説明

ゴムクロ−ラのエンドレス構造

【課題】ゴムクロ−ラのエンドレス構造にあって、メインコ−ドより外周側となるゴムの接合境界面にNR系未加硫ゴムシ−トを介して加硫することにより、ゴムの接合面の剥離が現れず、ゴムクロ−ラの耐久性の向上がもたらされた。
【解決手段】ゴムクロ−ラ基体の両端をメインコ−ドを挟んで内外を未加硫ゴム或いは若干加熱してなるゴムとし、メインコ−ドの両端を重ね合わせ、前記未加硫ゴム或いは若干加熱してなるゴム部を加硫してなるゴムクロ−ラのエンドレス構造において、少なくともメインコ−ドの外周側となるゴム接合境界面にNR系未加硫ゴムシ−トを挟んで加硫する。1‥ゴム弾性体、2‥芯金、3‥メインコ−ド、3a、3b‥メインコ−ドの両端、4‥ラグ、4a‥ラグ未加硫ゴム部、4b‥ラグ加硫ゴム部、40 ‥4aと4bとから成形されたラグ、10‥NR系未加硫ゴムシ−ト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴムクロ−ラのエンドレス構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムクロ−ラの構造としては、その長手方向に一定のピッチをもって芯金が埋設されている芯金入りのゴムクロ−ラと、芯金が埋設されていないいわゆる芯金レスゴムクロ−ラがある。
【0003】
以下、本発明を前者のゴムクロ−ラを代表して説明する。さて、前者のゴムクロ−ラはその長手方向に一定のピッチをもって芯金が埋設され、この芯金の翼部を外側から囲ってメインコ−ドが同時に埋設されたものであり、その外周側にはラグが形成されている。そして、ゴムクロ−ラをエンドレス構造とするには、成形の当初から無端状の成形法を採用する場合もあるが、通常は有端のゴム弾性体を成形してから両端を接合してエンドレス構造とするものが多い。
【0004】
図1はこの従来の技術を説明するものである。符号1は有端で長尺のゴム弾性体であって、2は芯金、3はメインコ−ド、4はラグである。そして、メインコ−ドの両端3a、3bを重ね合わせた状態でこの部位を再加硫してエンドレス構造とすることとなるが、この場合、メインコ−ド3の両端3a、3bの内外には未加硫或いは若干熱を加えた程度の完全には加硫されていないゴム部(以下、未加硫ゴム部と称す)が付けられており、この状態でメインコ−ドの両端3a、3bを重ね合わせ、然る後にこの部位を完全に加硫してエンドレス構造としている。
【0005】
そして、図2に示すように、両ゴムの接合部位は特にその外周側ではラグの位置で接合する構造となっている。これはできるだけゴム量の多い部位で接合しようとするためであり、このため、重ね合わせた際に、外周側となるメインコ−ド3aには、前記した未加硫ゴム部の先端が半分程度のラグ4aの形状をなし、一方、内周側となるメインコ−ド3bにはかかるラグ4aと接着して通常のラグ4を構成するように加硫されたラグ4bが形成されている。
【0006】
従って、エンドレス構造とされた際には、かかるラグ40 は加硫された側(4b)と未加硫側(4a)との接着によって構成されている。
【0007】
かかるラグ40 にあっては、接合強度が不足しがちであり、ゴムが引っ張り側となるメインコ−ドより外周側におけるゴム接合の境界面での剥離現象がしばしば見られ、これによってゴムクロ−ラの寿命が短くなっていたこともある。勿論、ゴム接合の境界面がラグ部でない場合も同様であり、かかる部位はゴム量が少ないことから剥離現象は更に増える傾向にある。更に、かかる現象は芯金の埋設の有無に関係がなくいずれも剥離現象がもたらされることは言うまでもない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような従来技術に鑑みてなされたものであり、ゴムクロ−ラのエンドレス時のゴム接合境界からの剥離の防止を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、有端で長尺のゴム弾性体と、この長手方向に埋設されたメインコ−ドと、外表面にラグを形成してなるゴムクロ−ラ基体にあって、当該ゴムクロ−ラ基体の両端をメインコ−ドを挟んで内外を未加硫ゴム部とし、メインコ−ドの両端を重ね合わせ、前記未加硫ゴム部を加硫してなるゴムクロ−ラのエンドレス構造において、少なくともメインコ−ドの外周側となるゴム接合境界面にNR系未加硫ゴムシ−トを挟んで加硫することを特徴とするゴムクロ−ラのエンドレス構造に係るものである。
【0010】
特に、NR系未加硫ゴムシ−トは、NRゴム量が60%以上であであるゴムクロ−ラのエンドレス構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明はゴムクロ−ラのエンドレス構造にあって、ゴムクロ−ラのメインコ−ドより外周側となるゴムの接合境界面にNR系未加硫ゴムシ−トを介して加硫することにより、ゴムの接合面の剥離が現れず、ゴムクロ−ラの耐久性の向上がもたらされることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のゴムクロ−ラのエンドレス構造にあって、ゴムの接合境界は加硫ゴムと未加硫ゴムとの接着であり、両者の接合強度は比較的弱い。従って、ゴムクロ−ラのゴムの引っ張り側のゴム接合境界に剥離が現れる。このため、本発明では、両者の接合の境界面にNR系未加硫ゴムシ−トを介在させ、この状態で加硫接着させるものであり、その接合面の強度は著しく改善され、接合境界での剥離がなくなったものである。
【0013】
本発明は以上の通りであるが、他のゴム接合境界面にもNR系未加硫ゴムシ−トを介在させることもできることは言うまでもない。
【0014】
NR系未加硫ゴムとして具体例を挙げれば、NRゴム60〜100部、SBR40〜0部であり、これに必要な充填剤、例えば、カ−ボンブラック(HAF)50〜60部、硫黄2〜4部、可塑剤5〜10部、老化防止剤2〜5部の配合組成が挙げられる。又、かかるNR系未加硫ゴムシ−トの厚さは2〜5mm程度あれば十分である。尚、この未加硫ゴムシ−トの加硫後の性状について言えば、ゴム硬度が60〜75度(JIS・A)のものが好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例をもって更に詳細に説明する。図3は本発明のゴムクロ−ラのエンドレス構造を示す図である。尚、既に述べたものと同じ符号のものはここでは説明を省略する。さて、本発明のゴムクロ−ラ基体は有端で長尺のゴム弾性体1、芯金2、メインコ−ド3、ラグ4よりなっている。そして、長尺のゴム弾性体1はその中央部はゴムクロ−ラの形状に加硫されており、この部位のゴム弾性体1及び各ラグ4は既に加硫成形されている。しかるにエンドレス時に重ね合わされるメインコ−ドの両端3a、3bにあっては、3a側にはラグ4a0 及びメインコ−ド3aの先端にはラグの半分の形状4aが未加硫ゴムにて形作られている。一方、3b側にはゴムクロ−ラの内周側の形状が未加硫ゴムにて形作られており、その手前にはラグの半分の形状4bが加硫成形されている。
【0016】
図4はエンドレス構造時の図であり、前記ゴムクロ−ラ基体のメインコ−ド3a、3bを重ね合わせる。この時、3b側の半分の加硫されたラグ4bと、3a側の未加硫状態にある半分のラグ4aが接合境界面を形成する。従って、この接合面にNR系未加硫ゴムシ−ト10を挟み込み、この状態を保持しつつ重ね合わされた全体を加熱して加硫接着するものである。
【0017】
尚、使用されたNR系未加硫ゴムシ−ト10の配合組成は、NR80部、SBR20部、HAF45部、アロマオイル13部、硫黄3部、その他老化防止剤、加硫促進剤等の必要な充填剤が配合され、これを二−ダ−にて練り込み、厚さ4mmの未加硫ゴムシ−トとしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
得られたゴムクロ−ラにおいて、これを走行に供したが、接合境界面での剥離現象は全く見られなかった。以上の通り、本発明はあらゆる形状のゴムクロ−ラのエンドレス構造に適用可能であり、芯金入りのゴムクロ−ラのみならず芯金レスのゴムクロ−ラのエンドレス構造にも採用でき、その用途は極めて広い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は従来のゴムクロ−ラのエンドレス方法を示す図である。
【図2】図2は図1の従来方法にて得られたゴムクロ−ラのエンドレス構造を示す図である。
【図3】図3は本発明のゴムクロ−ラのエンドレス方法を示す図である。
【図4】図4は図3の本発明方法にて得られたゴムクロ−ラのエンドレス構造を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1‥有端で長尺のゴム弾性体、
2‥芯金、
3‥メインコ−ド、
3a、3b‥メインコ−ドの両端、
4‥ラグ、
4a‥ラグ未加硫ゴム部、
4b‥ラグ加硫ゴム部、
40 ‥4aと4bとから成形されたラグ、
10‥NR系未加硫ゴムシ−ト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有端で長尺のゴム弾性体と、この長手方向に埋設されたメインコ−ドと、外表面にラグを形成してなるゴムクロ−ラ基体にあって、当該ゴムクロ−ラ基体の両端をメインコ−ドを挟んで内外を未加硫ゴム或いは若干加熱してなるゴムとし、メインコ−ドの両端を重ね合わせ、前記未加硫ゴム或いは若干加熱してなるゴム部を加硫してなるゴムクロ−ラのエンドレス構造において、少なくともメインコ−ドの外周側となるゴム接合境界面にNR系未加硫ゴムシ−トを挟んで加硫することを特徴とするゴムクロ−ラのエンドレス構造。
【請求項2】
NR系未加硫ゴムシ−トは、NRゴム量が60%以上である請求項1記載のゴムクロ−ラのエンドレス構造。
【請求項3】
NR系未加硫ゴムシ−トは、NRゴム量が60%以上で、SBRゴム量が40%以下である請求項1記載のゴムクロ−ラのエンドレス構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−159942(P2006−159942A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350041(P2004−350041)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】