説明

コーティング剤組成物

【課題】 PETフィルムに保護膜層として、優れた耐候性、耐湿熱性、難燃性を付与することが出来、且つ、優れた塗工性能をも兼ね備える太陽電池のバックシート用コーティング剤組成物を提供する。
【解決手段】 フッ素系樹脂、無機顔料及び難燃剤を含有するコーティング剤組成物であって、該難燃剤が、メラミンシアヌレート、グアニジン化合物、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、水和金属化合物から選ばれる1種以上であることを特徴とするコーティング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールのバックシートに使用されるプラスチックフィルムに優れた耐候性や難燃性を付与するためのコーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池モジュールのバックシート用素材として、特に耐候性、耐湿熱性、難燃性等の観点からフッ素樹脂系フィルムが使用されてきている(例えば特許文献1参照)。近年、太陽電池の普及のために、バックシート基材として安価なPETフィルムの使用が試みられ、耐候性等の機能付与を目的とした各種顔料等を含有するコーティング剤を塗工した白色及至着色PETフィルムへの代替の検討がなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
太陽電池の適用範囲の拡大に伴い、基本的な要求性能である耐湿熱性、耐候性、難燃性の中でも、特に、安全性の観点から難燃性の付与が期待されてきているが、従来からの耐候性に優れるフッ素樹脂系フィルムの場合はフィルム自体がある程度の難燃性を有している。一方、低コスト化で期待されつつも、フィルム自体の難燃性がフッ素樹脂系フィルムに劣るPETフィルムの場合は、従来からの耐候性付与とともに、難燃性をも付与したコーティング剤が求められている。各種のフィルムにフッ素系樹脂を塗工したり、複数のフィルムを貼りあわせたりしてなるバックシートも知られているが、難燃剤を含有するコーティング剤は知られていない。また、コーティング剤によりシートに難燃性を付与する技術も知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2000−208795号公報
【特許文献2】特開2007−35694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、PETフィルムに保護膜層として、優れた耐候性、耐湿熱性、難燃性を付与することが出来、且つ、優れた塗工性能をも兼ね備える太陽電池のバックシート用コーティング剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特定の樹脂とともに、特定の難燃剤を用いて、PETフィルムに密着性、耐候性、耐湿熱性はもとより、難燃性及び優れた塗工性能を有するコーティング組成物を新規に見出し、本発明に至ったものである。
【0007】
すなわち本発明は、フッ素系樹脂、無機顔料及び難燃剤を含有するコーティング剤組成物であって、該難燃剤が、メラミンシアヌレート、グアニジン化合物、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、水和金属化合物から選ばれる1種以上であることを特徴とするコーティング剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、PETフィルムの保護層として、密着性、耐候性、耐湿熱性に優れるとともに、難燃性及び優れた塗工性能をも兼ね備える太陽電池のバックシート用コーティング剤組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のコーティング剤組成物は、フッ素系樹脂、無機顔料及び難燃剤を含有するコーティング剤組成物であって、該難燃剤が、メラミンシアヌレート、グアニジン化合物、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、水和金属化合物から選ばれる1種以上であることを特徴としている。
【0010】
本発明のコーティング剤組成物に用いるフッ素系樹脂は、主としてバインダー成分であり、耐候性、耐湿熱性にも寄与する。
【0011】
フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレンを必須成分とする重合物及びモノクロロテトラフルオロエチレンを必須成分とする重合物が好ましく用いられ、テトラフルオロエチレンを必須成分とする重合物が特に好ましく用いられる。
【0012】
フッ素系樹脂の含有量は、コーティング剤組成物中の不揮発分換算で、8〜60質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明のコーティング剤組成物に用いる無機顔料は、紫外線を吸収する材料として主として耐候性に寄与する。
【0014】
無機顔料としては、酸化チタン顔料を初めとして、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、チタンイエロー、クロムグリーン、群青、アルミニウム粉、雲母、炭酸バリウム、タルク等が利用でき。好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化チタンであり、中でも、耐候性に優れ、塗料化が容易であること及び価格を含め入手が安易であることから酸化チタンが特に好ましい。
【0015】
無機顔料の含有量は、コーティング剤組成物中の不揮発分換算で、30〜90質量%であることが好ましい。特に、酸化チタン顔料の場合は、60〜85質量%であることが好ましい。酸化チタン顔料の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましく、より好ましくは平均粒径0.1〜0.1μmである。酸化チタンの表面処理として、シリカ処理、アルミナ処理、酸化亜鉛処理等が一般的に知られているが、耐候性の観点からシリカ処理されていることが好ましい。
【0016】
本発明のコーティング剤組成物に特徴的に用いられる難燃剤は、メラミンシアヌレート、グアニジン化合物、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、水和金属化合物から選ばれる1種以上であり、耐湿熱性、耐候性、特に塗工性能の観点からメラミンシアヌレートが特に好ましい。
【0017】
メラミンシアヌレートは、市販品として、日産化学工業株式会社製のメラミンシアヌレート、堺化学工業株式会社製のSTABIACE MC−5Sなどがある。
【0018】
難燃剤成分の含有量は、コーティンブ剤組成物中の不揮発分換算で、1〜90質量%であることが好ましい。特にメラミンシアヌレートの場合は、難燃性及び塗工性能の観点から1〜60質量%であることが好ましい。
【0019】
本発明のコーティング剤組成物は、通常、イソシアネート系の硬化剤とともに、主剤として2液型で用いる。イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族系イソシアネートが挙げられる。またこれらのジイソシアネートのアダクト体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ヌレート変性体等も用いることができる。
【0020】
上記イソシアネート系硬化剤の中で耐候性、塗膜性能に優れる、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート系が好ましく、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体が好ましく、フィルムへの密着性、塗工性能の観点から主剤のコーティング剤組成物(固形分)に対する配合比は、0.01〜0.20であることが好ましい。
【0021】
本発明のコーティング剤組成物は、主としてPETフィルムに塗工され、太陽電池モジュールのバックシートを構成するために用いられる。塗工には、一般にグラビアコーター、グラビアリバースコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーターが好ましいが、大量生産のため、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、マイクログラビアコーターが特に好ましい。
【0022】
塗工性能を相応しいものとするため、コーティング剤組成物の主剤の組成として、例えば、不揮発分換算で、フッ素系樹脂の含有量が8〜60質量%、無機顔料の含有量が30〜90質量%、難燃剤の含有量が1〜60質量%であることが好ましい。特に、塗工性能、耐候性、コストの観点からフッ素樹脂の含有量が8〜40質量%、無機顔料の含有量が50〜85%、難燃剤の含有量が1〜20%が好ましい。
【0023】
本発明のコーティング剤組成物に用いる溶剤は、フッ素系樹脂を溶解する溶剤としては、エステル類、ケトン類、脂肪族類、芳香族類等の活性水素を持たない溶剤が好ましい。
【0024】
本発明のコーティング剤組成物の調製方法としては、フッ素樹脂と無機顔料、難燃剤、溶剤を均一に分散する工程を含む製造方法を挙げることができる。難燃剤は無機顔料をフッ素樹脂と溶剤で分散する前に加えてもよいが、望ましくは分散後に加えるのがよい。また、この無機顔料を分散する工程で分散剤をもちいてもよい。この分散の工程には各種の分散機を使用することができる。例えば、ロールミル機、ビーズミル機、高速攪拌分散機、2軸押出し機、バンバリーミキサー、加圧式ニーダー等が挙げられ、樹脂、無機顔料、難燃剤、溶剤を含む分散の観点からビーズミル機を用いた分散が好ましい。
【0025】
本発明のコーティング剤組成物をイソシアネート系の硬化剤とともに、2液型で塗工した塗膜の塗布量は、難燃性、耐候性、塗工性能、コストの観点から、5〜30g/m(乾燥質量)が好ましく、特に、14〜20g/m(乾燥質量)が好ましい。
【0026】
本発明のコーティング剤組成物には、発明の効果を逸脱しない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃助剤、ワックス、スリップ剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤や助樹脂を添加してもよい。
【0027】
太陽電池モジュールのバックシートを構成するために用いられるPETフィルムとしては、例えば、厚さ12〜300μmのPETフィルムが用いられる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明する。
【0029】
(コーティング剤組成物の調製)
表1に示す配合で、フッ素樹脂またはアクリル樹脂、酸化チタン及び溶剤を一括混合してビーズミル機を用い分散し、その後、難燃剤を、高速攪拌分散機を用いて分散した。実施例1〜6、比較例1、2の主剤を調製した。
【0030】
尚、表1中の各原料は以下の通りであり、数値は固形分質量で表す。
フッ素樹脂:ゼッフル GK−570 (ダイキン工業株式会社社製 不揮発分65%)、
アクリル樹脂:ハルスハイブリッドUV−G301(株式会社日本触媒製 不揮発分 43%)、
酸化チタン:TITANIX JR−805(テイカ株式会社社製 不揮発分 100%)、
難燃剤:メラミンシアヌレート STABIACE MC−5S(堺化学工業株式会社製 不揮発分 100%)、
硬化剤:スミジュール N−3300(住化バイエルウレタン株式会社製 不揮発分 100%)
【0031】
【表1】

【0032】
原反のPETフィルム(厚さ125μm ルミラー X10S:東レ株式会社製)を用い、上記の各コーティング剤組成物を、塗布量14g/m(乾燥質量)にて塗装して、120℃、30秒乾燥し評価用塗布サンプルを得た。評価用塗布サンプルは、40℃、48時間、エージングした後、評価に供した。
【0033】
(評価方法)
前記した評価サンプルについて、難燃性、耐ブロッキング性、耐溶剤性、塗膜密着性(耐湿熱性)、耐候性(光線透過率)、を以下の方法で評価し、結果を表2に示す。
【0034】
(難燃性)
UL94 HB規格に順じた。合格は「○」、不合格を「×」とした。
【0035】
(塗工性能:耐ブロッキング性)
各コーティング剤組成物を、表1中の塗布量で塗装して、120℃、30秒乾燥した。その塗工面と、フィルムの裏面を重ね合わせ、ブロッキングテスターにて、0.5MPa、40℃、24時間放置した。その後、塗工面と裏面をはがし、評価した。取られなし及び剥離抵抗小さいを「○」、取られあり又は剥離抵抗大きいを「×」とした。
【0036】
(耐湿熱性)
塗膜サンプルを、温度121℃、湿度100%に暴露した後、塗布サンプルを市販のセロハン粘着テープ(ニチバン(株)18mm巾)で剥がし、塗工物表面の剥離の程度を観察した。剥離面積が30%未満の場合「○」、剥離面積が30%以上70%未満の場合「△」、剥離面積が70%以上の場合:「×」とした。
【0037】
(耐候性:光線透過率)
紫外可視近赤外分光光度計(UV−3150:(株)島津製作所)を用い測定(JIS K 7105に準拠)し、波長400nmの部分の透過率で紫外光領域の光線遮光性能について評価した。透過率が1%未満の場合「○」、1%以上5%未満の場合「△」、5%以上の場合:「×」とした。
【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のコーティング剤組成物は、優れた塗工性能を有し、PETフィルムに、耐候性、耐湿熱性、難燃性に優れる保護層を形成することができ、太陽電池モジュールのバックシート製造に広く活用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂、無機顔料及び難燃剤を含有するコーティング剤組成物であって、該難燃剤が、メラミンシアヌレート、グアニジン化合物、トリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、水和金属化合物から選ばれる1種以上であることを特徴とするコーティング剤組成物。
【請求項2】
前記したフッ素系樹脂が、テトラフルオロエチレンを必須成分とする重合物及びモノクロロテトラフルオロエチレンを必須成分とする重合物から選ばれる1種以上である請求項1に記載のコーティング剤組成物。
【請求項3】
前記した無機顔料が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ケイ素、硫酸バリウムから選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載のコーティング剤組成物。
【請求項4】
難燃剤の含有量が不揮発分換算で、1〜90質量%である請求項1〜3の何れかに記載のコーティング剤組成物。
【請求項5】
不揮発分換算で、フッ素系樹脂の含有量が8〜60質量%、無機顔料の含有量が30〜90質量%、難燃剤の含有量が1〜60質量%である請求項1〜4の何れかに記載のコーティング剤組成物。
【請求項6】
前記した難燃剤が、メラミンシアヌレートである請求項1〜5に記載のコーティング剤組成物。
【請求項7】
前記した無機顔料が、酸化チタンである請求項1〜6に記載のコーティング剤組成物。
【請求項8】
イソシアネート系硬化剤を含有する請求項1〜7の何れかに記載のコーティング剤組成物。

【公開番号】特開2011−162598(P2011−162598A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24089(P2010−24089)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】