説明

コンパクト高温高圧水マイクロ反応装置

【課題】コンパクト高温高圧水マイクロ反応装置を提供する。
【解決手段】0超〜1秒以下の超高速加熱・冷却が可能でマイクロリアクターを内蔵する、コンパクトサイズの小型高温高圧水マイクロ反応装置であって、送液部、混合物、加熱部、マイクロリアクターから構成される反応部、冷却部、及び運転制御部を有し、マイクロリアクターが、複数連絡可能なマイクロリアクター・ユニット、あるいはマイクロチューブの表面にコイルヒーターを巻き付けたコイルチューブで構成されていることを特徴とする小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【効果】水媒体による環境に優しい高効率プロセスを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧水マイクロリアクター装置に関するものであり、更に詳しくは、大型の高温高圧水反応装置を小型化することを実現した新しいコンパクト高温高圧水マイクロ反応装置に関するものである。本発明は、超臨界水を含む高温高圧水を利用した化学合成法に好適に使用することができる超小型高温高圧水マイクロ反応装置を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超臨界水等の高温高圧水を利用して、各種有機化合物を合成する有機反応例が種々報告されており、例えば、超臨界水を使用して、ε−カプロラクタム、プロパノール、ピナコロン又はピナコリン、アルコール及びカルボン酸、シクロヘキサン、安息香酸、フェノール、アミノ酸(β−アラニン等)、アクロレイン、アミド(N−アシル化)、ニトロ化合物、ハロゲン化物の脱ハロゲン化物、オレフィンの環化化合物等の合成法が提案されている(特許文献1〜10)。
【0003】
これらの有機反応例は、従来の大型の高温高圧水反応装置を利用してバッチ方法で実施されたものが多く、例えば、合成ステップ数が多く、低コスト化に壁があり、目的化合物の大量かつ安定供給に難があり、合成に非常に多くの時間が掛り、精密な反応制御、副反応の抑制、多品種少量生産等が難しい、といった問題があり、当技術分野においては、それらの改善が強く要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−062342号公報
【特許文献2】特開2009−062341号公報
【特許文献3】特開2008−292018号公報
【特許文献4】特開2009−132663号公報
【特許文献5】特開2008−255015号公報
【特許文献6】特開2008−128255号公報
【特許文献7】特開2007−330964号公報
【特許文献8】特開2007−291096号公報
【特許文献9】特開2007−297338号公報
【特許文献10】特開2007−269766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、1)精密な反応制御、副反応の抑制、2)触媒(貴金属等)の低減、保護基修飾の省略、界面活性剤の低減、分離の簡素化、3)環境に優しい高効率プロセスの構築、等を可能とする新しい小型連続合成装置を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、高温高圧水マイクロリアクター反応場を用いる小型連続合成装置を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、高温高圧水マイクロリアクター反応場を用いる小型連続合成装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、精密な反応制御、副反応の抑制、触媒(貴金属等)の低減、保護基修飾の省略、界面活性剤の低減、分離の簡単化等を実現することを可能にすると共に、環境に優しい高効率のプロセスの構築を可能とする新しい超小型高温高圧水マイクロ反応装置を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、省電力デスクトップ・ファクトリーであって、オンサイド・オンデマンド製造、高付加価値の少量・多品種物質の製造を可能とする連続高温高圧水マイクロ反応装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)0超〜1秒以下の超高速加熱・冷却が可能でマイクロリアクターを内蔵する、コンパクトサイズの小型高温高圧水マイクロ反応装置であって、送液部、混合物、加熱部、マイクロリアクターから構成される反応部、冷却部、及び運転制御部を有し、マイクロリアクターが、複数連絡可能なマイクロリアクター・ユニット、あるいはマイクロチューブの表面にコイルヒーターを巻き付けたコイルチューブで構成されていることを特徴とする小型高温高圧水マイクロ反応装置。
(2)上記マイクロリアクターが、基材にマイクロサイズの流路径からなるチューブ状の溝を形成して構成したマイクロチューブを有するマイクロリアクター・ユニットを基本単位として複数連結した構成を有し、流路長さが調節可能である構造を有する、前記(1)に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
(3)マイクロリアクターの全部又は部分を、当該マイクロリアクターに対して加熱可能に設置した加熱温度条件を全部又は部分的に可変可能に設定できる加熱部で加熱するように構成した、前記(1)又は(2)に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
(4)上記超高速加熱・冷却が、0.01秒以下の超高速加熱・冷却である、前記(1)又は(2)に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
(5)上記運転制御部が、小型PCから構成されている、前記(1)に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
(6)上記冷却部が、空冷式クーラーから構成されている、前記(1)に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
(7)上記混合部が、マイクロミキサーから構成されている、前記(1)に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
(8)上記送液ポンプが、シリンジポンプ又はレシプロポンプである、前記(1)に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【0008】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の小型高温高圧水マイクロ反応装置は、送液部、混合部、加熱部、マイクロリアクターから構成される反応部、冷却部、圧力制御部、及び装置の運転制御部の各部から構成され、これらは、1m以下のコンパクトパッケージにまとめられ、家庭用100Vコンセントから電源を得て運転することが可能であり、消費電力は2000Wh以下であることを特徴とするものである。コンパクトサイズや電源及び消費電力は、これらと同等の範囲で、適宜設計及び変更することができる。
【0009】
本発明のコンパクト高温高圧水マイクロ反応装置の仕様例及び製作例について説明すると、装置の概要としては、本装置は、ポンプ3台、加熱部、マイクロリアクターから構成される反応部、冷却部、圧力制御器、装置の運転制御部を、すべてワンユニットに収納させたコンパクト高温高圧水マイクロ装置であり、サイズは、W500×H350×D450のコンパクトな装置が例示される。表示・各部のコントロールは、ノート型パソコンで行うことができる。ポンプ3台は、メンテナンス性を考慮して、手前に引き出せる構造とすることが好ましい。加熱部とマイクロリアクターから構成される反応部は、操作性とメンテナンス性を考慮して、これらを一体的配設したコンパクト断熱ユニットに納めることができる。
【0010】
次に、ポンプ部の特徴について説明すると、装置内に、ポンプ3台を無理なく配置を行うために、高機能で、コンパクトな3ヘッド形式のポンプが例示される。一般的な2ヘッド形式のポンプは、吐出側の脈動を抑えるためのカムの構造から、モーターへの負荷変動が大きくなる。本発明の装置のような高圧が要求された装置では、通常の場合、どうしても、強力なモーターが必要となり、結果として、ポンプの大型化が避けられない。
【0011】
これに対して、3ヘッド形式のポンプは、負荷変動が小さく、小型化に適している。脈動についても、ヘッド1個の波形は、サイン波に類似し、3つのヘッドが120°の位相差で送液を行うため、元々、脈動は非常に小さなものとなる。この資質に加え、高機能ダンパーを組み合わせることによって、吐出側の脈動は、高圧域では2〜3%以下になる。更に、3ヘッド形式の波形は、吸入側でも吐出側と全く同一であり、吸い込み側も低脈動での連続吸入が可能である。
【0012】
本発明の装置では、メンテナンス性についても十分な配慮を行った構成としている。ポンプの消耗品として、交換の機会の最も多いものは、プランジャーシールである。そこで、本ポンプは、ヘッドを外せばすぐにシール部分が露出し、ユーザーにも非常に交換が容易な構成とすることが好ましい。また、シール材質についても、高密度ポリエチレンもしくはカーボングラファイト入りテフロン(登録商標)など、使用溶媒に対して、最適の耐久性を有するものが例示される。
【0013】
チェック弁については、吸入側/吐出側それぞれ2段とし、ヘッド間の機差の解消と、1段目が不具合を生じても、2段目の機能を確保できるようにし、万が一のトラブルに対応できるようにする。このように、本発明では、好適には、ポンプを3ヘッドポンプで構成する。
【0014】
次に、加熱部について説明すると、小型加熱ヒーターとして、小型高性能なカートリッジヒーターを用いた小型加熱ヒーターが用いられる。マイクロチューブを上下方向から確実に固定させて、マイクロチューブと加熱金属を密着させて熱伝導効率を向上させる。カートリッジヒーターは、高温タイプ(最高使用温度850℃)を5本使用することが好ましい。昇温と冷却を考慮して、熱容量の少ない設計とし、サイズは9cm×15cm×3cmとして、より小型にすることが好ましい。
【0015】
加熱ヒーターとマイクロヒーターは、ステンレス製(内部はセラミックスフファイバー)の断熱ボックス内に入れる。耐薬品性等を考慮して、表面部はステンレス製を採用する。また、内部冷却時に内部雰囲気を空冷冷却のファンを利用して外に逃がす方法が用いられる。
【0016】
小型マイクロヒーターとして、小型加熱ヒーターと同様な構造を採用する。昇温と冷却を考慮して、熱容量の少ないものとし、サイズは3.6cm×7.6cm×2cmとする。モジュール化して、同じものを繋ぎ合せるだけで、反応長さを容易に変えられる構造が用いられる。
【0017】
4方向継手として、基本的には、例えば、スウェージロック社製の継手を使用するが、より省スペース、効率的に混合・温度測定をするために、変則4方向継手が用いられる。冷却部として、小型・省エネルギーを考慮して、アルミ合金板+アルミ製ヒートシンク+冷却ファンを組み合わせた、小型空冷式冷却器が用いられる。サイズは10cm×20cm×10cmとして、ファンは、例えば、4個使用して、風量4m/minの能力を有するようにする。
【0018】
圧力調整部の特徴としては、小型で強力なソレノイドバルブを使用した圧力調整弁が用いられる。圧力センサーからの信号をフィードバックし、ニードル弁をソレノイドで高速で動作させつつ、圧力を設定圧に保つ。ニードルの先端は、フラットシールとし、生成された固形物によるリークを最小に抑える。
【0019】
生成された合成物を、よどみなく外部に取り出すために、弁内部のデッドボリュームは可能な限り最小に抑える。圧力センサーについても、内部容量4μl以下のセンサーを用意し、一般的なセンサー部にありがちなコンタミネーションを排除する。
【0020】
装置の運転制御部の特徴としては、制御のフレキシビリティさを考慮して、ノートPCによる制御が用いられる。PCからの通信は、USBケーブルで行い、装置本体に制御を振り分けるマイコンボードを内蔵する。操作画面のイメージは、流路の全体を表示し、各機能部分の近傍には流量/温度等のリアルタイム表示を行う。数値の設定時には、各ユニットのアイコンをクリックすると、ポップアップメニューが開き、入力画面となる。
【0021】
また、各流量/温度等の表示は、データとしてPCに取り込み、グラフや数値での表示も可能とする。取り込みインターバルは、10秒単位、最大12時間の連続取り込みが可能である。流路のつまりなどのトラブル発生時には、P1〜P3の各ポンプに圧力上限リミッターを設け、設定圧力を超えた場合には、ポンプは停止する。また、PC上の任意のキーを非常停止ボタンとして設定し、装置に異常が生じた場合には、ポンプ/ヒーターを含めたP1を除く全ユニットを強制停止する。P1のみは、系全体の冷却を行うため除外する。
【0022】
本発明の高温高圧水マイクロ反応装置の高温高圧水−マイクロ空間協奏的反応場システムについて、概念的に説明すると、図1に示される通り、従来の化学的反応制御(錯体触媒)、生物学的反応制御(酵素等)に対して、本発明の装置では、ハード及びソフト融合による反応制御及び反応活性種の生成と反応を行うこと、迅速かつ精密な温度・圧力・時空間制御により効率的かつ理想的に物質合成すること、が可能であり、本発明の高温高圧水マイクロ反応装置を用いることにより、μ秒オーダーの温度・圧力制御により、化合物Aを目的物質Bに変換することが可能である。
【0023】
本発明の装置を用いることにより、図2の超高速加熱・冷却(0.01秒オーダー)が可能な反応温度プロファイルに示されるように、バッチ式を流通式に変えることで、1)精密な目的反応の制御と、副反応の抑制、2)触媒(貴金属等)の低減、保護基修飾の省略、界面活性剤の低減、分離の簡単化、等を可能とする、水媒体による環境に優しい高効率プロセスの構築が可能である。
【0024】
次に、本発明の高温高圧水マイクロ反応装置のコントロール系のフロー図を図3に示す。図3の装置コントロール系フロー図において、ノートPCのキーにより、流量設定(P1、P2、P3)、リミッター圧力設定(P1、P2、P3)、動作圧力設定(V1)、温度設定(H1、H2、C1)、を実行し、圧力表示(V1、P1、P2、P3)、温度表示(H1、H2、C1、T1、T2、T3)、ヒーター/ブロック温度表示(H1、H2、C1)、を確認する。
【0025】
次に、本発明の高温高圧水マイクロ装置全体のフロー図を図5に示す。本発明の装置は、高温高圧水用ポンプ、基質用ポンプ、及び他の基質用ポンプと、当該高温高圧水用ポンプの下流に急速昇温用の小型加熱ヒーターを有し、これらの混合物をマイクロリアクターから構成される反応部に導入し、当該マイクロリアクターにおいて、所定の反応を実施し、反応生成物を空冷式小型クーラーで急速冷却し、反応物を回収する。本発明の装置は、特に、小型高温高圧水マイクロ反応装置を構築する上で必要とされる特定のマイクロリアクターを構築することに成功した点に最大の特徴を有するものである。
【0026】
図6に、本発明で用いる小型マイクロリアクターの外観図を示す。当該マイクロリアクターは、基材の表面に、マイクロサイズの径の溝を形成してこれらを重ねて構成したマイクロ反応管を、蛇行状に形成したマイクロリアクター・ユニットを基本単位として、これを単数で又は複数連結して、構成したものである。マイクロリアクターの流路長は、基本単位のマイクロリアクター・ユニットのマイクロ反応管の形状、構造を任意の形態に設計すること、マイクロリアクター・ユニットの連結数を増加又は減少すること、マイクロリアクター・ユニットをモジュール化して上下方向に又は任意の方向に積層すること、マイクロリアクター・ユニットの連結方式を変更すること等によって任意に設定することができる。この場合、マイクロ反応管の連結方式は特に限定されるものではない。
【0027】
図7に、上記マイクロリアクター・ユニットを3台連結して構成したマイクロリアクターの構成例を示す。マイクロリアクター・ユニットの連結数は、3台に限らず、必要に応じて、何台連結してもよく、また、それらをモジュールとして上下方向に重ねて配置することも可能である。これらのマイクロリアクターは、加熱部に接して加熱可能な状態に設置する。各マイクロリアクター・ユニットは、それらに接する各加熱部により、加熱温度を、マイクロリアクターの全部又は部分において、適宜可変可能に設置することが重要であり、それにより、マイクロリアクターの加熱温度を全体又は部分的に任意の加熱温度条件に設定することが可能となる。加熱部のヒーターとマイクロリアクターから構成される反応部は、連結可能なヒーターと、連結可能なマイクロリアクター・ユニットとを任意に組み合わせて、コンパクトな断熱ユニット構造に構成することができる。
【0028】
本発明の装置は、マイクロリアクターを構成する、マイクロリアクター・ユニットを基本単位としてモジュール化することで連結可能にしたこと、各ユニットに対応して、あるいはユニットの全体又は部分に対応して加熱温度条件を任意に設定して反応を実施できるようにしたこと、化学反応の種類に応じて、マイクロ反応管の長を任意に調節できるようにしたこと、そして、これらによって、超高速加熱・冷却(0.01秒オーダー)を可能にしたこと、それによって、図2の反応温度プロファイルに示されるような、精密な反応制御、副反応の抑制を可能にしたことを最大の特徴的部分とするものである。
【0029】
上述のマイクロリアクターとしては、図9に示されるように、マイクロチューブの表面に溝を形成し、これにコイル状のヒーターを巻き付けたチューブコイルを用いることも適宜可能である。この場合、チューブコイルを複数設置して、各コイルヒーターの加熱度条件を変えることで、各チューブコイルの加熱温度条件を適宜変更することが可能である。
【0030】
図8は、各ポンプから送液される高温高圧水、基質溶液及び他の基質溶液を、マイクロミキサーで混合した混合物を、マイクロリアクターに導入するためのマイクロラインの構成例を示したものである。図9は、本発明の高温高圧水マイクロ反応装置を、カップリング反応に特化したコンパクト高温高圧水マイクロ反応装置の一例を示すものである。送液ポンプから、基質、2mol%PdCl+2MNaCH水溶液、及び高温高圧水をチューブコイルからなるマイクロリアクターに送液して反応を行い、反応物を、冷却器で急速冷却した後、回収容器に回収するマイクロラインの構成例を示すものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)超高速加熱・冷却(0.01秒オーダー)が可能なコンパクト高温高圧水マイクロ反応装置を提供することができる。
(2)本装置を用いることにより、超高速加熱・冷却(0.01秒オーダー)が可能で、迅速かつ精密な温度・圧力・時空間制御による効率的な物質合成が可能である。
(3)流通式装置を用いることにより、精密な反応制御、副反応の抑制、触媒(貴金属等)の低減、保護基修飾の省略、界面活性剤の低減、分離の簡素化等を実現することができる。
(4)水媒体による環境に優しい高効率プロセスを提供することができる。
(5)高温高圧水マイクロリアクターによる反応場を用いた連続合成が可能である。
(6)多段階有機製造プロセスにおける省力化、省資源化、低排出物化、オンデマンド製造が実現できる。
(7)μ秒オーダーの時間制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】高温高圧水−マイクロ空間協奏的反応場の説明図である。
【図2】超高速加熱・冷却(0.01秒オーダー)が可能な本発明の高温高圧水マイクロ反応装置の反応温度プロファイルである。
【図3】高温高圧水マイクロ反応装置を構成する装置コントロール系フロー図である。
【図4】高温高圧水マイクロ反応装置の外観(写真)である。
【図5】高温高圧水マイクロ反応装置全体のフロー図である。
【図6】小型マイクロリアクター・ユニットの外観図である。
【図7】小型マイクロリアクター・ユニットを3台連結したマイクロリアクター・モジュールである。
【図8】送液ポンプから小型マイクロリアクターに至るライン構成の一例である。
【図9】カップリング反応に特化した高温高圧水マイクロ反応装置の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
本実施例では、高温高圧−マイクロリアクターによる流通式有機反応技術を、色素増感型太陽電池用有機色素材料合成に適応させた、高付加価値物質コンパクト製造装置を製作した。本装置により、アプリケーションとして、高温高圧技術(ハードウェア領域)と物質製造技術(ソフトウェア領域)の融合によるシンプルな製造を実証・具体化した。また、多品種少量生産の需要に向けた省エネ・高効率・オンサイト・オンデマンド製造技術を実現することで、流通式高温高圧水有機反応技術を確立した。
【0035】
本装置の具体的な内容として、2000Wh以下の消費電力、1m以下の小型装置として、コンパクトでシンプルかつ安価な高温高圧水マイクロ反応装置を製作した。それと同時に、具体的な化合物合成(色素増感型太陽電池用有機色素材料:MK−2、有機色素の中で世界トップクラスの発電効率を誇る、文献:J.Am.Chem,Soc.,2006,128,14256、Chem.Mater.,2008,20,3993)への適応を試みた。即ち、MK−2の既存合成ルートに最適化した製造装置の作製・試験に加え、MK−2の製造装置に適合した合成ルートの開拓を試みた。これより、MK−2の高温高圧水マイクロ製造装置の開発と同時に、より効率的な製造方法を確立した。
【0036】
装置の基本構成として、本製作装置は、下記の6点の部分から構成され、これらを1m以下のコンパクトパッケージに纏め上げた、家庭用100Vコンセントから電源を得、消費電力2000Wh以下の装置を構築した。図4に、その装置の外観写真を示す(本体の大きさ:W500mm×H350×D450PC含まず)。
【0037】
この小型高温高圧水反応装置は、1)送液部、2)加熱部、3)マイクロリアクターから構成される反応部、4)冷却部、5)圧力制御部、及び6)運転制御部の基本構成からなり、小型高温高圧水反応装置本体の外寸法:幅500mm×高さ350mm×奥行き450mm、重さ45kg以下、電源:AC100V駆動、使用適応温度:5℃〜35℃、とした。
【0038】
次に、送液部は、ポンプ(基質送液用)、ポンプ(触媒送液用)、ポンプ(高温高圧水送液用)、から構成され、ポンプ(基質送液用)は、方式:3ヘッド形式レシプロポンプ、吐出能力:0.01mL/min〜5.0mL/min、脈動率:3%以内(40Mpa)、最高使用圧力 :50MPa、大きさ:W80×H81×D322、その他:ドレインバルブによるエア抜き機構、電源スイッチ(緊急用)、PCによる制御、とした。
【0039】
また、ポンプ(触媒送液溶)は、方式:3ヘッド形式レシプロポンプ、吐出能力:0.01mL/min〜5.0mL/min、脈動率:3%以内(40Mpa)、最高使用圧力:50MPa、大きさ:W80×H81×D322、その他:ドレインバルブによるエア抜き機構、電源スイッチ(緊急用)、PCによる制御、とした。
【0040】
また、ポンプ(高温高圧水送液用)は、方式:3ヘッド形式レシプロポンプ、吐出能力:0.05mL/min〜20mL/min、脈動率:3%以内(40MPa)、最高使用圧力:50MPa、大きさ:W80×H81×D322、その他:ドレインバルブによるエア抜き機構、電源スイッチ(緊急用)、PCによる制御、とした。
【0041】
次に、加熱部は、小型ヒーター部及びマイクロヒーター部からなり、これらは、ステンレス製の断熱ボックスへの組み込みと、セラミックスファイバーによる断熱と、冷却時は、空冷方法による冷却が可能であり、PCと接続できるためのインターフェースを装備するようにした。
【0042】
小型ヒーター部は、大きさ:90mm×150mm×30mm、最高使用温度:650℃、消費電力:750W、最高温度到達時間:5分以内、最高可能流量:20mL/min、最大可能圧力:50MPa、その他:K熱電対による温度制御、PC制御、内部配管はHC C−276製、とした。
【0043】
マイクロヒーター部は、大きさ:50mm×100mm×30mm、最高使用温度:550℃、消費電力:150W、最高温度到達時間:5分以内、最高可能流量:30mL/min、最大可能圧力:60Mpa、リアクター長:15cm及び100cmの2種類、
その他:K熱電対による温度制御、PC制御、とした。
【0044】
マイクロリアクターから構成される反応部は、マイクロリアクターの流路径:0.5mm×150mm、を基本とした。流路の閉塞時などの緊急事態が発生した場合、ポンプの条件リミットを設け、設定圧力を超えた場合は、緊急停止するようにした。更に、再び圧力が設定圧力可能となった場合、再始動できるようにした。冷却部は、冷却方式:空冷式(最大風量3.8m/min)、アルミ合金製ヒートシンク(冷却板)、ファン×4個、最大冷却温度:500℃→50℃、消費電力:32W、大きさ:100mm×200mm×100mm、その他:PCによる温度モニター、とした。
【0045】
圧力制御部は、駆動方式:電磁ソレノイドバルブ方式、検出圧力センサー:デッドボリューム型(内容量4マイクロリットル)、最大制御圧力:50MPa、制御方式:圧力センサーを介してソレノイドによる圧力調節、その他:PC制御、とした。
【0046】
運転制御部は、装置タイプ:ノート型PC、制御方式:本体とUSB接続して制御、
測定データの取り込み可能(インターバル10秒単位)、最大12時間の取り込み可能、
制御ソフト:Windows(登録商標)上で過不足なく動作すること、ソースコード付き、制御項:流量、圧力、温度、とした。
【0047】
その他の構成として、ヒーターを含む全体の緊急停止ボタンを装備した(高温高圧水用ポンプを除く)。また、閉塞時に過度の加圧に対し、漏れ、故障、装置の安全に備え、安全弁を高温高圧水用ポンプと小型加熱ヒーターの間に設けた。
【0048】
作製したコンパクト高温高圧水マイクロ反応装置の確認試験として、性能試験を実施すると共に、その能力を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上詳述したように、本発明は、コンパクト高温高圧水マイクロ反応装置に係るものであり、本発明により、超高速加熱・冷却(0.01秒オーダー)が可能なコンパクト高温高圧水マイクロ反応装置を提供することができる。本装置を用いることにより、超高速加熱・冷却(0.01秒オーダー)が可能で、迅速かつ精密な温度・圧力・時空間制御による効率的な物質合成が可能である。流通式装置を用いることにより、精密な反応制御、副反応の抑制、触媒(貴金属等)の低減、保護基修飾の省略、界面活性剤の低減、分離の簡素化等を実現することができる。本発明は、水媒体による環境に優しい高効率プロセスを提供するものとして有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0超〜1秒以下の超高速加熱・冷却が可能でマイクロリアクターを内蔵する、コンパクトサイズの小型高温高圧水マイクロ反応装置であって、送液部、混合物、加熱部、マイクロリアクターから構成される反応部、冷却部、及び運転制御部を有し、マイクロリアクターが、複数連絡可能なマイクロリアクター・ユニット、あるいはマイクロチューブの表面にコイルヒーターを巻き付けたコイルチューブで構成されていることを特徴とする小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【請求項2】
上記マイクロリアクターが、基材にマイクロサイズの流路径からなるチューブ状の溝を形成して構成したマイクロチューブを有するマイクロリアクター・ユニットを基本単位として複数連結した構成を有し、流路長さが調節可能である構造を有する、請求項1に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【請求項3】
マイクロリアクターの全部又は部分を、当該マイクロリアクターに対して加熱可能に設置した加熱温度条件を全部又は部分的に可変可能に設定できる加熱部で加熱するように構成した、請求項1又は2に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【請求項4】
上記超高速加熱・冷却が、0.01秒以下の超高速加熱・冷却である、請求項1又は2に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【請求項5】
上記運転制御部が、小型PCから構成されている、請求項1に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【請求項6】
上記冷却部が、空冷式クーラーから構成されている、請求項1に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【請求項7】
上記混合部が、マイクロミキサーから構成されている、請求項1に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。
【請求項8】
上記送液ポンプが、シリンジポンプ又はレシプロポンプである、請求項1に記載の小型高温高圧水マイクロ反応装置。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−224480(P2011−224480A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97441(P2010−97441)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(508145573)コンパクト・サスティナブル・システム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】