説明

コーティングユニット

【課題】コーティング液中に発生するダマを効率よく除去し、コーティング槽の底部から供給されるコーティング液の流速を均一にして、均一なコーティング処理を行うことができるコーティングユニットを提供する。
【解決手段】材料がコーティング液26に浸漬されてコーティングされるコーティング槽10と、所定の角度で折り曲げられたコーティング液注入部12が、コーティング液排出部14の内部に組み込まれ一体化されたコーティング液注入排出部16と、コーティング槽10から溢れ出したコーティング液26を一時蓄えるコーティング液溜め槽18と、コーティング液排出部16とコーティング液溜め槽18のコーティング液26を回収し循環させるためのコーティング液回収槽20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、金属、ガラス、セラミック等の各種材料の表面に無機又は有機の膜をコーティング処理するウエット式コーティングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のウエット式コーティングユニットの構成を示すユニット構成図である。図3において、コーティング槽10は、槽の周囲にコーティング液溜め槽18を具備している。コーティング槽10から溢れ出してコーティング液溜め槽18に零れ落ちたコーティング液26は、コーティング液回収槽20へ回収されている。コーティング液回収槽20のコーティング液26は、ポンプ30及びフィルター32を介して、コーティング槽10の底部の供給口34へ直線状に供給されている。
【0003】
コーティング液26は、シリコン樹脂が有機溶剤で所定の濃度に希釈されたもので、液の性質上、時間の経過とともに液中にダマが発生する。またクリンルーム内での作業であっても、何らかの原因で、コーティング液が付着する核となるような物質が液中に混入すると、ダマを発生してしまう。これらいずれの場合においても、被コーティング材料にダマが付着すると、材料の表面が凹凸になるため、均一なコーティング処理が行えなくなる。このためダマが発生すると、網でダマをすくい取るか、コーティング液を取り替えるなどの処置が行われていた。
【0004】
また、むら無く均一な膜をコーティング処理するためには、コーティング液のコントロールが重要となる。図3において、コーティング液26は、ポンプ30及びフィルター32を介して、コーティング槽10の中央の供給口34へ直線状に供給されるため、槽の中央部の流速に比べ、周辺の流速は遅くなり、均一な速度を得ることが困難である。このため槽の中央部のコーティング液の濃度は濃く、周辺部の濃度は薄くなり、その結果、中央部のコーティング膜の膜厚は、周辺部に比べて厚くなるため、均一なコーティング処理が行えなくなる。
【0005】
特許文献1には、オーバフロー槽の外槽の薬液をポンプにより循環させ、フィルターを通過した薬液を複数に分岐した配管を通し、内槽の底部のカセットの配置場所直下の位置に設けた吐出口から流入させることにより、カセット内のウェハ間に均一に薬液が流れるウェットエッチング処理槽についての記載がある。
【特許文献1】特開平5−326486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、コーティング液中に発生するダマを効率よく除去し、且つ、コーティング槽の底部から供給されるコーティング液の流速を均一にして、コーティング液の濃度ムラを無くすることにより、均一なコーティング処理を行うことができるコーティングユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコーティングユニットは、材料の表面に膜を形成するコーティングユニットであって、材料がコーティング液に浸漬されてコーティング処理されるコーティング槽と、所定の角度で折り曲げられたコーティング液注入部が、コーティング液排出部の内部に組み込まれ一体化されたコーティング液注入排出部と、コーティング槽から溢れ出したコーティング液を一時蓄えるコーティング液溜め槽と、コーティング液排出部とコーティング液溜め槽とのコーティング液をコーティング液回収槽に回収し、ポンプとフィルターを介して循環させる第1のコーティング液循環部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のコーティングユニットは、材料の表面に膜を形成するコーティングユニットであって、材料がコーティング液に浸漬されてコーティング処理されるコーティング槽と、所定の角度で折り曲げられたコーティング液注入部が、コーティング液排出部の内部に組み込まれ一体化されたコーティング液注入排出部と、コーティング槽から溢れ出したコーティング液を一時蓄えるコーティング液溜め槽と、コーティング液溜め槽と、コーティング液排出部とのコーティング液を、ポンプとフィルターを介して循環させる第2のコーティング液循環部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のコーティングユニットのコーティング液排出部はバルブを有し、バルブは、材料の浸漬前に開けられ、コーティング槽のコーティング液は、第1又は第2のコーティング液循環部を介して所定の時間循環し、コーティング液中のダマが除去された後、再びバルブが閉じられ、コーティング処理が開始されることを特徴とする。
【0010】
本発明のコーティングユニットの折り曲げられたコーティング液注入部の所定の角度は、45度乃至135度であることを特徴とする。
【0011】
本発明のコーティングユニットのコーティング槽は、開口面積比が10%〜95%の整流板を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のコーティングユニットは、コーティング槽及びコーティング液溜め槽を覆う、又はコーティング槽、コーティング液溜め槽、及びコーティング液回収槽を覆う開閉自在蓋を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコーティングユニットによれば、コーティング液中に発生するダマが効率よく除去され、且つ、コーティング槽の底部から供給されるコーティング液の流速が均一になるため、コーティング液の濃度ムラが無くなり、均一なコーティング処理を行うことができる。このため、コーティングの品質の管理が容易となり、製造歩留まりの向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施例のコーティングユニットの構成を示すユニット構成図である。図1において、コーティングユニット100のコーティング槽10は、槽の周囲にコーティング液溜め槽18を有している。コーティング液溜め槽18の底部は、パイプによりコーティング液回収槽20へ接続されている。
【0015】
またコーティング槽10の底部には、コーティング液注入排出部16が取り付けられている。コーティング液注入排出部16は、所定の角度αで折り曲げられたコーティング液注入部12がコーティング液排出部14の内部に組み込まれ、一体化されて構成されている。コーティング液排出部14の底部はバルブ22を有し、バルブ22はパイプによりコーティング液回収槽20へ接続されている。
【0016】
コーティング液注入部12は、フィルター32、ポンプ30を介し、コーティング液回収槽20へパイプ接続されている。また、コーティング槽10の底部内には、整流板24が設置されている。さらに、コーティング槽10及びコーティング液溜め槽18は、開閉自在蓋28により覆われている。
【0017】
コーティング処理前の待機状態においては、コーティング液の揮発成分の割合を一定に保つため、コーティングユニット100の開閉自在蓋28は、閉じられた状態にある。
コーティング液排出部14のバルブ22は、被コーティング材料の浸漬前に開けられ、コーティング槽10のコーティング液26が所定の時間循環し、液中のダマが除去された後、再び閉じられ、コーティング処理が開始される。これにより、液中のダマをコーティング処理前毎に取り除くため、コーティング表面に付着して凹凸が生じるというトラブルを解消することができる。
【0018】
バルブ22が閉じられ、ダマが除去されたコーティング液26がコーティング槽10から溢れ出し始めると、開閉自在蓋28が開かれ、樹脂、金属、ガラス、セラミック等の所定の材料が、コーティング槽10のコーティング液26中に浸漬され、コーティング処理が開始される。コーティング処理中はバルブ22が閉じられているため、コーティング液溜め槽18に溢れたコーティング液26が循環することで、液は清浄に保たれている。
【0019】
コーティング処理中に循環するコーティング液26は、ポンプ30、フィルター32及びコーティング液注入部12を介して、コーティング槽10に戻されるが、コーティング液注入部12は所定の角度αで折り曲げられている。このため、ポンプ30から吐出されたコーティング液26は一度パイプの壁面に衝突する形となり、コーティング槽10に供給される直前に、パイプの中央部と壁面部との流速の差が、緩和されることになる。これにより、コーティング槽10においても周辺部と中心部との流速に大きな差を発生することが無く、流速の差が緩和された状態を維持することができる。
【0020】
さらにコーティング槽10の底部内には、メッシュ状の整流板24が設置されているため、コーティング液26の流速をより均一にすることができる。これにより、材料の表面にコーティングむらを生じるトラブルを解消することが可能となる。コーティング処理中にはコーティング液の揮発成分の割合を一定に保つため、コーティングユニット100の開閉自在蓋28は、閉じられた状態にあっても良い。またコーティング液26の流速を均一に保つため、コーティング液注入部12の所定の角度αは、45度乃至135度であり、整流板24の開口面積比は、10%〜95%であることが望ましい。
【0021】
図2は、本発明の第2の実施例のコーティングユニットの構成を示すユニット構成図である。図2において、コーティングユニット100のコーティング槽10は、槽の周囲にコーティング液溜め槽18を有しているが、コーティング液回収槽20は無い。コーティング液排出部14及びコーティング液溜め槽18のコーティング液26は、第2のコーティング液循環部を構成するフィルター32及びポンプ30を介し、コーティング槽10に循環する。また、コーティング液溜め槽18は、開閉自在蓋28により覆われている。これによりコーティングユニット100は、より一体化されてコンパクトな構成となり、作業スペースの確保が難しい場所にも適用することが可能となる。またバルブ22の下に、もう一つのフィルターを設けることにより、沈殿していたダマをより確実に除去しても良い。
【0022】
以上説明したように本発明のコーティングユニットによれば、コーティング液26中に発生するダマが、コーティング処理前に常に効率よく除去され、且つ、コーティング槽10の底部から供給されるコーティング液26の流速が均一になるため、コーティング液26の濃度ムラが無くなり、均一なコーティング処理を行うことができる。このため、コーティングの品質の管理が容易となり、製造歩留まりの向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施例のコーティングユニットの構成を示すユニット構成図。
【図2】本願発明の第2の実施例のコーティングユニットの構成を示すユニット構成図。
【図3】従来のウエット式コーティングユニットの構成を示すユニット構成図。
【符号の説明】
【0024】
10 コーティング槽
12 コーティング液注入部
14 コーティング液排出部
16 コーティング液注入排出部
18 コーティング液溜め槽
20 コーティング液回収槽
22 バルブ
24 整流板
26 コーティング液
28 開閉自在蓋
30 ポンプ
32 フィルター
35 第1のコーティング液循環部
37 第2のコーティング液循環部
100 コーティングユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の表面に膜を形成するコーティングユニットであって、
前記材料がコーティング液に浸漬されてコーティング処理されるコーティング槽と、
所定の角度で折り曲げられたコーティング液注入部が、コーティング液排出部の内部に組み込まれ一体化されたコーティング液注入排出部と、
前記コーティング槽から溢れ出した前記コーティング液を一時蓄えるコーティング液溜め槽と、
前記コーティング液排出部と前記コーティング液溜め槽との前記コーティング液をコーティング液回収槽に回収し、ポンプとフィルターを介して循環させる第1のコーティング液循環部とを有することを特徴とするコーティングユニット。
【請求項2】
材料の表面に膜を形成するコーティングユニットであって、
前記材料がコーティング液に浸漬されてコーティング処理されるコーティング槽と、
所定の角度で折り曲げられたコーティング液注入部が、コーティング液排出部の内部に組み込まれ一体化されたコーティング液注入排出部と、
前記コーティング槽から溢れ出した前記コーティング液を一時蓄えるコーティング液溜め槽と、
前記コーティング液溜め槽と、前記コーティング液排出部との前記コーティング液を、ポンプとフィルターを介して循環させる第2のコーティング液循環部とを有することを特徴とするコーティングユニット。
【請求項3】
前記コーティング液排出部はバルブを有し、前記バルブは、前記材料の前記浸漬前に開けられ、前記コーティング槽の前記コーティング液は、前記第1又は第2のコーティング液循環部を介して所定の時間循環し、前記コーティング液中のダマが除去された後、再び前記バルブが閉じられ、前記コーティング処理が開始されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティングユニット。
【請求項4】
前記折り曲げられたコーティング液注入部の所定の角度は、45度乃至135度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコーティングユニット。
【請求項5】
前記コーティング槽は、開口面積比が10%〜95%の整流板を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコーティングユニット。
【請求項6】
前記コーティングユニットは、前記コーティング槽及び前記コーティング液溜め槽を覆う、又は前記コーティング槽、前記コーティング液溜め槽、及び前記コーティング液回収槽を覆う開閉自在蓋を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコーティングユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−221188(P2008−221188A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67131(P2007−67131)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】