コンバイン
【課題】グレンタンクの穀粒を排出する排出クラッチを、排出レバーの適正量の操作で制御するためのクラッチ操作機構を構成する。
【解決手段】グレンタンクの前方位置にエンジンカバー20が配置され、グレンタンクの底部近くに排出クラッチが配置され、エンジンカバー20の上面に運転座席12が配置され、この運転座席12の側部位置に排出レバー18が配置されている。この排出レバー18の操作力を排出クラッチに伝えるクラッチ操作機構Fが、排出レバー18の操作力を前後方向に伝える第1作動ロッド75と、これに連係し揺動軸芯R周りで揺動する揺動体74と、この揺動体74の揺動力を排出クラッチに対して縦方向に伝える第2作動ロッド76とで構成した。
【解決手段】グレンタンクの前方位置にエンジンカバー20が配置され、グレンタンクの底部近くに排出クラッチが配置され、エンジンカバー20の上面に運転座席12が配置され、この運転座席12の側部位置に排出レバー18が配置されている。この排出レバー18の操作力を排出クラッチに伝えるクラッチ操作機構Fが、排出レバー18の操作力を前後方向に伝える第1作動ロッド75と、これに連係し揺動軸芯R周りで揺動する揺動体74と、この揺動体74の揺動力を排出クラッチに対して縦方向に伝える第2作動ロッド76とで構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部位置に運転座席とエンジンとが配置され、これらの後方に穀粒を貯留するグレンタンクが配置され、このグレンタンクから穀粒を排出するアンローダと、前記エンジンから前記アンローダに伝えられる駆動力の断続を行う排出クラッチと、この排出クラッチの断続を人為的に行う排出レバーとが備えられているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたコンバインとして特許文献1には、エンジンからグレンタンクの底部スクリューコンベアへ伝えられる動力を断続するベルトテンション式の排出クラッチが備えられ、この排出クラッチを操作する排出レバー(文献ではクラッチレバー)が、運転座席に左側部の後方位置に配置した構成が示されている。このコンバインでは、排出レバーを入位置に操作することで排出クラッチが入り状態に達し底スクリューコンベアと、これに連動するアンローダとにエンジンの駆動力が伝えられ、グレンタンクから穀粒を排出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐212058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されるように、運転座席の近傍位置に排出レバーを配置したものでは、運転座席に着座した運転者が排出レバーを容易に操作できることになる。
【0005】
排出レバーの操作によって排出クラッチの入状態と切状態とを作り出すためのクラッチ操作機構では、このクラッチ操作機構が、排出レバーの操作に基づいて排出クラッチを制御する部材を必要量だけ作動させる構成となる。特に、特許文献1に記載されるように排出クラッチがベルトテンション式に構成されるものでは、排出クラッチを制御する部材としてのテンションプーリの作動ストロークが比較的大きくなるが、操作レバーの操作ストローク(操作角度)が拡大する不都合の抑制が望まれる。
【0006】
グレンタンクの底部に底スクリューを備えたものでは、底スクリューの近傍位置に配置される排出クラッチも車体の比較的低い位置に配置される。これに対して、運転座席は、前方の視界を良くする観点からも、エンジンの上方等の比較的高い位置に配置され、排出クラッチも運転座席近傍の必然的に高い位置に配置される。このような位置関係から、排出レバーの操作力によって排出クラッチを操作するためのクラッチ操作機構が配置される空間は縦方向に伸びたものとなる。
【0007】
しかしながら、特許文献1にも記載されるようにエンジンの上方に運転座席が配置されるものでは、エンジンが配置される空間を避ける領域にクラッチ操作機構を配置することが必要となり改善が望まれる。
【0008】
本発明の目的は、コンバインにおいてグレンタンクから穀粒を排出する排出クラッチを、排出レバーで制御するためのクラッチ操作機構を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、走行機体の前部位置に運転座席とエンジンとが配置され、これらの後方に穀粒を貯留するグレンタンクが配置され、このグレンタンクから穀粒を排出するアンローダと、前記エンジンから前記アンローダに伝えられる駆動力の断続を行う排出クラッチと、この排出クラッチの断続を人為的に行う排出レバーとが備えられているコンバインであって、
前記運転座席が前記エンジンを覆うエンジンカバーの上部に備えられ、前記排出レバーが前記運転座席の近傍で横向き姿勢の支持軸芯周りでの揺動により前後方向へ操作自在に支持され、前記排出クラッチが前記グレンタンクの下部の前方側に配置され、この排出クラッチに前記排出レバーの操作力を伝えるクラッチ操作機構が備えられると共に、
このクラッチ操作機構が、前記エンジンカバーの上面より上方位置において前後向き姿勢で配置され前記排出レバーに接続する第1作動体と、前記エンジンカバーの後方側で縦向き姿勢で配置され前記排出クラッチに接続する第2作動体と、前記第1作動体の前後方向への作動を縦方向への作動に変換して前記第2作動体に伝えるように横向き姿勢の揺動軸芯周りで揺動自在に支持された揺動体とを備えている点にある。
【0010】
この構成によると、排出クラッチを切操作する方向に排出レバーが操作された場合には、エンジンカバーの上方位置に配置された第1作動体が前後何れかの方向に作動し、この作動に連係して揺動体が揺動軸芯周りで揺動し、この揺動体の揺動力が第2作動体に伝えられ、この第2作動体が上下何れかの方向に作動する。この第2作動体の作動力は排出クラッチに伝えられ排出クラッチを切状態に設定する。また、排出レバーを逆方向に操作した場合には第1作動体、揺動体、第2作動体が逆方向に作動し排出クラッチを入状態に設定する。
この構成では、第1作動体、揺動体、第2作動体により排出レバーの操作力をエンジンカバーの上面からエンジンカバーの後面側に伝えるクラッチ操作機構を構成することが可能になると共に、揺動体に対する第1作動体と第2作動体との連結位置の設定により、第1作動体の単位作動量に対する第2作動体の作動量を必要とする作動量に設定できる。
従って、グレンタンクから穀粒を排出するための排出クラッチを、排出レバーの適正量の操作で制御すると共に、エンジンの配置スペースに侵入することのないクラッチ操作機構が合理的に構成された。
【0011】
本発明は、前記エンジンに供給する空気の清浄化を図るエアークリーナが、前記運転座席の後方位置に備えられ、前記排出レバーの操作領域が側面視において、前記エアークリーナと前記運転座席のシートバックとに亘る領域に形成されても良い。
【0012】
これによると、運転座席の後方のデッドスペースに大型のエアークリーナの配置が可能になると共に、このエアークリーナと運転座席との側部の空間に排出レバーを配置し、この排出レバーをエアークリーナと運転座席とに亘る広範な領域において操作することが可能となる。
【0013】
本発明は、前記排出レバーが、前記操作領域において垂直姿勢にある場合に、この排出レバーの上端位置が前記シートバックより高い位置にあっても良い。
【0014】
これによると、排出レバーを操作する場合に、排出レバーが垂直姿勢に達した状態でも、この排出レバーの上端位置が運転座席のシートバックより高い位置にあるので、シートバックに手等を接触させることなく、排出レバーを操作できる。
【0015】
本発明は、前記エンジンカバーが、下部の前後向き姿勢の開閉軸芯周りに開閉自在に構成されると共に、前記エンジンカバーの上方位置で、前記エンジンカバーの開閉作動時に接触しない位置のベースフレームに前記排出レバーが支持されても良い。
【0016】
これによると、例えば、エンジンのメンテナンスを行う際にエンジンカバーを開放した場合にも、排出レバーがエンジンカバーの開放操作を妨げず、この開放操作時に排出レバーの位置を変更する等の構造を特別に備える必要もない。
【0017】
本発明は、前記アンローダが、旋回アクチュエータによる縦軸芯周りでの旋回と、昇降アクチュエータによる昇降とが行われるように構成され、前記旋回アクチュエータと前記昇降アクチュエータとの制御を行う制御操作具が前記排出レバーの近傍位置に備えられても良い。
【0018】
これによると、排出レバーの近傍位置に制御操作具が支持されているので、グレンタンクから穀粒を排出する際には、アンローダの姿勢を設定するために制御操作具を操作した後に、排出レバーを操作する場合にも、作業者は殆ど姿勢を変えずに手の移動だけで作業を実行でき、楽な操作が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】エンジンカバーと排出レバーとの位置関係を示す縦断正面図である。
【図4】運転座席の部位を示す平面図である。
【図5】排出レバーとクラッチ操作機構とを示す平面図である。
【図6】排出レバーとクラッチ操作機構とを示す側面図である。
【図7】排出レバーとクラッチ操作機構とを示す正面図である。
【図8】排出クラッチとクラッチ操作機構とを示す正面図である。
【図9】エンジンからアンローダまでの伝動系を模式的に示した図である。
【図10】排出コンベアとアンローダとの駆動系を示す断面図である。
【図11】搬出ケースと閉塞手段とを示す側面図である。
【図12】搬出ケースと閉塞手段とを示す断面図である。
【図13】連結体と固定プレートとスライドプレートとを示す図である。
【図14】閉塞手段の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1、図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体2の前端に刈取部3を昇降自在に備えると共に、刈取部3で刈り取られた刈取穀稈が供給される脱穀装置4と、この脱穀装置4から送られる穀粒を貯留するグレンタンク5とを走行機体2の左右位置に並列配置し、グレンタンク5には穀粒を排出するアンローダ6を備え、走行機体2の前部でグレンタンク5の前部位置に作業者が搭乗する運転部10を備えて自脱型のコンバインが構成されている。尚、この実施形態では自脱型のコンバインを示しているが、コンバインは普通型のものであっても良い。
【0021】
このコンバインは、運転部10の運転座席の下側にエンジンEを備えており、収穫作業時にはエンジンEの駆動力で刈取部3と脱穀装置4とを駆動すると共に、クローラ走行装置1を駆動して走行機体2を走行させる制御が行われる。これにより、刈取部3で穀稈の株元を切断して穀稈の刈り取りを行い、刈取穀稈を脱穀装置4に搬送して脱穀処理を行い、この脱穀処理により得られた処理物から穀粒を選別してグレンタンク5に貯留する作動が自動的に行われる。
【0022】
〔運転部〕
運転部10には、作業者が搭乗するステップ11と、作業者が着座する運転座席12とが備えられると共に、運転座席12の前方位置に作業者が操作する操縦レバー13が備えられている。運転座席12の側部位置のパネル部14に主変速レバー15と、副変速レバー16とが備えられ、パネル部14の側部に排出レバー18が備えられている。
【0023】
操縦レバー13は、非操作状態で中立姿勢を維持するように中立付勢され、左右の何れかの方向に揺動操作することで走行機体2の操向・旋回を実現し、前後の何れかの方向に操作することで刈取部3の昇降を行う。主変速レバー15は、走行速度の無段階の変速を行うものであり、走行機体2を停車させる中立位置と、この中立位置から前方側に形成される前進変速域と、中立位置から後方側に形成される後進変速域とに操作自在に構成されている。副変速レバー16は、複数段の変速操作を行う。排出レバー18は、排出クラッチCを操作することでグレンタンク5の底部の排出コンベア31とアンローダ6とにエンジンEの駆動力を伝え、グレンタンク5に貯留されている穀粒の排出を行う。
【0024】
運転座席12は、エンジンEを覆うエンジンカバー20の上面に備えられ、図3に示す如く、このエンジンカバー20は、機体フレーム21に対して下部前後向き姿勢の開閉軸芯P周りに揺動自在に支持されている。また、排出レバー18を支持するベースフレーム17は、エンジンカバー20の開閉操作時にエンジンカバー20に接触しない位置に配置されている。つまり、エンジンカバー20の開閉時に、このエンジンカバー20の端部が開閉軸芯Pを中心にして描く円弧状の軌跡Gがベースフレーム17に接触しないように位置関係が設定されている。
【0025】
運転座席12の後方位置には後部プレート22が配置されている。この後部プレート22は、機体フレーム21に支持され、その上面にエンジンEに供給する吸気の浄化を図るエアークリーナ23が備えられている。このエアークリーナ23には支柱状の吸気パイプ24Aを介してプレクリーナ24の吸気が供給される。尚、エアークリーナ23から送られる吸気はエンジンカバー20の内部の吸気経路を介してエンジンEに供給される。
【0026】
図4〜図7に示すように、排出レバー18の基端部は運転座席12の左側部、後方側に配置され、この排出レバー18の操作領域が、側面視においてエアークリーナ23と運転座席12のシートバック12Aとに亘る領域に形成されている。また、排出レバー18が、垂直姿勢にある場合に、この排出レバー18の上端位置がシートバック12Aの上端より距離Hだけ高い位置にあるように寸法関係が設定されている。
【0027】
排出レバー18は、平面視で前後向きの基端側部分18aと、この基端側部分18aの上端から機体内側(運転座席12から離れる側)に傾斜した先端側部分18bと、この先端側部分18bに取り付けた握り部18cとを備えて構成されており、機体左右方向で排出レバー18の先端側部分18bがパネル部14と運転座席12との間に位置するように、排出レバー18が配備されている。また、図5及び図6に示すように排出レバー18の「入」位置では、排出レバー18の先端側部分18bがシートバック12Aの機体内側近傍に所定の隙間を開けて位置し、排出レバー18の握り部18cがシートバック12Aの前側に位置し排出レバー18を操作しやすくしている。
【0028】
このような構成からエンジンカバー20を、開閉軸芯Pを中心にして開放方向に操作した場合には、後部プレート22に支持されるエアークリーナ23とプレクリーナ24とは機体フレーム側に残した状態で、このエンジンカバー20が開放し、エンジンカバー20はベースフレーム17に接触することはない。
【0029】
〔アンローダ〕
図1、図2、図9、図10に示すように、グレンタンク5の底部には、グレンタンク5に貯留されている穀粒を送り出す排出コンベア31を構成する底スクリュー31Sが底軸芯Xと同軸芯上に配置されている。アンローダ6は、底スクリュー31Sから送られる穀粒を上方に案内するエルボ状の搬出ケース32と、この搬出ケース32から送られる穀粒を上方に搬送する縦搬送コンベア33と、この縦搬送コンベア33から送られる穀粒を水平方向に搬送する中間コンベア34と、この中間コンベア34から送られる穀粒を横方向に送る横搬送コンベア35とを備えている。また、横搬送コンベア35は、中間部分で折り曲げ自在に構成され、排出側の端部に排出部36が形成されている。
【0030】
縦搬送コンベア33は、筒状のケースの内部に縦搬送スクリュー33Sを収めた構成を有し、中間コンベア34は、筒状のケースの内部に中間スクリュー34Sを収めた構成を有している。横搬送コンベア35は、筒状のケースの内部に横搬送スクリュー35Sを収めた構成を有し、筒状のケースの中間部分はヒンジを介して折りたたみ自在に連結しており、この折りたたみを許容するように横搬送スクリュー35Sの中間には分離状態と連結状態とに切換自在な嵌合連結部(図示せず)を備えている。
【0031】
底スクリュー31Sの搬出側の端部が搬出ケース32の内部に配置され、縦搬送スクリュー33Sの下端が搬出ケース32の内部に配置されている。このような配置から、搬出ケース32の内部には底スクリュー31Sと縦搬送スクリュー33Sとを連動させる第1ベベルギヤ機構G1が備えられている。また、搬出ケース32の内部で底スクリュー31Sの端部には底スクリュー31Sと一体的に回転することで穀粒を掻き上げる第1板状体31Pが備えられている。
【0032】
縦搬送スクリュー33Sの上端が中間コンベア34のケースの内部に配置され、横搬送コンベア35の基端側(搬出方向と反対側)の端部が中間コンベア34のケースの内部に配置されている。このような配置から、中間スクリュー34Sのうち縦搬送コンベア側と、縦搬送スクリュー33Sの上端とを連動させる第2ベベルギヤ機構G2が中間コンベア34のケースの内部に備えられている。また、この中間コンベア34の中間スクリュー34Sのうち横搬送コンベア側と、横搬送スクリュー35Sの基端側とを連動させる第3ベベルギヤ機構G3が中間コンベア34の内部に備えられている。
【0033】
更に、縦搬送スクリュー33Sの搬送端(上端)には縦搬送スクリュー33Sと一体回転することで穀粒を掻き出す第2板状体33Pが備えられ、中間スクリュー34Sの搬送端にも中間スクリュー34Sと一体回転することで穀粒を掻き出す第3板状体34Pが備えられている。
【0034】
搬出ケース32の下面には縦向き姿勢の縦軸芯Yと同軸芯で下方に突出する軸状部32Tが一体形成され、この軸状部32Tが機体フレーム21に備えられた回転支持部37に対して回転自在に嵌め込まれている。この縦搬送コンベア33の縦軸芯Y周りでの回転を許しながら、この縦搬送コンベア33の上部位置を抱き込む状態で支持するホルダー38がグレンタンク5の後面に備えられている。また、縦搬送コンベア33に平行する姿勢となる支柱状の縦フレーム40が機体フレーム21の後端に連結され、この縦フレーム40の上端には、縦軸芯Yを中心にした縦搬送コンベア33の回転を許す状態で外周を抱き込む保持体41が備えられている。
【0035】
この保持体41には電動型の旋回モータ42(旋回アクチュエータの一例)が支持され、この旋回モータ42の駆動軸に備えたピニオンギヤ43が噛み合うギヤ体44が縦搬送コンベア33の外周に備えられている。このような構成から、縦搬送コンベア33と中間コンベア34と横搬送コンベア35とが縦軸芯Yを中心にして回転自在に支持され、旋回モータ42の駆動によりアンローダ6の旋回が可能となる。
【0036】
中間コンベア34のケースは、縦搬送コンベア33の上端に連結するエルボ状の第1ケース34Aと、横搬送コンベア35の基端側に連結するエルボ状の第2ケース34Bとをジョイント34Cにより水平軸芯Zを中心にして相対回転自在に連結した構成を有している。
【0037】
横搬送コンベア35の基端側と中間コンベア34との間に電動型の昇降シリンダ45(昇降アクチュエータの一例)を備えている。図4に示すように排出レバー18のガイドプレート80には、旋回モータ42と、昇降シリンダ45とを制御する複数の制御ボタン81(制御操作具の一例)を備えている。図面には示していないが、複数の制御ボタン81の何れかの操作に対応して昇降シリンダ45と旋回モータ42との何れかを作動させる制御装置を備えている。
【0038】
このような構成から、作業者が複数の制御ボタン81のうち旋回に対応するものを操作することで旋回モータ42が作動し、これにより縦軸芯Yを中心にしてアンローダ6を旋回させて排出部36からの穀粒の搬出方向の設定を行える。また、制御ボタン81のうち昇降に対応するものを操作することで昇降シリンダ45が伸縮作動し、水平軸芯Zを中心にして横搬送コンベア35の先端側を昇降させて排出部36からの穀粒の搬出高さを設定できる。
【0039】
図11〜図14に示すように、搬出ケース32はメンテナンスにおいて、内部に残留する穀粒の排出と内部の確認を可能にするための開口32Aが底部に形成され、この開口32Aに対して閉塞手段Dが着脱自在に備えられている。
【0040】
搬出ケース32の下部は、図12に示す如く底スクリュー31Sの外周の形状に沿うように略円形となる筒状壁32Bが形成されているが、この筒状壁32Bの一部には筒状壁32Bの底部に対して水平方向に連なる延出部32Cが形成されている。この延出部32Cの内面と筒状壁32Bとの形成された孔状部分とによって開口32Aが形成され、この開口32Aの外部位置に縦向き姿勢となるフランジ面32Dが形成され、このフランジ面32Dに閉塞手段Dが備えらえている。
【0041】
閉塞手段Dは、フランジ面32Dに接触する形態で搬出ケース32に取り付けられる連結体47と、開口32Aの内部に挿入される支持プレート48とを一体化した構造を有すると共に、支持プレート48に固定プレート49とスライドプレート50とが連結する構造を有している。この固定プレート49とスライドプレート50とは底スクリュー31Sの外周の形状に沿う円弧状に成形され、固定プレート49にはスタッドボルト型の2つの固定ボルト49Aが備えられ、スライドプレート50にはスタッドボルト型の1つの連結ボルト50Aが備えられている。
【0042】
支持プレート48には2つの固定ボルト49Aが挿通する2つの固定孔部48Aと、連結ボルト50Aが挿通し、横方向(底軸芯Xに沿う方向)に長寸となる長孔48Bとが形成されている。また、2つの固定ボルト49Aに固定ナット49Bが螺合し、1つの連結ボルト50Aには連結ナット50Bが螺合する。
【0043】
固定プレート49とスライドプレート50との横方向(底軸芯Xに沿う方向)の寸法を足し合わせた合計寸法Lは、搬出ケース32に形成された開口32Aの横方向(底軸芯Xに沿う方向)の寸法より大きい値に設定されている。このような寸法関係であるため、閉塞手段Dによって開口32Aを閉塞する際には、最初に固定プレート49を支持プレート48に固定すると共に、スライドプレート50の連結ボルト50Aに螺合する連結ナット50Bを緩め、図13に示す如く、スライドプレート50を固定プレート49に重なり合う位置まで移動させておく。
【0044】
次に、この状態で固定プレート49とスライドプレート50とを開口32Aの内部に挿入し、連結体47をフランジ面32Dに対してボルト51によって連結し、更に、連結ボルト50Aを長孔48Bに沿って移動させることで固定プレート49が固定プレート49と並列する位置に配置し、この位置において連結ボルト50Aに螺合する連結ナット50Bの操作によりスライドプレート50を固定する操作を行うことになる。
【0045】
このような操作を行うことにより、搬出ケース32の開口32Aの部位に非円弧状となる内面が形成されているにも拘わらず、固定プレート49とスライドプレート50との内面が底スクリュー31Sの外周に沿わせる形態となる円滑な内面の形成が実現する。
【0046】
〔排出クラッチ〕
図8、図9に示すように、エンジンEの駆動力を底スクリュー31Sに伝えるベルト式の伝動機構と、駆動力の断続を行う排出クラッチCとを備えてアンローダ6の駆動系が構成されている。つまり、エンジンEの出力軸に備えた出力プーリ61と、ギヤボックス62の入力軸に備えたと中間入力プーリ63とに亘って無端ベルトで成る中間ベルト64が巻回されている。ギヤボックス62は入力軸に伝えられる回転動力を、入力軸と直交する姿勢の出力軸に伝えるように一対のベベルギヤを内蔵しており、このギヤボックス62の出力軸に備えた中間出力プーリ65と、底スクリュー31Sの外端の入力軸に備えた入力プーリ66とに亘って無端ベルトで成る伝動ベルト67が巻回され、この伝動ベルト67に張力を作用させるテンションプーリ68を備えている。
【0047】
グレンタンク5の前方位置で運転座席12の側部後方位置に、支柱状の支持フレーム71が機体フレーム21に立設され、この支持フレーム71に対して前後向き姿勢の軸体69Aを介して揺動自在にテンションアーム69が支持され、このテンションアーム69の揺動端に前述したテンションプーリ68が回転自在に支持されている。
【0048】
排出クラッチCは、中間出力プーリ65と、入力プーリ66と、伝動ベルト67と、テンションプーリ68と、テンションアーム69とで構成され、グレンタンク5の下部の前方位置に配置されている。この排出クラッチCは、テンションアーム69の揺動姿勢の切換によりテンションプーリ68が伝動ベルト67に作用する張力を制御して動力を伝える入り状態と、動力を遮断する切り状態とに切換自在に構成されている。
【0049】
図4〜図8に示すように、排出レバー18によって排出クラッチCを制御するために、この排出レバー18とテンションアーム69との間にクラッチ操作機構Fが備えられている。前述したベースフレーム17は、前後向きに長手方向を設定した姿勢の角パイプ状の部材で構成され、支持フレーム71の上端の連結プレート72に連結されている。このベースフレーム17に対して横向き姿勢の支持軸芯Qと同軸芯となるレバー軸18Aが備えられ、このレバー軸18Aにより前後方向に揺動操作自在に排出レバー18が支持され、この排出レバー18の操作位置を示すガイドプレート80がベースフレーム17に備えられている。なお、図7に示すように、ガイドプレート80は、その上面がパネル部14のレバー類配置用の傾斜面14Aの運転座席側の端部と略同じ高さとなるように、このパネル部14の外側に隣接する状態で配備されている。
【0050】
排出レバー18の基端側にアーム部18Bが一体的に備えられ、ベースフレーム17の後端側には横向き姿勢の揺動軸芯Rと同軸芯の揺動軸73を中心にして揺動自在に揺動体74が支持されている。この揺動体74は、第1揺動アーム74Aと第2揺動アーム74Bとを有しており、第1揺動アーム74Aとアーム部18Bとが第1作動ロッド75によって接続され、第2揺動アーム74Bとテンションアーム69とが第2作動ロッド76及びコイルスプリング77によって接続されている。第1作動ロッド75は、長手方向を前後向き姿勢に設定した姿勢でエンジンカバー20の上方位置に配置され、第2作動ロッド76は長手方向を縦向き姿勢に設定した状態でエンジンカバー20の後方位置に配置されている。
【0051】
第1作動ロッド75によって第1作動体が構成され、第2作動ロッド76とコイルスプリング77とで第2作動体が構成されている。同図では、第1揺動アーム74Aと第2揺動アーム74Bとを溶接により一体化して揺動体を構成したものを示しているが、単一の部材をプレスする等の加工によりベルクランク状となるように揺動体74を構成しても良い。また、第2作動体としてワイヤを用いても良い。
【0052】
これら第1作動ロッド75と、揺動体74と、第2作動ロッド76と、コイルスプリング77とによってクラッチ操作機構Fが構成されている。このクラッチ操作機構Fは、図6に示すように、排出レバー18が「切」位置にある場合にはテンションプーリ68から伝動ベルト67に作用する張力を低下させて排出クラッチCを切り状態に設定する。排出レバー18を「入」位置に操作した場合には、テンションアーム69の揺動端を持ち上げ方向に操作してテンションプーリ68から伝動ベルト67に作用させる張力を高めて排出クラッチを入り状態に設定する。
【0053】
具体的な作動形態として、排出レバー18が「入」位置に操作された場合には、この排出レバー18の揺動に伴い、第1作動ロッド75が前方に引き操作され、この引き操作に伴い、第1揺動アーム74Aと第2揺動アーム74Bとが揺動軸芯Rを中心にして一体的に揺動し、第2作動ロッド76が上方に引き操作される。この引き操作によりテンションアーム69の揺動端も上方に引き上げられ、テンションプーリ68が伝動ベルト67に接触して張力を作用させ排出クラッチCが入り状態に達する。
【0054】
特に、排出レバー18を「切」位置から「入」位置に操作した場合には、伝動ベルト67の張力とコイルスプリング77の付勢力とが作用することになるが、この「入」位置に操作された場合には、排出レバー18が揺動限界に達すると共に、この揺動限界に達する以前に排出レバー18のアーム部18Bと、第1作動ロッド75の先端との連結点が、上方位置からデッドポイントを超えて下方位置に達することにより、排出レバー18は「入」位置に安定的に保持される。
【0055】
つまり、第1作動ロッド75の先端との連結点は、支持軸芯Qを中心にした円弧軌跡上を移動することになるが、排出レバー18を「切」位置から「入」位置に操作した場合には、連結点が、支持軸芯Qを中心にした円弧軌跡上を上側から下側に移動し、この移動の途中(軌跡の中間)において、最も前方に変位した位置となるデッドポイントを通過する。このようにデッドポイントを通過することにより、伝動ベルト67の張力とコイルスプリング77の付勢力とが、排出レバー18を「入」位置の方向に向けて揺動させることになり、排出レバー18は「入」位置に保持される。
【0056】
このように排出クラッチCが入り状態に達することでエンジンEの駆動力が底スクリュー31Sに伝えられ、更に、この底スクリュー31Sからアンローダ6の縦搬送スクリュー33Sと、中間スクリュー34Sと、横搬送スクリュー35Sとに伝えられ、グレンタンク5に貯留されている穀粒の搬出が実現するのである。
【0057】
〔実施形態の効果〕
クラッチ操作機構Fが、エンジンカバー20の上方に配置された第1作動ロッド75と、これに連係する揺動体74とを備えると共に、この揺動体74に連係する第2作動ロッド76をエンジンカバー20の後方側に備えて構成しているので、排出レバー18の操作力を、エンジンEが配置された空間を避ける形態でエンジンカバー20の上面からエンジンカバー20の後面側に伝えることが可能になる。また、揺動体74に対する第1作動ロッド75と第2作動ロッド76との連結位置の設定により、第1作動ロッド75の単位作動量に対する第2作動ロッド76の作動量を必要とする作動量に設定できる。これにより、排出レバー18の操作ストロークを作業者の操作に適した量に設定して排出クラッチCの操作が可能になる。
【0058】
アンローダ6では、底スクリュー31Sの端部の第1板状体31Pが穀粒を上方に掻き上げる作動を行うため、穀粒を傷めずに縦搬送スクリュー33Sに受け渡すことが可能となる。これと同様に、縦搬送スクリュー33Sの搬送端に備えた第2板状体33Pと、中間スクリュー34Sの搬送端に備えた第3板状体34Pとが穀粒を掻き送ることによっても穀粒を傷め難いものにしている。
【0059】
搬出ケース32の開口32Aを開閉自在に閉塞する閉塞手段Dが、固定プレート49とスライドプレート50との2部材を備え、搬出ケース32の内部においてスライドプレート50を人為的にスライドさせた後に固定できるように構成されているので、この2部材の合計寸法Lが閉塞状態で開口32Aの幅より広くでき、この固定プレート49とスライドプレート50との2部材を底スクリュー31Sの外周面に近接状態で配置できるものとなる。
【0060】
運転座席12の後方と、グレンタンク5の前方との間のデッドスペースを有効に利用して大型のエアークリーナ23の配置が可能になると共に、このエアークリーナ23と運転座席12の側部の空間を利用して排出レバー18を配置できる。そして、排出レバー18を操作する場合に、排出レバー18が垂直姿勢に達した状態でも、この排出レバー18の上端位置が運転座席12のシートバック12Aより高い位置にあるので、シートバック12Aに手等を接触させることなく、排出レバー18を操作できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、エンジンカバーの上面に運転座席が配置され、グレンタンクから穀粒を排出する排出クラッチがグレンタンクの下部位置に配置されているコンバインに利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 走行機体
5 グレンタンク
6 アンローダ
12 運転座席
12A シートバック
17 ベースフレーム
18 排出レバー
20 エンジンカバー
23 エアークリーナ
42 旋回アクチュエータ(旋回モータ)
45 昇降アクチュエータ(昇降シリンダ)
74 揺動体
75 第1作動体(第1作動ロッド)
76 第2作動体(第2作動ロッド)
77 第2作動体(コイルスプリング)
81 制御操作具(制御ボタン)
C 排出クラッチ
E エンジン
F クラッチ操作機構
P 開閉軸芯
Q 支持軸芯
R 揺動軸芯
Y 縦軸芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部位置に運転座席とエンジンとが配置され、これらの後方に穀粒を貯留するグレンタンクが配置され、このグレンタンクから穀粒を排出するアンローダと、前記エンジンから前記アンローダに伝えられる駆動力の断続を行う排出クラッチと、この排出クラッチの断続を人為的に行う排出レバーとが備えられているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたコンバインとして特許文献1には、エンジンからグレンタンクの底部スクリューコンベアへ伝えられる動力を断続するベルトテンション式の排出クラッチが備えられ、この排出クラッチを操作する排出レバー(文献ではクラッチレバー)が、運転座席に左側部の後方位置に配置した構成が示されている。このコンバインでは、排出レバーを入位置に操作することで排出クラッチが入り状態に達し底スクリューコンベアと、これに連動するアンローダとにエンジンの駆動力が伝えられ、グレンタンクから穀粒を排出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐212058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されるように、運転座席の近傍位置に排出レバーを配置したものでは、運転座席に着座した運転者が排出レバーを容易に操作できることになる。
【0005】
排出レバーの操作によって排出クラッチの入状態と切状態とを作り出すためのクラッチ操作機構では、このクラッチ操作機構が、排出レバーの操作に基づいて排出クラッチを制御する部材を必要量だけ作動させる構成となる。特に、特許文献1に記載されるように排出クラッチがベルトテンション式に構成されるものでは、排出クラッチを制御する部材としてのテンションプーリの作動ストロークが比較的大きくなるが、操作レバーの操作ストローク(操作角度)が拡大する不都合の抑制が望まれる。
【0006】
グレンタンクの底部に底スクリューを備えたものでは、底スクリューの近傍位置に配置される排出クラッチも車体の比較的低い位置に配置される。これに対して、運転座席は、前方の視界を良くする観点からも、エンジンの上方等の比較的高い位置に配置され、排出クラッチも運転座席近傍の必然的に高い位置に配置される。このような位置関係から、排出レバーの操作力によって排出クラッチを操作するためのクラッチ操作機構が配置される空間は縦方向に伸びたものとなる。
【0007】
しかしながら、特許文献1にも記載されるようにエンジンの上方に運転座席が配置されるものでは、エンジンが配置される空間を避ける領域にクラッチ操作機構を配置することが必要となり改善が望まれる。
【0008】
本発明の目的は、コンバインにおいてグレンタンクから穀粒を排出する排出クラッチを、排出レバーで制御するためのクラッチ操作機構を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、走行機体の前部位置に運転座席とエンジンとが配置され、これらの後方に穀粒を貯留するグレンタンクが配置され、このグレンタンクから穀粒を排出するアンローダと、前記エンジンから前記アンローダに伝えられる駆動力の断続を行う排出クラッチと、この排出クラッチの断続を人為的に行う排出レバーとが備えられているコンバインであって、
前記運転座席が前記エンジンを覆うエンジンカバーの上部に備えられ、前記排出レバーが前記運転座席の近傍で横向き姿勢の支持軸芯周りでの揺動により前後方向へ操作自在に支持され、前記排出クラッチが前記グレンタンクの下部の前方側に配置され、この排出クラッチに前記排出レバーの操作力を伝えるクラッチ操作機構が備えられると共に、
このクラッチ操作機構が、前記エンジンカバーの上面より上方位置において前後向き姿勢で配置され前記排出レバーに接続する第1作動体と、前記エンジンカバーの後方側で縦向き姿勢で配置され前記排出クラッチに接続する第2作動体と、前記第1作動体の前後方向への作動を縦方向への作動に変換して前記第2作動体に伝えるように横向き姿勢の揺動軸芯周りで揺動自在に支持された揺動体とを備えている点にある。
【0010】
この構成によると、排出クラッチを切操作する方向に排出レバーが操作された場合には、エンジンカバーの上方位置に配置された第1作動体が前後何れかの方向に作動し、この作動に連係して揺動体が揺動軸芯周りで揺動し、この揺動体の揺動力が第2作動体に伝えられ、この第2作動体が上下何れかの方向に作動する。この第2作動体の作動力は排出クラッチに伝えられ排出クラッチを切状態に設定する。また、排出レバーを逆方向に操作した場合には第1作動体、揺動体、第2作動体が逆方向に作動し排出クラッチを入状態に設定する。
この構成では、第1作動体、揺動体、第2作動体により排出レバーの操作力をエンジンカバーの上面からエンジンカバーの後面側に伝えるクラッチ操作機構を構成することが可能になると共に、揺動体に対する第1作動体と第2作動体との連結位置の設定により、第1作動体の単位作動量に対する第2作動体の作動量を必要とする作動量に設定できる。
従って、グレンタンクから穀粒を排出するための排出クラッチを、排出レバーの適正量の操作で制御すると共に、エンジンの配置スペースに侵入することのないクラッチ操作機構が合理的に構成された。
【0011】
本発明は、前記エンジンに供給する空気の清浄化を図るエアークリーナが、前記運転座席の後方位置に備えられ、前記排出レバーの操作領域が側面視において、前記エアークリーナと前記運転座席のシートバックとに亘る領域に形成されても良い。
【0012】
これによると、運転座席の後方のデッドスペースに大型のエアークリーナの配置が可能になると共に、このエアークリーナと運転座席との側部の空間に排出レバーを配置し、この排出レバーをエアークリーナと運転座席とに亘る広範な領域において操作することが可能となる。
【0013】
本発明は、前記排出レバーが、前記操作領域において垂直姿勢にある場合に、この排出レバーの上端位置が前記シートバックより高い位置にあっても良い。
【0014】
これによると、排出レバーを操作する場合に、排出レバーが垂直姿勢に達した状態でも、この排出レバーの上端位置が運転座席のシートバックより高い位置にあるので、シートバックに手等を接触させることなく、排出レバーを操作できる。
【0015】
本発明は、前記エンジンカバーが、下部の前後向き姿勢の開閉軸芯周りに開閉自在に構成されると共に、前記エンジンカバーの上方位置で、前記エンジンカバーの開閉作動時に接触しない位置のベースフレームに前記排出レバーが支持されても良い。
【0016】
これによると、例えば、エンジンのメンテナンスを行う際にエンジンカバーを開放した場合にも、排出レバーがエンジンカバーの開放操作を妨げず、この開放操作時に排出レバーの位置を変更する等の構造を特別に備える必要もない。
【0017】
本発明は、前記アンローダが、旋回アクチュエータによる縦軸芯周りでの旋回と、昇降アクチュエータによる昇降とが行われるように構成され、前記旋回アクチュエータと前記昇降アクチュエータとの制御を行う制御操作具が前記排出レバーの近傍位置に備えられても良い。
【0018】
これによると、排出レバーの近傍位置に制御操作具が支持されているので、グレンタンクから穀粒を排出する際には、アンローダの姿勢を設定するために制御操作具を操作した後に、排出レバーを操作する場合にも、作業者は殆ど姿勢を変えずに手の移動だけで作業を実行でき、楽な操作が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】エンジンカバーと排出レバーとの位置関係を示す縦断正面図である。
【図4】運転座席の部位を示す平面図である。
【図5】排出レバーとクラッチ操作機構とを示す平面図である。
【図6】排出レバーとクラッチ操作機構とを示す側面図である。
【図7】排出レバーとクラッチ操作機構とを示す正面図である。
【図8】排出クラッチとクラッチ操作機構とを示す正面図である。
【図9】エンジンからアンローダまでの伝動系を模式的に示した図である。
【図10】排出コンベアとアンローダとの駆動系を示す断面図である。
【図11】搬出ケースと閉塞手段とを示す側面図である。
【図12】搬出ケースと閉塞手段とを示す断面図である。
【図13】連結体と固定プレートとスライドプレートとを示す図である。
【図14】閉塞手段の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1、図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体2の前端に刈取部3を昇降自在に備えると共に、刈取部3で刈り取られた刈取穀稈が供給される脱穀装置4と、この脱穀装置4から送られる穀粒を貯留するグレンタンク5とを走行機体2の左右位置に並列配置し、グレンタンク5には穀粒を排出するアンローダ6を備え、走行機体2の前部でグレンタンク5の前部位置に作業者が搭乗する運転部10を備えて自脱型のコンバインが構成されている。尚、この実施形態では自脱型のコンバインを示しているが、コンバインは普通型のものであっても良い。
【0021】
このコンバインは、運転部10の運転座席の下側にエンジンEを備えており、収穫作業時にはエンジンEの駆動力で刈取部3と脱穀装置4とを駆動すると共に、クローラ走行装置1を駆動して走行機体2を走行させる制御が行われる。これにより、刈取部3で穀稈の株元を切断して穀稈の刈り取りを行い、刈取穀稈を脱穀装置4に搬送して脱穀処理を行い、この脱穀処理により得られた処理物から穀粒を選別してグレンタンク5に貯留する作動が自動的に行われる。
【0022】
〔運転部〕
運転部10には、作業者が搭乗するステップ11と、作業者が着座する運転座席12とが備えられると共に、運転座席12の前方位置に作業者が操作する操縦レバー13が備えられている。運転座席12の側部位置のパネル部14に主変速レバー15と、副変速レバー16とが備えられ、パネル部14の側部に排出レバー18が備えられている。
【0023】
操縦レバー13は、非操作状態で中立姿勢を維持するように中立付勢され、左右の何れかの方向に揺動操作することで走行機体2の操向・旋回を実現し、前後の何れかの方向に操作することで刈取部3の昇降を行う。主変速レバー15は、走行速度の無段階の変速を行うものであり、走行機体2を停車させる中立位置と、この中立位置から前方側に形成される前進変速域と、中立位置から後方側に形成される後進変速域とに操作自在に構成されている。副変速レバー16は、複数段の変速操作を行う。排出レバー18は、排出クラッチCを操作することでグレンタンク5の底部の排出コンベア31とアンローダ6とにエンジンEの駆動力を伝え、グレンタンク5に貯留されている穀粒の排出を行う。
【0024】
運転座席12は、エンジンEを覆うエンジンカバー20の上面に備えられ、図3に示す如く、このエンジンカバー20は、機体フレーム21に対して下部前後向き姿勢の開閉軸芯P周りに揺動自在に支持されている。また、排出レバー18を支持するベースフレーム17は、エンジンカバー20の開閉操作時にエンジンカバー20に接触しない位置に配置されている。つまり、エンジンカバー20の開閉時に、このエンジンカバー20の端部が開閉軸芯Pを中心にして描く円弧状の軌跡Gがベースフレーム17に接触しないように位置関係が設定されている。
【0025】
運転座席12の後方位置には後部プレート22が配置されている。この後部プレート22は、機体フレーム21に支持され、その上面にエンジンEに供給する吸気の浄化を図るエアークリーナ23が備えられている。このエアークリーナ23には支柱状の吸気パイプ24Aを介してプレクリーナ24の吸気が供給される。尚、エアークリーナ23から送られる吸気はエンジンカバー20の内部の吸気経路を介してエンジンEに供給される。
【0026】
図4〜図7に示すように、排出レバー18の基端部は運転座席12の左側部、後方側に配置され、この排出レバー18の操作領域が、側面視においてエアークリーナ23と運転座席12のシートバック12Aとに亘る領域に形成されている。また、排出レバー18が、垂直姿勢にある場合に、この排出レバー18の上端位置がシートバック12Aの上端より距離Hだけ高い位置にあるように寸法関係が設定されている。
【0027】
排出レバー18は、平面視で前後向きの基端側部分18aと、この基端側部分18aの上端から機体内側(運転座席12から離れる側)に傾斜した先端側部分18bと、この先端側部分18bに取り付けた握り部18cとを備えて構成されており、機体左右方向で排出レバー18の先端側部分18bがパネル部14と運転座席12との間に位置するように、排出レバー18が配備されている。また、図5及び図6に示すように排出レバー18の「入」位置では、排出レバー18の先端側部分18bがシートバック12Aの機体内側近傍に所定の隙間を開けて位置し、排出レバー18の握り部18cがシートバック12Aの前側に位置し排出レバー18を操作しやすくしている。
【0028】
このような構成からエンジンカバー20を、開閉軸芯Pを中心にして開放方向に操作した場合には、後部プレート22に支持されるエアークリーナ23とプレクリーナ24とは機体フレーム側に残した状態で、このエンジンカバー20が開放し、エンジンカバー20はベースフレーム17に接触することはない。
【0029】
〔アンローダ〕
図1、図2、図9、図10に示すように、グレンタンク5の底部には、グレンタンク5に貯留されている穀粒を送り出す排出コンベア31を構成する底スクリュー31Sが底軸芯Xと同軸芯上に配置されている。アンローダ6は、底スクリュー31Sから送られる穀粒を上方に案内するエルボ状の搬出ケース32と、この搬出ケース32から送られる穀粒を上方に搬送する縦搬送コンベア33と、この縦搬送コンベア33から送られる穀粒を水平方向に搬送する中間コンベア34と、この中間コンベア34から送られる穀粒を横方向に送る横搬送コンベア35とを備えている。また、横搬送コンベア35は、中間部分で折り曲げ自在に構成され、排出側の端部に排出部36が形成されている。
【0030】
縦搬送コンベア33は、筒状のケースの内部に縦搬送スクリュー33Sを収めた構成を有し、中間コンベア34は、筒状のケースの内部に中間スクリュー34Sを収めた構成を有している。横搬送コンベア35は、筒状のケースの内部に横搬送スクリュー35Sを収めた構成を有し、筒状のケースの中間部分はヒンジを介して折りたたみ自在に連結しており、この折りたたみを許容するように横搬送スクリュー35Sの中間には分離状態と連結状態とに切換自在な嵌合連結部(図示せず)を備えている。
【0031】
底スクリュー31Sの搬出側の端部が搬出ケース32の内部に配置され、縦搬送スクリュー33Sの下端が搬出ケース32の内部に配置されている。このような配置から、搬出ケース32の内部には底スクリュー31Sと縦搬送スクリュー33Sとを連動させる第1ベベルギヤ機構G1が備えられている。また、搬出ケース32の内部で底スクリュー31Sの端部には底スクリュー31Sと一体的に回転することで穀粒を掻き上げる第1板状体31Pが備えられている。
【0032】
縦搬送スクリュー33Sの上端が中間コンベア34のケースの内部に配置され、横搬送コンベア35の基端側(搬出方向と反対側)の端部が中間コンベア34のケースの内部に配置されている。このような配置から、中間スクリュー34Sのうち縦搬送コンベア側と、縦搬送スクリュー33Sの上端とを連動させる第2ベベルギヤ機構G2が中間コンベア34のケースの内部に備えられている。また、この中間コンベア34の中間スクリュー34Sのうち横搬送コンベア側と、横搬送スクリュー35Sの基端側とを連動させる第3ベベルギヤ機構G3が中間コンベア34の内部に備えられている。
【0033】
更に、縦搬送スクリュー33Sの搬送端(上端)には縦搬送スクリュー33Sと一体回転することで穀粒を掻き出す第2板状体33Pが備えられ、中間スクリュー34Sの搬送端にも中間スクリュー34Sと一体回転することで穀粒を掻き出す第3板状体34Pが備えられている。
【0034】
搬出ケース32の下面には縦向き姿勢の縦軸芯Yと同軸芯で下方に突出する軸状部32Tが一体形成され、この軸状部32Tが機体フレーム21に備えられた回転支持部37に対して回転自在に嵌め込まれている。この縦搬送コンベア33の縦軸芯Y周りでの回転を許しながら、この縦搬送コンベア33の上部位置を抱き込む状態で支持するホルダー38がグレンタンク5の後面に備えられている。また、縦搬送コンベア33に平行する姿勢となる支柱状の縦フレーム40が機体フレーム21の後端に連結され、この縦フレーム40の上端には、縦軸芯Yを中心にした縦搬送コンベア33の回転を許す状態で外周を抱き込む保持体41が備えられている。
【0035】
この保持体41には電動型の旋回モータ42(旋回アクチュエータの一例)が支持され、この旋回モータ42の駆動軸に備えたピニオンギヤ43が噛み合うギヤ体44が縦搬送コンベア33の外周に備えられている。このような構成から、縦搬送コンベア33と中間コンベア34と横搬送コンベア35とが縦軸芯Yを中心にして回転自在に支持され、旋回モータ42の駆動によりアンローダ6の旋回が可能となる。
【0036】
中間コンベア34のケースは、縦搬送コンベア33の上端に連結するエルボ状の第1ケース34Aと、横搬送コンベア35の基端側に連結するエルボ状の第2ケース34Bとをジョイント34Cにより水平軸芯Zを中心にして相対回転自在に連結した構成を有している。
【0037】
横搬送コンベア35の基端側と中間コンベア34との間に電動型の昇降シリンダ45(昇降アクチュエータの一例)を備えている。図4に示すように排出レバー18のガイドプレート80には、旋回モータ42と、昇降シリンダ45とを制御する複数の制御ボタン81(制御操作具の一例)を備えている。図面には示していないが、複数の制御ボタン81の何れかの操作に対応して昇降シリンダ45と旋回モータ42との何れかを作動させる制御装置を備えている。
【0038】
このような構成から、作業者が複数の制御ボタン81のうち旋回に対応するものを操作することで旋回モータ42が作動し、これにより縦軸芯Yを中心にしてアンローダ6を旋回させて排出部36からの穀粒の搬出方向の設定を行える。また、制御ボタン81のうち昇降に対応するものを操作することで昇降シリンダ45が伸縮作動し、水平軸芯Zを中心にして横搬送コンベア35の先端側を昇降させて排出部36からの穀粒の搬出高さを設定できる。
【0039】
図11〜図14に示すように、搬出ケース32はメンテナンスにおいて、内部に残留する穀粒の排出と内部の確認を可能にするための開口32Aが底部に形成され、この開口32Aに対して閉塞手段Dが着脱自在に備えられている。
【0040】
搬出ケース32の下部は、図12に示す如く底スクリュー31Sの外周の形状に沿うように略円形となる筒状壁32Bが形成されているが、この筒状壁32Bの一部には筒状壁32Bの底部に対して水平方向に連なる延出部32Cが形成されている。この延出部32Cの内面と筒状壁32Bとの形成された孔状部分とによって開口32Aが形成され、この開口32Aの外部位置に縦向き姿勢となるフランジ面32Dが形成され、このフランジ面32Dに閉塞手段Dが備えらえている。
【0041】
閉塞手段Dは、フランジ面32Dに接触する形態で搬出ケース32に取り付けられる連結体47と、開口32Aの内部に挿入される支持プレート48とを一体化した構造を有すると共に、支持プレート48に固定プレート49とスライドプレート50とが連結する構造を有している。この固定プレート49とスライドプレート50とは底スクリュー31Sの外周の形状に沿う円弧状に成形され、固定プレート49にはスタッドボルト型の2つの固定ボルト49Aが備えられ、スライドプレート50にはスタッドボルト型の1つの連結ボルト50Aが備えられている。
【0042】
支持プレート48には2つの固定ボルト49Aが挿通する2つの固定孔部48Aと、連結ボルト50Aが挿通し、横方向(底軸芯Xに沿う方向)に長寸となる長孔48Bとが形成されている。また、2つの固定ボルト49Aに固定ナット49Bが螺合し、1つの連結ボルト50Aには連結ナット50Bが螺合する。
【0043】
固定プレート49とスライドプレート50との横方向(底軸芯Xに沿う方向)の寸法を足し合わせた合計寸法Lは、搬出ケース32に形成された開口32Aの横方向(底軸芯Xに沿う方向)の寸法より大きい値に設定されている。このような寸法関係であるため、閉塞手段Dによって開口32Aを閉塞する際には、最初に固定プレート49を支持プレート48に固定すると共に、スライドプレート50の連結ボルト50Aに螺合する連結ナット50Bを緩め、図13に示す如く、スライドプレート50を固定プレート49に重なり合う位置まで移動させておく。
【0044】
次に、この状態で固定プレート49とスライドプレート50とを開口32Aの内部に挿入し、連結体47をフランジ面32Dに対してボルト51によって連結し、更に、連結ボルト50Aを長孔48Bに沿って移動させることで固定プレート49が固定プレート49と並列する位置に配置し、この位置において連結ボルト50Aに螺合する連結ナット50Bの操作によりスライドプレート50を固定する操作を行うことになる。
【0045】
このような操作を行うことにより、搬出ケース32の開口32Aの部位に非円弧状となる内面が形成されているにも拘わらず、固定プレート49とスライドプレート50との内面が底スクリュー31Sの外周に沿わせる形態となる円滑な内面の形成が実現する。
【0046】
〔排出クラッチ〕
図8、図9に示すように、エンジンEの駆動力を底スクリュー31Sに伝えるベルト式の伝動機構と、駆動力の断続を行う排出クラッチCとを備えてアンローダ6の駆動系が構成されている。つまり、エンジンEの出力軸に備えた出力プーリ61と、ギヤボックス62の入力軸に備えたと中間入力プーリ63とに亘って無端ベルトで成る中間ベルト64が巻回されている。ギヤボックス62は入力軸に伝えられる回転動力を、入力軸と直交する姿勢の出力軸に伝えるように一対のベベルギヤを内蔵しており、このギヤボックス62の出力軸に備えた中間出力プーリ65と、底スクリュー31Sの外端の入力軸に備えた入力プーリ66とに亘って無端ベルトで成る伝動ベルト67が巻回され、この伝動ベルト67に張力を作用させるテンションプーリ68を備えている。
【0047】
グレンタンク5の前方位置で運転座席12の側部後方位置に、支柱状の支持フレーム71が機体フレーム21に立設され、この支持フレーム71に対して前後向き姿勢の軸体69Aを介して揺動自在にテンションアーム69が支持され、このテンションアーム69の揺動端に前述したテンションプーリ68が回転自在に支持されている。
【0048】
排出クラッチCは、中間出力プーリ65と、入力プーリ66と、伝動ベルト67と、テンションプーリ68と、テンションアーム69とで構成され、グレンタンク5の下部の前方位置に配置されている。この排出クラッチCは、テンションアーム69の揺動姿勢の切換によりテンションプーリ68が伝動ベルト67に作用する張力を制御して動力を伝える入り状態と、動力を遮断する切り状態とに切換自在に構成されている。
【0049】
図4〜図8に示すように、排出レバー18によって排出クラッチCを制御するために、この排出レバー18とテンションアーム69との間にクラッチ操作機構Fが備えられている。前述したベースフレーム17は、前後向きに長手方向を設定した姿勢の角パイプ状の部材で構成され、支持フレーム71の上端の連結プレート72に連結されている。このベースフレーム17に対して横向き姿勢の支持軸芯Qと同軸芯となるレバー軸18Aが備えられ、このレバー軸18Aにより前後方向に揺動操作自在に排出レバー18が支持され、この排出レバー18の操作位置を示すガイドプレート80がベースフレーム17に備えられている。なお、図7に示すように、ガイドプレート80は、その上面がパネル部14のレバー類配置用の傾斜面14Aの運転座席側の端部と略同じ高さとなるように、このパネル部14の外側に隣接する状態で配備されている。
【0050】
排出レバー18の基端側にアーム部18Bが一体的に備えられ、ベースフレーム17の後端側には横向き姿勢の揺動軸芯Rと同軸芯の揺動軸73を中心にして揺動自在に揺動体74が支持されている。この揺動体74は、第1揺動アーム74Aと第2揺動アーム74Bとを有しており、第1揺動アーム74Aとアーム部18Bとが第1作動ロッド75によって接続され、第2揺動アーム74Bとテンションアーム69とが第2作動ロッド76及びコイルスプリング77によって接続されている。第1作動ロッド75は、長手方向を前後向き姿勢に設定した姿勢でエンジンカバー20の上方位置に配置され、第2作動ロッド76は長手方向を縦向き姿勢に設定した状態でエンジンカバー20の後方位置に配置されている。
【0051】
第1作動ロッド75によって第1作動体が構成され、第2作動ロッド76とコイルスプリング77とで第2作動体が構成されている。同図では、第1揺動アーム74Aと第2揺動アーム74Bとを溶接により一体化して揺動体を構成したものを示しているが、単一の部材をプレスする等の加工によりベルクランク状となるように揺動体74を構成しても良い。また、第2作動体としてワイヤを用いても良い。
【0052】
これら第1作動ロッド75と、揺動体74と、第2作動ロッド76と、コイルスプリング77とによってクラッチ操作機構Fが構成されている。このクラッチ操作機構Fは、図6に示すように、排出レバー18が「切」位置にある場合にはテンションプーリ68から伝動ベルト67に作用する張力を低下させて排出クラッチCを切り状態に設定する。排出レバー18を「入」位置に操作した場合には、テンションアーム69の揺動端を持ち上げ方向に操作してテンションプーリ68から伝動ベルト67に作用させる張力を高めて排出クラッチを入り状態に設定する。
【0053】
具体的な作動形態として、排出レバー18が「入」位置に操作された場合には、この排出レバー18の揺動に伴い、第1作動ロッド75が前方に引き操作され、この引き操作に伴い、第1揺動アーム74Aと第2揺動アーム74Bとが揺動軸芯Rを中心にして一体的に揺動し、第2作動ロッド76が上方に引き操作される。この引き操作によりテンションアーム69の揺動端も上方に引き上げられ、テンションプーリ68が伝動ベルト67に接触して張力を作用させ排出クラッチCが入り状態に達する。
【0054】
特に、排出レバー18を「切」位置から「入」位置に操作した場合には、伝動ベルト67の張力とコイルスプリング77の付勢力とが作用することになるが、この「入」位置に操作された場合には、排出レバー18が揺動限界に達すると共に、この揺動限界に達する以前に排出レバー18のアーム部18Bと、第1作動ロッド75の先端との連結点が、上方位置からデッドポイントを超えて下方位置に達することにより、排出レバー18は「入」位置に安定的に保持される。
【0055】
つまり、第1作動ロッド75の先端との連結点は、支持軸芯Qを中心にした円弧軌跡上を移動することになるが、排出レバー18を「切」位置から「入」位置に操作した場合には、連結点が、支持軸芯Qを中心にした円弧軌跡上を上側から下側に移動し、この移動の途中(軌跡の中間)において、最も前方に変位した位置となるデッドポイントを通過する。このようにデッドポイントを通過することにより、伝動ベルト67の張力とコイルスプリング77の付勢力とが、排出レバー18を「入」位置の方向に向けて揺動させることになり、排出レバー18は「入」位置に保持される。
【0056】
このように排出クラッチCが入り状態に達することでエンジンEの駆動力が底スクリュー31Sに伝えられ、更に、この底スクリュー31Sからアンローダ6の縦搬送スクリュー33Sと、中間スクリュー34Sと、横搬送スクリュー35Sとに伝えられ、グレンタンク5に貯留されている穀粒の搬出が実現するのである。
【0057】
〔実施形態の効果〕
クラッチ操作機構Fが、エンジンカバー20の上方に配置された第1作動ロッド75と、これに連係する揺動体74とを備えると共に、この揺動体74に連係する第2作動ロッド76をエンジンカバー20の後方側に備えて構成しているので、排出レバー18の操作力を、エンジンEが配置された空間を避ける形態でエンジンカバー20の上面からエンジンカバー20の後面側に伝えることが可能になる。また、揺動体74に対する第1作動ロッド75と第2作動ロッド76との連結位置の設定により、第1作動ロッド75の単位作動量に対する第2作動ロッド76の作動量を必要とする作動量に設定できる。これにより、排出レバー18の操作ストロークを作業者の操作に適した量に設定して排出クラッチCの操作が可能になる。
【0058】
アンローダ6では、底スクリュー31Sの端部の第1板状体31Pが穀粒を上方に掻き上げる作動を行うため、穀粒を傷めずに縦搬送スクリュー33Sに受け渡すことが可能となる。これと同様に、縦搬送スクリュー33Sの搬送端に備えた第2板状体33Pと、中間スクリュー34Sの搬送端に備えた第3板状体34Pとが穀粒を掻き送ることによっても穀粒を傷め難いものにしている。
【0059】
搬出ケース32の開口32Aを開閉自在に閉塞する閉塞手段Dが、固定プレート49とスライドプレート50との2部材を備え、搬出ケース32の内部においてスライドプレート50を人為的にスライドさせた後に固定できるように構成されているので、この2部材の合計寸法Lが閉塞状態で開口32Aの幅より広くでき、この固定プレート49とスライドプレート50との2部材を底スクリュー31Sの外周面に近接状態で配置できるものとなる。
【0060】
運転座席12の後方と、グレンタンク5の前方との間のデッドスペースを有効に利用して大型のエアークリーナ23の配置が可能になると共に、このエアークリーナ23と運転座席12の側部の空間を利用して排出レバー18を配置できる。そして、排出レバー18を操作する場合に、排出レバー18が垂直姿勢に達した状態でも、この排出レバー18の上端位置が運転座席12のシートバック12Aより高い位置にあるので、シートバック12Aに手等を接触させることなく、排出レバー18を操作できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、エンジンカバーの上面に運転座席が配置され、グレンタンクから穀粒を排出する排出クラッチがグレンタンクの下部位置に配置されているコンバインに利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 走行機体
5 グレンタンク
6 アンローダ
12 運転座席
12A シートバック
17 ベースフレーム
18 排出レバー
20 エンジンカバー
23 エアークリーナ
42 旋回アクチュエータ(旋回モータ)
45 昇降アクチュエータ(昇降シリンダ)
74 揺動体
75 第1作動体(第1作動ロッド)
76 第2作動体(第2作動ロッド)
77 第2作動体(コイルスプリング)
81 制御操作具(制御ボタン)
C 排出クラッチ
E エンジン
F クラッチ操作機構
P 開閉軸芯
Q 支持軸芯
R 揺動軸芯
Y 縦軸芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部位置に運転座席とエンジンとが配置され、これらの後方に穀粒を貯留するグレンタンクが配置され、このグレンタンクから穀粒を排出するアンローダと、前記エンジンから前記アンローダに伝えられる駆動力の断続を行う排出クラッチと、この排出クラッチの断続を人為的に行う排出レバーとが備えられているコンバインであって、
前記運転座席が前記エンジンを覆うエンジンカバーの上部に備えられ、前記排出レバーが前記運転座席の近傍で横向き姿勢の支持軸芯周りでの揺動により前後方向へ操作自在に支持され、前記排出クラッチが前記グレンタンクの下部の前方側に配置され、この排出クラッチに前記排出レバーの操作力を伝えるクラッチ操作機構が備えられると共に、
このクラッチ操作機構が、前記エンジンカバーの上面より上方位置において前後向き姿勢で配置され前記排出レバーに接続する第1作動体と、前記エンジンカバーの後方側で縦向き姿勢で配置され前記排出クラッチに接続する第2作動体と、前記第1作動体の前後方向への作動を縦方向への作動に変換して前記第2作動体に伝えるように横向き姿勢の揺動軸芯周りで揺動自在に支持された揺動体とを備えているコンバイン。
【請求項2】
前記エンジンに供給する空気の清浄化を図るエアークリーナが、前記運転座席の後方位置に備えられ、前記排出レバーの操作領域が側面視において、前記エアークリーナと前記運転座席のシートバックとに亘る領域に形成されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記排出レバーが、前記操作領域において垂直姿勢にある場合に、この排出レバーの上端位置が前記シートバックより高い位置にある請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記エンジンカバーが、下部の前後向き姿勢の開閉軸芯周りに開閉自在に構成されると共に、前記エンジンカバーの上方位置で、前記エンジンカバーの開閉作動時に接触しない位置のベースフレームに前記排出レバーが支持されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記アンローダが、旋回アクチュエータによる縦軸芯周りでの旋回と、昇降アクチュエータによる昇降とが行われるように構成され、前記旋回アクチュエータと前記昇降アクチュエータとの制御を行う制御操作具が前記排出レバーの近傍位置に備えられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項1】
走行機体の前部位置に運転座席とエンジンとが配置され、これらの後方に穀粒を貯留するグレンタンクが配置され、このグレンタンクから穀粒を排出するアンローダと、前記エンジンから前記アンローダに伝えられる駆動力の断続を行う排出クラッチと、この排出クラッチの断続を人為的に行う排出レバーとが備えられているコンバインであって、
前記運転座席が前記エンジンを覆うエンジンカバーの上部に備えられ、前記排出レバーが前記運転座席の近傍で横向き姿勢の支持軸芯周りでの揺動により前後方向へ操作自在に支持され、前記排出クラッチが前記グレンタンクの下部の前方側に配置され、この排出クラッチに前記排出レバーの操作力を伝えるクラッチ操作機構が備えられると共に、
このクラッチ操作機構が、前記エンジンカバーの上面より上方位置において前後向き姿勢で配置され前記排出レバーに接続する第1作動体と、前記エンジンカバーの後方側で縦向き姿勢で配置され前記排出クラッチに接続する第2作動体と、前記第1作動体の前後方向への作動を縦方向への作動に変換して前記第2作動体に伝えるように横向き姿勢の揺動軸芯周りで揺動自在に支持された揺動体とを備えているコンバイン。
【請求項2】
前記エンジンに供給する空気の清浄化を図るエアークリーナが、前記運転座席の後方位置に備えられ、前記排出レバーの操作領域が側面視において、前記エアークリーナと前記運転座席のシートバックとに亘る領域に形成されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記排出レバーが、前記操作領域において垂直姿勢にある場合に、この排出レバーの上端位置が前記シートバックより高い位置にある請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記エンジンカバーが、下部の前後向き姿勢の開閉軸芯周りに開閉自在に構成されると共に、前記エンジンカバーの上方位置で、前記エンジンカバーの開閉作動時に接触しない位置のベースフレームに前記排出レバーが支持されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記アンローダが、旋回アクチュエータによる縦軸芯周りでの旋回と、昇降アクチュエータによる昇降とが行われるように構成され、前記旋回アクチュエータと前記昇降アクチュエータとの制御を行う制御操作具が前記排出レバーの近傍位置に備えられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−147733(P2012−147733A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9748(P2011−9748)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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