説明

コンプライアンス装置

【課題】簡易な構成で組み付けが容易なコンプライアンス装置を得る。
【解決手段】線材を折り曲げて形成される折曲部2aと、折曲部2aの両端から直線状に延設された起立部2b及び2cと、起立部2b及び2cの下端部を折り曲げて延設された嵌合部3及び4を有し、折曲部2aと起立部2b及び2cが嵌合部3及び4と複数交互に連接されて繰り返し単位を形成するコンプライアンスデバイスを構成し、嵌合部3及び4がコンプライアンス装置の固定部材または可動部材に嵌合されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、結合すべきワーク相互間の位置ずれや寸法公差等を吸収する際に使用されるコンプライアンス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、従来のコンプライアンス装置は、固定プレート41及び42と移動プレート43との間に傾斜させる態様で柱状のゴムエレメント44aが固定配置されている。ゴムエレメント44aは多数のゴム板44bと金属製シム44cとを交互に加硫接着したものであり、弾性力を有している。ゴムと金属膜を積層させると、圧縮荷重に対しては高い剛性を示し、横方向には変形しやすいという特徴を持つため、移動プレート43はゴムエレメント44aの弾性力に抗して固定プレート41及び42に対してある程度移動できるように構成されている。図10に示すように、ピンPを孔に挿入する際に孔構成壁から力Fを受けた場合にはピンPがゴムエレメント44aの弾性力に抗して実線から点線の状態に水平移動する態様で挿入される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−90480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンプライアンス装置は、以上のように多数のゴム板と金属製シムとを交互に加硫接着するゴムエレメントをコンプライアンス機構として用いる構成としていたので、圧縮荷重に対して高い剛性を示すが、部品点数が多く製造工程が複雑であり製造コストが高くなるという課題があった。また、コンプライアンス機構及びコンプライアンス装置が大型化するという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、簡単な構成で組み付けが容易なコンプライアンス機構を備えたコンプライアンス装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るコンプライアンス装置は、固定部材と、前記固定部材に対して移動可能な可動部材と、前記固定部材と前記可動部材を接続し、前記固定部材と前記可動部材の相対誤差を吸収するコンプライアンス機構を備えたコンプライアンス装置において、前記コンプライアンス機構は、線材を折り曲げて形成される折曲部と、前記折曲部の両端から直線状に延設された一対の起立部と、前記起立部の下端部を折り曲げて延設された嵌合部とを有し、前記折曲部と前記一対の起立部が前記嵌合部と複数交互に連接されて繰り返し単位を形成し、複数の前記嵌合部は前記固定部材または前記可動部材に嵌合させたものである。
【0007】
この発明に係るコンプライアンス装置は、固定部材と、前記固定部材に対して移動可能な可動部材と、前記固定部材と前記可動部材を接続し、前記固定部材と前記可動部材の相対誤差を吸収するコンプライアンス機構を備えたコンプライアンス装置において、前記コンプライアンス機構は、線材を折り曲げて形成される折曲部と、前記折曲部の両端から直線状に延設された一対の起立部と、前記一対の起立部のそれぞれの下端部を折り曲げて延設された一対の嵌合部とを有し、前記一対の嵌合部のそれぞれが前記固定部材または前記可動部材に嵌合させたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、固定部材と、前記固定部材に対して移動可能な可動部材と、前記固定部材と前記可動部材を接続し、前記固定部材と前記可動部材の相対誤差を吸収するコンプライアンス機構を備えたコンプライアンス装置において、前記コンプライアンス機構は、線材を折り曲げて形成される折曲部と、前記折曲部の両端から直線状に延設された一対の起立部と、前記起立部の下端部を折り曲げて延設された嵌合部とを有し、前記折曲部と前記一対の起立部が前記嵌合部と複数交互に連接されて繰り返し単位を形成し、複数の前記嵌合部は前記固定部材または前記可動部材に嵌合させるように構成したので、部品点数が少なく製造コストを抑えることができるとともに、組み付けが容易になる。また、圧縮荷重に対して高い剛性を維持したまま、コンプライアンス装置の小型化を実現することができる。
【0009】
この発明によれば、固定部材と、前記固定部材に対して移動可能な可動部材と、前記固定部材と前記可動部材を接続し、前記固定部材と前記可動部材の相対誤差を吸収するコンプライアンス機構を備えたコンプライアンス装置において、前記コンプライアンス機構は、線材を折り曲げて形成される折曲部と、前記折曲部の両端から直線状に延設された一対の起立部と、前記一対の起立部のそれぞれの下端部を折り曲げて延設された一対の嵌合部とを有し、前記一対の嵌合部のそれぞれが前記固定部材または前記可動部材に嵌合させるように構成したので、部品点数が少なく製造コストを抑えることができる。また、被嵌合部の形成が容易となり組み付けが容易になる。また、圧縮荷重に対して高い剛性を維持したまま、コンプライアンス装置の小型化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、コンプライアンス装置の動作原理を示す断面図である。なお、図1(a)はコンプライアンス装置の初期状態を示す図であり、図1(b)はコンプライアンス装置に付勢力を加えた状態を示す図である。
図1(a)に示すように、コンプライアンス装置30は、固定部材31と可動部材32の間に、両端に回転リンク33aを有するコンプライアンスデバイス33を介装させて構成してある。コンプライアンス装置30を上方から見た場合、コンプライアンスデバイス33は固定部材31と可動部材32の平面円周上の所定角度ずつずれた位置に複数配置されている。さらに、コンプライアンスデバイス33は固定部材31への固定位置の径が可動部材32への固定位置の径より大きく配置され、コンプライアンス中心、すなわち、コンプライアンスデバイスの軸方向の延長線上の交点が接合部材Aの先端の中心点Cになるように構成されている。
【0011】
図1(b)に示すように、可動部材32が把持している接合部材Aと被接合部材Bとの間に相対ズレがある場合に、付勢力Fを加えると、回転リンク33aが回転してコンプライアンスデバイス33が移動し、接合部材Aと被接合部材Bが接触する。これはコンプライアンス中心である中心点Cを固定点として、接合部材Aと被接合部材Bの相対ズレを吸収する方向に回転モーメントMが発生し、接合部材Aと可動部材32を介してコンプライアンスデバイス33がX−Y平面上を移動する。このように、コンプライアンスデバイスはX−Y平面では自由に移動するが、Z軸方向には動かないという特性を示す。
【0012】
図2は、この発明の実施の形態1に係るコンプライアンスデバイスの斜視図である。
コンプライアンスデバイス(コンプライアンス機構)1は、1本の金属線材が略U字形状及び略コ字形状等に折曲加工され、6つの折曲部材2、2つの第1の嵌合部(嵌合部)3、3つの第2の嵌合部(嵌合部)4及び端部5、6から構成されている。
【0013】
並列配置された折曲部材2は、頭頂部に略U字形状に折曲して形成された折曲部2a、折曲部2aの両端から下方に向けて所定角度外側へ開いた形状で延びた延長部分である1対の直線状の起立部2b及び2cにより略U字形状に構成されている。第1の嵌合部3は、起立部2bの下端部から外側に向けてY軸方向に折り曲げて形成された水平部3a、水平部3aと直交するX軸方向に折り曲げて形成された水平部3b及び水平部3bから内側に向けてY軸方向に折り曲げて形成された水平部3cにより略コ字形状に構成されている。さらに水平部3a及び3cの長さは、水平部3bより長くなるように構成されている。
【0014】
第2の嵌合部4は、起立部2cの下端部から外側に向けてY軸方向に折り曲げて形成された水平部4a、水平部4aと直交するX軸方向に折り曲げて形成された水平部4b及び水平部4bから内側に向けてY軸方向に折り曲げて形成された水平部4cにより略コ字形状に構成されている。さらに水平部4a及び4cの長さは、水平部4bより短くなるように構成されている。また、水平部4bの長さは、水平部3bより長くなるように構成されている。端部5及び6は、起立部2bの下端部から外側に向けてY軸方向に折曲げられ、さらに直行するX軸方向に再度折り曲げられた略L字形状に構成されている。さらに、端部5及び6を接合させることにより、折曲部材2、第1の嵌合部3、第2の嵌合部4がそれぞれ円周上に同角度間隔毎に配置されるコンプライアンスデバイス1を形成することができる。
【0015】
図3は、この発明の実施の形態1に係るコンプライアンスデバイスの部分拡大図であり、折曲部材2と第1の嵌合部3の一部及び第2の嵌合部4の一部を拡大して示している。
コンプライアンスデバイス1をコンプライアンス装置に設置する際に、水平部3aは固定部材8に固定されるが、水平部4aは可動部材9に取り付けられるため移動することができる。水平部4aはX−Y平面の剪断剛性が低く、Z軸方向の剛性が高く構成されている。そのため、X−Y平面にかかる力はコンプライアンスデバイス1に対して剪断力として働き、コンプライアンスデバイス1はX−Y平面で移動変形可能となる。しかし、Z軸方向にかかる力に対してコンプライアンスデバイス1が移動変形することはない。
【0016】
図4は、この発明の実施の形態1に係るコンプライアンス装置の動作を示す図である。なお、図4(a)はコンプライアンス装置の初期状態を示す断面図であり、図4(b)は図4(a)に示すコンプライアンス装置を上方から見た図である。また、図4(c)はコンプライアンス装置に付勢力を加えた状態を示す断面図であり、図4(d)は図4(c)に示すコンプライアンス装置を上方から見た図である。
【0017】
コンプライアンス装置7は、外部装置(図示せず)に固定された固定部材8、固定部材8に対して移動可能な可動部材9、固定部材8と可動部材9を連結するコンプライアンスデバイス1、固定部材8を上方から圧接するリング状の押さえ部材10及び固定部材8の軸部を保持するガイド軸受け11で構成されている。可動部材9には、接合部材Aを把持するための把持ハンド9aが形成されている。固定部材8と可動部材9の間にはコンプライアンスデバイス1が移動変形できるように隙間が設けられている。
【0018】
図4(b)に示すように、固定部材8と可動部材9はそれぞれ円周上の所定角度ずつずれた位置に配置されたコンプライアンスデバイス1により連結されており、コンプライアンスデバイス1は、固定部材8への固定位置の径が可動部材9への固定位置の径より大きくなるように配置されている。また図4(a)に示すように、コンプライアンス中心、すなわちコンプライアンスデバイス1の起立部2cの軸方向の延長線上の交点が、接合部材Aの先端の中心点Cとほぼ同じ位置となるように構成されている。また、図4(b)に示した接合部6aは、コンプライアンスデバイス1の端部5及び6を接合させた接合部分を示している。
【0019】
次に、コンプライアンスデバイス1のコンプライアンス装置7への取り付け方法を説明する。図5は、この発明に係るコンプライアンスデバイスの取り付け位置を示す図であり、コンプライアンス装置を上方から見た図である。なお、図5(a)は固定部材への取り付け位置を示し、図5(b)は可動部材への取り付け位置を示す。図5(a)は押さえ部材10及びガイド軸受け11を取り外して、上から見た図である。
図5(a)に示すように、固定部材8上部表面にはコンプライアンスデバイス1の第1の嵌合部3を取り付けるために略台形に陥凹形成されたガイド溝8aが形成されており、第1の嵌合部3をこのガイド溝8aに嵌合させる。その後、押さえ部材10を上方より挿入し、図4(a)に示すように、固定部材8と第1の嵌合部3を押さえ部材10で圧接して固定する。ここでは、圧接して固定する例を示したが、固定にはネジ止めや接着を用いても良い。
【0020】
図5(b)に示すように、可動部材9にはコンプライアンスデバイス1の第2の嵌合部4を嵌合するための嵌合孔9bが円周上の所定角度ずつずれた位置に3箇所設けられており、嵌合孔9bは第2の嵌合部4が挿入可能な形で構成されている。図4(a)に示すように、嵌合孔9bは上から下に向かう方向に傾斜させて設けられている。第2の嵌合部4を嵌合孔9bに嵌合し固定する。ここでは、嵌合させて固定する例を示したが、固定にはネジ止めや接着を用いてもよい。
【0021】
図4(a)に示すように、固定部材8及び可動部材9に取り付け後のコンプライアンスデバイス1は、下方に向かってコンプライアンス装置7の中心線L側に傾斜させて配置されており、コンプライアンスデバイス1の中心点Cは接合部材Aの先端中央に一致させてある。また、コンプライアンスデバイス1の折曲部材2は、固定部材8の側部及び可動部材9の上部に位置するように配置されている。
【0022】
次に、コンプライアンス装置7の動作について説明する。図4(c)に示すように、コンプライアンス装置7に外部装置(図示せず)から付勢力Fが加わると接合部材Aが被接合部材Bに接合される。その際、図4(c)に示すように接合部材Aと被接合部材Bとの間に相対的なズレがある場合、コンプライアンス中心である中心点Cを中心に時計回り方向の回転モーメントMが発生する。図4(d)に示すように回転モーメントMは接合部材Aと被接合部材Bの相対ズレを吸収する方向に接合部材Aを傾けようとするものであり、この力は可動部材9を介してコンプライアンスデバイス1の第2の嵌合部4に伝達され、接合部材Aと被接合部材Bの相対ズレを吸収する方向に第2の嵌合部4が移動し、コンプライアンスデバイス1が変形する。これにより、接合部材Aと被接合部材Bは完全に接合される。
【0023】
以上のように、実施の形態1によれば、1本の線材から複数の折曲部材、第1の嵌合部及び第2の嵌合部を成形してコンプライアンスデバイスを形成するように構成したので、成形工程の簡略化及び部品点数の削減が可能となり、製造コストを抑制することができる。さらに、コンプライアンスデバイスを取り付ける際にネジ等が不要になり、取り付け容易化及びコスト削減が可能となる。
【0024】
さらに、実施の形態1によれば、コンプライアンスデバイスを略U字形状に構成し、さらにコンプライアンスデバイスを固定部材の側部及び可動部材の上部に位置するように配置したので、圧縮荷重に対して高い剛性を維持したままで、コンプライアンスデバイス及びコンプライアンス装置の小型化が可能となる。
【0025】
なお、上記実施の形態1では、折曲部材を6個形成する例を示したが、固定部材及び可動部材を均一に押さえることができれば折曲部材を設ける個数は適宜変更可能である。
【0026】
なお、上記実施の形態1では、折曲部材の頭頂部を略U字形状に折り曲げて形成する例を示したが、折り曲げる形状は略V字形状や略Ω形状など一部を屈曲させる形状であれば同様の効果を有する。
【0027】
なお、上記実施の形態1では、金属線材を折曲加工してコンプライアンスデバイスを形成する例を示したが、プラスチック等他の素材を用いても同様の効果を有する。
【0028】
実施の形態2.
上述した実施の形態1に係るコンプライアンスデバイスは、1本の線材から複数の折曲部材2、第1の嵌合部3及び第2の嵌合部4を連続して成形する構成を示したが、この実施の形態2に係るコンプライアンスデバイスは、1本の線材から一つの折曲部材と一対の嵌合部を成形するように構成したものである。
【0029】
図6は、この発明の実施の形態2に係るコンプライアンスデバイスの斜視図である。実施の形態1に係るコンプライアンスデバイスの構成要素と同一の部分には実施の形態1で使用した符号と同一の符号を付して説明を省略または簡略化する。
コンプライアンスデバイス21は1本の金属線材が略U字形状に折曲加工され、1つの折曲部材22及び1対の嵌合部22d及び22eから構成されている。
【0030】
折曲部材22は、頭頂部に略U字形状に折曲して形成された折曲部22a、折曲部22aの両端から下方に向けて所定角度外側へ開いた形状で延びた延長部分である1対の直線状の起立部22b及び22cにより略U字形状に構成されている。嵌合部22dと22eは、起立部22b及び22cの下端部からそれぞれ外側に向けてY軸方向に折り曲げて形成されている。また、嵌合部22dと22eの長さは同一である。
【0031】
コンプライアンスデバイス21をコンプライアンス装置に設置する際に、嵌合部22dは固定部材28に固定されるが、嵌合部22eは可動部材29に取り付けられるため移動することができる。嵌合部22eはX−Y平面の剪断剛性が低く、Z軸方向の剛性が高く構成されている。そのため、X−Y平面にかかる力はコンプライアンスデバイス21に対して剪断力として働き、コンプライアンスデバイス21はX−Y平面で移動変形可能となる。しかし、Z軸方向にかかる力に対してコンプライアンスデバイス21が移動変形することはない。
【0032】
図7は、この発明の実施の形態2に係るコンプライアンス装置の動作を示す図である。なお、図7(a)はコンプライアンス装置の初期状態を示す断面図であり、図7(b)は図7(a)に示すコンプライアンス装置を上方から見た図である。また、図7(c)はコンプライアンス装置に付勢力を加えた状態を示す断面図であり、図7(d)は図7(c)に示すコンプライアンス装置を上方から見た図である。
コンプライアンス装置27は、外部装置(図示せず)に固定された固定部材28、固定部材28に対して移動可能な可動部材29及び固定部材28及び可動部材29を連結するコンプライアンスデバイス21で構成されている。可動部材29には、接合部材Aを把持するための把持ハンド29aが形成されている。固定部材28と可動部材29の間にはコンプライアンスデバイス21が移動変形できるように隙間が設けられている。
【0033】
図7(b)に示すように、固定部材28と可動部材29は円周上の90度ずつずれた位置に4箇所配置されたコンプライアンスデバイス21により連結されおり、コンプライアンスデバイス21は、固定部材28への固定位置の径が可動部材29への固定位置の径より大きくなるように配置されている。また、図7(a)に示すように、コンプライアンス中心、すなわち、コンプライアンスデバイス21の起立部22cの軸方向の延長線上の交点が、接合部材Aの先端の中心点Cとほぼ同じ位置となるように構成されている。
【0034】
次に、コンプライアンスデバイス21のコンプライアンス装置27への取り付け方法を説明する。図8は、この発明の実施の形態2に係るコンプライアンスデバイスの取り付け位置を示す図であり、コンプライアンス装置を上方から見た図である。なお、図8(a)は固定部材への取り付け位置を示し、図8(b)は可動部材への取り付け位置を示す。
図8(a)に示すように、固定部材28にはコンプライアンスデバイス21の嵌合部22dを嵌合するための嵌合孔28aが円周上の90度ずつずれた位置に4箇所設けられており、嵌合孔28aは嵌合部22dが挿入可能な形で構成されている。図7(a)に示すように、嵌合孔28aは下から上に向かう方向に傾斜させて設けられている。嵌合部22dをこの嵌合孔28aに嵌合させて固定する。ここでは、嵌合させて固定する例を示したが、固定にはネジ止めや接着を用いてもよい。
【0035】
図8(b)に示すように、可動部材29にはコンプライアンスデバイス21の嵌合部22eを嵌合するための嵌合孔29bが円周上の90度ずつずれた位置に4箇所設けられており、嵌合孔29bは嵌合部22eが挿入可能な形で構成されている。図7(a)に示すように、嵌合孔29bは上から下に向かう方向に傾斜させて設けられている。嵌合部22eを嵌合孔29bに嵌合させて固定する。ここでは、嵌合させて固定する例を示したが、固定にはネジ止めや接着を用いてもよい。
【0036】
図7(a)に示すように、固定部材28及び可動部材29に取り付け後のコンプライアンスデバイス21は、下方に向かってコンプライアンス装置27の中心線L側に傾斜させて配置されており、コンプライアンスデバイス21の中心点Cは接合部材Aの先端中央に一致させてある。また、コンプライアンスデバイス21の折曲部材22は、固定部材28の側部及び可動部材29の上部に位置するように配置されている。
【0037】
次に、コンプライアンス装置27の動作について説明する。図7(c)に示すように、コンプライアンス装置27に外部装置(図示せず)から付勢力Fが加わると接合部材Aが被接合部材Bに接合される。その際、図7(c)に示すように接合部材Aと被接合部材Bとの間に相対的なズレがある場合、コンプライアンス中心である中心点Cを中心に時計回り方向の回転モーメントMが発生する。図7(d)に示すように、回転モーメントMは接合部材Aと被接合部材Bの相対ズレを吸収する方向に接合部材Aを傾けようとするものであり、この力は可動部材29を介してコンプライアンスデバイス21の嵌合部22eに伝達され、接合部材Aと被接合部材Bの相対ズレを吸収する方向に嵌合部22eが移動し、コンプライアンスデバイス21が変形する。これにより、接合部材Aと被接合部材Bは完全に接合される。
【0038】
以上のように、実施の形態2によれば、1本の線材から1つの折曲部材及び1対の嵌合部を成形してコンプライアンスデバイスを形成するように構成したので、成形工程の簡略化及び部品点数の削減が可能となり、製造コストを抑制することができる。さらに、コンプライアンスデバイスを取り付ける際にネジ等が不要になり、取り付けの容易化及びコスト削減が可能となる。
【0039】
さらに、実施の形態2によれば、コンプライアンスデバイスを略U字形状に構成し、さらにコンプライアンスデバイスを固定部材の側部及び可動部材の上部に位置するように配置したので、圧縮荷重に対して高い剛性を維持したままで、コンプライアンスデバイス及びコンプライアンス装置の小型化が可能となる。
また、嵌合部を簡易な形状としたので、嵌合部を嵌合する嵌合孔の形成が容易となり、組み付けも容易となる。
【0040】
なお、上記実施の形態2では、コンプライアンスデバイスを4箇所に配置する例を示したが、固定部材及び可動部材を均一に押さえることができれば配置するコンプライアンスデバイスの個数は適宜変更可能である。
【0041】
なお、上記実施の形態2では、折曲部材の頭頂部を略U字形状に折り曲げて形成する例を示したが、折り曲げる形状は略V字形状や略Ω形状など一部を屈曲させる形状であれば同様の効果を有する。
【0042】
なお、上記実施の形態2では、金属線材を折曲加工してコンプライアンスデバイスを形成する例を示したが、プラスチック等他の素材を用いても同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】コンプライアンス装置の動作原理を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るコンプライアンスデバイスの斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るコンプライアンスデバイスの部分拡大図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るコンプライアンス装置の動作を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るコンプライアンスデバイスの取り付け位置を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るコンプライアンスデバイスの斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係るコンプライアンス装置の動作を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るコンプライアンスデバイスの取り付け位置を示す図である。
【図9】従来のコンプライアンス装置の部分断面図である。
【図10】従来のコンプライアンス装置の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1,21 コンプライアンスデバイス
2,22 折曲部材
2a,22a 折曲部
2b,2c,22b,22c 起立部
3 第1の嵌合部
4 第2の嵌合部
3a,3b,3c,4a,4b,4c 水平部
5,6 端部
6a 接合部
7,27 コンプライアンス装置
8,28 固定部材
8a ガイド溝
9,29 可動部材
9a,29a 把持ハンド
9b,28a,29b 嵌合孔
10 押さえ部材
11 ガイド軸受け
22d,22e 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
前記固定部材に対して移動可能な可動部材と、
前記固定部材と前記可動部材を接続し、前記固定部材と前記可動部材の相対誤差を吸収するコンプライアンス機構を備えたコンプライアンス装置において、
前記コンプライアンス機構は、線材を折り曲げて形成される折曲部と、
前記折曲部の両端から直線状に延設された一対の起立部と、
前記起立部の下端部を折り曲げて延設された嵌合部とを有し、
前記折曲部と前記一対の起立部が前記嵌合部と複数交互に連接されて繰り返し単位を形成し、
複数の前記嵌合部は前記固定部材または前記可動部材に嵌合されていることを特徴とするコンプライアンス装置。
【請求項2】
固定部材と、
前記固定部材に対して移動可能な可動部材と、
前記固定部材と前記可動部材を接続し、前記固定部材と前記可動部材の相対誤差を吸収するコンプライアンス機構を備えたコンプライアンス装置において、
前記コンプライアンス機構は、線材を折り曲げて形成される折曲部と、
前記折曲部の両端から直線状に延設された一対の起立部と、
前記一対の起立部のそれぞれの下端部を折り曲げて延設された一対の嵌合部とを有し、
前記一対の嵌合部のそれぞれが前記固定部材または前記可動部材に嵌合されていることを特徴とするコンプライアンス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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