説明

ゴムシート及びその製造方法及びその接合方法

【課題】側縁部を架橋接着により接続することによって大判のゴムシートとすることができ、かつ、接続部分を部分的に加熱加圧して接合一体化しても、得られる大判ゴムシートに波うちが発生せず、接合した部分の接合強度が高くできるようなゴムシートを提供する。
【解決手段】方形状に一体に形成されたゴムシートSであって、架橋ゴムからなる主部1と、ゴムシートの周縁部の少なくとも一辺にわたって設けられた未架橋ゴムまたは半架橋ゴムからなる接合部2とが架橋接着されたゴムシート。主部1と接合部2を構成する未架橋ゴムの架橋条件の差を利用して、ゴムシートS全体を加熱プレスしてゴムシートSを得ることができる。ゴムシートSの接合部2同士を架橋接着して、波うちのない大判のゴムシートを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池パネルなどの積層成形品を均一に圧着できる真空加圧式の真空プレス機等に取り付けるダイヤフラムとして好適に利用できるゴムシート、即ちプレス機用ダイヤフラムなどに使用されるゴムシートに関する。特に、大型のプレス機に使用可能な大判のゴムシートやその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルなどの製造工程において、電子部品を積層一体化する際には、真空引きあるいは加圧によって、電子部品等をプレスして積層一体化するためのプレス機が用いられている。これら電子部品の真空積層成形には下記特許文献1に示すような真空プレス機が用いられることが公知であり、上下の熱盤のいずれか一方もしくは双方に取り付けられるゴム製の膜体であるダイヤフラムにより被成形材を密着加圧して真空積層成形がなされる。このダイヤフラムとしては、伸縮性に富むシリコーンゴム等の耐熱性ゴムシートが使用される。
【0003】
また、特許文献2には、そのような耐熱性ゴムシートとして好適に使用できるよう、ゴムシートの架橋成形と同時にその表面に離型層が形成される成形効率のよい耐熱性ゴムシートおよびその製造方法が記載されている
【特許文献1】特開2000−135739号公報
【特許文献2】特開2007− 54966号公報
【0004】
太陽電池パネルなどの大型の電子部品を効率的にプレス成形するためには、パネル全体を一度にプレスする必要があり、その場合は、大型のプレス機及び大判のゴムシート(ダイヤフラム)が必要となる。近年においては、太陽電池パネルが大型化する傾向にあり、より大型のプレス機と大判のゴムシートが必要となってきている。
【0005】
ゴムシートは通常、未架橋ゴムを成形ロールによってシート状に分出した後、加熱プレス装置あるいは連続架橋装置により架橋することにより製造されるので、大判のゴムシートの大きさは成形ロールの幅や加熱プレス装置の大きさまでのものが限度であり、より大判のゴムシートが必要とされる場合には、架橋されたあるいは未架橋のゴムシートの側縁部を互いに接合して、大判のゴムシートとする必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、未架橋のゴムシートの側縁部を互いに接合して(例えば重ね合わせて)架橋接着して大判のゴムシートとする場合には、側縁部を互いに重ね合わせて大判とした未架橋ゴムシートの一部分のみを加熱プレス装置に入れて架橋し、順次架橋する領域を変更していってゴムシート全体を架橋するという、いわゆる送り焼きと呼ばれる架橋方法が取られるのであるが、送り焼きを行うと、それぞれの加熱プレス工程で加熱加圧されて架橋される領域と加熱加圧されず未架橋のままとなる領域との間で熱履歴や加圧の履歴が異なるために、得られるゴムシートに波うちが発生してしまい、良好な品質のゴムシートが得られなくなることがあった。
【0007】
このような問題は、連続的にロール成形された長尺のゴムシートを加熱プレス装置によって送り焼きで架橋する際にも同様に発生する。即ち、大判の未架橋ゴムシートを部分的に加熱プレスして架橋すると、波うちが発生しやすかったのである。
【0008】
また、架橋されたゴムシートの側縁部を接着剤や未架橋ゴムによって接合して、大判のゴムシートとする場合には、接着部分の表面処理などといった前処理が必要となって接合作業が効率的でない上に、接合部の強度やその信頼性が不十分となるおそれもあるため、接合強度が高い架橋接着によってゴムシートを接合し大判ゴムシートとする方法が求められていた。
【0009】
従って、本発明の目的は、側縁部を架橋接着により接続することによって大判のゴムシートとすることができ、かつ、接続部分を部分的に加熱加圧して接合一体化しても、得られる大判ゴムシートに波うちが発生せず、接合した部分の接合強度が高くできるようなゴムシートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのようなゴムシートを接合することにより、大判のゴムシートを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、鋭意検討の結果、ゴムシートの周縁部の少なくとも一辺が未架橋ゴムあるいは半架橋ゴムであり、ゴムシートの主部を架橋ゴムであるようなゴムシートとすれば、上記課題が解決されることを知見し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、方形状に一体に形成されたゴムシートであって、架橋ゴムからなる主部と、ゴムシートの周縁部の少なくとも一辺にわたって設けられた未架橋ゴムまたは半架橋ゴムからなる接合部とが架橋接着されたゴムシートである(請求項1)。
【0012】
また、本発明は、請求項1に記載のゴムシートを製造する方法であって、第1の未架橋ゴムにより形成された主部となるべき未架橋ゴム部と、第2の未架橋ゴムにより形成された接合部となるべき未架橋ゴム部とを、互いに接触するように配置して方形状未加硫ゴムシートを形成するシート成形工程に引き続き、方形状未加硫ゴムシートを全体にわたって加熱プレスして、第1の未架橋ゴムを架橋させるとともに、第2の未架橋ゴムを未架橋または半架橋の状態となるようにしながら、主部と接合部とを互いに架橋接着するシート架橋工程を行うことを特徴とするゴムシート製造方法である(請求項2)。
【0013】
さらに、請求項2に記載のゴムシート製造方法においては、第1の未架橋ゴムの架橋反応が第2の未架橋ゴムの架橋反応よりも早く完了するように配合するとともに、シート架橋工程において第1の未架橋ゴムが架橋を完了した時点でシート架橋工程を終了することが好ましい(請求項3)。また、請求項2に記載のゴムシート製造方法においては、第1の未架橋ゴムの架橋反応が第2の未架橋ゴムの架橋反応よりも低い温度で反応するように配合するとともに、シート架橋工程において第1の未架橋ゴムが架橋反応し第2の未架橋ゴムが架橋反応しないまたは架橋が不十分となるような架橋温度で加熱プレスすることが好ましい(請求項4)。
【0014】
また、本発明は、請求項1に記載のゴムシートを互いに接合して、より大判のゴムシートとする接合方法であって、ゴムシートの接合部と他のゴムシートの接合部とを直接接触させて、接合部の未架橋ゴムまたは半架橋ゴムが架橋するように該接合部を加熱プレスして架橋接着により接合することを特徴とする接合方法である(請求項5)。
【0015】
また、本発明は、請求項1に記載のゴムシートを互いに接合して、より大判のゴムシートとする接合方法であって、ゴムシートの接合部と他のゴムシートの接合部との間にわたって未架橋ゴム生地を存在させて、接合部の未架橋ゴムまたは半架橋ゴム並びに前記未架橋ゴム生地が架橋するように該接合部を加熱プレスして架橋接着により接合することを特徴とする接合方法である(請求項6)。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴムシートによれば、複数のゴムシートの接続部を互いに架橋接着によって接続して、大判のゴムシートが得られ、得られる大判ゴムシートに発生する波うちが抑制されるとともに、接続した部分の接合強度も高められるという効果が得られる。
【0017】
また、本発明のゴムシート製造方法(請求項2)によれば、請求項1記載のゴムシートを効率的に製造することができるとともに、ゴムシート全体に同じ熱履歴と圧力履歴を与えて、シート波うちを防止することができるとともに、主部と接合部とが架橋接着されており、ゴムシートの強度にも優れる。
【0018】
さらに、請求項3のゴムシート製造方法とした場合には、接合部が半架橋ゴムとなったものが得られやすいので、得られる請求項1のゴムシートの取扱性がよくなる。
【0019】
また、請求項4のゴムシート製造方法とした場合には、接合部が未架橋ゴムのままであるものが得られやすいので、得られる請求項1のゴムシートを互いに接合する際の接合強度を高めやすくなる。
【0020】
また、請求項1のゴムシートを接合する方法(請求項5、請求項6)によれば、既存の加熱プレス装置を利用しながら、複数のゴムシートを架橋接着により接合して、波うちが抑制された大判のゴムシートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明のゴムシートSを示す模式図である(上側が正面図で下側が側面図)。本発明のゴムシートSは、架橋ゴムからなるゴムシート主部1の周縁に(本実施形態では1辺にわたって)未架橋ゴム又は半架橋ゴムからなるゴムシート接合部2が一体に設けられた方形平板状のゴムシートである。本発明のゴムシートSを使用すれば、図2に示したように、複数のゴムシートS、S’のゴムシート接合部2、2’を重ね合わせた状態で、ゴムシート接合部2、2’を加熱プレス装置などによって架橋することにより接合一体化(架橋接着)して、大判の架橋ゴムシートLにすることができる。得られた大判ゴムシートLは、公知の大型プレス装置用のダイヤフラムなどとして使用できるが、その用途は特に限定されるものではない。
【0022】
本発明のゴムシートSのゴム材料としては、シリコーンゴムが好適に使用できる。シリコーンゴムは、ミラブルタイプのものでも良いし、液状タイプのものであっても良い。また、最終的に得られる大判ゴムシートLの要求特性に応じて、シリコーンゴムの他、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)やアクリルゴム、フッ素ゴムなど、多様なゴム材料が使用できる。互いに架橋接着するゴム材料であれば、ゴムシートSの主部1と接合部2とでゴム材料を変えても良いが、主部1と接合部2には同じゴム材料を使用することが、得られるゴムシートの強度等の特性上、及び波うちの防止上好ましい。
【0023】
本実施形態のゴムシートSにおいては、主部1は長さや幅が1〜10m程度、厚さ1〜10mm程度の方形状シートに成形された架橋ゴムからなる部分であり、その周縁部のうち1辺にわたって、幅10〜50mmで未架橋ゴムまたは半架橋ゴムからなる接合部2が接合一体化されている。主部1と接合部2の接合一体化は、主部1を架橋するのと同時に架橋接着することにより行われる。本実施形態においては、図2のように一対のゴムシートS、S’を接合して大判のゴムシートLを完成させるので、1辺のみに接合部2が設けられているが、大判のゴムシートとすべく接合したい辺が接合部2となるように、2辺、または3辺、または4辺全周にわたって接合部2を設けても良い。特に、方形状のシートの対向する2辺にわたってそれぞれ接合部2を設けたゴムシートSとすれば、ゴムシートSを3枚以上連続して直列に接続したような大判・長尺のゴムシートを得るのに好都合である。
【0024】
(ゴムシートSの製造方法)
本発明のゴムシートSの製造方法を図3により説明する。
まず、未架橋ゴムA0が架橋する架橋条件では、未架橋ゴムB0が架橋しない又は部分的にしか架橋せず半架橋状態となるように、使用する架橋剤や架橋促進剤の種類や量を調整して、第1の未架橋ゴムA0と第2の未架橋ゴムB0を調製する。引き続いて、本発明のゴムシートSの外周形状となるよう構成された枠部材F、Fの内側に、主部1となるべき第1の未架橋ゴムA0を主部形状として、接合部2となるべき第2の未架橋ゴムB0を接続部形状として、未架橋ゴムA0の部分と未架橋ゴムB0の部分とが互いに接触するように、図3のようにシート状に仕込む(シート成形工程)。次に、仕込んだ未架橋ゴム全体を枠F,Fと一緒に、加熱プレス装置内に導入して、未架橋ゴムA0が架橋反応するだけの架橋条件で架橋する(シート架橋工程)。
【0025】
加熱プレス装置としては、装置下側に加熱された熱盤があり、装置上側にゴム膜などからなるダイヤフラムがあり、装置内に仕込まれた未架橋ゴムシートを熱盤とダイヤフラムで挟持して真空引きや加圧を行いながら、熱盤による加熱により未架橋ゴムシートを架橋可能な、公知の加熱プレス装置が好ましく使用できる。熱盤と未架橋ゴムシートとの間に、任意にクッションを挟むなどして、伝熱度を調整しても良い。
【0026】
上記シート架橋工程を経ると、未架橋ゴムA0からなる部分が架橋されたゴムシート主部1となり、未架橋ゴムB0からなる部分は未架橋又は半架橋状態の接合部2となり、主部1と接合部2が架橋接着されたゴムシートSが得られる。
【0027】
図3に示した未架橋ゴムA0及び未架橋ゴムB0の仕込みを、既存の加熱プレス装置に収まる大きさとなるように行えば、ゴムシートSの製造工程における架橋工程では、既存の加熱プレス装置がそのまま活用でき、仕込んだ未架橋ゴムシートの全体を均一に加熱プレスしてシート架橋工程を行うことができる。
【0028】
このように、ゴムシートSの製造における加熱プレス操作を、加熱プレス装置などによって、接合部2となるべき部分を含めてゴムシートSの全体にわたって行うことにより、ゴムシートS全体が同じ熱履歴と圧力履歴を受けることになるので、ゴムシートS、及び接合した大判のゴムシートLの波うちをより効果的に防止できる。
【0029】
未架橋ゴムA0および未架橋ゴムB0の架橋条件の差異および、ゴムシートSの製造におけるシート架橋工程の架橋条件についてより詳細に説明する。
未架橋ゴムA0と未架橋ゴムB0の架橋条件の差異の付け方については、例えば、未架橋ゴムB0の方が未架橋ゴムA0よりも架橋反応が遅くなるようにすることが例示できる。例えば、ゴム材料がシリコーンゴムである場合には、パーオキサイド架橋材を使用することが多く、架橋剤の添加量に関しては最適な添加量が決まっており、架橋剤を多く添加すれば架橋速度が上がるような架橋システムではないため、このような場合には、架橋速度が異なる架橋剤を使用して、架橋速度の異なるコンパウンドを作ればよい。
【0030】
硫黄加硫するような一般のゴムの場合には、加硫促進剤の種類や添加量を調整することによって、架橋速度の異なるコンパウンドを作ることができる。
このように、未架橋ゴムA0と未架橋ゴムB0とで架橋速度を異ならせた場合、シート架橋工程においては、未架橋ゴムA0が架橋完了して、未架橋ゴムB0がいまだ架橋が不十分であるような架橋時間でシート架橋工程を終了させるようにすればよい。
【0031】
また、例えば、未架橋ゴムB0の架橋温度が未架橋ゴムA0の架橋温度よりも高くなるように、架橋剤や架橋促進剤の種類を選択しても良く、その場合は、架橋工程の架橋温度を、未架橋ゴムA0は架橋しながらも、未架橋ゴムB0が全く未架橋のままであるかあるいは完全には架橋反応しないような温度としてシート架橋工程を行えばよい。
【0032】
架橋条件の差異のつけ方は、その他多様な方法によることができ、適宜選択して実施すればよいが、得られたゴムシートSの接合部が未架橋ゴムに近い状態である方が、ゴムシートS,S’を接合した際の接合強度や接合した部分のシート表面の平滑性に優れる。一方、得られたゴムシートSの接合部の架橋度が進むほど、ゴムシートSの取扱性がよくなり、製造効率に優れたものとなる。
以上のようにして、本発明のゴムシートSを得ることができる。
【0033】
(本発明のゴムシートを接合する方法)
以下、複数のゴムシートS,S’を接合する方法についてより詳細に説明する。
図2のように、ゴムシートS、S’の接合部2、2’を互いに重ね合わせるように直接接触させて、接合部2,2’部分を、加熱プレス装置などによって加熱加圧して架橋し、架橋接着によりゴムシートS,S’を接合して大判のゴムシートLとする。接合部2、2’部分の架橋接着工程においては、大判のゴムシートL全体を加熱プレスする必要はなく、接合部2、2’の部分が含まれるように(例えば、図2に2点鎖線で示した領域を)部分的に加熱プレスすればよい。
【0034】
従って、本発明のゴムシートを使用すれば、大判のゴムシート全体を一度に架橋する必要がないので、既存の加熱プレス装置などを利用して大判のゴムシートLが製造できる。また、本発明においては、接合部2、2’が未架橋ゴム又は半架橋ゴムからなるものであるので、架橋接着するために図2のように重ね合わせた仕込みの段階では重ね合わせ部分に段差や隙間が存在ようとも、加熱プレスによって、接合部2、2’が軟化して隙間や段差を埋める方向に流動し、隙間や段差が小さくなった状態で架橋接着されるので、架橋ゴムからなるゴムシート同士を接着する場合に比べ、シート接合部の段差や隙間が小さくなった大判ゴムシートLが得られる。柔軟なダイヤフラムを備える加熱プレス装置によって本接合工程を行うと、この効果がより効果的に得られる。
【0035】
また、シートS、S’ の接合は、未架橋ゴムまたは半架橋ゴム同士の加硫接着によりなされるので、架橋ゴムからなるゴムシート同士を接合する場合に比べ、大判ゴムシートLの接合部の接合強度も高い。特に、ゴムシートSの接合部2が未架橋ゴムからなるようにした場合には、大判ゴムシートLの接合部の接合強度をゴムシート母材強度と同等の水準まで高めることができ、より好ましい。
【0036】
さらに、本発明においては、ゴムシートSの主部1がすでに架橋された状態であるので、大判シートLを得る際の接合工程における加熱プレスが(例えば図2の2点鎖線で示す領域のみのような)部分的なものであろうとも、既に架橋されている主部1には熱や圧力の影響があまり及ばないので、大判のゴムシートLに波うちが発生することが未然に防止あるいは抑制される。
【0037】
以上、本発明の実施形態や好ましい改変の例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の改変をして実施することができる。なお、以下の改変の説明では、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を省略している。
【0038】
ゴムシートS,S’の接合部2、2’の接合形態は、図2に示した形態に限定されるものではなく、以下のような接合形態としても良い。図4ないし図6は、複数のゴムシートS、S’を接合する部分の構造を示す断面図である。図4に示す構造においては、ゴムシートS、S’の接合部2、2’の側端縁同士が直接接触するように互いにつき合わせるようにして、その後接合部を加熱プレスすることによってゴムシートS、S’を接合している。本実施形態のような接合とすれば、シート両面の平滑性の良い大判のゴムシートLが得られる。
【0039】
図5に示す接合構造においては、ゴムシートS、S’の接合部2、2’の側端縁同士を、所定の間隔の隙間を有するように互いに向かい合わせて、隙間の部分に、未架橋ゴム生地3を仕込んで、加熱プレスによって架橋し接合一体化する。本実施形態においても、図4の実施形態と同じく、シート両面の平滑性の良い大判のゴムシートLが得られる。本実施形態のように、未架橋ゴム生地3を間に挟んで接合部2、2’を接合すると、接合部強度をより高めることができる。未架橋ゴム生地3は、接合部2、2’と架橋接着可能なゴム生地であれば特に限定されるものではないが、接合部と同じゴム材料B0からなる未架橋ゴム生地や、接合部と同種類のゴム材料からなる未架橋ゴム生地とすることが好ましい。
【0040】
図6に示す接合構造においては、ゴムシートS、S’の接合部2、2’の側端縁同士を、所定の間隔の隙間を有するように互いに向かい合わせて、隙間の部分をまたぐように、テープ状の未架橋ゴム生地4をかぶせて、加熱プレスによって架橋し接合一体化する。本実施形態においても、テープ状の未架橋ゴム生地4は接合部2、2’と強固に加硫接着されるとともに、未架橋ゴム生地4の一部が、加熱プレスによって接合部2、2’の間の隙間に入り込んで、接合部端面同士をも接着一体化することもできる。未架橋ゴム生地4も、接合部2、2’と架橋接着可能なゴム生地であれば特に限定されるものではないが、接合部と同じゴム材料B0からなる未架橋ゴム生地や、接合部と同種類のゴム材料からなる未架橋ゴム生地とすることが好ましい。なお、未架橋ゴム生地を用いる場合には、図5や図6に示す形態以外であっても、接合部の間にわたって未架橋ゴムが存在するようにしてやれば、接合部と未架橋ゴム生地が強固に架橋接着して、接合強度がより高められる。
【0041】
なお、これら接合構造において、接合部2、2’の架橋接着すべき部分に隙間が生ずる場合や、大判ゴムシートに特に高い気密性が要求されるような場合には、接合部2のゴム材料B(未架橋ゴムB0が未架橋または半架橋状態とされたゴム材料)と架橋接着可能な液状ゴム(たとえば液状シリコーンゴム)を利用して、気密性や接合の強度及び信頼性の向上をはかることも好ましい実施形態である。ただし、液状シリコーンゴムを使用すると、大判ゴムシートLの接合部接続強度が低下する傾向があるので、高い強度が要求される場合には、液状シリコーンゴムの使用はあまり好ましくない。
【0042】
また、上記説明では、ゴムシートSが単層のゴムシートであるものについて説明したが、ゴムシートSが異なるゴム材料や他の材料からなる層が積層された積層ゴムシートであっても良い。その場合は、少なくとも接合部2部分の表層部分(の少なくとも片面)が未架橋あるいは半架橋ゴムとなっているようにすればよい。
【0043】
また、シート接合部2の形状を、シート周縁端部に向かうにつれて、厚みが漸減するようなテーパ状の形状に設けて、大判シートLとする際の重ねあわせ部が盛り上がらないようにして、接合強度を高めながらシートの継ぎ目を目立たなくすることも好ましい実施の形態である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を、より詳細に説明する。
(実施例1)
(未架橋ゴムA0、未架橋ゴムB0の調製)
表1に示すミラブル型のシリコーンゴム、架橋剤A、およびその他添加物を混練し、未架橋のシリコーンゴム材料A0を得た(数値はいずれも重量部を示す)。同様に、表1に示すシリコーンゴム、架橋剤B、その他添加物を混練し、未架橋のシリコーンゴム材料B0を得た。ここで、架橋剤A(C−23)、架橋剤B(C−8)はともにパーオキサイド架橋剤であり、ともにシリコーンゴム組成物を架橋可能な量が配合されているが、架橋剤B(C−8)は架橋剤A(C−23)よりも架橋速度が遅い架橋剤である。
【0045】
【表1】

【0046】
(仕込み)
得られた未架橋ゴムA0、B0をそれぞれ厚さ3.0mmのシート状に成形した上で、図3のように、未架橋ゴムA0、B0が、全体で幅2m、長さ5m、厚さ3.0mmの長方形のシートとなり、未架橋ゴムB0からなる部分が長辺のうち1辺の全長にわたって幅30mmで形成され、未架橋ゴムA0と未架橋ゴムB0の境界部分で互いが密着するように、枠F内に仕込んだ。
【0047】
(加熱プレス)
次に加熱プレス装置を用いて架橋を行った。未架橋ゴムA0と未架橋B0からなる未架橋ゴムシート全体を、枠Fごと加熱プレス装置内に導入し、温度150℃、プレス圧力3.0kgf/平方センチメートルで25分間、加熱プレスして架橋し、ゴムシートSを得た。ゴムシートSの内、未架橋ゴムA0であった部分は架橋された主部1となり、未架橋ゴムB0であった部分は、架橋が部分的になされた半架橋状態の接続部2となって、主部1と接続部2とが加硫接着により接合一体化された波うちのないゴムシートSが得られた。
【0048】
(接合工程)
複数枚のゴムシートSを製作した後に、一対のゴムシートS、S’を接合して、大判のゴムシートLを製作した。即ち、図2のように、接続部2、2’を互いに重ね合わせた状態で、接続部2、2’の部分が加熱プレスされるように、一対のゴムシートS、S’を加熱プレス装置にセットして、温度155℃、圧力2.5kgf/平方センチメートルで60分間加熱プレスして、接続部2、2’の部分を架橋し接合一体化した。本加熱プレス工程により、全体が架橋されるとともに波うちのない大判のゴムシートLが得られた。ゴムシートLの接合された部分は、架橋接着された状態となっており、高い接合強度が得られた。
【0049】
(比較例1)
調製された未架橋ゴムB0だけで幅2m、長さ10m、厚さ3.0mmの長尺の未架橋ゴムシートを製作し、得られた長尺の未架橋ゴムシートを、加熱プレス装置(幅2m長さ3mのプレス装置)を使用して、シート長さ方向の一端側から他端側に向かって部分的に順次加熱架橋していく、いわゆる送り焼きによって、大判(長尺)のゴムシート全体を架橋した。しかしながら、得られた大判ゴムシートには、特に送り焼きの際の境界部分において、シートの波うちが発生した。
【0050】
(比較例2)
調製された未加硫ゴムA0だけで幅2m、長さ5m、厚さ3.0mmの長方形の未架橋ゴムシートを製作し、これを加熱プレスして架橋して、架橋ゴムシートを得た。得られた架橋ゴムシートの側縁部を重ね合わせ、重ね合わせ部分の間に未加硫ゴムA0をテープ状に挟んで、大判サイズのゴムシートにして、重ね合わせ部分をさらに加熱プレスして架橋接着により接合し、大判ゴムシートを得た。しかしながら、得られた大判ゴムシートの接合部は上記実施例1と比較して外れやすく、その接合強度が低いものしか得られなかった。また、重ね合わせ部分の段差や隙間も残ったままであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、既存の加熱プレス装置を用いながら、シート全体が架橋された大判のゴムシートが得られるとともに、得られる大判ゴムシートは波うちがなく、その接合強度にも優れるものであって、本発明の産業上の利用価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のゴムシートSの模式図である。
【図2】本発明のゴムシートSを接合して大判のゴムシートLとする接合方法を示す模式図である。
【図3】本発明のゴムシートSの製造工程において未加硫ゴムA0,B0を仕込んだ状態を示す図である。
【図4】本発明のゴムシートS、S’を接合する際の他の接合形態を示す模式図である。
【図5】本発明のゴムシートS、S’を接合する際の他の接合形態を示す模式図である。
【図6】本発明のゴムシートS、S’を接合する際の他の接合形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
S ゴムシート
1 主部
2 接続部
F フレーム(枠部材)
L 大判ゴムシート
3、4 未架橋ゴム生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状に一体に形成されたゴムシートであって、
架橋ゴムからなる主部と、ゴムシートの周縁部の少なくとも一辺にわたって設けられた未架橋ゴムまたは半架橋ゴムからなる接合部とが架橋接着されたゴムシート。
【請求項2】
請求項1に記載のゴムシートを製造する方法であって、
第1の未架橋ゴムにより形成された主部となるべき未架橋ゴム部と、第2の未架橋ゴムにより形成された接合部となるべき未架橋ゴム部とを、互いに接触するように配置して方形状未加硫ゴムシートを形成するシート成形工程に引き続き、
方形状未加硫ゴムシートを全体にわたって加熱プレスして、第1の未架橋ゴムを架橋させるとともに、第2の未架橋ゴムを未架橋または半架橋の状態となるようにしながら、主部と接合部とを互いに架橋接着するシート架橋工程を行うことを特徴とするゴムシート製造方法。
【請求項3】
第1の未架橋ゴムの架橋反応が第2の未架橋ゴムの架橋反応よりも早く完了するように配合するとともに、シート架橋工程において第1の未架橋ゴムが架橋を完了した時点でシート架橋工程を終了することを特徴とする請求項2に記載のゴムシート製造方法。
【請求項4】
第1の未架橋ゴムの架橋反応が第2の未架橋ゴムの架橋反応よりも低い温度で反応するように配合するとともに、シート架橋工程において第1の未架橋ゴムが架橋反応し第2の未架橋ゴムが架橋反応しないまたは架橋が不十分となるような架橋温度で加熱プレスすることを特徴とする請求項2に記載のゴムシート製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のゴムシートを互いに接合して、より大判のゴムシートとする接合方法であって、
ゴムシートの接合部と他のゴムシートの接合部とを直接接触させて、接合部の未架橋ゴムまたは半架橋ゴムが架橋するように該接合部を加熱プレスして架橋接着により接合することを特徴とする接合方法。
【請求項6】
請求項1に記載のゴムシートを互いに接合して、より大判のゴムシートとする接合方法であって、
ゴムシートの接合部と他のゴムシートの接合部との間にわたって未架橋ゴム生地を存在させて、接合部の未架橋ゴムまたは半架橋ゴム並びに前記未架橋ゴム生地が架橋するように該接合部を加熱プレスして架橋接着により接合することを特徴とする接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−120345(P2010−120345A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298305(P2008−298305)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】