説明

コンピュータの電力消費管理

【課題】 コンピュータの電力消費を管理するための方法及び製品、並びに電力消費が管理されるコンピュータを提供する。
【解決手段】 コンピュータの電力消費を管理するための方法及び製品、並びに電力消費が管理されるコンピュータを提供する。コンピュータは、コンピュータ・プロセッサを含むコンピュータを含み、本発明の実施形態は、イン・バンド電力マネージャによって、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することと、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、提案されたp−状態を承認するかどうかを決定することと、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、データ処理であり、又は、より具体的には、コンピュータの電力消費を管理するための方法及び製品、並びに電力消費が管理されるコンピュータである。
【背景技術】
【0002】
1948年のEDVACコンピュータの開発は、コンピュータ時代の始まりとしてよく引用される。その時以来、コンピュータは、極めて複雑な装置に発展してきた。今日のコンピュータは、EDVACのような初期のシステムに比べて、はるかに高性能である。コンピュータは、典型的には、ハードウェア・コンポーネント及びソフトウェア・コンポーネントの組み合わせ、アプリケーション・プログラム、オペレーティング・システム、プロセッサ、バス、メモリ、入力/出力装置等を含む。半導体処理及びコンピュータ・アーキテクチャの進歩がコンピュータの高性能化をさらに押し進めるにつれて、ハードウェアのより高い性能を生かすために、より高度なコンピュータ・ソフトウェアが発展し、その結果、現在のコンピュータは、ほんの数年前よりもはるかに強力なものになっている。
【0003】
今日のコンピュータ・システムは大量の電力を消費し、大量の熱を発生させることがある。コンピュータの電力消費及び熱の発生を制御するために、オペレーティング・システム(「OS」)及びコンピュータ・プロセッサの設計者は、大部分の現代のオペレーティング・システムのAdvanced Configuration and Power Interface(「ACPI」)モジュールのような、OSによって実行される電力管理(power management)技術を実施している。このようなOSベースの電力管理技術は、コンピュータ・プロセッサの性能に基づいてコンピュータの電力消費を管理する。他の電力管理技術は、OSの一部として実行されるのではなく、ソフトウェアの形でコンピュータに実装される。実際に、このような非OSベースの電力管理技術は、典型的には、コンピュータの一次プロセッサではない、サービス・プロセッサ等のプロセッサ上で実行されるソフトウェアの形で実装される。このような非OSベースの電力管理技術は、コンピュータ・プロセッサの性能に基づくのではなく、測定された温度、電流、電力値等のみに基づいて、コンピュータ・プロセッサの電力消費を管理する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのコンピュータにおいて、OSベースの電力管理技術と非OSベースの電力管理技術の両方が、電力消費の管理を同時に行なうことは可能であるが、現在のところ、このようなOSベースの電力管理技術と非OSベースの電力管理技術との間の協働は存在しない。従って、コンピュータ・システムの電力消費を管理する際に、OSベースの電力管理技術と非OSベースの電力管理技術が競合することが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
コンピュータの電力消費を管理するための方法及び製品、並びに電力消費が管理されるコンピュータを提供する。このコンピュータは、コンピュータ・プロセッサを含むコンピュータを含み、本発明の実施形態は、イン・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することと、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、提案されたp−状態を承認するかどうかを決定することと、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することとを含む。
【0006】
本発明の上記及び他の目的、特徴、並びに利点は、一般的に同様の参照符号が本発明の例示的な実施形態の同様の部分を表す添付図面に示されるような、本発明の例示的な実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。
【0007】
第1の態様から見ると、本発明は、コンピュータ・プロセッサを含むコンピュータの電力消費を管理する方法を提供し、本方法は、イン・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することと、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、提案されたp−状態を承認するかどうかを決定することと、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することとを含む。
【0008】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合に、方法がイン・バンド電力マネージャに承認を通知することをさらに含み、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することは、イン・バンド電力マネージャにより、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、方法を提供する。
【0009】
好ましくは、本発明は、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することが、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、方法を提供する。
【0010】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定したとき、イン・バンド電力マネージャに承認されたp−状態を通知することをさらに含む、方法を提供する。
【0011】
好ましくは、本発明は、イン・バンド電力マネージャにより、アウト・オブ・バンド電力マネージャから、コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態を定期的に要求することと、イン・バンド電力マネージャが現在のp−状態を要求したときにのみ、イン・バンド電力マネージャに承認されたp−状態を通知することをさらに含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認しない場合にのみ、イン・バンド電力マネージャに通知することをさらに含む、方法を提供することが好ましい。
【0013】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、イン・バンド電力マネージャにおいて、p−状態の通常の動作範囲を設定することをさらに含み、イン・バンド電力マネージャにより、提案されたp−状態をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することが、提案されたp−状態が通常の動作範囲内にある場合にのみ提案されたp−状態を提供することをさらに含む、方法を提供する。
【0014】
第2の態様から見ると、本発明は、電力消費を管理するためのコンピュータ・システムを提供し、コンピュータは、コンピュータ・プロセッサと、サービス・プロセッサと、コンピュータ・プロセッサ及びサービス・プロセッサに動作可能に結合されたコンピュータ・メモリとを含み、コンピュータ・メモリには、イン・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供し、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、提案されたp−状態を承認するかどうかを決定し、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することができるコンピュータ・プログラム命令が内部に配置されている。
【0015】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合、コンピュータが、イン・バンド電力マネージャに承認を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含み、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することが、イン・バンド電力マネージャにより、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、コンピュータ・システムを提供する。
【0016】
好ましくは、本発明は、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することが、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、コンピュータ・システムを提供する。
【0017】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定したときに、イン・バンド電力マネージャに承認されたp−状態を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、コンピュータ・システムを提供する。
【0018】
好ましくは、本発明は、イン・バンド電力マネージャにより、アウト・オブ・バンド電力マネージャから、コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態を定期的に要求し、イン・バンド電力マネージャが現在のp−状態を要求したときにのみ、イン・バンド電力マネージャに承認されたp−状態を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、コンピュータ・システムを提供する。
【0019】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認しない場合にのみ、イン・バンド電力マネージャに通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、コンピュータ・システムを提供する。
【0020】
好ましくは、本発明は、コンピュータが、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、イン・バンド電力マネージャにおいて、p−状態の通常の動作範囲を設定することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含み、イン・バンド電力マネージャにより、提案されたp−状態をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することは、提案されたp−状態が通常の動作範囲内にある場合にのみ提案されたp−状態を提供することをさらに含む、コンピュータ・システムを提供する。
【0021】
第3の態様から見ると、本発明は、コンピュータ・プロセッサを含むコンピュータの電力消費を管理するための、コンピュータ可読媒体内に配置されたコンピュータ・プログラムを提供し、このコンピュータ・プログラムは、イン・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供し、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、提案されたp−状態を承認するかどうかを決定し、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することができるコンピュータ・プログラム命令を含む。
【0022】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認した場合、コンピュータ・プログラムが、イン・バンド電力マネージャに承認を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含み、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することが、イン・バンド電力マネージャにより、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、コンピュータ・プログラムを提供する。
【0023】
好ましくは、本発明は、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することが、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、コンピュータ・プログラムを提供する。
【0024】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定したとき、イン・バンド電力マネージャに承認されたp−状態を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、コンピュータ・プログラムを提供する。
【0025】
好ましくは、本発明は、イン・バンド電力マネージャにより、アウト・オブ・バンド電力マネージャから、コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態を定期的に要求し、イン・バンド電力マネージャが現在のp−状態を要求したときにのみ、イン・バンド電力マネージャに承認されたp−状態を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、コンピュータ・プログラムを提供する。
【0026】
好ましくは、本発明は、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認しない場合にのみ、イン・バンド電力マネージャに通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、コンピュータ・プログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態による、電力消費が管理されるコンピュータを含む例示的なシステムの機能ブロック図を示す。
【図2】本発明の実施形態による、コンピュータの電力消費を管理するための例示的な方法を示すフロー・チャートを示す。
【図3】本発明の実施形態による、コンピュータの電力消費を管理するための更に別の例示的な方法を示すフロー・チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による、コンピュータにおける電力管理のための例示的な方法、コンピュータ、及び製品が、図1で始まる添付図面を参照して説明される。図1は、本発明の実施形態による、電力消費が管理されるコンピュータ(152)を含む例示的なシステムの機能ブロック図を示す。
【0029】
コンピュータ(152)は、本発明の実施形態による、電力消費が管理される自動計算機を含む。本発明の実施形態による、電力消費を管理することができるこうした自動計算機の一例は、ブレード・サーバである。サーバとは、この用語が本明細書に用いられるとき、一般に、ネットワーク接続上でサービス(例えば、データベース・アクセス、ファイル転送、リモート・アクセス)又はリソース(例えば、ファイル空間)を提供するマルチ・ユーザ・コンピュータを指す。「サーバ」という用語は、文脈上、サーバのコンピュータ・ハードウェア、及びサーバ上で実行されるいずれかのサーバ・アプリケーション・ソフトウェア又はオペレーティング・システム・ソフトウェアを包括的に指す。サーバ・アプリケーションは、接続を受け入れ、応答を送り返すことによってユーザからの要求にサービスする、アプリケーション・プログラムである。サーバ・アプリケーションは、それを用いるクライアント・アプリケーションと同じコンピュータ上で実行することができ、或いは、サーバ・アプリケーションは、コンピュータ・ネットワークを通じて接続を受け入れることができる。サーバ・アプリケーションの例には、ファイル・サーバ、データベース・サーバ、バックアップ・サーバ、プリント・サーバ、メール・サーバ、ウェブ・サーバ、FTPサーバ、アプリケーション・サーバ、VPNサーバ、DHCPサーバ、DNSサーバ、WINSサーバ、ログオン・サーバ、セキュリティ・サーバ、ドメイン・コントローラ、バックアップ・ドメイン・コントローラ、プロキシ・サーバ、ファイアウォール等が含まれる。
【0030】
ブレード・サーバは、高密度のために設計された自己完結型のサーバである。ブレード・エンクロージャは、電力供給、冷却、ネットワーク化、種々の相互接続及び管理といったサービスを提供するが、異なるブレード提供業者は、ブレード自体の中に、時にはエンクロージャの中に一緒に、何を含ませるべきか、含ませるべきではないかについて異なる原理を有している。同時に、1組のブレード・サーバが、ブレード・エンクロージャ、又はブレード・システムのための「ブレード・センター」に取り付けられる。実際問題として、全てのコンピュータには、電力を必要とし、熱を発生する電気部品が実装される。プロセッサ、メモリ、ハード・ドライブ、電源装置、ストレージ及びネットワーク接続、キーボード、ビデオ・コンポーネント、マウス等のコンポーネントは、単に基本的な計算機能をサポートするにすぎず、さらに、これらは全て、嵩、熱、複雑性、及び固体構成部品より故障しやすい可動部品を付加する。ブレード・パラダイムにおいて、これらの機能の大部分は、ブレード・コンピュータから取り除かれ、ブレード・エンクロージャ(DC電力)により提供されるか、仮想化されるか(iSCSIストレージ、リモート・コンソール・オーバーIP)、又は完全に廃棄される(シリアル・ポート)。ブレード自体は、より単純、より小型になり、単一のブレード・エンクロージャ内に多数のブレード・サーバを有する高密度の取り付けに適している。
【0031】
図1のコンピュータ(152)は、少なくとも1つのコンピュータ・プロセッサ(156)又は「CPU」、並びに高速メモリ・バス(166)及びバス・アダプタ(158)を通じて、プロセッサ(156)及びコンピュータ(152)の他のコンポーネントに接続されるランダム・アクセス・メモリ(168)(「RAM」)を含む。アプリケーション(126)、すなわちユーザ・レベルのデータ処理のためのコンピュータ・プログラム命令の組が、RAM(168)内に格納される。当業者であれば思い付くように、そうしたソフトウェア・アプリケーションの例には、サーバ・アプリケーション、ワード・プロセッサ、スプレッドシート・アプリケーション、メディア・プレイヤー等が含まれる。
【0032】
オペレーティング・システム(154)も、RAM(168)内に格納される。本発明の実施形態に従ってコンピュータの電力消費を管理するのに有用なオペレーティング・システムは、UNIX(商標)、Linux(商標)、Microsoft XP(商標)、Microsoft Vista(商標)、AIX(商標)、IBM社のi5/OS(商標)、及び当業者であれば思い付くような他のものを含む。図1の例におけるオペレーティング・システム(154)は、イン・バンド(in-band)電力マネージャ(130)を含む。イン・バンド電力マネージャ(130)は、イン・バンド電力マネージャ(130)により、コンピュータ・プロセッサ(156)についての提案される性能状態(「p−状態」)(204)をアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)に与えることによって、本発明の実施形態に従ってコンピュータ(152)の電力消費を管理するコンピュータ・プログラム命令の組である。
【0033】
本明細書に用いられる「イン・バンド」という用語は、本発明の実施形態に従ってコンピュータの電力消費を管理する際に、動作パラメータが変化するコンピュータ・プロセッサ上で実行されるコンピュータの電力マネージャを指す。分かりやすくするために、このようなコンピュータ・プロセッサは、ユーザ・レベルのソフトウェア・アプリケーション、オペレーティング・システム等を実行する、「一次」プロセッサ、「メイン」プロセッサ、又は「イン・バンド」プロセッサと考えることができる。図1のコンピュータにおいて、イン・バンド電力マネージャは、本発明の実施形態に従ってコンピュータ(152)の電力消費を管理する際に、動作パラメータが変化するプロセッサである、プロセッサ(156)上で実行される。対照的に、アウト・オブ・バンド電力マネージャは、動作パラメータが変化するコンピュータ・プロセッサによって実行されるのではなく、代わりに、別のコンピュータ・プロセッサ上で実行される。分かりやすくするために、アウト・オブ・バンド電力マネージャを実行するこのようなコンピュータ・プロセッサは、類推によって、ユーザ・レベルのアプリケーションではなく、システム・レベルのファームウェアを実行する「二次」プロセッサ、「アウト・オブ・バンド」プロセッサ、又は「サービス」プロセッサと考えることができる。アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)は、図1の例において、コンピュータ(152)の電力消費を管理する際に動作パラメータが変化するプロセッサである、サービス・プロセッサ(138)上で実行される。
【0034】
イン・バンド電力マネージャ(130)は、コンピュータ・プロセッサの性能評価指標(performance metrics)に基づいて、提案するp−状態を決定することができる。コンピュータ・プロセッサ(156)の性能評価指標(128)は、コンピュータ・プロセッサの実際の性能を記述する情報である。性能評価指標(128)の例は、コンピュータ・プロセッサの利用の尺度、ハードウェア性能カウンタの値、及び当業者であれば思い付くような他のものを含む。ハードウェア・カウンタとも呼ばれるハードウェア性能カウンタは、コンピュータ内のハードウェア関連の活動のカウントを格納するために、多くのマイクロプロセッサ内に実装される1組の専用レジスタである。ハードウェア性能カウンタ内に格納されるハードウェア関連の活動のカウントの例は、データ・キャッシュ・ミス、命令キャッシュ、ミス、メモリ・アクセスを待つストールしたサイクル、命令が出されていないサイクル、最大の命令が出されたサイクル、及び当業者であれば思い付くような他のものを含む。
【0035】
性能状態(「p−状態」)は、コンピュータ・プロセッサについてのコア電圧レベルと、コンピュータ・プロセッサのクロック速度を指定することによって、コンピュータ・プロセッサの動作状態を定める。コンピュータ・プロセッサのコア電圧とは、コンピュータ・プロセッサの電圧調整器の電圧レベルである。P−状態を多数の異なるレベルに編成することができ、そこでは、より低いレベルのp−状態は、一般に、プロセッサによるより高い性能、より高いコア電圧レベル、及びより高いクロック速度を表し、より高いレベルのp−状態は、一般に、プロセッサによるより低い性能、より低いコア電圧レベル、及びより低いクロック速度を表す。コンピュータ・プロセッサの電力は、プロセッサのクロック速度及びコア電圧と比例する。次いで、コンピュータ・プロセッサのコア電圧は、クロック速度の変動に影響を受ける。当業者であれば、コア電圧及びクロック速度は可変であり、どちらかの値を下げることによりコンピュータ・プロセッサの電力消費が低減されることを直ちに認識するであろう。コンピュータ・プロセッサの性能評価指標(128)で示されるように、コンピュータ・プロセッサが低負荷下にあるとき、イン・バンド電力マネージャ(130)は、コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態をより高いp−状態に設定し、これにより、コンピュータ・プロセッサによる性能の低下が、あったとしても殆どない状態で、コンピュータ・プロセッサによる電力消費を低減させることができる。コンピュータ・プロセッサのp−状態を変える技術の例には、Intel社のSpeedStep(商標)技術、AMD社のPowerNow!(商標)及びCool’n’Quiet(商標)技術、VIA社のLongHaul(商標)技術等が含まれる。当業者であれば、本発明の実施形態に従ってコンピュータの電力消費を管理するのに役立つように、これらの技術の各々を改善できることを認識するであろう。
【0036】
説明を簡単にするために、図1の例において、イン・バンド電力マネージャ(130)は、オペレーティング・システム(154)のソフトウェア・コンポーネントとして示される。しかしながら、当業者であれば、イン・バンド電力マネージャ(130)は、代替的に、オペレーティング・システムのAdvanced Configuration and Power Interface(「ACPI」)モジュールのコンポーネントとして、又はオペレーティング・システムとは分離したスタンドアロン型ソフトウェア・アプリケーションとして実装できることを認識するであろう。図1の例において、オペレーティング・システム(154)、イン・バンド電力マネージャ(130)及び他のソフトウェア・モジュールは、RAM(168)の中に示されているが、こうしたソフトウェアの多くのコンポーネントは、典型的には、例えばディスク・ドライブ(170)上又はフラッシュ・メモリ(133)内といった不揮発性メモリ内にも格納される。
【0037】
上述したように、図1のコンピュータ(152)は、アウト・オブ・バンド電力マネージャを実行するサービス・プロセッサ(138)を含む。図1のコンピュータ(152)において、サービス・プロセッサ(138)は、アウト・オブ・バンド・バス(140)を通してプロセッサ(156)に接続される。このようなアウト・オブ・バンド・バス(140)は、Low Pin Count(「LPC」)バス、Inter−Integrated Circuit(「IC」)バス、システム管理バス(System Management Bus、「SMBus」)、シリアル・ペリフェラル・インターフェース(Serial Peripheral Interface、「SPI」)バス、及び当業者であれば思い付くような他のものとして実装することができる。
【0038】
サービス・プロセッサ(138)は、コンピュータのマザーボード上に埋め込むことができる専用マイクロコントローラである。コンピュータに内蔵された異なるタイプのセンサが、温度、冷却ファン速度、オペレーティング・システムの状態等といった評価指標についてサービス・プロセッサに報告する。サービス・プロセッサ(138)は、センサを監視し、監視された評価指標のいずれかが、コンピュータの潜在的な故障を示す所定の限界値を超えた場合には、ネットワークを介してシステム管理者に警告を送る。管理者はまた、サービス・プロセッサと遠隔通信して、ストールしたオペレーティング・システムを適切に実行させるための、コンピュータのリセット又は電力サイクリングといった是正措置をとることもできる。
【0039】
サービス・プロセッサの一例は、多数のブレード・サーバに用いられるベースボード管理コントローラ(「BMC」)である。BMCの基本機能は、Intelligent Platform Management Inteface(「IPMI」)アーキテクチャにより定められる。BMCは、システム管理ソフトウェアとプラットフォーム・ハードウェアとの間のインターフェースを管理することができる。BMCへの物理インターフェースは、SMSBusバス、RS−232シリアル・コンソール、アドレス及びデータ・ライン、並びに、BMCがシステム内の他の管理コントローラからのIPMI要求メッセージを受け入れるのを可能にするIntelligent Platform Management Bus(「IPMB」)を含むことができる。
【0040】
図1の例において、サービス・プロセッサ(138)は、コンピュータ・プロセッサ(156)の電力設定値(144)及び現在測定されている動作評価指標(134)に基づいて、提案されたp−状態(204)を承認するかどうかを判断することによって、本発明の実施形態に従ってコンピュータの電力消費を管理するコンピュータ・プログラム命令の組であるアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)を格納することができる、RAM又はフラッシュ・メモリのようなコンピュータ・メモリを含む。
【0041】
コンピュータ・プロセッサ(156)の現在測定されている動作評価指標(134)とは、動作しているコンピュータ・プロセッサのパラメータの測定値である。現在測定されている動作評価指標(134)の例は、コンピュータ・プロセッサの電流の引き込み、電力使用効率、ケース温度、及び当業者であれば思い付くような他のものを含む。
【0042】
設定値(set point)は、アウト・オブ・バンド電力マネージャがコンピュータ・プロセッサの制御を通して達成しようと試みる目標値である。電力設定値は、コンピュータ・プロセッサの特定の動作状態(145)についての1つ又は複数の好ましい動作点を定めるデータ構造である。アウト・オブ・バンド電力マネージャは、電力設定値を用いて、電力消費、ケース温度、及びプロセッサの動作中のコンピュータ・プロセッサの他の動作評価指標を制御する。
【0043】
コンピュータ・プロセッサの動作状態(145)は、プロセッサのコア電圧及びクロック速度のような、コンピュータ・プロセッサの1つ又は複数の動作パラメータによって定めることができる。アウト・オブ・バンド電力マネージャは、コンピュータ・プロセッサの動作全体にわたって、コンピュータ・プロセッサの動作状態(145)を変えることによって、すなわち、コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを変えることによって、電力設定値を達成しようと試みる。ここで用いられる電力設定値を「達成する」とは、電力設定値の好ましい動作評価指標と同じタイプの現在測定されている動作評価指標が、その好ましい動作評価指標とほぼ等しいことを意味する。例えば、コンピュータ・プロセッサの電力消費についての好ましい動作評価指標を10ワットに定める電力設定値を考える。コンピュータ・プロセッサの電力消費についての現在測定されている動作評価指標が10.0001ワットであった場合、現在測定されている動作評価指標は、電力設定値において定められた好ましい動作評価指標とほぼ等しく、電力設定値についての好ましい動作評価指標が「達成される」。
【0044】
アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)は、省電力、ケース温度、及びコンピュータ・プロセッサの性能の最適な組み合わせを達成するために、コンピュータ・プロセッサの動作中に動的に動作状態を変えることができる。アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)は、コンピュータ・プロセッサの動作パラメータのいずれかについての値を計算し、設定することによって、動作状態を変えることができる。
【0045】
イン・バンド電力マネージャ及びアウト・オブ・バンド電力マネージャを有する従来技術のコンピュータにおいては、イン・バンド電力マネージャとアウト・オブ・バンド電力マネージャとの間の協働は存在しない。代わりに、p−状態は、コンピュータ・プロセッサの電力設定値にも又は現在測定されている動作評価指標にも基づかず、性能評価指標のみに基づいて、イン・バンド電力マネージャにより完全に設定される。対照的に、本発明の実施形態に従って電力消費が管理されるコンピュータにおいては、p−状態は、性能評価指標に基づいて、イン・バンド電力マネージャにより提案され、かつ、コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより承認される。つまり、本発明の実施形態に従って電力消費が管理されるコンピュータにおいて、p−状態は、単に性能評価指標に基づくだけではなく、イン・バンド電力マネージャとアウト・オブ・バンド電力マネージャの間の協働を通じて、コンピュータ・プロセッサに対して設定される。
【0046】
図1の例におけるアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)はまた、イン・バンド電力マネージャに、提案されたp−状態(204)の承認を通知することができる。コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態は、コンピュータ・プロセッサの性能に影響を与える1つの要因になり得るので、イン・バンド電力マネージャにより、別の提案されたp−状態を判断する際に、現在のp−状態は有用なものとなり得る。
【0047】
アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)が提案されたp−状態を承認した場合、図1のシステムは、承認されたp−状態(226)に従って、コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定すること(224)ができる。承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することは、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)又はイン・バンド電力マネージャ(130)によって実行することができる。イン・バンド電力マネージャ(130)は、提案されたp−状態(204)の承認が通知されると、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することができる。代替的に、アウト・オブ・バンド電力マネージャは、提案されたp−状態(204)が承認されると、承認されたp−状態自体に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することができる。承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することは、コンピュータ・プロセッサについてのコア電圧レベル及びクロック速度を表す値を、コンピュータ・プロセッサのレジスタのような、こうした目的のために指定されたコンピュータ・メモリ内に格納することによって達成することができる。
【0048】
図1のコンピュータ(152)はまた、拡張バス(160)及びバス・アダプタ(158)を通して、プロセッサ(156)及びコンピュータ(152)の他のコンポーネントに結合されたディスク・ドライブ・アダプタ(172)も含む。ディスク・ドライブ・アダプタ(172)は、不揮発性データ・ストレージを、ディスク・ドライブ(170)の形態でコンピュータ(152)に接続する。本発明の実施形態に従って電力消費が管理されるコンピュータに有用なディスク・ドライブ・アダプタには、Integrated Drive Electronics(「IDE」)アダプタ、Small Computer System Interface(「SCSI」)アダプタ、及び当業者であれば思い付くような他のものが含まれる。不揮発性コンピュータ・メモリはまた、当業者であれば思い付くように、光ディスク・ドライブ、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(いわゆる「EEPROM」又は「フラッシュ」メモリ)(133)、RAMドライブ等として実装することもできる。
【0049】
図1の例示的なコンピュータ(152)は、1つ又は複数の入力/出力(「I/O」)アダプタ(178)を含む。I/Oアダプタは、例えば、コンピュータのディスプレイ画面のようなディスプレイ装置への出力、並びに、キーボード及びマウスのようなユーザ入力装置(181)からのユーザ入力を制御するために、ソフトウェア・ドライバ及びコンピュータ・ハードウェアを介して、ユーザ指向の入力/出力を実施する。図1の例示的なコンピュータ(152)は、ディスプレイ画面又はコンピュータ・モニタのようなディスプレイ装置(180)への図形出力のために特別に設計されたI/Oアダプタの一例であるビデオ・アダプタ(209)を含む。ビデオ・アダプタ(209)は、高速ビデオ・バス(164)、バス・アダプタ(158)、及び同じく高速バスであるフロント・サイド・バス(162)を通じて、プロセッサ(156)に接続される。
【0050】
図1の例示的なコンピュータ(152)は、データ通信ネットワーク(100)及び他のコンピュータ(136)とのデータ通信のための通信アダプタ(167)を含む。こうしたデータ通信は、RS−232接続、Universal Serial Bus(「USB」)のような外部バス、IPデータ通信ネットワークのようなデータ通信ネットワーク、及び当業者であれば思い付くような他の方法を介して、シリアル方式で実行することができる。通信アダプタは、1つのコンピュータが、直接又はデータ通信ネットワークを通してデータ通信を別のコンピュータに送る、ハードウェア・レベルのデータ通信を実施する。本発明の実施形態に従って電力消費が管理されるコンピュータに有用な通信アダプタの例には、有線ダイアルアップ通信用のモデム、有線データ通信のネットワーク通信用イーサネット(IEEE802.3)アダプタ、及び無線データ通信のネットワーク通信用の802.11アダプタが含まれる。
【0051】
図1に示される例示的なシステムを構成するコンピュータ、サーバ、ネットワーク、及び他の装置の構成は、説明のためのものであり、制限のためのものではない。本発明の種々の実施形態に従った有用なデータ処理システムは、当業者であれば思い付くような、図1には図示されない付加的なサーバ、ルータ、他の装置、及びピア・ツー・ピア・アーキテクチャを含むことができる。このようなデータ処理システムにおけるネットワークは、例えば、TCP(転送制御プロトコル、Transmission Control Protocol)、IP(インターネット・プロトコル、Internet Protocol)、HTTP(HyperText Transfer Protocol)、WAP(ワイヤレス・アクセス・プロトコル、Wireless Access Protocol)、HDTP(ハンドヘルド機器転送プロトコル、Handheld Device Transport Protocol)、及び当業者であれば思い付くような他のものを含む、多数のデータ通信プロトコルをサポートすることができる。本発明の種々の実施形態は、図1に示されるものに加えて、様々なハードウェア・プラットフォーム上で実施することができる。
【0052】
更なる説明のために、図2は、本発明の実施形態に従ってコンピュータの電力消費を管理するための例示的な方法を示すフロー・チャートを示す。図2の方法において、電力消費が管理されるコンピュータ(図1の152)は、コンピュータ・プロセッサ(図1の156)を含む。
【0053】
図2の方法は、イン・バンド電力マネージャ(130)により、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)(204)をアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)提供すること(202)を含む。イン・バンド電力マネージャ(130)により、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)(204)をアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)に提供すること(202)は、イーサネット、TCP、IP、ポイント・ツー・ポイント・プロトコルのようなアウト・オブ・バンド・バス・プロトコルに従って、アウト・オブ・バンド・バス(図1の140)上のデータ・パケット内の提案されたp−状態の値を、イン・バンド電力マネージャからアウト・オブ・バンド電力マネージャに直接伝送することを含む、種々の方法で実行することができる。イン・バンド電力マネージャ(130)により、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)(204)をアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)に提供すること(202)は、例えば、イン・バンド電力マネージャにより、アウト・オブ・バンド電力マネージャにおいて、新たに提案されたp−状態を示す割込みを生じさせるアウト・オブ・バンド・バス(図1の140)の信号ラインをアサートし、割込みに応答して、アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、コンピュータ・プロセッサの特定のレジスタ又はRAM内の特定のメモリ・アドレスのような、コンピュータ・メモリ内の指定位置から、提案されたp−状態の値を読み取ることによって実行することもできる。当業者であれば、コンピュータ・プロセッサについての提案されたp−状態(204)を提供する(202)2つの例のみがここに説明されるが、本発明の実施形態に従ってコンピュータ・プロセッサについての提案されたp−状態(204)を提供すること(202)は、他の方法で実行することもでき、こうした方法の各々は十分に本発明の範囲内にあることを認識するであろう。
【0054】
図2の方法はまた、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)により、コンピュータ・プロセッサの電力設定値(144)及び現在測定されている動作評価指標(134)に基づいて、提案されたp−状態(204)を承認するかどうかを決定すること(206)も含む。アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)により、コンピュータ・プロセッサの計算された電力設定値(144)及び現在測定されている動作評価指標(134)に基づいて、提案されたp−状態(204)を承認するかどうかを決定すること(206)は、実施された場合、提案されたp−状態が、電力設定値と競合するかどうかを判断することによって実行することができる。一例として、コンピュータ・プロセッサの現在測定されているケース温度が摂氏65度であり、電力設定値が45度のケース温度を指定すると考える。コンピュータ・プロセッサの現在の性能評価指標が、コンピュータ・プロセッサが高負荷下にあることを示す場合、現在測定されているケース温度を知らないイン・バンド電力マネージャは、プロセッサのクロック速度を増大させるp−状態を提案し、そのことにより、ケース温度が上がることがある。つまり、提案されるp−状態は、実施された場合、ケース温度の上昇をもたらし、アウト・オブ・バンド電力マネージャは、電力設定値において定められた値までの低いケース温度を達成しようと試みる。こうした場合、アウト・オブ・バンド電力マネージャは、提案されたp−状態が電力設定値と競合すると判断することによって、提案されたp−状態を承認しないよう決定することができる。
【0055】
アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)が提案されたp−状態(204)を承認しない場合、図2の方法は、次の提案されたp−状態を待つことにより続行する。待っている間、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)は、電力設定値に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータ(220)を変えることによって、コンピュータの電力消費の管理を続けることができる。アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)が提案されたp−状態(204)を承認した場合、図2の方法は、イン・バンド電力マネージャ(130)に承認を通知すること(214)により続行する。イン・バンド電力マネージャ(130)に承認を通知すること(214)は、アウト・バンド電力マネージャにより、イン・バンド電力マネージャにおいて承認を表示する割込みを生じさせるアウト・オブ・バンド・バス(図1の140)の信号ラインをアサートし、アウト・オブ・バンド・バス・プロトコルに従って又は当業者であれば思い付くような他の方法で、アウト・オブ・バンド・バス上で承認の通知を送ることによって、実行することができる。
【0056】
図2の方法はまた、承認されたp−状態(226)に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定する(224)、2つの代替的な方法も含む。図2の方法においては、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定すること(224)は、イン・バンド電力マネージャにより、提案されたp−状態(204)の承認が通知されたとき(214)、動作パラメータを設定すること(218)によって実行することができる。つまり、イン・バンド電力マネージャ(130)は、以前の提案されたp−状態から承認されたp−状態(226)への変更を達成することができる。図2の方法においては、イン・バンド電力マネージャによる動作パラメータの設定(216)に代わるものとして、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)は、p−状態自体に従って、コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定すること(218)ができる。つまり、イン・バンド電力マネージャは、提案することしかできず、決してp−状態の変更を達成することはない。
【0057】
更なる説明のために、図3は、本発明の実施形態に従ってコンピュータの電力消費を管理するための、更に別の例示的な方法を示すフロー・チャートを示す。図3の方法においては、図2の方法と同様に、電力消費が管理されるコンピュータ(図1の152)は、プロセッサ(図1の156)を含む。
【0058】
図3の方法は図2の方法と類似しており、図2の方法のように、イン・バンド電力マネージャ(130)により、コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)(204)をアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)に提供すること(202)と、コンピュータ・プロセッサの電力設定値(144)及び提案された現在の評価指標に基づいて、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)により、提案されたp−状態(204)を承認するかどうかを決定すること(206)と、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)が提案されたp−状態(204)を承認した場合、承認されたp−状態(226)に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定すること(224)とを含む。
【0059】
図3の方法は、この図3の方法において、承認されたp−状態(226)に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定すること(224)が、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)により、承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定すること(218)を含むという点でも、図2の方法と類似している。
【0060】
しかしながら、図3の方法が、イン・バンド電力マネージャ(130)により、コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態を、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)から定期的に要求すること(306)と、イン・バンド電力マネージャ(130)が現在のp−状態を要求したときにのみ、イン・バンド電力マネージャ(130)に承認されたp−状態(226)を通知すること(308)とを含むという点で、図3の方法は図2の方法と異なる。イン・バンド電力マネージャ(130)により、コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態をアウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)から定期的に要求すること(306)は、アウト・オブ・バンド・バス(図1の140)を介してアウト・オブ・バンド電力マネージャから、例えば5分といった所定の時間における現在のp−状態を要求することによって、又は、アウト・オブ・バンド・バス(図1の140)を介してアウト・オブ・バンド電力マネージャから、後の提案されるp−状態を求める前に現在のp−状態を要求することによって、或いは当業者であれば思い付くような他の方法で、実行することができる。
【0061】
現在のp−状態を定期的に要求することは、アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認する方が承認しないよりも多い実施形態において、通信及び処理のオーバーヘッドを低減させるのにも有用であり得る。このような実施形態は、動作中、コンピュータ・プロセッサの動作評価指標が通常の範囲内のままであり、コンピュータ・プロセッサの負荷が変化するが、極端には変化しないときに生じ得る。例えば、10個の提案されたp−状態中9個の割合で承認されるような実施形態を考える。イン・バンド電力マネージャに全ての承認を通知することは、イン・バンド電力マネージャに定期的にしか通知しないのと比較すると、イン・バンド電力マネージャとアウト・オブ・バンド電力マネージャとの間の通信が増大する。このような実施形態において、イン・バンド電力マネージャは、提案されたp−状態を提供した後、p−状態がアウト・オブ・バンド電力マネージャによって承認され、実装されたとの仮定の下で動作することができる。
【0062】
イン・バンド電力マネージャ(130)が現在のp−状態を要求したときにのみ、イン・バンド電力マネージャ(130)に承認されたp−状態(226)を通知すること(308)の代替案として、図3の方法はまた、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)が提案されたp−状態(204)を承認しない場合にのみ、イン・バンド電力マネージャ(130)に通知すること(310)を含む。再び、例えば10個の提案されたp−状態中9個の割合で承認されるような実施形態を考える。提案されたp−状態の不承認だけをイン・バンド電力マネージャに通知することは、イン・バンド電力マネージャとアウト・オブ・バンド電力マネージャの間の通信を、この例では90パーセント低減させる。
【0063】
イン・バンド電力マネージャ(130)が現在のp−状態を要求したときにのみ、承認されたp−状態(226)をイン・バンド電力マネージャ(130)に通知すること(308)の別の代替案として、図3の方法はまた、アウト・オブ・バンド電力マネージャ(132)が承認されたp−状態に従ってコンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定したときに(218)、承認されたp−状態(226)をイン・バンド電力マネージャ(130)に通知すること(302)を含む。アウト・オブ・バンド電力マネージャが提案されたp−状態を承認する方が承認しないよりも多い上述の実施形態とは異なり、アウト・オブ・バンド電力マネージャが、提案されるp−状態を承認したとしてもめったに承認することがない他の実施形態が存在する。これらの実施形態においては、p−状態が承認されたときだけイン・バンド電力マネージャに通知することによって、イン・バンド電力とアウト・オブ・バンド電力マネージャとの間の通信並びに処理オーバーヘッドを低減させることができ、アウト・オブ・バンド電力マネージャは、承認されたp−状態に従って動作パラメータを設定する。
【0064】
本発明の例示的な実施形態は、大部分が、コンピュータの電力消費を管理するための完全に機能的なコンピュータとの関連で説明されている。しかしながら、当業者であれば、本発明はまた、いずれかの適切なデータ処理システムと共に用いるための信号支持媒体上に配置されたコンピュータ・プログラム製品の形で具体化できることを認識するであろう。こうした信号支持媒体は、磁気媒体、光媒体、又は他の適切な媒体を含む、機械可読情報のための伝送媒体又は記録可能媒体とすることができる。記録可能媒体の例は、ハード・ドライブ内の磁気ディスク又はディスケット、光ドライブのためのコンパクト・ディスク、磁気テープ、及び当業者であれば思い付くような他のものを含む。伝送媒体の例は、音声通信のための電話網と、例えばイーサネット(商標)及びインターネット・プロトコル(Internet Protocol)並びにWorld Wide Webと通信するネットワークのようなデジタル・データ通信ネットワークと、例えばIEEE802.11ファミリーの仕様に従って実装されたネットワークのような無線伝送媒体とを含む。当業者であれば、適切なプログラム手段を有する如何なるコンピュータも、プログラム製品の形で具体化される本発明の方法のステップを実行できることを直ちに認識するであろう。当業者であれば、本明細書に記載された例示的な実施形態の幾つかは、インストールされ、コンピュータ・ハードウェア上で実行されるソフトウェアに向けられているが、それにも関わらず、ファームウェア又はハードウェアとして実装された代替的な実施形態も十分に本発明の範囲内にあることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ・プロセッサを含むコンピュータの電力消費を管理する方法であって、前記方法は、
イン・バンド電力マネージャにより、前記コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することと、
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、前記コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、前記提案されたp−状態を承認するかどうかを決定することと、
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記提案されたp−状態を承認した場合、前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記提案されたp−状態を承認した場合、
前記方法は、前記イン・バンド電力マネージャに前記承認を通知することをさらに含み、
前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することは、前記イン・バンド電力マネージャにより、前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することは、前記アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの前記動作パラメータを設定したとき、前記イン・バンド電力マネージャに前記承認されたp−状態を通知することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イン・バンド電力マネージャにより、前記アウト・オブ・バンド電力マネージャから、前記コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態を定期的に要求することと、
前記イン・バンド電力マネージャが前記現在のp−状態を要求したときにのみ、前記イン・バンド電力マネージャに前記承認されたp−状態を通知することと、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記提案されたp−状態を承認しない場合にのみ、前記イン・バンド電力マネージャに通知するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、前記イン・バンド電力マネージャにおいて、p−状態の通常の動作範囲を設定することをさらに含み、
前記イン・バンド電力マネージャにより、提案されたp−状態を前記アウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することは、前記提案されたp−状態が前記通常の動作範囲内にある場合にのみ、前記提案されたp−状態を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電力消費を管理するためのコンピュータ・システムであって、前記コンピュータはコンピュータ・プロセッサ及びサービス・プロセッサ、並びに前記コンピュータ・プロセッサ及び前記サービス・プロセッサに動作可能に結合されたコンピュータ・メモリを含み、前記コンピュータ・メモリには、
イン・バンド電力マネージャにより、前記コンピュータ・プロセッサについての提案された性能状態(「p−状態」)をアウト・オブ・バンド電力マネージャに提供し、
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、前記コンピュータ・プロセッサの電力設定値及び現在測定されている動作評価指標に基づいて、前記提案されたp−状態を承認するかどうかを決定し、
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記提案されたp−状態を承認した場合、前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定する、
ことができるコンピュータ・プログラム命令が内部に配置されている、コンピュータ・システム。
【請求項9】
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記提案されたp−状態を承認した場合、
前記コンピュータは、前記イン・バンド電力マネージャに前記承認を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含み、
前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することは、前記イン・バンド電力マネージャにより、前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ・システム。
【請求項10】
前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することは、前記アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの動作パラメータを設定することをさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ・システム。
【請求項11】
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記承認されたp−状態に従って前記コンピュータ・プロセッサの前記動作パラメータを設定したとき、前記イン・バンド電力マネージャに前記承認されたp−状態を通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、請求項10に記載のコンピュータ・システム。
【請求項12】
前記イン・バンド電力マネージャにより、前記アウト・オブ・バンド電力マネージャから、前記コンピュータ・プロセッサの現在のp−状態を定期的に要求し、
前記イン・バンド電力マネージャが前記現在のp−状態を要求したときにのみ、前記イン・バンド電力マネージャに前記承認されたp−状態を通知する、
ことができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、請求項10に記載のコンピュータ・システム。
【請求項13】
前記アウト・オブ・バンド電力マネージャが前記提案されたp−状態を承認しない場合にのみ、前記イン・バンド電力マネージャに通知することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ・システム。
【請求項14】
前記コンピュータは、前記アウト・オブ・バンド電力マネージャにより、前記イン・バンド電力マネージャにおいて、p−状態の通常の動作範囲を設定することができるコンピュータ・プログラム命令をさらに含み、
前記イン・バンド電力マネージャにより、提案されたp−状態を前記アウト・オブ・バンド電力マネージャに提供することは、前記提案されたp−状態が前記通常の動作範囲内にある場合にのみ前記提案されたp−状態を提供することをさらに含む、請求項8に記載のコンピュータ・システム。
【請求項15】
デジタル・コンピュータの内部メモリにロード可能なコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ上で実行されたとき、請求項1から請求項7までに記載の前記方法の全てのステップの実行を実施するためのソフトウェア・コード部分を含む、コンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−526018(P2011−526018A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515375(P2011−515375)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057910
【国際公開番号】WO2009/156447
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】