説明

コンベア反転装置及びそれを用いた検査装置

【課題】 上下自立形状のワークを円滑に上下反転するとともに、高速で搬送することが可能で、かつ簡便な構造を有する搬送反転機構を提供することで、装置構成部品数が少なく、総合的にコンパクトで安価、メンテナンスコストにおいても安価なコンベア反転装置と、それを用いた画像検査装置を提供すること
【解決手段】 溝2を設けた駆動ドラム1の外周部と溝2の部分に二つのエンドレスベルト3、4を掛け、ワーク7を二つのエンドレスベルト3,4の間に担持させた状態で、駆動ドラム1の部分を上方向に搬送する。これによって、二つのエンドレスベルト3、4が分離した後、ワーク7は上下が反転した状態で搬送される。また、このコンベア反転装置の所要の位置に画像認識カメラを設置することにより、ワーク7の全周囲を検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上下自立形状のワークの搬送と上下反転を同時に行いながら、外観形状や塵などの異物付着の画像検査を必要とする成型加工製品や切削加工の検査工程で使用する、コンベア反転装置及びそれを用いた検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種のワーク搬送方法は、ベルトコンベア上に載置したワークをステップ送りで搬送し、停止サイクルでロボットアームにより上下反転させるか、ワークを真空吸着により固定する吸着ノズルを備えたインデックステーブルや、ワークを真空吸着により固定する吸着ノズルを備えたロボットアームにより受渡ししながら搬送するか、前記のインデックステーブルとロボットアームの搬送機構を組み合わせて搬送するものが一般的であった。
【0003】
そのため個々のワークの寸法形状に合わせた吸着ノズルが必要であり、生産量変更時のワーク切り替わり時には吸着ノズル交換の段取り替えが必要であり、装置の稼動停止による効率低下が発生し、他品種生産には必ずしも適したものではなかった。また、インデックステーブル方式やロボットアームによる搬送方式は、装置の構成部品が多く複雑なものであるため装置の価格が高価となった。
【0004】
図5は、コンベアのみでワークの上下を反転させる、従来の装置の一例を示す図である。図5において、14はワーク、15は一次側のベルトコンベア、16は二次側ベルトコンベア、17はカバーガイド、18は飛出し防止板である。この例においては、2台のベルトコンベアを用い一次側のベルトコンベア15の終端にカバーガイド17を設け、ワーク14がカバーガイド17と一次側のベルトコンベア15との空隙の部分を滑落する間に、ワーク14の上下が反転する。
【0005】
しかし、この構造の搬送方式においては、ワーク14は一応反転するが、反転後の姿勢の乱れによるワーク14の列の蛇行、及びワーク14の間隔のバラツキが生じた。さらに、カバーガイド17へのワーク14の挟まりは、ワーク14にダメージを与えると共に、ワーク14の詰まりにより、ワーク14の大量落下を誘発した。
【0006】
また、コンベア間の間隙を小さくする必要があるため、対応できるワークは薄型に限定され、二次側のコンベア16は折り返せず、上部が開かれた方向、すなわち全長が長くなる方向に配置する必要があった。駆動系も必然的に2系統必要であり、相互の速度調整も必要となった。
【0007】
このようなカバーガイド17で反転させる方法では、反転自体が自然落下によるもので、反転後の位置がどうしても安定しないのは前記の通りである。この解決策として二次側コンベア16にワーク14の整列機構を付加するにしても、バッファを設ける必要もあり、搬送コンベアがさらに長くなるとともに複雑かつ高額な装置となってしまう。また、ワーク14の重心が高い場合は、着座不安定となり、搬送それ自体が不可能となる致命的な欠点がある。
【0008】
次に、インデックステーブル方式での反転機構であるが、メカニカルなワークの受渡しが必要となり、真空吸着ノズルでの吸着動作や真空破壊といった真空、空圧の調整、管理が必要となる。しかし、ワークの材質や表面の処理状態に対応しての真空吸着での確実な動作を保証するには、真空差圧検出センサ使用での吸着動作時間を確保する必要性があった。異なる品種への対応に至っては、ノズルの交換、位置、高さ調整が必要となり、単なる段取り替えの範囲を逸脱してしまう。
【0009】
さらに、ベルトコンベアとロボットアームによる搬送反転方式においては、ロボット自体が高額であり、単なる反転動作にロボットを当てるにはコストが掛かり過ぎるという問題がある。タクトアップを図るにしても、反転作業時はコンベアを停止させる必要があり、停止させた分は完全なロスタイムである。また、薄型のワークの取り扱いに関しては、ロボットハンドで掴めない致命的な欠点がある。
【0010】
このような問題点に対処する技術として、特許文献1には、2本の搬送ベルトの間に形成された間隙にワークを挟んで、ワークを反転する装置が開示されている。しかしながら、ここに開示されている装置では、搬送ベルトの表面にワーク形状に対応した溝を形成する必要がある。従って使用する搬送ベルトは一定以上の厚さを具備する必要があり、多品種への適用という観点で汎用性に欠けるものである。
【0011】
また、ワークの検査には、CCDカメラなどで撮影したワークの画像をコンピュータで処理する方法が一般的に用いられる。この際に支障となるのが、光の反射である。つまり、通常の成形品などでは問題ないが、塵埃や微少な異物の混入が不良の要因となるワークは、完成後直ちに高分子材料の透明フィルムなどで包装された状態で取り扱われることが多く、フィルム表面における光の反射で、ワークの撮像が阻害されるからである。
【0012】
【特許文献1】 特開2001−327929号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の課題は、前記従来技術における欠点に鑑み、上下自立形状のワークを円滑に上下反転するとともに、高速で搬送することが可能で、かつ簡便な構造を有する搬送反転機構を提供することで、装置構成部品数が少なく、総合的にコンパクトで安価、メンテナンスコストにおいても安価なコンベア反転装置と、それを用いた画像検査装置を提供すること、及び透明フィルムで包装されたワークについても、検査の対象とし得る装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ベルトコンベアの駆動ドラム自体にワークを担持させることにより、ワークの上下反転が極めて簡単に行えることに着目し、これに適応した駆動ドラムの構造を検討するとともに、ベルトコンベアの下側からの照射光による、ワークの投影像を用いることを検討した結果なされたものである。
【0015】
即ち、本発明は、外周のほぼ中央部に溝が設けられ、ほぼ水平方向の回転軸を有する駆動ドラムと、前記駆動ドラムの外周部に接して駆動される第一のエンドレスベルトと、前記溝に接して駆動される第二エンドレスベルトと、前記第一のエンドレスベルトにおける前記駆動ドラムの外周と接していない部分の作動位置を設定する複数のドラムからなる第一のガイドドラムセットと、前記第二のエンドレスベルトにおける前記駆動ドラムの溝に接していない部分の作動位置を設定する、少なくとも1個のドラムからなる第二のガイドドラムセットを有するコンベア反転装置であって、ワークを前記第一のエンドレスベルトまたは前記第二のエンドレスベルトのいずれか一方の上に載置した状態で、前記駆動ドラムを作動させ、前記ワークを前記第一のエンドレスベルトと前記第二のエンドレスベルトの間に挟み前記溝の部分に担持させた状態で、前記駆動ドラムの部分を搬送することにより、前記ワークの上下を反転する機能及び前記ワークを搬送する機能を有することを特徴とするコンベア反転装置である。
【0016】
また、本発明は、前記ワークの形状に合わせ、前記駆動ドラムを異なる溝形状を有する駆動ドラムに交換可能で、前記第一のエンドレスベルトと前記第二のエンドレスベルトの少なくともいずれかを異なる幅のエンドレスベルトに交換可能であることを特徴とする、前記のコンベア反転装置である。
【0017】
また、本発明は、前記駆動ドラムの周速に同期してワークを供給するフィーダと、画像認識カメラを具備し、前記ワークが上下反転する前後における、前記第一のエンドレスベルトまたは前記第二のエンドレスベルトとの接触面以外の、前記ワークの部位の画像検査の結果に基づいて前記ワークを分別する手段を有することを特徴とする、前記のコンベア反転装置を用いた検査装置である。
【0018】
また本発明は、前記第一のエンドレスベルト及び前記第二のエンドレスベルトの少なくともいずれかが、透明な材料からなり、前記ワークが搬送される部分のワークが載置される面の反対側にランプが設置され、前記ランプと対向する側に、少なくとも1台の透過像用の画像認識カメラを設置してなることを特徴とする、前記の検査装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のコンベア反転装置においては、ベルトコンベアの搬送方向を、高さ方向で折り返すことができ、開かれたスペースに効率良くカメラを配置することができ、しかもワークの上下を反転できるので、ワークの全周側面の撮像や端面方向の撮像により画像検査を行い、その結果、不良と判定したワークは、ベルトコンベアの途中に設けた切替移送機構でワークの搬送方向を変えることにより、ワークの不良品を回収できる。また、検査を完了したワークの良品は、ベルトコンベアの終端より自然落下させ回収をする。以上の如きシンプルな機構で装置を構成することにより、コンベア反転装置を用いた安価な画像検査装置の提供を可能にする。
【0020】
また、本発明の検査装置においては、ベルトコンベアのベルトを透明な材料で構成し、ワークが通過する部分に下側から光を照射し、透過光によるワークの画像を検査に用いることも可能なので、高分子材料からなる透明フィルムで包装されたワークであっても反射光の影響を受けずに検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明に係るコンベア反転装置とそれを用いた検査装置の基本的な構成の例を模式的に示した図である。図1において、1は駆動ドラム、2は溝、3は第一のエンドレスベルト、4は第二のエンドレスベルト、5a、5b、5c、5d、6a、6bはガイドドラム、7はワーク、8はエアブローノズル、9a、9b、9c、9d、9eは画像認識カメラ、10はワーク回収トレーである。ガイドドラム5a、5b、5c、5dは、第一のエンドレスベルト3の作動位置を設定する第一のガイドドラムセットを構成し、ガイドドラム6a、6b、は第二のエンドレスベルト4の作動位置を設定する第二のガイドドラムセットを構成している。
【0022】
また、図2は、駆動ドラム1、溝2、第一のエンドレスベルト3、第二のエンドレスベルトの位置関係を示す斜視図である。図2に示したように、本発明のコンベア反転装置においては、駆動ドラム1の外周のほぼ中央に全周に亘って、対象となるワーク7の形状に合わせた溝2を設ける。駆動ドラム1の外周側には第一のエンドレスベルト3を掛け、溝2には第二のエンドレスベルト4を掛ける。これによって、駆動ドラム1の回転に従い、2本のエンドレスベルトが作動する。
【0023】
ワーク7は、振動を利用したリニアフィーダにより、1個ずつ第一のエンドレスベルト3の上に載置され、第一のエンドレスベルト3の作動により、溝2の部分に入って行くが、この時、第一のエンドレスベルト3と第二エンドレスベルト4によって挟まれ、溝2の部分に担持されたまま上の方向に搬送されることになる。
【0024】
図3は、ワーク7が溝2の部分に担持された状態を示すである。本発明のコンベア反転装置においては、その構造的な特徴から、第一のエンドレスベルト3に、可撓性や伸縮性を備えた材質を用いることにより、図3に示すように、溝2の深さよりも高さ方向の寸法がやや大きめのワーク7であっても、対応可能であることが大きな特長となる。
【0025】
そして、駆動ドラム1の上の部分における第一にエンドレスベルト3と第二のエンドレスベルト4が分離する際に、ワークは第二のエンドレスベルト側に、上下が反転した状態で乗り移り搬送される。
【0026】
次に、供給されたワーク7が、検査位置に到着したことを光学センサで検出し、所要の位置に設置されたワークの画像検査を行う画像認識カメラにより画像撮影を行うシーケンスを構成する。画像撮影は、ワーク7の上下が反転した後も行われるので、ワーク7の全周囲の検査が可能となる。
【0027】
画像検査の結果不良と判断されたワーク7は、エアブローノズル8から噴射されるエアにより、図1における奥の方向に移送され回収される。また、良品と判断されたワーク7は、そのまま第二のエンドレスベルト4によって搬送され、自重落下によりワーク回収トレー10に収納される。
【0028】
以上に説明したように、本発明のコンベア反転装置は、搬送するワークが連続的に反転され搬送されるため、ワークの上下反転のためにコンベアを停止させる必要がまったくなく、時間的なロスがまったく発生しない。また、一つの駆動ドラム、数個のガイドドラム、2本のベルトで構成され、駆動源となるモータなども一つで済むことから、シンプルなワーク搬送装置を提供できるとともに、これを利用することにより、極めてコンパクトな画像検査装置を提供できる。
【0029】
品種の段取り替えを行う場合でも、駆動ドラムと2本のエンドレスベルトの少なくともいずれかを交換することだけで対応が可能であり、このことがメンテナンスの低コスト化や工程時間の削減に対しても寄与することができる。
【0030】
次に、透過光を用いて検査を行う例について説明する。図4は透過光を用いて検査を行う例を模式的に示した図である。図4において、7はワーク、9fは画像認識カメラ、11は包装フィルム、12は透明ベルト、13はランプである。ここに示した透明ベルト12は、図1における第一のエンドレスベルト3及び第二のエンドレスベルト4のいずれに適用してもよく、ワークの形状や装置の取り回しなどの条件によって適宜設定することができる。
【0031】
ここで用いるランプ13としては、ハロゲンランプなど、なるべく小型で高輝度のものが望ましい。また、透明ベルト12の材質としては、高分子材料で可撓性を有し、透明なものが得られるものであれば、とくに限定されるものではない。例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ここではナイロン6を用いた。
【0032】
このような構成とすることで、外部の照明光が包装フィルム11に反射される場合でも、透過光によるワークの撮像により、ワークの輪郭を確実に信号として捕らえることができる。これによってワークの検査や不良品の分別を行うことができる。
【0033】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれる。例えば、ワーク7の供給を第二のエンドレスベルト4側に行いたい場合であっても、駆動ドラム1の回転方向を逆にすることで対応できるし、装置全体の取り回しの関係で、駆動源となるモータなどを駆動ドラム1以外のガイドドラムに取り付けることも可能である。即ち、本技術分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】 本発明に係るコンベア反転装置とそれを用いた検査装置の基本的な構成の例を模式的に示した図。
【図2】 駆動ドラム1、溝2、第一のエンドレスベルト3、第二のエンドレスベルトの位置関係を示す斜視図。
【図3】 ワークが溝の部分に担持された状態を示す図。
【図4】 透過光を用いて検査を行う例を模式的に示した図。
【図5】 従来のコンベア反転装置の一例を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1 駆動ドラム
2 溝
3 第一のエンドレスベルト
4 第二のエンドレスベルト
5a,5b,5c,5d,6a,6b ガイドドラム
7,14 ワーク
8 エアブローノズル
9a,9b,9c,9d,9e、9f 画像認識カメラ
10 ワーク回収トレー
11 包装フィルム
12 透明ベルト
13 ランプ
15 一次側のベルトコンベア
16 二次側ベルトコンベア
17 カバーガイド
18 飛出し防止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周のほぼ中央部に溝が設けられ、ほぼ水平方向の回転軸を有する駆動ドラムと、前記駆動ドラムの外周部に接して駆動される第一のエンドレスベルトと、前記溝に接して駆動される第二エンドレスベルトと、前記第一のエンドレスベルトにおける前記駆動ドラムの外周と接していない部分の作動位置を設定する複数のドラムからなる第一のガイドドラムセットと、前記第二のエンドレスベルトにおける前記駆動ドラムの溝に接していない部分の作動位置を設定する、少なくとも1個のドラムからなる第二のガイドドラムセットを有するコンベア反転装置であって、ワークを前記第一のエンドレスベルトまたは前記第二のエンドレスベルトのいずれか一方の上に載置した状態で、前記駆動ドラムを作動させ、前記ワークを前記第一のエンドレスベルトと前記第二のエンドレスベルトの間に挟み前記溝の部分に担持させた状態で、前記駆動ドラムの部分を搬送することにより、前記ワークの上下を反転する機能及び前記ワークを搬送する機能を有することを特徴とするコンベア反転装置。
【請求項2】
前記ワークの形状に合わせ、前記駆動ドラムを異なる溝形状を有する駆動ドラムに交換可能で、前記第一のエンドレスベルトと前記第二のエンドレスベルトの少なくともいずれかを、異なる幅のエンドレスベルトに交換可能であることを特徴とする、請求項1に記載のコンベア反転装置。
【請求項3】
前記駆動ドラムの周速に同期してワークを供給するフィーダと、少なくとも1台の画像認識カメラを具備し、前記ワークが上下反転する前後における、前記第一のエンドレスベルトまたは前記第二のエンドレスベルトとの接触面以外の、前記ワークの部位の画像検査の結果に基づいて前記ワークを分別する手段を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコンベア反転装置を用いた検査装置。
【請求項4】
前記第一のエンドレスベルト及び前記第二のエンドレスベルトの少なくともいずれかは、透明な材料からなり、前記ワークが搬送される部分のワークが載置される面の反対側にランプが設置され、前記ランプと対向する側に、少なくとも1台の透過像用の画像認識カメラを設置してなることを特徴とする、請求項3に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−208963(P2009−208963A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208239(P2008−208239)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000250753)凌和電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】