説明

ゴムロール用ゴム組成物およびゴムロール

【課題】本発明は、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できる加硫ゴムを得ることができるゴムロール用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】スチレンブタジエン共重合ゴムとブタジエンゴムとを含むゴム成分100質量部と、窒素吸着比表面積が80m2/g以下であり、ヨウ素吸着量が75mg/g以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上であるカーボンブラック65〜85質量部と、加硫剤とを含有し、前記スチレンブタジエン共重合ゴムと前記ブタジエンゴムとの質量比が70/30〜30/70であるゴムロール用ゴム組成物、または、加硫後の物性が、下記(A)、(B)および(C)の範囲であるゴムロール用ゴム組成物。(A)JIS−A硬度:70〜85、(B)損失正接:0.10〜0.26、(C)JIS K6264−2−2005のアクロン摩耗試験(A法)に準じて測定した摩耗輪1000回転当たりの摩耗容積:0.02cm3以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフトローラ、製鉄用ローラー等に用いられるゴムロール用ゴム組成物およびゴムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
リフトローラ、製鉄用ローラー等のゴムロールは、通常、未加硫のゴムにカーボンブラック等の充填剤、軟化剤、イオウ系加硫剤、加硫助剤等を配合して未加硫シートを調製し、鉄芯に上記未加硫シートを巻きつけた後、加硫槽で加硫を行い、表面を研磨することによって製造される。
【0003】
一方、リフトローラ、製鉄用ローラー等のゴムロールは、高荷重、高回転で使用されており、適切な硬度や耐摩耗性に加えて耐久性が要求される。
例えば、特許文献1には、耐摩耗性に優れかつ耐久性に優れたゴムロールの製造方法を提供することを目的とし、「イオウ系加硫剤が配合されたジエン系未加硫ゴム組成物を加硫してゴムロールを製造する方法に於いて、該ジエン系ゴム組成物がヘキサメチレン−1,6−チオスルフェートジソジウムソルトを含むことを特徴とするゴムロールの製造方法」が記載されている。また、特許文献1には、上記ジエン系未加硫ゴム組成物がカーボンブラックを含有することが好ましい旨記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−239224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スキー用リフト、ゴンドラの高速化が進んでおり、特に夏場の観光シーズンにも使用されるリフトにおいては、ワイヤとの摩擦、ゴムの歪みによる内部発熱、直射日光等の影響によりリフトローラが発熱するという問題が生じるようになった。そのため、耐摩耗性等の他に、発熱を抑制できる特性(低発熱性)も有するゴム組成物の開発が望まれている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できるゴムロールを製造することは困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できる加硫ゴムを得ることができるゴムロール用ゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できるゴムロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、スチレンブタジエン共重合ゴムとブタジエンゴムとを特定の割合で含むゴム成分と、窒素吸着比表面積が80m2/g以下であり、ヨウ素吸着量が75mg/g以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上であるカーボンブラックとを特定の割合で含有すると、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できる加硫ゴムを得ることができるゴムロール用ゴム組成物となることを見出した。
また、本発明者は、加硫後の物性が、(A)JIS−A硬度が70〜85、かつ、(B)損失正接が0.10〜0.26、かつ、(C)JIS K6264−2−2005のアクロン摩耗試験(A法)に準じて測定した摩耗輪1000回転当たりの摩耗容積が0.02cm3以下の範囲であると、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できる加硫ゴムを得ることができるゴムロール用ゴム組成物となることを見出した。
本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)〜(7)を提供する。
(1)スチレンブタジエン共重合ゴムとブタジエンゴムとを含むゴム成分100質量部と、
窒素吸着比表面積が80m2/g以下であり、ヨウ素吸着量が75mg/g以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上であるカーボンブラック65〜85質量部と、
加硫剤とを含有し、
前記スチレンブタジエン共重合ゴムと前記ブタジエンゴムとの質量比が70/30〜30/70であるゴムロール用ゴム組成物。
(2)加硫後の物性が、下記(A)、(B)および(C)の範囲であるゴムロール用ゴム組成物。
(A)JIS−A硬度:70〜85
(B)損失正接:0.10〜0.26
(C)JIS K6264−2−2005のアクロン摩耗試験(A法)に準じて測定した摩耗輪1000回転当たりの摩耗容積:0.02cm3以下
(3)スチレンブタジエン共重合ゴムとブタジエンゴムとを含むゴム成分100質量部と、
窒素吸着比表面積が80m2/g以下であり、ヨウ素吸着量が75mg/g以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上であるカーボンブラック65〜85質量部と、
加硫剤とを含有し、
前記スチレンブタジエン共重合ゴムと前記ブタジエンゴムとの質量比が70/30〜30/70である上記(2)に記載のゴムロール用ゴム組成物。
(4)更に、滑材を含有する上記(1)または(3)に記載のゴムロール用ゴム組成物。
(5)前記滑材が不飽和脂肪酸塩である上記(4)に記載のゴムロール用ゴム組成物。
(6)輪芯と、前記輪芯の外周面を被覆した上記(1)〜(5)のいずれかに記載のゴムロール用ゴム組成物の加硫物からなるゴム層とを有するゴムロール。
(7)リフトローラである上記(6)に記載のゴムロール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴムロール用ゴム組成物は、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できる加硫ゴムを得ることができる。
また、本発明のゴムロールは、耐摩耗性および低発熱性のいずれも損なうことなくこれらの特性を高い次元で両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のゴムロール用ゴム組成物の第1の態様(以下、「第1態様の組成物」という。)は、スチレンブタジエン共重合ゴムとブタジエンゴムとを含むゴム成分100質量部と、窒素吸着比表面積が80m2/g以下であり、ヨウ素吸着量が75mg/g以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上であるカーボンブラック65〜85質量部と、加硫剤とを含有し、上記スチレンブタジエン共重合ゴムと上記ブタジエンゴムとの質量比が70/30〜30/70であるゴムロール用ゴム組成物である。
【0012】
<ゴム成分>
上記ゴム成分は、スチレンブタジエン共重合ゴム(SBR)とブタジエンゴム(BR)とを含み、SBRとBRとの質量比(SBR/BR)が70/30〜30/70である。上記ゴム成分がSBRとBRを含むので第1態様の組成物の加硫物は耐摩耗性に優れる。
また、SBRとBRとの質量比(SBR/BR)が70/30〜30/70であるので、耐摩耗性、耐寒性、強度特性、加工性のバランスに優れる。これらの特性により優れる点から、SBRとBRとの質量比(SBR/BR)は、70/30〜50/50が好ましい。
【0013】
上記ゴム成分は、SBRおよびBRの他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他のゴムを含有することができる。他のゴムとしては、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、イソブチレンイソプレン共重合ゴム(IIR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
<カーボンブラック>
第1態様の組成物に用いられるカーボンブラックは、下記(i)〜(iii)の特性を有する。
【0015】
(i)窒素吸着比表面積は、80m2/g以下であり、75m2/g以下が好ましく、70m2/g以下がより好ましい。この範囲であると、加硫した組成物が低発熱性に優れたものとなる。また、耐摩耗性に優れるという点から、窒素吸着比表面積は、55m2/g以上であることが好ましく、60m2/g以上であることがより好ましい。
窒素吸着比表面積とは、窒素吸着法による比表面積をいい、通常、この値が小さいほどカーボンブラックの粒径が大きくなる傾向がある。
本明細書において、窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2−2001に準じて測定される。
【0016】
(ii)ヨウ素吸着量は、75mg/g以下であり、72mg/g以下が好ましい。この範囲であると、加硫した組成物が低発熱性に優れたものとなる。また、耐摩耗性に優れるという点から、ヨウ素吸着量は、60mg/g以上であることが好ましく、65mg/g以上であることがより好ましい。
本明細書において、ヨウ素吸着量は、JIS K6217−1−2001に準じて測定される。
【0017】
(iii)DBP吸収量は、90cm3/100g以上であり、100cm3/100g以上がより好ましい。この範囲であると、加硫した組成物が耐摩耗性と機械的特性に優れたものとなる。また、低発熱性に優れる点から、DBP吸収量は、120cm3/100g以下であることが好ましく、110cm3/100g以下であることがより好ましい。
DBP吸収量は、カーボンブラックが液体(DBP)を吸収する能力の尺度であり、この値が大きいほどカーボンブラックのストラクチャーが大きくなる傾向がある。
本明細書において、DBP吸収量は、JIS K6217−4−2001に準じて測定される。
【0018】
上記カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して65〜85質量部である。この範囲であると、加硫した組成物が耐摩耗性と低発熱性に優れる。これらの特性をバランス良く備える点から、上記カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して65〜80質量部が好ましい。
【0019】
上記カーボンブラックとしては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ショウブラック N330T(キャボットジャパン社製)、ニテロン#200(新日化カーボン社製)等が挙げられる。
【0020】
<加硫剤>
上記加硫剤は、イオウ系加硫剤であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、粉末硫黄、高分散性硫黄、不溶性硫黄等の一般にゴム用加硫剤として用いられている硫黄が挙げられる。
上記加硫剤の含有量は、特に限定されないが、所望の特性を得やすくなる点から、上記ゴム成分100質量部に対して1.5〜4.5質量部が好ましく、2.0〜3.5質量部がより好ましい。
【0021】
<加硫促進剤>
第1態様の組成物は、更に、加硫促進剤を含有するのが好ましい。上記加硫剤と併用することにより高強度のゴムロールを得ることができる。
上記加硫促進剤としては、通常のイオウ加硫系促進剤を用いることができる。具体的には、例えば、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)等のチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTM)等のチウラム類、ヘキサメチレンテトラミン(H)等のアルデヒド・アンモニア類、ジフェニルグアンジン(DPG)等のグアニジン類、酸化亜鉛等の金属酸化物、ステアリン酸等の脂肪酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記加硫促進剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5〜2.0質量部が好ましく、0.8〜1.5質量部がより好ましい。
【0023】
<滑材>
第1態様の組成物は、更に、滑材を含有するのが好ましい。滑材を含有すると、より耐摩耗性に優れる加硫ゴムが得られる。
上記滑材としては、例えば、不飽和脂肪酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、不飽和脂肪酸塩が耐摩耗性に優れる点から好ましい。
【0024】
上記不飽和脂肪酸塩としては、具体的には、例えば、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸等の炭素数4〜22の不飽和脂肪酸のアルミニウム、ナトリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の各種金属塩およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0025】
上記飽和脂肪酸塩としては、具体的には、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸等の炭素数4〜22の高級飽和脂肪酸のアルミニウム、ナトリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の各種金属塩およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
上記滑材の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して2〜10質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。この範囲であると、加硫ゴムの耐摩耗性を向上でき、硬度が低くなりすぎることがない。
【0027】
第1態様の組成物は、上述した各成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、粘着付与剤、充填剤、シランカップリング剤等を含有することができる。
【0028】
第1態様の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記ゴム成分、上記カーボンブラック、加硫剤、ならびに、必要に応じて上記滑材および各種添加剤をバンバリーミキサー等でかくはんし、分散させて得ることができる。
【0029】
次に、本発明のゴムロール用ゴム組成物の第2の態様(以下、「第2態様の組成物」という。)について詳細に説明する。
第2態様の組成物は、加硫後の物性が、(A)JIS−A硬度が70〜85であり、かつ、(B)損失正接(tanδ)が0.10〜0.26であり、かつ、(C)JIS K6264−2−2005のアクロン摩耗試験(A法)に準じて測定した摩耗輪1000回転当たりの摩耗容積(以下、「アクロンA」ともいう。)が0.02cm3以下であるゴムロール用ゴム組成物である。
なお、アクロンAの試験条件は、試験片と摩耗輪との傾角15度、摩耗輪に掛けた荷重27N、試験片の回転速度毎分75±5回である。
【0030】
第2態様の組成物を加硫して得られる加硫ゴムのJIS−A硬度が70〜85であると、高荷重、高回転で使用されるリフトローラ、製鉄用ローラー等のゴムロールに好適に使用できる。JIS−A硬度は、73〜85が好ましく、75〜85がより好ましい。
なお、本明細書において、JIS−A硬度は、JIS K6253−1997に準じて、試験温度23℃で測定される。
【0031】
第2態様の組成物を加硫して得られる加硫ゴムのtanδが0.10〜0.26であれば、第2態様の組成物を加硫して得られる加硫ゴムは優れた低発熱性を発揮でき、高荷重、高回転で使用されるリフトローラ、製鉄用ローラー等のゴムロールに好適に使用できる。低発熱性により優れる点から、加硫後のtanδは、0.10〜0.23が好ましく、0.10〜0.21がより好ましい。
なお、本明細書において、tanδは、粘弾性スペクトロメータ(レオログラフ−ソリッド、東洋精機製作所社製)を用いて、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を周波数20Hzで与えて測定される。
【0032】
(C)第2態様の組成物を加硫して得られる加硫ゴムのアクロンAが0.02cm3以下であれば、優れた耐摩耗性を発揮でき、高荷重、高回転で使用されるリフトローラ、製鉄用ローラー等のゴムロールに好適に使用できる。耐摩耗性により優れる点から、加硫後のアクロンAは、0.015cm3以下が好ましく、0.01cm3以下がより好ましい。
【0033】
第2態様の組成物は、加硫後の100%モジュラスが12MPa以下であるのが好ましく、5.0〜9.0MPaであるのがより好ましい。また、加硫後の破断強度が、15MPa以上であるのが好ましく、17MPa以上であるのがより好ましい。また、加硫後の破断伸びが150%以上であるのが好ましく、200%以上であるのがより好ましい。
【0034】
第2態様の組成物は、加硫後の物性が上記(A)〜(C)の全ての条件を満たすゴムロール用ゴム組成物であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、上述した第1態様の組成物が好適に挙げられる。
【0035】
次に、本発明のゴムロールについて詳細に説明する。
本発明のゴムロールは、輪芯と、上記輪芯の外周面を被覆した本発明のゴムロール用ゴム組成物の加硫物からなるゴム層とを有するゴムロールである。
以下、本発明のゴムロールの一例を図を用いて説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0036】
図1は本発明のゴムロール用ゴム組成物を用いたゴムロール1の概念図であり、図2は図1に示すA−Aに沿って切断したゴムロール1の断面図であり、図3は、ゴム層5の断面図である。
図1および図2に示すように、ゴムロール1は、輪芯2の円の中心部にローラーピン3を有し、輪芯2の周囲にフランジ4を有し、輪芯2の外周面とフランジ4の内面に囲まれた凹部に本発明のゴムロール用ゴム組成物の加硫物からなるゴム層5を有する。
【0037】
輪芯2は、その大きさ、形状、材料等は公知のゴムロールと同様でよく、特に限定されないが、図2に示すように、円の中心部および周縁部が厚く、中心部と周縁部との間が薄い形状であるのが、ゴムロール1を軽量化でき、安価に製造できる点から好ましい。また、輪芯2は、強度に優れる等の点から、鉄、ステンレス等の金属から構成されるのが好ましい。
【0038】
ローラーピン3は、ゴムロール1の回転軸としての役割を果たす。その大きさ、形状、材料等は公知のゴムロールと同様でよく、特に限定されない。
【0039】
フランジ4は、輪芯2の周囲に設けられ、図2に示すように2つのフランジ4の内面がゴム層5の側面に密着して、ゴム層5を保護する役目を果たす。その大きさ、形状、材料等は公知のゴムロールと同様でよく、特に限定されない。
【0040】
図3に示すように、ゴム層5は、加硫ゴム6と、必要に応じて補強層7を有する。
加硫ゴム6は、本発明のゴムロール用ゴム組成物の加硫物である。その大きさ、形状、材料等は公知のゴムロールと同様でよく、特に限定されない。加硫条件は、特に限定されず、適宜設定できる。
また、図3に示すように、ゴム層5と接したワイヤのずれを防止できる点から、ゴム層5はワイヤと接する面にくぼみを有するのが好ましい。
補強層7は、公知のゴムロールに用いられるものと同様でよく、特に限定されないが、例えば、ポリエステル製の布またはナイロン製の布が好ましい。補強層7は、1層でもよく、2層以上であってもよい。また、補強層7は、加硫ゴム6が摩耗しても補強層7が表面に露出しにくい点から、ゴム層5の厚み方向の中心より輪芯2に接する面に近い側に設けられるのが好ましい。
【0041】
本発明のゴムロールの製造方法は、特に限定されないが、例えば、本発明のゴムロール用ゴム組成物をカレンダーロール等で分出しすることによりシート状の未加硫ゴム組成物とし、このシート状未加硫ゴム組成物を輪芯の周囲に所望の厚さになるまで巻きつけた後、加硫を行い、その後に加硫ゴムの表面を研磨して、本発明のゴムロールを得ることができる。
【0042】
上述した本発明のゴムロールは、本発明のゴムロール用ゴム組成物を用いることにより、従来のゴムロールが達成できなかった、耐摩耗性および低発熱性の両立を達成することができるので、リフトローラ、製鉄用ローラーのゴムロール、製紙用のゴムロール等に用いることができ、特にリフトローラに好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜6および比較例1〜3>
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し、第1表に示される各組成物を得た。
得られた各組成物を148℃で30分加熱して加硫を行った。得られた加硫ゴムについて、下記の方法により、JIS−A硬度、100%モジュラス、破断強度、破断伸び、tanδおよびアクロンAの測定を行った。
結果を第1表に示す。
【0044】
(JIS−A硬度)
JIS K6253−1997に準じて、各組成物の加硫ゴムのJIS−A硬度を23℃で測定した。
【0045】
(100%モジュラス、破断強度、破断伸び)
各組成物の加硫ゴムを厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出し試験片とした。JIS K6251−1993に準じて、100%モジュラス(MPa)、破断強度(MPa)および破断伸び(%)を測定した。
【0046】
(tanδ)
各組成物の加硫ゴムを長さ40mm、幅5mm、厚さ2mmの短冊状に切り出して試験体とした。
各試験体について、粘弾性スペクトロメータを用いて、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を周波数20Hzで与えて、tanδを測定した。
なお、tanδが小さいほど低発熱性に優れるといえる。
【0047】
(アクロンA)
各組成物の加硫ゴムについて、JIS K6264−2−2005のアクロン摩耗試験(A法)に準じて、試験片と摩耗輪との傾角15度、摩耗輪に掛けた荷重27N、試験片の回転速度毎分75±5回の条件で、摩耗輪1000回転当たりの摩耗容積(cm3)を測定した。
なお、アクロンAが小さいほど耐摩耗性に優れるといえる。
【0048】
【表1】








【0049】
第1表に示す各成分は、下記のとおりである。
・SBR:NIPOL 1502、日本ゼオン社製
・BR:NIPOL 1220、日本ゼオン社製
・カーボンブラック(HAF1):ショウブラック N339M、キャボットジャパン社製、窒素吸着比表面積81m2/g、ヨウ素吸着量91mg/g、DBP吸収量122cm3/100g
・カーボンブラック(HAF2):ショウブラック N330T、キャボットジャパン社製、窒素吸着比表面積65m2/g、ヨウ素吸着量71mg/g、DBP吸収量104cm3/100g
・ホワイトカーボン:ニップシールAQ、東ソー社製
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種、正同化学工業社製
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR、日本油脂社製
・ワックス:サンタイトR、精工化学社製
・滑材:高分子脂肪酸の亜鉛石けん混合物、ストラクトール A50P、SCHILL&SEILACHER GMBH&CO.社製
・老化防止剤:サントフレックス 6PPD、フレキシス社製
・シランカップリング剤:SI69、デグッサ社製
・アロマオイル:エキストラクト4号、昭和シェル石油社製
・硫黄:油処理硫黄、軽井沢精練所社製
・加硫促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、ノクセラーCZ、大内新興化学社製
【0050】
上記第1表に示す結果から明らかなように、カーボンブラック(HAF1)をゴム成分100に対して70質量部含有する組成物(比較例1)の加硫ゴムは、低発熱性には優れていたが、耐摩耗性は悪かった。また、カーボンブラック(HAF1)をゴム成分100質量部に対して80質量部含有する組成物(比較例2)の加硫ゴムは、比較例1とは反対に、耐摩耗性には優れていたが、低発熱性は悪かった。また、カーボンブラック(HAF2)をゴム成分100質量部に対して60質量部含有する組成物(比較例3)の加硫ゴムは、カーボンブラックの含有量が少ないので、低発熱性には優れていたが、硬度と耐摩耗性は低かった。
一方、実施例1〜6の組成物の加硫ゴムは、低発熱性と耐摩耗性とを高い次元で両立できた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明のゴムロール用ゴム組成物を用いたゴムロール1の概念図である。
【図2】図2は図1に示すA−Aに沿って切断したゴムロール1の断面図である。
【図3】図3は、ゴム層5の断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ゴムロール
2 輪芯
3 ローラーピン
4 フランジ
5 ゴム層
6 加硫ゴム
7 補強層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエン共重合ゴムとブタジエンゴムとを含むゴム成分100質量部と、
窒素吸着比表面積が80m2/g以下であり、ヨウ素吸着量が75mg/g以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上であるカーボンブラック65〜85質量部と、
加硫剤とを含有し、
前記スチレンブタジエン共重合ゴムと前記ブタジエンゴムとの質量比が70/30〜30/70であるゴムロール用ゴム組成物。
【請求項2】
加硫後の物性が、下記(A)、(B)および(C)の範囲であるゴムロール用ゴム組成物。
(A)JIS−A硬度:70〜85
(B)損失正接:0.10〜0.26
(C)JIS K6264−2−2005のアクロン摩耗試験(A法)に準じて測定した摩耗輪1000回転当たりの摩耗容積:0.02cm3以下
【請求項3】
スチレンブタジエン共重合ゴムとブタジエンゴムとを含むゴム成分100質量部と、
窒素吸着比表面積が80m2/g以下であり、ヨウ素吸着量が75mg/g以下であり、DBP吸収量が90cm3/100g以上であるカーボンブラック65〜85質量部と、
加硫剤とを含有し、
前記スチレンブタジエン共重合ゴムと前記ブタジエンゴムとの質量比が70/30〜30/70である請求項2に記載のゴムロール用ゴム組成物。
【請求項4】
更に、滑材を含有する請求項1または3に記載のゴムロール用ゴム組成物。
【請求項5】
前記滑材が不飽和脂肪酸塩である請求項4に記載のゴムロール用ゴム組成物。
【請求項6】
輪芯と、前記輪芯の外周面を被覆した請求項1〜5のいずれかに記載のゴムロール用ゴム組成物の加硫物からなるゴム層とを有するゴムロール。
【請求項7】
リフトローラである請求項6に記載のゴムロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−284509(P2007−284509A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111657(P2006−111657)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】