説明

ゴム・繊維用接着処理剤、ゴム補強用合成繊維コード、およびその製造方法

【課題】
本発明の目的は、タイヤ、ベルト、ホースなどのゴム中へ埋め込まれた状態での長時間高温下における接着劣化が少なく、かつゴム中に埋め込まれ繰り返し伸張圧縮を受けたときの疲労性劣化を抑制するゴム・繊維用接着処理剤、ゴム補強用合成繊維コード、およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】
ポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを配合してなることを特徴とするゴム・繊維用接着処理剤。また合成繊維に撚りをかけて得られる撚糸コードを、前記の処理剤で処理して得られるゴム補強用合成繊維コード。さらに合成繊維に撚りをかけて得られる撚糸コードを、前記処理剤で処理した後、乾燥、熱処理することを特徴とするゴム補強用合成繊維コードの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムと合成繊維との接着性を改善するゴム・繊維用接着処理剤、この処理剤で被覆されることでゴムとの接着性が改良されたゴム補強用合成繊維コード、およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、タイヤ、ゴムホースおよびベルトなどのゴム中へ埋め込まれた状態での長時間高温下における接着劣化が少なく、かつゴム中に埋め込まれ繰り返し伸張圧縮を受けたときの疲労性劣化を抑制するゴム・繊維用接着処理剤、ゴム補強用合成繊維コード、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維はすぐれた機械的強度と低伸長性を有するために、タイヤ、ベルト、ホースなどのゴム製品の補強材として従来から広く使用されている。
【0003】
そして、これらゴム補強用ポリエステル繊維は、補強材としてゴム製品中に埋込まれて使用されるため、その耐久性はゴム中に配合される種々の化合物の影響をも受けることになる。
【0004】
例えば、ゴム中にはチラウム系、スルフェンアミド系、あるいはグアニジン系などの加硫促進剤や、アミン系老化防止剤などが配合されることが多いが、これらの添加剤化合物は、自動車タイヤでの製造時における加硫工程中や高速走行中に、またホースの製造時の加硫工程中やエンジンルーム内の高温雰囲気下で使用される時に、ポリエステル繊維の劣化を誘発させて、ゴム補強用繊維としての性能の著しい低下を招き易いという問題があった。
【0005】
また、特にスチームを用いてゴムの加硫を行なう場合には、ゴム中のポリエステル繊維がスチームによる加水分解の影響をも受けるために、著しく劣化してしまうという問題もあった。
【0006】
このために、近年では上記の欠点の改善を目的として、種々の検討がなされており、例えばポリエステル繊維に対して劣化を与えることが少ない加硫促進剤や老化防止剤などをゴムへ配合する技術などが検討されているが、このような方法ではゴムの配合組成が著しく制約されるため、目的とする諸性能を満足した加硫ゴムが得られ難いという問題点があった。
【0007】
一方、ポリエステル繊維自体の改良によって上記の欠点を改良する試みも数多くなされており、例えばポリエステル繊維中に含まれる末端カルボキシル基量を減少させる方法などが提案されているが、この方法でもなおゴム中の繊維の劣化を実用上のレベルまで抑制する効果は得られ難いのが実情である。
【0008】
また、上記の欠点の改良を目的として、主に繊維処理剤の面からの種々の検討も行われており、開示されている技術として、例えば特許文献1〜4がある。
【0009】
特許文献1は、予めポリエポキシド化合物で前処理された線状芳香族ポリエステルを、ポリエポキシド化合物およびN−メトキシメチルナイロンを含む第一処理剤で処理し、次いでレゾルシン・ホルマリン・ラテックスにエチレン尿素化合物と、クレゾールノボラック型エポキシ化合物からなる第2処理剤で処理するポリエステル繊維の処理方法を開示している。
【0010】
特許文献2は、ポリエステル繊維をレゾルシン・ホルマリン・ラテックスおよび、レゾルシンのスルフィド化合物とパラクロロフェノール化合物とホルムアルデヒド樹脂との反応物を含む処理液で処理する処方を開示している。
【0011】
特許文献3は、(A)キャリアーを含む処理液、(B)ブロックドイソシアネート水溶液、(C)エポキシ化合物の分散液、(D)レゾルシン−ホルムアルデヒド−ラテックス混合液の4者を組み合わせて、1段または2段以上の多段処理にてポリエステル繊維材料に処理する手法が開示されている。
【0012】
特許文献4は、ポリエステル繊維を、ポリエポキシド化合物、ブロックドイソシアネート化合物、ゴムラテックス、ケイ酸塩化合物を含む第1処理液で処理した後、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物およびエチレン系不飽和酸で変性されたゴムラテックスを含む第2処理剤で処理する手法が開示されている。
【0013】
上記特許文献技術は、従来のポリエステル繊維の接着方法に比べれば、高温下での耐熱接着性および耐熱強力保持性の改善が認められるものの十分ではなかった。
【特許文献1】特開昭62−21875号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平6−341062号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2006−2327号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平9−209277号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果なされたものである。
【0015】
したがって、本発明の主たる目的は、タイヤ、ベルト、ホースなどのゴム中へ埋め込まれた状態での長時間高温下における接着劣化が少なく、かつゴム中に埋め込まれ繰り返し伸張圧縮を受けたときの疲労性劣化を抑制するゴム・繊維用接着処理剤、ゴム補強用合成繊維コード、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明は、ポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを配合してなることを特徴とするゴム・繊維用接着処理剤である。
【0017】
なお、本発明のゴム・繊維用接着処理剤において、以下の(1)〜(3)が好ましい条件であり、これらの条件の適用により、さらに優れた効果を期待することができる。
【0018】
(1)前記エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスの、乾燥ラテックスフィルムの破断伸度が5%〜400%であること。
【0019】
(2)前記処理剤が、エチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックス以外にさらに、他のゴムラテックスを含む処理剤であって、エチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックスと他のゴムラテックスの合計量を100重量部として、エチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックスが20〜50重量部(乾燥重量部)であること。
【0020】
(3)前記処理剤に、さらに(イ)共役ジエン系単量体40〜50重量%、(ロ)ビニルピリジン系単量体13〜20重量%、(ハ)スチレン系単量体25〜35重量%からなり、かつガラス転位温度(Tg)が−40℃〜−10℃である三元共重合体ゴムラテックスを含むこと。
【0021】
また、本発明は、合成繊維の撚糸コードの表層に、前記の処理剤が被覆されているゴム補強用合成繊維コードである。
【0022】
なお、本発明のゴム補強用合成繊維コードにおいて、以下の(1)〜(2)が好ましい条件であり、これらの条件の適用により、さらに優れた効果を期待することができる。
【0023】
(1)前記コード表層に、さらにレゾルシン・ホルマリン初期縮合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを含む処理剤で被覆されていること。
【0024】
(2)前記合成繊維が、ポリエステル繊維または芳香族ポリアミド繊維であること。
【0025】
また、本発明は、合成繊維に撚りをかけて得られる撚糸コードを、前記処理剤で処理した後、100〜150℃で乾燥、200〜245℃で熱処理することを特徴とするゴム補強用合成繊維コードの製造方法である。
【0026】
なお、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法において、引き続きコード表層を、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを含む処理剤で処理し、100〜150℃で乾燥、220〜250℃で熱処理することが好ましい条件であり、この条件の適用により、さらに優れた効果を期待することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のゴム・繊維用接着処理剤、ゴム補強用合成繊維コード、およびその製造方法によれば、ゴム中へ埋め込まれた状態での長時間高温下における接着劣化が少なく、かつゴム中に埋め込まれ繰り返し伸張圧縮を受けたときの疲労性劣化を抑制するゴム補強用合成繊維コードが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のゴム・繊維用接着処理剤は、ポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを必須成分とするもので、このうちいずれかが欠けても本発明の効果が発現されない。
【0029】
本発明に使用されるポリエポキシド化合物としては、特に限定されないが、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂などの多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、ビス−(3,4−エポキシ−6−メチル−ジシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシドなどの不飽和結合部分を酸化して得られるポリエポキシド化合物などが挙げられる。
【0030】
なかでも好ましくは、多価アルコール類とエピクロルヒドリンの反応生成物(多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物)である。
【0031】
また、本発明で使用されるブロックドポリイソシアネート化合物とは、加熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート化合物が生じるものであり、具体的にはトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニールメタンジイソシアネート、ヘキサメチリンジイソシアネート、トリフェニールメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物とフェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類,ε−カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類などのブロック化剤との反応生成物が挙げられる。
【0032】
これらのブロックドポリイソシアネート化合物のなかでは、特にε−カプロラクタムでブロックされた芳香族ポリイソシアネート化合物、およびジフェニルメタンジイソシアネートの芳香族化合物が良好な結果を与える。
【0033】
また、本発明のゴム・繊維用接着処理剤に使用されるケイ酸塩化合物とは、ケイ素、マグネシウム、ナトリウムおよびリチウムを構成元素とする無機化合物であり、フッ素および/またはアルミニウムをさらに含んでいても良く、一般にはスメクタイトと称される合成無機化合物である。
【0034】
このケイ酸塩化合物中のケイ素/マグネシウムの含有量の比は、1/(0.1〜1.0)であることが、接着性を発現する観点から好ましい。さらには、1%水分散液の光透過率Tが50%以上、とくに60%以上であることが重要であり、かつ、1%水分散液のチクソトロピー指数が2.0〜10.0、とくに3.0〜9.0の範囲にあり、さらには比表面積が100〜500、とくに150〜400の範囲にあることがそれぞれ望ましい。
【0035】
なお、本発明でいう光透過率T、チクソトロピー指数および比表面積とは、次の方法により求めた値である。
【0036】
[光透過率]ケイ酸塩化合物の1%水分散液をよく撹拌した後、1昼夜静置し、沈降分離していない水分散液のみを10mmのセルに入れ、U−3000型分光光度計(日立製作所社製)を用いて、波長500nmにおける光透過率を測定した値である。
【0037】
[チクソトロピー指数]ケイ酸塩化合物の2%水分散液をよく撹拌した後、1昼夜静置し、沈降分離していない水分散液の粘度をB型粘度計(芝浦システム社製)で測定し、次式により算出した値である。ローターはNo.3を使用し、6rpm、60rpmともに測定前2分間静置し、1分間回転後の指示を読んだ値である。
TI=(6rpmでの粘度)/(60rpmでの粘度)
【0038】
[比表面積]比表面積カンタンソープ(ユアサアイオニクス社製)の専用セルを秤量した後、このセルにケイ酸塩化合物を1/2程度(約0.15g)詰めて秤量し、常法によりカンタンソープで測定して、次式により算出した値である。
比表面積(m2 /g)=(A/AC)×(V×2.81/サンプル量g)
A:セルを液体窒素から外し室温の水に浸漬した後の積算計の値
AC:純液体窒素ガスを注入後の積算計の値
V:A/1300
【0039】
上記ケイ酸塩化合物、なかでも合成スメクタイトは、水に分散させるとチキソトロピックな分散液となり、安定な粘性が得られ、比表面積を増大させる機能を有する。
【0040】
したがって、ケイ酸塩化合物は浸透抑制剤および柔軟化剤として作用し、ケイ酸塩化合物を配合したゴム・繊維用接着処理剤は、合成繊維に対する付着量を少なくしても、安定してすぐれたゴムとの接着性が得られるばかりか、処理コードが柔軟になり、コード強力の低下が効果的に防止されることになる。
【0041】
すなわち、ケイ酸塩化合物は表面に水酸基を多く持っていることから、接着剤組成物中の水分子を吸着して繊維コード内部へ浸透し、エポキシ化合物、イソシアネート化合物およびゴムラテックスなどの処理剤の繊維コード内部への浸透が抑制されるため、この状態で繊維コードに熱処理を施すと、繊維コードの表層部で前記処理剤成分が固化し、繊維コードの内層部には主としてケイ酸塩化合物が残り、コード内層における繊維単糸間の自由度が大きくなる結果、繊維コードの柔軟性が改良され、繊維コード自体の高強力が維持されるのである。
【0042】
また、ケイ酸塩化合物の配合によって、接着剤組成物におけるとくにゴムラテックスなどの接着剤マトリックス成分の凝集が抑制され、各接着剤マトリックス成分が均一に混合されて安定化し、処理剤がすぐれた凝集力のもとに繊維表面に均一に付着することになるため、少量の付着量であっても、すぐれたゴムとの接着性を得ることができるのである。
【0043】
本発明のゴム・繊維用接着処理剤には、ガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを配合することが必要である。該ラテックスは、ポリエポキシド化合物、イソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物を介してポリエステル繊維の表面に付着させ、ゴム材料の極性基と水素結合を形成するために、繊維とゴムとの間に強力な接着力が発揮されるものと解釈される。
【0044】
スチレン・ブタジエンゴムラテックスの変成に用いられるエチレン系不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸などの不飽和スルホン酸またはそのアルカリ塩などが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を組み合わせて使用することができる。ラテックス中の不飽和酸単量体の含有量は0.5〜8重量%であることが好ましい。
【0045】
なお、カルボキシル基はエチレン性不飽和エステル単量体またはエチレン系不飽和酸無水物単量体を共重合した後に加水分解することによってゴムラテックスに導入してもよい。この場合のエチレン系不飽和酸エステル単量体やエチレン系不飽和酸無水物単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸のモノ、ジ、およびトリエステル、マレイン酸無水物などが例示され、これらの一種または二種以上が使用される。
【0046】
また、前記エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスのガラス転位温度(Tg)は、0〜35℃であることが必要であり、より好ましくは5〜30℃であるのが良い。0℃未満であるとゴムとの接着性が不足することがあり、35℃を越えるとコードが硬くなり、屈曲疲労性が悪化することがある。
【0047】
前記エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスは、乾燥ラテックスフィルムの破断伸度が5%〜400%であることが好ましく、さらに好ましくは、10%〜300%であるのが好ましい。5%未満であると、コードが硬くなり、耐疲労性が悪化することがある。400%を越えると、十分な接着力が発現しないことがある。
【0048】
本発明のゴム・繊維用接着処理剤は、前記エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックス以外に、必要に応じて他のゴムラテックスを添加することができる。他のゴムラテックスを添加する場合、エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスと他のゴムラテックスの合計量を100重量部として、エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスが20〜50重量部(乾燥重量部)含有されるように添加することが好ましい。この範囲を外れると、耐熱接着力が低下することがある。
【0049】
添加できるゴムラテックスの具体例としては、スチレンブタジエン系ゴムラテックス、ポリブタジエン系ゴムラテックス、ビニルピリジンスチレンブタジエン系ゴムラテックス、アクリロニトリルブタジエン系ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス、アクリレート系ゴムラテックスおよび天然ゴムラテックスなどが挙げられる。
【0050】
なかでも、ビニルピリジンスチレンブタジエン系ゴムラテックスが、接着性の観点から好ましく配合される。さらに好ましくは、(イ)共役ジエン系単量体40〜50重量%、(ロ)ビニルピリジン系単量体13〜20重量%、(ハ)スチレン系単量体25〜35重量%の範囲の三元共重合ビニルピリジンスチレンブタジエン系ゴムラテックスが好ましい。この範囲である時、ゴムとの接着力が高く、また原料のコスト面でも有利となる。このようなラテックスとしては、例えば、市販品として「ピラテックス−LB」(日本エイアンドエル(株)製)が入手可能である。
【0051】
さらに好ましくは、該ビニルピリジンスチレンブタジエン系ゴムラテックスのガラス転位温度(Tg)が−40℃〜−10℃であることが好ましい。この範囲を外れると、接着力、耐熱接着力とも悪化することがある。
【0052】
本発明のゴム・繊維用接着処理剤は、ポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスの合計量100重量部に対し、ポリエポキシド化合物を好ましくは12〜25重量部、さらに好ましくは15〜20重量部、ブロックドポリイソシアネート化合物を好ましくは25〜45重量部、さらに好ましくは30〜40重量部の割合で配合すると共に、これらマトリックス成分であるポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスの合計量100重量部に対し、上記ケイ酸塩化合物が1〜10重量部、さらには2〜5重量部の割合で配合されていることが好ましい。上記の割合である場合は、ゴム補強用コードの接着性が優れたものとなる。
【0053】
上記の構成からなる本発明のゴム・繊維用接着処理剤は、ケイ酸塩化合物が添加されていることで、接着剤マトリックス成分を合成繊維の表面へ均一に付着できるため、合成繊維に対する接着剤付着量を減少せしめても優れたゴムとの接着性を発揮することを可能とし、しかも柔軟で耐疲労性が優れた高品位のゴム補強用コードの取得を可能とする。また、エチレン系不飽和酸で変成されているスチレン・ブタジエンゴムラテックスが添加されていることで、耐熱接着力が良好なゴム補強用コードを得ることができる。
【0054】
本発明のゴム補強用合成繊維コードは、合成繊維の撚糸コードの表層に、先に記載の本発明のゴム・繊維用処理剤(ポリエポキシド化合物、ブロックドイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、およびガラス転位温度(Tg)は、0〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを含む処理剤)が被覆されているものである。ここで、ポリエポキシド化合物、ブロックドイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物およびエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスの好ましい様態は、先に記載の本発明のゴム・繊維用接着処理剤に使用されているものを用いることができる。
【0055】
本発明で使用することのできる合成繊維は、ポリエステル繊維または芳香族ポリアミド繊維のいずれかが好ましく使用される。
【0056】
本発明に使用することのできるポリエステル繊維は、テレフタル酸を主たる二官能カルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルを溶融紡糸延伸してなる繊維であることが望ましいが、テレフタル酸を一部あるいは全部2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジカルボキシフェノキシエタン、イソシアネート基などに置き換えたもの、またエチレングリコールを一部あるいは全部ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどに置き換えたポリエステルからなる繊維であっても使用することができる。
【0057】
また、上記ポリエステルは、少量であれば、トリメシン酸、トリメリット酸、ほう酸、りん酸、グリセリン、およびトリメチロールプロパンなどの三官能化合物を共重合したものであってもよい。
【0058】
また、ポリエステル繊維は、各種改質剤、例えばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、およびオキサゾリン化合物などの末端カルボキシル基封鎖剤により改質されていてもよい。
【0059】
ポリエステル繊維の製糸方法とは、紡糸・延伸を二段階に分けて行なう方法であっても、またこの両工程を一段階で行なう方法であってもよい。
【0060】
なお、本発明で用いるポリエステル繊維とは、上記ポリエステルを素材としてなるフィラメント糸の他、このフィラメント糸からなるコード、織物および織布などの形態をも含むものであり、下記に述べる処理液による処理は、その任意の形態のポリエステル繊維に対して施されればよい。
【0061】
また、本発明の芳香族ポリアミド繊維としては、ポリ−P−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−P−フェニレン・3−4‘ジフェニルエーテルテレフタルアミドおよびこれらを主体とする共重合体などを素材とするものが好ましく使用される。
【0062】
本発明で用いる合成繊維は、繊度、フィラメント数、断面形状等の制約を受けないが、通常、繊度は200〜5000dtexであることが好ましく、250〜3000dtexであることがより好ましい。またフィラメント数は30〜1000フィラメントであることが好ましく、50〜500フィラメントであることがより好ましい。さらに断面形状は円形であることが好ましい。
【0063】
本発明のゴム補強用合成繊維コードは、上記繊維を撚糸して生コードとし、生コードそのまま、または生簾反に製織した後接着剤処理して得られる。通常のタイヤコードに用いる生コードは、SまたはZ方向に下撚りした後、2本または3本の下撚りコードを合わせて下撚りと反対方向に通常同数の上撚りをかけ諸撚りコードとしたものである。次いで該生コードを経糸とし、緯糸に綿糸、または合成繊維に綿糸をカバリングして緯糸とし、生簾反に製織する。次に、該生簾反を接着剤処理してディップ反が得られる。
【0064】
一方、ホースやベルトの場合には、下撚りをかけ、下撚りコードのまま、あるいは前記と同様、2本または3本合わせて下撚りと反対方向に通常同数の上撚りをかけて諸撚りコードとし、コード形態のまま接着剤処理してディップコードとする。
【0065】
また、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、前記処理剤(以後、「第1処理剤」と略記する)で処理した後、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物、およびガラス転位温度(Tg)が0〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを含む処理剤(以後、「第2処理剤」と略記する)で処理したものであることが、接着性の向上の観点から好ましい。
【0066】
上記レゾルシン・ホルマリン初期縮合物とは、アルカリ触媒下でレゾルシンとホルマリンを縮合させて得られるものであって、レゾルシンとホルマリンのモル比が1.00:0.75〜1.00:3.00、好ましくは、1.00:1.00〜1.00:2.00の範囲のものが良い。
【0067】
なお、上記の第2処理剤には、ゴムとの接着力をさらに向上させるために、前記ブロックドポリイソシアネート化合物を配合したもの、あるいは2,6−ビス(2′,4′―ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロルフェノールのようなハロゲン化フェノールとレゾルシン・ホルムアルデヒドとの反応生成物を配合したものとして使用することが好ましい。
【0068】
本発明の第2処理剤は、前記エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックス以外に、必要に応じて他のゴムラテックスを添加することができる。他のゴムラテックスを添加する場合、第2処理剤のエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスと他のゴムラテックスの合計量を100重量部として、エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスが20〜50重量部(乾燥重量部)含有されるように添加することが好ましい。この範囲を外れると、耐熱接着力が低下することがある。
【0069】
添加できるゴムラテックスの具体例としては、スチレンブタジエン系ゴムラテックス、ポリブタジエン系ゴムラテックス、ビニルピリジンスチレンブタジエン系ゴムラテックス、アクリロニトリルブタジエン系ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス、アクリレート系ゴムラテックスおよび天然ゴムラテックスなどが挙げられる。
【0070】
この第2処理剤におけるレゾルシン・ホルマリン初期縮合物とゴムラテックス(ガラス転位温度(Tg)が0〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスと、他のゴムラテックスの合計量)の配合比率は、固形分重量比で1:3〜1:12、さらには1:4〜1:9の範囲であることが好ましい。
【0071】
この第2処理剤にブロックドポリイソシアネート化合物を添加する場合、その添加量は第2処理剤の固形分であるレゾルシン・ホルマリン初期縮合物、ガラス転位温度(Tg)が0〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスおよび他のゴムラテックスの合計量100重量部に対して、5〜25重量部、さらには10〜20重量部の範囲が好ましい。また、この第2処理剤にパラクロロフェノール・レゾルシン・ホルムアルデヒドとの共縮合物の反応生成物を添加する場合、その添加量は第2処理剤の固形分であるレゾルシン・ホルマリン初期縮合物、ガラス転位温度(Tg)が0〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスおよび他のゴムラテックスの合計量100重量部に対して、20〜40重量部の範囲が好ましい。
【0072】
本発明の第1処理剤の付着量は、合成繊維の撚糸コード100重量部に対し、0.8〜3.0重量部、特に1.0〜2.5重量部が好ましい。0.8重量部未満であると、ゴムとの接着性が低下することがあり、3.0重量部を越えると、コードが硬くなり、耐疲労性が悪化することがある。
【0073】
また、本発明の第2処理剤の付着量は、合成繊維の撚糸コード100重量部に対し、0.8〜3.0重量部、特に1.0〜2.5重量部が好ましい。0.8重量部未満であると、ゴムとの接着性が低下することがあり、3.0重量部を越えると、コードが硬くなり、耐疲労性が悪化することがある。
【0074】
以下、本発明のゴム補強用合成繊維コードの製造方法について詳述する。
【0075】
本発明のゴム補強用合成繊維コードの製造方法においては、前記第1処理剤を合成繊維の撚糸コードに付与し、引き続いて好ましくは100〜150℃の温度で乾燥し、続けて200〜245℃で熱処理を施すことにより、本発明の合成繊維コードが得られる。また、接着性向上の観点から、前記の処理工程に引き続き、前記第2処理剤を付与し、好ましく100〜150℃の温度で乾燥し、続けて200〜250℃で熱処理することによって、ゴムとの接着力が極めて優れたゴム補強用コードを得ることができる。
【0076】
なお、上記第1処理剤および第2処理剤を合成繊維に付与する方法としては、ローラーとの接触、もしくはノズルからの噴霧による塗布、または液浴への浸漬などの任意の方法を採用することができる。
【0077】
また、合成繊維に対する各処理剤の固形分付着量を制御するために、圧接ローラーによる絞り、スクレーパーによるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばしおよび吸引などの手段を用いてもよい。
【0078】
さらには、上記の乾燥、熱処理後にコードをエッジに摺接させることにより任意のコード剛さを得るためのブレーディング柔軟化処理を施すこともできる。
【0079】
この第1浴処理剤は、通常は総固形分濃度2〜12重量%、好ましくは4〜8重量%で使用し、合成繊維への付着量は、乾燥重量で合成繊維100重量部に対し0.8〜3.0重量部とすることが最適である。 第1処理剤の固形分濃度および合成繊維への付着量がかかる好ましい範囲の場合、合成繊維への付着率が過度になることはなく、耐疲労性に優れる一方、合成繊維とゴムとの接着力に優れたものとなる。
【0080】
また、第2処理剤は、通常は総固形分濃度5〜20重量%、好ましくは7〜15重量%で使用し、ポリエステル繊維への付着量は、乾燥重量で合成繊維100重量部に対し0.8〜3.0重量部とすることが最適である。 第2処理剤の固形分濃度および合成繊維への付着量がかかる好ましい範囲の場合、合成繊維への付着率が過度になることはなく、耐疲労性に優れる一方、合成繊維とゴムとの接着力に優れたものとなる。
【0081】
このようにして得られる本発明のゴム補強用合成繊維コードは、従来の接着剤組成物で処理したものに比較して、ゴムとの接着性が優れるとともに、耐熱接着力が優れ、例えば自動車用タイヤ、コンベアーベルト、Vベルトおよびホースなどの分野において、きわめて高品位のゴム補強製品を提供することができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下に具体的に記載する実施例において、各測定値は次の方法により求めたものである。
【0083】
(1)コード強力
“テンシロンUTL−4L”型引張試験機 (オリエンテック社製)を用い
JIS L1017(2002)8.5a)標準時試験の方法で測定した。
下降速度は300mm/分、n数8とし、平均値をコード強力とした。
【0084】
(2)T−初期接着力およびT−耐熱接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。JIS L−1017(1983)の接着力−A法に準じて、処理コードを未加硫ゴムに埋め込み、加圧下で初期接着力は、150℃、30分、耐熱接着力は170℃、70分間プレス加硫を行い、放冷後、コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した加重をN/cmで表示した。
【0085】
(3)耐疲労性(グッドリッチ法ディスク疲労)
JIS L 1017(1983年)により、伸長率5%,圧縮率15%で、1705rpmで24時間繰り返し疲労を与えた後、強力残存率を100分率で示したものである。
【0086】
(4)ラテックスのガラス転移点(Tg)
示差走査熱量計装置(DSC−50:島津製作所製)を用いて測定した。予め、常温にて乾燥させたラテックス10mgを所定のアルミニウム−パンに封入し、−50℃から100℃まで速度5℃/minで昇温し、各ラテックスのガラス転移点を測定した。
【0087】
(5)乾燥ラテックスフィルムの破断伸度
ラテックスに、ポリアクリル酸ソーダを0.5%D/Dの割合で添加し、混合、ガラス板上に塗布し、室温で1日間乾燥する。フィルム状(厚み約0.5mm)のサンプルをさらに、120℃15分間加熱し、乾燥ラテックスフィルムとした。これをテンシロンを用いて、引張り試験を行い、破断時の伸度を求めた。
【0088】
なお、上記(2)T−接着力、および(3)耐疲労性の測定に使用したゴムコンパウンドの組成は下記のとおりである。
天然ゴム (RSS#1):80(重量部)
SBR(JSR1501):30(重量部)
SRFカーボンブラック:40(重量部)
ステアリン酸:2(重量部)
硫黄:2(重量部)
亜鉛華:5(重量部)
2,2’−ジチオベンゾチアゾール:2(重量部)
ナフテン酸プロセスオイル:3(重量部)。
【0089】
また、本発明で使用したポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、ゴムラテックスは下記のとおりである。
(ポリエポキシド化合物)
・ ソルビトールポリグリシジルエーテル:“デナコール”(登録商標)EX−614B(ナガセ化成(株)製)
(ブロックドポリイソシアネート化合物)
・ジフェニルメタンビス4,4−エチレンウレア:FS−50(明成化学工業(株)製)
(ケイ酸塩化合物)
・合成スメクタイト:“ルーセンタイト”(登録商標)SWF(コープケミカル(株)製)
(ゴムラテックス)
・ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス:”ピラテックス”(登録商標)(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;41%、Tg;−55℃
・ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックス:“ピラテックス−LB”(登録商標)(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;38%、Tg;−25℃
・スチレン−ブタジエンゴムラテックス:J9049(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;49%、Tg;−40℃
・エチレン系不飽和酸変成スチレン−ブタジエンブタジエンゴムラテックス:“ナルスター”(登録商標)SR−100(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;51.0%、Tg25℃、破断伸度;25%
・エチレン系不飽和酸変成スチレン−ブタジエンブタジエンゴムラテックス:“ナルスター”(登録商標)SR−102(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;48.0%、Tg;21℃、破断伸度;390%
・エチレン系不飽和酸変成スチレン−ブタジエンブタジエンゴムラテックス:“ナルスター”(登録商標)SR−103(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;48.0%、Tg;5℃、破断伸度;420%
・エチレン系不飽和酸変成スチレン−ブタジエンブタジエンゴムラテックス:“ナルスター”(登録商標)SR−104(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;48.0%、Tg;3℃、破断伸度;450%
・エチレン系不飽和酸変成スチレン−ブタジエンブタジエンゴムラテックス:“ナルスター”(登録商標)SR−108(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;46.0%、Tg;−9℃、破断伸度;300%
・エチレン系不飽和酸変成スチレン−ブタジエンブタジエンゴムラテックス:“ナルスター”(登録商標)SR−110(日本エイアンドエル(株)製)、固形分濃度;47.0%、Tg;−27℃、破断伸度;940%
【0090】
(実施例1〜10、比較例1〜10)
第1浴処理液として、表1、2に示す固形分濃度5.5%の混合液を準備した。
【0091】
第2浴処理液のRFLとして、アルカリ存在下でレゾルシン1モルに対し、ホルマリンを1.50モルを反応させて得られた初期縮合物と、表1、2に示すゴムラテックス混合物を、固形分重量比で1/8で混合し24時間熟成させた。次に上記RFL100重量部に対し、メチルエチルケトオキシムブロックドジフェニルジイソシアネート分散液を10重量部混合し、固形分濃度10%の第2浴処理液を調整した。
【0092】
一方、溶融紡糸、延伸された糸粘度0.95の1670dtex、360フィラメントのポリエステル繊維2本を、下撚40回/10cm,上撚40回/10cmの撚数で撚糸して生コードを得た。
【0093】
次いで、コンピュートリーターシングルディッピングマシン(米リッツラー社製)を用いて、上記生コードに対し、上記第1処理液を付与し、エアーワイパー圧は0.2kg/cmの条件で液きりを行い、引き続き120℃で100秒乾燥し、続いて240℃で45秒間熱処理した。
【0094】
次いで、上記第2処理液を付与し、エアーワイパー圧は0.3kg/cmで液きりを行い、100℃で100秒乾燥し、続いて240℃で60秒間熱処理した。
【0095】
得られた接着剤処理されたコードの固形分付着量は第1浴処理液で合成繊維の撚糸コード100重量部に対し1.5重量部、第2処理液の固形分付着量は合成繊維の撚糸コード100重量部に対し1.0重量部であった。
【0096】
このようにして得られた実施例1、2および比較例の各ゴム補強用コードの特性評価結果を表1、2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
表1、2の結果のように、本発明による実施例1〜10の場合、従来のゴム補強用ポリエステル繊維(比較例1〜10)よりも、ゴム中での劣化を大幅に改善できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエポキシド化合物、ブロックドポリイソシアネート化合物、ケイ酸塩化合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを配合してなることを特徴とするゴム・繊維用接着処理剤。
【請求項2】
前記エチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスの、乾燥ラテックスフィルムの破断伸度が5%〜400%であることを特徴とする請求項1に記載のゴム・繊維用接着処理剤
【請求項3】
前記処理剤において、エチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックス以外にさらに、他のゴムラテックスを含む処理剤であって、エチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックスと他のゴムラテックスの合計量を100重量部として、エチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックスが20〜50重量部(乾燥重量部)であることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム・繊維用接着処理剤。
【請求項4】
前記処理剤に、さらに(イ)共役ジエン系単量体40〜50重量%、(ロ)ビニルピリジン系単量体13〜20重量%、(ハ)スチレン系単量体25〜35重量%からなり、かつガラス転位温度(Tg)が−40℃〜−10℃である三元共重合体ゴムラテックスを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム・繊維用接着処理剤。
【請求項5】
合成繊維の撚糸コードの表層に、請求項1〜4のいずれかに記載の処理剤が被覆されていることを特徴とするゴム補強用合成繊維コード。
【請求項6】
前記コードの表層に、さらにレゾルシン・ホルマリン初期縮合物、およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを含む処理剤が被覆されていることを特徴とする請求項5記載のゴム補強用合成繊維コード。
【請求項7】
前記合成繊維が、ポリエステル繊維または芳香族ポリアミド繊維であることを特徴とする請求項5または6に記載のゴム補強用合成繊維コード。
【請求項8】
合成繊維に撚りをかけて得られる撚糸コードを、請求項1〜4のいずれかに記載の処理剤を付与した後、100〜150℃で乾燥、200〜245℃で熱処理することを特徴とするゴム補強用合成繊維コードの製造方法。
【請求項9】
前記コードの製造方法において、引き続きコード表層を、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物およびガラス転位温度(Tg)が0℃〜35℃であるエチレン系不飽和酸変成スチレン・ブタジエンゴムラテックスを含む処理剤で処理し、100〜150℃で乾燥、220〜250℃で熱処理することを特徴とする請求項8記載のゴム補強用合成繊維コードの製造方法。

【公開番号】特開2008−169504(P2008−169504A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2968(P2007−2968)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(390001926)東洋タイヤコード株式会社 (2)
【Fターム(参考)】