説明

コーティング材料の塗布方法

本開示は、コーティング材料を基材に塗布するための方法について述べる。更に、コーティング装置を処理する方法について述べる。少なくとも1つの処理表面を5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料でコーティングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコーティング装置、コーティング装置を処理するための方法、及びコーティング材料を塗布するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を基材又はウェブ上に塗布又はコーティングする方法は周知である。しかしながらこうした方法は、使用される液体及び基材、最終製品の性能目的、及び方法自体に応じて複雑となりうるものである。特定のコーティングのニーズに応えるため、多くのコーティング装置及びコーティング法のバリエーションが開発されてきた。
【0003】
従来、低表面エネルギーのコーティングが物品に塗布されてきた。低表面エネルギーコーティングを有するコーティング装置及び塗布方法が、米国特許第5,998,549号(ミルバーン(Milbourn)ら)及び米国特許第6,231,929号(ミルバーン(Milbourn))に述べられている。低表面エネルギーコーティングをコーティング装置の表面に塗布するための方法としては、研削、研磨、及び高温硬化操作などがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示では、コーティング材料を基材に塗布するための方法について述べる。コーティング装置を処理するための方法、及びコーティングについても述べる。コーティング装置の少なくとも1つの処理面を、5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料でコーティングする。
【0005】
第1の態様では、コーティング材料を基材に塗布するための方法を提供する。この方法は、コーティング材料を基材上に供給するためのコーティング装置を提供することを含む。コーティング装置は少なくとも1つの処理面を含む。処理表面を5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料でコーティングする。この方法は、コーティング装置の処理表面を覆ってコーティング材料を導くことと、コーティング材料をコーティング装置から基材上に供給することとを含む。
【0006】
第2の態様では、コーティング装置を処理するための方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの表面を有するコーティング装置を提供することと、コーティング装置の少なくとも1つの表面に低表面エネルギーコーティングを塗布することとを含む。低表面エネルギーコーティングは5マイクロメートル未満の厚さを有する。
【0007】
第2の態様では、基材にコーティング材料を塗布するためのコーティング装置を提供する。コーティング装置は少なくとも1つの処理された面を含む。処理表面は、5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギーコーティングを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】スロットダイコーターの側面図。
【図2】スライドコーターの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、具体的な実施形態の観点から本明細書に述べられているが、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な改変、再構成及び置換を行うことが可能であることは当業者には直ちに明白になるであろう。
【0010】
端点による数値範囲の記載には、その範囲内に含まれるすべての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5を含む)。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に含まれる単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容において特に断りがないかぎり、複数の参照物を含む。したがって、例えば「a compound」を含む組成物という場合、2種類以上の化合物(compounds)の混合物が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される用語「又は」は、その内容について特に断りがないかぎり、一般的に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0012】
特に断りがないかぎり、明細書及び特許請求の範囲において使用される量又は成分、性質の測定値などを表すすべての数は、すべての場合において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、特に断りがないかぎり、上記の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の性質に応じて変化しうる近似値である。最低でも、各数値的パラメータは、報告された有効数字の桁数を考慮し、通常の切り捨ての適用によって少なくとも解釈されるべきである。本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載される数値は可能な限り正確に報告する。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定値における標準偏差から必然的に生じる誤差を内在的に含むものである。
【0013】
少なくとも1つの処理表面を有するコーティング装置について述べる。低表面エネルギー材料をコーティング装置の少なくとも1つの表面にコーティングすることにより処理表面が与えられる。この処理表面を5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料でコーティングする。
【0014】
コーティング材料又は液を基材に塗布するためのコーティング装置は当該技術分野において周知のものである。コーティング装置の幾つかの例としては、カーテンコーター、スライドコーター、スロットダイコーター、流体ベアリングコーター、スロット供給ナイフコーター、及び上記の2以上のものの組み合わせが挙げられる。コーティング装置の更なる例は、コーヘン,E.(Cohen, E.)及びグトフ,E.(Gutoff, E.)による「最新コーティング及び乾燥技術」(Cohen, E. and Gutoff, E., Modern Coating and Drying Technology, VCH Publishers, New York (1992))、並びにグトフ,E.(Gutoff, E.)及びコーヘン,E.(Cohen, E.)による「コーティング及び乾燥の欠陥:操作上の問題の解決策」(Gutoff, E. and Cohen, E., Coating and Drying Defects:Troubleshooting Operating Problems, Wiley Inter-Science, New York)に見ることができる。
【0015】
特定の実施形態では、低表面エネルギー材料を、これらに限定されるものではないが、ダイ流入口、内部通路、及びダイ流出口、又はこれらの組み合わせを含む1以上の要素を有するコーティング装置(例、スロットダイコーター)に塗布し得る。コーティング装置の記載されていない他の要素を低表面エネルギー材料でコーティングすることにより、コーティング材料が低表面エネルギー材料を覆って又はこれに接するように導かれる。コーティング装置に塗布されて低表面エネルギーコーティングを形成する低表面エネルギー材料は、コーティング速度の増大に関してコーティング装置の向上した性能を提供し得る。低表面エネルギーコーティングはコーティング材料によるコーティング装置の表面の濡れを最小とし得る。一実施形態では、コーティング装置の表面に塗布されるフッ素化材料により、基材へのコーティング材料の塗布時に縞模様(streaking)及びコーティング欠陥を低減するための方法が与えられる。
【0016】
図1は、押出しダイ又はスロットダイコーター10の形態のコーティング装置を示したものである。スロットダイコーター10は、バックアップロール12に対して配置されている。スロットダイコーター10は、ダイ上部14、及び例えば15−5ステンレス鋼で形成することができるダイ本体16を含む。ダイ流入口18、ダイマニホルドすなわち内部通路20、及びダイ流出光がダイ上部14とダイ本体16との間に形成されている。低表面エネルギー材料は、ダイ流入口18、内部通路20、及びダイ流出口22の少なくとも1つに塗布し得る。
【0017】
例えば溶液、混合液、分散液又は乳濁液などの液体又はコーティング材料を、ウェブ又は基材28(例えば不織ウェブ)に塗布するために、ポンプ又は他の手段によってスロットダイコーター10に供給する。コーティング材料は、ダイ流入口18を通じ、内部通路20内に流入し、内部通路20を通り、更にダイ流出口20を通じて流れ、基材28上に分配される。
【0018】
スロットダイコーター10によるコーティング材料の塗布時には、コーティング材料はダイ流出口22を通過して、ダイ本体16の上流側ダイリップ、ダイ上部14の下流側ダイリップ及び基材28に沿って連続的なコーティングビーズを形成する。コーティング材料又は液は、例えば水を主成分とした液体、有機溶媒を主成分とした液体、及び100%の純粋な流体などの液体を含む数多くのコーティング材料の内の1つであり得る。
【0019】
例えば、ダイ本体16及びダイ上部14の上流側及び下流側リップは鋭い縁部として形成してもよく、例えば、上流側及び下流側リップがきれいで比較的刻み目及びバリがないように研磨することによってより丸みを帯びたものとし得る。
【0020】
コーティング装置の1つ以上の内部表面に低表面エネルギー材料をコーティングすることによってコーティング装置のステンレス鋼又は金属部分のコーティング材料による濡れを最小とする。幾つかの内部表面の例として、ダイ流入口、内部通路及びダイ流出口の部分が挙げられる。低表面エネルギーコーティングはコーティング材料のウェブ又は基材28上への供給時の縞模様及び欠陥の形成を低減し得る。低表面エネルギーコーティングは更に、使用時に生ずる摩耗及び衝撃に耐えることができる。
【0021】
図2は、スライドコーター80の形態のコーティング装置を示したものである。スライドコーター80は、スライドアセンブリ82及びスライドバックアップロール84を含む。スライドアセンブリ82は、基材28に液体24の複数の層を同時に供給することが可能な多数のスライドブロック86、88、90、92、94を含む。低表面エネルギー材料を最後のスライドブロック94の上面に塗布することで低表面エネルギーコーティングを提供することによって、スライドコーティング装置を流れ落ちる液体24による上面の濡れを最小とし得る。低表面エネルギー材料はまた、第1のスライドブロック86の表面に塗布し得る。
【0022】
液体をバックアップロール84及びウェブ28の方向に案内するように配置することが可能なスライドブロック86、88、90、92のエッジガイドの部分を低表面エネルギーコーティングで処理し得る。エッジガイドがステンレス鋼で形成されている場合、表面を粗面化又はプライミング処理することなくエッジガイドをコーティングし得る。低表面エネルギー材料はプラスチック材料に直接塗布し得る。コーティング液24と接触するエッジガイドの部分に低表面エネルギーコーティングが存在する場合にもエッジガイド又はその部分の濡れを最小とし得る。
【0023】
特定の実施形態では、処理表面を提供するために、低表面エネルギー材料をコーティング装置の少なくとも1つの表面に塗布し得る。特定の実施形態では、低表面エネルギーコーティングは、コーティング装置にコーティングされた、分子厚さ(例えば自己組織化単層)又は25オングストローム〜100オングストロームのオーダーの厚さを有する。他の実施形態では、コーティング装置上の低表面エネルギーコーティングの厚さは単層である。一般に、コーティング装置に塗布される低表面エネルギー材料の厚さは、基材へのコーティング材料の供給を妨げず、コーティング材料がコーティングに流入及び流出する際にコーティングの流れを妨げないだけの充分なものである。一般に、本発明の低表面エネルギー材料は、例えばコーティングの塗布に先立って表面を研削するなどの大がかりな表面処理を行う必要なくコーティング装置の表面に直接塗布し得る。コーティング装置の要素の少なくとも1つのコーティング厚さの範囲は、25オングストローム〜4マイクロメートル、100nm〜3マイクロメートル、200nm〜2マイクロメートル、又は250nm〜1マイクロメートルの範囲であり得る。
【0024】
低表面エネルギー材料は基材及び他の物品に塗布されてきた。コーティング装置を処理するための低表面エネルギー材料の幾つかの例としては、フッ素化有機ホスホン酸、フッ素化ホスホネート、フッ素化ベンゾトリアゾール、ホスホン酸官能化フルオロポリマー、ベンゾトリアゾール官能化フルオロポリマー、及び上記の2以上のものの組み合わせが挙げられる。
【0025】
特定の実施形態では、フッ素化ベンゾトリアゾールをパーフルオロポリエーテルアルコキシシランと組み合わせることによって低表面エネルギーコーティングを提供する。パーフルオロポリエーテルアルコキシシランの例は、米国特許第6,231,929号(ミルバーン)(Milbourn)及び米国特許第5,980,992号(キスナーら)(Kistner)に述べられている。別の実施形態では、ホスホン酸官能化フルオロポリマーを、コーティング装置上に供給された後で架橋される多官能性ポリアクリレートと組み合わせる。
【0026】
一実施形態では、フッ素化有機ホスホン酸をコーティング装置の1つ以上の表面に塗布する。フッ素化有機ホスホン酸は、例えばバタチャリャ(Bhatacharya)らによりChemical Reviews,81,415〜430(1981)に述べられるように、対応する塩化、臭化、又はヨウ化アルキルに各種の反応(例えばミカエリス−アルブゾフ反応)を行った後、加水分解を行うことにより、あるいは、ロング(Rong)ら(Tetrahedron Letters,31,5615〜5616(1990))の一般的方法に従ってCH=CH(CHPOHの構造を有するオレフィン又はそのエステルにパーフルオロヨウ化アルキルを付加した後、還元することによって調製することが可能である。式Iのフッ素化有機ホスホン酸は米国特許第6,824,882号(ボードマン(Boardman)ら)に述べられている。
【0027】
【化1】

【0028】
式Iにおいて、Rは、約3個〜約21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、約2個〜約20個の炭素原子を有するオキサ置換直鎖アルキレン基、又は約2個〜約20個の炭素原子を有するチア置換直鎖アルキレン基である。望ましくは、Rは、約5個〜約21個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である。デカン−1,10−ジイル及びヘンエイコサン−1,21−ジイルは2つの有用な直鎖アルキレン基である。理論に束縛されるものではないが、メチレン(すなわち−CH2−)と同様の立体的大きさの酸素原子及び/又は硫黄原子が、フッ素化ホスホン酸の自己組織化する性質及び/又は性能特性に大きく影響することなくアルキレン鎖のメチレン基と置換しうるものと考えられる。したがって、オキサ−又はチア−置換(すなわち酸素又は硫黄原子によるメチレンの置換)が、悪影響を及ぼすことなく1つの部位又は複数の部位で生じ得る。
【0029】
式IのRは、Rが非置換の直鎖アルキレン基である場合に、R及びRの炭素原子を合わせた合計が少なくとも10個であるものとして、約4個〜約10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基である。例示的なパーフルオロアルキル基としては、パーフルオロブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロヘキシルの異性体、及びそれらの混合物が挙げられる。望ましくは、Rはパーフルオロ−n−ブチル基である。
【0030】
式IのRは、水素、アルカリ金属カチオン(例、リチウム、ナトリウム、カリウム)、又は約1個〜約6個の炭素原子を有するアルキル基(例、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル)である。望ましくは、Rは水素又はアルカリ金属である。
【0031】
式IのMは、水素又はアルカリ金属カチオンである。
【0032】
式Iのフッ素化ホスホン酸は、コーティング装置の1以上の表面に塗布することで、そこに、ダイ流入口、内部通路、又はダイ流出口を含むがこれらに限定されないコーティング装置の要素の1つの少なくとも一部分を覆う単層を形成し得る。フッ素化ホスホン酸は、表面を、コーティング装置の少なくとも1つの表面又は要素をコーティングするのに充分な量と接触させることによって塗布し得る。フッ素化ホスホン酸は、適当な溶媒中に溶解し、表面に塗布してから乾燥させることによって単層を形成し得る。幾つかの塗布方法としてはこれらに限定されないが、スプレー、ディップコーティング、ワイピング、及びスピンコーティングが挙げられる。形成された単層は、通常、ホスホノ基がコーティングの表面に接し、パーフルオロ基が基材表面から遠ざかる方向に延びるように配向している。フッ素化ホスホン酸は、各種の金属基材が本来有する酸化物表面層に塗布し得るが、他の基材も有用である。金属の幾つかの例としては、クロム、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、並びにこれらの合金及び混合物が挙げられる。他の材料としては、アルミナ、チタニア、窒化チタン、及び酸化インジウムスズなどの金属酸化物及び混合金属酸化物及び窒化物が挙げられる。一実施形態では、コーティング装置は、クロム、アルミニウム、銅及び/又はニッケルを含む。
【0033】
別の実施形態では、フッ素化ホスホネートをコーティング装置に塗布し得る。式II〜IVのフッ素化ホスホネートは米国特許第7,189,479号(ルー(Lu)ら)に述べられている。
【0034】
【化2】

【0035】
別の実施形態では、式V及びVIのフッ素化ベンゾトリアゾールをコーティング装置に塗布し得る。フッ素化ベンゾトリアゾールは、処理しようとする表面にベンゾトリアゾールを単純に接触させることによって、コーティング装置の金属又は半金属表面上に連続した単層薄膜を形成し得る。個々の分子は、それらの分子構造が許すかぎりできるだけ高密度に一緒に詰め込み得る。特定の場合では、薄膜において、分子のトリアゾール基が金属/半金属表面の利用可能な領域に付着し、垂れ下がったフルオロカーボンの尾がほぼ外表面の方向に向かって整列するという自己組織化が起こるものと考えられる。フッ素化ベンゾトリアゾールは米国特許第6,376,065号(コルバら(Korba))及び米国特許第7,148,360号(フリンら(Flynn))に述べられている。
【0036】
【化3】

【0037】
単層薄膜の有効性及びコーティング装置の表面上に単層が形成される程度は、一般に、フッ素化ベンゾトリアゾールとコーティング装置の特定の金属又は半金属表面との間の結合の強さ、及び薄膜コーティングされた表面が使用される条件に依存する。特定の場合において、金属又は半金属表面のあるものは極めて強固な単層フィルムを必要とするが、結合強度が大幅に低い単層フィルムを必要とする表面もある。コーティング装置の有用な金属及び半金属表面には、上述したようにフッ素化ベンゾトリアゾールと結合を形成することによってコーティング装置のダイ流入口、内部通路、及びダイ流出口の少なくとも1つをコーティングするあらゆる表面が含まれる。単層薄膜を形成するうえで有用なコーティング装置の好適な表面の幾つかの例としては、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、銀、ゲルマニウム、及びこれらの合金を含むものが挙げられる。
【0038】
フッ素化ベンゾトリアゾールは、コーティングしようとする表面の一部又は全部をコーティングするのに充分な量を表面と接触させることによってコーティング装置に塗布し得る。フッ素化ベンゾトリアゾールは適当な溶媒に溶解し、得られた組成物を表面に塗布して乾燥させ得る。幾つかの適当な溶媒としては、酢酸エチル、2−プロパノール、アセトン、水、及びこれらの混合物が挙げられる。また、フッ素化ベンゾトリアゾールを蒸気相からコーティング装置の表面上に蒸着し得る。余分なフッ素化ベンゾトリアゾールはすべて、コーティング装置の要素を溶媒で洗浄し、及び/又は処理したコーティング装置を使用することによって除去し得る。
【0039】
特定の実施形態では、コーティング装置に塗布された低表面エネルギー材料によって、基材又はウェブに対するコーティング材料の塗布速度を増大させ得る。基材は第1の速度でダイ流出口を通過させ得る。低表面エネルギーコーティングを含むコーティング装置を使用する場合には、ダイ流出口を第2の速度で通過する基材にコーティング材料を塗布し得る。第2の速度において少なくとも5%の増加が見られる。
【0040】
一実施形態では、スロットダイコーターのダイリップを低表面エネルギー材料でコーティングする。コーティング材料の塗布時には、ダイ流出口から流出するコーティング材料と基材との間の接触角が増大する場合があり、このことはコーティング速度の増大に寄与し得る。接触角の増大は、より大きなコーティング間隔でコーティング材料を供給することにも寄与しうるものであり、これによりコーティング速度が増大する。コーティングの厚さに対するコーティング間隔の比は、低表面エネルギーコーティングを有するコーティング装置では増大し得る。
【0041】
別の実施形態では、スロットダイコーターの内部通路を低表面エネルギーコーティングで処理することによって、内部通路又はダイマニホルド内に閉じ込められる気泡を低減又はほぼ除去し得る。内部通路内の気泡が低減されることにより、縞性能(例えば、基材上のコーティングの縞/欠陥の低減)が向上し得る。
【0042】
コーティング装置に塗布される低表面エネルギーコーティングは、コーティング装置を機械的に改変することなく塗布し得る。本開示のコーティングを処理する方法は、フッ化ポリビニリデン(PVDF)などの低表面エネルギー材料の塗布を可能にするためのコーティング装置の研磨、研削、及び艶出しの必要性をなくすものである。更に、高温でのPVDFなどの低表面エネルギー材料の硬化を、本明細書で述べた低表面エネルギーコーティングによって低減することが可能である。アルコキシシランなどの必要に応じて用いられるプライマーを、低表面エネルギー材料の塗布に先立ってコーティング装置の表面に塗布し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材にコーティング材料を塗布するための方法であって、
前記基材上に前記コーティング材料を供給するためのコーティング装置であって、5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料でコーティングされた少なくとも1つの処理表面を含むコーティング装置を提供する工程と、
前記コーティング材料が前記低表面エネルギー材料を覆って、又はこれに接して流れるように前記コーティング装置の前記処理表面上に前記コーティング材料を導く工程と、
前記コーティング材料を前記コーティング装置から前記基材上に供給する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記コーティング装置を提供する工程がスロットダイコーターを含み、該スロットダイコーターは、
これを通じて前記コーティング材料が前記コーティング装置に導入されるダイ流入口と、
内壁によって画定される内部通路であって、これを通じて前記コーティング材料が前記内部通路に流入する前記ダイ流入口から延びる前記内部通路と、
これを通じて前記コーティング材料が前記内部通路から流出して前記基質上に付着するダイ流出口であって、少なくとも1つのダイリップによって画定されるダイ流出口と、を備え、
前記処理表面が、前記ダイ流入口、前記内部通路、又は前記ダイ流出口の少なくとも1つの表面であり、
前記コーティング材料を導く工程が、前記コーティング材料が前記処理表面を覆って、又はこれに接して流れるように前記コーティング材料を前記ダイ流入口から、前記内部通路を通じ、更に前記ダイ流出口を通じて導くことを含み、
前記コーティング材料を供給する工程が、前記コーティング材料を前記ダイ流出口から前記基材上に供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング装置を提供する工程がスライドコーターを含み、該スライドコーターは、
第1のスライド表面を有する第1のスライドブロックと、
第2のスライド表面を有する第2のスライドブロックであって、前記第1のスライドブロックに対して配置され、これを通じて前記コーティング材料が流れることができる第1の溝を第1のスライドブロックとの間に形成する第2のスライドブロックと、を備え、
前記処理表面が、前記第1のスライド表面又は前記第2のスライド表面であり、
前記コーティング材料を導く工程が、前記コーティング材料が前記第1のスライド表面を覆って又はこれに接して流れるように、前記コーティング材料を、前記第1の溝から前記第2のスライド表面上に直接流す代わりに、前記第1の溝から前記第1のスライド表面上に導くことを含み、
前記コーティング材料を供給する工程が、前記コーティング材料を前記第2のスライドブロックから前記基材上に供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が連続した材料のロールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング装置が、カーテンコーター、スライドコーター、スロットダイコーター、流体ベアリングコーター、及びスロット供給ナイフコーターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイリップが前記低表面エネルギー材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイリップに接する表面が前記低表面エネルギー材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記内部通路が前記低表面エネルギー材料を含み、前記コーティング材料を導く際に前記内部通路に閉じ込められた空気が追い出される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング装置がスロットダイコーターである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記ダイリップが前記低表面エネルギー材料を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング材料を含む前記基材を提供することを更に含み、前記基材が第1の速度で前記ダイ流出口を通過する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング材料を含む前記基材が前記ダイ流出口を第2の速度で通過し、前記第2の速度が前記第1の速度よりも少なくとも5%高い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記低表面エネルギー材料が、フッ素化有機ホスホン酸、フッ素化ベンゾトリアゾール、フッ素化ホスホネート、ホスホン酸官能化フルオロポリマー、ベンゾトリアゾール官能化フルオロポリマー、及び上記の2以上のものの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記フッ素化ベンゾトリアゾールが、パーフルオロポリエーテルアルコキシシランを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ホスホン酸官能化フルオロポリマーが多官能性アクリレートを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記低表面エネルギー材料が、前記基材上に供給された後に架橋される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コーティング装置を処理するための方法であって、
少なくとも1つの表面を有するコーティング装置を提供する工程と、
前記コーティング装置の少なくとも1つの表面に、5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料を塗布して、処理されたコーティング装置を提供する工程と、を含む方法。
【請求項18】
コーティング装置を提供する工程が、スロットダイコーターを含み、該スロットダイコーターは、
ダイ流入口、内壁によって画定される内部通路、及び少なくとも1つのダイリップによって画定されるダイ流出口を有するスロットダイコーターと、
5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料を、前記ダイ流入口、前記内部通路、又は前記ダイ流出口の少なくとも1つの表面に塗布して、処理されたスロットダイコーターを提供することとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティング装置を提供する工程がスライドコーターを含み、該スライドコーターは、
第1のスライドブロック及び第2のスライドブロックと、
5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料を、前記第1のスライドブロック又は前記第2のスライドブロックの少なくとも1つの表面に塗布して、処理されたスライドコーターを提供すること、とを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティング装置が、カーテンコーター、スライドコーター、スロットダイコーター、流体ベアリングコーター、及びスロット供給ナイフコーターからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ダイリップが前記低表面エネルギー材料を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ダイリップに接する表面が前記低表面エネルギー材料を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記コーティング装置がスロットダイコーターである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ダイリップが前記低表面エネルギー材料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記低表面エネルギー材料が、フッ素化有機ホスホン酸、フッ素化ベンゾトリアゾール、フッ素化ホスホネート、ホスホン酸官能化フルオロポリマー、ベンゾトリアゾール官能化フルオロポリマー、及び上記の2以上のものの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記フッ素化ベンゾトリアゾールが、パーフルオロポリエーテルアルコキシシランを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ホスホン酸官能化フルオロポリマーが多官能性アクリレートを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記低表面エネルギー材料が硬化することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記低表面エネルギー材料が2マイクロメートル未満の厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
基材にコーティング材料を塗布するためのコーティング装置であって、
少なくとも1つの処理された表面を有し、
少なくとも1つの処理された表面が、5マイクロメートル未満の厚さを有する低表面エネルギー材料を含む、コーティング装置。
【請求項31】
前記コーティング装置がスロットダイコーターを含み、該スロットダイコーターは、
ダイ流入口と、
内壁によって画定された内部通路であって、前記ダイ流入口から延びる内部通路と、
ダイ流出口と、を有し、
前記処理表面が、前記ダイ流入口、前記内部通路、又は前記ダイ流出口の少なくとも1つの表面である、請求項30に記載のコーティング装置。
【請求項32】
前記コーティング装置がスライドコーターを含み、該スライドコーターは、
第1のスライドブロックと、
第2のスライドブロックと、を有し、
前記処理表面が前記第1のスライドブロック及び前記第2のスライドブロックの少なくとも一方の表面である、請求項30に記載のコーティング装置。
【請求項33】
前記低表面エネルギー材料が、フッ素化有機ホスホン酸、フッ素化ベンゾトリアゾール、フッ素化ホスホネート、ホスホン酸官能化フルオロポリマー、ベンゾトリアゾール官能化フルオロポリマー、及び上記の2以上のものの組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項30に記載のコーティング装置。
【請求項34】
前記フッ素化ベンゾトリアゾールが、パーフルオロポリエーテルアルコキシシランを更に含む、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−507700(P2011−507700A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541470(P2010−541470)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/085829
【国際公開番号】WO2009/088604
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】