近くに位置する分草フレーム部分を上方に湾曲させて湾曲フレーム部分18aを構成し、湾曲フレーム部分18aの下方空間S2に刈高検出装置37を配設し、複数の引起し装置のうちの刈高検出装置37の前側に位置する引起し装置27を、上部の左右横軸心周りで持ち上げ可能に構成するとともに、当該引起し装置27の下部を湾曲フレーム部分18aに着脱自在に固定する固定手段53を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部に機体横軸心周りに昇降自在に刈取前処理部を備え、刈取前処理部の前部に備えた刈高検出装置の検出結果に基づいて刈取前処理部を昇降制御するように構成してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、従来、走行機体の前部に機体横軸心周りに昇降自在に刈取前処理部を備え、刈取前処理部に、前方に延設された左右複数の分草フレームと、左右複数の各分草フレームの前端部に位置して植立穀稈を分草する分草具と、分草具の後方に位置して植立穀稈を引起す複数の引起し装置と、引起された植立穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取った穀稈を搬送する搬送装置を備え、分草フレームに刈取前処理部の刈高さを検出する刈高検出装置を備え、刈高検出装置の検出結果に基づいて刈取前処理部の対地高さを変更させる刈高さ制御を行う制御手段を備えてあるコンバインが知られている。
【0003】
特許文献2に示されているように、コンバインにおいては、刈取装置で刈り取った穀稈を搬送する搬送装置に詰まりが生じたときに、詰まりの除去作業並びに搬送装置の点検作業を容易にできるように、引起し装置を上部の左右横軸心周りで持ち上げ可能に構成したものが知られている。
【0004】
しかし、引起し装置の前方に位置する分草フレーム部分に刈取前処理部の刈高さを検出する刈高検出装置を備えているものに、引起し装置の下部を持ち上げ可能に構成すると条数によっては、刈高検出装置が引起し装置を持ち上げるのに邪魔になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−204197号公報
【特許文献2】特開2008−61572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、刈高検出装置が引起し装置の持ち上げの邪魔にならないようにするとともに、引起し装置を持ち上げ可能なように分草フレームに対して着脱自在に固定する固定手段の取り付けを容易に行えるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、走行機体の前部に機体横軸心周りに昇降自在に刈取前処理部を備え、前記刈取前処理部に、前方に延設された左右複数の分草フレームと、前記左右複数の分草フレームのそれぞれの前端部に位置して植立穀稈を分草する分草具と、前記分草具の後方に位置して植立穀稈を引起す複数の引起し装置と、引起された植立穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取った穀稈を搬送する搬送装置を備え、
前記分草フレームに前記刈取前処理部の刈高さを検出する刈高検出装置を備え、前記刈高検出装置の検出結果に基づいて前記刈取前処理部の対地高さを変更させる刈高さ制御を行う制御手段を備えてあるコンバインにおいて、
前記分草フレームにおける引起し装置の下部部分の後方近くに位置する分草フレーム部分を上方に湾曲させて湾曲フレーム部分を構成し、この湾曲フレーム部分の下方空間に前記刈高検出装置を配設し、
前記複数の引起し装置のうちの前記刈高検出装置の前側に位置する引起し装置を、上部の左右横軸心周りで持ち上げ可能に構成するとともに、当該引起し装置の下部を前記湾曲フレーム部分に着脱自在に固定する固定手段を備えてあることを特徴とする。
【0008】
〔第1発明の作用〕
第1発明によれば、左右方向内側に位置する分草フレームにおける引起し装置の下部後方近くを上方に湾曲させて湾曲フレーム部分を構成し、この湾曲フレーム部分の下方空間に刈高検出装置を配設し、湾曲フレーム部分の前側近傍に位置する引起し装置を左右横軸心周りで持ち上げ可能に構成して、当該引起し装置の下部を、湾曲フレーム部分に対して着脱自在に固定する固定手段を設けたので、湾曲フレーム部分が引起し装置の持ち上げ揺動に対して邪魔にならない。
又、分草フレームを上方に湾曲させて湾曲フレーム部分を形成したことにより、上方に湾曲する湾曲フレーム部分は引起し装置に近接することとなり、引起し装置を分草フレームに固定する固定手段を設けるに当たって、支持部材を備えたとしても小さな支持部材でよく、固定手段も小規模のものでよくなる。
【0009】
従来より、分草フレームとしては、引起し装置の引起し爪先端側の下方に配置されるものと、引起し爪とは左右反対側の引起し装置本体側の下方に配置されるものとがあり、引起し爪側に設けられる分草フレームの場合は通常、分草具が小さく、従ってこの場合は小分草具の直後と引起し装置との間に位置する分草フレーム部分を上方に湾曲させて湾曲フレーム部分を構成し、この湾曲フレーム部分の下方空間に刈高検出装置を配設することが可能である。これに対して、引起し爪とは左右方向で反対側の引起し装置本体側の下方に配設した分草フレームの前端に設けられる分草具は、植立穀稈を引起し装置本体を越えて引起し爪まで茎稈を案内するために大きな分草具が必要になるが、引起し装置よりも前方の位置で、大きな分草具の後方の位置における分草フレーム部分に刈高検出装置を設ける場合は、分草具を通常の位置よりも前方に配置しないと刈高検出装置の配置空間を確保できない。単に分草具を前方に位置変更するだけなら、その分全長が長くなるだけであるが、分草具を前方に配置すると、通常の分草具の大きさでは当該分草具で分草された植立穀稈が引起し装置の引起し爪まで案内できず、分草具の位置を前方に配置すると、それに対応して分草具も植立茎稈を引起し爪まで案内できるように大型のものを設置しなければならない不都合があり、そうなると大型の分草具が邪魔になって引起し装置を持ち上げ可能に構成することができず、現実的には引起し装置の前方に刈高検出装置を配置することが困難となる。
【0010】
これに対して、本第1発明によれば、引起し装置の下部後方近傍に位置する湾曲フレーム部分の下方空間に刈高検出装置を設けるように構成したので、刈高検出装置を引起し爪先端側に配置される分草フレームだけでなく、引起し爪とは左右反対側の引起し装置の本体に配置される分草フレームを含む任意の分草フレームに刈高検出装置を設けることができるようになった。
【0011】
〔第1発明の効果〕
本第1発明によれば、左右に配設される任意の分草フレームに刈高検出装置を設けることが可能となり、刈取条数の多少に拘らず、大小種々のコンバインに対して好適に刈高検出装置を設置することができるようになった。
【0012】
又、持ち上げ可能に構成された引起し装置を固定する固定手段を設けるに当たって、別途支持部材を備えたとしても小さな支持部材でよく、固定手段も小規模のものでよくなるので、前記固定手段を支持するための部材点数を削減でき、これにより生産性も向上させることができるに至った。
【0013】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記引起し装置を左右方向に3基以上備え、前記左右複数の分草フレームのうちの右端及び左端の分草フレームよりも左右方向内側の分草フレームに、前記刈高検出装置を配設するための前記湾曲フレーム部分を形成し、持ち上げ可能な前記引起し装置を左右端の引起し装置よりも左右方向内側に配置してある。
【0014】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、引起し装置が3基以上備えられている多条刈のコンバインにおいて、引起し装置後方の刈り取った穀稈を搬送する搬送装置に詰まりが生じたときに、その詰まり箇所が刈取前処理部の左右外側部から手の届かない左右中間部である場合は、左右中間部に位置する引起し装置を、前記固定手段による固定を解除することにより持ち上げ、持ち上げた前方空間から詰まりを容易に解除することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体を示す側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】刈取前処理部の分草具、引起し装置、搬送装置の配置を示す平面図である。
【図5】センサによる刈高さ制御の制御系統図である。
【図6】センサにより刈取前処理部の昇降シリンダを制御する制御装置のブロック図である。
【図7】引起し装置よりも前に配設した第1センサを示す側面図である。
【図8】引起し装置とこれの前後に備えた第1、第2センサの配設を示す刈取前処理部の概略側面図である。
【図9】引起し装置よりも後に第2センサを備えた部分の分草フレームと持上げ可能な引起し装置を示す側面図である。
【図10】持上げ可能な引起し装置のロック構造を示す一部横断平面図である。
【図11】持上げ可能な引起し装置のロック構造を示す部分背面図である。
【図12】持上げ可能な引起し装置のロック構造のロック解除状態での斜視図である。
【図13】引起し装置よりも後に配設した第2センサを示す側面図である。
【図14】刈高さ制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す平面図である。図3は、本発明の実施の形態に係るコンバインを示す正面図である。これらの図に示すように、本発明の実施の形態に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置11が装備された走行機体を備え、この走行機体の機体フレーム1の前部に前処理部フレーム10が連結されている刈取前処理部8を備え、走行機体の機体フレーム1の後部側に走行機体横方向に並べて設けた脱穀装置2と穀粒タンク3を備えて構成してある。
【0017】
このコンバインは、稲、麦などの収穫作業を行なうものであり、詳しくは次の如く構成してある。
【0018】
走行機体は、機体フレーム1の前端側の右端部に設けたエンジン4が装備された原動部を備え、エンジン4の駆動力によって左右一対のクローラ走行装置11を駆動して自走する。走行機体は、エンジン4の上方に設けた運転座席5aが装備された運転部5を備え、この運転部5に搭乗して運転するよう乗用型になっている。
【0019】
図1に示すように、左右のクローラ走行装置11は、走行機体の機体フレーム1に連結されたトラックフレーム12、機体フレーム1の前端部に設けたミッションケース6に駆動自在に支持されたクローラ駆動輪体13、トラックフレーム12に走行機体前後方向に並べて設けた接地輪体14、トラックフレーム12の後端部に回転自在に設けたクローラ緊張輪体15、各輪体13,14,15にわたって巻回されたゴム製のクローラベルト16を備えて構成してある。
【0020】
刈取前処理部8の前処理部フレーム10は、機体フレーム1に機体横軸心Pまわりに昇降自在に連結されている。刈取前処理部8は、前処理部フレーム10のメインフレーム9が昇降シリンダ7によって機体フレーム1に対して上下に揺動操作されることにより、刈取前処理部8の前端部に走行機体横方向に並べて設けてある四つの分草具22〜25が圃場面近くに下降した下降作業状態と、四つの分草具22〜25が圃場面から高く上昇した非作業状態とに昇降する。
【0021】
運転座席5aの前方の運転部5には、人為操作具としての操作レバー35を備え、この操作レバー35を、前後方向に操作することにより刈取前処理部8を昇降させることができ、左右操作に操作すると操作方向のクローラ走行装置11を減速又は停止させて走行機体を左旋回又は右旋回させることができるようになっている。操作レバー35を前後方向に操作すると、後述する刈高さ制御に優先して、刈取前処理部8を昇降操作することができる。すなわち、刈取前処理部8が上昇位置あるときに操作レバー35を前方に揺動操作すると刈取前処理部8が下降し、刈高さ制御が行われているときに操作レバー35を後方に揺動操作すると刈取前処理部8を上昇させることができる。
【0022】
刈取前処理部8を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取前処理部8は、植立穀稈を引起すとともに刈取り、刈り取り穀稈を脱穀装置2の脱穀フィードチェーン2aの始端部に供給する。脱穀装置2は、脱穀フィードチェーン2aによって刈取穀稈の株元側を挟持して走行機体後方向きに搬送し、これによって刈取穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク3は、脱穀装置2から搬送された脱穀粒を回収して貯留する。
【0023】
刈取前処理部8について詳述する。
図1,2に示すように、刈取前処理部8の前処理部フレーム10は、走行機体の機体フレーム1から走行機体前方向きに機体横軸心Pまわりに昇降自在に延出したメインフレーム9、及びこのメインフレーム9の延出端側に走行機体横方向に所定間隔を隔てて並ぶ配置で連結された四本の走行機体前後向きの分草フレーム17〜20を備えて構成してある。以下、四本の分草フレーム17〜20を個別に呼称する場合は、右側より右端分草フレーム17、右中分草フレーム18、左中分草フレーム19、左端分草フレーム20という。
【0024】
刈取前処理部8は、四つの分草具22〜25(以下、四つの分草具22〜25を個別に呼称する場合は、右側より右端分草具22、右中分草具23、左中分草具24、左端分草具25という。)を備える他、分草具22〜25の走行機体後方側に走行機体横方向に並べて設けた三つの引起し装置26,27,28を備え、分草フレーム17〜20の基端側に設けた一つのバリカン形の刈取装置29、刈取装置29の上方から脱穀フィードチェーン2aの始端部の前方にわたって設けた搬送装置30を備えて構成してある。
【0025】
図3,4に示すように、右端分草具22、右中分草具23及び左端分草具25には、それらの先端側から後方に位置する引起し装置26,27,28に向かって延出したガイド杆22a,23a,25aを備えており、このガイド杆22a,23a,25aによって植立穀稈の株元側を後方に位置する引起し装置26,27,28に案内する。
【0026】
図1、図2、図3に示すように、各引起し装置26,27,28は、前処理部フレーム10に支持された前記引起しケース26a,27a,28aを備え、この引起しケース26a,27a,28aの内部に設けた無端回動形の引起しチェーン31を備えて構成してある。各引起し装置26,27,28の引起しケース26a,27a,28aは、上端側が下端側よりも若干走行機体後方側に位置した傾斜姿勢で支持されている。
【0027】
引起しチェーン31は、引起しケース26a,27a,28aの内部の上端側に駆動自在に位置する輪体32と、引起しケース26a,27a,28aの内部の下端側に遊転自在に位置する輪体33とにわたって巻回されており、上側の輪体32によって駆動されて引起しケース26a,27a,28aの走行機体横方向での一端側を上昇移動し、引起しケース26a,27a,28aの走行機体横方向での他端側を下降移動する。引起しチェーン31は、これの長手方向に所定間隔で取り付けられた引起し爪34を備えている。各引起し爪34は、引起しチェーン31が引起しケース26a,27a,28aの走行機体横方向での一端側を上昇移動する際、引起し爪34の先端側が引起しケース26a,27a,28aから走行機体横向きに突出した取り付け姿勢となって上昇移動して植立穀稈に引起し作用する。
【0028】
図4に示すように、搬送装置30は、右外側の引起し装置26の後方で、かつ刈取装置29の上方に搬送始端部が位置し、搬送終端部が脱穀フィードチェーン2aの搬送始端部の前方付近に位置した第一搬送装置30aと、左外側の引起し装置28及び中間の引起し装置27の後方で、かつ刈取装置29の上方に搬送始端部が位置し、搬送終端側が第一搬送装置30aの途中に連なった第二搬送装置30bとを備えて構成してある。
【0029】
搬送装置30は、右外側の引起し装置26によって引起し処理されるとともに刈取装置29によって刈り取り処理された刈取穀稈を、第一搬送装置30aによって搬送して脱穀フィードチェーン2aに供給する。搬送装置30は、左外側の引起し装置28及び中間の引起し装置27によって引起し処理されるとともに刈取装置29によって刈り取り処理された刈取穀稈を、第二搬送装置30bによって第一搬送装置30aの途中に搬送して、第一搬送装置30aが搬送始端部から搬送してきた刈取穀稈に合流させることにより、脱穀フィードチェーン2aに供給する。
【0030】
図4〜図6に示すように、前記刈取前処理部8に左右の刈高検出装置36,37(以下、左前方に位置する刈高検出装置36を第1センサ、右後方に位置する刈高検出装置37を第2センサという)を設け、前記第1,第2センサ36,37それぞれの検出部38に連係させた制御手段としての制御装置39に、前記昇降シリンダ7の制御弁40並びに前記運転部5に設けた第1刈高設定器41a及び第2刈高設定器41bを備えた刈高設定手段41を連係させてある。
【0031】
図7に示すように、第1,第2センサ36,37のうち、左中分草フレーム19に取り付けた第1センサ36は、引起し装置27,28よりも前方で、左中分草具24の背面近傍に位置する部位において、左中分草フレーム19を上方に屈曲させた湾曲フレーム部分19aの下方空間S1に配設する状態で取付けた接地センサ本体42及びこの接地センサ本体42に連動している検出部38などを備えて成り、接地センサ本体42が地面上に接地作用することによって刈取前処理部8の対地高さを検出し、この検出情報を検出部38によって電気信号にして制御装置39に出力するようになっている。
【0032】
第1センサ36は次のように構成されている。左中分草具24の取付ブラケット24aの後部にピン支持ボス71を支持し、このピン支持ボス71に、支持体70から前方に突出させた回動ピン(図示せず)を回動自在に保持してある。支持体70には、ギヤケース74と検出部38及び接地センサ本体42が取り付けられている。
【0033】
支持ボス部71に巻きばね72が保持され、巻きばね72の両端部72a,72aどうしの間に、支持体70に固定された揺動ピン73と分草具24の取付ブラケット24bが位置するように構成されている。巻きばね72の両端部72a,72aで取付ブラケット24bの両側を挟持する状態で揺動ピン73が中央に位置するようにばね付勢されている。これにより第1センサ36を回動ピン(図示せず)の前後軸心Q周りに左右に揺動可能に中央に付勢された状態に保持している。
【0034】
接地センサ本体42は、前端側に取付け片42aを備えるとともに機体下方向きに突出した接地作用部42bを備えるように曲げ成形した帯板ばねで構成してある。取付け片42aを、ギヤケース74の機体横向きの入力軸75に一体回動自在に連結してある。これにより、接地センサ本体42は、横向きの軸心Rのまわりで支持体70に対して揺動するようになっている。これにより、接地センサ本体42の接地作用部42bは、左右及び上下に揺動可能な状態で圃場面の凹凸形状に追従できるようになっている。
【0035】
図8に示すように、前記メインフレーム9の上端の基端部から、山形に屈曲されたパイプ製の支持アーム43が前方に向けて延出され、この支持アーム43の前端に横長の支持フレーム44が連結されている。
【0036】
図9に示すように、引起し駆動ケース45の上端部に横向きの六角軸からなるカウンタ軸46が貫通支持されている。カウンタ軸46は筒状のメインフレーム9及び引起し駆動伝動ケース47に内蔵された伝動機構(図示せず)によって駆動され、カウンタ軸46によって動力が横方向に分配され、引起し駆動ケース45内を伝動機構(図示せず)を介して3個の引起し装置26,27,28に伝動される。
【0037】
引起し装置27の背部における穀稈搬送経路での詰まり除去作業や搬送手段の点検整備作業を容易にするために、中間の引起し装置27をカウンタ軸46の左右横軸心x周りに前方上方に向けて持ち上げて、刈取前処理部8の前方を開放することができるよう構成されている。
【0038】
右中分草フレーム18における中央の引起し装置27の下部部分の後方近くに位置する右中分草フレーム18の部分が上方に湾曲して、湾曲フレーム部分18aが構成されており、湾曲フレーム部分18aに下部支持杆48を、この湾曲フレーム部分18aから前方上方に斜めに突出しかつ後部側が湾曲フレーム部分18aに沿った状態で固設している。下部支持杆48の前端部に取り付けた固定部50と支持フレーム44に亘って支持杆51が固定されており、この支持杆51と引起し駆動ケース45とに亘ってガススプリング52が架設されている。
【0039】
中間の引起し装置27の下部は、右中分草フレーム18に取り付けた前記下部支持杆48の前端の固定部50との間に設けた固定手段としてのロック装置53により、固定部50側に固定及び固定解除自在に構成されている。
【0040】
図10〜図12に示すように、固定部50は、下部支持杆48の前端にL型部材54を固定し、このL型部材54に添え板55を介して前記支持杆51を固定してある。L型部材54には前方に向けて2個のテーパピン56,56を左右に並んだ状態で突設するとともに、ナット嵌合用の孔57を形成してある。支持杆51の下端部と添え板55に亘って締付け具58の取付ブラケット59が固定されている。締付け具58は操作フック60と操作フック60を操作するレバー61とを備えている。中間の引起し装置27の背面の下部には、テーパピン56を嵌合させるピン孔62と、締付け具58の操作フック60を係合させる固定フック63を備えたブラケット64を、中間の引起し装置27の背面の下部に固定した取付け台65に2個のボルトナット66で固定してある。
【0041】
中間の引起し装置27を右中分草フレーム18に固定する場合において、引起し装置27を後方に移動させると、前記ピン孔62がテーパピン56に位置決め案内されながら嵌合し、ボルトナット66が孔57に嵌合してブラケット64がL型部材54の前面に接当する。この状態で締付け具58の操作フック60を固定フック63に係合させてレバー61を操作すると引起し装置27が右中分草フレーム18に対して固定される。
【0042】
引起し装置27の後方の搬送装置30に詰まりが生じたり、保守点検するときは、締付け具58のレバー61を操作して操作フック60の固定フック63との係合を外して、引起し装置27の下部を手で持ち上げる。
【0043】
図9に示す引起し装置27の取付け姿勢では、ガススプリング52は、引起し装置27を閉じ勝手(図9の半時計方向)に付勢しているが、引起し装置27を取付け姿勢から少し持ち上げて、ガススプリング52の上部支点y1が下部支点y2と引起し装置27の左右横軸心xとを結ぶ直線(デッドポイント)を越えると、ガススプリング52の伸長付勢力が加わって引起し装置27を軽く持ち上がる。引起し装置27は図9の二点鎖線で示すガススプリング52の最大ストロークの位置まで上昇すると、ガススプリング52の伸長付勢力でその位置で位置保持される。
【0044】
図8、図9、図13に示すように、第1、第2センサ36,37のうちの第2センサ37は、前記複数本の分草フレーム17〜20のうち、右端分草フレーム17に隣接する右中分草フレーム18であって、引起し装置27よりも後側に配設されている。第2センサ37は、中間の引起し装置27の後側近くにおいて、右中分草フレーム18を上方に屈曲させた湾曲フレーム部分18aの下方空間S2に配設されている。第2センサ37は、接地センサ本体42や検出部38等を備え、接地センサ本体42が地面上に接地作用することによって刈取前処理部8の対地高さを検出し、この検出情報を検出部38によって電気信号にして制御装置39に出力するようになっている。
【0045】
図13に示すように、第2センサ37は次のように構成されている。中間の引起し装置27の下部直後の位置から右中分草フレーム18を上方に屈曲させた前方下り傾斜している湾曲フレーム部分27aに取付ブラケット76を固定して、この取付ブラケット76の後部に、第2センサ37が第1センサ36と同じように取り付けられている。即ち、前記取付ブラケット76の後部にピン支持ボス71を支持し、このピン支持ボス71に、支持体70から前方に突出させた回動ピン(図示せず)を回動自在に保持してある。支持体70には、ギヤケース74と検出部38及び接地センサ本体42が取り付けられている。
【0046】
支持ボス部71に巻きばね72が保持され、巻きばね72の両端部72a,72aどうしの間に、支持体70に固定された揺動ピン73と取付ブラケット76が位置するように構成されている。巻きばね72の両端部72a,72aで取付ブラケット76の両側を挟持する状態で揺動ピン73が中央に位置するようにばね付勢されている。これにより第2センサ37を回動ピン(図示せず)の前後軸心Q周りに左右に揺動可能に中央に付勢された状態に保持している。
【0047】
接地センサ本体42は、前端側に取付け片42aを備えるとともに機体下方向きに突出した接地作用部42bを備えるように曲げ成形した帯板ばねで構成してある。取付け片42aを、ギヤケース74の機体横向きの入力軸75に一体回動自在に連結してある。これにより、接地センサ本体42は、横向きの軸心Rのまわりで支持体70に対して揺動するようになっている。これにより、接地センサ本体42の接地作用部42bは、左右及び上下に揺動可能な状態で圃場面の凹凸形状に追従できるようになっている。
【0048】
刈高設定手段41は、ダイヤル式で第1刈高設定器41aと第2刈高設定器41bとを備え、刈高設定手段41が人為的にダイヤル操作されると第1、第2刈高設定器41a,41bが同時に設定される。第1刈高設定器41aによって設定される第1設定値(不感帯設定)は第1センサ36の検出情報と比較され、第2刈高設定器41bによって設定される第2設定値(上昇設定値)は第2センサ37の検出情報と比較され、これらの比較情報に基づいて、所望の切り株高さを維持するように刈高さ制御が行われる。
【0049】
以下のように、通常は、第1センサ36の検出情報と第1刈高設定器41aの第1設定値との比較に基づいて刈取前処理部8が昇降制御される。又、第2刈高設定器41bの第2設定値は、刈取前処理部8が圃場面に突っ込まないように対地的に低い位置となる値に設定され、第2センサ37の検出情報と第2刈高設定器41bの第2設定値とが比較され、第1センサ36が凹部に填まり込んだときに、第1センサ36の検出情報による下降制御を行わないで、第2センサ37による検出情報と第2刈高設定器41bの第2設定値との比較により、第2センサ37による検出情報が第2刈高設定器41bによる設定高さ(第2設定値)より低くなったことを検知したときに、刈取前処理部8が優先的に上昇するように構成されている。
【0050】
すなわち、図14に示すように、第1センサ36による検出結果を制御装置39に入力し、この検出結果が第1刈高設定器41aによる第1設定値(設定対地高さ)に基づいて設定した不感帯に入っているか否かを判断し(ステップ#1)、検出結果が不感帯から外れていると判定された場合(ステップ#1のNo)は、不感帯から高刈り側と低刈り側のいずれに外れているかを判断する(ステップ#2)。ステップ#2で低刈り側に外れていると判定されると(ステップ#2のYes)、制御弁40に操作信号を出力して昇降シリンダ7を伸長側に駆動操作することによって刈取前処理部8の上昇制御が行われる(ステップ#3の上昇制御I)。ステップ#2で高刈り側に外れていると判定された場合(ステップ#2のNo)は、第1センサ36による検出情報が最下端位置まで達した下限設定値(第1センサ36の接地センサ本体42が圃場面から浮上する状態を示す第3設定値)かどうかを判断し(ステップ#4)、第1センサ36による検出情報が前記不感帯から大きく離れていない許容できる範囲にあると判定されると(ステップ#4のNo)、制御弁40に操作信号を出力して昇降シリンダ7を短縮側に駆動操作することによって刈取前処理部8を下降させる下降制御が行われる(ステップ#5)。
【0051】
第1センサ36が凹部に填まり込んで、第1センサ36が下限位置(第1センサ36の接地センサ本体42が圃場面から浮上する状態を示す第3設定値)に達していると判定されると(ステップ#4のYes)、第1センサ36に基づく昇降制御から第2センサ37に基づく制御に切り換わる(ステップ#6)。
【0052】
ステップ#6において第2センサ37の検出情報が第2刈高設定器41bの第2設定値(刈取前処理部8が圃場に突っ込む状態に近い状態の設定値)より低い低刈側にあるかどうかを判断し、第2センサ37の検出情報が第2刈高設定器41bの第2設定値より低い低刈側にあると判定されると(ステップ#6のYes)、刈取前処理部8を予め設定された所定高さだけ上昇させる上昇制御を行う(ステップ#7の上昇制御II)。ステップ#
7で刈取前処理部8を所定高さ上昇させた後、ステップ#6に戻って、再度第2センサ37の検出情報が第2設定値より低い低刈側にあるかどうかを判断し、第2センサ37の検出情報が第2設定値より低い低刈側にあると判定されると(ステップ#6のYes)、再度刈取前処理部8を所定高さ上昇させる上昇制御を繰り返す。
【0053】
ステップ#6において第2センサ37の検出情報が第2設定値より高くなったと判定されると(ステップ#6のNo)、ステップ#6,#7から最初に戻る。刈高さ制御が最初に戻った状態で、第1センサ36の接地センサ本体42が凹部から脱して再下限位置より上方に持ち上がった接地状態になると、第2センサ37による上昇制御IIが行われるこ
とはなく、第1センサ36によるステップ#1〜#5の通常の昇降制御が行われる。
【0054】
ステップ#6,#7による上昇制御で刈取前処理部8の上昇量が大きくなった状態で制御が最初に戻った場合は、第1センサ36の接地センサ本体42が凹部から脱している状態で、第1センサ36が圃場面から浮上していると、刈取前処理装置8は上昇した状態が維持され(ステップ#1,#2,#4,#6が繰り返される状態)、これを下降させるときは、運転者が操作レバー35を操作して刈取前処理部8を第1センサ36が圃場面に接地する位置まで下降させる。これにより第1センサ36による自動の刈高さ制御の状態に戻すことができる。
【0055】
〔別実施の形態〕
(1)3基を越える引起し装置を備えたコンバインにおいては、持ち上げ可能にした引起し装置を2基またはそれ以上にしてもよい。この場合、持ち上げ可能な引起し装置を単独で持ち上げるように構成してもよいし、隣接する複数の引起し装置を一体的に持ち上げられるように構成してもよい。
【0056】
(2)第2センサ37としては、全体として引起し装置27の後部に1個だけ設けてもよいし、引起し装置26〜28の後方の複数の分草フレーム17〜20に設けてもよい。又、第1センサ36としては引起し装置27の前方に設けなくてもよいし、引起し装置27の前方の複数の分草フレーム17〜20に設けてもよい。
【0057】
(3)上記実施の形態では、接地式のセンサを採用して実施したが、超音波を利用して対地高さを検出するなど、非接触式のセンサ(超音波センサ)を刈高検出装置として採用して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、引起し装置を2個以上設けたコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0059】
8 刈取前処理部
17 分草フレーム(右端分草フレーム)
18 分草フレーム(右中分草フレーム)
18a 湾曲フレーム部分
19 分草フレーム(左中分草フレーム)
20 分草フレーム(左端分草フレーム)
22,23,24,25 分草具
26,27,28 引起し装置
29 刈取装置
30 搬送装置
37 刈高検出装置
53 固定手段
P 機体横軸心
S2 下方空間
x 左右横軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に機体横軸心周りに昇降自在に刈取前処理部を備え、前記刈取前処理部に、前方に延設された左右複数の分草フレームと、前記左右複数の分草フレームのそれぞれの前端部に位置して植立穀稈を分草する分草具と、前記分草具の後方に位置して植立穀稈を引起す複数の引起し装置と、引起された植立穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取った穀稈を搬送する搬送装置を備え、
前記分草フレームに前記刈取前処理部の刈高さを検出する刈高検出装置を備え、前記刈高検出装置の検出結果に基づいて前記刈取前処理部の対地高さを変更させる刈高さ制御を行う制御手段を備えてあるコンバインにおいて、
前記分草フレームにおける引起し装置の下部部分の後方近くに位置する分草フレーム部分を上方に湾曲させて湾曲フレーム部分を構成し、この湾曲フレーム部分の下方空間に前記刈高検出装置を配設し、
前記複数の引起し装置のうちの前記刈高検出装置の前側に位置する引起し装置を、上部の左右横軸心周りで持ち上げ可能に構成するとともに、当該引起し装置の下部を前記湾曲フレーム部分に着脱自在に固定する固定手段を備えてあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記引起し装置を左右方向に3基以上備え、前記左右複数の分草フレームのうちの右端及び左端の分草フレームよりも左右方向内側の分草フレームに、前記刈高検出装置を配設するための前記湾曲フレーム部分を形成し、持ち上げ可能な前記引起し装置を左右端の引起し装置よりも左右方向内側に配置してある請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−92096(P2011−92096A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249255(P2009−249255)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】