説明

コードおよびその製造方法並びに、コード製造設備

【課題】耐疲労性に優れたコードを提供する。
【解決手段】1本または複数本のフィラメントからなるコアの周囲に、複数本のフィラメントからなるシースを配したコードにおいて、前記コアとシースとの間に未加硫ゴム被覆層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム物品の補強に供するコード、特に耐疲労性を向上させたコードおよびこのコードの製造方法、ならびにコード製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム物品、中でもタイヤの補強に供するコードは、苛酷な環境下における、使用に耐えるために、様々な特性が要求されている。特に、タイヤの軽量化を所期して、コードの使用本数を減らし、より高強度化したコードを使用することが希求されている。そのためには、コードの耐疲労性を向上させることが特に有利であり、種々の方策がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、層撚りコードを構成するコアとシースとの間に、未加硫ゴム被覆層を設けたコードを製造する方策が提案されている。このコードは、未加硫ゴム被覆層が設けられたことによって、コアフィラメントおよびシースフィラメントが接触して、擦れることによる摩耗が阻止される。さらに、未加硫ゴム被覆層を設けたコードは、コード内部の隙間がゴムで満たされているため、タイヤの補強材として使用した際、タイヤの外傷からコード内部へ浸入する水分を阻止できる結果、コード内部での水分による腐食並びにその伝播は抑制され、コードの耐疲労性が向上する。
【特許文献1】特開2002-266266号公報
【特許文献2】特開2002-302885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したコードでは、耐疲労性の向上が不十分であり、所期したコードとするには、さらなる改善が必要となる。すなわち、未加硫ゴム被覆層を設けるに当り、適正なゴム量を規定することが所期した特性を得るために必要であるが、この点についての開示はなされていない。
さらに、上記したコードは、未加硫ゴムを被覆したコアフィラメントの周囲にシースフィラメントを撚り合わせることによって製造されるが、撚り合わせ時に、ゴムを被覆したコアフィラメントと周囲のシースフィラメント間で摩擦が生じてしまう。また、撚り合わせ後のコードは、シースフィラメント間の隙間から、未加硫ゴムがはみ出す場合がある。そのため、撚り合わせ後のコードからはみ出した未加硫ゴムが、該コードを案内する撚り線機内の金属プーリーやガイドなどの案内部品と接触し、当該案内部品と撚りコードとの摩擦を増大することになる。
【0005】
すなわち、撚り合わせ時に未加硫ゴムを被覆したコアフィラメントとシースフィラメントとの間の摩擦が生じてしまい、撚り性状を安定させる為のテンションが乱れてしまう。また、未加硫ゴムがシース間からはみ出した際には、撚り合わせ後のコードの案内が円滑になされないため、コードに付与されるテンションにばらつきが生じる結果、撚り合わせ時のテンションにも乱れが生じ、撚り性状を安定させるのに必要なテンションを確保するのが難しくなる。その結果、コードを構成するフィラメントの引き揃えが悪化し、例えば、コードのフィラメントが突張ったり、膨らんだりし、コード軸方向に同じ形状で撚り合わされていない状態になってしまう。かようなコードは、使用に当たって、フィラメントの割れが発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記したコードにおける問題、とりわけ製造時の問題を解消することによって、耐疲労性に優れたコードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上述した問題点についてその解決策を鋭意検討した結果、コアおよびシースとの間に未加硫ゴム被覆層を設けたコードを製造する際、この未加硫ゴムの被覆量を厳密に規制することがコードの耐久性や耐疲労性の安定した向上に有効であるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
(1)1本または複数本のフィラメントからなるコアの周囲に、複数本のフィラメントからなるシースを配したコードであって、前記コアとシースとの間に未加硫ゴム被覆層を有し、コード軸方向と直交する断面において、前記コアおよびシース間の隙間の面積Aと、前記コアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積BがA≦B≦10Aの関係を満足することを特徴とするコード。
【0009】
(2)1本または複数本のフィラメントからなるコアの周囲にシースとなる複数本のフィラメントを撚り合わせてコードを製造するに当たり、前記コアとなる1本または複数本のフィラメントを未加硫ゴムにて被覆し、その後シースとなる複数本のフィラメントを撚り合わせることを特徴とするコードの製造方法。
【0010】
(3)コアとなるコアフィラメントの1本または複数本を巻出すコア巻出し部およびシースとなるシースフィラメントの複数本を巻出すシース巻出し部と、コアフィラメントおよびシースフィラメントを集束させて撚り合わせる撚り線機とを順に配置したコードの製造設備であって、前記コア巻出し部の出側に、コアフィラメントに未加硫ゴムを被覆する未加硫ゴム被覆装置を設置したことを特徴とするコード製造設備。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適正量の未加硫ゴムで被覆されているから、コード製造時の撚り乱れの発生並びに、コード内部への水分の浸入を確実に抑制でき、耐久性、特に耐疲労性に優れたコードの提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明のコードについて、図面を用いて詳細に説明する。図1に、本発明に従うコードの軸方向と直交する断面を示す。
図1は、3本のコアフィラメント1aからなるコア1の周囲に、シース2となる9本のシースフィラメント2aを撚り合わせてなる同径のフィラメントを撚り合わせたコード3を示したものである。そして、このコード3は、図1に縦線にて示すように、コア1とシース2との間に、未加硫ゴム被覆層4を有するものである。なお、図1に示したコードに限らず、例えば図2に示すようなコアおよびシースとなるフィラメントを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合せたコンパクト撚りにすることも可能である。
【0013】
すなわち、図2に示すコード6は、3本のコアフィラメント7aからなるコア7の周囲にシース8となる9本のシースフィラメント8aを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合わせたものであって、コアフィラメント7aとシースフィラメント8aとの径は異なっている。そして、このコード6においても、上記したコード3と同様に、未加硫ゴム被覆層4を上記と同様に設けることが肝要である。さらに、このコードを、複撚り構造のコードを構成する各ストランドとして、ストランドの複数本を撚り合わせることによっても以下に示す作用効果を同様に得ることができる。
【0014】
本発明のコードは、コードの軸方向と直交する断面において、コアおよびシース間の隙間の面積Aとコアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積BをA≦B≦10Aとすることが肝要である。
【0015】
ここで、コアおよびシース間の隙間の面積Aは、クローズドコードを基準として定義する。例えば、図1と同じ構造のクローズドコードを図3(a)に、図2と同じ構造のクローズドコードを図3(b)に示すように、それぞれのクローズド構造コードの軸方向と直交する断面におけるコアおよびシース間の隙間を面積A{図3(a)および(b)の点線部分}とする。ただし、図3(b)に示すように、コア27の介在しないシース28相互間の隙間は除く。
【0016】
また、コア27およびシース28間に占める未加硫ゴム被覆層4の面積Bとは、図1および図2に示すように、コアの周囲に被覆したゴム部分(縦線部)である。
【0017】
ここで、図1または図2に示すコードを作製するに当たり、面積Aの1〜10倍のゴム被覆層4を形成するには、図3(c)に示すように、該面積Bに相当する未加硫ゴムをコアフィラメントの周囲に被覆したのち、シースフィラメントを撚り合わせればよい。
【0018】
すなわち、コアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積Bが、最初に決定したコアおよびシース間の隙間の面積A未満であると、ゴムペネが不十分であり、耐疲労性の向上が認められない。
【0019】
また、コアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積Bが、コアおよびシース間の隙間の面積10Aを超えてしまうと、コード内部におさまり切らない余剰ゴムがコードの撚り乱れを引き起こしてしまい、耐疲労性が悪化してしまう。
【0020】
さて、本発明に従うコードは、厳密に規制された未加硫ゴム被覆層4を設けることによって、以下に示すコードの製造工程において、健全な撚り性状を実現することができる。従って、この種コードが本来有する優れた耐疲労性を持つコードとすることができる。以下、本発明の製造方法について、図4に示すコード製造設備を参照して詳しく説明する。
【0021】
すなわち、図4に示すコード製造設備は、コアフィラメント9aを巻出すコア巻出し部9およびシースフィラメント10aを巻出すシース巻出し部10の所定数を設置し、各々の巻出し部より巻き出したフィラメントを集束させるワイヤー集束器11と、この集束したフィラメント同士を撚り合わせる撚り線機12を設けている。そして、コア巻出し部9とワイヤー集束器11との間に、コアフィラメント9aに未加硫ゴムを被覆する未加硫ゴム被覆装置13が設置されている。
【0022】
次に、上記したコード製造設備にてコードを製造する方法において、まず、コア巻出し部9に巻き付けられたコアフィラメント9aを巻出して未加硫ゴム被覆装置13側へ導き、未加硫ゴム被覆装置13にてコアフィラメント9aに未加硫ゴムを被覆して未加硫ゴム被覆フィラメント13aとする。次いで、未加硫ゴム被覆フィラメント13aを、撚り線機12の入側に設置されたワイヤー集束器11に供給し、ワイヤー集束器11にて、未加硫ゴム被覆フィラメント13aの周囲にシース巻出し部10より巻き出したシースフィラメント10aを集束させて集束フィラメント11aとし、集束フィラメント11aを撚り線機12へ供給する。その後、撚り線機12にて、集束フィラメント11aを撚り合わせることによってコード15となる。
【0023】
ここで、コア巻出し部9より巻き出したコアフィラメント9aに、所定量の未加硫ゴムを被覆した後、撚り線機12へ供給することが肝要である。すなわち、所定量の未加硫ゴム被覆層4を設けることによって、撚り合わされたコードを構成するシースフィラメント相互間から未加硫ゴムがはみ出るのを抑制できる。
【0024】
なお、コアフィラメント9aに対して、未加硫ゴムの被覆を行う未加硫ゴム被覆装置13は、例えば、図5に示すように、ゴム押出し機16とゴム押出しヘッド部18を有する。ここで、図5に、ゴム押出し機16およびゴム押出しヘッド部18の内部を示すように、未加硫ゴム被覆装置13では、ゴム押出し機16側からゴム押出しスクリュー17を介し、ゴム押出しヘッド部18に未加硫ゴム19を押出してゴム押出しヘッド部18内を未加硫ゴムで満たす。次いで、このゴム押出しヘッド部18内へコアフィラメント9aをゴム押出しヘッド部18の入側に設置したコードガイド20から供給し、ゴム押出しヘッド部18内を通過させる際に、コアフィラメント9aの周面に未加硫ゴム19を被覆する。その後、未加硫ゴム19が被覆されたコアフィラメント9aは、ゴム押出しヘッド部18の出側に設置した口金21を介して、被覆ゴムの厚みが調整されながらゴム押出しヘッド部18外に導かれ、未加硫ゴム被覆フィラメント13aとなる。
【0025】
ちなみに、本発明では未加硫ゴム被覆装置13にて、コアフィラメント9aに未加硫ゴムを被覆する際、コアフィラメント9aの複数本を同時に被覆しているが、コアフィラメント9aを1本毎に被覆することも可能である。
【0026】
また、本発明のコードでは、図1および図2に示すように、未加硫ゴム被覆層4の外周面に塗油層5を設けることが好ましい。未加硫ゴム被覆層4の外周面に油を塗布しておけば、仮にシースフィラメント相互間からはみ出た未加硫ゴムがあった場合にも、撚り線機12内の案内部品が接触した際の摩擦を低減することができる。従って、健全な撚り性状とするのに必要なテンションが均等に得られ、コード撚り合わせ時の引き揃えが良好となる結果、耐疲労性に優れたコードを製造することができる。
ここで、未加硫ゴム被覆層4の外周面に塗油層5を設けるには、図4に示したコード製造設備において、未加硫ゴム被覆装置13の出側に配置した油塗布装置14に、未加硫ゴム被覆フィラメント13aを供給し、油塗布装置14にて未加硫ゴム被覆被覆層4の外周面に油を塗布して油塗布フィラメント14aとする。この油塗布フィラメント14aは、撚り線機12の入側に設置されたワイヤー集束器11に供給し、ワイヤー集束器11にて、未加硫ゴム被覆フィラメント13aの周囲にシース巻出し部10より巻き出したシースフィラメント10aを集束させて集束フィラメント11aとし、集束フィラメント11aを撚り線機12へ供給する。その後、撚り線機12にて、集束フィラメント11aを撚り合わせることによってコード15となる。
【0027】
このように、未加硫ゴム被覆層4の外周面に油を塗布した油塗布フィラメント14aとすることによって、油塗布フィラメント14aとシースフィラメント10aを撚り合わせる際に発生する、未加硫ゴムとシースフィラメント10aとの摩擦も低減することができる。すなわち、摩擦が低減することによってシースフィラメント10aに付与されるテンションも均等に得られ、コードの撚り性状が改善してバランスのとれたコードとなる結果、このコードをタイヤの補強に供した際、このタイヤに比較的大きな荷重が負荷された場合であっても、高い疲労性を確保することが出来る。
【0028】
さらに、未加硫ゴム被覆フィラメント13aは、図6に油塗布装置14の内部を示すように、紐22で吸い上げた油23をプーリー24の溝に供給しておき、このプーリー24に未加硫ゴム被覆フィラメント13aを通過させて、溝内の油の中に未加硫ゴム被覆フィラメント13aを潜らせることによって、未加硫ゴム被覆フィラメント13aの外周面に油を塗布する。
なお、本発明では、油塗布装置14にて未加硫ゴム被覆層4の外周面に油を塗布する際、未加硫ゴム被覆フィラメント13aの複数本を同時に塗布しているが、上記した未加硫ゴム被覆装置13と同様に、未加硫ゴム被覆フィラメント13aを1本毎に塗布することも可能である。
【0029】
ここで、未加硫ゴム被覆フィラメント13aの未加硫ゴム被覆層4に塗布する油は、特に限定するものではないが、ゴム軟化材用の油剤を用いることが好ましい。すなわち、ゴム軟化材用の油剤は、ゴムとの接着性を阻害することなしに、コードの製造工程において、撚り合わせ後のシースフィラメント間からはみ出た未加硫ゴムと撚り線機10内の案内部品との摩擦および未加硫ゴム被覆フィラメント13aとシースフィラメント10aとの撚り合わせ時に発生する摩擦の低減を実現することができる。
【0030】
さらに、未加硫ゴム被覆層4に油を塗布する場合は、コードの軸方向と直交する断面において、上述した、コアおよびシース間の隙間の面積Aとコアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積BをA≦B≦4Aとし、かつ塗油層での油の付着量Xを50(mg/kg)≦X<1400(mg/kg)とすることが好ましい。さらに、コアおよびシース間の隙間の面積Aとコアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積Bを4A<B≦10Aとし、かつ塗油層での油の付着量Yを80(mg/kg)≦Y<1400(mg/kg)とすることが好ましい。
【0031】
なお、塗油層での油の付着量Y(mg/kg)は、コード1kg当たりに付着する油の重量と定義する。
【0032】
そして、コアおよびシース間の隙間の面積Aとコアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積BがA≦B≦4Aであり、塗油層での油の付着量Xが50(mg/kg)未満、またはコアおよびシース間の隙間の面積Aとコアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積Bが、4A<B≦10Aであって、かつ塗油層での油の付着量Yが80(mg/kg)未満では、シースフィラメント相互間からはみ出した未加硫ゴムと、撚り線機内の案内部品との間に生じる摩擦を低減するために必要な塗油層を形成することが困難となる。そして、油の付着量XおよびYが1400(mg/kg)以上では、コードの製造工程において、油が飛散し、コード製造設備が汚染され、撚り線工程の環境が悪化してしまう。
【0033】
また、コアおよびシース間の未加硫ゴム被覆層の面積Bは、A≦B≦6Aであり、かつ塗油層での油の付着量XおよびYは、80≦X≦500または80≦Y≦500とすることが好適である。なぜなら、ゴム量が多すぎるとコスト面で高くなってしまうため、安定したゴムペネ品質を確保出来る被覆量としてA≦B≦6Aが好適となる。また、油の付着量に関しては、コード長手方向での均一な付着を考えると80≦X≦500または80≦Y≦500にコントロールすることが好適である。
【0034】
以上に述べたように、上記した製造方法およびコード製造設備を用いて本発明に従うコードを製造することによって、このコードは、シースフィラメントからはみ出した未加硫ゴムと撚り線機内の案内部品との摩擦を低減した円滑な製造工程を経ることが可能となる。その結果、このコードは、健全な撚り性状とするのに必要なテンションのバラ付きが無く、引き揃えが良好となり、耐疲労性に優れたコードを提供することができる。
【実施例1】
【0035】
図4に示すコード製造設備を用いて上述したコードの製造方法によって、図1に示す3+9×0.22(mm)構造のコードおよび図2に示す3×0.24(mm)+9×0.22(mm)とする異径のフィラメントを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合わせたコードを、それぞれ表1および表2の仕様の下に作製した。そして、これらのコードについて、コード耐疲労性、タイヤ耐久性および作業性を調査した。その結果を表1および表2に示す。なお、表1には、図1に示す同径のフィラメントを撚り合わせたコードに関し、表2は図2に示す異径のフィラメントを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合わせたコードに関する結果を示す。
【0036】
ここで、コード耐疲労性は、コードの複数本を等間隔でコード同士が平行となるように並べて埋設したゴムシートに、加圧・加熱下で加硫し、加硫ゴムシートを作製した。次に、図7(a)に示すように、加硫ゴムシートから1本のコード15を10cmの長さに切断し、その両端をそれぞれチャックCH1およびCH2で固定し、図7(b)に示すように、チャックCH1およびCH2間の距離および角度を調整してコード15を一定曲率の下に保持し、図7(c)に示すように、片側のチャックCH2を3000rpmで一方向に回転させて、コードが破断する回転数を測定して評価した。測定値は、従来例の測定回転数を100としたときの指数にて表示し、数値が大きいほど耐疲労性に優れることを示している。
【0037】
タイヤ耐久性は、各コードをサイズ11R22.5のトラック・バス用タイヤのプライコードに適用してタイヤを試作し、このタイヤにつき、内圧:900kPaおよび荷重:6000kgの条件でドラム走行試験を行って、ビード部が故障するまでの走行距離を測定して評価した。測定値は、従来例の測定回転数を100としたときの指数にて表示し、数値が大きいほどタイヤ耐久性に優れることを示している。
【0038】
作業性は、図4に示した工程を経て巻き取った未加硫ゴム被覆コードについて、余剰ゴムのはみ出しによる、コード相互の引っ付き程度を下記の基準で評価した。

◎:通常の(未加硫ゴム被覆のないコードでの)作業と同程度
○:余剰ゴムの多少のはみ出しはあるものの作業性に問題がない
△:余剰ゴムがコードの外周面に大量にはみ出しコード相互が引っ付き、作業性に支障
がある
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【実施例2】
【0041】
図4に示すコード製造設備を用いて上述したコードの製造方法によって、図1に示す3+9×0.22構造のコードおよび図2に示す3×0.24+9×0.22とする異径のフィラメントを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合わせたコードを、それぞれ表3および表4の仕様の下に作製した。そして、これらのコードについて、耐疲労性指数、コード割れ判定および油飛散判定を調査した。その結果を表3および表4に示す。なお、表3には、図1に示す同径のフィラメントを撚り合わせたコードに関し、表4は図2に示す異径のフィラメントを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合わせたコードに関する結果を示す。
【0042】
ここで、耐疲労性指数は以下の手段によって評価した。まず、コードの複数本を等間隔でコード同士が平行となるように並べて埋設したゴムシートに、加圧・加熱下で加硫し、加硫ゴムシートを作製した。次に、加硫ゴムシートに、曲率半径15mmのローラーにてJISL 1017に準拠する圧縮・曲げ疲労強さ試験のA法(ファイヤストン法)を施し、加硫ゴムシートが破断するまでの曲げ回数を測定した。そして、この測定値を用いて、各々のコードの耐疲労性を指数化し評価した。なお、各々のコードの指数値については、図1に示す同径のフィラメントを撚り合わせたコードは、従来例1を、図2に示す異径のフィラメントを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合わせたコードは、従来例2を100として指数化したものとする。また、数値の値が高い程、耐疲労性が高いことを示す。
【0043】
そして、コード割れ判定については、コード製造において、滑り不良による引き揃えの悪化の判断をするため、コード曲げしごきによる割れ性を2段階にて評価した。なお、コードの曲げしごきによる割れ性は、図8に示すように、長さ2m程度のコード15で直径15cmのループを作り、左手で交差部分25を押さえながら、ループの直径が約1.0cmになるまでループの右端を引っ張った後、コード15を曲げしごき、コード15の手を放して、ループの頂上部26の割れ状態を判定する。そして、コード内のフィラメントが突っ張ったり、膨らんだりしない状態を◎(二重マル)とし、コード内のフィラメントの一部がやや突っ張ったり、膨らんだりしている状態を○(マル)とし、コード内のフィラメントが突っ張ったり、膨らんだりする状態を△(サンカク)て評価した。
【0044】
さらに、油飛散判定については、コード製造過程における撚り線機内の油飛散による汚染と作業性の悪化を3段階にて評価した。なお、この評価について、◎(二重マル)は、通常作業と同様の状況であり、○(マル)は、油の飛散で撚り線機のパーツが汚れ、定期的な洗浄が必要な状況であり、サンカク(△)は、油の飛散がひどく撚り線機内のパーツ調整などに支障をきたすレベルとする。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】3+9構造の同径のフィラメントを撚り合わせたコードを示した図である。
【図2】3+9構造の異径のフィラメントを同一方向かつ同一ピッチにて撚り合わせたコードを示した図である。
【図3】コアおよびシース間の隙間の面積Aとコアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積Bを示した図である。
【図4】本発明のコードを製造するために使用するコード製造設備について示した図である。
【図5】未加硫ゴム被覆装置を用いてコアフィラメントに未加硫ゴムを被覆する様子を示した図である。
【図6】未加硫ゴムフィラメントの外周面に油を塗布する様子を示した図である。
【図7】コード耐疲労性の調査方法を示した図である。
【図8】コード割れ判定の調査方法を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1 コア
1a コアフィラメント
2 シース
2a シースフィラメント
3 コード
4 未加硫ゴム被覆層
5 塗油層
6 コード
7 コア
7a コアフィラメント
8 シース
8a シースフィラメント
9 コア巻出し部
9a コアフィラメント
10 シース巻出し部
10a シースフィラメント
11 ワイヤー集束器
11a 集束フィラメント
12 撚り線機
13 未加硫ゴム被覆装置
13a 未加硫ゴム被覆フィラメント
14 油塗布装置
14a 油塗布フィラメント
15 コード
16 ゴム押出し機
17 ゴム押出しスクリュー
18 ゴム押出しヘッド部
19 未加硫ゴム
20 コードガイド
21 口金
22 紐
23 油
24 プーリー
25 交差部分
26 ループ頂上部
27 コア
28 シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本または複数本のフィラメントからなるコアの周囲に、複数本のフィラメントからなるシースを配したコードであって、前記コアとシースとの間に未加硫ゴム被覆層を有し、コード軸方向と直交する断面において、前記コアおよびシース間の隙間の面積Aと、前記コアおよびシース間に占める未加硫ゴム被覆層の面積BがA≦B≦10Aの関係を満足することを特徴とするコード。
【請求項2】
1本または複数本のフィラメントからなるコアの周囲にシースとなる複数本のフィラメントを撚り合わせてコードを製造するに当たり、前記コアとなる1本または複数本のフィラメントを未加硫ゴムにて被覆し、その後シースとなる複数本のフィラメントを撚り合わせることを特徴とするコードの製造方法。
【請求項3】
コアとなるコアフィラメントの1本または複数本を巻出すコア巻出し部およびシースとなるシースフィラメントの複数本を巻出すシース巻出し部と、コアフィラメントおよびシースフィラメントを集束させて撚り合わせる撚り線機とを順に配置したコードの製造設備であって、前記コア巻出し部の出側に、コアフィラメントに未加硫ゴムを被覆する未加硫ゴム被覆装置を設置したことを特徴とするコード製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−121009(P2009−121009A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124873(P2008−124873)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】