コーナー擁壁ブロック製造用型枠
【課題】各内側板に対する各外側板のセッティング作業を簡単、且つ、容易に行えるコーナー擁壁ブロック製造用型枠を提供する。
【解決手段】型枠は、ベース1の上面を各内側板5の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に配置された左右一対の可動ベース4を備え、各内側板5は各可動ベース4の上面にそれぞれ立設されていて、各第1外側板8は各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置され、各第2外側板9は各内側板5と平行に向き合い、且つ、第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板8に取り付けられている。
【解決手段】型枠は、ベース1の上面を各内側板5の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に配置された左右一対の可動ベース4を備え、各内側板5は各可動ベース4の上面にそれぞれ立設されていて、各第1外側板8は各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置され、各第2外側板9は各内側板5と平行に向き合い、且つ、第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板8に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁の角部を構成する際に有用なコーナー擁壁ブロックを製造するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コーナー擁壁ブロックを製造するための型枠として下記特許文献1及び2に記載の型枠が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている型枠は、
ベースと、ベースの上面に立設された支柱と、支柱に回転自在に設けられた左右一対の内側板と、各内側板と間隔を隔ててベースの上面に固定された左右一対の外側板と、外側板相互の隙間に装着されたコーナー側板と、各内側板の端部に固定された妻板とを備える。この型枠によれば、各内側板を支柱を中心とし回転させてその開き角度を変更することによって、1つの型枠でコーナー角度が異なる種々のコーナー擁壁ブロックを製造することができる。
【0004】
特許文献2に開示されている型枠は特許文献1に開示されている型枠の改良に係るもので、具体的には、各内側板を支柱を中心とし同一角度回転させてその開き角度を変更する角度可変機構と、ベースの上面に設けられ各内側板及び各外側板を滑動自在に支持するレールとをさらに備えている。この型枠によれば、各内側板の開き角度の変更作業を角度可変機構によって容易に行うことができる。
【特許文献1】実公平2−44965
【特許文献2】実公平8−4248
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されている型枠にあっては、各内側板の開き角度を所望角度に変更する前後で底板を介して外側板をボルトにより各内側板に固定する必要があるため、重量物である各外側板を位置合わせしながら底板を介して各内側板に固定するセッティング作業に係る負担や時間が嵩む不具合がある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、各内側板に対する各外側板のセッティング作業を簡単、且つ、容易に行えるコーナー擁壁ブロック製造用型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、ベースと、ベースの上面に立設された支柱と、支柱に回転自在に設けられた左右一対の内側板と、各内側板と間隔を隔てて配置される左右一対の外側板と、外側板相互の隙間に装着されるコーナー側板と、各内側板と各外側板との間に挟み込まれるように配置される左右一対の底板と、底板相互の隙間に装着されるコーナー底板と、各内側板の端部と各外側板の端部との間に配置される妻板とを備えたコーナー擁壁ブロック製造用型枠であって、ベースの上面を各内側板の回転軌道に沿って移動できるように該ベースの上面に配置された左右一対の可動ベースを備え、各内側板は各可動ベースの上面にそれぞれ立設されていて、各外側板は各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置されている、ことをその特徴とする。
【0008】
このコーナー擁壁ブロック製造用型枠によれば、ベースの上面を各内側板の回転軌道に沿って移動できるように該ベースの上面に左右一対の可動ベースを配置し、各内側板を各可動ベースの上面にそれぞれ立設すると共に、各外側板を各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置してあるので、各外側板を平行移動させるだけの簡単な操作で各外側板を所定位置にセッティングする際の作業負担や作業時間を大幅に低減することができ、これにより所期のコーナー擁壁ブロックを高精度、且つ、高効率で製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各内側板に対する各外側板のセッティング作業を簡単、且つ、容易に行えるコーナー擁壁ブロック製造用型枠を提供することができる。
【0010】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1〜図7は本発明の第1実施形態に係るもので、図1は型枠の上面図、図2は図1に示した型枠の左側面図、図3は図1に示した可動ベースの上面図及び前面図、図4は図1に示した妻板の後面図、図5は図1に示した外側板の後面図、図6はブロック製造の手順説明図、図7はコーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図である。
【0012】
まず、図1〜図5を参照して同図に示した型枠のメカニズムについて説明する。
【0013】
図1〜図5における符号1はベース、2は支柱、3は回転ガイド、4は左右一対の可動ベース、5は左右一対の内側板、6は左右一対の底板、7は左右一対の妻板、8は左右一対の第1外側板、9は左右一対の第2外側板、10は角度可変機構、11はコーナー底板、12はコーナー側板である。以下の説明では、図1の下を前、上を後、左を左、右を右として表記する。
【0014】
ベース1の上面には、図1及び図2に示すように、支柱2の中心からの半径が異なる3個の円弧状レール1aが左右対称に設けられている。また、ベース1の上面には、支柱1の中心からの半径が異なる2個の円弧状軌跡に沿って複数の可動ベース固定穴1bが所定角度間隔、本第1実施形態では5度間隔で左右対称に設けられている。この可動ベース固定穴1bはボルトB4が直接ねじ込まれるネジ穴であってもよく、また、ボルトB4の端にナットを締結する際に挿入される貫通穴であってもよい。
【0015】
支柱2は横断面円形のシャフトから成り、図1に示すように、ベース1の上面に垂直に立設されている。
【0016】
回転ガイド3は円筒形の一部を縦長に排除した形状、或いは、円筒形の一部を後述する各内側板5のブラケット5bの可動範囲に合わせて横長に排除した形状を成し、その中心が支柱2の中心と一致するようにベース1の上面に立設されている。回転ガイド3はその外面を後述する各内側板5の湾曲面5aを接触していて該各各内側板5を回転させるときのガイドの役目を果たす。本第1実施形態では上端が開口したものを回転ガイド3として示してあるが、上端開口を円形板で閉塞したものを回転ガイド3として使用し該円形板により支柱2の上端を支持して支柱2の撓みを防止することが望ましい。
【0017】
各可動ベース4は、図3(A)及び図3(B)に示すように、前後が開放した縦断面矩形のベース本体4aと、ベース本体4aの底部と連続した平面を有する後方延長部4bとを有している。ベース本体4aの底部の上面と後方延長部4bの上面には、互いが平行な直線状レール4cが設けられている。また、ベース本体4aの底部の前面には、斜行した長穴状のボルト挿入穴4d1を有するブラケット4dが左右に間隔をおいて2個設けられている。図1から分かるように、各ブラケット4dのボルト挿入穴4d1は、先に述べた可動ベース固定穴1bにそれぞれ対応している。
【0018】
さらに、ベース本体4aの底部の下面には、溝付きローラ4e1を回転自在に有する計5個の車輪4eが図3(A)に破線で示す位置に設けられている。図3(A)において左側の2個の車輪4eの溝付きローラ4e1はベース1の外側の円弧状レール1aに移動可能に係合し、中央の2個の車輪4eの溝付きローラ4e1はベース1の中央の円弧状レール1aに移動可能に係合し、右側の1個の車輪4eの溝付きローラ4e1はベース1の内側の円弧状レール1aに移動可能に係合している。即ち、各可動ベース4は、ベース1の上面を各内側板2の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に配置されている。
【0019】
各内側板5は矩形板状を成し、図1,図2及び図4に示すように、各可動ベース4のベース本体4aの上面にベース1の上面と直角を成すようにそれぞれ立設されている。各内側板5の内側端には、回転ガイド3の外面に摺動可能に面接触する湾曲面5aが設けられている。また、各内側板5の内側端には、一端を支柱2に回転自在に軸支されたL字状ブラケット5bの他端が上下方向に間隔をおいて計3個固定されている。即ち、各内側板5は支柱2を中心として回転を可能としており、また、各内側板5が立設された各可動ベース4は該各内側板5と一緒に同一軌道で移動することができる。
【0020】
各底板6は矩形板状を成し、図1,図2及び図4に示すように、図示省略のボルトを用いて各可動ベース4のベース本体4aの上面にその上面がベース1の上面と直角を成すように固定される。各底板6はその下部に高さ調整部6a(図4参照)を有していて、該高さ調整部6aを高さの変えることによってその上面高さを変更できるようになっている。
【0021】
各妻板7は横断面L字形を成し、図1,図2及び図4に示すように、その上端高さは各内側板5の上端高さと一致している。各妻板7の各内側板5に密着する板状部分には、左右方向に延びる計3個の長穴状のボルト挿入穴7aが上下方向に間隔をおいて設けられている。また、各内側板5の各ボルト挿入穴7aに対応する部分には妻板固定穴(図示省略)が設けられている。この妻板固定穴はボルトB7が直接ねじ込まれるネジ穴であってもよく、また、ボルトB7の端にナットを締結する際に挿入される貫通穴であってもよい。即ち、各妻板7はベース1の上面と直角を成す向きで各内側板5に対する左右方向位置を変更できるように該各内側板5に取り付けられる。
【0022】
各第1外側板8は矩形板状を成し、図1,図2及び図5に示すように、ベース1の上面と直角を成す部分の下端に90度屈曲して前側に延びる狭幅の前方延長部8aを有している。また、各第1外側板8の前方延長部8aの下面には、溝付きローラ8b1を回転自在に有する計4個の車輪8bが前後左右方向に間隔をおいて設けられている。外側の2個の車輪8bの溝付きローラ8b1は各可動ベース4の外側の直線状レール4cに移動可能に係合し、内側の2個の車輪8bの溝付きローラ8b1は各可動ベース4の内側の直線状レール4cに移動可能に係合している。即ち、各第1外側板8は、各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置されている。
【0023】
各第2外側板9は矩形板状を成し、図1,図2及び図5に示すように、各内側板5と平行に向き合うように各第1外側板8の前側に取り付けられ、その上端高さは各内側板5の上端高さと一致している。
【0024】
前記各第1外側板8には、図5に示すように、左右方向に延びる計9個の長穴状のボルト挿入穴8aが上下左右方向に間隔をおいて設けられている。また、各第2外側板9の各ボルト挿入穴8aに対応する部分には第2外側板固定穴(図示省略)が設けられている。この第2外側板固定穴はボルトB9が直接ねじ込まれるネジ穴であってもよく、また、ボルトB9の端にナットを締結する際に挿入される貫通穴であってもよい。即ち、各第2外側板9はベース1の上面と直角を成す向きで各第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該各第1外側板8に取り付けられている。
【0025】
因みに、請求項1で言うところの「外側板」は、前記第1外側板8と前記第2外側板9のコンビネーションが相当する。
【0026】
角度可変機構10は、図1及び図2に示すように、前後2つの支持台10aと、両支持台10aに回転自在に、且つ、ベース1の上面と平行に支持された操作ヘッド10b1付きのネジ棒10bと、ネジ棒10bにそのネジ穴(図示省略)を螺合された直方体形状の可動部10cと、可動部10cの上下面にその一端を回転自在に連結され、且つ、その他端を各内側板5に回転自在に、且つ、ベース1の上面と平行に連結された上下各1対のリンク10dとから成る。
【0027】
この角度可変機構10によれば、操作ヘッド10b1を介してネジ棒10bを所定方向に回転させて可動部10cを前進させると、上下各1対のリンク10dの成す角度がそれぞれ減少して各内側板5が支柱2を中心として同一角度内側に回転すると共に、各内側板5と一緒に各可動ベース4が該各内側板5の回転軌道に沿って移動する。また、操作ヘッド10b1を介してネジ棒10bを前記とは逆方向に回転させて可動部10cを後退させると、上下各1対のリンク10dの成す角度がそれぞれ増加して各内側板5が支柱2を中心として同一角度外側に回転すると共に、各内側板5と一緒に各可動ベース4が該各内側板5の回転軌道に沿って移動する。
【0028】
次に、図1及び図6を参照して、図7に示したコーナー擁壁ブロックCB1(コーナー角度θ=90度)を製造する際の手順について説明する。
【0029】
製造に際しては、図1に示すように、高さ調整された後の各底板6をその一側が各内側板5に密着するように各可動ベース4のベース本体4aの上面に固定する。また、各妻板7を各内側板5にボルトB7を用いて仮止めし、各第2外側板9を各第1外側板8にボルトB9を用いて仮止めする。
【0030】
そして、図6に示すように、角度可変機構10により各内側板5の開き角度を90度に変更する。各可動ベース4は各内側板5の回転軌道に沿って該各内側板5と一緒に移動するため、移動後の各可動ベース4のブラケット4dのボルト挿入穴4d1と該ボルト挿入穴4d1に対向するベース1の可動ベース固定穴1bに上からボルトB4をそれぞれ挿入して該各ボルトB4を用いて各可動ベース4をベース1に固定する。
【0031】
そして、予め用意しておいた90度用のコーナー底板11を各底板6の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各底板6に固定する。ここで使用するコーナー底板11は上面形がL字形で両端面は各底板6の端に密着し、前面は回転ガイド3と各内側板5に密着する。
【0032】
そして、各第1外側板8に対して各第2外側板9を内側に移動させて各第2外側板9の相互の隙間寸法を調整し、予め用意しておいた90度用のコーナー側板12を各第2外側板9の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各第2外側板9に固定する。ここで使用するコーナー側板12は横断面がW形状でそれ自体が可撓性を有する金属板から成り、その上下寸法は第2外側板9の上下寸法に一致している。
【0033】
そして、各妻板7を各々の内面が各底板6の端に密着する位置で各ボルトB7を用いて各内側板5に固定すると共に、各第2外側板9を各ボルトB9を用いて各第1外側板8に固定し、各第2外側板9が各々の内面が各底板6の他側に密着するように各第1外側板8を各内側板5に向かって平行移動させる。
【0034】
そして、各内側板5と各第1外側板9をその上辺,側辺及び下辺等に配した図示省略の複数の型締めクランプにて締め付ける。
【0035】
そして、回転ガイド3と各内側板5と各底板6とコーナー底板11と各妻板7と各第2外側板9とコーナー側板12とで囲まれる空間にコンクリートCOを打設し養生して硬化させる。
【0036】
打設コンクリートCOが硬化した後は、複数の型締めクランプを取り外し、コーナー側板12を取り外してから各第1外側板8を前記とは逆方向に移動させて各第2外側板を製品から引き離し、必要に応じて各妻板7の固定を緩めて製品から引き離した上で、製品を型枠から取り出す。
【0037】
以上により、図9に示すコーナー擁壁ブロックCB1、即ち、各側版部CB1aの成す角度θ(コーナー角度)が90度のコーナー擁壁ブロックCB1が製造される。
【0038】
図示を省略したが、コーナー角度θが90度以外のコーナー擁壁ブロック、即ち、コーナー角度θが90度<θ<180度のコーナー擁壁ブロックを製造する場合も、目的のコーナー角度に適合したコーナー底板11及びコーナー側板12を適宜使用すれば、前記同様の手順で所期のコーナー擁壁ブロックを製造することができる。
【0039】
因みに、コーナー側板12はその可撓性を利用してある程度の角度変形が可能であるので、例えば、コーナー角度θが90度≦θ≦120度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが120度≦θ≦150度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが150度≦θ<180度のコーナー擁壁ブロックを、基本角度が異なる3種類のコーナー側板12、例えば基本角度が105度と135度と165度の3種類のコーナー側板12を利用して製造することも可能である。
【0040】
このように、前述の型枠によれば、ベース1の上面を各内側板5の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に左右一対の可動ベース4を配置し、各内側板5を各可動ベース4の上面にそれぞれ立設すると共に、各外側板(第1,第2外側板8,9)を各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置してあるので、各外側板(第1,第2外側板8,9)を平行移動させるだけの簡単な操作で、各外側板(第1,第2外側板8,9)を所定位置にセッティングする際の作業負担や作業時間を大幅に低減することができ、これにより所期のコーナー擁壁ブロックを高精度、且つ、高効率で製造することができる。
【0041】
また、前述の型枠によれば、各外側板を、各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置された第1外側板8と、各内側板5と平行に向き合い、且つ、第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板8に取り付けられた第2外側板9とから構成してあるので、各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにすることができる。
【0042】
つまり、各内側板の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)の変更に伴って外側板相互の隙間寸法が変化する従前の型枠にあっては隙間寸法が大きくなると該隙間に装着すべきコーナー側板として高強度のものがブロック製造に際して必要になるが、前述の型枠では各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにできるので、基本角度のみが異なる数種類のコーナー側板12を用意するだけで種々のコーナー角度θを有するコーナー擁壁ブロックを的確に製造することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図8〜図12は本発明の第2実施形態に係るもので、図8は型枠の上面図、図9は図8に示した型枠の左側面図、図10はブロック製造の手順説明図、図11はコーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図、図12はブロック製造の他の手順説明図である。
【0044】
まず、図8及び図9を参照して同図に示した型枠のメカニズムについて説明する。
【0045】
図8及び図9に示した型枠が、図1〜図5に示した型枠と異なるところは、
(1)各内側板5の上端縁に、支柱2側の角度が45度を成しベース1の上面と平行な略 三角形状の前方延長部5cをそれぞれ線対称に設けて、各前方延長部5cを各可動ベ ース4との間に設けた脚柱5dで支持した点
(2)回転ガイド3の上端開口を円形板3aで閉塞して該回転ガイド3の高さを各内側板 5の前方延長部5cの上面高さと一致、もしくは、前方延長部5cの上面高さよりも 僅かに高くした点
(3)各妻板7の上端縁に、各内側板5の前方延長部5cの上面に接し、且つ、ベース1 の上面と平行な前方延長部7bをそれぞれ設けた点
にある。図8及び図9に示した型枠の他の構成は図1〜図5に示した型枠と同じであるのでその説明を省略する。
【0046】
次に、図8及び図10を参照して、図11に示したコーナー擁壁ブロックCB2(コーナー角度θ=90度)を製造する際の手順について説明する。
【0047】
製造に際しては、図8に示すように、高さ調整された後の各底板6をその一側が各内側板5に密着するように各可動ベース4のベース本体4aの上面に固定する。また、各妻板7を各内側板5にボルトB7を用いて仮止めし、各第2外側板9を各第1外側板8にボルトB9を用いて仮止めする。
【0048】
そして、図10に示すように、角度可変機構10により各内側板5の開き角度を90度に変更して、各内側板5の前方延長部5cを相互に密着させる。各可動ベース4は各内側板5の回転軌道に沿って該各内側板5と一緒に移動するため、移動後の各可動ベース4のブラケット4dのボルト挿入穴4d1と該ボルト挿入穴4d1に対向するベース1の可動ベース固定穴1bに上からボルトB4をそれぞれ挿入して該各ボルトB4を用いて各可動ベース4をベース1に固定する。
【0049】
そして、予め用意しておいた90度用のコーナー底板11を各底板6の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各底板6に固定する。ここで使用するコーナー底板11は上面形がL字形で両端面は各底板6の端に密着し、前面は回転ガイド3と各内側板5に密着する。
【0050】
そして、各第1外側板8に対して各第2外側板9を内側に移動させて各第2外側板9の相互の隙間寸法を調整し、予め用意しておいた90度用のコーナー側板12を各第2外側板9の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各第2外側板9に固定する。ここで使用するコーナー側板12は横断面がW形状でそれ自体が可撓性を有する金属板から成り、その上下寸法は第2外側板9の上下寸法に一致している。
【0051】
そして、各妻板7を各々の内面が各底板6の端に密着する位置で各ボルトB7を用いて各内側板5に固定すると共に、各第2外側板9を各ボルトB9を用いて各第1外側板8に固定し、各第2外側板9を各々の内面が各底板6の他側に密着するように各第1外側板8を各内側板5に向かって平行移動させる。
【0052】
そして、予め用意した補助妻板13をその両端が各妻板5の前方延長部5cの内面に密着するようにボルトB13を用いて各内側板5の前方延長部5cに固定すると共に、各内側板5と各第1外側板9、並びに、各内側板5相互をその上辺,側辺及び下辺等に配した図示省略の複数の型締めクランプにて締め付ける。
【0053】
そして、回転ガイド3と各内側板5と各底板6とコーナー底板11と各妻板7と各第2外側板9とコーナー側板12と補助妻板13とで囲まれる空間にコンクリートCOを打設し養生して硬化させる。
【0054】
打設コンクリートCOが硬化した後は、複数の型締めクランプを取り外し、コーナー側板12を取り外してから各第1外側板8を前記とは逆方向に移動させて各第2外側板を製品から引き離し、補助妻板13を取り外し、必要に応じて各妻板7の固定を緩めて製品から引き離した上で、製品を型枠から取り出す。
【0055】
以上により、図11に示すコーナー擁壁ブロックCB2、即ち、各側版部CB2aの成す角度θ(コーナー角度)が90度で、両側版部CB2aの間に底版部CB2bを有するコーナー擁壁ブロックCB2が製造される。
【0056】
図示を省略したが、コーナー角度θが90度以外のコーナー擁壁ブロック、即ち、コーナー角度θが90度<θ<180度のコーナー擁壁ブロックを製造する場合も、目的のコーナー角度に適合したコーナー底板11及びコーナー側板12を適宜使用すると共に、目的のコーナー角度に適合した補助妻板13(図12参照)を適宜使用し、且つ、各内側板5の前方延長部5cの間にできる三角形状の隙間に該隙間に適合した形状の補助内側板14(図12参照)を嵌め込んで図示省略のボルトで固定すれば、前記同様の手順で所期のコーナー擁壁ブロックを製造することができる。
【0057】
因みに、コーナー側板12はその可撓性を利用してある程度の角度変形が可能であるので、例えば、コーナー角度θが90度≦θ≦120度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが120度≦θ≦150度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが150度≦θ<180度のコーナー擁壁ブロックを、基本角度が異なる3種類のコーナー側板12、例えば基本角度が105度と135度と165度の3種類のコーナー側板12を利用して製造することも可能である。
【0058】
このように、前述の型枠によれば、ベース1の上面を各内側板5の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に左右一対の可動ベース4を配置し、各内側板5を各可動ベース4の上面にそれぞれ立設すると共に、各外側板(第1,第2外側板8,9)を各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置してあるので、各外側板(第1,第2外側板8,9)を平行移動させるだけの簡単な操作で、各外側板(第1,第2外側板8,9)を所定位置にセッティングする際の作業負担や作業時間を大幅に低減することができ、これにより所期のコーナー擁壁ブロックを高精度、且つ、高効率で製造することができる。
【0059】
また、前述の型枠によれば、各外側板を、各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置された第1外側板8と、各内側板5と平行に向き合い、且つ、第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板8に取り付けられた第2外側板9とから構成してあるので、各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにすることができる。
【0060】
つまり、各内側板の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)の変更に伴って外側板相互の隙間寸法が変化する従前の型枠にあっては隙間寸法が大きくなると該隙間に装着すべきコーナー側板として高強度のものがブロック製造に際して必要になるが、前述の型枠では各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにできるので、基本角度のみが異なる数種類のコーナー側板12を用意するだけで種々のコーナー角度θを有するコーナー擁壁ブロックを的確に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る型枠の上面図である。
【図2】図1に示した型枠の左側面図である。
【図3】図1に示した可動ベースの上面図及び前面図である。
【図4】図1に示した妻板の後面図である。
【図5】図1に示した外側板の後面図である。
【図6】ブロック製造の手順説明図である。
【図7】コーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る型枠の上面図である。
【図9】図8に示した型枠の左側面図である。
【図10】ブロック製造の手順説明図である。
【図11】コーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図である。
【図12】ブロック製造の他の手順説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1…ベース、2…支柱、4…可動ベース、5…内側板、6…底板、7…妻板、8…第1外側板、9…第2外側板、11…コーナー底板、12…コーナー側板、CB1,CB2…コーナー擁壁ブロック。
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁の角部を構成する際に有用なコーナー擁壁ブロックを製造するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コーナー擁壁ブロックを製造するための型枠として下記特許文献1及び2に記載の型枠が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている型枠は、
ベースと、ベースの上面に立設された支柱と、支柱に回転自在に設けられた左右一対の内側板と、各内側板と間隔を隔ててベースの上面に固定された左右一対の外側板と、外側板相互の隙間に装着されたコーナー側板と、各内側板の端部に固定された妻板とを備える。この型枠によれば、各内側板を支柱を中心とし回転させてその開き角度を変更することによって、1つの型枠でコーナー角度が異なる種々のコーナー擁壁ブロックを製造することができる。
【0004】
特許文献2に開示されている型枠は特許文献1に開示されている型枠の改良に係るもので、具体的には、各内側板を支柱を中心とし同一角度回転させてその開き角度を変更する角度可変機構と、ベースの上面に設けられ各内側板及び各外側板を滑動自在に支持するレールとをさらに備えている。この型枠によれば、各内側板の開き角度の変更作業を角度可変機構によって容易に行うことができる。
【特許文献1】実公平2−44965
【特許文献2】実公平8−4248
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されている型枠にあっては、各内側板の開き角度を所望角度に変更する前後で底板を介して外側板をボルトにより各内側板に固定する必要があるため、重量物である各外側板を位置合わせしながら底板を介して各内側板に固定するセッティング作業に係る負担や時間が嵩む不具合がある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みて創作されたもので、その目的とするところは、各内側板に対する各外側板のセッティング作業を簡単、且つ、容易に行えるコーナー擁壁ブロック製造用型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、ベースと、ベースの上面に立設された支柱と、支柱に回転自在に設けられた左右一対の内側板と、各内側板と間隔を隔てて配置される左右一対の外側板と、外側板相互の隙間に装着されるコーナー側板と、各内側板と各外側板との間に挟み込まれるように配置される左右一対の底板と、底板相互の隙間に装着されるコーナー底板と、各内側板の端部と各外側板の端部との間に配置される妻板とを備えたコーナー擁壁ブロック製造用型枠であって、ベースの上面を各内側板の回転軌道に沿って移動できるように該ベースの上面に配置された左右一対の可動ベースを備え、各内側板は各可動ベースの上面にそれぞれ立設されていて、各外側板は各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置されている、ことをその特徴とする。
【0008】
このコーナー擁壁ブロック製造用型枠によれば、ベースの上面を各内側板の回転軌道に沿って移動できるように該ベースの上面に左右一対の可動ベースを配置し、各内側板を各可動ベースの上面にそれぞれ立設すると共に、各外側板を各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置してあるので、各外側板を平行移動させるだけの簡単な操作で各外側板を所定位置にセッティングする際の作業負担や作業時間を大幅に低減することができ、これにより所期のコーナー擁壁ブロックを高精度、且つ、高効率で製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各内側板に対する各外側板のセッティング作業を簡単、且つ、容易に行えるコーナー擁壁ブロック製造用型枠を提供することができる。
【0010】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1〜図7は本発明の第1実施形態に係るもので、図1は型枠の上面図、図2は図1に示した型枠の左側面図、図3は図1に示した可動ベースの上面図及び前面図、図4は図1に示した妻板の後面図、図5は図1に示した外側板の後面図、図6はブロック製造の手順説明図、図7はコーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図である。
【0012】
まず、図1〜図5を参照して同図に示した型枠のメカニズムについて説明する。
【0013】
図1〜図5における符号1はベース、2は支柱、3は回転ガイド、4は左右一対の可動ベース、5は左右一対の内側板、6は左右一対の底板、7は左右一対の妻板、8は左右一対の第1外側板、9は左右一対の第2外側板、10は角度可変機構、11はコーナー底板、12はコーナー側板である。以下の説明では、図1の下を前、上を後、左を左、右を右として表記する。
【0014】
ベース1の上面には、図1及び図2に示すように、支柱2の中心からの半径が異なる3個の円弧状レール1aが左右対称に設けられている。また、ベース1の上面には、支柱1の中心からの半径が異なる2個の円弧状軌跡に沿って複数の可動ベース固定穴1bが所定角度間隔、本第1実施形態では5度間隔で左右対称に設けられている。この可動ベース固定穴1bはボルトB4が直接ねじ込まれるネジ穴であってもよく、また、ボルトB4の端にナットを締結する際に挿入される貫通穴であってもよい。
【0015】
支柱2は横断面円形のシャフトから成り、図1に示すように、ベース1の上面に垂直に立設されている。
【0016】
回転ガイド3は円筒形の一部を縦長に排除した形状、或いは、円筒形の一部を後述する各内側板5のブラケット5bの可動範囲に合わせて横長に排除した形状を成し、その中心が支柱2の中心と一致するようにベース1の上面に立設されている。回転ガイド3はその外面を後述する各内側板5の湾曲面5aを接触していて該各各内側板5を回転させるときのガイドの役目を果たす。本第1実施形態では上端が開口したものを回転ガイド3として示してあるが、上端開口を円形板で閉塞したものを回転ガイド3として使用し該円形板により支柱2の上端を支持して支柱2の撓みを防止することが望ましい。
【0017】
各可動ベース4は、図3(A)及び図3(B)に示すように、前後が開放した縦断面矩形のベース本体4aと、ベース本体4aの底部と連続した平面を有する後方延長部4bとを有している。ベース本体4aの底部の上面と後方延長部4bの上面には、互いが平行な直線状レール4cが設けられている。また、ベース本体4aの底部の前面には、斜行した長穴状のボルト挿入穴4d1を有するブラケット4dが左右に間隔をおいて2個設けられている。図1から分かるように、各ブラケット4dのボルト挿入穴4d1は、先に述べた可動ベース固定穴1bにそれぞれ対応している。
【0018】
さらに、ベース本体4aの底部の下面には、溝付きローラ4e1を回転自在に有する計5個の車輪4eが図3(A)に破線で示す位置に設けられている。図3(A)において左側の2個の車輪4eの溝付きローラ4e1はベース1の外側の円弧状レール1aに移動可能に係合し、中央の2個の車輪4eの溝付きローラ4e1はベース1の中央の円弧状レール1aに移動可能に係合し、右側の1個の車輪4eの溝付きローラ4e1はベース1の内側の円弧状レール1aに移動可能に係合している。即ち、各可動ベース4は、ベース1の上面を各内側板2の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に配置されている。
【0019】
各内側板5は矩形板状を成し、図1,図2及び図4に示すように、各可動ベース4のベース本体4aの上面にベース1の上面と直角を成すようにそれぞれ立設されている。各内側板5の内側端には、回転ガイド3の外面に摺動可能に面接触する湾曲面5aが設けられている。また、各内側板5の内側端には、一端を支柱2に回転自在に軸支されたL字状ブラケット5bの他端が上下方向に間隔をおいて計3個固定されている。即ち、各内側板5は支柱2を中心として回転を可能としており、また、各内側板5が立設された各可動ベース4は該各内側板5と一緒に同一軌道で移動することができる。
【0020】
各底板6は矩形板状を成し、図1,図2及び図4に示すように、図示省略のボルトを用いて各可動ベース4のベース本体4aの上面にその上面がベース1の上面と直角を成すように固定される。各底板6はその下部に高さ調整部6a(図4参照)を有していて、該高さ調整部6aを高さの変えることによってその上面高さを変更できるようになっている。
【0021】
各妻板7は横断面L字形を成し、図1,図2及び図4に示すように、その上端高さは各内側板5の上端高さと一致している。各妻板7の各内側板5に密着する板状部分には、左右方向に延びる計3個の長穴状のボルト挿入穴7aが上下方向に間隔をおいて設けられている。また、各内側板5の各ボルト挿入穴7aに対応する部分には妻板固定穴(図示省略)が設けられている。この妻板固定穴はボルトB7が直接ねじ込まれるネジ穴であってもよく、また、ボルトB7の端にナットを締結する際に挿入される貫通穴であってもよい。即ち、各妻板7はベース1の上面と直角を成す向きで各内側板5に対する左右方向位置を変更できるように該各内側板5に取り付けられる。
【0022】
各第1外側板8は矩形板状を成し、図1,図2及び図5に示すように、ベース1の上面と直角を成す部分の下端に90度屈曲して前側に延びる狭幅の前方延長部8aを有している。また、各第1外側板8の前方延長部8aの下面には、溝付きローラ8b1を回転自在に有する計4個の車輪8bが前後左右方向に間隔をおいて設けられている。外側の2個の車輪8bの溝付きローラ8b1は各可動ベース4の外側の直線状レール4cに移動可能に係合し、内側の2個の車輪8bの溝付きローラ8b1は各可動ベース4の内側の直線状レール4cに移動可能に係合している。即ち、各第1外側板8は、各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置されている。
【0023】
各第2外側板9は矩形板状を成し、図1,図2及び図5に示すように、各内側板5と平行に向き合うように各第1外側板8の前側に取り付けられ、その上端高さは各内側板5の上端高さと一致している。
【0024】
前記各第1外側板8には、図5に示すように、左右方向に延びる計9個の長穴状のボルト挿入穴8aが上下左右方向に間隔をおいて設けられている。また、各第2外側板9の各ボルト挿入穴8aに対応する部分には第2外側板固定穴(図示省略)が設けられている。この第2外側板固定穴はボルトB9が直接ねじ込まれるネジ穴であってもよく、また、ボルトB9の端にナットを締結する際に挿入される貫通穴であってもよい。即ち、各第2外側板9はベース1の上面と直角を成す向きで各第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該各第1外側板8に取り付けられている。
【0025】
因みに、請求項1で言うところの「外側板」は、前記第1外側板8と前記第2外側板9のコンビネーションが相当する。
【0026】
角度可変機構10は、図1及び図2に示すように、前後2つの支持台10aと、両支持台10aに回転自在に、且つ、ベース1の上面と平行に支持された操作ヘッド10b1付きのネジ棒10bと、ネジ棒10bにそのネジ穴(図示省略)を螺合された直方体形状の可動部10cと、可動部10cの上下面にその一端を回転自在に連結され、且つ、その他端を各内側板5に回転自在に、且つ、ベース1の上面と平行に連結された上下各1対のリンク10dとから成る。
【0027】
この角度可変機構10によれば、操作ヘッド10b1を介してネジ棒10bを所定方向に回転させて可動部10cを前進させると、上下各1対のリンク10dの成す角度がそれぞれ減少して各内側板5が支柱2を中心として同一角度内側に回転すると共に、各内側板5と一緒に各可動ベース4が該各内側板5の回転軌道に沿って移動する。また、操作ヘッド10b1を介してネジ棒10bを前記とは逆方向に回転させて可動部10cを後退させると、上下各1対のリンク10dの成す角度がそれぞれ増加して各内側板5が支柱2を中心として同一角度外側に回転すると共に、各内側板5と一緒に各可動ベース4が該各内側板5の回転軌道に沿って移動する。
【0028】
次に、図1及び図6を参照して、図7に示したコーナー擁壁ブロックCB1(コーナー角度θ=90度)を製造する際の手順について説明する。
【0029】
製造に際しては、図1に示すように、高さ調整された後の各底板6をその一側が各内側板5に密着するように各可動ベース4のベース本体4aの上面に固定する。また、各妻板7を各内側板5にボルトB7を用いて仮止めし、各第2外側板9を各第1外側板8にボルトB9を用いて仮止めする。
【0030】
そして、図6に示すように、角度可変機構10により各内側板5の開き角度を90度に変更する。各可動ベース4は各内側板5の回転軌道に沿って該各内側板5と一緒に移動するため、移動後の各可動ベース4のブラケット4dのボルト挿入穴4d1と該ボルト挿入穴4d1に対向するベース1の可動ベース固定穴1bに上からボルトB4をそれぞれ挿入して該各ボルトB4を用いて各可動ベース4をベース1に固定する。
【0031】
そして、予め用意しておいた90度用のコーナー底板11を各底板6の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各底板6に固定する。ここで使用するコーナー底板11は上面形がL字形で両端面は各底板6の端に密着し、前面は回転ガイド3と各内側板5に密着する。
【0032】
そして、各第1外側板8に対して各第2外側板9を内側に移動させて各第2外側板9の相互の隙間寸法を調整し、予め用意しておいた90度用のコーナー側板12を各第2外側板9の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各第2外側板9に固定する。ここで使用するコーナー側板12は横断面がW形状でそれ自体が可撓性を有する金属板から成り、その上下寸法は第2外側板9の上下寸法に一致している。
【0033】
そして、各妻板7を各々の内面が各底板6の端に密着する位置で各ボルトB7を用いて各内側板5に固定すると共に、各第2外側板9を各ボルトB9を用いて各第1外側板8に固定し、各第2外側板9が各々の内面が各底板6の他側に密着するように各第1外側板8を各内側板5に向かって平行移動させる。
【0034】
そして、各内側板5と各第1外側板9をその上辺,側辺及び下辺等に配した図示省略の複数の型締めクランプにて締め付ける。
【0035】
そして、回転ガイド3と各内側板5と各底板6とコーナー底板11と各妻板7と各第2外側板9とコーナー側板12とで囲まれる空間にコンクリートCOを打設し養生して硬化させる。
【0036】
打設コンクリートCOが硬化した後は、複数の型締めクランプを取り外し、コーナー側板12を取り外してから各第1外側板8を前記とは逆方向に移動させて各第2外側板を製品から引き離し、必要に応じて各妻板7の固定を緩めて製品から引き離した上で、製品を型枠から取り出す。
【0037】
以上により、図9に示すコーナー擁壁ブロックCB1、即ち、各側版部CB1aの成す角度θ(コーナー角度)が90度のコーナー擁壁ブロックCB1が製造される。
【0038】
図示を省略したが、コーナー角度θが90度以外のコーナー擁壁ブロック、即ち、コーナー角度θが90度<θ<180度のコーナー擁壁ブロックを製造する場合も、目的のコーナー角度に適合したコーナー底板11及びコーナー側板12を適宜使用すれば、前記同様の手順で所期のコーナー擁壁ブロックを製造することができる。
【0039】
因みに、コーナー側板12はその可撓性を利用してある程度の角度変形が可能であるので、例えば、コーナー角度θが90度≦θ≦120度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが120度≦θ≦150度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが150度≦θ<180度のコーナー擁壁ブロックを、基本角度が異なる3種類のコーナー側板12、例えば基本角度が105度と135度と165度の3種類のコーナー側板12を利用して製造することも可能である。
【0040】
このように、前述の型枠によれば、ベース1の上面を各内側板5の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に左右一対の可動ベース4を配置し、各内側板5を各可動ベース4の上面にそれぞれ立設すると共に、各外側板(第1,第2外側板8,9)を各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置してあるので、各外側板(第1,第2外側板8,9)を平行移動させるだけの簡単な操作で、各外側板(第1,第2外側板8,9)を所定位置にセッティングする際の作業負担や作業時間を大幅に低減することができ、これにより所期のコーナー擁壁ブロックを高精度、且つ、高効率で製造することができる。
【0041】
また、前述の型枠によれば、各外側板を、各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置された第1外側板8と、各内側板5と平行に向き合い、且つ、第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板8に取り付けられた第2外側板9とから構成してあるので、各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにすることができる。
【0042】
つまり、各内側板の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)の変更に伴って外側板相互の隙間寸法が変化する従前の型枠にあっては隙間寸法が大きくなると該隙間に装着すべきコーナー側板として高強度のものがブロック製造に際して必要になるが、前述の型枠では各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにできるので、基本角度のみが異なる数種類のコーナー側板12を用意するだけで種々のコーナー角度θを有するコーナー擁壁ブロックを的確に製造することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図8〜図12は本発明の第2実施形態に係るもので、図8は型枠の上面図、図9は図8に示した型枠の左側面図、図10はブロック製造の手順説明図、図11はコーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図、図12はブロック製造の他の手順説明図である。
【0044】
まず、図8及び図9を参照して同図に示した型枠のメカニズムについて説明する。
【0045】
図8及び図9に示した型枠が、図1〜図5に示した型枠と異なるところは、
(1)各内側板5の上端縁に、支柱2側の角度が45度を成しベース1の上面と平行な略 三角形状の前方延長部5cをそれぞれ線対称に設けて、各前方延長部5cを各可動ベ ース4との間に設けた脚柱5dで支持した点
(2)回転ガイド3の上端開口を円形板3aで閉塞して該回転ガイド3の高さを各内側板 5の前方延長部5cの上面高さと一致、もしくは、前方延長部5cの上面高さよりも 僅かに高くした点
(3)各妻板7の上端縁に、各内側板5の前方延長部5cの上面に接し、且つ、ベース1 の上面と平行な前方延長部7bをそれぞれ設けた点
にある。図8及び図9に示した型枠の他の構成は図1〜図5に示した型枠と同じであるのでその説明を省略する。
【0046】
次に、図8及び図10を参照して、図11に示したコーナー擁壁ブロックCB2(コーナー角度θ=90度)を製造する際の手順について説明する。
【0047】
製造に際しては、図8に示すように、高さ調整された後の各底板6をその一側が各内側板5に密着するように各可動ベース4のベース本体4aの上面に固定する。また、各妻板7を各内側板5にボルトB7を用いて仮止めし、各第2外側板9を各第1外側板8にボルトB9を用いて仮止めする。
【0048】
そして、図10に示すように、角度可変機構10により各内側板5の開き角度を90度に変更して、各内側板5の前方延長部5cを相互に密着させる。各可動ベース4は各内側板5の回転軌道に沿って該各内側板5と一緒に移動するため、移動後の各可動ベース4のブラケット4dのボルト挿入穴4d1と該ボルト挿入穴4d1に対向するベース1の可動ベース固定穴1bに上からボルトB4をそれぞれ挿入して該各ボルトB4を用いて各可動ベース4をベース1に固定する。
【0049】
そして、予め用意しておいた90度用のコーナー底板11を各底板6の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各底板6に固定する。ここで使用するコーナー底板11は上面形がL字形で両端面は各底板6の端に密着し、前面は回転ガイド3と各内側板5に密着する。
【0050】
そして、各第1外側板8に対して各第2外側板9を内側に移動させて各第2外側板9の相互の隙間寸法を調整し、予め用意しておいた90度用のコーナー側板12を各第2外側板9の相互の隙間に嵌め込んで図示省略のボルトを用いて各第2外側板9に固定する。ここで使用するコーナー側板12は横断面がW形状でそれ自体が可撓性を有する金属板から成り、その上下寸法は第2外側板9の上下寸法に一致している。
【0051】
そして、各妻板7を各々の内面が各底板6の端に密着する位置で各ボルトB7を用いて各内側板5に固定すると共に、各第2外側板9を各ボルトB9を用いて各第1外側板8に固定し、各第2外側板9を各々の内面が各底板6の他側に密着するように各第1外側板8を各内側板5に向かって平行移動させる。
【0052】
そして、予め用意した補助妻板13をその両端が各妻板5の前方延長部5cの内面に密着するようにボルトB13を用いて各内側板5の前方延長部5cに固定すると共に、各内側板5と各第1外側板9、並びに、各内側板5相互をその上辺,側辺及び下辺等に配した図示省略の複数の型締めクランプにて締め付ける。
【0053】
そして、回転ガイド3と各内側板5と各底板6とコーナー底板11と各妻板7と各第2外側板9とコーナー側板12と補助妻板13とで囲まれる空間にコンクリートCOを打設し養生して硬化させる。
【0054】
打設コンクリートCOが硬化した後は、複数の型締めクランプを取り外し、コーナー側板12を取り外してから各第1外側板8を前記とは逆方向に移動させて各第2外側板を製品から引き離し、補助妻板13を取り外し、必要に応じて各妻板7の固定を緩めて製品から引き離した上で、製品を型枠から取り出す。
【0055】
以上により、図11に示すコーナー擁壁ブロックCB2、即ち、各側版部CB2aの成す角度θ(コーナー角度)が90度で、両側版部CB2aの間に底版部CB2bを有するコーナー擁壁ブロックCB2が製造される。
【0056】
図示を省略したが、コーナー角度θが90度以外のコーナー擁壁ブロック、即ち、コーナー角度θが90度<θ<180度のコーナー擁壁ブロックを製造する場合も、目的のコーナー角度に適合したコーナー底板11及びコーナー側板12を適宜使用すると共に、目的のコーナー角度に適合した補助妻板13(図12参照)を適宜使用し、且つ、各内側板5の前方延長部5cの間にできる三角形状の隙間に該隙間に適合した形状の補助内側板14(図12参照)を嵌め込んで図示省略のボルトで固定すれば、前記同様の手順で所期のコーナー擁壁ブロックを製造することができる。
【0057】
因みに、コーナー側板12はその可撓性を利用してある程度の角度変形が可能であるので、例えば、コーナー角度θが90度≦θ≦120度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが120度≦θ≦150度のコーナー擁壁ブロックと、コーナー角度θが150度≦θ<180度のコーナー擁壁ブロックを、基本角度が異なる3種類のコーナー側板12、例えば基本角度が105度と135度と165度の3種類のコーナー側板12を利用して製造することも可能である。
【0058】
このように、前述の型枠によれば、ベース1の上面を各内側板5の回転軌道に沿って移動できるように該ベース1の上面に左右一対の可動ベース4を配置し、各内側板5を各可動ベース4の上面にそれぞれ立設すると共に、各外側板(第1,第2外側板8,9)を各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置してあるので、各外側板(第1,第2外側板8,9)を平行移動させるだけの簡単な操作で、各外側板(第1,第2外側板8,9)を所定位置にセッティングする際の作業負担や作業時間を大幅に低減することができ、これにより所期のコーナー擁壁ブロックを高精度、且つ、高効率で製造することができる。
【0059】
また、前述の型枠によれば、各外側板を、各内側板5に対して平行移動できるように可動ベース4に配置された第1外側板8と、各内側板5と平行に向き合い、且つ、第1外側板8に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板8に取り付けられた第2外側板9とから構成してあるので、各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにすることができる。
【0060】
つまり、各内側板の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)の変更に伴って外側板相互の隙間寸法が変化する従前の型枠にあっては隙間寸法が大きくなると該隙間に装着すべきコーナー側板として高強度のものがブロック製造に際して必要になるが、前述の型枠では各内側板5の開き角度(=コーナー擁壁ブロックのコーナー角度θ)に拘わらず第2外側板9の相互の隙間を同じにできるので、基本角度のみが異なる数種類のコーナー側板12を用意するだけで種々のコーナー角度θを有するコーナー擁壁ブロックを的確に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る型枠の上面図である。
【図2】図1に示した型枠の左側面図である。
【図3】図1に示した可動ベースの上面図及び前面図である。
【図4】図1に示した妻板の後面図である。
【図5】図1に示した外側板の後面図である。
【図6】ブロック製造の手順説明図である。
【図7】コーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る型枠の上面図である。
【図9】図8に示した型枠の左側面図である。
【図10】ブロック製造の手順説明図である。
【図11】コーナー角度が90度のコーナー擁壁ブロックの斜視図である。
【図12】ブロック製造の他の手順説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1…ベース、2…支柱、4…可動ベース、5…内側板、6…底板、7…妻板、8…第1外側板、9…第2外側板、11…コーナー底板、12…コーナー側板、CB1,CB2…コーナー擁壁ブロック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、ベースの上面に立設された支柱と、支柱に回転自在に設けられた左右一対の内側板と、各内側板と間隔を隔てて配置される左右一対の外側板と、外側板相互の隙間に装着されるコーナー側板と、各内側板と各外側板との間に挟み込まれるように配置される左右一対の底板と、底板相互の隙間に装着されるコーナー底板と、各内側板の端部と各外側板の端部との間に配置される妻板とを備えたコーナー擁壁ブロック製造用型枠であって、
ベースの上面を各内側板の回転軌道に沿って移動できるように該ベースの上面に配置された左右一対の可動ベースを備え、
各内側板は各可動ベースの上面にそれぞれ立設されていて、各外側板は各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置されている、
ことを特徴とするコーナー擁壁ブロック製造用型枠。
【請求項2】
各外側板は、各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置された第1外側板と、各内側板と平行に向き合い、且つ、第1外側板に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板に取り付けられた第2外側板とから構成されている、
ことを特徴とするコーナー擁壁ブロック製造用型枠。
【請求項1】
ベースと、ベースの上面に立設された支柱と、支柱に回転自在に設けられた左右一対の内側板と、各内側板と間隔を隔てて配置される左右一対の外側板と、外側板相互の隙間に装着されるコーナー側板と、各内側板と各外側板との間に挟み込まれるように配置される左右一対の底板と、底板相互の隙間に装着されるコーナー底板と、各内側板の端部と各外側板の端部との間に配置される妻板とを備えたコーナー擁壁ブロック製造用型枠であって、
ベースの上面を各内側板の回転軌道に沿って移動できるように該ベースの上面に配置された左右一対の可動ベースを備え、
各内側板は各可動ベースの上面にそれぞれ立設されていて、各外側板は各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置されている、
ことを特徴とするコーナー擁壁ブロック製造用型枠。
【請求項2】
各外側板は、各内側板に対して平行移動できるように可動ベースに配置された第1外側板と、各内側板と平行に向き合い、且つ、第1外側板に対する左右方向位置を変更できるように該第1外側板に取り付けられた第2外側板とから構成されている、
ことを特徴とするコーナー擁壁ブロック製造用型枠。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−126172(P2009−126172A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307423(P2007−307423)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(308011845)カイエー共和コンクリート株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(308011845)カイエー共和コンクリート株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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