説明

コーティングの堆積装置及び方法

【課題】部品の表面上、特に従来のコールドスプレー装置を用いてアクセスするには困難である表面にコーティングを堆積するのに好適なスプレーコーティング方法及び装置(14、16、20)を提供すること。
【解決手段】本方法及び装置(14、16、20)は、長手方向軸線とその1つの端部に出口とを備えた管状本体(22)を有するスプレーガン(16)を利用する。本体(22)は、収束通路(38)を画成する第1の部分(26)と、拡大通路(40)を画成し且つ本体の出口(32)を画成する第2の部分(28)と、収束通路(38)及び拡大通路(40)の間でこれらを接続するスロート(42)を画成するスロート部(30)と、を有する。ガン(16)は更に、収束通路(38)の上流側にガスを導入するための少なくとも1つの入口(36)と、スロート(42)及びその直ぐ上流側で原材料を導入するための少なくとも1つの原材料入口(34)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にコーティングの堆積装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、ガスタービンの過酷な熱環境などの高温に曝される部品の限られた内部空間に保護コーティングを堆積することができるコーティング装置に関し、更に、このような部品及びその保護コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
発電で利用されるガスタービンエンジン、蒸気タービン及び風力タービンを始めとする航空機及び産業用ガスタービンの特定の部品は、摩耗、腐食、固体粒子の浸食、高温などに付される用途で保護コーティングを必要とする。保護コーティングの非限定的な実施例は、摩耗、浸食、酸化、腐食及び/又は熱的保護をもたらす金属及びセラミック系コーティングを含む。金属コーティングは、拡散コーティング及びオーバーレイコーティングを含み、後者の実施例は、MCrAlXコーティング(ここでMは鉄、コバルト及び/又はニッケルであり、Xはイットリウム又は他の希土類元素である)である。オーバーレイコーティングは、通常、熱溶射及び/又は電子ビーム物理蒸着(EBPVD)で基材の表面に直接堆積される。タービン作動中のような、高温暴露次に、耐環境コーティングが堅固に付着した酸化物層、例えば、酸化剤及び環境攻撃の他の発生源に対する障壁を提供するアルミナ(Al23)を形成する。様々なセラミック材料を用いて、摩耗、腐食、酸化、浸食及び/又は熱的な保護をもたらす。耐摩耗性、耐食性及び耐浸食性については、一般に使用されるコーティング材料には、WC−Co(通常は、約5〜50重量%)、TiN、TaC、Al23、TiO2、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などが挙げられる。セラミックコーティングの接着を強化し、その有効寿命を延ばすために、耐酸化性ボンドコートが利用されることが多い。ボンドコートは通常、上述のタイプの拡散コーティング又はオーバーレイコーティングの形態であり、その堅固に付着した酸化物(例えば、アルミナ)の層が、セラミックコーティングのボンドコートへの付着を助ける。
【0003】
熱溶射堆積プロセスは一般に、プラズマ溶射(大気、真空及び減圧)及び高速フレーム溶射(HVOF)などの技法を含む。熱溶射プロセスは、表面に対して熱可溶性材料(例えば、金属、セラミック)の溶融粒子又は少なくとも熱軟化粒子を噴出することを含み、ここで粒子は、クエンチされて表面に結合され、コーティングを生成する。熱溶射プロセスで堆積されたコーティングは、通常、堆積プロセスの結果として生じる不均質性及び多孔率の程度によって特徴付けられ、ここでは溶融材料の「スプラット」が堆積され、続いて固化される。熱溶射内が超高温であることに起因して、堆積粒子の酸化及び/又は相変化が一般的である。
【0004】
コールドスプレーは、比較的新しい粒子堆積技法である。米国特許第5302414号で記載されるように、コールドスプレーは、高速であるが、従来の熱溶射プロセスと比べて有意に低温で粒子(粉体)を噴出することによってコーティングを堆積させる。プロセスガス(例えば、ヘリウム、空気、窒素など)は、収束拡大ノズルを通じて粉体粒子を加速させ、超音速のガス流及び300m/s以上の粒子速度をもたらすのに使用される。プロセスガスは、温度800℃まで加熱することができるが、より典型的には、堆積材料におけるフライト中の酸化及び相変化を最小限又は排除するために600℃未満まで加熱される。比較的低い堆積温度及速度が極めて速い結果として、コールドスプレープロセスは、十分な接着性、高密度、硬質及び耐摩耗性のコーティングを堆積する可能性を提供し、その純度は、基本的に使用される粉体の純度に依存する。
【0005】
チョーク状態における収束拡大ノズル動作のガス流は、以下の式(1)で記述される。ほとんどのコールドスプレー装置で通常使用される収束拡大ノズルのガス流の更なる詳細は、P. H. Oosthuizen and E. Carscallen, Compressible Fluid Flow (1997)を始めとする様々な文献に公開されている、一次元圧縮性流体流の理論から理解することができる。出口ガス速度は、例えば、式(1)によるノズルへのノズル出口の面積比など、ガン設計に依存する。
【0006】
【数1】

式中、Aはノズル出口の面積、A*はノズルスロートの面積、Mは流出ガスのマッハ数及びガンマ(γ)は、使用するプロセスガスにおける一定圧(Cp)での熱容量と一定容積(Cv)での熱容量との断熱指数、すなわち熱容量比である。式(1)から、出口速度を含むガス流パラメータは比A/A*に依存することが明らかである。出口ガス速度が式(1)から予測されるマッハ数であるように、式(1)のチョーク状態でのノズルを動作させるには、特定の最小ガス質量流が必要となる。高いガンマ値を有するガスは、比較的大きなマッハ数をもたらすので有利である。ガス質量流がチョーク状態を達成するのに必要な量を超えて増大すると、ガス出口速度は増大しないが、ノズルのガス密度を増大させるのに有利である。より高密度のガスは、原材料の粒子により大きな抗力を加えることができ、従って、粒子を加速するのにより効果的である。このようにして、ガス質量流の速度を高める作用は、粒子出口速度を向上させる働きをする。粒子は、コールドスプレーにおいて十分な接着性があり且つ高密度なコーティングを形成するために一定の最低臨界速度を上回って移動しなければならないので、コールドスプレープロセスではより高速の粒子速度が一般に好ましい。より高速の粒子出口速度を達成するためのより大きなガス質量流速度は、ノズルに対するガス入口でのガス圧を増大させることで得られることが多い。
【0007】
収束拡大ノズルのガス質量流速度及び幾何形状とは対照的に、コールドスプレーガンのガス速度を増大させる際の温度の役割は、幾分間接的なものである。上記の式(1)から分かるように、ガス温度は出口マッハ数とは関係がない。しかしながら、音速は温度に伴って増大するので、高温ガスがより高速で移動することから、ガス温度の上昇は、出口ガスの速度に影響を与える。
【0008】
上記の利点は提示されるが、コールドスプレーガンの収束拡大設計要件は、比較的大型のガンをもたらす結果となり、限定された空間内及び/又はアクセスが制限もしくは困難な場所の表面に堆積コーティングするためコールドスプレープロセスを利用することが妨げられる。特定の実施例には、産業ガスタービン用の燃焼器のトランジションピースの内部表面が挙げられ、ここでは摩耗、腐食及び酸化保護をもたらすために高密度の金属コーティングが極めて有利となる。結果として、トランジションピースの内部表面は通常、大気プラズマ溶射(APS)を用いてコーティングされ、そのトーチは、トランジションピースの比較的小さく且つ限定された内部内に適合することができる。しかしながら、APSプロセスは、酸化雰囲気中極めて高温で実施されるので、従来のAPS金属コーティングは、多孔性で且つ高度に酸化され、コーティング性能を損う。従って、コールドスプレーによって堆積することができるタイプのコーティングと類似し、酸化物及び相変化作用が実質的に存在しない高密度金属コーティングでトランジションピース及び他のハードウェアの内部表面をコーティングするのが望ましいことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5302414号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来のコールドスプレー装置を用いてアクセスするには困難である部品の表面にコーティングを堆積するのに好適なスプレーコーティング方法及び装置を提供する。本方法及び装置は、ガスタービンの燃焼セクション内のトランジションピースなどの部品の内部表面にコーティングを堆積するのに特に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、長手方向軸線及び1つの端部に出口を有する管状本体を含むスプレーガンが提供される。本体は、収束通路を画成する第1の部分と、本体の出口を形成する拡大通路を画成する第2の部分と、収束通路及び拡大通路の間でこれらを接続するスロートを画成するスロート部と、を有する。ガンは、収束通路の上流側にガスを導入するための少なくとも1つの入口と、スロート及びその直ぐ上流側で原材料を導入するための少なくとも1つの原材料入口とを更に備える。
【0012】
本発明の別の態様によれば、スプレーガンを用いてコーティングを堆積する方法が提供される。本方法は、一般に、スプレーガンの管状本体内で収束通路の上流側にガスを導入し、その後、ガスが、収束通路、本体内のスロート、次いで本体内においてスプレーガンの出口を画成する拡大通路を通って移動させる段階を含む。ガスは、出口を通じて超音速で流出する。粒子原材料は、スロート又はその直ぐ上流側で導入され、該粒子が、出口を亜音速又は超音速で出て表面に堆積しコーティングを形成する。
【0013】
本発明の別の態様は、上述のようにして、例えばガスタービンエンジン燃焼器のトランジションピースの内部表面上、上にコーティングを堆積することができる部品並びに限定された内部表面を有する他の中空構造体及び部品である。
【0014】
上記に照らして、本発明の技術的作用は、従来のコールドスプレー装置ではアクセスが困難な表面についての既存の堆積プロセスに対する実行可能且つ経済的な代替形態としてコールドスプレープロセスを用いることができる点であることが分かる、本発明により可能にされるコールドスプレープロセスを用いて、限定ではないが、WC、WC−Co、Cr23、NiCr、Cr23−NiCr、TiN、TaC、MCrAlX、クロム−タングステン合金、コバルト及び他のコバルト基合金、並びに多層コーティングをもたらすこれら及び他の材料の組み合わせを始めとする耐摩耗性、耐食性、耐浸食性及び耐酸化性のコーティングを堆積することができる。
【0015】
本発明の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に従って構成されたコールドスプレーガンの側面図。
【図2】図1のコールドスプレーガンの端面図。
【図3】図1及び2のコールドスプレーガンの代替のノズル構成の概略断面図。
【図4】図1及び2のコールドスプレーガンの代替のノズル構成の概略断面図。
【図5】コールドスプレー装置の延長ブラケットに装着された、図1から4のコールドスプレーガンの概略図。
【図6】図5の延長ブラケット及び装着されたコールドスプレーガンの拡大概略図。
【図7】図5及び6の装置を用いて、産業用ガスタービンエンジン燃焼器のトランジションピース内の内部表面にコーティングを堆積させることを示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、図7に概略的に表されるように、産業ガスタービン用の燃焼器のトランジションピース10上へのコーティングの堆積に関連して説明する。当業者には理解されるように、燃焼器及びそのトランジションピースは、缶型又はアニュラ型構成を有し、従来技術によるこれまでのコールドスプレーガンがアクセスするのが困難な内部表面を画成することができる。これらの内部表面(図7における12)は、限定ではないが、その組成が摩耗、腐食、酸化及び浸食からの保護をもたらす高密度の酸化物が無い金属コーティングを始めとするコーティングによる保護の恩恵を受け、この非限定的な実施例には、WC、WC−Co、Cr23、NiCr、Cr23−NiCr、TiN、TaC、MCrAlX、クロム−タングステン合金、コバルト及び他のコバルト基合金、並びに多層コーティングをもたらすこれら及び他の材料の組み合わせが含まれる。本発明は、トランジションピースへのコーティングの堆積に好適であるが、種々のタイプの部品、特に従来のコールドスプレーガンが容易にアクセスできない内部表面並びにオーバーレイコーティングから恩恵を受けることができる他の表面を有するものに様々なコーティングを堆積するのにも適用することができる。
【0018】
図7は、延長ブラケット18の端部に装着されたコールドスプレーガン16を備える装置14を示している。トランジションピース10は、コーティングされることになる内部表面が小さな内径の結果として従来のコールドスプレーガンでは容易にアクセスできないタイプのもので表されている。トランジションピース10は、テーブル20上に支持されて図示されており、トランジションピース10内のガン16の向き及び位置の正確な制御を得るために、装置14にフィードバックを提供するよう適切な位置センサを用いて監視され、基本的には、トランジションピース10の内部表面上の何れかの場所にコーティングを堆積できるようにする。この目的に好適な装置及び制御システムは、公知で商業的に入手可能であり、従って、ここではこれ以上詳細に検討しない。
【0019】
図7に表したコールドスプレーガン16は、図1及び2では単独で示されている。図1から明らかなように、ガン16は、ベースセクション24及びノズルセクションを画成するほぼ管状の本体22を有し、後者のノズルセクションは、ガン16内の収束通路(図3及び4では38)を画成する収束部分26と、ガン16内の拡大通路(図3及び4では40)を画成する拡大部分28と、収束部分26と拡大部分28との間にあり、収束及び拡大通路38及び40間にあり断面積A*を有するスロート(図3及び4では42)を画成するスロート部30と、ノズルセクションの出口32において断面出口面積Aを画成する出口32とを備える。収束及び拡大通路38及び40、並びにスロート42について円形断面を有して図示しているが、例えば、方形、八角形など、他の断面形状も実施可能である。ガン16は更に、粉体原材料がノズルセクションに噴射される1以上の粉体入口(インジェクタ)34と、プロセスガス()がガン16の内部に流入し、ノズルセクションを通って原材料粒子を加速して、200m/s以上の超音波ガス流及び粒子速度を達成する1以上のガス入口36とを備える。式(1)を参照して検討したように、出口32におけるプロセスガス及び粒子の出口速度は比A/A*に依存する。図2において、3つの粉体入口34が、スロート部30に隣接したガン16の周辺部のまわりで等角度に離間して図示されており、2つのガス入口36は、プロセスガスがノズルセクションのスロート42に流入する前に、実質的に均一な流れ状態を確保するよう180°反対方向でノズルセクションの軸線からオフセットして図示されている。原材料入口34の好適な直径は、約5〜15mmの範囲になると考えられるが、さらに小さな又は大きな直径を用いてもよい。入口34の好適な直径は、原材料の粒度に依存し、より微細な原材料粒子はより狭い入口を許容することができる。
【0020】
図3及び4は、ノズルセクションの収束、拡大及びスロートセクション26、28及び30内の幾何形状、詳細には、ノズルの収束拡大内部幾何形状を画成する対応する収束通路38、拡大通路40及びスロート42を描いている。重要なことには、粉体入口34は、スロート42又はその直ぐ上流側、例えば、スロート42の最も狭い断面から約50mm内、さらに好ましくは5mm以内の上流側に粉体原材料を噴射するように図3及び4に示されている。この態様は、収束通路38及びスロート42の上流側から遙かに離れて、通常は本発明のガン16の一定断面積ベースセクション24に対応する位置、或いは、米国特許第5302414号に示すような従来のコールドスプレーガンの更に上流側に原材料入口を位置付ける従来技術の実施と本発明を一部区別する。原材料入口34をスロート42又はその直近に隣接して配置することにより、ノズルセクション及びその収束拡大通路38及び40の全長が有意に短くなり、200mm及びそれ未満(例えば約75mm)の限定された長さにすることができる。結果として、ガン16は、比較的小さなキャビティに配置することができ、特定の実施例は、図7に示すような燃焼器トランジションピース10の内部である。収束部分26及び拡大部分28の非限定的で例示的な長さは、それぞれ、約15〜約50mmと、約50〜約150mmであるが、より小さな長さ及びより大きな長さも予期される。これらの長さは、超音波ガス及び粒子速度を達成するのに十分であると考えられるが、従来のコールドスプレーガンにより必要とされると考えられてきたものよりもかなり小さくなる。スロート部分30で画成されるスロート42は、収束通路38と拡大通路40との交差部(換言するとゼロ長)に制限することができ、或いは、例えば、最大約25mmの限定的な長さを有することができる。測定可能長さを有するスロート42は、ガス流をコリメートする作用を有し、原材料入口34を位置付けるための追加のスペースを提供することもできる。
【0021】
上述の長さを有する収束部分26及び拡大部分28において、収束拡大ノズルの典型的な断面積は、収束通路38への入口において約75〜約3000mm2、スロート42(収束通路38の出口及び拡大通路40への入口を画成する)において約20〜約2000mm2、拡大通路40への出口(ガン16の出口32を画成する)において約75mm〜約3000mm2である。これらの範囲内では、好ましい断面積は、超音波速度を達成することができる約1.1〜約15の出口スロート面積比を提供する。ノズルのチョーク状態を達成するガス質量流量は、Oosthuizen及びCarscallen著作の上述の文献などの引例に記載された一次元等エントロピーガス流の式を用いて珪酸することができる。ガス質量流量は、センサ及び質量流コントローラで監視及び制御することができる。温度及び/又は圧力センサ(図示せず)を用いて、ベースセクション24又はスロート42の上流側の他の場所内のガス温度及び圧力を監視することができる。
【0022】
図3の入口34がスロート42の上流側の収束通路38に入って、スロート42に面し、原材料をスロート42に向けて下流側に噴射するが、図4では、入口34はスロート42の下流側で拡大通路40に入ってスロート42に面し、原材料をスロート42内に噴射している結果として、図3及び4に示す原材料入口34は、本質的に互いに異なっている。或いは、図4の入口34は、スロート42の直ぐ下流側、例えば、スロート42の狭い断面から約50mm以内、好ましくは5mm以内で粉体原材料を噴射することができる。図3及び図4両方の原材料入口34はまた、軸方向単独又は半径方向単独の何れかではなく軸方向・半径方向の向きを有する点に注目すべきであるが、前者もまた本発明の範囲内にある。入口34は、ノズルの収束拡大通路内に物理的に突出する管体で画成されるように図示されているが、ノズルの内部表面と同一平面上にある入口で収束拡大通路に原材料を入れることができることも予期される。
【0023】
図5に表される延長ブラケット18は、図7のトランジションピース10など、部品の内部キャビティ内にガン16を良好に配置できるようにすることを意図している。ガン16は、図5〜図7において、ブラケット18の長さに直交して装着されて示されており、ブラケット18の輪郭はガン16よりも小さい。装置14は、コーティングされる部品に対してガン16の配置及び向きを正確にすることができるよう、ブラケット18のロボット制御を可能にするのが好ましい。ガン16の出口32と目標とする表面との間の好適なスタンドオフ距離は、一般に、従来の熱溶射プロセスにおける約3インチ(約75mm)と比べて、約1インチ(約25mm)程度であると考えられる。ガン16の動作、位置及びスタンドオフ距離を適切に制御することによって、堆積原材料の蓄積を正確に制御し、比較的複雑な幾何形状を有する部品上に所望の厚みのコーティングを生成することができる。制御可能な最小厚みは、通常は従来の熱溶射プロセスで実施可能ではない約5〜10マイクロメートルと考えられる。
【0024】
好適な原材料は、コーティング用途に依存する。一般に、コールドスプレー原材料は、最大約150マクロメートル、好ましい範囲は約5〜約25マクロメートルと考えられる粒度を有する金属、金属間及びサーメット組成物とすることができる。利用できる粒子原材料は、限定ではないが、ナノ結晶(例えば、低温ミル)原材料、凝集原材料、原材料の配合、機械的に合金化された原材料、噴霧粉体、焼結粉体、粉砕粉体、電着粉体などを含むことができる。特に、コールドスプレープロセスは、再結晶をもたらす可能性がある高温が回避されるので、堆積コーティングの特性の点で追加の利点を達成するためにナノ結晶粒子を用いるのに好適である。加えて、傾斜組成金属/セラミックコーティングを始めとする傾斜組成コーティングは、ガン16に導入される原材料の組成を徐々に変化させることによって堆積できる。
【0025】
コールドスプレーの本来の利点として、原材料は、目標表面に衝突する前に酸化されず、又は化学的もしくは物理的変化を受けない。結果として得られる堆積は、目標表面に金属結合される高密度コーティングを形成することができる。コールドスプレーコーティングは、十分に付着したコーティングを達成するために表面処理プロセスの一部としてグリットブラスティングを必要としないと考えられる。高密度の金属結合コーティングは、多くの場合、熱処理、研削、機械加工などの後処理により好適となる。コールドスプレーにおいて比較的低温、通常は約800℃以下のプロセスガス温度を必要とすることに起因して、マスキング要件は、従来の熱溶射プロセスと比べてそれほど厳しくない。トランジションピース10の内部表面12上にコーティングを堆積する間、表面12で画成される内部空間にシール環境を生成することができ、ポンプ(図示せず)を用いて、プロセスガス並びに目標表面に付着していない粒子オーバースプレーを抽出することができる。次に、回収したガス及び粒子をリサイクルし、必要に応じて再利用することができる。
【0026】
特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば装置14及びガン16の他の形態を採用できることは明らかである。更に、スプレー装置14は、様々な異なる部品の生産及び補修中に堆積コーティングするよう適応することができる。従って、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されることになる。
【符号の説明】
【0027】
10 トランジションピース
12 表面
14 装置
16 ガン
18 ブラケット
20 テーブル
22 本体
24 ベースセクション
26 部分
28 部分
30 部分
32 出口
34 入口(噴射装置)
36 ガス入口
38 通路
40 通路
42 スロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーガン(16)であって、
長手方向軸線とその1つの端部に出口(32)とを有する管状本体(22)を備え、
前記本体(22)が、
収束通路(38)を画成する第1の部分(26)と、
前記収束通路(38)の下流側に拡大通路(40)を画成し、且つ前記本体の出口(32)を画成する第2の部分(28)と、
前記収束通路(38)及び拡大通路(40)の間でこれらを接続するスロート(42)を画成するスロート部(30)と
を有し、
前記スプレーガン(16)が更に、
前記収束通路(38)の上流側にガスを導入するための少なくとも1つの入口(36)と、
前記スロート(42)及びその直ぐ上流側で原材料を導入するための少なくとも1つの原材料入口(34)と
を備えるスプレーガン(16)。
【請求項2】
前記収束通路(38)及び拡大通路(40)が200mm以下の限定された長さを有する、請求項1記載のスプレーガン(16)。
【請求項3】
前記収束通路(38)が50mm以下の長さを有する、請求項1又は請求項2記載のスプレーガン(16)。
【請求項4】
前記拡大通路(40)が150mm以下の長さを有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスプレーガン(16)。
【請求項5】
前記スロート(42)が最大約25mmの長さを有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のスプレーガン(16)。
【請求項6】
前記拡大通路(40)及び前記スロート(42)が、約1.1〜約1.5の出口スロート面積比をもたらす断面積を有する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のスプレーガン(16)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの原材料入口(34)が、前記スロート(42)の上流側で前記収束通路(38)に入って前記スロート(42)に面し、原材料を前記前記スロート(42)に下流側に噴射するよう配向される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のスプレーガン(16)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのフィードストック入口(34)が、前記スロート(42)の下流側で前記拡大通路(40)に入って前記スロート(42)に面し、前記スロート(42)内で原材料を噴射するよう配向される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のスプレーガン(16)。
【請求項9】
スプレーガン(16)を用いてコーティングを堆積する方法であって、
前記スプレーガン(16)の管状本体(22)内で収束通路(38)の上流側にガスを導入し、該ガスが、前記収束通路(38)、前記本体(22)内のスロート(42)、次いで、前記本体(22)内において前記スプレーガン(16)の出口(32)を画成する拡大通路(40)を通って移動し、前記出口(32)を通じて超音速で流出させる段階と、
粒子原材料を前記スロート(42)又はその直ぐ上流側で導入し、該粒子が、前記出口(32)を亜音速又は超音速で出て表面上で堆積してコーティングを形成する段階と、
を含む方法。
【請求項10】
前記表面がガスタービンエンジン燃焼器のトランジションピース(10)の内部表面である、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−45877(P2011−45877A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−183522(P2010−183522)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】