説明

コンパクトながら高機能の水中撮影用ストロボ

【課題】超小型で軽量であり、水中撮影に伴う労苦を軽減し、より優れた内容の水中撮影を可能にする水中撮影用ストロボを提供する。
【解決手段】閃光放電管、電源、昇圧回路、コンデンサ、トリガー回路、光量制御回路等を防水函体に収納した水中撮影用ストロボであって、略円柱型の水中撮影用ストロボの内部の略円形縦断面に、略円形のストロボ発光パネルと、略円形の部品回路基板、1枚ないし複数枚とが積層配列されていることを特徴とする、コンパクトながら高機能の水中撮影用ストロボとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中撮影用ストロボの改良に関する。
ダイバーらは、交換レンズ群を選択・装着した一眼レフカメラを防水カメラハウジングに収納した水中カメラを水面下に持ち込み、水中撮影を行うが、水中では、赤い光が水に吸収され青い光が残ってカラーバランスが崩れているうえ、光量が少ないので、ストロボが必須である。
【0002】
水中撮影におけるストロボは、フレキシブルアームを介して水中カメラに取り付けられ使用されるので、スウィングしたアームの先で傾いたまま、略長方形の撮影領域を照射する必要があり、略円形の大きな照射域が必須である。
【0003】
このため、従来の水中撮影用ストロボは、略円形の照射域を得るための大きく複雑なストロボ発光部を備え、大きな照射域を得るための大容量放電用大コンデンサや、大容量充電用大発振トランスを備え、全体の寸法、容積が極めて大きなものとなっている。
【0004】
これに対して、本件発明の超小型の水中撮影用ストロボは、コンパクトながら大光量で、略円形の照射域をもち、小型、軽量で携帯、取り扱いが容易、撮影状況に応じたシステムの組み替えが容易、光軸の設定・確認が簡単、体力・泳力に余裕のないダイバー撮影者も使用可能でシャッターチャンスをとらえやすい、などの特長を備えている。
【0005】
なお、本発明の水中撮影用ストロボと併用されるカメラ類とは、それ自体が防水・耐圧機構を備えた水中撮影用カメラ類はもちろん、防水ハウジングに収納された銀塩写真カメラ、APSフィルム対応カメラ、ディジタルカメラ、ディジタルビデオカメラなどをも含む。
【背景技術】
【0006】
水中撮影におけるストロボSは、図1に示すように、フレキシブルアームMを介して水中カメラCに取り付けられ使用されるので、スウィングしたアームの先で傾いたまま、略長方形の撮影領域を照射する必要があり、略円形の大きな照射域が必須である。(図1参照)
水中カメラ撮影で、ストロボSが、フレキシブルアームMを介してカメラCに取り付け使用される理由は、第1に、水中の微細なプランクトンや砂塵の浮遊物の反射・写り込み(降りしきる雪景色のような写真になってしまう。)を避けるために、ストロボSの発光軸を、カメラCのレンズ系光軸に対してずらす(偏角を設けるとともに、偏位させる)必要があるからであり、第2に、水中撮影時のストロボ光が支配的なので(撮影時の光の殆どすべてをストロボ光にたよっているので)、被写体や構図に応じて、ストロボの位置や向きを自在に変えて、ライティング状態を工夫する必要があるからである。
【0007】
そこで、水中撮影用ストロボは、図1のように、スウィングしたアームMの先で傾いた状態でも、カメラCの略長方形の撮影領域を照射する必要があり、略円形の大きな照射域が必須なのである。
【0008】
このため、従来の水中撮影用ストロボは、略円形の照射域を備えるために、高価で大きな円形曲管の閃光放電管(図2RL参照)や、奥行きの深い大きな反射傘(図3RF参照)や、複雑な光散乱突起プリズムを多数もつ、厚く大きな光拡散パネル(図2下部のDF参照)などが組み込まれ、寸法、容積が極めて大きなものとなっている。
【0009】
図3に示す分解図は、図2下部に示した光拡散パネル付き水中撮影用ストロボの外殻前半部を外して内部の部品構成を見たものである。
大きな直管の閃光放電管(図3SL)が、奥行きの深い大きな反射傘(図3RF)の基底部に挿通されている。そして、その反射傘RFは、ストロボ発光パネルSPの中央部に組み込まれ、閃光放電管SLからの光を、その向きを整えながら前方の光拡散パネルDFの光散乱突起プリズムに導く。
【0010】
光散乱パネルRFの長方形区域に多数配列されたプリズムが、うまく光の照射域を広げるためには、長方形区域の全てのプリズムに、ほぼ真後ろから、向きの整えられた光が入射する必要があり、光拡散パネルDFの背後には、奥行きの深い大きな反射傘RFが必須なのである。
【0011】
しかし、この方式でも、照射域は、せいぜい略楕円形であり、円形の照射域にはなっていない。また、光拡散パネルRFにおけるプリズムの内部反射などの光拡散のロスで、出力される光量が減少してしまう問題もある。
【0012】
また、従来の水中撮影用ストロボは、図3(分解図)に示すように、大きな照射域を得るために、大容量放電用の単一で大きなコンデンサ(図3MC参照)や、大容量充電用の単一で大きな発振トランス(図3TR参照)を備えており、内部の部品配列域が、高密度集積化できない。即ち、無駄な空間を排除して電子部品をきれいにコンパクトに詰め込み、内部支持・連結部材などを省略し、回路基板も小さくして、部品配列域を小さく収めることができない。
【0013】
部品配列が散漫で、内部支持・連結部材など本来必須でない部材が増え、回路基板も大きいために、部品配列域が大きくなり、全体の寸法、容積が極めて大きく、ラグビーボールほどのものとなっている。
【0014】
図3に示す従来技術の具体例では、放電用コンデンサMCは、長尺なので、回路基板SBとともに、略円柱形状のストロボの軸方向に配列されている。また、ストロボ発光パネルSPは、サポート軸SX1、SX2を介して、支持板BBに固定されている。そして、電子部品が広い空間に散漫に配列されているので、回路基板も、それに対応して、大きなものになっている。
【0015】
カメラの方は、エレクトロニクスの進歩や、技術改良の積み重ねで、どんどん小型化が進んでいるのに、水中撮影用ストロボの方は、大きいままであり、そのために、水中撮影システム全体の小型化、軽量化が進展しないままである。
【0016】
最近では、シニアダイバーや、女性ダイバーの比率が高まっており、小型・軽量化した水中撮影システムの実現が、多方面から、強く望まれている。
水中撮影の現場は、水流の流れがあり、足場も悪く、体のバランスも取りにくいので、重く嵩高の水中撮影機材を持ち替えたり、姿勢を変えることは、大変な重労働であり、かつ、細心の注意と配慮を要する作業だからである。
【0017】
我々は、数年来、水中撮影用ストロボの小型化、軽量化に取り組んで研究開発を続けており、水中撮影用ストロボの全ての構成部品・構成要素を白紙に戻して再検討して、開発し直すことにより、超小型で軽量の水中撮影用ストロボを実現することに成功した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述のように、従来の水中撮影用ストロボや、それを組み込んだ水中撮影システムは、嵩高で、重く、撮影現場への携行が重労働であり、水中の撮影現場では、大きくて取り扱いが大変であり、ダイバー撮影者は、水中撮影のために多大な作業と努力を強いられていた。
【0019】
この発明は、上述の問題を解決すべく、超小型で軽量の水中撮影用ストロボを実現するものであり、水中撮影に伴う労苦を軽減し、より優れた内容の水中撮影を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明は、閃光放電管、電源、昇圧回路、コンデンサ、トリガー回路、光量制御回路等を防水函体に収納した水中撮影用ストロボであって、略円柱型の水中撮影用ストロボの内部の略円形縦断面に、略円形のストロボ発光パネルと、略円形の部品回路基板、1枚ないし複数枚とが積層配列されていることを特徴とする、コンパクトながら高機能の水中撮影用ストロボを提供する。
【0021】
また、本発明は、閃光放電管、電源、昇圧回路、コンデンサ、トリガー回路、光量制御回路等を防水函体に収納した水中撮影用ストロボであって、発振トランス、及び/又は、放電用メインコンデンサが、他の電子部品と基板取付け高さが近似し、寸法、容積の小さい複数個の発振トランス、及び/又は、放電用メインコンデンサで構成され、ストロボ内部の部品配列が高密度集積化されており、かつ、急速充電できることを特徴とするコンパクトながら高機能の水中撮影用ストロボを提供する。
【発明の効果】
【0022】
この発明の水中撮影用ストロボは、これまで述べてきたように、コンパクト化の改良・工夫を重ねて、超小型ながら、大光量で、略円形の照射域をもち、急速充電が可能で、小型・軽量で携帯、取り扱いが容易、撮影状況に応じたシステムの組み替えが容易、光軸の設定・確認が簡単、体力・泳力に余裕のないダイバー撮影者も使用可能でシャッターチャンスをとらえやすい、などの数々の特長を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、水中撮影システムの基本構成、水中カメラと、フレキシブルアームMを介して取り付けられるストロボを示す。
【図2】図2は、従来の、水中撮影用ストロボの具体例を示す。図2上部は、従来の、大円形曲管の閃光放電管を備えた水中撮影用ストロボの具体例を示す。図2下部は、従来の、複雑な光散乱突起プリズムを多数もつ、光拡散パネルを備えた水中撮影用ストロボの具体例を示す。
【図3】図3は、従来の、奥行きの深い大きな反射傘をもつストロボ発光パネルを備えた水中撮影用ストロボの分解図を示す。第2図下部の、複雑な光散乱突起プリズムを多数もつ、光拡散パネルを備えた水中撮影用ストロボに対応しており、その内部構造を示す。
【図4】図4は、本発明の実施態様の、直管式発光管の発光ユニットのT字配列によるストロボ発光パネルの様子を示す。
【図5】図5は、本発明の実施態様の、直管式発光管T字配列のストロボ発光の照射域の様子を示す。
【図6】図6は、本発明の、略円形縦断面に略円形回路基板を積層配列した、コンパクトながら高機能の水中撮影用ストロボの縦断面図を示す。
【図7】図7は、本発明の別の実施態様の、複数の小型発振トランスの併用による発振・充電回路を示す。
【図8】図8は、従来の、TTL自動調光撮影対応の水中ストロボの、撮影モード切替えに関する回路構成を示す。TTL自動調光撮影、マニュアル発光撮影の切替えに関わるスイッチ類は、複数個必要となっている。
【図9】図9は、本発明の別の実施態様の、TTL自動調光撮影対応の水中ストロボの、撮影モード切替えに関する回路構成を示す。TTL自動調光撮影、マニュアル発光撮影の切替えに関わるスイッチ類は、一つで充分であり、撮影モード切替えスイッチSW2が、積分回路とTTL信号回路の出口側、即ち、信号出力側に敷設された例である。
【図10】図10は、本発明の別の実施態様の、TTL自動調光撮影対応の水中ストロボの、撮影モード切替えに関する回路構成を示す。TTL自動調光撮影、マニュアル発光撮影の切替えに関わるスイッチ類は、一つで充分であり、撮影モード切替えスイッチSW2が、積分回路とTTL信号回路の入口側、即ち、信号入力側に敷設された例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この出願の発明の実施態様の水中撮影用ストロボSSは、図4に示すように、ストロボ発光部SPが、直管の閃光放電管を反射傘で覆った小型の発光ユニット、複数個を、略T字型(或いは、略L字型)に配列して、構成されており、コンパクトながら大光量で、略円形の照射域をもつものである。(図4参照)
直管式発光管T字配列による照射域は、大きなT字型領域にすぎず、略円形の照射域はできないとの錯覚も起きるが、実験によれば、ほぼ完全な円形照射域が実現できる。(図5参照)これは、コロンブスの卵のような発見でもある。
【0025】
図5に示すように、直管式発光管発光ユニットF1、F2のそれぞれが、完全に真正面を照らし出せば、各々の長円型照射領域Z1、Z2は、交差しつつほぼ重なるので、実質的に、ほぼ円形の照射域が実現出来る訳である。
【0026】
厳密な光線幾何学によれば、直管式発光管発光ユニットF2の発光中心軸は、F1の発光中心軸よりも1〜2cm下にずれているので、長円型照射領域Z2の中心は、Z1の中心よりも下に1〜2cmずれているが、数mの照射域からすれば、そのようなズレは、無視できる程度のものであり、水中実験でもそのとおりであった。また、直管式発光管T字配列による照射域は、実験では、殆ど円形であった。直管式発光管L字配列による照射域も、同様の仕組みで、略円形の照射域が実現できる。また、略T字型(或いは、略L字型)を複数配列して、さらに大光量の照射域をもつストロボも構成できる。
【0027】
本件発明の実施態様のストロボ発光パネルSPに配設される小型発光ユニットF1は、単純な直管の閃光放電管SL1を簡単な反射傘RF1で覆った構成のものであり、地上用のカメラの汎用の発光ユニットがそのまま転用できる。
【0028】
即ち、直管の閃光放電管SL1、SL2は、相互に共同して光量も高まるので、図2下部ないし図3のような大きな直管は必要でなく、コンパクトなもので良いから、ストロボ発光パネルSPが小さく出来る。
【0029】
また、無理に光照射域を円形にシフトさせる必要がないので、前方に、光拡散パネルDFや、光散乱突起プリズムを設ける必要が無く、小型化・軽量化が図れる。
【0030】
そして、ストロボ光の向きをそろえながら、光拡散パネルDFの光散乱突起プリズムに光を導く必要が無いので、奥行きの深い大きな反射傘は必要でなく、小型の奥行きの浅い反射傘で充分である。
【0031】
結局、本件発明の実施態様で使用する発光ユニットは、地上用のカメラで汎用のコンパクトな直管の閃光放電管SL1を、小型で奥行きの浅い普通の反射傘RF1に挿通させた、小型・軽量のもので良い訳である。
【0032】
このような地上用のカメラで汎用のコンパクトな発光ユニットは、高性能で安定した品質のものが安価に調達して使用できるので、本件発明の水中撮影ストロボは、極めて高性能、高品質でありながら、超小型で、しかも、廉価なものとなり、産業上の意義も大きい。
【0033】
もちろん、複数の反射傘を含むストロボ発光パネルSPを、樹脂や金属類で一体的に成形して、部品点数を低減し、組立工数を減らすこともできる。しかも、閃光放電管を複数同時に使用することで、大電力の入力による負荷や放熱も、複数に分散されるので、閃光放電管の寿命が長くなり、また、繰り返し発光の間隔を短くする設定でも、耐久性に問題が生じない。
【0034】
このようなストロボ発光パネルSPの小型化は、光拡散パネルDFの省略等による光効率の向上をもたらすので、放電用メインコンデンサや、発振トランスへの要求条件も緩和され、さらなる小型化を可能にする。(なお、我々は、光散乱突起プリズムをもつ光拡散パネルの存在理由を完全に否定するものではない。たとえば、コスト制約等を無視して、完全な円形照射域を持たせようとする場合には、図5に示す発光ユニットF1、F2の端部のみに、光散乱突起プリズムを当接させた構造をつくり、照射域の端部のみを拡散させれば、配光特性はさらに改善され、ほぼ完全な円形照射域をもつストロボが実現できる。)
本件発明は、略円柱型の水中撮影用ストロボの内部の略円形縦断面に、略円形のストロボ発光パネルと、略円形の部品回路基板、1枚ないし複数枚とが積層配列されて、部品配列が高密度集積化され、コンパクトな外形ながら、大光量で、略円形の照射域をもつ、水中撮影用ストロボである。
【0035】
従来の水中撮影用ストロボの内部部品構成は、図3(分解図)の従来技術の欄に示したように、電子部品が広い空間に散漫に、色々な方向に分散して配列されており、回路基板も、それに対応して、大きなものになっている。
【0036】
また、部品配列が散漫で、回路基板も大きいために、回路基板とは別に、部品相互を内部で支持・連結する部材、支持板BBや、サポート軸SX1、SX2等も必要とされ、本来必須でない部材が増え、部品配列域がさらに大きくなる、という悪循環になっている。
【0037】
我々は、部品配列や、部品選択の工夫を重ねて、試行錯誤の結果、水中撮影用ストロボの内部の略円柱型空間を 円形縦断面の部品配列プレートの積み重ねとして整理し、略円形のストロボ発光パネルと、略円形の部品回路基板、1枚ないし複数枚との積層配列とすると、結果として、部品配列が高密度集積化され、しかも、部品相互の支持・連結部材も省略でき、コンパクトな外形ながら、大光量で、略円形の照射域をもつ、水中撮影用ストロボが得られることを見出した。
【0038】
即ち、平面的に部品が緻密に配列固定された略円形で縦断面とほぼ同じ大きさの回路基板を、略円形でやはり縦断面とほぼ同じ大きさのストロボ発光パネルとともに、1枚ないし複数枚、積層配置すれば、全く空間に無駄がないので、ストロボ内部の部品収容スペースをコンパクトに圧縮でき、結果として、極めて短い円柱外観の水中撮影用ストロボが得られる訳である。(図6参照)
その際、電源バッテリー収納ケースや、コンデンサ等収まりの悪い部品類がある場合は、それらを略円柱状部品配列空間の周縁に配置すれば、全体として、部品の高密度集積化は達成できる。
【0039】
図6の実施例では、電源バッテリー収納ケースBTSが、ストロボの周縁部に偏在され、ストロボ内部空間の殆ど全ては回路部品の配列、収納に活用されており、コンデンサは、ストロボ発光パネルと部品回路基板との間に配置され、略円形縦断面の回路基板を中心に、部品配列の高密度集積化が図られている。
【0040】
そして、ストロボ円柱外形は、単三電池に近く、極めて短い。しかも、電源バッテリー収納ケースBTSの外側殻BTS−Hは、ストロボ外周壁と共通化されているので、図3の従来例(図3のBT参照)に比して、省資源化も図られ、軽量化にもなっている。また、ストロボ発光パネルSPは、全体が、円形縦断面と同じ大きさの薄い円形プレート形状になっているので、回路基板SB2との間に無駄な空間なく収まっており、支持板や、サポート軸等の支持・連結部材も省略できている。
【0041】
なお、電源バッテリーの配設は、図6の方式に限られるものではなく、周方向に4本並列にフラットに配設したり、断面方向に配列させたりすることもできる。また、ストロボ内部の略円柱形状の部品収容スペースに、スペース効率を損なわない範囲で、電池バッテリー収納部をめり込ませて、一部切り欠きの円形回路基板を積層配置する等の工夫もできる。
【0042】
また、図2に示したような従来型のストロボ発光パネルを組み合わせ使用した場合でも、略円形縦断面の回路基板を中心にした部品配列の高密度集積化の効果として、かなりのコンパクト化が図られている。
【0043】
本件発明の別の実施態様の水中撮影用ストロボは、さらに、発振トランスや放電用メインコンデンサが、寸法、容積の小さい複数個の部品で構成され、ストロボ内部の部品配列が高密度集積化されている。
【0044】
従来の水中撮影用ストロボの内部部品構成は、図3(分解図)の従来技術の欄でも示したように、大きな照射域を得るために、大容量放電用の単一で大きなコンデンサ(図3MC参照)や、大容量充電用の単一で大きな発振トランス(図3TR参照)を備えており、内部の部品配列域が、高密度集積化できず大きいために、全体の寸法、容積が極めて大きく、ラグビーボールほどのものとなっている。
【0045】
円形照射のため、殆どの水中撮影用ストロボは、正面に、円形のストロボ発光パネルSPを持っており、全体形状は、略円柱状である。そして、メインコンデンサMCは、長尺で太いので、略円柱形状の水中撮影用ストロボの断面円形の中に収まらないので、円柱軸方向に配設されている。このため、ストロボは、長い円柱に成ってしまっている。
【0046】
しかも、その大容量メインコンデンサMCを急速に充電するために、大きな発振トランスTRが、回路基板に載るので、回路基板の周り、特に、上部には、大きな空間が必要である。また、ストロボ発光パネルSPは、サポート軸SXを介して、支持板BBに固定されている。そして、電子部品が広い空間に散漫に配列されているので、回路基板も、それに対応して、大きなものになっている。
【0047】
部品配列が散漫で、内部支持・連結部材など本来必須でない部材が増え、回路基板も大きいために、部品配列域が大きくなり、全体の寸法、容積が極めて大きく、ラグビーボールほどのものとなっている。
【0048】
これらの理由から、従来の水中撮影用ストロボは、内部の部品配列域が、高密度集積化できず大きいために、全体の寸法、容積が極めて大きく、ラグビーボールほどのものとなっていた。
【0049】
そこで、我々は、ストロボ発光パネルSPの小型化により成し得た小型化へのアドヴァンテージをさらに押し進めるために、内部の部品配列域の小型化、高密度集積化についても、研究を進めた。
【0050】
幾つかの試行錯誤の研究で得られた結論は、大容量コンデンサや、大型発振トランスを単一のものから、寸法、容積の小さい複数個の部品に置き換えれば、機能低下なく、内部の部品配列の自由度が大きくなり、結果として、部品を高密度に集積して配列させることができ、大幅な小型化が達成できるということである。
【0051】
放電用メインコンデンサでは、従来、330V、1000マイクロFの大型コンデンサ(直径約3cm、長さ約7cm)が使われていた(図3のMC参照)が、500マイクロFの小型コンデンサ(直径約2cm、長さ約4.5cm)、2個(図6のMC1、MC2参照)に置換することができ、ストロボ内径に合わせた第1円形回路基板(直径約6.5cm)SB1に、余裕を持って、取り付けることが出来る。(図6参照)
コンデンサ本体を基板に寄り添うように横倒しにして、その足をL字型に曲げて回路基板に直接に組み付けることもできるし、絶縁材や緩衝材を挟んで、回路基板等の間に挟み込むような支持の仕方もあり、適宜工夫できる。
【0052】
メインコンデンサが、略円柱状の水中撮影用ストロボの長手軸方向ではなく、断面方向となり、円形基板上に配設できたことで、ストロボに必要な長さは、一気に短くなった。(円柱外形の短縮化の制約は、コンデンサの長さ7cm+アルファではなく、NiCd単三電池の長さ、4.8cmとなった。)
なお、図6の具体例においては、TTL自動調光の表示灯A−LED、充電完了の表示灯R−LED、電気信号ケーブルの接続端子EWJ、光信号ケーブルの接続端子PWJ等が、コンパクトなストロボの外部表面に、高密度に配設されている。
【0053】
発振トランスでは、従来、大容量コンデンサを急速に充電できるようにと、比較的大型のトランスEE−19型(高さ約2cm)が使われていた(図3のTR参照)が、小型トランスEE−13型(高さ約1.2cm)、2個(図6のTR1、TR2参照)に置換することができ、ストロボ内径に合わせた第2円形回路基板(直径約6.5cm)SB2に、余裕を持って、取り付けることが出来る。このトランスを使用すると、他の電子部品と高さが揃い、回路周りに無駄な空間が少なくなり、高密度集積化ができる。(図6参照)
さらに、副次的な効果として、充電時間の短縮化も実現できた。
【0054】
従来の発振トランスEE−19型で、NiCd単三電池4本を電源として、330V、1000マイクロFの大型コンデンサを、50Vから260Vまで充電する場合、約3秒かかったが、小型トランスEE−13型2個TR1、TR2で同様の条件での充電時間は、約2.4秒となり、短縮できた。
【0055】
小型トランスEF−13型 2個TR1、TR2を、2個の並列の発振トランジスタとともに、図7に示すような回路構成で並列に使用したので、トランスのコイルの合計抵抗が減り、銅損が減り、大きな電流を流すことが出来、その結果、充電時間の短縮化が実現したと考えられる。(図7参照)
水中撮影では、海況や、被写体の状況変化が早いので、シャッターチャンスも短いから、素早く的確な判断をして、機敏に撮影する必要があり、水中ストロボで、充電時間が短いことは、重要なポイントであり、大きな特長となる。
【0056】
本件発明の別の実施態様の水中撮影用ストロボでは、ストロボのオートとマニュアル切り替えのスイッチ類の削減、小型化等によるストロボの小型化を図る。
従来のTTL自動調光撮影対応の水中ストロボには、撮影モード切替えスイッチ(図2の上部SW2参照)に、TTL自動調光撮影の他にも、マニュアル・フル発光撮影、マニュアル・1/2発光撮影などのマニュアル撮影用の可変光量設定が設けられている。
【0057】
そして、その回路は、図8に示すように、TTL自動調光撮影のための発光停止信号出力部(図8の25等)、TTL自動調光撮影の完了を報知する調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路(図8の27等)などTTL関連回路を中心に構成され、使用頻度の低いマニュアル撮影関連回路(図8の右端、50)は、中心回路部(図8の中央部と左側)に対して付加的に設けられている。そして、両者の境界部に位置するモード切替えスイッチ(図8のSW2)によって、撮影モードに応じた回路切替えをしている訳である。
しかし、厳密には、境界部の切替えスイッチSW2だけでは、オートとマニュアルの回路切替えは、不充分である。
【0058】
その理由は、ストロボ発光・中途停止に関わる制御素子IGBT(インシュレーテッド・ゲート・バイポーラ・トランジスタ、図8の26)由来の信号が、TTL自動調光撮影のみならず、マニュアル・1/2発光撮影などの場合にも、調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路(図8の27)に伝わって、TTL自動調光撮影完了の表示灯(図8の28、図2上部のA−LED)を点灯させてしまうからである。
【0059】
そこで、境界部のモード切替えスイッチ(図8のSW2)に加えて、調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路(図8の27等)のオン・オフ切替えスイッチ(図8のSW3)を設けて、TTL自動調光撮影の完了時のみ調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路(図8の27等)が働き、TTL自動調光の表示灯(図8の28、図2上部のA−LED)が本来点灯すべきタイミングのときのみ、点灯するように工夫している。
【0060】
なお、図2上部に示すように、調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路のオン・オフ切替えスイッチ(図8のSW3)は、モード切替えスイッチ(図8のSW2)と重ねて一体化され、複層多連結のロータリー操作スイッチ(図2上部のSW2の如く、外観上は、単一の操作スイッチのように見える)として構成される場合が多い。この複層多連結のロータリー操作スイッチは、ストロボ外表面の設置場所は小さくて良いが、ストロボ内部の部品配列空間に大きく突出して、内部空間を占有するので、ストロボの小型化にとっては、大きな課題である。
【0061】
説明が長くなったが、要するに、従来のTTL自動調光撮影対応の水中ストロボでは、電源オン・オフスイッチ(図2上部のSW1参照)、撮影モード切替えスイッチ(図8のSW2)に加えて、調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路のオン・オフスイッチ(図8のSW3)が必要な回路構成に成っており、スイッチ類の削減、小型化が必要である。
【0062】
そこで、本件発明の別の実施態様では、図9、図10に示すように、調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路のオン・オフスイッチ(図8のSW3)が不要な回路構成を実現して、スイッチ類の削減、小型化を可能にしている。(図9、図10参照)
即ち、撮影モード選択スイッチの回路切替え操作で、いずれか片側がアクティブになる様切替え出来る、TTL撮影制御回路部と、マニュアル撮影制御回路部とに、それぞれに、発光・中途停止・信号出力部が付設されており、TTL撮影制御回路部に付設の発光・中途停止・信号出力部のみが、調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路と接続され、TTL自動調光撮影完了時のみ、発光・中途停止の信号が、調光確認信号回路に伝達され、表示灯が点灯する様に回路構成された、コンパクトな水中撮影用ストロボである。
【0063】
TTL自動調光撮影の完了時のみ、調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路(図9、図10の27等)が働き、TTL自動調光の表示灯(図9、図10の28、図6のA−LED)が点灯するように工夫されている。
【0064】
図9の回路は、撮影モード切替えスイッチSW2が、積分回路とTTL信号回路の出口側、即ち、信号出力側に敷設された例である。撮影モード切替えスイッチSW2が、TTLになっている場合には、カメラ側のシャッターボタン全押し、X接点オンに連動するトリガースイッチTSWがオンされると、トリガー回路18が働き、閃光発光管19は、コンデンサMCの電力を使って発光しだす。
【0065】
カメラ側から、TTL自動調光撮影での露光が満たされたことを報知する信号、TTL−Cが出力されると、端子23経由でストロボ側に伝達されるので、発光停止信号出力部(図8の25等)の働きで発光が停止し、TTL自動調光撮影の完了を報知する調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路(図8の27等)も動作して、TTL完了表示灯が点灯する。
【0066】
撮影モード切替えスイッチSW2が、マニュアル・1/2になっている場合には、カメラ側のシャッターボタン全押し、X接点オンに連動するトリガースイッチTSWがオンされると、トリガー回路18が働き、閃光発光管19は、コンデンサMCの電力を使って発光しだす。この過程は、TTL撮影モードと同様である。
【0067】
発光開始と同時に、ゲート電圧信号回路35により、図9右側の積分回路の動作がスタートする。発光開始からしばらくして、フル発光の半分の発光量になると、回路内のトランジスタTRRにかかる電圧が、TRRの動作電圧にまで上昇するので、ストロボの発光を停止すべく働き、ストロボ内の光量制御回路の働きで、発光は停止し、やがて、マニュアル撮影も終了する。この場合には、TTL自動調光撮影に係る調光確認信号部即ち調光確認信号発生回路27は動作せず、TTL完了表示灯も点灯しない。
【0068】
図9の回路構成であれば、撮影モード切替えスイッチSW2の切り替えだけで、以上のような完全なTTL撮影モードと、マニュアル撮影モードが実現できる。
【0069】
この回路構成で、切替えスイッチ類を削減し、ストロボ外表面の設置場所が節約できるとともに、切替えスイッチ部品を小型化し、ストロボ内部の部品配列空間を小さくできる。
【0070】
また、この回路の切替えスイッチ類の削減・小型化の工夫と、先に述べた実施態様のストロボ発光パネルの工夫を組み合わせれば、コンパクトながら、略円形で大光量の照射域をもつ、高機能の水中撮影用ストロボとなることは、これまでの説明から明らかである。
【0071】
この回路の切替えスイッチ類の削減・小型化の工夫と、先に述べた本件発明の部品回路基板等の積層配列の工夫を組み合わせれば、よりコンパクトで、高機能の水中撮影用ストロボとなることは、これまでの説明から明らかである。
【0072】
さらに、この回路の切替えスイッチ類の削減・小型化の工夫と、先に述べた実施形態のコンデンサや、トランス等主要部品の小型化・複数化の工夫を組み合わせれば、コンパクトながら、大光量の照射域をもち、かつ、充電時間の短い、高機能の水中撮影用ストロボとなることは、これまでの説明から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閃光放電管、電源、昇圧回路、コンデンサ、トリガー回路、光量制御回路等を防水函体に収納した水中撮影用ストロボであって、略円柱型の水中撮影用ストロボの内部の略円形縦断面に、略円形のストロボ発光パネルと、略円形の部品回路基板、1枚ないし複数枚とが積層配列されていることを特徴とする、コンパクトながら高機能の水中撮影用ストロボ。
【請求項2】
閃光放電管、電源、昇圧回路、コンデンサ、トリガー回路、光量制御回路等を防水函体に収納した水中撮影用ストロボであって、発振トランス、及び/又は、放電用メインコンデンサが、他の電子部品と基板取付け高さが近似し、寸法、容積の小さい複数個の発振トランス、及び/又は、放電用メインコンデンサで構成され、ストロボ内部の部品配列が高密度集積化されており、かつ、急速充電できることを特徴とする、コンパクトながら高機能の水中撮影用ストロボ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−33074(P2010−33074A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256044(P2009−256044)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2000−42046(P2000−42046)の分割
【原出願日】平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願人】(595132061)有限会社イノン (6)
【出願人】(591012705)
【Fターム(参考)】