説明

コーニファイドエンベロープ成熟促進剤

【課題】コーニファイドエンベロープの成熟化を促進する促進剤の提供を目的とする。
【解決手段】コーニファイドエンベロープ成熟促進剤は、アスタキサンチンを含有する。
アスタキサンチンを含有するヘマトコッカス藻抽出物を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の角層を構成するコーニファイドエンベロープ(角質肥厚膜:cornified envelope)の成熟化を促進する促進剤に係る。
【背景技術】
【0002】
皮膚の角層は表皮角化細胞が終末分化して形成された角質細胞と、それをとりまく細胞間脂質で構成されている。
細胞間脂質はセラミド、コレステロール、脂肪酸等を成分としたラメラ構造を組織し、角質細胞はケラチン線維を主成分とし、それを包むコーニファイドエンベロープ(以下、必要に応じてCEと略称する。)とからなる。
このコーニファイドエンベロープは、角層が正常に機能するのに重要な役割を有し、肌の状態を健康で美しく保つのにCEの成熟化を促進することが重要となる。
【0003】
特許文献1はCEの成熟促進にイミダゾリジノン誘導体が大きく寄与している旨、開示する。
イミダゾリジノン誘導体は、副作用の有無については必ずしも明確になっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−303187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コーニファイドエンベロープの成熟化を促進する促進剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコーニファイドエンベロープの成熟化を促進する促進剤は、アスタキサンチンを含有することを特徴とする。
また、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンを用い、ヘマトコッカス藻抽出物を有するコーニファイドエンベロープ成熟促進剤としてもよい。
アスタキサンチンは、キサントフィル類に分類されるカロテノイドの一種である。
IUPAC名は、3,3’−ジヒドロキシ−β,βカロテン−4、4’ジオンであり、3及び3’位のヒドロキシ基の位置により(3R,3’R)体、(3R,3’S)体(メソ体)、(3S,3’S)体の三種が存在し、共役二重結合のシス−トランスによる異性体を有する。
本発明では、いずれのアスタキサンチンを用いても良い。
また、遊離型、モノエステル型、ジエステル型として存在可能である。
天然物由来のものとしては、例えば、緑藻ヘマトコッカスなどの微細藻類、赤色酵母フ
ァフィアなどの酵母類、エビ、オキアミ、カニ、ミジンコなどの節足動物類の甲殻、イカ
、タコなどの軟体動物類の内臓や生殖巣、種々の魚介類の皮、ナツザキフクジュソウなど
のフクジュソウ属の花弁、Paracoccus sp. N81106、Brevun
dimonas sp. SD212、Erythrobacter sp. PC6な
どのα−プロテオバクテリア類、Gordonia sp. KANMONKAZ−11
29などのゴードニア属、Schizochytriuym sp. KH105などの
ラビリンチュラ類(特にヤブレツボカビ科)やアスタキサンチン産生遺伝子組み換え生物
体などから得られるものをあげることができる。
また、本発明に係るアスタキサンチン含有CE成熟促進剤は、外用剤として用いることができる。
外用剤の形態には、医薬品用の皮膚外用剤や化粧品の形態を含み、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、分散液、洗浄料、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品等の化粧品や、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等の医薬品などとすることができる。
また、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、各種皮膚栄養成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、色剤、水、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、初めてアスタキサンチンがコーニファイドエンベロープの成熟化を促進することを明らかにしたものであり、これにより角層の機能が向上し、肌の状態の改善及び正常化に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、コーニファイドエンベロープの成熟化について評価試験を実施したので以下、説明する。
なお、コーニファイドエンベロープの評価は、特許第3878787号に記載の方法を取り入れて実施した。
【0009】
<角層サンプルの採取>
5名の被験者の左右前腕内側に対して30回の連続したテープストリッピングを行い、荒れ肌を作成した。
右腕荒れ肌部位に対しては、表1に示す実施例の外用剤を朝晩2回塗布させ、左腕荒れ肌部位に対しては、表1に示す比較例の外用剤を朝晩2回塗布させた。
表1に示すヘマトコッカス藻抽出物には、アスタキサンチンが約11%含まれている。
また、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルはオイル状成分であり、アスタキサンチンの希釈安定剤として加え、比較例1にはヘマトコッカス藻抽出物の添加に対するコントロールであることを考慮して配合率を決定した。
4週間に渡って外用剤を連用させた後、テープストリッピングにより当該部位の角層第一層目を採取した。これにより採取された角層を用いて、コーニファイドエンベロープ(以下、CE)の成熟度を評価した。
【0010】
【表1】

【0011】
<CEの調整>
(1) 角層が付着したテープを細切し、溶出液(ジチオスレイトール、ドデシル硫酸ナトリウムを含むトリス塩酸緩衝液)を加え、100℃で10分間加熱した。
(2) テープ基材を残して分散液を採取し、4000g、10分間の遠心分離を行った。
(3) 上清を捨て、不溶物に溶出液を加え、100℃で10分間の加熱と4000g、10分間の遠心を行った。
(4) (3)に記す作業を2回繰り返して可溶性画分を完全に除去し、得た不溶物をCEとした。
<CEの染色と評価>
(1) コーニファイドエンベロープをスライドグラスに滴下し、風乾させた後、冷アセトン中で固定した。
(2) リン酸緩衝生理食塩液にて水和した後、抗ヒトインボルクリン抗体(NOVOCASTRA社)を1次抗体として反応させた。
余剰の抗体を洗浄除去した後、FITC標識抗マウスイムノグロブリン抗体を2次抗体として反応させた。
(3) 洗浄後、NileRed染色液を反応させた。
(4) 染色したCEの蛍光顕微鏡観察画像を画像処理ソフト(ImageJ:National Institute of Health)により解析し、CE全面積中の、未成熟CEの割合を下式により算出した。

未成熟CEの割合(%)=インボルクリン陽性CE面積/(インボルクリン陽性CE面積+NileRed陽性CE面積)
【0012】
比較評価した結果を下記、表2に示す。
【表2】

【0013】
実施例1は比較例1よりも未成熟CEの割合が12.6%も少なく、アスタキサンチンがCEの成熟化に大きく作用していることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンを含有するコーニファイドエンベロープ成熟促進剤。
【請求項2】
ヘマトコッカス藻抽出物を含有するコーニファイドエンベロープ成熟促進剤。

【公開番号】特開2012−153637(P2012−153637A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13480(P2011−13480)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】