説明

コーティング組成物及びそれにより被覆された編織布

編織布を被覆するための、エラストマーに硬化可能であるオルガノポリシロキサン組成物は、ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンと、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素架橋剤と、貴金属触媒と、組成物全体の100重量部あたり15〜30重量部の充填剤とを含む。該充填剤は、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編織布上に被覆するのに適した組成物、及びかかる組成物で被覆された編織布に関する。本発明は、かかる編織布の作製プロセス、並びに上記被覆編織布で製造されたエアバッグ及び同様の製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に従って被覆された編織布の特に有用な用途は、編織布が包体(envelope)に形成されて、例えば、包体内にガスを導入することにより包体の内側に圧力がかけられ、それによりこれが膨張されるような用途である。このような用途には、自動車用エアバッグ、飛行機の緊急シュート、及び熱気球等の膨張式拘束装置(inflatable restraint devices)が含まれる。例えば、編織布の浸透性を低下させるため、又は編織布の熱保護を改善するために編織布上の柔軟性コーティングを提供するコーティング組成物は、以下に参照されるもののように、多くの特許明細書中に記載されている。
【0003】
最も広く使用されるコーティングは、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、例えば、1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、1分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するオルガノ水素シロキサンと、ヒドロシリル化反応のための白金族ベースの触媒とを含む組成物に基づく。このような硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、一般に、上記ヒドロシリル化反応の抑制剤と、接着促進添加剤と、補強シリカ及び/又はシリコーン樹脂充填剤とを含有する。
【0004】
このような組成物の一例は欧州特許第0718432号に見ることができ、ここでは、補強剤はシリコーン樹脂であり、且つ接着促進添加剤は、エポキシ及びアルコキシ官能性を有する有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、アルケニル官能性シラノール末端ポリオルガノシロキサン、及び金属キレート化合物を含む。
【0005】
米国特許第5658674号明細書では、充填剤は任意で要求されており、疎水性処理されたシリカ等の補強剤か、又は例えば炭酸カルシウム等の非補強剤のいずれかでよいが、米国特許第5658674号明細書では、実際問題として、使用する充填剤は、補強充填剤である石英とシリカの混合物であることが教示される。米国特許第5658674号明細書では、更に、アルコキシル化オルガノシランと、少なくとも1つのエポキシラジカルを有する有機ケイ素化合物と、金属キレート及び/又は金属アルコキシド(金属は、ジルコニウム、ゲルマニウム、リチウム、マンガン、鉄、又はマグネシウムから選択される)とを含む接着促進剤が要求される。
【0006】
米国特許第5877256号明細書は、アルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン樹脂、無機充填剤、特定のポリオルガノヒドロシロキサン、白金族の金属触媒、及びエポキシ基含有有機ケイ素化合物を含む、自動車のエアバッグに適用させるための液状シリコーンゴムコーティング組成物について記載している。米国特許第5401566号明細書は、脂肪族不飽和を有する線状ポリオルガノシロキサンと、特定のポリオルガノヒドロシロキサンと、付加反応触媒と、疎水性シリカと、難燃剤と、任意で接着促進剤とを含むシリコーン組成物が含浸されたエアバッグ用編織布について記載している。
【0007】
国際特許WO01/12894パンフレットは、接着促進剤又は無機補強充填剤を必要としない、編織布用のエラストマー形成コーティング組成物について記載しており、この組成物は、脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基を有する第1、第2、及び第3のオルガノポリシロキサンと、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素架橋剤と、脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基とSi−H基との反応を促進することができる触媒と、シリコーン樹脂の形態の補強剤とを含む。
【0008】
米国特許第4618522号明細書は、液状の連鎖停止ポリシロキサンと、ケイ素結合ビニル基を含有する樹脂状オルガノポリシロキサンと、白金触媒と、液状オルガノ水素ポリシロキサン架橋剤と、有効量の非研磨性充填剤(その例には、粉砕石英、炭酸カルシウム、アルミナ水和物、ヒュームドシリカ、ケイ酸アルミニウム及びチタン酸カリウムが含まれる)とを含む、オルガノポリシロキサン布用コーティング組成物について記載している。これらの組成物は、特にルーフィング布としての引裂強さ及び難燃性を付与することが目的であった。
【0009】
米国特許第6354620号明細書は、少なくとも2つのケイ素結合オレフィン不飽和炭化水素置換基、アルコキシ基又はヒドロキシル基を有し、重合度が150以下であるオルガノポリシロキサンポリマーと、少なくとも3つのケイ素結合反応基を有する架橋有機ケイ素材料と、触媒とを含む硬化性コーティング組成物について記載している。コーティング組成物は、任意で、非補強性充填剤を含有するが、3重量%以下の補強充填剤を含有する。コーティングは、既にエラストマーコーティングをその上に有するエアバッグ編織布において使用するように設計される。米国特許第6354620号明細書の組成物は、25g/mまでの被覆重量のオーバーコーティングとして適用され、摩擦を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記から、従来技術の教示では、エアバッグ上の主要なエラストマーコーティングは、シリコーン樹脂又は疎水性処理済シリカ充填剤の形態の補強剤を含有することが必要であることが分かるであろう。本発明者等は、驚いたことに、本発明により、高価なシリコーン樹脂及び疎水性処理済シリカに対する従来技術の必要性を回避でき、通常は実質的に非補強性であると考えられる充填剤を用いて、適切な引裂強さ、柔軟性、及び耐摩耗性が得られることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基、及びヒドロキシル又は加水分解性基から選択される2つ以上の反応基を有する1つ又は複数のオルガノポリシロキサン(A)と、前記反応基との反応によりオルガノポリシロキサン(A)を架橋させるのに適した有機ケイ素架橋剤(B)と、成分(A)と(B)の間の反応を促進することができる十分な量の触媒(C)と、15〜30重量%の充填剤(D)とを含むオルガノポリシロキサン組成物は、エアバッグの形成において、編織布を被覆するために使用され、上記充填剤(D)が、4.5以下のモース硬度(Moh hardness)及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とする。
【0012】
本発明は、編織布を被覆するための、エラストマーに硬化可能であるオルガノポリシロキサン組成物であって、
(A)ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンであって、最大量で存在するオルガノポリシロキサンが、1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンと、
(B)1/1〜10/1である(A)中のアルケニル基の総量に対する(B)中のSi−H基のモル比を与えるのに十分な量の中に、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素架橋剤と、
(C)(A)の脂肪族不飽和炭化水素置換基と(B)のSi−H基との反応を促進するのに十分な量の貴金属触媒と、
(D)組成物全体の100重量部あたり15〜30重量部の充填剤と、
を含み、上記充填剤が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とするオルガノポリシロキサン組成物を包含する。
【0013】
本発明はまた、脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基、及びヒドロキシル又は加水分解性基から選択される2つ以上の反応基を有する1つ又は複数のオルガノポリシロキサン(A)と、上記反応基との反応によってオルガノポリシロキサン(A)を架橋させるのに適した有機ケイ素架橋剤(B)と、成分(A)と(B)の間の反応を促進することができる十分な量の触媒(C)と、15〜30重量%の充填剤(D)とを含む25g/m2より多く180g/m2までのオルガノポリシロキサン組成物層で被覆された編織布を含むエアバッグであって、
上記充填剤(D)が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とするエアバッグを包含する。
【0014】
成分(A)は、一般に、2つ以上の脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ反応基、又は2つ以上のヒドロキシル若しくは加水分解性反応基のいずれかを含有し、有機ケイ素架橋剤(B)はそれに従って選択される。好ましくは、本発明で使用される成分Aの粘度は、25℃で100Pa.s以下である。
【0015】
1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(A)はよく知られており、粘性材料から、自由に流動する液体まで様々であり得る。これらは、一般式RR’SiO[4−(a+b)]/2(式中、Rは一価の炭化水素基であり、R’は一価の脂肪族不飽和炭化水素基であり、aは0、1、2、又は3であり、bは0又は1であり、ただしa+bは3以下であるとする)の単位を含むホモポリマー、コポリマー又はその混合物でよい。
【0016】
例えば、本発明の1つの好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基を有する第1、第2、及び第3のオルガノポリシロキサンを含むことができ、ここで第1及び第2のオルガノポリシロキサンは、末端シロキサン単位においてのみ脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基を有する。第1のオルガノポリシロキサン(A)(i)は、25℃で0.05〜0.65Pa.sの粘度を有し、第2のオルガノポリシロキサン(A)(ii)は、25℃で少なくとも10Pa.sの粘度を有する。第3のオルガノポリシロキサン(A)(iii)は、末端シロキサン単位及びシロキサンポリマー鎖中のシロキサン単位に脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基を有する。
【0017】
この好ましい実施形態では、第1及び第2のオルガノシロキサンポリマーは好ましくはほぼ直線性を有し、一般構造(II)
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R及びR’は上記と同じ意味を有し、xはオルガノポリシロキサンが上記の粘度範囲に対する要件を満たすのを可能にするのに十分な大きさの整数であり、例えば、第1のオルガノポリシロキサンでは300までの値、好ましくは75〜250の値、更に好ましくは100〜200の値であり、第2のオルガノポリシロキサンでは、少なくとも300の値、好ましくは400〜1,000の値、更に好ましくは450〜1,000の値を有する)を有する。Rは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル又はアリール基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、ヘキシル、フェニル、又はオクチルを示すのが特に好ましい。更に好ましくは、全てのR基の少なくとも50%がメチル基であり、最も好ましくは、実質的に全てのR基がメチル基である。R’は、脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ基であり、好ましくは2〜22個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子、最も好ましくは2〜6個の炭素原子を有する炭化水素基である。アルキニル基も使用することができるが、脂肪族不飽和基はアルケニル基であるのが特に好ましい。特に有用なのは、ビニル、アリル及びヘキセニル基であり、最も好ましくは末端不飽和を有する。第1のオルガノポリシロキサンは、25℃で0.05〜0.65Pa.s、より好ましくは0.1〜0.6Pa.s、最も好ましくは0.2〜0.6Pa.sの粘度を有するα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンポリマーであるのが最も好ましい。また、第2のオルガノポリシロキサンは、25℃で10〜90Pa.s、より好ましくは20〜80Pa.s、最も好ましくは40〜70Pa.sの粘度を有するα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンポリマーであるのが最も好ましい。
【0020】
好ましくは、第3のオルガノシロキサンポリマーもほぼ直線性を有し、一般構造(III)
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R及びR’は上記と同じ意味を有し、yはゼロ又は整数であり、zは少なくとも1の値を有する)を有する。y+zの値は、好ましくは300以下であり、好ましくは100〜200であり、より好ましくは120〜180である。zの値は、好ましくは少なくとも2、より好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜5である。第3のオルガノポリシロキサンは、25℃で0.05〜0.65Pa.s、より好ましくは0.1〜0.6Pa.s、最も好ましくは0.2〜0.6Pa.sの粘度を有するα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサンポリメチルビニルシロキシコポリマーであるのが最も好ましい。
【0023】
上記第1、第2、及び第3のオルガノポリシロキサンの相対量は決定的ではないが、オルガノポリシロキサン(A)(ii)が最大量で存在するのが好ましい。正確な比率に影響を与え得る因子は、それぞれのオルガノポリシロキサンの粘度と、編織布を被覆するのに必要とされる組成物の所望の粘度とである。この粘度は、通常の温度で標準的なコーティング装置の使用を可能にするために十分低いのが好ましい。第1のオルガノポリシロキサン対第2のオルガノポリシロキサンの適切な重量比は1対2〜1対20であり、第2のオルガノポリシロキサン対第3のオルガノポリシロキサンの適切な重量比は、20対1〜2対1である。第1、第2及び第3のオルガノポリシロキサンの特に適した重量比は、1/2/1、1/5/1、2/10/1、1/10/2、5/10/1及び2/5/1である。オルガノポリシロキサン(A)は、本発明の第1の態様による組成物の40〜95重量%、好ましくは50〜85%、更に好ましくは60〜80%を構成することが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態において、上記オルガノポリシロキサン化合物(A)が、
A(i)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において0.05〜0.65Pa.sの粘度を有する100重量部の第1のオルガノポリシロキサン材料と、
A(ii)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する300〜700重量部の第2のオルガノポリシロキサン材料と、
A(iii)1分子あたり末端シロキサン単位及びポリマー鎖中の単位に脂肪族不飽和炭化水素置換基を有する50〜150重量部の第3のオルガノポリシロキサン材料と、
を含む。
【0025】
代替的には、ポリオルガノシロキサン(A)は、ヒドロキシル又は加水分解性基である、ケイ素に結合した2つ以上の基を有するポリジオルガノシロキサンでもよい。このようなポリマーは、好ましくは、一般式R”SiO4−s/2(式中、R”は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、ビニル基若しくはフェニル基、又はフッ素化アルキル基を表し、sは0、1又は2の値を有する)のシロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサン鎖である。好ましい材料は線状材料であり、すなわち、全ての単位でs=2である。好ましい材料は、一般式−(R”SiO)−(式中、各R”はアルキル基、例えば、メチル、エチル又はイソブチル基を表し、mは約200〜約1,500の値を有する)によるポリジオルガノシロキサン鎖を有する。各ヒドロキシル又は加水分解性基は同じでも異なっていてもよく、例えば、−Si(R”)OH、又は
−Si(R”)−(D)−R”’SiR”(OR3−k
(式中、Dは−R”’−(Si(R”)−O)−Si(R”)−であり、
R”は上記のとおり(好ましくは、メチル)であり、R”’は二価の炭化水素基であり、rは1〜6の自然数であり、dは0又は自然数であり、Rはアルキル又はオキシアルキル基(ここでアルキル基は、6個までの炭素原子を有する)であり、kは0、1又は2の値を有する)から選択することができる。好ましくは、R”’はメチレン基又はエチレン基のいずれかであり、kは0又は1であり、Rはメチル又はエチル基である。最も好ましくは、R”’はエチレン基であり、kは0であり、Rはエチル基である。
【0026】
ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ基を有するポリオルガノシロキサン(A)を架橋させるための架橋剤(B)は、一般に、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有し、好ましくは、シラン及び短鎖オルガノシロキサンポリマーから選択される。架橋剤(B)は、例えば、一般的な反応スキーム(IV)
【0027】
【化3】

(式中、R”は二価の炭化水素基であり、yは上記で定義したとおりであり、好ましくは、ここでは1の値を有する)による付加(ヒドロシリル化)反応によって、上記のオルガノポリシロキサンのケイ素結合基R'と反応することができる。
【0028】
架橋有機ケイ素化合物としての役割を果たす適切なシランは、メチルトリヒドロシランである。
【0029】
適切な短鎖オルガノシロキサンポリマー(B)は、1分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するものを含み、且つ線状でも分枝状でも環状でもよい。好ましい有機ケイ素架橋剤は、一般式
SiO(RSiO)(RHSiO)SiR、又は
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、Rは10個までの炭素原子を有するアルキル又はアリール基を示し、Rは基R又は水素原子であり、pは0〜2qの値を有し、qは2〜5,000の値を有し、1分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子が存在する)を有する。ケイ素結合水素原子が線状シロキサン化合物の末端ケイ素原子上にあることは不可欠ではないが、好ましい。Rは、3個以下の炭素原子を有する低級アルキル基、最も好ましくはメチル基を示すのが好ましい。Rは好ましくはR基を示す。好ましくは、qは、3〜70、より好ましくは3〜30の値を有し、又は環状有機ケイ素材料が使用される場合には3〜8であり、好ましくは、pは、0〜1.25qの値を有する。有機ケイ素架橋剤は、25℃で0.001〜1.0Pa.s、より好ましくは0.002〜0.15Pa.s、最も好ましくは0.005〜0.06Pa.sの粘度を有するシロキサンポリマーであるのが最も好ましい。架橋有機ケイ素化合物は、上記のいくつかの材料の混合物を含むことができる。
【0032】
適切な有機ケイ素架橋剤(B)の例は、例えば20個までの炭素原子を有するトリメチルシロキサン末端ブロック化ポリメチルヒドロシロキサン、ジメチルヒドロシロキサン末端ブロック化ポリメチルヒドロシロキサン、ジメチルシロキサンメチルヒドロシロキサンコポリマー、及びテトラメチルシクロテトラシロキサンである。有機ケイ素架橋剤のサイズは重要ではないが、好ましいのは、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有し、2〜50個、より好ましくは5〜20個のケイ素原子の鎖長を有する短鎖オルガノシロキサンポリマーである。使用される架橋剤の量は、組成物中の脂肪族不飽和炭化水素及び炭化水素オキシ基に対するケイ素結合水素原子の数の比率が少なくとも1/1、好ましくは1/1〜10/1、最も好ましくは3/1〜7/1であるのを可能にするのが好ましい。
【0033】
2つ以上の反応性ヒドロキシル又は加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン(A)のために使用される架橋剤(B)は、上記のような少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する架橋剤、又は一般式R”4−fSi(OR(式中、R”及びRは上記のとおりであり、fは2、3又は4の値を有する)のアルコキシシランでよい。好ましいシランは、R”がメチル、エチル又はビニル又はイソブチルを表し、Rがメチル又はエチルを表し、fが3であるものである。有効なシランの例は、メチルトリ(メトキシ)シラン(MTM)、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びビニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)である。その他の適切なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びその他の三官能性アルコキシシラン並びにその一部加水分解縮合生成物等がある。選択したアルコキシシラン(単数又は複数)の十分な量を用いて、貯蔵中の組成物の適切な安定性と、大気中の水分にさらされたときの組成物の適切な架橋を保証する。
【0034】
2つ以上の反応性脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ基を有するオルガノポリシロキサン(A)のための触媒(C)は、好ましくは、貴金属、例えば、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウムに基づく。最も好ましくは、触媒は、米国特許第2,823,218号で教示されるように通常得られる六水和物の形又はその無水物の形のいずれかのクロロ白金酸、アセチルアセトン酸白金、ハロゲン化第一白金と、エチレン、プロピレン、オルガノビニルシロキサン又はスチレン等の不飽和化合物との錯体、ヘキサメチル二白金(hexamethyldiplatinum)、PtCl、PtCl、PtCl、又はPt(CN)等の白金化合物又は錯体である。特に有用な触媒は、米国特許第3,419,593号明細書に開示されるような、クロロ白金酸と、ジビニルテトラメチル−ジシロキサン等の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物とを反応させる場合に得られる組成物である。触媒は、組成物全体の総重量を基準として2〜100重量ppm、より好ましくは5〜50重量ppmの貴金属、例えば白金を与える量で使用されるのが好ましい。
【0035】
2つ以上の反応性ヒドロキシル又は加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン(A)のための触媒(C)は、金属−酸素−炭素結合により金属に付いた有機基を有する有機チタン又は有機ジルコニウム化合物でよい。この定義内に入る化合物の2つの主要なタイプは、オルト−エステル、すなわちアルコラート、及びアシレート(有機基は、カルボン酸から誘導される)である。例えば、本発明による有機チタン化合物は、同じチタン原子に付いたアルコラート基及びアシレート基の両方を含有することができる。有効な有機チタン触媒としては、式Ti(OR(式中、各Rは同じでも異なっていてもよく、線状又は分枝状アルキル、アルコキシアルキル又はアシル基である)を有するもの、例えば、テトラ−イソプロピルチタネート、テトラ−メトキシエトキシ−チタネート及びジ−イソプロピルジ−アセトキシチタネート、又は例えば、上記のアルコラートをα−又はβ−ジケトン若しくはその誘導体と反応させることによって生成されるキレート又は部分キレートチタン化合物がある。より好ましいのは、チタンに付いた2つのアルコラート基を有する部分キレートチタン化合物である。最も好ましい有機チタン化合物は、2つのアルコラート基が3個より多い炭素原子で構成されたもの、例えば、ビス(ジエチレングリコキシ)−チタン−(2,4−ペンタンジオナート)又はビス(2−エチルへキシルオキシ)チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)である。例えばアルミニウムのトリアセチルアセトネート、ジルコニウムのテトラ−アセチルアセトネート、及び鉄のトリアセチルアセトネート等のアセチル-アセトネート、又は、ヒドロキシカルボン酸、例えば酒石酸でキレート化されたアルミニウム等、2つ以上の反応性ヒドロキシル又は加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン(A)のための触媒(C)として適切であり得る。
【0036】
本発明の充填剤(D)は、4.5未満のモーススケール硬度を有する。かかる充填剤の例には、タルク(モース1)、アルミナイト(モース1〜2)、硫酸カルシウム(硬石膏)(モース硬度3.5)、石膏(モース硬度2)、硫酸カルシウム(モース1.6〜2)、炭酸マグネシウム(モース硬度3.5〜4.5)、カオリン等のクレー(モース1〜2)、三水酸化アルミニウム(モース2.5〜3.5)、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)(モース2.5)、グラファイト(モース1〜2)、ケイ藻土(モース1.0〜1.5)、炭酸カルシウム(モース硬度3〜3.5)、バライト、硫酸バリウム型(モース3〜3.5)、炭酸銅、例えばマラカイト(モース硬度3.5〜4)、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バリウム、例えばウィザーライト(モース硬度3.5)及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチアン石(モース硬度3.5)等のクレーが含まれるが、これらに限定されない。充填剤(D)は、例えば、脂肪酸若しくはステアレート等の脂肪酸エステル、又はシランで、表面処理されてもよい。
【0037】
比較すると、石英及びシリカは約7のモーススケール番号を有し、酸化アルミウムはモース9.0を有する。モーススケールは1〜10の範囲を有し、化合物の比較引っかき硬度に関する(試験片を標準リストからの鉱物で引っかくことができれば、その鉱物よりも軟らかく、それよりも低いモース硬度を有し、試験片が鉱物を引っかくことができれば、その鉱物よりも硬く、より高いモース硬度を有する)。本発明者等は、硬化した液状シリコーンゴムベースの塗料のエアバッグ塗料としての適当性を試験するために一般に用いられる試験で、より硬い充填剤の使用が布の引裂強さを妥協(compromise)することを発見した。好ましくは、本発明のコーティング組成物中の10%以下の充填剤は、5より大きいモース硬度を有する補強充填剤であり、組成物の10重量%以下は、シリカベースの充填剤及び/又はシリコーン樹脂を含む。最も好ましくは、組成物は実質的にシリカ又はシリコーン樹脂を含有しない。
【0038】
充填剤が、3.0μm以下、好ましくは2.0μm以下、例えば、0.03〜1.5μmの平均粒径を有することも本発明の必要条件である。充填剤(D)は、布用コーティング組成物の17〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%で存在する。
【0039】
コーティング組成物は、好ましくは、接着促進添加剤(E)を含有する。かかる添加剤は、好ましくは、1つ又は複数のアルコキシ及びアルケニル基を含有する有機ケイ素化合物、及び/又はエポキシ基含有有機ケイ素化合物を含み、金属の化合物又はキレートは、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、リチウム、マンガン、鉄、アルミニウム又はマグネシウムから選択される。好ましい接着促進添加剤は、以下の組成物を含む。
(E)(i)エポキシ及びアルコキシ官能性を有する有機ケイ素化合物、
(E)(ii)有機チタン又は有機ジルコニウム化合物、及び
(E)(III)アルケニル官能性シラノール末端ポリオルガノシロキサン。
【0040】
成分E(i)は、例えば、米国特許第3,455,877号明細書に記載されるようなエポキシ及びアルコキシ官能性を有する有機ケイ素化合物である。成分E(i)のアルコキシラジカルは同じでも異なっていてもよく、通常、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシラジカル、例えばメトキシ又はエトキシから選択される。その他の置換基は、存在する場合、好ましくは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基から選択される。適切な有機ケイ素化合物(E)(i)は、好ましくは、低分子量材料、例えば、1分子あたり10個以下のケイ素原子を有する線状又は分枝状オルガノシロキサンポリマーである。より好ましいのは、エポキシ及びアルコキシ基のみを有するシランである。適切なシラン(E)(i)は、一例として、3−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、及びβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシランを含む。成分(E)(i)は、好ましくは、本発明による組成物の総重量の0.1〜2重量%、より好ましくは0.3〜1重量%の濃度で使用される。組成物が特定の編織物基材、例えばポリエステルに施される場合には、より多くの量が好ましいであろう。
【0041】
成分E(ii)は、好ましくは有機チタン化合物である。この化合物は、接着促進添加剤(E)の成分の触媒反応に役立つ。成分(ii)は、金属−酸素−炭素結合により金属に付いた有機基を有する有機チタン又は有機ジルコニウム化合物でよい。この定義内にある化合物の2つの主なタイプは、オルト−エステル、すなわちアルコラートと、有機基がカルボン酸から誘導されるアシレートである。本発明による有機チタン化合物は、同じチタン原子についたアルコラート基及びアシレート基の両方を含有することができる。有効な有機チタン化合物は、従って、式Ti(OR(式中各Rは同じでも異なっていてもよく、線状又は分枝状アルキル、アルコキシアルキル又はアシル基である)を有するものを含み、例えば、テトラ−イソプロピルチタネート、テトラメトキシエトキシ−チタネート及びジ−イソプロピルジ−アセトキシチタネートである。本発明で使用するための好ましい有機チタン化合物は、キレート又は部分キレートチタン化合物である。これらの材料は、例えば、上記のアルコラートとα−若しくはβ−ジケトン又はその誘導体とを反応させることによって生成される。より好ましいのは、チタンに付いた2つのアルコラート基を有する部分キレートチタン化合物である。最も好ましい有機チタン化合物は、2つのアルコラート基が3個より多い炭素原子で構成されるものであり、例えばビス(ジエチレングリコキシ)−チタン−(2,4−ペンタンジオナート)又はビス(2−エチルへキシルオキシ)チタンビス(2,4−ペンタンジオナート)である。
【0042】
任意で、接着促進添加剤は、添加剤(E)の接着促進特性を強化するために必要とされる場合には、更に、接着促進添加剤の第2の金属キレート化合物(以下、(E)(iv)と称する)を含むことができる。組成物と適合性であり、成分(A)と(B)のヒドロシリル化反応を妨害しない金属キレートが適切である。適切な金属キレートには、アセチル−アセトネート、例えばアルミニウムのトリアセチルアセトネート、ジルコニウムのテトラ−アセチルアセトネート及び鉄のトリアセチルアセトネートが含まれる。アルミニウムキレート類が好ましく、例えば、アルミニウムは、1,3−ジケトン、例えばアセチルアセトネート、又はヒドロキシカルボン酸、例えば酒石酸とキレート化させることができるが、好ましいアルミニウムキレートは、アルミニウムアセチルアセトネートである。アルミニウムキレート類は、適切な基材に対する本発明による組成物の接着度を強化及び増大させる。金属キレートは、成分E(i)100重量部あたり1〜50重量部、好ましくは1〜3重量部の割合、又は組成物の0.004〜0.2重量%の割合で、本発明による組成物中に存在することができる。より高いレベルの金属キレートは、本発明による硬化性組成物の難燃性を損なう。
【0043】
従って、成分(E)iiは、(E)ivと組み合わせて使用される場合、例えば、M[ORiii及びM[ORiv[Z](式中、Mはチタン又はジルコニウムであり、各Riii及びRiVは同じでも異なっていてもよく、第1級、第2級、第3級脂肪族炭化水素、及びSiR(ここで各Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基)から選択され、Zは式−O−Y−O−の基(ここでYは、1〜8個の炭素原子を含むアルキレン基、又は1〜8個の炭素原子を含む分枝アルキレンラジカル)であり、xは0又は2であり、hが0の場合にはgは2であり、hが2の場合にはgは1である)から選択されるキレートチタネート又はジルコネート化合物の混合物及び/又は反応生成物を、上記のキレート又は一般式
【0044】
【化5】

【0045】
(式中、Rはメチレン基又は1〜6個の炭素原子を有する置換メチレン基から選択され、Aは−(CXC(R(ここでwは0〜5)、及びアダマンチル基又はその誘導体から選択され、Bは、−(CXC(R(ここでtは0〜5)と、1〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基と、OR(式中Rは−(CXC(R及び1〜6個の炭素原子を有する一価のアルキル基の群から選択される)との群から選択され、ここで各Xは同じでも異なっていてもよく、ハロゲンラジカル及び水素の群から選択され、各Rは同じでも異なっていてもよく、ハロゲンラジカル、水素、及び1〜8個の炭素原子を有するアルキルラジカルの群から選択される)のキレートと組み合わせて含むことができる。
【0046】
接着促進添加剤中の(E)iiとしての有機チタン化合物の存在は、適切な基材に対する本発明による硬化性組成物の接着の急速な開始を促進し、更に、接着の急速な開始を促進する能力は、時間とともに低下しない。最も好ましい有機チタン化合物は、特定の有機チタン化合物の使用に伴う有毒な蒸気副生成物又は不快な臭気を生成しない。成分(E)iiは、成分E(i)100重量部あたり10〜100重量部、好ましくは40〜80重量部の割合で、上記接着促進添加剤(E)中で用いることができる。好ましくは、上記成分E(ii)は、50ppm〜1,000ppmのチタン金属、より好ましくは100〜700ppm、最も好ましくは200〜500ppmのチタン金属に相当する量で存在する。
【0047】
好ましい接着促進添加剤の成分(E)(iii)は、ビニル官能性シラン又はアルケニル官能性シラノール末端ポリオルガノシロキサンのいずれかを含むことができる。アルケニル官能性シラノール末端ポリオルガノシロキサンは、一般式RviSiO(3−c)/2及びRveSiO(4−e)/2(式中、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜8個の炭素原子を有するアリール基を示し、Rviは上記のとおりであり、cは1又は2であり、eは1、2又は3である)に従う単位を含む。好ましくは、成分(E)iiiは式H−(OSiR(OSiRR’)−OH、(式中、R及びRviは上記で定義したとおりであり、Rviは好ましくは2〜8個の炭素原子を有し、nは1〜6、より好ましくは2〜5であり、vは1〜6、より好ましくは1〜3である)に従う。最も好ましい材料は、1分子あたり10重量%〜15重量%のケイ素結合アルケニル基、例えばビニル基を有する。成分(E)iiiは、成分(E)iの100重量部あたり20〜100重量部、好ましくは40〜100重量部の割合で、好ましい接着促進添加剤中において使用することができる。
【0048】
接着促進添加剤(E)は、本発明による硬化性組成物の総重量の0.1重量%〜5.0重量%の量で、本発明による硬化性組成物中に存在することができる。
【0049】
更に任意の成分は、系内の水がチタン触媒より優先してそれと反応することができるように、防食用加水分解剤として使用することができる任意の適切な化合物でよい。得られた生成物の他の特性に対して実質的に悪影響を与えないならば、任意の適切な化合物を使用することができる。例としては、アルキルトリアルコキシシラン等のアルコキシシラン、又はクロロシランが挙げられる。
【0050】
本発明による組成物中に含有され得るその他の更なる成分としては、鎖延長剤、染料、着色剤、顔料、粘度調節剤、浴寿命延長剤(bath-life extenders)、抑制剤、溶媒、難燃剤、及び柔軟剤がある。使用することができる鎖延長剤は、一般に、ポリマーの各端部に、シロキサンポリマーのR’基と反応できるようにするケイ素結合水素を有する、大部分は事実上線状のオルガノシロキサン材料であり、これは単に、シロキサンポリマーの長さを延長するだけである。ヒドロシリル化反応、特に白金ベースの触媒により触媒される反応の抑制剤は当該技術分野ではよく知られており、例えば、アセチレンアルコール、マレイン酸ジアルキル、第1級アルコール、又はこれらの混合物を含むことができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、使用される場合には、組成物が150℃で30秒以上かけて硬化することを保証するのに十分な割合で、硬化性組成物中に存在するのが好ましい。必要とされる場合には難燃剤を使用することができるが、充填剤が三水酸化アルミニウムの場合には、更なる難燃剤を必要とすることなくこの化合物が組成物に難燃特性を提供する。適切な難燃剤としては、例えば、ハロゲン化化合物、ホスフェート、及び酸化アンチモン(III)がある。
【0051】
本発明による硬化性組成物は、単に、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)を混合することによって形成することができる。本発明による硬化性組成物は1つの部分で提供されてもよいが、貯蔵安定性の理由で、本発明による組成物を2つ以上の部分、最も好ましくは2つの部分に分けて提供することが好ましい。2部分に分かれた組成物は、次に、使用する前に所要の割合で混合することができる。貯蔵安定性を得るために正確な方法で、成分を組成物の2つ以上の部分にわたって分配することが重要である。従って、組成物は、成分(B)オルガノ水素シロキサンと成分(C)貴金属触媒が別々に貯蔵されるという条件で、多数の方法において配合することができる。2つの部分に分かれた組成物を貯蔵する好ましい方法は、アルケニルポリオルガノシロキサン(A)、(C)、貴金属触媒、接着促進成分(E)(ii)、(iii)及び存在する場合には(E)(iv)を、任意で増量充填剤と共に組成物の第1の部分に貯蔵し、成分(B)のオルガノ水素シロキサン、並びにエポキシ及びアルコキシ官能性を有する有機ケイ素化合物(E)(i)を、必要とされる場合にはヒドロシリル化抑制剤と共に第2の部分に貯蔵することを含む。2つの部分は、適切な比率で組み合わせるように配合され得る。
【0052】
本発明による硬化性組成物は、混合されると、一般に25℃で2Pa.s〜200Pa.sの範囲である、塗布装置及び被覆される編織物に適切な粘度を有し得る。好ましい材料は、25℃で20〜120Pa.sの範囲の粘度を有し、150℃〜180℃の温度で30秒〜4分間の間に硬化して、エラストマー材料を提供する。本発明による組成物は、通常、40℃までの温度で貯蔵した場合、少なくとも24時間は加工可能な粘度のままである。
【0053】
本発明による組成物は、適切な既知の技法に従って、編織布基材に施すことができる。これらには、スプレーイング、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフ・オーバー・ローラー(knife-over-roller)によるコーティング、ナイフ・オーバー・エアー(knife-over-air)によるコーティング、ディッピング、及びスクリーン印刷が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、ナイフ・オーバー・エアー又はナイフ・オーバー・ローラーコーティング法により施されるのが好ましい。また、組成物は、硬化前の被覆重量が少なくとも10g/mになるまで施されるのが好ましい。好ましくは、コーティング厚さは、20〜180g/m、より好ましくは25g/mより多い量〜160g/mまで、例えば、35〜50g/mである。組成物を編織布に容易に施すことができるようにするために、組成物の粘度は、15〜200Pa.sであるのが好ましい。編織布は、好ましくは、組成物の良好な接着を保証するために、組成物を施す前に洗浄される。
【0054】
好ましくはないが、組成物を多層に施して、全体として上記で設定した好ましい基準を満たすことが可能である。また、本発明による組成物上に、例えば低摩擦を提供する材料の更なるコーティング、又は更なる編織布(織布でも不織布でも)を施して、編織布の強度及び/又は感触を改善することも可能である。
【0055】
コーティングの硬化条件は、好ましくは、高温で、使用される実際の温度によって変わり得る期間にわたり、例えば120〜200℃で5分間までであるが、好ましくは、140〜180℃の範囲の温度で30秒間〜3分間である。硬化温度の上昇が、硬化時間の短縮を可能にすることは明らかである。
【0056】
本発明によって被覆された編織布の特に有用な用途は、編織布が包体に形成されて、例えば、包体内にガスを導入することにより包体の内側に圧力がかけられ、そのためにこれが膨張されるような用途、特に、自動車用エアバッグ、飛行機の緊急シュート、及び熱気球等の膨張式拘束装置である。
【0057】
適切な編織布、特に自動車用エアバッグ、飛行機の緊急シュート及び熱気球等の作製において使用される編織布は、本発明の組成物で処理することができる。このような編織物は、合成繊維又は天然繊維と合成繊維のブレンドから製造することができ、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル−綿、ガラス繊維、及びナイロン、特にナイロン6,6等のポリアミド繊維が含まれる。これらは、膨張可能であるために、好ましくは、柔軟性であることが必要とされる織布である。好ましくは、これらは、比較的小さい体積に折り畳まれるように十分に柔軟性であるが、例えば爆発的な充填、乗客の衝撃の影響下、高速での展開に耐えるように、又は膨張時のその他の影響に耐えるように十分に強力でもある。
【0058】
エアバッグ等と共に使用するためのこのコーティングの主な利点は、被覆布が、シリカ等のより硬い充填剤を含有する組成物で被覆された布よりも柔軟性であり、容易に取り扱われ、折り畳まれることである。低いモース硬度の充填剤に実質的に依存するにもかかわらず、以下の実施例から認識されるように、コーティングは、それでも、エアバッグ等の用途で使用するために必要とされる物理特性を提供する。低硬度の充填剤がコーティング組成物の15〜30重量%で使用される場合、特に、17〜25%の好ましいレベルで使用される場合、コーティングは、シリカ充填剤に基づくコーティングと比較して改善された引裂強さを有し、依然として、適切な耐摩耗性及びコーム・ストリップ耐性(comb strip resistance)を有し得る。更なる利点は、低モース硬度の充填剤が、一般に、接着促進添加剤(E)と相互作用を起こさないことであり、シリカ充填剤と接着促進添加剤との相互作用は、コーティング組成物の粘度の受入れ難いほど大きな増大を引き起こし得る。
【0059】
以下の実施例は、本発明を説明するのに役立つ。全ての部及び百分率は、別途記載されない限り重量によるものであり、粘度の値は、25℃おける動的粘度に関する。各サンプルにおいて行なわれた試験は、エアバッグのために使用される3つの標準試験、ISO5981による屈曲摩耗試験、DIN53859T2による引裂強さ、及びASTMD6479−01によるエッジコーム耐性(edgecomb resistance)であった。
【0060】
全てのサンプルは、エアバッグ及び同様の製品のための標準的な燃焼性試験FMVSS302に合格した。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
56.63重量部の、約55Pa.sの粘度を有するα,ω−ビニルジメチルシロキサン末端ブロック化ポリジメチルシロキサン(A2)と、
9.82部の、約0.45Pa.sの粘度を有するα,ω−ビニルジメチルシロキサン末端ブロック化ポリジメチルシロキサン(A1)と、
9.58部の、約0.35Pa.sの粘度を有するビニルジメチルシロキサン末端ブロック化ポリジメチル,ポリメチルビニルシロキサンコポリマー(A3)と、
0.3重量部の白金ベース触媒と、
0.2重量部のテトライソプロポキシチタネートと、
0.4重量部のヒドロキシ末端ジメチル,メチルビニルシロキサンと、
を含む様々な量の組成物を、2.7重量%のステアリン酸(Solvay SAにより供給されるSocal 312N)で処理された、0.07μmの平均粒径及び22m/gのBET表面積を有する沈降炭酸カルシウムからなる様々な量の充填剤(D)と混合することによって、第1の組成物(I)を調製した。
【0062】
25重量部の上記のα,ω−ビニルジメチルシロキサン末端ブロック化ポリジメチルシロキサン(A2)と、
14重量部の上記のジメチルビニルシロキシ末端ジメチル,メチルビニルシロキサン(A3)と、
51重量部の、トリメチルシロキサン末端ブロック化単位、1分子あたり少なくとも3個のケイ素結合水素原子、及び約0.004Pa.s.の粘度を有するメチルヒドロシロキサンジメチルシロキサンコポリマーと、
0.42重量部のエチニルシクロヘキサノールと、
8.6重量部のグリシドキシプロピルトリメトキシシランと、
を含有する第2の組成物(II)を調製した。
【0063】
次に組成物I及びIIを10:1の比率で合わせた。組成物全体中の充填剤の重量%を、以下の表1に示す。その結果得られた組成物を、35〜40g/mの被覆重量で、ナイロン−6,6の編織布(織構造285/285Fd/dmの235dtex/72フィラメント糸)上に被覆した。得られた被覆布を160℃の温度で1分間硬化させた。行なわれた物理試験の結果を表1に提供する。
【0064】
【表1】

【0065】
(比較例1(a))
比較のために、炭酸カルシウム充填剤の代わりに、21%の処理済シリカ充填剤を含有する同様の配合物を同じ布に被覆した場合、引裂強さは125Nであり、エッジコーム耐性は665N/5cmであった。
【0066】
(実施例1(b))
21%の炭酸カルシウム充填剤を含有する実施例1の組成物を、ナイロン−6,6の布(織構造235/235Fd/dmの350dtex/144フィラメント糸)上に被覆し、実施例1に記載したとおりに硬化させた。引裂強さは241Nであり、エッジコーム耐性は470N/5cmであった。
【0067】
(比較例1(b))
平均粒径5.7μmを有する重質炭酸カルシウム(Omya UK LtdからのBLP3)で充填剤(D)を置き換えたことを相違点として、実施例4に記載したとおりに組成物を調製し、布上に被覆し、試験した。行なわれた物理試験の結果を以下の表1(b)に提供する。
【0068】
【表2】

【0069】
表1及び表1(b)から、比較例1(b)における屈曲摩耗試験の結果は、実施例1〜5の結果よりもはるかに低いことが分かるであろう。
(実施例2)
【0070】
モース硬度約3、平均粒径1.1μm及びBET表面積5.3m/gの沈降三水酸化アルミニウム(Alcoa World ChemicalsからのHydral710)で炭酸カルシウム充填剤(D)を置き換えたことを相違点として、実施例1(b)に記載したとおりに組成物を調製し、布上に被覆し、実施例1に記載したとおりに試験した。行なわれた物理試験の結果を、以下の表2に提供する。
【0071】
【表3】

【0072】
(実施例3)
3.0重量%のステアリン酸(Speciality Mineralsにより供給されるCalofort SM)で処理された、平均粒径0.07μm及びBET表面積22m/gを有する別の沈降炭酸カルシウムで炭酸カルシウム充填剤(D)を置き換えたことを相違点として、実施例1(b)に記載したとおりに組成物を調製し、布上に被覆し、実施例1に記載したとおりに試験した。行なわれた物理試験の結果を、以下の表3に提供する。
【0073】
【表4】

【0074】
(実施例4)
平均粒径2.0μm及びモース硬度1〜2を有する市販の未処理のカオリン(Polestar200LD、Imerys Minerals Ltd)で炭酸カルシウム充填剤(D)を置き換えたことを相違点として、実施例1に記載したとおりに組成物を調製した。組成物を35〜40g/mの被覆重量で、ナイロン−6,6の編織布(織構造207/182Fd/dmの470dtex/72フィラメント糸)上に被覆した。得られた被覆布を160℃の温度で1分間硬化させた。屈曲摩耗について被覆布を試験し、結果を以下の表4に提供する。
【0075】
【表5】

【0076】
(実施例5)
平均粒径0.7μm及びモース硬度1〜2を有する更なる市販の未処理のカオリン(Specwite、Imerys Minerals Ltdにより供給)でカオリン充填剤(D)を置き換えたことを相違点として、実施例4に記載したとおりに、組成物を調製し、布上に被覆し、試験した。行なわれた屈曲磨耗試験の結果を以下の表5に提供する。
【0077】
【表6】

【0078】
エアバッグ産業では、通常、屈曲摩耗試験で200より大きい最小値が必要とされる。本発明による実施例、特に17〜30%の低硬度充填剤(D)を用いる実施例は、特にエアバッグ産業ではエアバッグコーティング中に存在することが予期されるシリカ等の補強充填剤が存在しないと考えられる場合に、驚くほど良好な屈曲摩耗結果を与える。通常、エアバッグ産業では、実施例1〜3において実証される100Nよりも大きい引裂強さが必要とされる。
【0079】
(実施例6及び7)
21%の炭酸カルシウム充填剤に加えて少量の補強充填剤がコーティング組成物に添加されたことを相違点として、実施例1(b)を繰り返した。実施例6では、1%の分枝シリコーン樹脂を添加した。実施例7では、0.5%の処理済シリカを添加した。引裂強さ及びエッジコーム耐性について被覆布を試験し、結果を、以下の表6に示す。
【0080】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンであって、最大量で存在する該オルガノポリシロキサンが、1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンと、
(B)1/1〜10/1である(A)中のアルケニル基の総量に対する(B)中のSi−H基のモル比を与えるのに十分な量の中に、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素架橋剤と、
(C)(A)の脂肪族不飽和炭化水素置換基と(B)のSi−H基との反応を促進するのに十分な量の貴金属触媒と、
(D)組成物全体の100重量部あたり15〜30重量部の充填剤と、
を含む、編織布を被覆するための、エラストマーに硬化可能であるオルガノポリシロキサン組成物であって、
前記充填剤が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とするオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記成分(D)が、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、硫酸カルシウム、アルミナイト(alumnite)、炭酸マグネシウム、ケイ藻土、バライト、グラファイト、炭酸銅、炭酸ニッケル、炭酸バリウム、及び/又は炭酸ストロンチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分Dが、沈降炭酸カルシウム及び/又は三水酸化アルミニウムである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記充填剤の量が、組成物全体の100重量部あたり17〜25重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサン(A)が、
A(i)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において0.05〜0.65Pa.sの粘度を有する第1のオルガノポリシロキサン材料と、
A(ii)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する第2のオルガノポリシロキサン材料であって、成分A(ii)がA(i)又はA(iii)よりも多量に存在する第2のオルガノポリシロキサン材料と、
A(iii)1分子あたり末端シロキサン単位及びポリマー鎖中の単位に脂肪族不飽和炭化水素置換基を有する第3のオルガノポリシロキサン材料と、
を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサン(A)が、
A(i)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、25℃において0.05〜0.65Pa.sの粘度を有する100重量部の第1のオルガノポリシロキサン材料と、
A(ii)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する300〜700重量部の第2のオルガノポリシロキサン材料と、
A(iii)1分子あたり末端シロキサン単位及びポリマー鎖中の単位に脂肪族不飽和炭化水素置換基を有する50〜150重量部の第3のオルガノポリシロキサン材料と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
前記成分Bが、一般式
SiO(RSiO)(RHSiO)SiR、又は
【化1】

(式中、Rは10個までの炭素原子を有するアルキル基又はアリール基を示し、Rは、基R又は水素原子であり、pは0〜2qの値を有し、qは2〜5,000の値を有し、且つ1分子あたりに少なくとも3個のケイ素結合水素原子が存在する)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
前記組成物が、接着促進添加剤(E)を更に含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物であって、該接着促進添加剤(E)が、
(i)組成物全体の0.1〜2重量%の、エポキシ及びアルコキシ官能性を有する有機ケイ素化合物と、
(ii)E(i)100重量部あたり10〜100重量部の有機チタン化合物と、
(iii)E(i)100重量部あたり50〜100重量部のアルケニル官能性シラノール末端ポリオルガノシロキサンと、
を含む組成物。
【請求項9】
前記接着促進添加剤(E)が、更に、(E)(iv)金属キレートを含むことを特徴とする請求項8に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
オルガノポリシロキサン組成物層で編織布を被覆することと、前記層を硬化させて前記布上にエラストマーコーティングを形成することと、前記被覆布を成形して膨張式拘束装置を形成することを含む、自動車用エアバッグ又は航空機の緊急シュート等の膨張式拘束装置の製造プロセスであって、
前記オルガノポリシロキサン組成物が、請求項1〜9のいずれかによることを特徴とする、製造プロセス。
【請求項11】
脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基、及びヒドロキシル又は加水分解性基から選択される2つ以上の反応基を有する1つ又は複数のオルガノポリシロキサン(A)と、前記反応基との反応によって前記オルガノポリシロキサン(A)を架橋させるのに適した有機ケイ素架橋剤(B)と、成分(A)と(B)の間の反応を促進することができる十分な量の触媒(C)と、15〜30重量%の充填剤(D)とを含む25g/m2より多く180g/m2までのオルガノポリシロキサン組成物層で被覆された編織布を含むエアバッグであって、
前記充填剤(D)が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とするエアバッグ。
【請求項12】
前記オルガノポリシロキサン組成物が、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物であることを特徴とする請求項11に記載のエアバッグ。
【請求項13】
脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基、及びヒドロキシル又は加水分解性基から選択される2つ以上の反応基を有する1つ又は複数のオルガノポリシロキサン(A)と、前記反応基との反応によって前記オルガノポリシロキサン(A)を架橋させるのに適した有機ケイ素架橋剤(B)と、成分(A)と(B)の間の反応を促進することができる十分な量の触媒(C)と、15〜30重量%の充填剤(D)とを含むオルガノポリシロキサン組成物の、エアバッグの形成において編織布を被覆するための使用であって、
前記充填剤(D)が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基を有する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンであって、最大量で存在する該オルガノポリシロキサンが、1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンと、
(B)1/1〜10/1である(A)中のアルケニル基の総量に対する(B)中のSi−H基のモル比を与えるのに十分な量の中に、少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素架橋剤と、
(C)(A)の脂肪族不飽和炭化水素置換基と(B)のSi−H基との反応を促進するのに十分な量の貴金属触媒と、
(D)組成物全体の100重量部あたり15〜30重量部の充填剤と、
を含む、編織布を被覆するための、エラストマーに硬化可能であるオルガノポリシロキサン組成物であって、
前記充填剤が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とするオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記成分(D)が、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、硫酸カルシウム、アルミナイト(alumnite)、炭酸マグネシウム、ケイ藻土、バライト、グラファイト、炭酸銅、炭酸ニッケル、炭酸バリウム、及び/又は炭酸ストロンチウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記充填剤の量が、組成物全体の100重量部あたり17〜25重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサン(A)が、
A(i)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において0.05〜0.65Pa.sの粘度を有する第1のオルガノポリシロキサン材料と、
A(ii)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、且つ25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する第2のオルガノポリシロキサン材料であって、成分A(ii)がA(i)又はA(iii)よりも多量に存在する第2のオルガノポリシロキサン材料と、
A(iii)1分子あたり末端シロキサン単位及びポリマー鎖中の単位に脂肪族不飽和炭化水素置換基を有する第3のオルガノポリシロキサン材料と、
を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのオルガノポリシロキサン(A)が、
A(i)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、25℃において0.05〜0.65Pa.sの粘度を有する100重量部の第1のオルガノポリシロキサン材料と、
A(ii)1分子あたりに末端ケイ素結合脂肪族不飽和炭化水素基のみを有し、25℃において少なくとも10Pa.sの粘度を有する300〜700重量部の第2のオルガノポリシロキサン材料と、
A(iii)1分子あたり末端シロキサン単位及びポリマー鎖中の単位に脂肪族不飽和炭化水素置換基を有する50〜150重量部の第3のオルガノポリシロキサン材料と、
を含むことを特徴とする請求項に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
前記成分Bが、一般式
SiO(RSiO)(RHSiO)SiR、又は
【化1】

(式中、Rは10個までの炭素原子を有するアルキル基又はアリール基を示し、Rは、基R又は水素原子であり、pは0〜2qの値を有し、qは2〜5,000の値を有し、且つ1分子あたりに少なくとも3個のケイ素結合水素原子が存在する)を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
前記組成物が、接着促進添加剤(E)を更に含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物であって、該接着促進添加剤(E)が、
(i)組成物全体の0.1〜2重量%の、エポキシ及びアルコキシ官能性を有する有機ケイ素化合物と、
(ii)E(i)100重量部あたり10〜100重量部の有機チタン化合物と、
(iii)E(i)100重量部あたり50〜100重量部のアルケニル官能性シラノール末端ポリオルガノシロキサンと、
(E)(iv)金属キレートと
を含む組成物。
【請求項8】
オルガノポリシロキサン組成物層で編織布を被覆することと、前記層を硬化させて前記布上にエラストマーコーティングを形成することと、前記被覆布を成形して膨張式拘束装置を形成することを含む、自動車用エアバッグ又は航空機の緊急シュート等の膨張式拘束装置の製造プロセスであって、
前記オルガノポリシロキサン組成物が、請求項1〜のいずれかによることを特徴とする、製造プロセス。
【請求項9】
脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基、及びヒドロキシル又は加水分解性基から選択される2つ以上の反応基を有する1つ又は複数のオルガノポリシロキサン(A)と、前記反応基との反応によって前記オルガノポリシロキサン(A)を架橋させるのに適した有機ケイ素架橋剤(B)と、成分(A)と(B)の間の反応を促進することができる十分な量の触媒(C)と、15〜30重量%の充填剤(D)とを含む25g/m2より多く180g/m2までの請求項1〜7のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物層で被覆された編織布を含むエアバッグであって、
前記充填剤(D)が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とするエアバッグ。
【請求項10】
脂肪族不飽和炭化水素又は炭化水素オキシ置換基、及びヒドロキシル又は加水分解性基から選択される2つ以上の反応基を有する1つ又は複数のオルガノポリシロキサン(A)と、前記反応基との反応によって前記オルガノポリシロキサン(A)を架橋させるのに適した有機ケイ素架橋剤(B)と、成分(A)と(B)の間の反応を促進することができる十分な量の触媒(C)と、15〜30重量%の充填剤(D)とを含むオルガノポリシロキサン組成物の、エアバッグの形成において編織布を被覆するための使用であって、
前記充填剤(D)が、4.5以下のモース硬度及び3.0μm以下の平均粒径を有することを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物の使用。

【公表番号】特表2006−521419(P2006−521419A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500041(P2006−500041)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001755
【国際公開番号】WO2004/070102
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】