説明

コンバイン

【課題】グレンタンクに多量穀粒が貯留された状態でエンジンによる穀粒排出をモータによる穀粒排出に切り替えると、駆動力が不足し円滑な排出作業を困難になる。
【解決手段】グレンタンク4内の穀粒を排出するタンク排出装置11を設ける。タンク排出装置11の回転を排出用縦揚穀装置13と横排出オーガ15に伝達する。タンク排出装置11は、エンジン6および該エンジン6とは別に設けたモータ20により駆動可能な構成とする。グレンタンク4内に所定の穀粒がある状態ではエンジン6により駆動する。所定の穀粒がない状態ではモータ20により駆動する。モータ20によってタンク排出装置11を駆動している状態では、エンジン6の回転をアイドリング回転まで自動的に低下させる制御手段86を備えたことを特徴とするコンバイン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、グレンタンク内の穀粒の排出装置を、エンジンと該エンジンとは別途設けたモータの回転とを切り替えて行えるようにし、モータにより駆動する場合、エンジンの回転をアイドリング回転まで低下させる構成は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−106747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例では、単に、エンジンによる穀粒排出とモータによる穀粒排出とを切り替えるので、モータにより駆動する場合、グレンタンク内に多量の穀粒が貯留されている状態では、駆動力が不足し、円滑な排出作業を行えないという課題がある。
本願は、排出に要する負荷に応じて、エンジンによる穀粒排出とモータによる穀粒排出とを自動的に切替えることにより、エンジンによる燃料の消費や排ガスの発生を抑えながら、穀粒排出作業を円滑に行えるものとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、下方に走行装置(2)を設けた機体フレーム(1)の上方に脱穀装置(3)を設け、該脱穀装置(3)の側方にグレンタンク(4)を設け、該グレンタンク(4)内にはグレンタンク(4)内の穀粒を排出するタンク排出装置(11)を設け、該タンク排出装置(11)の終端には排出用縦揚穀装置(13)の下部を接続し、該排出用縦揚穀装置(13)の上部に横排出オーガ(15)の基部を接続し、前記タンク排出装置(11)の回転を前記排出用縦揚穀装置(13)と前記横排出オーガ(15)に伝達して駆動させる構成とし、前記タンク排出装置(11)は、エンジン(6)および該エンジン(6)とは別に設けたモータ(20)により駆動可能な構成とし、前記グレンタンク4内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出している状態ではエンジン(6)によりタンク排出装置(11)を駆動し、グレンタンク4内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出しない状態ではモータ(20)によりタンク排出装置(11)を駆動する構成とし、前記モータ(20)によってタンク排出装置(11)を駆動している状態では、エンジン(6)の回転をアイドリング回転まで自動的に低下させる制御手段(86)を備えたことを特徴とするコンバインとしたものであり、グレンタンク(4)内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出している状態ではエンジン(6)によりタンク排出装置(11)を駆動して穀粒排出し、グレンタンク(4)内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出しない状態となると、タンク排出装置(11)をモータ(20)により駆動して穀粒を排出する。この際、モータ(20)による穀粒排出状態となると、エンジン(6)の回転がアイドリング回転まで自動的に低下する。
請求項2記載の発明は、前記エンジン(6)の回転をアイドリング回転まで低下させ後に、前記タンク排出装置(11)をエンジン(6)による駆動から前記モータ(20)による駆動に自動的に切り替える構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、グレンタンク(4)内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出してエンジン(6)によりタンク排出装置(11)を駆動して穀粒を排出している状態で、グレンタンク(4)内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出しない状態となった場合、エンジン(6)の回転をアイドリング回転へ自動的にの低下させた後、タンク排出装置(11)をモータ(20)による駆動に切り替える。
請求項3記載の発明は、前記モータ(20)のみによるタンク排出装置(11)の駆動中に、前記走行装置2の駆動速度を変速する主変速レバー(76)が中立位置以外に操作された場合、前記モータ(20)の駆動を自動的に停止させる構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、モータ(20)による穀粒排出作業中に、変速レバー(76)が中立位置以外に操作された場合に、モータ(20)の駆動が自動的に停止する。
請求項4記載の発明は、前記モータ(20)のみによるタンク排出装置(11)の駆動中に、機体の前後進が検出された場合に、該モータ(20)の駆動を自動的に停止させる構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、モータ(20)による穀粒排出作業中に、機体の前後進が検出されると、モータ(20)の駆動が自動的に停止する。
請求項5記載の発明は、前記モータ(20)のみによるタンク排出装置(11)の駆動中に、刈取装置による搬送穀稈の存在を穀稈有無感知センサ(80)で検出した場合に、該モータ(20)の駆動を自動的に停止させる構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、モータ(20)による穀粒排出作業中に、刈取装置による搬送穀稈の存在が検出されると、モータ(20)の駆動が自動的に停止する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、穀粒センサ(75)でグレンタンク(4)内の穀粒量を検出し、この穀粒量が所定量以上の場合にはエンジン(6)によりタンク排出装置(11)を駆動して穀粒を排出し、グレンタンク(4)内の穀粒量が所定量以下になると、モータ(20)によりタンク排出装置(11)を駆動して穀粒を排出するので、エンジン(6)の回転をアイドリング回転まで低下させて燃料消費量及び排気ガス量の低減を図りながら、モータ(20)による穀粒排出作業を円滑に行うことができ、詰まり発生等の不具合を回避できる。
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の発明の効果に加え、グレンタンク(4)内の穀粒量が所定量以下になって、エンジン(6)の回転をアイドリング回転まで低下させてから、モータ(20)によりタンク排出装置(11)を駆動するので、エンジン(6)による駆動状態からモータ(20)による駆動状態へスムーズに切り替えることができ、エンジン(6)の燃料消費を減少させることができる。
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載または請求項2の発明の効果に加え、モータ(20)による穀粒排出作業中に変速レバー(76)が中立位置以外に操作された場合に、モータ(20)の駆動を自動的に停止させるので、穀粒を排出しながら走行することが無く、誤操作による穀粒損失の発生を防止できる。
請求項4記載の発明では、上記請求項1記載または請求項2の発明の効果に加え、モータ(20)による穀粒排出作業中に、機体の前後進が検出された場合に、モータ(20)の駆動を自動的に停止するので、穀粒を排出しながら前後進することが無く、前後進の誤操作による穀粒漏れの発生を防止できる。
請求項5記載の発明は、上記請求項1記載または請求項2の発明の効果に加え、刈取装置による搬送穀稈の存在を穀稈有無感知センサ(80)で検出した場合に、モータ(20)の駆動を自動的に停止させるので、不用意な刈取作業の再開による穀粒漏れの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの一部平面図。
【図2】同側面図。
【図3】駆動切換機構の断面図。
【図4】エンジン周辺の平面図。
【図5】ブロック図。
【図6】ブロック図。
【図7】フロー図。
【図8】横排出オーガの操作器の実施例のブロック図。
【図9】横排出オーガの操作器の概略図。
【図10】メンテナンス用操作器の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1は刈り取った圃場の穀稈を投入して脱穀する所謂汎用コンバインの機体フレームであり、機体フレーム1の下方には走行装置2を設け、機体フレーム1の上方には脱穀装置3を設け、脱穀装置3の側方にグレンタンク4を設け、グレンタンク4の前方には操縦部5を設けている。操縦部5には、運転席(図示省略)を設け、運転席の下方にエンジン6を設けている。また、図示を省略しているが操縦部5の前方には刈取装置を設けている。
前記グレンタンク4は、該脱穀装置3で脱穀された穀粒を揚穀装置10により供給して一時貯留する。グレンタンク4内には、グレンタンク4内の穀粒を排出する螺旋搬送式のタンク排出装置11を設ける(図2)。該タンク排出装置11の終端は、前記機体フレーム1に設けた接続メタル12内に臨ませる。
【0009】
接続メタル12には排出用縦揚穀装置13の下部を接続する。排出用縦揚穀装置13には図示は省略するが揚穀螺旋を設ける。排出用縦揚穀装置13の上部には横排出オーガ15の基部を取付ける。横排出オーガ15の先端は、公知の構成によって排出用縦揚穀装置13に対して旋回および上下回動自在になっている。
前記グレンタンク4は、前記接続メタル12に設けた回動支点Sを中心にして回動自在に構成し、タンク排出装置11の終端は接続メタル12内の引継ぎ螺旋(図示省略)の接続部に所謂カップリング接合により着脱自在に係合させている。
しかして、前記エンジン6の回転は、グレンタンク4の前側に設けたタンク排出装置11の回転軸16に入力し、タンク排出装置11の回転は接続メタル12内の引継螺旋と、排出用縦揚穀装置13内の揚穀螺旋とを介して横排出オーガ15に伝達して駆動する。
【0010】
この場合、タンク排出装置11には、エンジン6とは別途設けたモータ20の回転を入力しうるようにし、グレンタンク4内の穀粒量に応じてエンジン6とモータ20との駆動を切り替え、モータ20による穀粒排出するときには、エンジン6の回転をアイドリング回転まで低下または停止させるように構成する。
そのため、エンジン6の駆動に要する燃料消費量を減少させられる。
具体的には、エンジン6から前記タンク排出装置11の回転軸16の間の伝動経路中にエンジン6とモータ20との駆動を切り替える駆動切換機構21を設ける。
前記エンジン6は開閉自在のエンジンカバー22によって覆われ、該エンジンカバー22の内部における前記エンジン6とグレンタンク4との間の空間部に、前記駆動切換機構21を配置する。
図7に示すように、駆動切換機構21の伝動ギヤケース23の外側面部には、入力プーリ24が固定された機体左右方向姿勢の第1入力軸(入力軸)25をベアリング26ベアリング26で回転自在に軸受けする。そして、該第1入力軸25と同一軸芯上に、該第1入力軸25から第1ワンウェイクラッチ28Aを介して駆動される第1出力軸29を設け、該第1出力軸29の端部に傘歯車状の第1出力ギヤ30を固定する。
【0011】
また、伝動ギヤケース23の機体奥側の内側面部には、機体左右方向姿勢の第2入力軸33をベアリング34で回転自在に軸受けする。そして、該第2入力軸33と同一軸芯上に、該第2入力軸33から第2ワンウェイクラッチ28Bを介して駆動される第2出力軸35を設け、該第2出力軸35の端部に傘歯車状の第2出力ギヤ36を固定する。そして、伝動ギヤケース23の機体奥側の内側面部に変速装置(増速伝動装置または減速伝動装置)37を備えた前記駆動用電動モータ(電動モータ)20を横向き姿勢にして取り付け、該モータ20によって駆動される変速装置37の出力軸を前記第2入力軸33にスプライン嵌合させて取り付ける。尚、タンク排出装置11の底部搬送移送螺旋38の駆動に要する馬力は、一般的に10馬力程度であり、前記モータ20の出力も10馬力程度あるいはそれ以上のものを用いる。
そして、前記伝動ギヤケース23の後側面部には、機体前後方向姿勢の出力軸40の後部をベアリング41で回転自在に軸受けし、該出力軸40の前端部を伝動ギヤケース23の前側面部にベアリング42で回転自在に軸受けする。該出力軸40の中間部には傘歯車状の入力ギヤ43を固定し、該出力軸40の伝動ギヤケース23から後方に突出する後端部には、放射方向の2箇所に駆動側係合爪(図示省略)を備えた駆動側回転体45を固定する。これにより、上記出力軸40に設けた入力ギヤ43に対して、第1出力軸29に固定した第1出力ギヤ30と第2出力軸35に固定した第2出力ギヤ36との両方が噛み合う。以上の構成により、第1ワンウェイクラッチ28Aおよび第2ワンウェイクラッチ28Bの作動により、エンジン6からの駆動回転速度とモータ20からの駆動回転速度とのうちの、他側よりも高速回転となった側の回転によって、駆動側回転体45が駆動される。
【0012】
また、前記第1入力軸25に固定した入力プーリ24と、エンジン6の機体外側向きの出力軸47に固定した出力プーリ48とに亘って伝動ベルト49を巻き掛け、該伝動ベルト49に張力を付与するテンションプーリ50を設けて、テンション式の排出クラッチ51を構成する。該排出クラッチ51は、排出クラッチ作動用の電動モータ52(実体図省略)により入り切りするよう連繋する。
また、図6に示すように、エンジン6の機体内側向きの出力軸53に第1出力プーリ54と第2出力プーリ55と第3出力プーリ56を固定する。そして、前記第1出力プーリ第1出力プーリ54と、エンジン6の機体奥側の後部に取り付けた発電機57の入力プーリ58と、エンジン6の機体奥側の上部に取り付けたセルモータ59の入力プーリ60とに亘って伝動ベルト61を巻き掛ける。また、前記第2出力プーリ第2出力プーリ55と脱穀装置4側の入力プーリとに亘ってテンション式の脱穀クラッチを備えた伝動ベルト(図示省略)を巻き掛け、前記第3出力プーリ56と前記ミッションケース12に駆動入力する静油圧式無段変速装置65の入力軸に設けた入力プーリ66とに亘って常時張りの伝動ベルト67を巻き掛ける。
【0013】
尚、前記伝動ギヤケース23と発電機57は、エンジンカバー22の内部、即ちエンジンルーム内において、エンジン6の冷却風通路内に配置される。エンジン6には、外側の防塵網68Aの内側に配置したラジエータ68Bと、エンジン6によって駆動される冷却ファン69が備えられている。この冷却ファン冷却ファン69の直径はエンジン6本体よりも小さいが、この冷却ファン69によってエンジンカバー22内に吸い込まれた風が、エンジンカバー22の内部において、エンジン6と伝動ギヤケース23およびモータ20の周囲を吹き抜ける際に、これら伝動ギヤケース23およびモータ20を冷却することとなる。
しかして、駆動切換機構21は、グレンタンク4内の穀粒の量を検知する穀粒センサ75により、グレンタンク4内の穀粒の減少(所定量以下であること)を検知すると、前記モータ20を駆動させ、エンジン6からモータ20へ駆動を切り替え、エンジン6の回転をアイドリング回転まで低下または停止させる。
また、エンジン6とモータ20との駆動の切換は、一定時間、エンジン6とモータ20との駆動を併用する構成とする。
そのため、エンジン6とモータ20との駆動の切換に伴う急激な負荷の変動を解消し、滑らかな駆動源の切換を行って、切換時の作業者に与える違和感を緩和し、エンジン6とモータ20と駆動切換機構21の破損・故障の原因を除去する。
【0014】
即ち、駆動切換機構21のワンウエイクラッチ28によって、駆動切換機構21にエンジン6とモータ20の両方の駆動回転を同時に入力することができ、エンジン6とモータ20の駆動回転数を制御することにより、エンジン6とモータ20との駆動の切換を行う。
例えば、通常の刈取脱穀作業中では、エンジン6を定格回転数で回転させ、モータ20への通電は切りとなり、穀粒センサ75によりグレンタンク4内の穀粒が所定量以下であると検知すると、モータ20へ通電するが、直ぐにエンジン6による駆動を伝達を止める切換を行うのではなく、モータ20とエンジン6の両者によって横排出オーガ15を駆動し、一定時間経過後、モータ20単独の駆動に切り替える。
さらに、エンジン6の回転数を所謂アイドリング回転に到達するまで低下させた状態で、一定時間、エンジン6とモータ20との駆動を併用する構成とすると、一層、駆動の切換に伴う急激な負荷の変動を解消し、駆動源切換時の作業者に与える違和感を緩和する。
しかして、横排出オーガ15の排出を、諸条件によりモータ20で駆動排出作業中に、主変速レバー(図示省略)の操作を検出部77が検出すると、モータ20の駆動を停止させ、穀粒排出を停止させる。
【0015】
そのため、エンジン6による穀粒排出作業に比しモータ20の穀粒排出作業中の作業音は低いため、作業者が穀粒排出作業中にも関わらず、モータ20を停止させずに、刈取作業を再開して、グレンタンク4内の穀粒をタンク外に排出してしまう誤操作を防止する。
したがって、誤操作による穀粒漏れを回避し、ロス発生を防止できる。
また、モータ20による穀粒排出作業中に、所定以上の車速を車速センサ78が検出すると、モータ20を停止させ、穀粒排出を停止させる。
そのため、誤操作による穀粒漏れを回避し、ロス発生を防止する。
また、モータ20による穀粒排出作業中に、刈取装置に設けた穀稈有無感知センサ80が穀稈のあることを検出すると、モータ20を停止させ、穀粒排出を停止させる。
そのため、モータ20による穀粒排出作業にも関わらず、これを忘れて、刈取作業を再開したとき、モータ20を停止させ、グレンタンク4内の穀粒をタンク外に排出してしまう誤操作を防止する。
【0016】
しかして、モータ20による横排出オーガ15の駆動を、諸条件により停止させる停止制御において、駆動停止条件を検出後であって所定時間経過後、モータ20の駆動を停止させる。
即ち、機体を僅かに移動させて横排出オーガ15の位置調節を行う場合、変速レバー76の操作や、車速検出や穀稈検出することがあるが、この場合、直ぐに、モータ20の自動停止制御を実行させてしまうと、手順に従って、再び、最初から穀粒排出操作を行うことになり、操作性を著しく低下させることになる。
本願では、モータ20の駆動を諸条件により停止させる停止制御を備えていても、駆動停止条件の検出後、所定時間経過観察することにより、横排出オーガ15の位置調節かモータ20の切り操作忘れかを判定して、モータ20の駆動を停止させるので、穀粒排出の再操作を回避できる。
【0017】
したがって、静穏なモータ20による排出作業による省エネの排出作業としつつ、静穏なモータ20による排出作業ゆえのモータ20の停止操作を忘れて穀粒漏れを防止し、しかも、モータ20の停止自動制御による操作性の低下をも回避でき、省エネ排出作業と穀粒漏れ防止と操作性の項とを両立させられる。
また、モータ20による横排出オーガ15の駆動を、諸条件により停止させる停止制御において、駆動停止条件を検出後であって、機体の所定距離移動を検出後、モータ20の駆動を停止させる。
そのため、横排出オーガ15の位置調節中であるか否かを機体の移動距離により判定して、モータ20の停止制御を実行し、面倒な穀粒排出の再操作を回避できる。
図中、81は排出起動メインスイッチ、82は排出停止スイッチ、83は排出クラッチ入り検出部、84は排出クラッチ切り検出部、85はエンジン回転センサ、86はコントローラーである。
しかして、図8〜図11は、前記横排出オーガ15の遠隔操作用の操作器(所謂リモコン)90の実施例を示し、通常時は、操作器90により穀粒排出作業を行うが、この操作器90をコンバインのメンテナンス作業の際の各部を点検用に駆動させるメンテナンス用操作器90として兼用する構成とする。
【0018】
そのため、コンバインの各部の点検等のメンテナンス作業を行うに際し、操縦部5から離れた各部をメンテナンス用操作器90により作動させられ、実際に視認しながらメンテナンス作業を行え、点検作業の容易化が図れ、点検作業時間の短縮化も図れ、また、作業人数を少なくでき、一人でも行える。
また、メンテナンス作業用の専用のリモコンを不要にし、リモコン管理の煩雑さを回避し、また、コスト削減にも貢献する。
この場合、操作器90をメンテナンス用操作器90として使用できるのは、コンバイン本機がメンテナンスモードになっている場合とする。
そのため、不用意な操作器90の誤操作を防止し、安全性を向上させられる。
具体的には、操縦部5に設けたメンテナンスモードスイッチ(図示省略)あるいは操作器90のスイッチを特殊な所定操作により、操作器90を横排出オーガ15用とメンテナンス用とに切り替え、各スイッチをメンテナンス用として割り当てられた機能で作動する構成としている。
【0019】
一例を示すと、91は横排出オーガ15用のスイングズームスイッチ、92は同オーガスイッチ 、93は同排出・停止スイッチ、94は同張出・収納スイッチ、95は同伸縮・上下スイッチ、96は同左右旋回スイッチであり、例えば、排出・停止スイッチ93と張出・収納スイッチ94とを同時に所定時間押し続けると、排出オーガ用操作器90からメンテナンス用操作器90に切り替える。
そして、排出オーガ用操作器90となった場合の各スイッチのうちのスイングズームスイッチ91を、メンテナンス用操作器90の刈取装置の刈取搬送装置を駆動する刈取スイッチとし、プラススイッチ95Aとマイナススイッチ95Bとにより増減速する。
そのため、刈取装置の注油や点検を容易に行える。
なお、排出オーガ用操作器90の使用例としては、例えば、スイングズームスイッチ91またはオーガスイッチ92を押すことで、スイッチ95,96の機能が切り替わる構成としている。
即ち、オーガスイッチ92を操作してからスイッチ95を操作すると横オーガ15を上下回動させ、スイッチ96の操作によって横排出オーガ15を左右旋回させる。また、スイングズームスイッチ91を操作してからスイッチ95を操作すると横排出オーガ15が伸縮し、スイッチ96で横排出オーガ15先端をスイングさせる。
【0020】
また、これらの排出オーガ用操作器90の各スイッチのうちオーガスイッチ92を、メンテナンス用操作器90の脱穀クラッチ(図示省略)の脱穀入切スイッチ92Aとする。
そのため、脱穀装置3の点検が簡単容易になる。
また、
排出オーガ用操作器90の左右の左右旋回スイッチ96のうちの一方を、メンテナンス用操作器90の各部の注油を行う注油スイッチ96Aとする。
そのため、刈取装置の刈刃やチェーンの様子を見ながら注油できるため、注油量を適切に行え、刈取装置の注油や点検を容易に行える。
また、排出オーガ用操作器90のオーガスイッチ92を、メンテナンス用操作器90の脱穀クラッチ(図示省略)の脱穀入切スイッチ92Aとする。
そのため、脱穀装置3の点検が簡単容易になる。
また、メンテナンス用として、脱穀装置3のシーブと唐箕を作動させるスイッチとする。
例えば、脱穀スイッチ92Aを押し、脱穀装置3が駆動されている状態で、プラススイッチ95Aとマイナススイッチ95Bとを操作すると、シーブの「開」と唐箕の「増速」またはシーブの「閉」と唐箕の「減速」させる。
【0021】
また、操作器90の排出・停止スイッチ93を、排出オーガ用操作器90のエンジン駆動スイッチ93Aとし、このとき、前記プラススイッチ95Aとマイナススイッチ95Bとがエンジン回転増減スイッチとなる。
そのため、脱穀装置3の点検しているとき、が簡単容易になる。
また、脱穀装置3の後部にカッター(図示省略)を設け、該カッターへの投入口を開閉するカバー(図示省略)を開閉自在に設け、このカバーを開くとカッターを使用状態にし、カバーを閉じるとカッターを不使用状態に切り替える構成とし、このカバーを開閉させるスイッチを、排出オーガ用操作器90の左右の左右旋回スイッチ96のうちの何れか他方とし、排出オーガ用操作器90のカッタノッタ切換スイッチ96Bとなり、排出オーガ用操作器90のスイッチ96と兼用している。
そのため、カバーの開閉の点検を容易にする。
また、排出オーガ用操作器90の張出・収納スイッチ94を、メンテナンス用操作器90の機体を前後進させる走行スイッチ94Aとし、このとき、プラススイッチ95Aとマイナススイッチ95Bが前進と後進スイッチとなる。
そのため、クローラの点検・交換作業を容易にする。
【0022】
(実施例の作用)
エンジン6を駆動して走行装置2により機体を走行させると、刈取装置が穀稈を刈取り、刈取った穀稈を脱穀装置3へ供給して脱穀する。
脱穀された穀粒は、グレンタンク4に一時貯留され、一定量貯留されると、グレンタンク4内のタンク排出装置11を作動させ、タンク排出装置11により搬送された穀粒は排出用縦揚穀装置13の揚穀螺旋により揚穀され、揚穀された穀粒は排出オーガにより軽トラック等の所定のタンクに排出される。
エンジン6の回転は、タンク排出装置11と排出用縦揚穀装置13と横排出オーガ15を駆動して穀粒を排出される。
しかして、穀粒排出作業に際し、タンク排出装置11はエンジン6とは別途設けたモータモータ20の回転を入力して駆動する構成とし、グレンタンク4内の穀粒量に応じてエンジン6とモータ20との駆動を切り替え、モータ20による穀粒排出するときには、エンジン6の回転をアイドリング回転まで低下または停止させるように構成しているので、エンジン6の駆動に要する燃料消費量を減少させられる。
【0023】
具体的には、エンジン6から前記タンク排出装置11の回転軸16の間の伝動経路中にエンジン6とモータ20との駆動を切り替える駆動切換機構21を設けているので、駆動切換機構21の第1ワンウェイクラッチ28Aおよび第2ワンウェイクラッチ28Bの作動により、エンジン6からの駆動回転速度とモータ20からの駆動回転速度とのうちの、他側よりも高速回転となった側の回転によって、駆動側回転体45が駆動され、この駆動回転が、タンク排出装置11と排出用縦揚穀装置13と横排出オーガ15とに伝達されて、穀粒が排出される。
しかして、駆動切換機構21は、グレンタンク4内の穀粒の量を検知する穀粒センサ75により、グレンタンク4内の穀粒の減少(所定量以下であること)を検知すると、前記モータ20を駆動させ、エンジン6からモータ20へ駆動を切り替え、エンジン6の回転をアイドリング回転まで低下または停止させるので、通常、機体走行停止状態で行う穀粒排出作業時の、エンジン6の駆動に要する燃料消費量を減少させられる。
【0024】
この場合、エンジン6とモータ20との駆動の切換のタイミングは、一定時間、エンジン6とモータ20との駆動を併用させた後としているので、エンジン6とモータ20との駆動の切換に伴う急激な負荷の変動を解消し、滑らかな駆動源の切換を行って、切換時の作業者に与える違和感を緩和し、エンジン6とモータ20と駆動切換機構21の破損・故障の原因を除去する。
例えば、通常の刈取脱穀作業中では、エンジン6を定格回転数で回転させ、モータ20への通電は切りとなり、穀粒センサ75によりグレンタンク4内の穀粒が所定量以下であると検知すると、モータ20へ通電するが、直ぐにエンジン6による駆動を伝達を止める切換を行うのではなく、モータ20とエンジン6の両者によって一定時間横排出オーガ15を駆動し、一定時間経過後、モータ20単独の駆動に切り替えるので、滑らかな駆動源の切換となり、駆動源切換時の作業者に与える違和感を緩和する。
さらに、エンジン6の回転数を所謂アイドリング回転に到達するまで低下させた状態で一定時間、エンジン6とモータ20との駆動を併用するので、一層、駆動の切換に伴う急激な負荷の変動を解消し、駆動源切換時の作業者に与える違和感を緩和する。
【0025】
しかして、横排出オーガ15の排出を、諸条件の充足によりモータ20で駆動排出作業中に、主変速レバー変速レバー76の操作を検出すると、モータ20を停止させるので、穀粒排出を停止させる。
そのため、エンジン6よりも排出作業音の低いモータ20の穀粒排出作業中に、作業者がモータ20を停止させたとの勘違いで、モータ20を停止させずに、機体を移動させて、グレンタンク4内の穀粒がタンク外に排出されてしまう穀粒漏れの懸念があるが、本願は、この懸念を防止する。
したがって、誤操作による穀粒漏れを回避し、ロス発生を防止できる。
また、モータ20による穀粒排出作業中に、所定以上の車速を検出すると、モータ20を停止させるので、モータ20による穀粒排出作業続行中の、誤操作による穀粒漏れを回避し、ロス発生を防止できる。
また、モータ20による穀粒排出作業中に、刈取装置による搬送穀稈の存在を検出すると、モータ20を停止させるので、モータ20による穀粒排出作業続行中の、誤操作による穀粒漏れを回避し、ロス発生を防止できる。
【0026】
しかして、モータ20による横排出オーガ15の駆動を、諸条件により停止させる自動停止制御を実行する場合において、横排出オーガ15の位置調節を行うための機体の僅かに移動に対して、自動停止制御条件となる変速レバー76の操作の検出や車速検出や穀稈検出することがあるが、このような場合にも、モータ20の自動停止制御を実行させてしまうと、手順に従って、再び、最初から穀粒排出操作を行うことになり、操作性を著しく低下させることになるが、本願では、駆動停止条件の検出後、所定時間経過するまで自動停止制御の実行を待機するので、横排出オーガ15の位置調節かモータ20の切り操作忘れかを判定して、モータ20の駆動を停止させることができ、穀粒排出の再操作を回避できる。
即ち、モータ20の駆動停止条件の検出後、所定時間経過するまで自動停止制御の実行を待機しても、待機時間は僅かであり、待機時間中に穀粒が漏れることはほとんどなく、例え穀粒漏れが生じても非常に僅かであり、最初から穀粒排出の再操作の煩雑回避を優先させて操作性の低下を避ける。
【0027】
したがって、静穏なモータ20による排出作業による省エネの排出作業としつつ、静穏なモータ20による排出作業ゆえのモータ20の停止操作を忘れて穀粒漏れを防止し、しかも、モータ20の停止自動制御による操作性の低下をも回避でき、省エネ排出作業と穀粒漏れ防止と操作性の項とを両立させられる。
また、モータ20による横排出オーガ15の駆動を、諸条件により停止させる自動停止制御の実行において、駆動停止条件を検出後であって機体の所定距離移動を検出後、モータ20の駆動停止を実行させるので、横排出オーガ15の位置調節中であるか否かを機体の移動距離により判定して、モータ20の停止制御を実行でき、面倒な穀粒排出の再操作を回避できる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0028】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…グレンタンク 、5…操縦部 、6…エンジン 、10…揚穀装置、11…タンク排出装置、12…接続メタル、13…排出用縦揚穀装置、15…横排出オーガ、16…回転軸、20…モータ、21…駆動切換機構、22…エンジンカバー、23…伝動ギヤケース、24…入力プーリ、25…第1入力軸、26…ベアリング、28…ワンウエイクラッチ、29…第1出力軸、30…第1出力ギヤ、33…第2入力軸、35…第2出力軸、36…第2出力ギヤ、37…変速装置、40…出力軸、41…ベアリング、42…ベアリング、43…入力ギヤ、45…駆動側回転体、47…出力軸、48…出力プーリ、49…伝動ベルト、50…テンションプーリ、51…排出クラッチ、52…電動モータ、53…出力軸、54…第1出力プーリ、55…第2出力プーリ、56…第3出力プーリ、57…発電機、58…入力プーリ、59…セルモータ、60…入力プーリ、61…伝動ベルト、65…静油圧式無段変速装置、66…入力プーリ、67…伝動ベルト、68B…ラジエータ、69…冷却ファン、75…穀粒センサ、77…検出部、78…車速センサ、90…操作器、91…スイングズームスイッチ、92…オーガスイッチ、92A…脱穀入切スイッチ、93…排出・停止スイッチ、93A…エンジン駆動スイッチ、94…張出・収納スイッチ、94A…走行スイッチ、95…伸縮・上下スイッチ、95A…プラススイッチ、95B…マイナススイッチ、96…左右旋回スイッチ、96A…注油スイッチ、96B…カッタノッタ切換スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に走行装置(2)を設けた機体フレーム(1)の上方に脱穀装置(3)を設け、該脱穀装置(3)の側方にグレンタンク(4)を設け、該グレンタンク(4)内にはグレンタンク(4)内の穀粒を排出するタンク排出装置(11)を設け、該タンク排出装置(11)の終端には排出用縦揚穀装置(13)の下部を接続し、該排出用縦揚穀装置(13)の上部に横排出オーガ(15)の基部を接続し、前記タンク排出装置(11)の回転を前記排出用縦揚穀装置(13)と前記横排出オーガ(15)に伝達して駆動させる構成とし、前記タンク排出装置(11)は、エンジン(6)および該エンジン(6)とは別に設けたモータ(20)により駆動可能な構成とし、前記グレンタンク4内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出している状態ではエンジン(6)によりタンク排出装置(11)を駆動し、グレンタンク4内の所定の穀粒量を穀粒センサ(75)が検出しない状態ではモータ(20)によりタンク排出装置(11)を駆動する構成とし、前記モータ(20)によってタンク排出装置(11)を駆動している状態では、エンジン(6)の回転をアイドリング回転まで自動的に低下させる制御手段(86)を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記エンジン(6)の回転をアイドリング回転まで低下させ後に、前記タンク排出装置(11)をエンジン(6)による駆動から前記モータ(20)による駆動に自動的に切り替える構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記モータ(20)のみによるタンク排出装置(11)の駆動中に、前記走行装置2の駆動速度を変速する主変速レバー(76)が中立位置以外に操作された場合、前記モータ(20)の駆動を自動的に停止させる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記モータ(20)のみによるタンク排出装置(11)の駆動中に、機体の前後進が検出された場合に、該モータ(20)の駆動を自動的に停止させる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、前記モータ(20)のみによるタンク排出装置(11)の駆動中に、刈取装置による搬送穀稈の存在を穀稈有無感知センサ(80)で検出した場合に、該モータ(20)の駆動を自動的に停止させる構成としたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−90590(P2012−90590A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241974(P2010−241974)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】