説明

コールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物

【課題】 ドット飛び等が起こらず円滑なコーティングができるとともに、コーティング後のドットの外観が良好であり、しかも高い接着強度が得られるコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 コールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物は、ホットメルト樹脂を主成分として含み、安息角が40°〜45°で且つ嵩比重が490〜700g/lである粒子径250μm以下の粉体からなる。ホットメルト樹脂としては、ポリアミド又はポリエステルであるのが好ましい。前記コールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物としては、ホットメルト樹脂粉体100重量部に対して、粒子径40μm以下の脂肪族カルボン酸塩からなる滑剤を0.1〜0.8重量部含有するするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールドトランスファパウダーポイント装置に適応する粉体特性を有するホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近中国において接着芯地の製造方法としてコールドトランスファパウダーポイント法が開発された。この方法は、装置が従来の方法で用いる装置と比較して非常に安価であるため、今後普及することが見込まれる。この方法におけるコーティングプロセスは、粉体(パウダー)をロータリースクリーン内に定量的に供給し、スクリーン内のナイフを用いて粉体をスクリーンから押出し、スクリーンパターン通りに布上に転写させ、その後、赤外線ヒーターを用いて布に樹脂を固着させる方式である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記コールドトランスファパウダーポイント法は、粉体の有する特性がコーティング状態に大きく影響する。例えば、転写量のコントロールは粉体の流動性とライン速度が大きく影響し、ドット形状については、粉体の流動性が悪いとスクリーン穴の目詰まりによりドット飛びが生じ、逆に粉体の流動性が良すぎるとスクリーンから粉体が押し出されたとき、ドットが崩壊して見栄えが悪くなり、接着強度も低下する。
【0004】
従って、本発明の目的は、ドット飛び等が起こらず円滑なコーティングができるとともに、コーティング後のドットの外観が良好であり、しかも高い接着強度が得られるコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、コールドトランスファパウダーポイント装置用のパウダーについて鋭意研究した結果、安息角、嵩比重及び粒子径が特定範囲にある特定のパウダー特性を有する粉体からなるホットメルト樹脂組成物をコールドトランスファコーティング用の樹脂として用いると、コーティング後の外観に優れ、しかも高い接着強度が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、ホットメルト樹脂を主成分として含み、安息角が40°〜45°で且つ嵩比重が490〜700g/lである粒子径250μm以下の粉体からなるコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物を提供する。
【0007】
ホットメルト樹脂としては、ポリアミド又はポリエステルであるのが好ましい。また、前記コールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物としては、ホットメルト樹脂粉体100重量部に対して、粒子径40μm以下の脂肪族カルボン酸塩からなる滑剤を0.1〜0.8重量部含有するするのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物によれば、ドット飛び等が起こらず円滑なコーティングができるとともに、コーティング後のドットの外観が良好であり、しかも高い接着強度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物は、ホットメルト樹脂を主成分として含み、安息角が40°〜45°で且つ嵩比重が490〜700g/lである粒子径250μm以下の粉体からなる。
【0010】
ホットメルト樹脂(以下、「HM樹脂」と称する場合がある)としては、ホットメルト接着が可能な樹脂であれば特に制限されず、例えば公知のホットメルト接着樹脂の中から適宜選択して用いることができる。HM樹脂としては、融点が150℃以下(例えば、70〜150℃、好ましくは90〜135℃程度)のものが好ましい。HM樹脂は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0011】
HM樹脂としては、例えば、共重合ポリアミド系樹脂等のポリアミドや共重合ポリエステル系樹脂等のポリエステルを好適に用いることができる。共重合ポリアミド系樹脂や共重合ポリエステル系樹脂としては、構成しているモノマー成分に特に制限はなく、共重合により得られるポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂であればよい。
【0012】
具体的には、共重合ポリアミド系樹脂としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−又はp−キシリレンジアミンなどの脂肪族、脂環式、芳香族等のジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの脂肪族、脂環式、芳香族等のジカルボン酸との重縮合により得られる共重合ポリアミド;6−アミノヘキサン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の縮合によって得られる共重合ポリアミド;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムから得られる共重合ポリアミドや、これらの成分(ジアミン、ジカルボン酸、アミノカルボン酸、ラクタムなど)からなる共重合ポリアミドなどが挙げられる。
【0013】
また、共重合ポリエステル系樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの脂肪族、脂環式、芳香族等のジヒドロキシ化合物と、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4´−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂肪族、脂環式、芳香族等のジカルボン酸との重縮合によって得られる共重合ポリエステルなどが挙げられる。
【0014】
HM樹脂は、JIS K6933に準じて、m−クレゾールを用いた粘度測定法で測定した相対粘度が、例えば、1.0〜2.2(好ましくは1.1〜2.0、さらに好ましくは1.2〜1.8)であることが望ましい。
【0015】
また、HM樹脂は、JIS K7210に準じて、温度160℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレイト(MFR)が、例えば、0.5〜400g/10min(好ましくは1.0〜250g/10min)程度の範囲であることが望ましい。
【0016】
HM樹脂の粉体全体に対する割合は、一般に95重量%以上(例えば95〜99.9重量%)、好ましくは97重量%以上(例えば97〜99.9重量%)、さらに好ましくは99重量%以上(例えば99〜99.9重量%)である。
【0017】
本発明では、粉体はホットメルト樹脂以外の他の成分(添加剤)を含んでいてもよい。このような成分として、例えば、滑剤、無機充填剤(カーボンブラック等)、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、カップリング剤、熱安定剤、耐候安定剤、離型剤、ワックス類、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。本発明における粉体は、これらの添加剤を含んでいる場合、HM樹脂粉体と添加剤からなる粉体との混合物、HM樹脂及び添加剤を含む粉体の集合体、又はこれらの混合物の何れであってもよいが、HM樹脂粉体と添加剤からなる粉体との混合物である(HM樹脂と添加剤とが別々の粉体を構成する)場合が多い。
【0018】
前記滑剤としては特に限定されず、脂肪族カルボン酸やその塩等の公知乃至慣用の滑剤を使用できるが、特に、脂肪族カルボン酸塩が好ましい。脂肪族カルボン酸塩として、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸金属塩;ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等のラウリン酸塩などの高級脂肪酸金属塩(高級脂肪酸アルカリ土類金属塩、高級脂肪酸遷移金属塩等)などが挙げられる。なかでも、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸アルカリ土類金属塩が好ましい。
【0019】
滑剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常、HM樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜0.85重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部程度である。滑剤の量が少なすぎると粉体の流動性が悪くて、粉体がスクリーンから押し出されにくくなり、逆に多すぎると流動性が良すぎて、粉体がスクリーンから粉体が押し出されたとき、ドットが崩壊しやすくなる。本発明における粉体としては、特に、ホットメルト樹脂粉体100重量部に対して、滑剤を0.05〜0.85重量部、特に0.1〜0.8重量部含むのが好ましい。
【0020】
本発明において、粉体(HM樹脂粉体等)の粒子径は250μm以下であり、好ましくは200μm以下である。粉体の粒子径が250μmを超えると、粒子が大きすぎてドット状にならない。粉体としては、適宜なふるいを用いて整粒した粉体、例えば、0〜250μmの粒度分布を有する粉体、0〜200μmの粒度分布を有する粉体、0〜160μmの粒度分布を有する粉体、0〜80μmの粒度分布を有する粉体などを使用できる。添加剤として滑剤を用いる場合、滑剤の粒子径としては、HM樹脂粉体の粒子径に対して著しく大きくなければよいが、通常250μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは80μm以下であり、特に40μm以下であるのが好ましい。
【0021】
本発明において、粉体の安息角は40°〜45°である。安息角が40°未満では流動性が良すぎて、コールドトランスファパウダーポイント装置のスクリーンから粉体を押し出した際、ドットが崩壊して見栄えが悪くなるだけでなく、接着特性も低下する。安息角が45°を超えると、流動性が低すぎ、スクリーン穴の目詰まりを起こし、ドット飛び等の不具合が生じる。
【0022】
また、本発明において、粉体の嵩比重は490〜700g/lであり、好ましくは500〜600g/lである。嵩比重が490g/l未満では、流動性が低下して、コールドトランスファパウダーポイント装置のスクリーン穴が目詰まりを起こし、ドット飛び等の不具合が生じる。一方、嵩比重が700g/lを超えると、コールドトランスファパウダーポイント装置のスクリーンから粉体を押し出した際、ドットが崩壊して外観が悪くなるだけでなく、接着特性も低下する。
【0023】
粉体の安息角40°〜45°且つ嵩比重490〜700g/lという条件を充足しない場合には、ドット飛びとドット崩壊の何れをも抑制することは困難である。
【0024】
粉体の安息角及び嵩比重は、HM樹脂の種類、HM樹脂粉体の粒子径及び粒度分布、添加剤(特に滑剤)の種類、粒子径、粒度分布及び使用量等を適宜調整することにより上記範囲内に制御することができる。
【0025】
粉体の安息角は、粉体をロートの穴等から水平面に静かに落下堆積させたときにできる円錐状の堆積物の側面斜面が水平面とつくる角度のことであり、安息角測定器により測定することができる(ASTM D6393−99 1.3.1 Carr Angle of Repose)。粉体の嵩比重は、嵩比重測定装置により測定できる(JIS K 7365)。
【0026】
本発明のコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物は、例えば、HM樹脂と適宜な添加剤(例えば、滑剤等)とを、慣用の混合方法(ドライブレンドなど)を用いて混合することにより調製することができる。例えば、ドライブレンドにより混合する場合は、ヘンシェルミキサー等の羽根(又は翼)で高速撹拌するミキサー類、タンブラー類、あるいはナウターミキサー等の撹拌混合装置を用いることができる。
【0027】
本発明のホットメルト樹脂組成物は、コールドトランスファパウダーポイント装置を用いたコールドトランスファコーティング用として好適に使用できる。
【0028】
図1はコールドトランスファパウダーポイント装置の一例を示す概略正面図であり、図2はその概略側面図である。ホッパー(粉体投入口)1内に入れられたパウダー状のホットメルト樹脂組成物5は、スクリュー2によってロータリースクリーン4内に定量的に供給され、スクリーン4内の下部に設けられたナイフ(ブレード)3によりスクリーン4の穴から押出され、スクリーンの下を一定速度で移動する繊維系素材(布等)6上に、スクリーンパターン通りにドット状に転写される。その後、ホットメルト樹脂組成物はヒーター(赤外線ヒーター等)7により溶融して繊維系素材6の表面に固着し、接着素材(接着芯地等)が得られる。図中、8はロール状に巻回した繊維系素材、9は巻き取られた接着素材である。
【0029】
繊維系素材6としては、不織布や、織り布などが挙げられる。具体的には、合成繊維(例えば、ポリエステル製繊維、ポリアミド製繊維、アクリル系樹脂製繊維など)や天然繊維(例えば、綿など)による不織布や織り布などを用いることができる。繊維系素材は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
こうして得られる接着素材は、衣料品向けの接着芯地、自動車や家屋の内装材、工業用途のフィルターの材料の他、包装材料等の材料などとして広く使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、粉体の安息角は安息角測定器[細川ミクロン(株)製、商品名「パウダーテスター TYPE:PT−E」を用いて行った。より具体的には、篩上に粉体(約100g)を入れ、振動によりロートを経由して下部の水平に置かれた専用テーブルの上に粉体を落下させて山を形成し、その山の頂点と底辺とを結んだ直線が水平面となす角度を測定した。また、粉体の嵩比重は嵩比重測定装置を用いて行った。より具体的には、装置上部の容器に粉体を投入し、該容器下部のシャッターを抜き取り、落下する粉体をカップ(内容積100cc)内に充填し、カップ上部よりはみ出た粉体をナイフで取り除き、カップ内に充填された粉体の重量を測定し、嵩比重(単位:g/l)を算出した。
【0032】
実施例1
0〜80μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A1)[Degussa AG製、商品名「VESTAMELT 840P1」、相対粘度:1.4、融点110℃、メルトフローレート(MFR;JIS K 7210に準じて温度160℃、荷重2.16kgfの条件で測定)50g/10min]100重量部に、0〜40μmの粒度分布を持つパウダー状のステアリン酸カルシウム[日本油脂(株)製]を0.2重量部添加し、8Lヘンシェルミキサー[三井鉱山(株)製]にて500rpmで5分間撹拌させ、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は45°、嵩比重は504g/lであった。
得られた粉体を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/minでドット状にコーティングし、接着芯地を製造した。塗布量は10g/m2であった。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察するとともに、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドット飛び等の不具合はなく、ドットの外観も良好であった。
【0033】
実施例2
パウダー状のステアリン酸カルシウムの添加量を0.8重量部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は41°、嵩比重は510g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例1と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察するとともに、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドット飛び等の不具合はなく、ドットの外観も良好であった。
【0034】
比較例1
パウダー状のステアリン酸カルシウムを添加しなかった点以外は、実施例1と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は47°、嵩比重は435g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例1と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察したところ、ドット飛びが見られた。
【0035】
比較例2
パウダー状のステアリン酸カルシウムの添加量を0.9重量部とした以外は実施例1と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は39°、嵩比重は530g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例1と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドットが崩壊しており、見栄えがよくなかった。
【0036】
実施例3
0〜160μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A2)[Degussa AG製、商品名「VESTAMELT 750P016」、相対粘度:1.5、融点100℃、メルトフローレート(MFR;JIS K 7210に準じて温度160℃、荷重2.16kgfの条件で測定)14g/10min]100重量部に、0〜40μmの粒度分布を持つパウダー状のステアリン酸カルシウム[日本油脂(株)製]を0.2重量部添加し、8Lヘンシェルミキサー[三井鉱山(株)製]にて500rpmで5分間撹拌させ、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は43°、嵩比重は547g/lであった。
得られた粉体を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/minでドット状にコーティングし、接着芯地を製造した。塗布量は9g/m2であった。製造された芯地につき、コーティング状態を観察するとともに、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドット飛び等の不具合はなく、ドットの外観も良好であった。
【0037】
実施例4
パウダー状のステアリン酸カルシウムの添加量を0.8重量部とした以外は実施例3と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は41°、嵩比重は565g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例3と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察するとともに、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドット飛び等の不具合はなく、ドットの外観も良好であった。
【0038】
比較例3
パウダー状のステアリン酸カルシウムを添加しなかった点以外は、実施例3と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は43°、嵩比重は476g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例3と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察したところ、ドット飛びが見られた。
【0039】
比較例4
パウダー状のステアリン酸カルシウムの添加量を0.9重量部とした以外は実施例3と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は39°、嵩比重は590g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例3と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドットが崩壊しており、見栄えがよくなかった。
【0040】
実施例5
0〜200μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A3)[Degussa AG製、商品名「VESTAMELT 450P020」、相対粘度:1.5、融点110℃、メルトフローレート(MFR;JIS K 7210に準じて温度160℃、荷重2.16kgfの条件で測定)18g/10min]100重量部に、0〜40μmの粒度分布を持つパウダー状のステアリン酸カルシウム[日本油脂(株)製]を0.2重量部添加し、8Lヘンシェルミキサー[三井鉱山(株)製]にて500rpmで5分間撹拌させ、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は43°、嵩比重は542g/lであった。
得られた粉体を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/minでドット状にコーティングし、接着芯地を製造した。塗布量は9g/m2であった。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察するとともに、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドット飛び等の不具合はなく、ドットの外観も良好であった。
【0041】
実施例6
パウダー状のステアリン酸カルシウムの添加量を0.8重量部とした以外は実施例5と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は40°、嵩比重は573g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例5と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察するとともに、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドット飛び等の不具合はなく、ドットの外観も良好であった。
【0042】
比較例5
パウダー状のステアリン酸カルシウムを添加しなかった点以外は、実施例5と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は44°、嵩比重は487g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例5と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティング状態を観察したところ、ドット飛びが見られた。
【0043】
比較例6
パウダー状のステアリン酸カルシウムの添加量を0.9重量部とした以外は実施例5と同様の操作を行い、パウダー状のホットメルト樹脂組成物を得た。この粉体の安息角は39°、嵩比重は600g/lであった。得られた粉体を用いて、実施例5と同様にして接着芯地を製造した。製造された接着芯地につき、コーティングされたパウダーのドット形状をマイクロファイバースコープ顕微鏡(キーエンス社製)を用いて観察したところ、ドットが崩壊しており、見栄えがよくなかった。
【0044】
比較例7
0〜80μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A4)(QIDONG XINXIN社製、商品名「PA−1」、安息角:48°、嵩比重:525g/l)を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/min、塗布量(設定値)9g/m2の条件でドット状にコーティングして接着芯地を製造しようとしたが、粉体の流動性が悪く、転写が不可能であった。
【0045】
比較例8
0〜80μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A5)(QIDONG XINXIN社製、商品名「PA−2」、安息角:46°、嵩比重:481g/l)を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/min、塗布量(設定値)9g/m2の条件でドット状にコーティングして接着芯地を製造しようとしたが、粉体の流動性が悪く、転写が不可能であった。
【0046】
比較例9
0〜80μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A6)(LAOYANG KELONG社製、商品名「J501」、安息角:43°、嵩比重:461g/l)を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/min、塗布量(設定値)9g/m2の条件でドット状にコーティングして接着芯地を製造しようとしたが、ドット飛びが起こり、良品芯地は得られなかった。
【0047】
比較例10
0〜80μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A7)(LAOYANG KELONG社製、商品名「J506」、安息角:47°、嵩比重:386g/l)を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/min、塗布量(設定値)9g/m2の条件でドット状にコーティングして接着芯地を製造しようとしたが、粉体の流動性が悪く、転写が不可能であった。
【0048】
比較例11
0〜80μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A8)(TANGSHAN FENGHE社製、商品名「PA2120」、安息角:53°、嵩比重:362g/l)を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/min、塗布量(設定値)9g/m2の条件でドット状にコーティングして接着芯地を製造しようとしたが、粉体の流動性が悪く、転写が不可能であった。
【0049】
比較例12
0〜80μmの粒度分布を持つパウダー状の共重合ポリアミド樹脂(A9)(TANGSHAN FENGHE社製、商品名「PA120」、安息角:46°、嵩比重:364g/l)を、CP−66のロータリースクリーンを着装したコールドトランスファパウダーポイント装置[上海星霞高分子制品有限公司製]を用いて、約30g/m2のポリエステル製の織布にライン速度10m/min、塗布量(設定値)9g/m2の条件でドット状にコーティングして接着芯地を製造しようとしたが、粉体の流動性が悪く、転写が不可能であった。
【0050】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】コールドトランスファパウダーポイント装置の一例を示す概略正面図である。
【図2】図1のコールドトランスファパウダーポイント装置の概略側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ホッパー(粉体投入口)
2 スクリュー
3 ナイフ(ブレード)
4 スクリーン
5 パウダー状のホットメルト樹脂組成物
6 繊維系素材
7 ヒーター
8 ロール状に巻回した繊維系素材
9 巻き取られた接着素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト樹脂を主成分として含み、安息角が40°〜45°で且つ嵩比重が490〜700g/lである粒子径250μm以下の粉体からなるコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
ホットメルト樹脂がポリアミド又はポリエステルである請求項1記載のコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
ホットメルト樹脂粉体100重量部に対して、粒子径40μm以下の脂肪族カルボン酸塩からなる滑剤を0.1〜0.8重量部含有する請求項1又は2記載のコールドトランスファコーティング用ホットメルト樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−143940(P2006−143940A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338068(P2004−338068)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000108982)ダイセル・デグサ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】