コード凹凸照合式キーシステム
【課題】錠前を不正に施解錠操作する不正キー操作を生じ難くすることができるコード凹凸照合式キーシステムを提供する。
【解決手段】車両の電子キーシステムのエマージェンシーキーとして、クレジットカード等のカードにキーコードを形成したカードキー42を使用する。カードキー42は、エマージェンシーキーとしての位置付けであるので、キー操作に際しては機械式操作(実際の操作アクション)を必要とするキーであって、カードに孔46の有無群から成る孔形成パターンを形成して、これをメカニカルキー用のキーコードとして使用する。錠前41は、カードキー42が挿し込まれていない時や不正キーが挿し込まれた時、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定することで不正な施解錠操作を禁止する。錠前41に、このピンタンブラ50により生じるロック強度を補強するロック機構56を設ける。
【解決手段】車両の電子キーシステムのエマージェンシーキーとして、クレジットカード等のカードにキーコードを形成したカードキー42を使用する。カードキー42は、エマージェンシーキーとしての位置付けであるので、キー操作に際しては機械式操作(実際の操作アクション)を必要とするキーであって、カードに孔46の有無群から成る孔形成パターンを形成して、これをメカニカルキー用のキーコードとして使用する。錠前41は、カードキー42が挿し込まれていない時や不正キーが挿し込まれた時、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定することで不正な施解錠操作を禁止する。錠前41に、このピンタンブラ50により生じるロック強度を補強するロック機構56を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーコード用の複数の凹凸が形成されたコード凹凸キーをキーとして用い、そのコード凹凸の正否を見ることでキー照合を行うコード凹凸照合式キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他者(第三者)による物品や扉等の勝手な使用を防止する器具として種々のキーシステムが使用されている。この種のキーシステムとしては、柄の付いた長細いキープレートにキーコードが刻み込まれた柄付き型キーをキーとして用い、このキーを錠前のシリンダに挿し込んで回すことにより施解錠を行う柄付きキー型キーシステムが一般的に広く使用されている。柄付きキー型キーシステムにおいては、例えばシリンダがディスクタンブラ式の場合、シリンダの内部にスプリングの付いた複数のディスクタンブラ(小鉄片)で柄付き型キーのキープレートに刻まれたキーコードを読み取り、キープレートの鍵形状がディスクタンブラの鍵形状と一致すれば、キーによるシリンダの回転操作が許容されて、錠前の施錠や解錠が可能となる。
【0003】
また、他の種類のキーシステムとしては、例えばキー形状がカード型を成すカードキーをキーとして使用するカード型キーシステムといものも開発されている。カード型キーシステムの一例は、例えば特許文献1や特許文献2等に開示されている。図16にカード型キーシステム81を示すと、カード型キーシステム81のキーであるカードキー82には、キーコードとして複数の孔群から成るコード孔83が形成されている。このコード孔83は、孔84の有る箇所と孔84の無い孔無し部85の箇所とが規則性を持って配列されるとともに、この孔有無の形成パターンがキーコードとして機能する。
【0004】
一方、図17に示すように、カード型キーシステム81の固定側部品である錠前86には、合い鍵以外では錠が解錠されないように働く部品として複数のピンタンブラ87が設けられている。これらピンタンブラ87は、錠前86にカードキー82を挿し込んでキー操作を行う時の可動側である可動部品88に収納されたロックピン89と、錠前86の固定側として可動部品88を移動可能に支持する支持部品90に収納されたプランジャピン91とを持ち、プランジャピン91がタンブラスプリング92によって常時付勢された取り付け状態をとっている。また、ピンタンブラ87には、カードキー82が錠前86に挿し込まれていない時にプランジャピン91が可動部品88及び支持部品90の両者に亘って引っ掛かった状態をとる第1ピンタンブラ87aと、カードキー82が錠前86に挿し込まれていない時にロックピン89及びプランジャピン91の境界が可動部品88及び支持部品90の境界に一致する第2ピンタンブラ87bとがある。
【0005】
錠前86にカードキー82が挿し込まれた場合、このカードキー82が正規キーであれば、図18に示すように、全てのピンタンブラ87(第1ピンタンブラ87a、第2ピンタンブラ87b)においてロックピン89とプランジャピン91との境界が、可動部品88と支持部品90との境界に一致する。これにより、可動部品88はピンタンブラ87を介して支持部品90に係止された状態をとらなくなり、支持部品90に対する移動が許容された状態となる。よって、カードキー82を錠前86に挿し込んで可動部品88を動かす操作が許可され、カードキー82による錠前86の施解錠操作が可能となる。
【0006】
一方、錠前86に挿し込まれたカードキー82が不正キーの場合、図19に示すように、第1ピンタンブラ87aにカードキー82の孔84が位置した際には、第1ピンタンブラ87aがタンブラスプリング92に押された状態を維持して、プランジャピン91が可動部品88及び支持部品90の両者に亘り引っ掛かる。また、このとき、第2ピンタンブラ87bにカードキー82の孔無し部85が位置した際には、第2ピンタンブラ87bがカードキー82の孔無し部85によってタンブラスプリング92の付勢力に抗して持ち上げられ、ロックピン89が可動部品88及び支持部品90の両者に引っ掛かる状態をとる。よって、可動部品88はこれらピンタンブラ87を介して支持部品90に係止された状態をとることになり、支持部品90に対する移動が禁止される。このため、錠前86に挿し込んだカードキー82が不正キーの時は可動部品88を動かす操作が不許可となるので、不正キーでは錠前86の施解錠操作が行えないことになる。
【特許文献1】実用新案登録第3090369号公報
【特許文献2】特開2004−76375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種のピンタンブラ87は、カードキー82が錠前86に抜き挿しされる際にカードキー82に押されて、カード厚さの分だけ上下動するものである。このため、カードキー82はそれほど厚いものではないので、ピンタンブラ87の上下動距離は相対的に長いものではなく、ピンタンブラ87が可動部品88や支持部品90に係止する際のその掛かり代Kというのはさほど大きくとれない現状がある。このように、ピンタンブラ87の掛かり代Kが少ない状況下においては、仮にピンタンブラ87で可動部品88の動きをロックしていても、第三者が不正キー操作を目的として可動部品88に想定し得ない過度の力を加えた場合、その外力がピンタンブラ87のロック強度を超える状況になると、可動部品88が不正に動いてしまい、これが錠前86の不正解除に繋がる問題があった。
【0008】
例えば、錠前86にカードキー82が挿し込まれていないキー未挿入時に、錠前86のキー穴に金属部品等を引っ掛けてこれを無理に操作した場合、この時の外力がピンタンブラ87(第1ピンタンブラ87a)のロック強度を超えてしまうと、可動部品88が不正に動いて、錠前86が不正に解除されてしまう状況になる。また、例えば錠前86に単なる板材を挿し込んだ不正キー挿入時の場合もこれが同様に言え、不正キー挿入時はキー未挿入時の時にアンロック状態であったピンタンブラ87(第2ピンタンブラ87b)が今度は逆に可動部品88を支持部品90に固定するロック状態をとることになるが、この時にロック状態となるピンタンブラ87も掛かり代Kは少ない状況であるので、板材が過度の力で操作されてこの時の外力がピンタンブラ87のロック強度を超えると、可動部品88が不正に動いて錠前86が不正に解除される状況になる。
【0009】
本発明の目的は、錠前を不正に施解錠操作する不正キー操作を生じ難くすることができるコード凹凸照合式キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点を解決するために、本発明では、キー本体部の少なくとも一平面方向に沿って並ぶ凹凸群をキーコード用のコード凹凸として持つコード凹凸キーがキーとして使用され、錠の可動部材を当該錠の固定側である支持部材に係止し得るタンブラ部材が前記コード凹凸の凹部及び凸部の位置に対応して複数形成された錠前に前記コード凹凸キーが挿し込まれた際、コード用付勢部材の付勢力によって押され状態にある前記タンブラ部材の位置状態を前記コード凹凸で切り換えて、各々の前記タンブラ部材が前記係止をとるか否かを見ることをキー照合として行うコード凹凸照合式キーシステムにおいて、前記可動部材に移動可能な状態で収納された第1ピースと前記支持部材に移動可能な状態で収納された第2ピースとの2者から成り、しかもロック用付勢部材によって付勢状態にあるピンタンブラ式のロックピースを持ち、前記2ピースの一方が前記可動部材及び前記支持部材の両方に係止する係止状態をとると前記可動部材の動きを規制し、前記2ピースの境目が前記可動部材及び支持部材の境目に一致する非係止状態をとると前記可動部材の動きを許容し、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれる前と、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれた時との2状態のうち、少なくとも一方の状態下において前記係止状態をとることにより、前記タンブラ部材のロック強度を補強するロック機構を備えたことを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれていないキー未挿入時には、複数のタンブラ部材のうち所定のタンブラ部材が前記支持部材及び固定部材の両者に亘り係止する係止状態をとることにより、可動部材が支持部材に対して動くことが制限されて錠前の施解錠操作が禁止される。一方、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれたキー挿入時には、コード凹凸キーのコード凹凸によって各々対応するタンブラ部材の位置が切り換えられてキー照合が行われる。錠前に挿し込まれたコード凹凸キーが正規キーの場合、タンブラ部材が全て非係止状態をとり、可動部材の動きが許容されて錠前の施解錠操作が許容される。一方、キーコードが異コードのコード凹凸キーが錠前に挿し込まれた際には、コードの合っていないタンブラ部材が前記可動部材及び支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとり、可動部材の動きが制限されて錠前の施解錠操作が禁止される。
【0012】
また、本構成においては、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれていないキー未挿入時と、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれたキー挿入時との少なくとも一方の状態下において、タンブラ部材による可動部材のロック強度を補強するロック機構を設けた。これにより、可動部材を支持部材に固定するに際しては、可動部材はタンブラ部材だけでなくロック機構によっても支持部材に係止される係止状態をとるので、可動部材を支持部材により強度に固定することが可能となる。よって、錠前は施解錠操作が不許可の時に可動部材が非常に強く支持部材に固定されることになるので、錠前の不正操作を生じ難くすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記ロック機構は、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれていない時に、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとることにより、キー未挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー未挿入時作動ロック機構と、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれてから当該キーが完全な挿入状態となるまでの間、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとって、キー挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー挿入時作動ロック機構とを備えたことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、錠前にコード凹凸キーを挿し込んでいないキー未挿入時はキー未挿入時作動ロック機構が利いてタンブラ部材のロック強度が補強され、錠前にコード凹凸キーを挿し込んだキー挿入時はキー挿入時作動ロック機構が利いてタンブラ部材のロック強度が補強される。よって、キー未挿入時とキー挿入時との両方の状態でタンブラ部材のロック強度が補強されるので、錠前の不正操作を一層生じ難くすることが可能となる。
【0015】
本発明では、前記可動部材又は前記支持部材において前記ロックピースの先端位置には、当該ロックピースの先端を収納可能な収納部が貫設されていることを要旨とする。
この構成によれば、可動部材又は支持部材においてロックピースの先端位置に、ロックピースの先端を収納可能な収納部を形成したので、コード凹凸キーを錠前に挿し込んだりする際や、或いはコード凹凸キーを錠前から抜いたりする際に、ロックピースの移動量を大きくとることが可能となる。このため、ロックピースが可動部材を支持部材に固定する際の掛かり代が大きくなるので、ロックピースによる支持部材のロック強度そのものを高いものとすることが可能となる。よって、錠前は施解錠操作が不許可の時に可動部材が非常に強く支持部材に固定されることになるので、錠前の不正操作を一層生じ難くすることが可能となる。
【0016】
本発明では、前記ロックピースの先端には、前記コード凹凸キーを前記錠前のキー穴から抜き挿しする際にこれを補助するピース部材が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、カード凹凸キーを錠前に対して抜き挿しする際には、ロックピースの先端にあるピース部材が例えば転がるなどしてキーの抜き挿しを補助するので、キー抜き挿しをスムーズに行うことが可能となる。よって、錠前に対してコード凹凸キーを抜き挿しする際にストレスを感じ難くすることが可能となる。
【0017】
本発明では、前記ロックピースのピース径が前記タンブラ部材のピン径よりも大きく形成されていることを要旨とする。
この構成によれば、ロックピースのピース径をタンブラ部材のピン径よりも大きく形成したので、強い固定強度で可動部材を支持部材に固定するロックピースによって、タンブラ部材のロック強度を補強することが可能となる。このため、タンブラ部材が可動部材を支持部材にロックする係止状態をとる際、可動部材が支持部材により強固な係止状態をとることになるので、錠前の不正操作を一層生じ難くすることが可能となる。
【0018】
本発明では、車両キーである電子キーからキー固有のキーコードを無線通信により発信して、その時のキー照合成立を条件に車両動作を許可又は実行する電子キーシステムを備えつつ、実際のキー操作を伴う機械式キー操作によっても前記車両動作が実行可能な車両に搭載され、前記コード凹凸キーの前記コード凹凸を前記機械式キー操作時のキーコードとして設定することにより、前記コード凹凸キーが前記電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用されていることを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、コード凹凸キーを電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用しているので、電子キーにこの種のエマージェンシーキーを設ける必要がなくなり、電子キーをそのキー省略分だけ小型化することが可能となる。また、コード凹凸キーは例えばカードキーに代表されるように持ち運び時において財布等に収納される使用形態をとるので、コード凹凸キーをエマージェンシーキーとして使用したとしても、エマージェンシーキーの持ち運びに際して以前通り不便さを感じることもない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、錠前を不正に施解錠操作する不正キー操作を生じ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化したコード凹凸照合式キーシステムの一実施形態を図1〜図14に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、実際に車両キーを操作しなくてもドアロック施解錠やエンジン始動停止等の車両動作を行うことが可能なキー操作フリーシステム2が搭載されている。キー操作フリーシステム2は、キー固有のIDコード(キーコード)を無線通信で発信可能な携帯機3が車両キーとして使用されている。キー操作フリーシステム2は、車両1からIDコード返信要求としてリクエスト信号Srqを発信させ、このリクエスト信号Srqを携帯機3が受信すると、それに応答する形で携帯機3が自身のIDコードを乗せたID信号Sidを狭域通信により車両1に返信し、携帯機3のIDコードが車両1のIDコードと一致すると、ドアロック施解錠やエンジン始動停止が許可又は実行されるシステムである。なお、キー操作フリーシステム2が電子キーシステムに相当し、携帯機3が電子キーに相当する。
【0022】
キー操作フリーシステム2には、ドアロック施解錠操作の際に実際の車両キー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステム4がある。このスマートエントリーシステム4を以下に説明すると、車両1には、携帯機3との間で狭域通信を行う際にID照合を行う照合ECU5が設けられている。照合ECU5には、車両1の各ドアに埋設されて車外にLF対の信号を発信可能な車外LF発信機6と、車内床下等に埋設されて車内にLF帯の信号を発信可能な車内LF発信機7と、車内バックミラー等に埋設されてRF帯の信号を受信可能なRF受信機8とが接続されている。これらLF発信機6,7は、リクエスト信号Srqを周囲に発信可能であって、車外LF発信機6が車両周囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(車外通信エリア)を形成し、車内LF発信機7が車内全域にリクエスト信号Srqの通信エリア(車内通信エリア)を形成する。
【0023】
照合ECU5には、例えば車外ドアハンドルノブに埋設されたタッチセンサ9が接続されている。タッチセンサ9は、操作者が施錠状態のドアロックを解除する時に車外ドアハンドルノブ10(図2参照)をタッチする操作を検出する。照合ECU5には、例えば車外ドアハンドルノブ10に設けられたロックボタン11が接続されている。ロックボタン11は、操作者が解錠状態のドアロックを施錠する時に押し操作される。照合ECU5には、ドアロックの施解錠を制御するドアECU12が車内LAN13を介して接続されている。ドアECU12は、照合ECU5から指令を基にドアロックモータ14を駆動制御することでドアロックを施錠状態又は解錠状態にする。
【0024】
一方、携帯機3には、車両1との間でキー操作フリーシステム2に準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部15が設けられている。通信制御部15には、外部で発信されたLF帯の信号を受信可能なLF受信部16と、通信制御部15の指令に従いRF帯の信号を発信可能なRF発信部17とが接続されている。LF受信部16は、自身のLF受信アンテナ18で受信したLF帯の信号をLF受信回路19で復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして通信制御部15に出力する。また、RF発信部17は、通信制御部15から得た通信データをRF発信回路20で変調し、携帯機3が持つ固有のIDコードを乗せたRF帯のID信号SidをRF発信アンテナ21から発信可能である。
【0025】
車両1が駐車状態(エンジン停止及びドアロック施錠状態)の際、照合ECU5は、車外LF発信機6からLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させ、車両周辺に車外通信エリアを形成する。携帯機3がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号SrqをLF受信部16で受信すると、携帯機3はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ22に登録されたIDコードを載せたID信号SidをRF発信部17からRF帯の信号で返信する。照合ECU5は、RF受信機8でID信号Sidを受信すると、自身のメモリ23に登録されたIDコードと携帯機3のIDコードとを照らし合わせてID照合(車外照合)を行う。照合ECU5は、車外照合が成立した事を認識すると、メモリ23に車外照合フラグを一定時間の間において立てて、待機状態のタッチセンサ9をその期間の間において起動させる。ドアECU12は、車外ドアハンドルノブがタッチ操作された事を起動中のタッチセンサ9が検出すると、ドアロックモータ14を一方側に回転させて、施錠状態のドアロックを解錠する。
【0026】
一方、車両1が停止状態(エンジン停止及びドアロック解錠状態)の際、照合ECU5は、ロックボタン11が押されたことを検出すると、車外LF発信機6からリクエスト信号Srqを発信させる。照合ECU5は、このリクエスト信号Srqを受けて携帯機3が返信してきたID信号Sidにおいて車外照合が成立した事を認識すると、ドアECU12にドアロック施錠要求を出力する。ドアロック施錠要求を受け付けたドアECU12は、ドアロックモータ14を他方側に回転させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
【0027】
また、キー操作フリーシステム2には、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステム24がある。このワンプッシュエンジンスタートシステム24を以下に説明すると、車両1には、エンジン25の点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU26と、セレクトレバーの操作を基に自動変速機を制御するシフトECU27と、車載電装品の電源管理を行う電源ECU28とが設けられている。これらECU26〜28は、車内LAN13を通じて照合ECU5等の各種ECUに接続されている。
【0028】
車両1の運転席には、車両1の電源状態(電源ポジション)を切り換える際の操作系としてエンジンスイッチ29が設けられている。エンジンスイッチ29は、操作箇所であるスイッチ操作部29aを押し込み操作する押圧操作式であって、ハーネスを介して電源ECU28に接続されている。このエンジンスイッチ29は、エンジン25を始動状態又は停止状態に切り換えるエンジン始動停止操作機能と、車両1の電源状態をオフ状態からACCオン状態やIGオン状態に切り換える電源遷移操作機能とを持っている。
【0029】
また、電源ECU28には、車両1の速度を検出する車速センサ30と、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ31とが接続されている。電源ECU28は、車速センサ30から取得する車速情報を基に今現在の車両1の速度を認識しつつ、ブレーキセンサ31から取得するペダル踏込量情報を基にブレーキペダルの踏み込み有無を判定可能である。また、電源ECU28には、各種車載アクセサリに繋がるACCリレー32と、エンジンECU26に繋がるIGリレー33と、エンジン25のスタータモータに繋がるスタータリレー34とが接続されている。
【0030】
照合ECU5は、車外照合が成立してドアロックが解錠された後、例えばカーテシスイッチ35でドアが開けられて運転者が乗車した事を認識すると、車内LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU5は、携帯機3がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号SidをRF受信機8で受信すると、自身に登録されたIDコードと携帯機3のIDコードとを照らし合わせてID照合(車内照合)を行う。照合ECU5は、この車内照合が成立すると、メモリ23に車内照合成立フラグを立てて車内照合成立を認識する。
【0031】
電源ECU28は、運転者が車両1の電源状態を切り換えるべくエンジンスイッチ29を押圧操作した事を検出すると、まずは照合ECU5に車内照合成立の有無を確認する。このとき、電源ECU28は、照合ECU5から車内照合が成立している旨の通知を受ければ車内照合が成立済みである事を認識するが、逆に照合ECU5から車内照合が不成立の旨の通知を受け付けると、照合ECU5に車内照合を再実行させて車内照合の正否を再確認する。電源ECU28は、照合ECU5に車内照合を再実行させても、照合ECU5から車内照合が成立した旨の通知を受け付けないと、車内照合は不成立であると認識する。
【0032】
電源ECU28は、エンジン25が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ29が押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件として、停止状態のエンジン25を始動すべく3つのリレー32〜34をオンしつつ、エンジンECU26に起動信号を出力する。起動信号を受け付けたエンジンECU26は、車内照合結果の確認と、照合ECU5が自身とペアを成すものかを確認するペアリングとを暗号化通信により行う。これら両条件の確認を済ませたエンジンECU26は、点火制御及び燃料噴射制御を開始してエンジン25を始動する。一方、電源ECU28は、エンジン25が稼働中の際にエンジンスイッチ29が押圧操作された事を検出すると、車両1が停止(車速「0」)していることを条件に3つのリレー32〜34を全てオフ状態にして、エンジン25を停止状態にする。
【0033】
また、電源ECU28は、エンジン25が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作されずにエンジンスイッチ29のみが押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件としつつ、しかもシフトレバーがPレンジ位置にあれば、エンジンスイッチ29が押される度に、操作一回りの間において電源状態をオフ状態→ACCオン状態→IGオン状態の順に切り換える。例えば、エンジン25が停止している時にエンジンスイッチ29のみが押圧操作されると、車両1の電源状態がオフ状態からACC状態に切り換わり、この状態から更にエンジンスイッチ29のみがもう一度押圧操作されると、車両1の電源状態がIGオン状態となり、この状態からエンジンスイッチ29のみが更にもう一度押圧操作されると、車両1の電源状態がオフ状態に戻る動作をとる。
【0034】
また、車両1には、携帯機3に内蔵した通信タグ部品を用いて無線ID照合を行うイモビライザーシステム36が設けられている。イモビライザーシステム36を搭載した車両1には、イモビライザーシステム36のコントロールユニットとしてイモビライザーECU37が設けられている。イモビライザーECU37は、例えばCPUやメモリ等から成り、車内LAN13に接続されている。イモビライザーECU37には、イモビライザーシステム36の車両側アンテナとしてトランスポンダキーコイル38が接続されている。このトランスポンダキーコイル38は、エンジンスイッチ29の筐体内においてスイッチ操作部29aを囲むようにリング状に巻回された取り付け状態をとっている。一方、携帯機3には、通信タグ部品として固有のコード番号を発信可能なトランスポンダ39が内蔵されている。
【0035】
イモビライザーシステム36は、携帯機3をトランスポンダキーコイル38にかざすように近づけることにより、トランスポンダキーコイル38から発信される駆動電波Sivでトランスポンダ39を起動させ、起動したトランスポンダ39が返信してきたトランスポンダコード信号Str内のコード番号を車両1側で照らし合わせてID照合(イモビライザー照合)を行う。エンジンスイッチ29を押圧操作してエンジン25を始動する際、エンジン始動の前段階の認証動作として車内照合成立有無を確認するが、これはキー操作フリーシステム2に準じたID照合成立(車内照合成立)を条件とすることに限らず、キー操作フリーシステム2とイモビライザーシステム36とのどちらかのID照合が成立していれば、エンジン始動が許可される。
【0036】
図2に示すように、ドアロック施解錠操作の際に実際のメカニカルキーによるキー操作が必要となる機械操作式ドアロックシステム40が設けられている。このように、車両1に機械操作式ドアロックシステム40を設けるのは、キー操作フリーシステム2は電気式であることから、例えばキー操作フリーシステム2に電気故障が生じたり、或いは携帯機3が電池切れになったりすると、この状況下ではキー操作フリーシステム2によってドアロック施解錠を行うことができないので、このような状況下に陥ったとしても、ドアロック施解錠操作を可能とする理由からである。
【0037】
この機械操作式ドアロックシステム40を以下に説明すると、機械操作式ドアロックシステム40は、固定を行う側の施解錠用機構として車両ドア(運転席ドア)1aの外壁に取り付けられた錠前41と、この錠前41を実際の機械式キー操作を伴って開閉(施解錠)する際の道具であるメカニカル式のキー42とから成る。本例の機械操作式ドアロックシステム40は、キー本体形状がカード型(平板形状)を成しているキー(以降、カードキー42と記す)を用いたカードキー型ドアロックシステムである。この種のカードキー型ドアロックシステムは、正規キーのカードキー42を錠前41のキー穴43に挿し込み、ドアロックが解錠状態の際にこのカードキー42を初期位置から一方向(例えば上方向)にスライド移動するとドアロックが施錠状態となり、ドアロックが施錠状態の際にこのカードキー42を初期位置から他方向(例えば下方向)にスライド移動するとドアロックが解錠状態となる。なお、カードキー42がコード凹凸キーに相当する。
【0038】
また、本例の機械操作式ドアロックシステム40はスマートエントリーシステム4の故障又は携帯機3の電池切れ等の緊急時に使用されるものであるので、この機械操作式ドアロックシステム40用のキーである本例のカードキー42は、スマートエントリーシステム4がトラブル下に置かれた時の緊急時に用いるエマージェンシーキーとして使用される。カードキー42は、クレジットカード等の一般的なカード部材と同様の平板形状及びサイズをとっている。このため、カードキー42は、使用しない際においては種々のクレジットカード等と同様に財布に収納される使用形態をとる。
【0039】
図3に示すように、カードキー42のケース部分を成すキー本体部44には、機械操作式ドアロックシステム40のメカニカルキー用のキーコードとして、複数の孔有無群(凹凸群)から成る孔形成パターン45が形成されている。孔形成パターン45は、キー本体部44においてその幅方向(図3の矢印A方向)と長さ方向(図3の矢印B方向)とに沿って例えば連続、1つおき、2つおき等の規則性を持って貫設された複数の孔46と、これら孔46が形成されていない孔無し部47とから成るとともに、キー本体部44の平面方向に亘り並んで配置されている。即ち、カードキー42には、平板形状を成すキー本体部44において孔46の有る位置と孔46の無い位置とから成る孔46の有無群がメカニカルキーのキーコードとして形成されている。孔形成パターン45は、孔46が平断面円形状に形成されるとともに、キー本体部44の先端寄りの位置に配置されている。なお、孔形成パターン45がコード凹凸に相当し、孔46が凹部に相当し、孔無し部47が凸部に相当する。
【0040】
図4〜図9に示すように、錠前41には、この錠前41の固定側としてスライダケース48が設けられている。スライダケース48は、錠前41の本体部分を形成するものであって、例えば板厚が薄い直方体形状を成している。スライダケース48は、その側壁にキー穴43(図2参照)を有するとともに、車両ドア1aの外壁に取着される取り付け状態をとっている。スライダケース48の収容部48aには、錠前41の可動側としてスライダ49がスライダケース48に対してスライド移動可能(直線移動可能)な状態で収納されている。スライダ49は、板材から成るとともに、スライダケース48の収容部48a内においてスライダケース48の長手方向(高さ方向)に沿って移動可能となっている。なお、スライダケース48が支持部材に相当し、スライダ49が可動部材に相当する。
【0041】
スライダケース48とスライダ49との間には、車両ドア1aの壁面側の接触面において、合い鍵以外の時はスライダ49をスライダケース48に固定して施解錠操作を不許可とするピンタンブラ50が複数収納されている。これらピンタンブラ50,50…は、カードキー42に配列されたそれぞれの孔46及び孔無し部47に対応して設けられ、カードキー42が錠前41に挿し込まれた際に、これら孔46及び孔無し部47に一対一で向き合う配置位置をとる。ピンタンブラ50の個数は、例えばカードキー42に孔46及び孔無し部47を合計14個形成した場合、これに合わせて14個形成されている。なお、ピンタンブラ50がタンブラ部材に相当する。
【0042】
ピンタンブラ50,50…は、スライダケース48に凹設されたケース側収納穴51に移動可能な状態で収納されたピン形状を成すプランジャピン52と、スライダ49に凹設されたスライダ側収納穴53に移動可能な状態で収納されたピン形状を成すロックピン54との一対のピン部品から成り、ケース側収納穴51に収納されたタンブラスプリング55によってスライダ49側に常時付勢された取り付け状態をとっている。また、ロックピン54は、プランジャピン52よりも長い形状を成すとともに、その先端が半円形状に形成されている。なお、タンブラスプリング55がコード用付勢部材に相当する。
【0043】
また、ピンタンブラ50,50…は、ロックピン54が短めに形成された第1ピンタンブラ50aと、ロックピン54が長めに形成された第2ピンタンブラ50bとから成る。第1ピンタンブラ50aは、錠前41に正規のカードキー42が挿し込まれた際、カードキー42の孔無し部47が位置する箇所に配置されている。第1ピンタンブラ50aは、図4に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれていないときや、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔46に嵌り込んだ位置状態をとったとき、タンブラスプリング55の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとることにより、プランジャピン52が一定の掛かり代K1だけスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するピンタンブラ係止状態をとり、スライダ49のスライド移動を規制する。一方、第1ピンタンブラ50aは、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔無し部47に向き合う位置状態をとると、カードキー42の板厚(孔無し部47)によりタンブラスプリング55の付勢力に抗して掛かり代K1の量だけ上方にスライド移動する。これにより、第1ピンタンブラ50aは、プランジャピン52とロックピン54との境界(プランジャピン52の2部品の境目)がスライダケース48とスライダ49との境界(スライダ49の摺動面)に一致してピンタンブラ非係止状態となり、スライダ49のスライド移動を許容する。
【0044】
第2ピンタンブラ50bは、錠前41に正規のカードキー42が挿し込まれた際、カードキー42の孔46が位置する箇所に配置されている。第2ピンタンブラ50bは、図4に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれていないときや、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔46に嵌り込んだ位置状態をとったとき、タンブラスプリング55の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとることにより、プランジャピン52とロックピン54との境界がスライダケース48とスライダ49との境界に一致してピンタンブラ非係止状態をとり、スライダ49のスライド移動を許容する。一方、第2ピンタンブラ50bは、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔無し部47に向き合う位置状態をとると、カードキー42の板厚(孔無し部47)によりタンブラスプリング55の付勢力に抗して押し上げられて上方にスライド移動する。これにより、第2ピンタンブラ50bは、その押し上げ量分がロックピン54の掛かり代K1となってスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するピンタンブラ係止状態となり、スライダ49のスライド移動を規制する。なお、ピンタンブラ50a,50bもタンブラ部材に相当する。
【0045】
スライダ49は、スライダ49のスライド運動をドアロックの機械的な操作力として伝達する伝達機構(図示略)を介して、車両ドア1aのドアロック箇所であるデッドボルト(図示略)に接続されている。スライダ49は、図7及び図8に示すように、錠前41に挿し込んだカードキー42でスライド移動操作が可能であって、中立位置を基準としてその両方向にスライド移動可能である。スライダ49が中立位置を基準に一方向(図6の矢印R1方向)にスライド移動されると、このスライド運動が伝達機構によってデッドボルトの引き出し動作に変換され、車両ドア1aが施錠状態となる。また、スライダ49が中立位置を基準に他方向(図7の矢印R2方向)にスライド移動されると、このスライド運動が伝達機構によってデッドボルトの引き込み動作に変換され、車両ドア1aが解錠状態となる。
【0046】
また、機械操作式ドアロックシステム40には、図9及び図10に示すように、スライダ49をスライダケース48に固定しているピンタンブラ50のそのロック強度を補強するロック機構56が設けられている。このロック機構56を以下に説明すると、ロック機構56には、カードキー42を錠前41に挿し込んでいないキー未挿入時において働くキー未挿入時作動ロック機構56aと、カードキー42を錠前41に挿し込んでから完全に奥まで挿し込まれるまでのキー挿入時において働くキー挿入時作動ロック機構56bとから成る。
【0047】
キー未挿入時作動ロック機構56aには、その係止箇所としてピン形状を成す第1ロックピース57が設けられている。第1ロックピース57は、ピンタンブラ50と基本的に同様の構造を成し、スライダケース48に形成された第1収納穴58に相対移動可能な状態で取り付けられたプランジャ側ピース59と、スライダ49に形成された第2収納穴60に相対移動可能な状態で取り付けられたスライダ側ピース61との一対のピースから成り、ロックピース用スプリング62によってスライダ49側に常時付勢された取り付け状態をとっている。第1ロックピース57は、形状が略直方体形状を成すとともに、ピンタンブラ50よりも大径に形成されている。スライダ側ピース61の先端は、錠前41に挿し込んだカードキー42がスライダ側ピース61の先端側に潜ってスライダ側ピース61を持ち上げられるように半円形状に形成されている。なお、プランジャ側ピース59が第2ピースに相当し、スライダ側ピース61が第1ピースに相当し、ロックピース用スプリング62がロック用付勢部材に相当する。
【0048】
また、キー挿入時作動ロック機構56bには、その係止箇所としてピン形状を成す第2ロックピース63が設けられている。第2ロックピース63は、第1ロックピース57と基本的に同様の構造を成し、プランジャ側ピース59と、スライダ側ピース61と、ロックピース用スプリング62とを持っている。第2ロックピース63は、プランジャ側ピース59が第1ロックピース57のそれよりも短く形成され、一方でスライダ側ピース61が第1ロックピース57のそれよりも長く形成されている。なお、第1ロックピース57及び第2ロックピース63がロックピースに相当する。
【0049】
また、図2及び図3に示すように、カードキー42には、カードキー42を錠前41に奥まで挿し込んだ際に第2ロックピース63が位置する箇所において、断面四角形状を成した貫設孔部64が形成されている。この貫設孔部64は、カードキー42を錠前41に完全に挿し込んだ際に、第2ロックピース63のスライダ側ピース61が入り込む箇所として働く。一方、カードキー42は、カードキー42を錠前41に完全に挿し込んだ際に第1ロックピース57が位置する箇所において孔が形成されておらず、この孔無し箇所はカードキー42を錠前41に完全に挿し込んだ際に第1ロックピース57を持ち上げておく板部65として働く。
【0050】
第1ロックピース57は、図10に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれていない際、ロックピース用スプリング62の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとる。第1ロックピース57は、スライダ側ピース61が短く設定されていることから、この状態においてはプランジャ側ピース59がスライダケース48とスライダ49との両方に亘り係止するロックピース係止状態をとり、プランジャピン52によるスライダ49の固定状態を補強する。一方、第1ロックピース57は、図11に示すように、錠前41にカードキー42が挿し込まれると、カードキー42の板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して掛かり代K2の量だけ上方にスライド移動する。これにより、第1ロックピース57は、プランジャ側ピース59とスライダ側ピース61との境目がスライダケース48とスライダ49との境界に一致してロックピース非係止状態となり、ピンタンブラ50のロック強度を補強しない補強解除状態となる。
【0051】
第2ロックピース63は、図10に示すように、錠前41にカードキー42が挿し込まれていない際、ロックピース用スプリング62の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとる。第2ロックピース63は、スライダ側ピース61が長く設定されていることから、この状態においてはプランジャ側ピース59とスライダ側ピース61との境目とスライダケース48とスライダ49との境目が一致してロックピース非係止状態をとり、ピンタンブラ50のロック強度を補強しない補強解除状態となる。一方、第2ロックピース63は、図11に示すように、錠前41にカードキー42が挿し込まれてから完全に挿し込み状態となるまでの過程において、カードキー42の板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して持ち上げられて上方にスライド移動する。これにより、第2ロックピース63は、その押し上げ量分だけスライダ側ピース61がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するロックピース係止状態となり、プランジャピン52によるスライダ49の固定状態を補強する。
【0052】
カードキー42を錠前41に完全に挿し込むと、図12に示すように、第2ロックピース63は、ロックピース用スプリング62の付勢力によってスライダ49側に移動してカードキー42の貫設孔部64に入り込み、プランジャ側ピース59とスライダ側ピース61との境目がスライダケース48とスライダ49との境目に一致してロックピース非係止状態となる。このとき、第1ロックピース57は、カードキー42の板部65によって押し上げられ状態を維持するので、ロックピース非係止状態を維持する。よって、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた際は、第1ロックピース57及び第2ロックピース63がともに補強解除状態となり、スライダ49のスライド移動が許容される。
【0053】
図4〜図9に示すように、スライダ49のキー収納穴49aの底面には、各々のピンタンブラ50の先端が当接する当接面において、ピンタンブラ50(ロックピン54)の先端を収納可能なピン収納凹部66が複数形成されている。このピン収納凹部66は、カードキー42を錠前41に挿し込んでその板厚(孔無し部47)でピンタンブラ50を押し上げる際、その押し上げ量をできる限り多くとって、ピンタンブラ50がスライダ49及びスライダケース48の両者に亘り係止する際のその掛かり代K1を多く確保するように働く。ピン収納凹部66は、錠前41にカードキー42を挿し込んだときにカードキー42の周縁がロックピン54の下側に潜り込むことを可能とすべく、ロックピン54の先端が収納状態となった際、その半円形状の一部分が外部に露出する深さに形成されている。
【0054】
また、図8〜図12に示すように、スライダ49のキー収納穴49aの底面には、第1ロックピース57及び第2ロックピース63の先端が当接する当接面において、ロックピース57,63(スライダ側ピース61)の先端を収納可能なピース収納凹部67がそれぞれ形成されている。このピース収納凹部67は、ピン収納凹部66と同様の機能を持つものであって、錠前41に挿し込んだカードキー42の板厚(板部65)でロックピース57,63を押し上げた際に、ロックピース57,63がスライダ49及びスライダケース48の両者に亘り係止する際のその掛かり代K2を多く確保するように働く。ピース収納凹部67は、ピン収納凹部66と同様に、ロックピース57,63の先端が収納状態となった際にその半円形状の一部分が外部に露出する深さに形成されている。なお、ピース収納凹部67が収納部に相当する。
【0055】
次に、本例の機械操作式ドアロックシステム40の動作を説明する。
駐車状態(エンジン停止、ドアロック施錠状態)の車両1に乗車する状況を想定した場合、例えばキー操作フリーシステム2がシステム故障したり、或いは携帯機3が電池切れになったりすると、この時はキー操作フリーシステム2でドアロックの施解錠を行うことができないので、機械操作式ドアロックシステム40を使用して車両ドア1aを解錠することになる。機械操作式ドアロックシステム40のキーであるカードキー42は財布等に収納された使用形態がとられることから、機械操作式ドアロックシステム40で車両ドア1aを解錠するに際してはカードキー42を財布等から取り出し、このカードキー42を錠前41のキー穴43に挿し込む動作をとる。カードキー42を錠前41に挿し込む際、スライダ49は中立位置をとっている。
【0056】
ここで、カードキー42が錠前41に挿し込まれていない場合、図4に示すように、第2ピンタンブラ50bはピンタンブラ非係止状態をとるものの、第1ピンタンブラ50aがピンタンブラ係止状態をとるので、スライダ49は第1ピンタンブラ50aによってスライダケース48に固定された状態をとる。よって、スライダ49はスライダケース48に対して移動することが制限されるので、例えば仮に錠前41のキー穴43に指等を引っ掛けてスライダ49をスライド移動させよう不正操作を行っても、この不正操作でスライダ49がスライド移動することがない。このため、単に錠前41のキー穴43に指等を引っ掛けてスライダ49をスライド移動させることによる錠前41の施解錠操作が不許可となる。
【0057】
また、カードキー42が錠前41に挿し込まれていない場合、図8及び図10に示すように、第1ロックピース57がロックピース用スプリング62によりスライダ49に押し付けられる位置状態をとることになるが、このピース57はスライダ側ピース61が短く設定されているので、プランジャ側ピース59がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘り掛かり代K2だけ係止する状態をとって、スライダ49をスライダケース48に固定するロック係止状態となる。一方、第2ロックピース63も図9及び図10に示すようにロックピース用スプリング62によりスライダ49に押し付けられる位置状態をとるが、このピース63はスライダ側ピース61が長めに設定されているので、プランジャ側ピース59及びスライダ側ピース61の境目がスライダケース48及びスライダ49の境目に一致して、スライダ49をスライダケース48に固定しないロック非係止状態をとる。
【0058】
このため、2つのロックピース57,63のうち第1ロックピース57がスライダ49をスライダケース48に固定する作動状態をとり、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度が第1ロックピース57によって補強される。よって、カードキー42が錠前41に挿し込まれていないキー未挿入時、スライダ49はピンタンブラ50のみならず、ピンタンブラ50よりも大径の第1ロックピース57のプランジャ側ピース59によってもスライダケース48に固定されるので、スライダ49がスライダケース48に対して強く固定された状態となる。従って、キー未挿入時にスライダ49を直接無理にスライド移動させる不正操作が行われたとしても、この時のスライダ49はスライド移動し難くなる。
【0059】
続いて、錠前41にカードキー42が挿し込まれると、図9及び図11に示すように、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれるまでのキー挿入過程において、カードキー42の周縁がロックピース57,63の先端下側に潜り込む。そして、それまでロックピース係止状態をとっていた第1ロックピース57は、図11に示すようにカードキー42に板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して反スライダ49側に押し上げられ、プランジャ側ピース59及びスライダ側ピース61の境目がスライダケース48及びスライダ49の境目に一致してロックピース非係止状態となる。一方、それまでロックピース非係止状態をとっていた第2ロックピース63も、図11に示すようにカードキー42の板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して反スライダ49側に押し上げられ、自身のスライダ側ピース61がスライダ側ピース61がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘り係止する状態をとってロックピース係止状態となる。
【0060】
これにより、錠前41にカードキー42を挿し込んでから完全に挿し込みが完了するまでのキー挿入過程時は、キー未挿入時に作動する第1ロックピース57に代わって今度は第2ロックピース63がスライダ49をスライダケース48に固定する作動状態をとる。これにより、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度は、第1ロックピース57に代わって第2ロックピース63により補強される。よって、カードキー42を錠前41に挿し込んでから完全に挿し込み状態をとるまでのキー挿入過程時、スライダ49はピンタンブラ50のみならず、ピンタンブラ50よりも大径の第2ロックピース63のスライダ側ピース61によってスライダケース48に固定されるので、スライダ49がスライダケース48に対して強く固定された状態となる。従って、キー挿入過程時に不正キーで無理にスライダ49を無理にスライド移動させる不正操作が行われたとしても、このときのスライダ49はスライド移動し難くなる。
【0061】
カードキー42をキー穴43に挿し込んだ際、その挿し込み過程においてカードキー42の端縁がピンタンブラ50,50…の先端下側に潜り込み、ピンタンブラ50,50…がカードキー42の板厚によって反スライダ49側に持ち上げられる。カードキー42がキー穴43に奥まで挿し込まれると、錠前41の各々のピンタンブラ50はカードキー42において各々対応する孔46及び孔無し部47に向き合う位置状態をとる。このとき、キー穴43に挿し込んだカードキー42が正規キーであれば、図5に示すように、第1ピンタンブラ50aの位置にカードキー42の孔無し部47が位置し、第2ピンタンブラ50bの位置にカードキー42の孔46が位置する。
【0062】
錠前41に挿し込まれたカードキー42が正規キーの場合、第1ピンタンブラ50aは、タンブラスプリング55の付勢力に抗して、カードキー42の孔無し部47によりカードキー42の板厚とピン収納凹部66の深さとを合わせた距離だけ上方に押し上げられる状態をとり、プランジャピン52とロックピン54との境目が、スライダケース48とスライダ49との境目に一致したピンタンブラ非係止状態となる。また、第2ピンタンブラ50bは、カードキー42の孔46に嵌り込むので、タンブラスプリング55によりスライダ49側に押し込まれた位置状態をとり、プランジャピン52とロックピン54との境目が、スライダケース48とスライダ49との境目に一致したピンタンブラ非係止状態をとる。
【0063】
また、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた状態をとると、図12に示すように、第2ロックピース63の先端位置には、カードキー42の貫設孔部64が位置する状態となる。これにより、第2ロックピース63は、ロックピース用スプリング62の付勢力によって自身のスライダ側ピース61が貫設孔部64に嵌り込むことになるので、カードキー42の板厚により押し上げられる状態が解消される。よって、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれると、第2ロックピース63はプランジャ側ピース59及びスライダ側ピース61の境目とスライダケース48及びスライダ49の境目とが一致してロックピース非係止状態になる。
【0064】
一方、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた状態をとると、図12に示すように、第1ロックピース57の先端位置には、カードキー42の板部65が位置する状態となる。これにより、第1ロックピース57は、カードキー42の板厚によって押し上げられた状態を維持し、スライダ49をスライダケース48に固定しないロックピース非係止状態を維持する。以上により、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた際には、第1ロックピース57及び第2ロックピース63の両者ともロックピース非係止状態となって、スライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することを許容する状態となる。
【0065】
これにより、第1ピンタンブラ50a及び第2ピンタンブラ50bの両者がともにピンタンブラ非係止状態をとりつつ、しかも第1ロックピース57及び第2ロックピース63が両者ともにロックピース非係止状態をとると、錠前41はスライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することが許容されたスライダ操作許可状態となる。錠前41がスライダ操作許可状態となると、錠前41に挿し込んだカードキー42でスライダ49をその中立位置からスライド移動することが可能となるので、錠前41に正規のカードキー42を挿し込んだ後にこのカードキー42を、図6に示すように、一方向(図7の矢印R1方向)に動かしてスライダ49を一方向にスライド移動(図6の状態)すると、この時のスライド運動が伝達機構を介してデッドボルトに伝達され、それまで飛び出し状態にあったデッドボルトが引き込み、車両ドア1aが解錠状態となる。
【0066】
ところで、各々のピンタンブラ50はプランジャピン52とロックピン54とが向き合った(重なった)位置状態をとっていないと、ピンタンブラ50の上下動が許容されないので、錠前41に挿し込んだカードキー42は各々のピンタンブラ50においてプランジャピン52とロックピン54とが向き合っていないと錠前41から取り出すことができない。よって、車両ドア1aを解錠した後、錠前41に挿し込んだカードキー42を錠前41から取り出す時は、カードキー42を挿し込み時の初期位置に戻してスライダ49を中立位置に位置させ、各々のプランジャピン52とロックピン54とを向き合わせる。運転者はカードキー42を初期位置に戻した後、カードキー42を錠前41から引き抜き、このカードキー42を所持して車内に乗車する。運転者は、以上のカードキー操作を行って乗車する。
【0067】
一方、機械操作式ドアロックシステム40で車両ドア1aを施錠する場合は、スライダ49が中立位置に位置する錠前41に正規のカードキー42を挿し込み、このカードキー42を他方向(図7の矢印R2方向)に動かしてスライダ49を、図8に示すように、他方向にスライド移動(図7の状態)する操作を行う。このとき、スライダ49のスライド運動が伝達機構を介してデッドボルトに伝達され、それまで引き込み状態にあったデッドボルトが外部に飛び出す状態をとり、車両ドア1aが施錠状態となる。錠前41を施錠状態とした後にカードキー42を錠前41から抜く場合には、錠前41を解錠状態とする時と同様に、カードキー42をカード挿し込み時の初期位置に位置してスライダ49を中立位置に位置させ、その後にカードキー42を錠前41から引き抜くことにより行う。
【0068】
続いて、カードキー42として錠前41とキーコードが合わない異コードキーが錠前41に挿し込まれた場合を想定する。異コードキーとは、カードキー42に形成された孔46や孔無し部47の形成パターンが正規キーとは異なったカードキーのことを言う。錠前41に不正キーを挿し込んでこれを錠前41に完全に挿し込むまでのキー挿入過程時は、先に述べた正規キーの場合の時と同様に、第2ロックピース63がロック係止状態となって、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度を補強する。
【0069】
異コードキーが錠前41に完全に挿し込まれた場合、図13に示すように、複数存在する第1ピンタンブラ50aの中には、その対向位置にカードキー42の孔46が位置するものが生じたり、また第2ピンタンブラ50bの中には、その対向位置にカードキー42の孔無し部47が位置するものが生じたりすることになる。第1ピンタンブラ50aは、自身が向き合う位置にカードキー42の孔46が位置してしまうと、この孔46に嵌り込む位置状態をとり、タンブラスプリング55の付勢力によってスライダ49側に押し込まれた位置状態をとる。このため、第1ピンタンブラ50aは、プランジャピン52が掛かり代K1分だけスライダケース48とスライダ49との両者に係止したピンタンブラ係止状態をとり、スライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することを規制する。この時の掛かり代K1は、錠前41に挿し込んだカードキー42の孔無し部47が向き合う位置をとった際に押し上げられる量、即ちカードキー42の板厚(孔無し部47)とピン収納凹部66の深さとを合わせた距離に相当する。
【0070】
また、第2ピンタンブラ50bは、自身が向き合う位置にカードキー42の孔無し部47が位置してしまうと、タンブラスプリング55の付勢力に抗して、カードキー42の孔無し部47によりカードキー42の板厚とピン収納凹部66の深さとを合わせた距離だけ上方に押し上げられる状態をとる。このため、第2ピンタンブラ50bは、カードキー42の孔無し部47によって押し上げられる量が掛かり代K1となって、ロックピン54がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するピンタンブラ係止状態となり、スライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することを規制する。
【0071】
このように、錠前41は、複数存在するピンタンブラ50の中で1つでもピンタンブラ係止状態をとるものがあると、それがスライダ49をスライダケース48に固定することから、スライダ49をスライダケース48に対してスライド移動することができないスライダ操作不許可状態となる。錠前41がスライダ操作不許可状態となると、錠前41に挿し込んだカードキー42でスライダ49をその中立位置からスライド移動することができないので、錠前41に挿し込んだカードキー42が異コードキーの場合には、車両ドア1aの施解錠操作が行えないことになる。
【0072】
また、キー不正操作の一種としては、図14に示すように、単なる板材68を錠前41に挿し込み、これを無理に動かしてスライダ49を強制的にスライド移動させることにより、錠前41を不正に施解錠しようとする場合も想定される。錠前41に単なる板材68が挿し込まれた場合、第1ピンタンブラ50a及び第2ピンタンブラ50bは、ともに板材68によりタンブラスプリング55の付勢力に抗して押し上げられる動きをとる。このとき、第1ピンタンブラ50aはプランジャピン52とロックピン54との境目がスライダケース48とスライダ49との境目に一致してピンタンブラ非係止状態をとるが、第2ピンタンブラ50bはロックピン54がスライダケース48とスライダ49に亘り係止したピンタンブラ係止状態をとる。
【0073】
このように、不正キーとして単なる板材68が錠前41に挿し込まれた場合、この時は第2ピンタンブラ50bがスライダ49をスライダケース48に固定する動作状態をとるので、錠前41は第2ピンタンブラ50bが利いてスライダ操作不許可状態となる。よって、単なる板材68を錠前41に挿し込んで無理にスライダ49をスライド移動するキー不正操作を行おうとしても、不正キーとして異コードキーが使用された場合と同様に、スライダ49のスライド移動操作が不許可となり、この種の板材68を用いた不正なキー操作で錠前41が解除されることがない。
【0074】
更に、錠前41に板材68を挿し込んだ際は、錠前41にカードキー42(正規キー、異コードキー)を挿し込んだ場合と同様に、第1ロックピース57に代わって第2ロックピース63がロックピース係止状態となって、ピンタンブラ50によるスライダ49のロック強度を補強する。よって、錠前41に単なる板材68を挿し込んだ際も、この板材68を完全に錠前41に挿し込むまでの期間の間においては第2ロックピース63が利いて、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度が第2ロックピース63により補強される。
【0075】
ところで、この種の板材68には、正規のカードキー42に存在するような貫設孔部64が形成されていない。このため、錠前41に板材68が完全に挿し込まれた際には、この時の第2ロックピース63には嵌り込み先がなく、板材68によっても持ち上げられた状態が維持されるので、第2ロックピース63はロックピース係止状態が維持される。よって、錠前41に不正キーとして板材68が挿し込まれた不正キー挿入時、スライダ49は第2ピンタンブラ50bのみならず、第2ピンタンブラ50bよりも大径の第2ロックピース63のプランジャ側ピース59によってもスライダケース48に固定されるので、スライダ49がスライダケース48に強く固定された状態となる。従って、錠前41に板材68を挿し込んで直接無理にスライダ49をスライド移動させる不正操作が行われたとしても、この時のスライダ49はスライド移動し難くなる。
【0076】
さて、本例においては、ピンタンブラ50のピン径よりも大きい径サイズを持つロックピース57,63を錠前41に設け、これらロックピース57,63を用いてピンタンブラ50によるスライダ49のロック強度を補強する。このため、スライダ49をピンタンブラ50でスライダケース48に固定する際、ピンタンブラ50のみならず径サイズの大きいロックピース57,63でもスライダ49がスライダケース48に固定されるので、スライダ49をより強固にスライダケース48に固定することが可能となる。よって、キー未挿入時や不正キー挿入時(板材挿入時)にスライダ49を無理に動かして錠前操作を行おうとしても、この操作でスライダ49がスライド移動してしまう状況が生じ難くなるので、錠前41の不正操作を生じ難くすることが可能となる。
【0077】
また、例えば錠前41の厚さを小さくすることで錠前41の小型化(薄型化)を図った場合、選択した厚さサイズによってはピンタンブラ50の掛かり代K1が小さくなることも想定される。このように、ピンタンブラ50の掛かり代K1が小さくなると、その分だけピンタンブラ50によるロック強度が小さくなってしまう。しかし、本例のように、ピンタンブラ50によるロック強度を補強すべく働くロックピース57,63を錠前41に設ければ、錠前41の薄型化によってピンタンブラ50によるロック強度が低くなっても、その分のロック強度がロックピース57,63で補強されることになる。よって、本例においては錠前41の小型化と、ピンタンブラ50の充分なロック強度確保との両立を図ることが可能となる。
【0078】
更に、本例においては、キー未挿入時にピンタンブラ50のロック強度を補強する第1ロックピース57と、キー挿入過程時(不正キー挿入時)にピンタンブラ50のロック強度を補強する第2ロックピース63との2種類を錠前41に設けた。このため、キー未挿入時だけでなく、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれるまでのキー挿入過程時や、異コードのカードキーが錠前41に挿し込まれた時や、単なる板材68が錠前41に挿し込まれた時などにおいても、ピンタンブラ50のロック強度を補強することが可能となる。よって、ピンタンブラ50のロック強度補強がキー未挿入時とキー挿入過程時と不正キー挿入時とで行われることになるので、錠前41の不正操作をより生じ難いものとすることが可能となる。
【0079】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度を補強するロック機構56を錠前41に設けたので、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定するピンタンブラ係止状態をとっている際には、スライダ49はスライダケース48に対して強固に固定されたロック状態をとる。このため、例えば第三者がスライダ49を無理に動かして錠前41を不正に施解錠しようとしても、このときにスライダ49が勝手に動き出してしまう状況が生じ難くなるので、錠前41の不正施解錠操作を生じ難くすることができる。
【0080】
(2)ピンタンブラ50のロック強度を補強するロック機構56は、錠前41にカードキー42が挿し込まれていない際に作動するキー未挿入時作動ロック機構56aと、錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に作動するキー挿入時作動ロック機構56bとから成る。よって、ピンタンブラ50のロック強度は、錠前41にカードキー42が挿し込まれていない時と錠前41にカードキー42が挿し込まれてからとの両方の状況下で補強されることになるので、錠前41の不正施解錠操作を一層生じ難くすることができる。
【0081】
(3)スライダ49のキー収納穴49aにおいてロックピース57,63の先端位置が接触する当接面に、ロックピース57,63の先端一部分を収納するピース収納凹部67を形成した。このため、ロックピース57,63が上下動する際のその移動量は、カードキー42の厚さのみならずピース収納凹部67分も含めた距離となるので、錠前41にピース収納凹部67を形成した場合には、ロックピース57,63の上下動量が大きくなる。よって、ロックピース57,63がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘り係止してロックピース係止状態をとる際の掛かり代K2が大きくなるので、ピンタンブラ50をより強いロック強度で補強することができる。従って、スライダ49が非常に強いロック強度でスライダケース48に固定されることになり、錠前41の不正施解錠操作を一層生じ難くすることができる。
【0082】
(4)ロックピース57,63の径はピンタンブラ50の径よりも大きく形成されているので、部品1つ単位で見た場合、ロックピース57,63はピンタンブラ50よりも大きなロック強度を発生する。よって、このような径サイズ関係を持つロックピース57,63でピンタンブラ50のロック強度を補強するので、強いロック力でピンタンブラ50が補強されることになり、スライダ49の不正施解錠操作の更なる防止に効果が高い。
【0083】
(5)カードキー42に形成されるキーコードは、カード材(板材)に孔46が形成されたか否かで表現された孔46の有無から成る孔形成パターン45を使用している。ところで、カードキー42にキーコードを形成するに際して、例えば孔46を穴(貫通していない凹み)に置き換えることも可能であるが、この種の穴には底部が存在することから、穴に充分な深さを持たせるためには、カードキー42のキー厚さが厚くなる問題がある。しかし、本例のようにカードキー42のキーコードの凹部として孔46を採用すれば、穴を用いた際に必要であった底部が不要となるので、その分だけキー厚さを薄くすることが可能となる。よって、カードキー42のキーコードとして孔46の有無パターンから成る孔形成パターン45を用いれば、カードキー42のキー厚さを薄く済ますことができる。
【0084】
(6)カードキー42は薄いカード型形状を成すものであるので、収納先が例えば財布等の収納スペースが小さな場所であっても、カードキー42をその場所に収納することができ、カードキー42の持ち運びに煩わしさを感じることがない。
【0085】
(7)キー操作フリーシステム2のエマージェンシーキーとしてカードキー42を使用するので、例えば携帯機3の内部にエマージェンシーキーとしてメカニカルキーを収納しておく必要がなくなる。このため、携帯機3からエマージェンシーキーを省略することが可能となるので、携帯機3をそのメカニカルキーの省略分だけ小型化することができる。
【0086】
(8)カードキー42を錠前41に挿し込んだ際には、キー挿入時作動ロック機構56bが利く状態となるので、ケース側収納穴51とスライダ側収納穴53とが好適に向き合う状態にカードキー42が位置決めされる。このため、正規カードキー42を挿入したにもかかわらず、ピンタンブラ50,50…が穴に引っ掛かってロックが解除されないような状況が生じ難くなり、キー操作のやり直しなどの手間を省くことができる。
【0087】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ ロックピース57,63のスライダ側ピース61は、1部品であることに限定されず、例えば図15に示すように複数部品でもよい。この場合、スライダ側ピース61は、同ピース61の本体部分に相当する柱形状を成した本体部分71と、この本体部分71とは別部品でしかも挿入キーとの接触箇所となる先端ピース72とから成る。先端ピース72は、カードキー42を錠前41に挿し込む際にカードキー42のスムーズな挿入を手助けすべく働き、例えば球形状や円柱形状を成している。よって、スライダ側ピース61が先端に先端ピース72を持つ形状の場合には、カードキー42を錠前41にスムーズに挿入することができ、カード挿入時において余計なストレスを感じさせずに済む。なお、先端ピース72がピース部材に相当する。
【0088】
・ ロック機構56は、キー未挿入時作動ロック機構56aとキー挿入時作動ロック機構56bとの2種類を持つ必要は必ずしもなく、少なくともどちらか一方を持っていればよい。
【0089】
・ ロックピース57,63のピース径は、必ずしもピンタンブラ50のピン径よりも大きい必要はなく、その径サイズは自由に設定してよい。また、ロックピース57,63のピース形状は、必ずしも直方体形状に限らず、自由に変更可能である。
【0090】
・ ロック機構56の配置位置は、必ずしもカードキー42の先端寄りの位置に限定されず、例えばカードキー42の中央寄りの位置など、他の配置位置を採用してもよい。
・ 機械操作式ドアロックシステム40のメカニカルキーは、その形状がクレジットカードのような極めて薄い板形状を成したカードキー42に限定されず、例えばメモリーカードのような若干厚みのあるサイズが小さめの平板形状を成すものでもよい。この場合、例えば携帯電話のメモリーカードのスロットに、カードキー42を収納することができる。また、機械操作式ドアロックシステム40のメカニカルキーは、キー本体がカード形状を成すものに限定されず、例えば若干量の厚みを持ったキー形状をなしていてもよい。
【0091】
・ カードキー42にキーコードとして形成される凹部は、板材を貫通した孔46に限定されず、例えば板材を貫通しない穴でもよい。
・ 錠前41は、カードキー42を介して人力によりスライダ49をスライド移動する機械式に限らず、例えばピンタンブラ群が全てピンタンブラ非係止状態になったことをセンサで検出した際にモータ等によりスライドを自動でスライド移動する電気式でもよい。
【0092】
・ 錠前41は、錠前41を操作する時に動く可動部材(スライダ49)が直線方向に動くスライド式に限定されず、例えばキーを錠前41に挿し込んでこれを回すことにより施解錠操作を行う回転式を用いてもよい。
【0093】
・ ピンタンブラ群やロックピース群を付勢する付勢部材は、必ずしもスプリングに限定されず、例えばゴム材を使用してもよい。
・ ピンタンブラ群は、全てが同一方向に移動する向きに配置されることに限定されない。例えば、カードキー42の周縁にキーコードの一部として溝を切り欠き形成し、この溝に嵌り込むピンタンブラを、孔に嵌り込むピンタンブラに対して直交向きに配置し、錠前41にカードキー42が挿し込まれた際には、カードキー42の孔と周縁の溝とでキー照合を行ってもよい。
【0094】
・ リレー32〜34のオン方式は、電源ECU28が管理してオンオフを切り換える電気式に限らず、例えば実際のキー操作(操作アクション)に伴ってリレーのオンオフ状態が切り換えられる機械式でもよい。
【0095】
・ 錠前41の錠構造は、2つのピン部材から成るピンタンブラ式に限らず、例えばタンブラ部材が板形状を成すディスクタンブラ式でもよい。
・ ICカードキー42にトランスポンダを埋め込んで、ICカードキー42でイモビライザー照合が可能となるようにしてもよい。
【0096】
・ 電子キーシステムは、正規の携帯機3を所持していればドアロック施解錠やエンジン始動停止が自動で許可又は実行されるキー操作フリーシステム2に限定されない。例えば、電子キーに各種操作ボタンを形成し、このボタンが押されると、その操作要求コマンドとキーコードとが無線で車両1に発信されるワイヤレスキーシステムでもよい。
【0097】
・ 車両1のエンジン始動停止系は、必ずしもワンプッシュエンジンスタートシステム24に限定されず、メカニカルキーをエンジン始動停止用キーシリンダに挿し込んで、これを回すことにより行う機械操作式エンジン始動停止システムでもよい。
【0098】
・ カードキー42を用いた機械操作式キーシステムは、必ずしもスマートエントリーシステム4の非常用として使用されることに限らず、例えばワンプッシュエンジンスタートシステム24の非常用として使用してもよい。要は本例のカードキー42を用いた機械操作式キーシステムは、スマートエントリーシステム4及びワンプッシュエンジンスタートシステム24の少なくともどちらかに採用されていればよい。
【0099】
・ カードキー42を用いた本例の機械操作式ドアロックシステム40は、必ずしも車両1に搭載されることに限らず、例えば住宅の扉などの種々のものに搭載してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0100】
(1)請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記錠前は、前記錠前は、当該錠前の可動部材に移動可能な状態で取り付けられた第1係止ピンと、当該錠前の固定側である支持部材に移動可能な状態で取り付けられた第2係止ピンとの2者から成るピンタンブラが、前記コード凹凸の凹部及び凸部の位置に対応して複数形成されたピンタンブラ式であり、自身のキー穴に前記コード凹凸キーが挿し込まれた際、付勢部材の付勢力によって押され状態にある前記ピンタンブラの位置状態を前記コード凹凸で切り換えて、各々の前記ピンタンブラが前記係止をとるか否かを見ることを前記キー照合として行い、前記ピンタンブラの全てにおいて2者ピン間の境界が前記可動部材及び前記支持部材の境界に一致して前記キー照合が成立すれば、前記可動部材が前記支持部材に対して相対移動可能となって。コード凹凸キーによるキー操作が可能となる。この構成によれば、錠前にピンタンブラ式を用いたので、例えばディスクタンブラ等に比べて錠構造を簡素なものとすることが可能となる。
【0101】
(2)請求項1〜5及び前記技術的思想(1)のいずれかにおいて、
前記コード凹凸キーに形成された前記コード凹凸は、前記キー本体部に規則性を持って貫設された孔の形成パターンであり、前記コード凹凸キーによる前記キー照合は、この孔形成パターンが正規パターンであるか否かを判定する孔形成パターン判定式である。この構成によれば、コード凹凸キーにはキー固有のキーコードとして孔の有無から成る孔形成パターンが形成され、この孔形成パターンを錠前のタンブラ部材と照らし合わせることによりキー照合が実施される。ところで、コード凹凸キーにキーコードを形成するに際しては、例えば孔ではなく孔有りの凹部によりキーコードを形成することも可能であるが、この場合は凹部が持つ底部の分だけキー厚さが必要になり、凹部にある程度の深みを持たせようとすると、コード凹凸キーのキー厚さが相対的に厚くなる。しかし、本構成のようにキーコードを孔形成パターンとした場合には、キーコードの凹み箇所を貫通形状とすることが可能となるので、凹部を用いた際に必要となる底部の厚さを考えずに済み、凹部を使用した場合に比べてキーの薄型化を図ることが可能となる。
【0102】
(3)請求項1〜5及び前記技術的思想(1),(2)のいずれかにおいて、
前記コード凹凸キーは、自身の本体形状がカード型を成すカードキーである。この構成によれば、コード凹凸キーがカード型キーであるので、収納先が小さなスペースであってもその場所に収納することが可能となり、キーの持ち運びに煩わしさが生じ難くなる。
【0103】
(4)請求項1〜5及び前記技術的思想(1)〜(3)のいずれかにおいて、
前記コード凹凸キーに形成された前記コード凹凸の凹部は、前記キー本体部の厚さ方向に凹設された形状をとる。この場合、錠前のタンブラ部材を全て同じ向きに配置することが可能となるので、錠前の構造を簡素なものとすることが可能となる。
【0104】
(5)請求項1〜4及び前記技術的思想(1)〜(4)のいずれかにおいて、
電子キーからキー固有のキーコードを無線通信により発信して、その時のキー照合成立を条件に装置動作を許可又は実行する電子キーシステムを備えつつ、実際のキー操作を伴う機械式キー操作によっても前記装置動作が実行可能な装置に搭載され、前記コード凹凸キーの前記コード凹凸を前記機械式操作時のキーコードとして設定することにより、前記コード凹凸キーが前記電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用されている。この構成によれば、コード凹凸キーを装置のエマージェンシーキーとして使用しているので、装置の電子キーにこの種のエマージェンシーキーを設ける必要がなくなり、電子キーをそのキー省略分だけ小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】一実施形態のキー操作フリーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】機械操作式ドアロックシステムの錠前及びカードキーの概略を示す斜視図。
【図3】カードキーの概略構造を示す平面図。
【図4】カードキーが挿し込まれていない状態の錠前の断面図。
【図5】正規のカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図6】カードキーで錠前を解錠操作した際の錠前の断面図。
【図7】カードキーで錠前を施錠操作した際の錠前の断面図。
【図8】錠前へのカードキー挿込過程を第1ロックピース側から見た時の断面図。
【図9】錠前へのカードキー挿込過程を第2ロックピース側から見た時の断面図。
【図10】カードキーが挿し込まれていない状態の錠前の断面図。
【図11】カードキーが挿し込まれている過程時の錠前の断面図。
【図12】カードキーが完全に挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図13】異コードのカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図14】単なる板材が挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図15】別例におけるピンタンブラの具体例を示す模式図。
【図16】従来におけるカード型キーシステムの構成例を示す平面図。
【図17】カードキーが挿し込まれていない状態の錠前の断面図。
【図18】正規のカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図19】異コードのカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【符号の説明】
【0106】
1…車両、2…電子キーシステムとしてのキー操作フリーシステム、3…電子キーとしての携帯機、41…錠前(錠)42…コード凹凸キーとしてのカードキー、43…キー穴、44…キー本体部、45…コード凹凸としての孔形成パターン、46…凹部としての孔、47…凸部としての孔無し部、48…支持部材としてのスライダケース、49…可動部材としてのスライダ、50(50a,50b)…タンブラ部材としてのピンタンブラ、55…コード用付勢部材としてのタンブラスプリング、56…ロック機構、56a…キー未挿入時作動ロック機構、56b…キー挿入時作動ロック機構、57,63…ロックピース、59…第2ピースとしてのプランジャ側ピース、61…第1ピースとしてのスライダ側ピース、62…ロック用付勢部材としてのロックピース用スプリング、67…収納部としてのピース収納凹部、72…ピース部材としての先端ピース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーコード用の複数の凹凸が形成されたコード凹凸キーをキーとして用い、そのコード凹凸の正否を見ることでキー照合を行うコード凹凸照合式キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他者(第三者)による物品や扉等の勝手な使用を防止する器具として種々のキーシステムが使用されている。この種のキーシステムとしては、柄の付いた長細いキープレートにキーコードが刻み込まれた柄付き型キーをキーとして用い、このキーを錠前のシリンダに挿し込んで回すことにより施解錠を行う柄付きキー型キーシステムが一般的に広く使用されている。柄付きキー型キーシステムにおいては、例えばシリンダがディスクタンブラ式の場合、シリンダの内部にスプリングの付いた複数のディスクタンブラ(小鉄片)で柄付き型キーのキープレートに刻まれたキーコードを読み取り、キープレートの鍵形状がディスクタンブラの鍵形状と一致すれば、キーによるシリンダの回転操作が許容されて、錠前の施錠や解錠が可能となる。
【0003】
また、他の種類のキーシステムとしては、例えばキー形状がカード型を成すカードキーをキーとして使用するカード型キーシステムといものも開発されている。カード型キーシステムの一例は、例えば特許文献1や特許文献2等に開示されている。図16にカード型キーシステム81を示すと、カード型キーシステム81のキーであるカードキー82には、キーコードとして複数の孔群から成るコード孔83が形成されている。このコード孔83は、孔84の有る箇所と孔84の無い孔無し部85の箇所とが規則性を持って配列されるとともに、この孔有無の形成パターンがキーコードとして機能する。
【0004】
一方、図17に示すように、カード型キーシステム81の固定側部品である錠前86には、合い鍵以外では錠が解錠されないように働く部品として複数のピンタンブラ87が設けられている。これらピンタンブラ87は、錠前86にカードキー82を挿し込んでキー操作を行う時の可動側である可動部品88に収納されたロックピン89と、錠前86の固定側として可動部品88を移動可能に支持する支持部品90に収納されたプランジャピン91とを持ち、プランジャピン91がタンブラスプリング92によって常時付勢された取り付け状態をとっている。また、ピンタンブラ87には、カードキー82が錠前86に挿し込まれていない時にプランジャピン91が可動部品88及び支持部品90の両者に亘って引っ掛かった状態をとる第1ピンタンブラ87aと、カードキー82が錠前86に挿し込まれていない時にロックピン89及びプランジャピン91の境界が可動部品88及び支持部品90の境界に一致する第2ピンタンブラ87bとがある。
【0005】
錠前86にカードキー82が挿し込まれた場合、このカードキー82が正規キーであれば、図18に示すように、全てのピンタンブラ87(第1ピンタンブラ87a、第2ピンタンブラ87b)においてロックピン89とプランジャピン91との境界が、可動部品88と支持部品90との境界に一致する。これにより、可動部品88はピンタンブラ87を介して支持部品90に係止された状態をとらなくなり、支持部品90に対する移動が許容された状態となる。よって、カードキー82を錠前86に挿し込んで可動部品88を動かす操作が許可され、カードキー82による錠前86の施解錠操作が可能となる。
【0006】
一方、錠前86に挿し込まれたカードキー82が不正キーの場合、図19に示すように、第1ピンタンブラ87aにカードキー82の孔84が位置した際には、第1ピンタンブラ87aがタンブラスプリング92に押された状態を維持して、プランジャピン91が可動部品88及び支持部品90の両者に亘り引っ掛かる。また、このとき、第2ピンタンブラ87bにカードキー82の孔無し部85が位置した際には、第2ピンタンブラ87bがカードキー82の孔無し部85によってタンブラスプリング92の付勢力に抗して持ち上げられ、ロックピン89が可動部品88及び支持部品90の両者に引っ掛かる状態をとる。よって、可動部品88はこれらピンタンブラ87を介して支持部品90に係止された状態をとることになり、支持部品90に対する移動が禁止される。このため、錠前86に挿し込んだカードキー82が不正キーの時は可動部品88を動かす操作が不許可となるので、不正キーでは錠前86の施解錠操作が行えないことになる。
【特許文献1】実用新案登録第3090369号公報
【特許文献2】特開2004−76375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種のピンタンブラ87は、カードキー82が錠前86に抜き挿しされる際にカードキー82に押されて、カード厚さの分だけ上下動するものである。このため、カードキー82はそれほど厚いものではないので、ピンタンブラ87の上下動距離は相対的に長いものではなく、ピンタンブラ87が可動部品88や支持部品90に係止する際のその掛かり代Kというのはさほど大きくとれない現状がある。このように、ピンタンブラ87の掛かり代Kが少ない状況下においては、仮にピンタンブラ87で可動部品88の動きをロックしていても、第三者が不正キー操作を目的として可動部品88に想定し得ない過度の力を加えた場合、その外力がピンタンブラ87のロック強度を超える状況になると、可動部品88が不正に動いてしまい、これが錠前86の不正解除に繋がる問題があった。
【0008】
例えば、錠前86にカードキー82が挿し込まれていないキー未挿入時に、錠前86のキー穴に金属部品等を引っ掛けてこれを無理に操作した場合、この時の外力がピンタンブラ87(第1ピンタンブラ87a)のロック強度を超えてしまうと、可動部品88が不正に動いて、錠前86が不正に解除されてしまう状況になる。また、例えば錠前86に単なる板材を挿し込んだ不正キー挿入時の場合もこれが同様に言え、不正キー挿入時はキー未挿入時の時にアンロック状態であったピンタンブラ87(第2ピンタンブラ87b)が今度は逆に可動部品88を支持部品90に固定するロック状態をとることになるが、この時にロック状態となるピンタンブラ87も掛かり代Kは少ない状況であるので、板材が過度の力で操作されてこの時の外力がピンタンブラ87のロック強度を超えると、可動部品88が不正に動いて錠前86が不正に解除される状況になる。
【0009】
本発明の目的は、錠前を不正に施解錠操作する不正キー操作を生じ難くすることができるコード凹凸照合式キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点を解決するために、本発明では、キー本体部の少なくとも一平面方向に沿って並ぶ凹凸群をキーコード用のコード凹凸として持つコード凹凸キーがキーとして使用され、錠の可動部材を当該錠の固定側である支持部材に係止し得るタンブラ部材が前記コード凹凸の凹部及び凸部の位置に対応して複数形成された錠前に前記コード凹凸キーが挿し込まれた際、コード用付勢部材の付勢力によって押され状態にある前記タンブラ部材の位置状態を前記コード凹凸で切り換えて、各々の前記タンブラ部材が前記係止をとるか否かを見ることをキー照合として行うコード凹凸照合式キーシステムにおいて、前記可動部材に移動可能な状態で収納された第1ピースと前記支持部材に移動可能な状態で収納された第2ピースとの2者から成り、しかもロック用付勢部材によって付勢状態にあるピンタンブラ式のロックピースを持ち、前記2ピースの一方が前記可動部材及び前記支持部材の両方に係止する係止状態をとると前記可動部材の動きを規制し、前記2ピースの境目が前記可動部材及び支持部材の境目に一致する非係止状態をとると前記可動部材の動きを許容し、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれる前と、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれた時との2状態のうち、少なくとも一方の状態下において前記係止状態をとることにより、前記タンブラ部材のロック強度を補強するロック機構を備えたことを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれていないキー未挿入時には、複数のタンブラ部材のうち所定のタンブラ部材が前記支持部材及び固定部材の両者に亘り係止する係止状態をとることにより、可動部材が支持部材に対して動くことが制限されて錠前の施解錠操作が禁止される。一方、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれたキー挿入時には、コード凹凸キーのコード凹凸によって各々対応するタンブラ部材の位置が切り換えられてキー照合が行われる。錠前に挿し込まれたコード凹凸キーが正規キーの場合、タンブラ部材が全て非係止状態をとり、可動部材の動きが許容されて錠前の施解錠操作が許容される。一方、キーコードが異コードのコード凹凸キーが錠前に挿し込まれた際には、コードの合っていないタンブラ部材が前記可動部材及び支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとり、可動部材の動きが制限されて錠前の施解錠操作が禁止される。
【0012】
また、本構成においては、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれていないキー未挿入時と、コード凹凸キーが錠前に挿し込まれたキー挿入時との少なくとも一方の状態下において、タンブラ部材による可動部材のロック強度を補強するロック機構を設けた。これにより、可動部材を支持部材に固定するに際しては、可動部材はタンブラ部材だけでなくロック機構によっても支持部材に係止される係止状態をとるので、可動部材を支持部材により強度に固定することが可能となる。よって、錠前は施解錠操作が不許可の時に可動部材が非常に強く支持部材に固定されることになるので、錠前の不正操作を生じ難くすることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記ロック機構は、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれていない時に、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとることにより、キー未挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー未挿入時作動ロック機構と、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれてから当該キーが完全な挿入状態となるまでの間、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとって、キー挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー挿入時作動ロック機構とを備えたことを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、錠前にコード凹凸キーを挿し込んでいないキー未挿入時はキー未挿入時作動ロック機構が利いてタンブラ部材のロック強度が補強され、錠前にコード凹凸キーを挿し込んだキー挿入時はキー挿入時作動ロック機構が利いてタンブラ部材のロック強度が補強される。よって、キー未挿入時とキー挿入時との両方の状態でタンブラ部材のロック強度が補強されるので、錠前の不正操作を一層生じ難くすることが可能となる。
【0015】
本発明では、前記可動部材又は前記支持部材において前記ロックピースの先端位置には、当該ロックピースの先端を収納可能な収納部が貫設されていることを要旨とする。
この構成によれば、可動部材又は支持部材においてロックピースの先端位置に、ロックピースの先端を収納可能な収納部を形成したので、コード凹凸キーを錠前に挿し込んだりする際や、或いはコード凹凸キーを錠前から抜いたりする際に、ロックピースの移動量を大きくとることが可能となる。このため、ロックピースが可動部材を支持部材に固定する際の掛かり代が大きくなるので、ロックピースによる支持部材のロック強度そのものを高いものとすることが可能となる。よって、錠前は施解錠操作が不許可の時に可動部材が非常に強く支持部材に固定されることになるので、錠前の不正操作を一層生じ難くすることが可能となる。
【0016】
本発明では、前記ロックピースの先端には、前記コード凹凸キーを前記錠前のキー穴から抜き挿しする際にこれを補助するピース部材が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、カード凹凸キーを錠前に対して抜き挿しする際には、ロックピースの先端にあるピース部材が例えば転がるなどしてキーの抜き挿しを補助するので、キー抜き挿しをスムーズに行うことが可能となる。よって、錠前に対してコード凹凸キーを抜き挿しする際にストレスを感じ難くすることが可能となる。
【0017】
本発明では、前記ロックピースのピース径が前記タンブラ部材のピン径よりも大きく形成されていることを要旨とする。
この構成によれば、ロックピースのピース径をタンブラ部材のピン径よりも大きく形成したので、強い固定強度で可動部材を支持部材に固定するロックピースによって、タンブラ部材のロック強度を補強することが可能となる。このため、タンブラ部材が可動部材を支持部材にロックする係止状態をとる際、可動部材が支持部材により強固な係止状態をとることになるので、錠前の不正操作を一層生じ難くすることが可能となる。
【0018】
本発明では、車両キーである電子キーからキー固有のキーコードを無線通信により発信して、その時のキー照合成立を条件に車両動作を許可又は実行する電子キーシステムを備えつつ、実際のキー操作を伴う機械式キー操作によっても前記車両動作が実行可能な車両に搭載され、前記コード凹凸キーの前記コード凹凸を前記機械式キー操作時のキーコードとして設定することにより、前記コード凹凸キーが前記電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用されていることを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、コード凹凸キーを電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用しているので、電子キーにこの種のエマージェンシーキーを設ける必要がなくなり、電子キーをそのキー省略分だけ小型化することが可能となる。また、コード凹凸キーは例えばカードキーに代表されるように持ち運び時において財布等に収納される使用形態をとるので、コード凹凸キーをエマージェンシーキーとして使用したとしても、エマージェンシーキーの持ち運びに際して以前通り不便さを感じることもない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、錠前を不正に施解錠操作する不正キー操作を生じ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化したコード凹凸照合式キーシステムの一実施形態を図1〜図14に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、実際に車両キーを操作しなくてもドアロック施解錠やエンジン始動停止等の車両動作を行うことが可能なキー操作フリーシステム2が搭載されている。キー操作フリーシステム2は、キー固有のIDコード(キーコード)を無線通信で発信可能な携帯機3が車両キーとして使用されている。キー操作フリーシステム2は、車両1からIDコード返信要求としてリクエスト信号Srqを発信させ、このリクエスト信号Srqを携帯機3が受信すると、それに応答する形で携帯機3が自身のIDコードを乗せたID信号Sidを狭域通信により車両1に返信し、携帯機3のIDコードが車両1のIDコードと一致すると、ドアロック施解錠やエンジン始動停止が許可又は実行されるシステムである。なお、キー操作フリーシステム2が電子キーシステムに相当し、携帯機3が電子キーに相当する。
【0022】
キー操作フリーシステム2には、ドアロック施解錠操作の際に実際の車両キー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステム4がある。このスマートエントリーシステム4を以下に説明すると、車両1には、携帯機3との間で狭域通信を行う際にID照合を行う照合ECU5が設けられている。照合ECU5には、車両1の各ドアに埋設されて車外にLF対の信号を発信可能な車外LF発信機6と、車内床下等に埋設されて車内にLF帯の信号を発信可能な車内LF発信機7と、車内バックミラー等に埋設されてRF帯の信号を受信可能なRF受信機8とが接続されている。これらLF発信機6,7は、リクエスト信号Srqを周囲に発信可能であって、車外LF発信機6が車両周囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(車外通信エリア)を形成し、車内LF発信機7が車内全域にリクエスト信号Srqの通信エリア(車内通信エリア)を形成する。
【0023】
照合ECU5には、例えば車外ドアハンドルノブに埋設されたタッチセンサ9が接続されている。タッチセンサ9は、操作者が施錠状態のドアロックを解除する時に車外ドアハンドルノブ10(図2参照)をタッチする操作を検出する。照合ECU5には、例えば車外ドアハンドルノブ10に設けられたロックボタン11が接続されている。ロックボタン11は、操作者が解錠状態のドアロックを施錠する時に押し操作される。照合ECU5には、ドアロックの施解錠を制御するドアECU12が車内LAN13を介して接続されている。ドアECU12は、照合ECU5から指令を基にドアロックモータ14を駆動制御することでドアロックを施錠状態又は解錠状態にする。
【0024】
一方、携帯機3には、車両1との間でキー操作フリーシステム2に準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部15が設けられている。通信制御部15には、外部で発信されたLF帯の信号を受信可能なLF受信部16と、通信制御部15の指令に従いRF帯の信号を発信可能なRF発信部17とが接続されている。LF受信部16は、自身のLF受信アンテナ18で受信したLF帯の信号をLF受信回路19で復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして通信制御部15に出力する。また、RF発信部17は、通信制御部15から得た通信データをRF発信回路20で変調し、携帯機3が持つ固有のIDコードを乗せたRF帯のID信号SidをRF発信アンテナ21から発信可能である。
【0025】
車両1が駐車状態(エンジン停止及びドアロック施錠状態)の際、照合ECU5は、車外LF発信機6からLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させ、車両周辺に車外通信エリアを形成する。携帯機3がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号SrqをLF受信部16で受信すると、携帯機3はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ22に登録されたIDコードを載せたID信号SidをRF発信部17からRF帯の信号で返信する。照合ECU5は、RF受信機8でID信号Sidを受信すると、自身のメモリ23に登録されたIDコードと携帯機3のIDコードとを照らし合わせてID照合(車外照合)を行う。照合ECU5は、車外照合が成立した事を認識すると、メモリ23に車外照合フラグを一定時間の間において立てて、待機状態のタッチセンサ9をその期間の間において起動させる。ドアECU12は、車外ドアハンドルノブがタッチ操作された事を起動中のタッチセンサ9が検出すると、ドアロックモータ14を一方側に回転させて、施錠状態のドアロックを解錠する。
【0026】
一方、車両1が停止状態(エンジン停止及びドアロック解錠状態)の際、照合ECU5は、ロックボタン11が押されたことを検出すると、車外LF発信機6からリクエスト信号Srqを発信させる。照合ECU5は、このリクエスト信号Srqを受けて携帯機3が返信してきたID信号Sidにおいて車外照合が成立した事を認識すると、ドアECU12にドアロック施錠要求を出力する。ドアロック施錠要求を受け付けたドアECU12は、ドアロックモータ14を他方側に回転させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
【0027】
また、キー操作フリーシステム2には、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステム24がある。このワンプッシュエンジンスタートシステム24を以下に説明すると、車両1には、エンジン25の点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU26と、セレクトレバーの操作を基に自動変速機を制御するシフトECU27と、車載電装品の電源管理を行う電源ECU28とが設けられている。これらECU26〜28は、車内LAN13を通じて照合ECU5等の各種ECUに接続されている。
【0028】
車両1の運転席には、車両1の電源状態(電源ポジション)を切り換える際の操作系としてエンジンスイッチ29が設けられている。エンジンスイッチ29は、操作箇所であるスイッチ操作部29aを押し込み操作する押圧操作式であって、ハーネスを介して電源ECU28に接続されている。このエンジンスイッチ29は、エンジン25を始動状態又は停止状態に切り換えるエンジン始動停止操作機能と、車両1の電源状態をオフ状態からACCオン状態やIGオン状態に切り換える電源遷移操作機能とを持っている。
【0029】
また、電源ECU28には、車両1の速度を検出する車速センサ30と、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ31とが接続されている。電源ECU28は、車速センサ30から取得する車速情報を基に今現在の車両1の速度を認識しつつ、ブレーキセンサ31から取得するペダル踏込量情報を基にブレーキペダルの踏み込み有無を判定可能である。また、電源ECU28には、各種車載アクセサリに繋がるACCリレー32と、エンジンECU26に繋がるIGリレー33と、エンジン25のスタータモータに繋がるスタータリレー34とが接続されている。
【0030】
照合ECU5は、車外照合が成立してドアロックが解錠された後、例えばカーテシスイッチ35でドアが開けられて運転者が乗車した事を認識すると、車内LF発信機7からリクエスト信号Srqを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU5は、携帯機3がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号SidをRF受信機8で受信すると、自身に登録されたIDコードと携帯機3のIDコードとを照らし合わせてID照合(車内照合)を行う。照合ECU5は、この車内照合が成立すると、メモリ23に車内照合成立フラグを立てて車内照合成立を認識する。
【0031】
電源ECU28は、運転者が車両1の電源状態を切り換えるべくエンジンスイッチ29を押圧操作した事を検出すると、まずは照合ECU5に車内照合成立の有無を確認する。このとき、電源ECU28は、照合ECU5から車内照合が成立している旨の通知を受ければ車内照合が成立済みである事を認識するが、逆に照合ECU5から車内照合が不成立の旨の通知を受け付けると、照合ECU5に車内照合を再実行させて車内照合の正否を再確認する。電源ECU28は、照合ECU5に車内照合を再実行させても、照合ECU5から車内照合が成立した旨の通知を受け付けないと、車内照合は不成立であると認識する。
【0032】
電源ECU28は、エンジン25が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ29が押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件として、停止状態のエンジン25を始動すべく3つのリレー32〜34をオンしつつ、エンジンECU26に起動信号を出力する。起動信号を受け付けたエンジンECU26は、車内照合結果の確認と、照合ECU5が自身とペアを成すものかを確認するペアリングとを暗号化通信により行う。これら両条件の確認を済ませたエンジンECU26は、点火制御及び燃料噴射制御を開始してエンジン25を始動する。一方、電源ECU28は、エンジン25が稼働中の際にエンジンスイッチ29が押圧操作された事を検出すると、車両1が停止(車速「0」)していることを条件に3つのリレー32〜34を全てオフ状態にして、エンジン25を停止状態にする。
【0033】
また、電源ECU28は、エンジン25が停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作されずにエンジンスイッチ29のみが押圧操作された事を検出すると、車内照合成立を条件としつつ、しかもシフトレバーがPレンジ位置にあれば、エンジンスイッチ29が押される度に、操作一回りの間において電源状態をオフ状態→ACCオン状態→IGオン状態の順に切り換える。例えば、エンジン25が停止している時にエンジンスイッチ29のみが押圧操作されると、車両1の電源状態がオフ状態からACC状態に切り換わり、この状態から更にエンジンスイッチ29のみがもう一度押圧操作されると、車両1の電源状態がIGオン状態となり、この状態からエンジンスイッチ29のみが更にもう一度押圧操作されると、車両1の電源状態がオフ状態に戻る動作をとる。
【0034】
また、車両1には、携帯機3に内蔵した通信タグ部品を用いて無線ID照合を行うイモビライザーシステム36が設けられている。イモビライザーシステム36を搭載した車両1には、イモビライザーシステム36のコントロールユニットとしてイモビライザーECU37が設けられている。イモビライザーECU37は、例えばCPUやメモリ等から成り、車内LAN13に接続されている。イモビライザーECU37には、イモビライザーシステム36の車両側アンテナとしてトランスポンダキーコイル38が接続されている。このトランスポンダキーコイル38は、エンジンスイッチ29の筐体内においてスイッチ操作部29aを囲むようにリング状に巻回された取り付け状態をとっている。一方、携帯機3には、通信タグ部品として固有のコード番号を発信可能なトランスポンダ39が内蔵されている。
【0035】
イモビライザーシステム36は、携帯機3をトランスポンダキーコイル38にかざすように近づけることにより、トランスポンダキーコイル38から発信される駆動電波Sivでトランスポンダ39を起動させ、起動したトランスポンダ39が返信してきたトランスポンダコード信号Str内のコード番号を車両1側で照らし合わせてID照合(イモビライザー照合)を行う。エンジンスイッチ29を押圧操作してエンジン25を始動する際、エンジン始動の前段階の認証動作として車内照合成立有無を確認するが、これはキー操作フリーシステム2に準じたID照合成立(車内照合成立)を条件とすることに限らず、キー操作フリーシステム2とイモビライザーシステム36とのどちらかのID照合が成立していれば、エンジン始動が許可される。
【0036】
図2に示すように、ドアロック施解錠操作の際に実際のメカニカルキーによるキー操作が必要となる機械操作式ドアロックシステム40が設けられている。このように、車両1に機械操作式ドアロックシステム40を設けるのは、キー操作フリーシステム2は電気式であることから、例えばキー操作フリーシステム2に電気故障が生じたり、或いは携帯機3が電池切れになったりすると、この状況下ではキー操作フリーシステム2によってドアロック施解錠を行うことができないので、このような状況下に陥ったとしても、ドアロック施解錠操作を可能とする理由からである。
【0037】
この機械操作式ドアロックシステム40を以下に説明すると、機械操作式ドアロックシステム40は、固定を行う側の施解錠用機構として車両ドア(運転席ドア)1aの外壁に取り付けられた錠前41と、この錠前41を実際の機械式キー操作を伴って開閉(施解錠)する際の道具であるメカニカル式のキー42とから成る。本例の機械操作式ドアロックシステム40は、キー本体形状がカード型(平板形状)を成しているキー(以降、カードキー42と記す)を用いたカードキー型ドアロックシステムである。この種のカードキー型ドアロックシステムは、正規キーのカードキー42を錠前41のキー穴43に挿し込み、ドアロックが解錠状態の際にこのカードキー42を初期位置から一方向(例えば上方向)にスライド移動するとドアロックが施錠状態となり、ドアロックが施錠状態の際にこのカードキー42を初期位置から他方向(例えば下方向)にスライド移動するとドアロックが解錠状態となる。なお、カードキー42がコード凹凸キーに相当する。
【0038】
また、本例の機械操作式ドアロックシステム40はスマートエントリーシステム4の故障又は携帯機3の電池切れ等の緊急時に使用されるものであるので、この機械操作式ドアロックシステム40用のキーである本例のカードキー42は、スマートエントリーシステム4がトラブル下に置かれた時の緊急時に用いるエマージェンシーキーとして使用される。カードキー42は、クレジットカード等の一般的なカード部材と同様の平板形状及びサイズをとっている。このため、カードキー42は、使用しない際においては種々のクレジットカード等と同様に財布に収納される使用形態をとる。
【0039】
図3に示すように、カードキー42のケース部分を成すキー本体部44には、機械操作式ドアロックシステム40のメカニカルキー用のキーコードとして、複数の孔有無群(凹凸群)から成る孔形成パターン45が形成されている。孔形成パターン45は、キー本体部44においてその幅方向(図3の矢印A方向)と長さ方向(図3の矢印B方向)とに沿って例えば連続、1つおき、2つおき等の規則性を持って貫設された複数の孔46と、これら孔46が形成されていない孔無し部47とから成るとともに、キー本体部44の平面方向に亘り並んで配置されている。即ち、カードキー42には、平板形状を成すキー本体部44において孔46の有る位置と孔46の無い位置とから成る孔46の有無群がメカニカルキーのキーコードとして形成されている。孔形成パターン45は、孔46が平断面円形状に形成されるとともに、キー本体部44の先端寄りの位置に配置されている。なお、孔形成パターン45がコード凹凸に相当し、孔46が凹部に相当し、孔無し部47が凸部に相当する。
【0040】
図4〜図9に示すように、錠前41には、この錠前41の固定側としてスライダケース48が設けられている。スライダケース48は、錠前41の本体部分を形成するものであって、例えば板厚が薄い直方体形状を成している。スライダケース48は、その側壁にキー穴43(図2参照)を有するとともに、車両ドア1aの外壁に取着される取り付け状態をとっている。スライダケース48の収容部48aには、錠前41の可動側としてスライダ49がスライダケース48に対してスライド移動可能(直線移動可能)な状態で収納されている。スライダ49は、板材から成るとともに、スライダケース48の収容部48a内においてスライダケース48の長手方向(高さ方向)に沿って移動可能となっている。なお、スライダケース48が支持部材に相当し、スライダ49が可動部材に相当する。
【0041】
スライダケース48とスライダ49との間には、車両ドア1aの壁面側の接触面において、合い鍵以外の時はスライダ49をスライダケース48に固定して施解錠操作を不許可とするピンタンブラ50が複数収納されている。これらピンタンブラ50,50…は、カードキー42に配列されたそれぞれの孔46及び孔無し部47に対応して設けられ、カードキー42が錠前41に挿し込まれた際に、これら孔46及び孔無し部47に一対一で向き合う配置位置をとる。ピンタンブラ50の個数は、例えばカードキー42に孔46及び孔無し部47を合計14個形成した場合、これに合わせて14個形成されている。なお、ピンタンブラ50がタンブラ部材に相当する。
【0042】
ピンタンブラ50,50…は、スライダケース48に凹設されたケース側収納穴51に移動可能な状態で収納されたピン形状を成すプランジャピン52と、スライダ49に凹設されたスライダ側収納穴53に移動可能な状態で収納されたピン形状を成すロックピン54との一対のピン部品から成り、ケース側収納穴51に収納されたタンブラスプリング55によってスライダ49側に常時付勢された取り付け状態をとっている。また、ロックピン54は、プランジャピン52よりも長い形状を成すとともに、その先端が半円形状に形成されている。なお、タンブラスプリング55がコード用付勢部材に相当する。
【0043】
また、ピンタンブラ50,50…は、ロックピン54が短めに形成された第1ピンタンブラ50aと、ロックピン54が長めに形成された第2ピンタンブラ50bとから成る。第1ピンタンブラ50aは、錠前41に正規のカードキー42が挿し込まれた際、カードキー42の孔無し部47が位置する箇所に配置されている。第1ピンタンブラ50aは、図4に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれていないときや、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔46に嵌り込んだ位置状態をとったとき、タンブラスプリング55の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとることにより、プランジャピン52が一定の掛かり代K1だけスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するピンタンブラ係止状態をとり、スライダ49のスライド移動を規制する。一方、第1ピンタンブラ50aは、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔無し部47に向き合う位置状態をとると、カードキー42の板厚(孔無し部47)によりタンブラスプリング55の付勢力に抗して掛かり代K1の量だけ上方にスライド移動する。これにより、第1ピンタンブラ50aは、プランジャピン52とロックピン54との境界(プランジャピン52の2部品の境目)がスライダケース48とスライダ49との境界(スライダ49の摺動面)に一致してピンタンブラ非係止状態となり、スライダ49のスライド移動を許容する。
【0044】
第2ピンタンブラ50bは、錠前41に正規のカードキー42が挿し込まれた際、カードキー42の孔46が位置する箇所に配置されている。第2ピンタンブラ50bは、図4に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれていないときや、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔46に嵌り込んだ位置状態をとったとき、タンブラスプリング55の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとることにより、プランジャピン52とロックピン54との境界がスライダケース48とスライダ49との境界に一致してピンタンブラ非係止状態をとり、スライダ49のスライド移動を許容する。一方、第2ピンタンブラ50bは、図5に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に孔無し部47に向き合う位置状態をとると、カードキー42の板厚(孔無し部47)によりタンブラスプリング55の付勢力に抗して押し上げられて上方にスライド移動する。これにより、第2ピンタンブラ50bは、その押し上げ量分がロックピン54の掛かり代K1となってスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するピンタンブラ係止状態となり、スライダ49のスライド移動を規制する。なお、ピンタンブラ50a,50bもタンブラ部材に相当する。
【0045】
スライダ49は、スライダ49のスライド運動をドアロックの機械的な操作力として伝達する伝達機構(図示略)を介して、車両ドア1aのドアロック箇所であるデッドボルト(図示略)に接続されている。スライダ49は、図7及び図8に示すように、錠前41に挿し込んだカードキー42でスライド移動操作が可能であって、中立位置を基準としてその両方向にスライド移動可能である。スライダ49が中立位置を基準に一方向(図6の矢印R1方向)にスライド移動されると、このスライド運動が伝達機構によってデッドボルトの引き出し動作に変換され、車両ドア1aが施錠状態となる。また、スライダ49が中立位置を基準に他方向(図7の矢印R2方向)にスライド移動されると、このスライド運動が伝達機構によってデッドボルトの引き込み動作に変換され、車両ドア1aが解錠状態となる。
【0046】
また、機械操作式ドアロックシステム40には、図9及び図10に示すように、スライダ49をスライダケース48に固定しているピンタンブラ50のそのロック強度を補強するロック機構56が設けられている。このロック機構56を以下に説明すると、ロック機構56には、カードキー42を錠前41に挿し込んでいないキー未挿入時において働くキー未挿入時作動ロック機構56aと、カードキー42を錠前41に挿し込んでから完全に奥まで挿し込まれるまでのキー挿入時において働くキー挿入時作動ロック機構56bとから成る。
【0047】
キー未挿入時作動ロック機構56aには、その係止箇所としてピン形状を成す第1ロックピース57が設けられている。第1ロックピース57は、ピンタンブラ50と基本的に同様の構造を成し、スライダケース48に形成された第1収納穴58に相対移動可能な状態で取り付けられたプランジャ側ピース59と、スライダ49に形成された第2収納穴60に相対移動可能な状態で取り付けられたスライダ側ピース61との一対のピースから成り、ロックピース用スプリング62によってスライダ49側に常時付勢された取り付け状態をとっている。第1ロックピース57は、形状が略直方体形状を成すとともに、ピンタンブラ50よりも大径に形成されている。スライダ側ピース61の先端は、錠前41に挿し込んだカードキー42がスライダ側ピース61の先端側に潜ってスライダ側ピース61を持ち上げられるように半円形状に形成されている。なお、プランジャ側ピース59が第2ピースに相当し、スライダ側ピース61が第1ピースに相当し、ロックピース用スプリング62がロック用付勢部材に相当する。
【0048】
また、キー挿入時作動ロック機構56bには、その係止箇所としてピン形状を成す第2ロックピース63が設けられている。第2ロックピース63は、第1ロックピース57と基本的に同様の構造を成し、プランジャ側ピース59と、スライダ側ピース61と、ロックピース用スプリング62とを持っている。第2ロックピース63は、プランジャ側ピース59が第1ロックピース57のそれよりも短く形成され、一方でスライダ側ピース61が第1ロックピース57のそれよりも長く形成されている。なお、第1ロックピース57及び第2ロックピース63がロックピースに相当する。
【0049】
また、図2及び図3に示すように、カードキー42には、カードキー42を錠前41に奥まで挿し込んだ際に第2ロックピース63が位置する箇所において、断面四角形状を成した貫設孔部64が形成されている。この貫設孔部64は、カードキー42を錠前41に完全に挿し込んだ際に、第2ロックピース63のスライダ側ピース61が入り込む箇所として働く。一方、カードキー42は、カードキー42を錠前41に完全に挿し込んだ際に第1ロックピース57が位置する箇所において孔が形成されておらず、この孔無し箇所はカードキー42を錠前41に完全に挿し込んだ際に第1ロックピース57を持ち上げておく板部65として働く。
【0050】
第1ロックピース57は、図10に示すように錠前41にカードキー42が挿し込まれていない際、ロックピース用スプリング62の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとる。第1ロックピース57は、スライダ側ピース61が短く設定されていることから、この状態においてはプランジャ側ピース59がスライダケース48とスライダ49との両方に亘り係止するロックピース係止状態をとり、プランジャピン52によるスライダ49の固定状態を補強する。一方、第1ロックピース57は、図11に示すように、錠前41にカードキー42が挿し込まれると、カードキー42の板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して掛かり代K2の量だけ上方にスライド移動する。これにより、第1ロックピース57は、プランジャ側ピース59とスライダ側ピース61との境目がスライダケース48とスライダ49との境界に一致してロックピース非係止状態となり、ピンタンブラ50のロック強度を補強しない補強解除状態となる。
【0051】
第2ロックピース63は、図10に示すように、錠前41にカードキー42が挿し込まれていない際、ロックピース用スプリング62の付勢力によってスライダ49に押し当てられた位置をとる。第2ロックピース63は、スライダ側ピース61が長く設定されていることから、この状態においてはプランジャ側ピース59とスライダ側ピース61との境目とスライダケース48とスライダ49との境目が一致してロックピース非係止状態をとり、ピンタンブラ50のロック強度を補強しない補強解除状態となる。一方、第2ロックピース63は、図11に示すように、錠前41にカードキー42が挿し込まれてから完全に挿し込み状態となるまでの過程において、カードキー42の板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して持ち上げられて上方にスライド移動する。これにより、第2ロックピース63は、その押し上げ量分だけスライダ側ピース61がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するロックピース係止状態となり、プランジャピン52によるスライダ49の固定状態を補強する。
【0052】
カードキー42を錠前41に完全に挿し込むと、図12に示すように、第2ロックピース63は、ロックピース用スプリング62の付勢力によってスライダ49側に移動してカードキー42の貫設孔部64に入り込み、プランジャ側ピース59とスライダ側ピース61との境目がスライダケース48とスライダ49との境目に一致してロックピース非係止状態となる。このとき、第1ロックピース57は、カードキー42の板部65によって押し上げられ状態を維持するので、ロックピース非係止状態を維持する。よって、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた際は、第1ロックピース57及び第2ロックピース63がともに補強解除状態となり、スライダ49のスライド移動が許容される。
【0053】
図4〜図9に示すように、スライダ49のキー収納穴49aの底面には、各々のピンタンブラ50の先端が当接する当接面において、ピンタンブラ50(ロックピン54)の先端を収納可能なピン収納凹部66が複数形成されている。このピン収納凹部66は、カードキー42を錠前41に挿し込んでその板厚(孔無し部47)でピンタンブラ50を押し上げる際、その押し上げ量をできる限り多くとって、ピンタンブラ50がスライダ49及びスライダケース48の両者に亘り係止する際のその掛かり代K1を多く確保するように働く。ピン収納凹部66は、錠前41にカードキー42を挿し込んだときにカードキー42の周縁がロックピン54の下側に潜り込むことを可能とすべく、ロックピン54の先端が収納状態となった際、その半円形状の一部分が外部に露出する深さに形成されている。
【0054】
また、図8〜図12に示すように、スライダ49のキー収納穴49aの底面には、第1ロックピース57及び第2ロックピース63の先端が当接する当接面において、ロックピース57,63(スライダ側ピース61)の先端を収納可能なピース収納凹部67がそれぞれ形成されている。このピース収納凹部67は、ピン収納凹部66と同様の機能を持つものであって、錠前41に挿し込んだカードキー42の板厚(板部65)でロックピース57,63を押し上げた際に、ロックピース57,63がスライダ49及びスライダケース48の両者に亘り係止する際のその掛かり代K2を多く確保するように働く。ピース収納凹部67は、ピン収納凹部66と同様に、ロックピース57,63の先端が収納状態となった際にその半円形状の一部分が外部に露出する深さに形成されている。なお、ピース収納凹部67が収納部に相当する。
【0055】
次に、本例の機械操作式ドアロックシステム40の動作を説明する。
駐車状態(エンジン停止、ドアロック施錠状態)の車両1に乗車する状況を想定した場合、例えばキー操作フリーシステム2がシステム故障したり、或いは携帯機3が電池切れになったりすると、この時はキー操作フリーシステム2でドアロックの施解錠を行うことができないので、機械操作式ドアロックシステム40を使用して車両ドア1aを解錠することになる。機械操作式ドアロックシステム40のキーであるカードキー42は財布等に収納された使用形態がとられることから、機械操作式ドアロックシステム40で車両ドア1aを解錠するに際してはカードキー42を財布等から取り出し、このカードキー42を錠前41のキー穴43に挿し込む動作をとる。カードキー42を錠前41に挿し込む際、スライダ49は中立位置をとっている。
【0056】
ここで、カードキー42が錠前41に挿し込まれていない場合、図4に示すように、第2ピンタンブラ50bはピンタンブラ非係止状態をとるものの、第1ピンタンブラ50aがピンタンブラ係止状態をとるので、スライダ49は第1ピンタンブラ50aによってスライダケース48に固定された状態をとる。よって、スライダ49はスライダケース48に対して移動することが制限されるので、例えば仮に錠前41のキー穴43に指等を引っ掛けてスライダ49をスライド移動させよう不正操作を行っても、この不正操作でスライダ49がスライド移動することがない。このため、単に錠前41のキー穴43に指等を引っ掛けてスライダ49をスライド移動させることによる錠前41の施解錠操作が不許可となる。
【0057】
また、カードキー42が錠前41に挿し込まれていない場合、図8及び図10に示すように、第1ロックピース57がロックピース用スプリング62によりスライダ49に押し付けられる位置状態をとることになるが、このピース57はスライダ側ピース61が短く設定されているので、プランジャ側ピース59がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘り掛かり代K2だけ係止する状態をとって、スライダ49をスライダケース48に固定するロック係止状態となる。一方、第2ロックピース63も図9及び図10に示すようにロックピース用スプリング62によりスライダ49に押し付けられる位置状態をとるが、このピース63はスライダ側ピース61が長めに設定されているので、プランジャ側ピース59及びスライダ側ピース61の境目がスライダケース48及びスライダ49の境目に一致して、スライダ49をスライダケース48に固定しないロック非係止状態をとる。
【0058】
このため、2つのロックピース57,63のうち第1ロックピース57がスライダ49をスライダケース48に固定する作動状態をとり、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度が第1ロックピース57によって補強される。よって、カードキー42が錠前41に挿し込まれていないキー未挿入時、スライダ49はピンタンブラ50のみならず、ピンタンブラ50よりも大径の第1ロックピース57のプランジャ側ピース59によってもスライダケース48に固定されるので、スライダ49がスライダケース48に対して強く固定された状態となる。従って、キー未挿入時にスライダ49を直接無理にスライド移動させる不正操作が行われたとしても、この時のスライダ49はスライド移動し難くなる。
【0059】
続いて、錠前41にカードキー42が挿し込まれると、図9及び図11に示すように、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれるまでのキー挿入過程において、カードキー42の周縁がロックピース57,63の先端下側に潜り込む。そして、それまでロックピース係止状態をとっていた第1ロックピース57は、図11に示すようにカードキー42に板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して反スライダ49側に押し上げられ、プランジャ側ピース59及びスライダ側ピース61の境目がスライダケース48及びスライダ49の境目に一致してロックピース非係止状態となる。一方、それまでロックピース非係止状態をとっていた第2ロックピース63も、図11に示すようにカードキー42の板厚によりロックピース用スプリング62の付勢力に抗して反スライダ49側に押し上げられ、自身のスライダ側ピース61がスライダ側ピース61がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘り係止する状態をとってロックピース係止状態となる。
【0060】
これにより、錠前41にカードキー42を挿し込んでから完全に挿し込みが完了するまでのキー挿入過程時は、キー未挿入時に作動する第1ロックピース57に代わって今度は第2ロックピース63がスライダ49をスライダケース48に固定する作動状態をとる。これにより、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度は、第1ロックピース57に代わって第2ロックピース63により補強される。よって、カードキー42を錠前41に挿し込んでから完全に挿し込み状態をとるまでのキー挿入過程時、スライダ49はピンタンブラ50のみならず、ピンタンブラ50よりも大径の第2ロックピース63のスライダ側ピース61によってスライダケース48に固定されるので、スライダ49がスライダケース48に対して強く固定された状態となる。従って、キー挿入過程時に不正キーで無理にスライダ49を無理にスライド移動させる不正操作が行われたとしても、このときのスライダ49はスライド移動し難くなる。
【0061】
カードキー42をキー穴43に挿し込んだ際、その挿し込み過程においてカードキー42の端縁がピンタンブラ50,50…の先端下側に潜り込み、ピンタンブラ50,50…がカードキー42の板厚によって反スライダ49側に持ち上げられる。カードキー42がキー穴43に奥まで挿し込まれると、錠前41の各々のピンタンブラ50はカードキー42において各々対応する孔46及び孔無し部47に向き合う位置状態をとる。このとき、キー穴43に挿し込んだカードキー42が正規キーであれば、図5に示すように、第1ピンタンブラ50aの位置にカードキー42の孔無し部47が位置し、第2ピンタンブラ50bの位置にカードキー42の孔46が位置する。
【0062】
錠前41に挿し込まれたカードキー42が正規キーの場合、第1ピンタンブラ50aは、タンブラスプリング55の付勢力に抗して、カードキー42の孔無し部47によりカードキー42の板厚とピン収納凹部66の深さとを合わせた距離だけ上方に押し上げられる状態をとり、プランジャピン52とロックピン54との境目が、スライダケース48とスライダ49との境目に一致したピンタンブラ非係止状態となる。また、第2ピンタンブラ50bは、カードキー42の孔46に嵌り込むので、タンブラスプリング55によりスライダ49側に押し込まれた位置状態をとり、プランジャピン52とロックピン54との境目が、スライダケース48とスライダ49との境目に一致したピンタンブラ非係止状態をとる。
【0063】
また、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた状態をとると、図12に示すように、第2ロックピース63の先端位置には、カードキー42の貫設孔部64が位置する状態となる。これにより、第2ロックピース63は、ロックピース用スプリング62の付勢力によって自身のスライダ側ピース61が貫設孔部64に嵌り込むことになるので、カードキー42の板厚により押し上げられる状態が解消される。よって、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれると、第2ロックピース63はプランジャ側ピース59及びスライダ側ピース61の境目とスライダケース48及びスライダ49の境目とが一致してロックピース非係止状態になる。
【0064】
一方、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた状態をとると、図12に示すように、第1ロックピース57の先端位置には、カードキー42の板部65が位置する状態となる。これにより、第1ロックピース57は、カードキー42の板厚によって押し上げられた状態を維持し、スライダ49をスライダケース48に固定しないロックピース非係止状態を維持する。以上により、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれた際には、第1ロックピース57及び第2ロックピース63の両者ともロックピース非係止状態となって、スライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することを許容する状態となる。
【0065】
これにより、第1ピンタンブラ50a及び第2ピンタンブラ50bの両者がともにピンタンブラ非係止状態をとりつつ、しかも第1ロックピース57及び第2ロックピース63が両者ともにロックピース非係止状態をとると、錠前41はスライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することが許容されたスライダ操作許可状態となる。錠前41がスライダ操作許可状態となると、錠前41に挿し込んだカードキー42でスライダ49をその中立位置からスライド移動することが可能となるので、錠前41に正規のカードキー42を挿し込んだ後にこのカードキー42を、図6に示すように、一方向(図7の矢印R1方向)に動かしてスライダ49を一方向にスライド移動(図6の状態)すると、この時のスライド運動が伝達機構を介してデッドボルトに伝達され、それまで飛び出し状態にあったデッドボルトが引き込み、車両ドア1aが解錠状態となる。
【0066】
ところで、各々のピンタンブラ50はプランジャピン52とロックピン54とが向き合った(重なった)位置状態をとっていないと、ピンタンブラ50の上下動が許容されないので、錠前41に挿し込んだカードキー42は各々のピンタンブラ50においてプランジャピン52とロックピン54とが向き合っていないと錠前41から取り出すことができない。よって、車両ドア1aを解錠した後、錠前41に挿し込んだカードキー42を錠前41から取り出す時は、カードキー42を挿し込み時の初期位置に戻してスライダ49を中立位置に位置させ、各々のプランジャピン52とロックピン54とを向き合わせる。運転者はカードキー42を初期位置に戻した後、カードキー42を錠前41から引き抜き、このカードキー42を所持して車内に乗車する。運転者は、以上のカードキー操作を行って乗車する。
【0067】
一方、機械操作式ドアロックシステム40で車両ドア1aを施錠する場合は、スライダ49が中立位置に位置する錠前41に正規のカードキー42を挿し込み、このカードキー42を他方向(図7の矢印R2方向)に動かしてスライダ49を、図8に示すように、他方向にスライド移動(図7の状態)する操作を行う。このとき、スライダ49のスライド運動が伝達機構を介してデッドボルトに伝達され、それまで引き込み状態にあったデッドボルトが外部に飛び出す状態をとり、車両ドア1aが施錠状態となる。錠前41を施錠状態とした後にカードキー42を錠前41から抜く場合には、錠前41を解錠状態とする時と同様に、カードキー42をカード挿し込み時の初期位置に位置してスライダ49を中立位置に位置させ、その後にカードキー42を錠前41から引き抜くことにより行う。
【0068】
続いて、カードキー42として錠前41とキーコードが合わない異コードキーが錠前41に挿し込まれた場合を想定する。異コードキーとは、カードキー42に形成された孔46や孔無し部47の形成パターンが正規キーとは異なったカードキーのことを言う。錠前41に不正キーを挿し込んでこれを錠前41に完全に挿し込むまでのキー挿入過程時は、先に述べた正規キーの場合の時と同様に、第2ロックピース63がロック係止状態となって、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度を補強する。
【0069】
異コードキーが錠前41に完全に挿し込まれた場合、図13に示すように、複数存在する第1ピンタンブラ50aの中には、その対向位置にカードキー42の孔46が位置するものが生じたり、また第2ピンタンブラ50bの中には、その対向位置にカードキー42の孔無し部47が位置するものが生じたりすることになる。第1ピンタンブラ50aは、自身が向き合う位置にカードキー42の孔46が位置してしまうと、この孔46に嵌り込む位置状態をとり、タンブラスプリング55の付勢力によってスライダ49側に押し込まれた位置状態をとる。このため、第1ピンタンブラ50aは、プランジャピン52が掛かり代K1分だけスライダケース48とスライダ49との両者に係止したピンタンブラ係止状態をとり、スライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することを規制する。この時の掛かり代K1は、錠前41に挿し込んだカードキー42の孔無し部47が向き合う位置をとった際に押し上げられる量、即ちカードキー42の板厚(孔無し部47)とピン収納凹部66の深さとを合わせた距離に相当する。
【0070】
また、第2ピンタンブラ50bは、自身が向き合う位置にカードキー42の孔無し部47が位置してしまうと、タンブラスプリング55の付勢力に抗して、カードキー42の孔無し部47によりカードキー42の板厚とピン収納凹部66の深さとを合わせた距離だけ上方に押し上げられる状態をとる。このため、第2ピンタンブラ50bは、カードキー42の孔無し部47によって押し上げられる量が掛かり代K1となって、ロックピン54がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘って係止するピンタンブラ係止状態となり、スライダ49がスライダケース48に対してスライド移動することを規制する。
【0071】
このように、錠前41は、複数存在するピンタンブラ50の中で1つでもピンタンブラ係止状態をとるものがあると、それがスライダ49をスライダケース48に固定することから、スライダ49をスライダケース48に対してスライド移動することができないスライダ操作不許可状態となる。錠前41がスライダ操作不許可状態となると、錠前41に挿し込んだカードキー42でスライダ49をその中立位置からスライド移動することができないので、錠前41に挿し込んだカードキー42が異コードキーの場合には、車両ドア1aの施解錠操作が行えないことになる。
【0072】
また、キー不正操作の一種としては、図14に示すように、単なる板材68を錠前41に挿し込み、これを無理に動かしてスライダ49を強制的にスライド移動させることにより、錠前41を不正に施解錠しようとする場合も想定される。錠前41に単なる板材68が挿し込まれた場合、第1ピンタンブラ50a及び第2ピンタンブラ50bは、ともに板材68によりタンブラスプリング55の付勢力に抗して押し上げられる動きをとる。このとき、第1ピンタンブラ50aはプランジャピン52とロックピン54との境目がスライダケース48とスライダ49との境目に一致してピンタンブラ非係止状態をとるが、第2ピンタンブラ50bはロックピン54がスライダケース48とスライダ49に亘り係止したピンタンブラ係止状態をとる。
【0073】
このように、不正キーとして単なる板材68が錠前41に挿し込まれた場合、この時は第2ピンタンブラ50bがスライダ49をスライダケース48に固定する動作状態をとるので、錠前41は第2ピンタンブラ50bが利いてスライダ操作不許可状態となる。よって、単なる板材68を錠前41に挿し込んで無理にスライダ49をスライド移動するキー不正操作を行おうとしても、不正キーとして異コードキーが使用された場合と同様に、スライダ49のスライド移動操作が不許可となり、この種の板材68を用いた不正なキー操作で錠前41が解除されることがない。
【0074】
更に、錠前41に板材68を挿し込んだ際は、錠前41にカードキー42(正規キー、異コードキー)を挿し込んだ場合と同様に、第1ロックピース57に代わって第2ロックピース63がロックピース係止状態となって、ピンタンブラ50によるスライダ49のロック強度を補強する。よって、錠前41に単なる板材68を挿し込んだ際も、この板材68を完全に錠前41に挿し込むまでの期間の間においては第2ロックピース63が利いて、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度が第2ロックピース63により補強される。
【0075】
ところで、この種の板材68には、正規のカードキー42に存在するような貫設孔部64が形成されていない。このため、錠前41に板材68が完全に挿し込まれた際には、この時の第2ロックピース63には嵌り込み先がなく、板材68によっても持ち上げられた状態が維持されるので、第2ロックピース63はロックピース係止状態が維持される。よって、錠前41に不正キーとして板材68が挿し込まれた不正キー挿入時、スライダ49は第2ピンタンブラ50bのみならず、第2ピンタンブラ50bよりも大径の第2ロックピース63のプランジャ側ピース59によってもスライダケース48に固定されるので、スライダ49がスライダケース48に強く固定された状態となる。従って、錠前41に板材68を挿し込んで直接無理にスライダ49をスライド移動させる不正操作が行われたとしても、この時のスライダ49はスライド移動し難くなる。
【0076】
さて、本例においては、ピンタンブラ50のピン径よりも大きい径サイズを持つロックピース57,63を錠前41に設け、これらロックピース57,63を用いてピンタンブラ50によるスライダ49のロック強度を補強する。このため、スライダ49をピンタンブラ50でスライダケース48に固定する際、ピンタンブラ50のみならず径サイズの大きいロックピース57,63でもスライダ49がスライダケース48に固定されるので、スライダ49をより強固にスライダケース48に固定することが可能となる。よって、キー未挿入時や不正キー挿入時(板材挿入時)にスライダ49を無理に動かして錠前操作を行おうとしても、この操作でスライダ49がスライド移動してしまう状況が生じ難くなるので、錠前41の不正操作を生じ難くすることが可能となる。
【0077】
また、例えば錠前41の厚さを小さくすることで錠前41の小型化(薄型化)を図った場合、選択した厚さサイズによってはピンタンブラ50の掛かり代K1が小さくなることも想定される。このように、ピンタンブラ50の掛かり代K1が小さくなると、その分だけピンタンブラ50によるロック強度が小さくなってしまう。しかし、本例のように、ピンタンブラ50によるロック強度を補強すべく働くロックピース57,63を錠前41に設ければ、錠前41の薄型化によってピンタンブラ50によるロック強度が低くなっても、その分のロック強度がロックピース57,63で補強されることになる。よって、本例においては錠前41の小型化と、ピンタンブラ50の充分なロック強度確保との両立を図ることが可能となる。
【0078】
更に、本例においては、キー未挿入時にピンタンブラ50のロック強度を補強する第1ロックピース57と、キー挿入過程時(不正キー挿入時)にピンタンブラ50のロック強度を補強する第2ロックピース63との2種類を錠前41に設けた。このため、キー未挿入時だけでなく、カードキー42が錠前41に完全に挿し込まれるまでのキー挿入過程時や、異コードのカードキーが錠前41に挿し込まれた時や、単なる板材68が錠前41に挿し込まれた時などにおいても、ピンタンブラ50のロック強度を補強することが可能となる。よって、ピンタンブラ50のロック強度補強がキー未挿入時とキー挿入過程時と不正キー挿入時とで行われることになるので、錠前41の不正操作をより生じ難いものとすることが可能となる。
【0079】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定する際のそのロック強度を補強するロック機構56を錠前41に設けたので、ピンタンブラ50がスライダ49をスライダケース48に固定するピンタンブラ係止状態をとっている際には、スライダ49はスライダケース48に対して強固に固定されたロック状態をとる。このため、例えば第三者がスライダ49を無理に動かして錠前41を不正に施解錠しようとしても、このときにスライダ49が勝手に動き出してしまう状況が生じ難くなるので、錠前41の不正施解錠操作を生じ難くすることができる。
【0080】
(2)ピンタンブラ50のロック強度を補強するロック機構56は、錠前41にカードキー42が挿し込まれていない際に作動するキー未挿入時作動ロック機構56aと、錠前41にカードキー42が挿し込まれた際に作動するキー挿入時作動ロック機構56bとから成る。よって、ピンタンブラ50のロック強度は、錠前41にカードキー42が挿し込まれていない時と錠前41にカードキー42が挿し込まれてからとの両方の状況下で補強されることになるので、錠前41の不正施解錠操作を一層生じ難くすることができる。
【0081】
(3)スライダ49のキー収納穴49aにおいてロックピース57,63の先端位置が接触する当接面に、ロックピース57,63の先端一部分を収納するピース収納凹部67を形成した。このため、ロックピース57,63が上下動する際のその移動量は、カードキー42の厚さのみならずピース収納凹部67分も含めた距離となるので、錠前41にピース収納凹部67を形成した場合には、ロックピース57,63の上下動量が大きくなる。よって、ロックピース57,63がスライダケース48及びスライダ49の両者に亘り係止してロックピース係止状態をとる際の掛かり代K2が大きくなるので、ピンタンブラ50をより強いロック強度で補強することができる。従って、スライダ49が非常に強いロック強度でスライダケース48に固定されることになり、錠前41の不正施解錠操作を一層生じ難くすることができる。
【0082】
(4)ロックピース57,63の径はピンタンブラ50の径よりも大きく形成されているので、部品1つ単位で見た場合、ロックピース57,63はピンタンブラ50よりも大きなロック強度を発生する。よって、このような径サイズ関係を持つロックピース57,63でピンタンブラ50のロック強度を補強するので、強いロック力でピンタンブラ50が補強されることになり、スライダ49の不正施解錠操作の更なる防止に効果が高い。
【0083】
(5)カードキー42に形成されるキーコードは、カード材(板材)に孔46が形成されたか否かで表現された孔46の有無から成る孔形成パターン45を使用している。ところで、カードキー42にキーコードを形成するに際して、例えば孔46を穴(貫通していない凹み)に置き換えることも可能であるが、この種の穴には底部が存在することから、穴に充分な深さを持たせるためには、カードキー42のキー厚さが厚くなる問題がある。しかし、本例のようにカードキー42のキーコードの凹部として孔46を採用すれば、穴を用いた際に必要であった底部が不要となるので、その分だけキー厚さを薄くすることが可能となる。よって、カードキー42のキーコードとして孔46の有無パターンから成る孔形成パターン45を用いれば、カードキー42のキー厚さを薄く済ますことができる。
【0084】
(6)カードキー42は薄いカード型形状を成すものであるので、収納先が例えば財布等の収納スペースが小さな場所であっても、カードキー42をその場所に収納することができ、カードキー42の持ち運びに煩わしさを感じることがない。
【0085】
(7)キー操作フリーシステム2のエマージェンシーキーとしてカードキー42を使用するので、例えば携帯機3の内部にエマージェンシーキーとしてメカニカルキーを収納しておく必要がなくなる。このため、携帯機3からエマージェンシーキーを省略することが可能となるので、携帯機3をそのメカニカルキーの省略分だけ小型化することができる。
【0086】
(8)カードキー42を錠前41に挿し込んだ際には、キー挿入時作動ロック機構56bが利く状態となるので、ケース側収納穴51とスライダ側収納穴53とが好適に向き合う状態にカードキー42が位置決めされる。このため、正規カードキー42を挿入したにもかかわらず、ピンタンブラ50,50…が穴に引っ掛かってロックが解除されないような状況が生じ難くなり、キー操作のやり直しなどの手間を省くことができる。
【0087】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ ロックピース57,63のスライダ側ピース61は、1部品であることに限定されず、例えば図15に示すように複数部品でもよい。この場合、スライダ側ピース61は、同ピース61の本体部分に相当する柱形状を成した本体部分71と、この本体部分71とは別部品でしかも挿入キーとの接触箇所となる先端ピース72とから成る。先端ピース72は、カードキー42を錠前41に挿し込む際にカードキー42のスムーズな挿入を手助けすべく働き、例えば球形状や円柱形状を成している。よって、スライダ側ピース61が先端に先端ピース72を持つ形状の場合には、カードキー42を錠前41にスムーズに挿入することができ、カード挿入時において余計なストレスを感じさせずに済む。なお、先端ピース72がピース部材に相当する。
【0088】
・ ロック機構56は、キー未挿入時作動ロック機構56aとキー挿入時作動ロック機構56bとの2種類を持つ必要は必ずしもなく、少なくともどちらか一方を持っていればよい。
【0089】
・ ロックピース57,63のピース径は、必ずしもピンタンブラ50のピン径よりも大きい必要はなく、その径サイズは自由に設定してよい。また、ロックピース57,63のピース形状は、必ずしも直方体形状に限らず、自由に変更可能である。
【0090】
・ ロック機構56の配置位置は、必ずしもカードキー42の先端寄りの位置に限定されず、例えばカードキー42の中央寄りの位置など、他の配置位置を採用してもよい。
・ 機械操作式ドアロックシステム40のメカニカルキーは、その形状がクレジットカードのような極めて薄い板形状を成したカードキー42に限定されず、例えばメモリーカードのような若干厚みのあるサイズが小さめの平板形状を成すものでもよい。この場合、例えば携帯電話のメモリーカードのスロットに、カードキー42を収納することができる。また、機械操作式ドアロックシステム40のメカニカルキーは、キー本体がカード形状を成すものに限定されず、例えば若干量の厚みを持ったキー形状をなしていてもよい。
【0091】
・ カードキー42にキーコードとして形成される凹部は、板材を貫通した孔46に限定されず、例えば板材を貫通しない穴でもよい。
・ 錠前41は、カードキー42を介して人力によりスライダ49をスライド移動する機械式に限らず、例えばピンタンブラ群が全てピンタンブラ非係止状態になったことをセンサで検出した際にモータ等によりスライドを自動でスライド移動する電気式でもよい。
【0092】
・ 錠前41は、錠前41を操作する時に動く可動部材(スライダ49)が直線方向に動くスライド式に限定されず、例えばキーを錠前41に挿し込んでこれを回すことにより施解錠操作を行う回転式を用いてもよい。
【0093】
・ ピンタンブラ群やロックピース群を付勢する付勢部材は、必ずしもスプリングに限定されず、例えばゴム材を使用してもよい。
・ ピンタンブラ群は、全てが同一方向に移動する向きに配置されることに限定されない。例えば、カードキー42の周縁にキーコードの一部として溝を切り欠き形成し、この溝に嵌り込むピンタンブラを、孔に嵌り込むピンタンブラに対して直交向きに配置し、錠前41にカードキー42が挿し込まれた際には、カードキー42の孔と周縁の溝とでキー照合を行ってもよい。
【0094】
・ リレー32〜34のオン方式は、電源ECU28が管理してオンオフを切り換える電気式に限らず、例えば実際のキー操作(操作アクション)に伴ってリレーのオンオフ状態が切り換えられる機械式でもよい。
【0095】
・ 錠前41の錠構造は、2つのピン部材から成るピンタンブラ式に限らず、例えばタンブラ部材が板形状を成すディスクタンブラ式でもよい。
・ ICカードキー42にトランスポンダを埋め込んで、ICカードキー42でイモビライザー照合が可能となるようにしてもよい。
【0096】
・ 電子キーシステムは、正規の携帯機3を所持していればドアロック施解錠やエンジン始動停止が自動で許可又は実行されるキー操作フリーシステム2に限定されない。例えば、電子キーに各種操作ボタンを形成し、このボタンが押されると、その操作要求コマンドとキーコードとが無線で車両1に発信されるワイヤレスキーシステムでもよい。
【0097】
・ 車両1のエンジン始動停止系は、必ずしもワンプッシュエンジンスタートシステム24に限定されず、メカニカルキーをエンジン始動停止用キーシリンダに挿し込んで、これを回すことにより行う機械操作式エンジン始動停止システムでもよい。
【0098】
・ カードキー42を用いた機械操作式キーシステムは、必ずしもスマートエントリーシステム4の非常用として使用されることに限らず、例えばワンプッシュエンジンスタートシステム24の非常用として使用してもよい。要は本例のカードキー42を用いた機械操作式キーシステムは、スマートエントリーシステム4及びワンプッシュエンジンスタートシステム24の少なくともどちらかに採用されていればよい。
【0099】
・ カードキー42を用いた本例の機械操作式ドアロックシステム40は、必ずしも車両1に搭載されることに限らず、例えば住宅の扉などの種々のものに搭載してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0100】
(1)請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記錠前は、前記錠前は、当該錠前の可動部材に移動可能な状態で取り付けられた第1係止ピンと、当該錠前の固定側である支持部材に移動可能な状態で取り付けられた第2係止ピンとの2者から成るピンタンブラが、前記コード凹凸の凹部及び凸部の位置に対応して複数形成されたピンタンブラ式であり、自身のキー穴に前記コード凹凸キーが挿し込まれた際、付勢部材の付勢力によって押され状態にある前記ピンタンブラの位置状態を前記コード凹凸で切り換えて、各々の前記ピンタンブラが前記係止をとるか否かを見ることを前記キー照合として行い、前記ピンタンブラの全てにおいて2者ピン間の境界が前記可動部材及び前記支持部材の境界に一致して前記キー照合が成立すれば、前記可動部材が前記支持部材に対して相対移動可能となって。コード凹凸キーによるキー操作が可能となる。この構成によれば、錠前にピンタンブラ式を用いたので、例えばディスクタンブラ等に比べて錠構造を簡素なものとすることが可能となる。
【0101】
(2)請求項1〜5及び前記技術的思想(1)のいずれかにおいて、
前記コード凹凸キーに形成された前記コード凹凸は、前記キー本体部に規則性を持って貫設された孔の形成パターンであり、前記コード凹凸キーによる前記キー照合は、この孔形成パターンが正規パターンであるか否かを判定する孔形成パターン判定式である。この構成によれば、コード凹凸キーにはキー固有のキーコードとして孔の有無から成る孔形成パターンが形成され、この孔形成パターンを錠前のタンブラ部材と照らし合わせることによりキー照合が実施される。ところで、コード凹凸キーにキーコードを形成するに際しては、例えば孔ではなく孔有りの凹部によりキーコードを形成することも可能であるが、この場合は凹部が持つ底部の分だけキー厚さが必要になり、凹部にある程度の深みを持たせようとすると、コード凹凸キーのキー厚さが相対的に厚くなる。しかし、本構成のようにキーコードを孔形成パターンとした場合には、キーコードの凹み箇所を貫通形状とすることが可能となるので、凹部を用いた際に必要となる底部の厚さを考えずに済み、凹部を使用した場合に比べてキーの薄型化を図ることが可能となる。
【0102】
(3)請求項1〜5及び前記技術的思想(1),(2)のいずれかにおいて、
前記コード凹凸キーは、自身の本体形状がカード型を成すカードキーである。この構成によれば、コード凹凸キーがカード型キーであるので、収納先が小さなスペースであってもその場所に収納することが可能となり、キーの持ち運びに煩わしさが生じ難くなる。
【0103】
(4)請求項1〜5及び前記技術的思想(1)〜(3)のいずれかにおいて、
前記コード凹凸キーに形成された前記コード凹凸の凹部は、前記キー本体部の厚さ方向に凹設された形状をとる。この場合、錠前のタンブラ部材を全て同じ向きに配置することが可能となるので、錠前の構造を簡素なものとすることが可能となる。
【0104】
(5)請求項1〜4及び前記技術的思想(1)〜(4)のいずれかにおいて、
電子キーからキー固有のキーコードを無線通信により発信して、その時のキー照合成立を条件に装置動作を許可又は実行する電子キーシステムを備えつつ、実際のキー操作を伴う機械式キー操作によっても前記装置動作が実行可能な装置に搭載され、前記コード凹凸キーの前記コード凹凸を前記機械式操作時のキーコードとして設定することにより、前記コード凹凸キーが前記電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用されている。この構成によれば、コード凹凸キーを装置のエマージェンシーキーとして使用しているので、装置の電子キーにこの種のエマージェンシーキーを設ける必要がなくなり、電子キーをそのキー省略分だけ小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】一実施形態のキー操作フリーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】機械操作式ドアロックシステムの錠前及びカードキーの概略を示す斜視図。
【図3】カードキーの概略構造を示す平面図。
【図4】カードキーが挿し込まれていない状態の錠前の断面図。
【図5】正規のカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図6】カードキーで錠前を解錠操作した際の錠前の断面図。
【図7】カードキーで錠前を施錠操作した際の錠前の断面図。
【図8】錠前へのカードキー挿込過程を第1ロックピース側から見た時の断面図。
【図9】錠前へのカードキー挿込過程を第2ロックピース側から見た時の断面図。
【図10】カードキーが挿し込まれていない状態の錠前の断面図。
【図11】カードキーが挿し込まれている過程時の錠前の断面図。
【図12】カードキーが完全に挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図13】異コードのカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図14】単なる板材が挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図15】別例におけるピンタンブラの具体例を示す模式図。
【図16】従来におけるカード型キーシステムの構成例を示す平面図。
【図17】カードキーが挿し込まれていない状態の錠前の断面図。
【図18】正規のカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【図19】異コードのカードキーが挿し込まれた状態の錠前の断面図。
【符号の説明】
【0106】
1…車両、2…電子キーシステムとしてのキー操作フリーシステム、3…電子キーとしての携帯機、41…錠前(錠)42…コード凹凸キーとしてのカードキー、43…キー穴、44…キー本体部、45…コード凹凸としての孔形成パターン、46…凹部としての孔、47…凸部としての孔無し部、48…支持部材としてのスライダケース、49…可動部材としてのスライダ、50(50a,50b)…タンブラ部材としてのピンタンブラ、55…コード用付勢部材としてのタンブラスプリング、56…ロック機構、56a…キー未挿入時作動ロック機構、56b…キー挿入時作動ロック機構、57,63…ロックピース、59…第2ピースとしてのプランジャ側ピース、61…第1ピースとしてのスライダ側ピース、62…ロック用付勢部材としてのロックピース用スプリング、67…収納部としてのピース収納凹部、72…ピース部材としての先端ピース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー本体部の少なくとも一平面方向に沿って並ぶ凹凸群をキーコード用のコード凹凸として持つコード凹凸キーがキーとして使用され、錠の可動部材を当該錠の固定側である支持部材に係止し得るタンブラ部材が前記コード凹凸の凹部及び凸部の位置に対応して複数形成された錠前に前記コード凹凸キーが挿し込まれた際、コード用付勢部材の付勢力によって押され状態にある前記タンブラ部材の位置状態を前記コード凹凸で切り換えて、各々の前記タンブラ部材が前記係止をとるか否かを見ることをキー照合として行うコード凹凸照合式キーシステムにおいて、
前記可動部材に移動可能な状態で収納された第1ピースと前記支持部材に移動可能な状態で収納された第2ピースとの2者から成り、しかもロック用付勢部材によって付勢状態にあるピンタンブラ式のロックピースを持ち、前記2ピースの一方が前記可動部材及び前記支持部材の両方に係止する係止状態をとると前記可動部材の動きを規制し、前記2ピースの境目が前記可動部材及び支持部材の境目に一致する非係止状態をとると前記可動部材の動きを許容し、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれる前と、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれた時との2状態のうち、少なくとも一方の状態下において前記係止状態をとることにより、前記タンブラ部材のロック強度を補強するロック機構を備えたことを特徴とするコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項2】
前記ロック機構は、
前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれていない時に、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとることにより、キー未挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー未挿入時作動ロック機構と、
前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれてから当該キーが完全な挿入状態となるまでの間、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとって、キー挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー挿入時作動ロック機構と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項3】
前記可動部材又は前記支持部材において前記ロックピースの先端位置には、当該ロックピースの先端を収納可能な収納部が貫設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項4】
前記ロックピースの先端には、前記コード凹凸キーを前記錠前のキー穴から抜き挿しする際にこれを補助するピース部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項5】
前記ロックピースのピース径が前記タンブラ部材のピン径よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項6】
車両キーである電子キーからキー固有のキーコードを無線通信により発信して、その時のキー照合成立を条件に車両動作を許可又は実行する電子キーシステムを備えつつ、実際のキー操作を伴う機械式キー操作によっても前記車両動作が実行可能な車両に搭載され、前記コード凹凸キーの前記コード凹凸を前記機械式キー操作時のキーコードとして設定することにより、前記コード凹凸キーが前記電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項1】
キー本体部の少なくとも一平面方向に沿って並ぶ凹凸群をキーコード用のコード凹凸として持つコード凹凸キーがキーとして使用され、錠の可動部材を当該錠の固定側である支持部材に係止し得るタンブラ部材が前記コード凹凸の凹部及び凸部の位置に対応して複数形成された錠前に前記コード凹凸キーが挿し込まれた際、コード用付勢部材の付勢力によって押され状態にある前記タンブラ部材の位置状態を前記コード凹凸で切り換えて、各々の前記タンブラ部材が前記係止をとるか否かを見ることをキー照合として行うコード凹凸照合式キーシステムにおいて、
前記可動部材に移動可能な状態で収納された第1ピースと前記支持部材に移動可能な状態で収納された第2ピースとの2者から成り、しかもロック用付勢部材によって付勢状態にあるピンタンブラ式のロックピースを持ち、前記2ピースの一方が前記可動部材及び前記支持部材の両方に係止する係止状態をとると前記可動部材の動きを規制し、前記2ピースの境目が前記可動部材及び支持部材の境目に一致する非係止状態をとると前記可動部材の動きを許容し、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれる前と、前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれた時との2状態のうち、少なくとも一方の状態下において前記係止状態をとることにより、前記タンブラ部材のロック強度を補強するロック機構を備えたことを特徴とするコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項2】
前記ロック機構は、
前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれていない時に、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとることにより、キー未挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー未挿入時作動ロック機構と、
前記コード凹凸キーが前記錠前に挿し込まれてから当該キーが完全な挿入状態となるまでの間、前記ロックピースが前記可動部材及び前記支持部材の両者に亘り係止する係止状態をとって、キー挿入時の間において前記タンブラ部材のロック強度を補強するキー挿入時作動ロック機構と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項3】
前記可動部材又は前記支持部材において前記ロックピースの先端位置には、当該ロックピースの先端を収納可能な収納部が貫設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項4】
前記ロックピースの先端には、前記コード凹凸キーを前記錠前のキー穴から抜き挿しする際にこれを補助するピース部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項5】
前記ロックピースのピース径が前記タンブラ部材のピン径よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【請求項6】
車両キーである電子キーからキー固有のキーコードを無線通信により発信して、その時のキー照合成立を条件に車両動作を許可又は実行する電子キーシステムを備えつつ、実際のキー操作を伴う機械式キー操作によっても前記車両動作が実行可能な車両に搭載され、前記コード凹凸キーの前記コード凹凸を前記機械式キー操作時のキーコードとして設定することにより、前記コード凹凸キーが前記電子キーシステムのエマージェンシーキーとして使用されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のコード凹凸照合式キーシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−91745(P2009−91745A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261268(P2007−261268)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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