説明

ゴム体補強用スチールコードおよびコンベヤベルト

【課題】ゴム体の補強を確実なものとしつつ、ゴム体との接着性を向上させること。
【解決手段】外周部を構成する複数の最外層フィラメント11a、およびこれらの最外層フィラメント11aの内側に位置する内側フィラメント11bを有するストランド12A、12Bが、複数撚り合わされてなり、複数のストランド12A、12Bのうち、当該ゴム体補強用スチールコード10の外周部を構成する最外層ストランド12Aの最外層フィラメント11aには、ブラスメッキ処理が施され、最外層ストランド12Aよりも内側に位置する少なくとも1つのフィラメント11a、11bには、亜鉛メッキ処理が施されているゴム体補強用スチールコード10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム体に埋設されるゴム体補強用スチールコードおよびコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のゴム体補強用スチールコードとして、例えば下記特許文献1に示されるような、複数のフィラメントが撚り合わされて構成されたストランドを、複数撚り合わせてなる構成が知られている。このスチールコードでは、全てのフィラメントにブラスメッキ処理が施されている。これにより、スチールコードとゴム体との接着性を向上させることができる。
【0003】
ところで、この種のゴム体補強用スチールコードを採用する構成として、例えば下記特許文献2に示されるようなコンベヤベルトが知られている。このコンベヤベルトは、ゴム材料で無端帯状に形成されたベルト本体を備えており、このベルト本体にベルト周方向に沿って埋設されたゴム体補強用スチールコードにより、コンベヤベルトのベルト周方向に沿った引張強度(ベルト強力)が高められている。このコンベヤベルトでは、ゴム体補強用スチールコードには、亜鉛メッキ処理が施されている。この亜鉛メッキ処理は、例えばゴム体補強用スチールコードを構成する全てのフィラメントに亜鉛メッキ処理を施すことで行われる。これにより、例えば、輸送する輸送物によってコンベヤベルトに生じたカット傷などからフィラメントに雨水などが到達してしまった場合であっても、亜鉛メッキをフィラメントよりも優先的に腐食させることにより、フィラメントの腐食を遅らせることができる。したがって、フィラメントの強度を確保することが可能になり、ゴム体補強用スチールコードによるコンベヤベルトの補強を確実なものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−1924号公報
【特許文献2】特開平11−21389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、ゴム体補強用スチールコードには、ゴム体の補強を確実なものとしつつ、ゴム体との接着性を向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ゴム体の補強を確実なものとしつつ、ゴム体との接着性を向上させることができるゴム体補強用スチールコード、およびコンベヤベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るゴム体補強用スチールコードは、外周部を構成する複数の最外層フィラメント、およびこれらの最外層フィラメントの内側に位置する内側フィラメントを有するストランドが、複数撚り合わされてなるゴム体補強用スチールコードであって、複数の前記ストランドのうち、当該ゴム体補強用スチールコードの外周部を構成する最外層ストランドの前記最外層フィラメントには、ブラスメッキ処理が施され、前記最外層ストランドよりも内側に位置する少なくとも1つのフィラメントには、亜鉛メッキ処理が施されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、最外層ストランドの最外層フィラメントに、ブラスメッキ処理が施されているので、このゴム体補強用スチールコードの外周縁部にブラスメッキ処理が施されることとなり、このゴム体補強用スチールコードとゴム体との接着性を向上させることができる。このように、最外層ストランドの最外層フィラメントに、ブラスメッキ処理が施されていることから、このゴム体補強用スチールコードが複数のストランドを撚り合わせてなる構成にも関わらず、該ゴム体補強用スチールコードの外周縁部に、その全域にわたって未処理箇所を生じさせずにブラスメッキ処理を確実に施すことができる。
また、最外層ストランドよりも内側に位置する少なくとも1つのフィラメントに、亜鉛メッキ処理が施されているので、この亜鉛メッキ処理が施されたフィラメントに水などが到達してしまった場合であっても、このフィラメントに形成された亜鉛メッキ層をフィラメントよりも優先的に腐食させ、フィラメントの腐食を遅らせることができる。したがって、亜鉛メッキ処理が施されたフィラメントの強度を確保することが可能になり、このゴム体補強用スチールコードによるゴム体の補強を確実なものとすることができる。
【0009】
なお、前記亜鉛メッキ処理が、複数のストランドのうち、最外層ストランドよりも内側に位置するストランドの内側フィラメントに施されている場合には、ゴム体の補強をより確実なものとすることができる。すなわちこの場合、前記亜鉛メッキ処理が、複数のストランドのうち、最外層ストランドよりも内側に位置するストランドの最外層フィラメントに施されている場合に比べて、亜鉛メッキ処理が施されたフィラメントに水などが到達しにくくなるため、このフィラメントの腐食をより遅らせることが可能になる。
【0010】
また、前記亜鉛メッキ処理は、前記最外層ストランドよりも内側に位置する全てのフィラメント、および前記最外層ストランドの前記内側フィラメントに施されていても良い。
【0011】
この場合、亜鉛メッキ処理が、最外層ストランドよりも内側に位置する全てのフィラメント、および最外層ストランドの内側フィラメントに施されているので、ゴム体補強用スチールコードを構成する多数のフィラメントのうち、ゴム体に特に当接し易いフィラメントに限定して、ゴム体との接着性を向上させるブラスメッキ処理が施される一方、その他のフィラメントには全てフィラメントの腐食を遅らせる亜鉛メッキ処理が施されることとなる。したがって、前述の作用効果が確実に奏功されることとなる。
【0012】
また、本発明に係るコンベヤベルトは、前記本発明に係るゴム体補強用スチールコードが、ゴム材料で無端帯状に形成されたベルト本体にベルト周方向に沿って埋設されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記本発明に係るゴム体補強用スチールコードが、ベルト本体にベルト周方向に沿って埋設されているので、ゴム体補強用スチールコードによってこのコンベヤベルトのベルト周方向に沿った引張強度(ベルト強力)の補強を確実なものとしつつ、ゴム体補強用スチールコードとベルト本体との接着性を向上させることができる。
なおコンベヤベルトでは、特に、ゴム体補強用スチールコードによる補強、およびゴム体補強用スチールコードとベルト本体との接着性がいずれも求められるので、前述の作用効果が顕著に奏功されることになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴム体の補強を確実なものとしつつ、ゴム体との接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンベヤベルトの一部断面を含む斜視図である。
【図2】図1に示すコンベヤベルトが備えるスチールコードを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスチールコードの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るコンベヤベルトを説明する。
図1に示すように、コンベヤベルト1は、ゴム材料で形成された無端帯状のベルト本体2と、該ベルト本体2にベルト幅方向に複数埋設されるとともにベルト周方向に延びるスチールコード(ゴム体補強用スチールコード)10と、を備えている。このコンベヤベルト1は、例えば、図示しない駆動プーリおよび従動プーリに巻回され、ベルト周方向に沿った送り移動に伴い輸送物を輸送する。
【0017】
ベルト本体2は、例えば硫黄加硫可能なゴム材料で形成されている。このゴム材料としては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)等を、単独であるいは混合して使用することができる。なおベルト本体2は、複数のゴム層が積層された構成であっても良い。
スチールコード10は、ベルト本体2にベルト幅方向に等しい間隔をあけて埋設されるとともに、ベルト周方向に沿ってベルト本体2の全周にわたって延びている。なお、ベルト幅方向に隣り合うスチールコード10間の間隔は、適宜調節することができる。
【0018】
図2に示すように、スチールコード10は、外周部を構成する6つの側フィラメント(最外層フィラメント)11a、およびこれらの側フィラメント11aに囲まれて該側フィラメント11aの内側に位置する1つの芯フィラメント(内側フィラメント)11bを有するストランド12A、12Bが、複数撚り合わされてなる。図示の例では、スチールコード10は、その外周部を構成する6つの側ストランド(最外層ストランド)12Aと、これらの側ストランド12Aに囲まれて該側ストランド12Aの内側に位置する1つの芯ストランド12Bと、で構成されており、いわゆる7×7構造となっている。なおストランド12A、12Bは、前述した多数のフィラメント11a、11bが撚り合わされて構成されている。
【0019】
そして本実施形態では、複数のストランド12A、12Bのうち、側ストランド12Aの側フィラメント11aには、ブラスメッキ処理が施されている。なおこの側フィラメント11aには、ブラスメッキ処理が施されることにより、銅および亜鉛の総量に対する銅の比率が例えば60〜70質量パーセントとされたブラスメッキが形成される。
また、側ストランド12Aよりも内側に位置する少なくとも1つのフィラメント11a、11bには、亜鉛メッキ処理が施されている。図示の例では、亜鉛メッキ処理は、側ストランド12Aよりも内側に位置する全てのフィラメント11a、11bである芯ストランド12Bを構成するフィラメント11a、11b、および側ストランド12Aの芯フィラメント11bに施されている。
【0020】
以上説明したように、本実施形態に係るスチールコード10によれば、側ストランド12Aの側フィラメント11aに、ブラスメッキ処理が施されているので、このスチールコード10の外周縁部にブラスメッキ処理が施されることとなり、このスチールコード10とベルト本体2との接着性を向上させることができる。このように、側ストランド12Aの側フィラメント11aに、ブラスメッキ処理が施されていることから、このスチールコード10が複数のストランド12A、12Bを撚り合わせてなる構成にも関わらず、該スチールコード10の外周縁部に、その全域にわたって未処理箇所を生じさせずにブラスメッキ処理を確実に施すことができる。
また、側ストランド12Aよりも内側に位置する少なくとも1つのフィラメント11a、11bに、亜鉛メッキ処理が施されているので、この亜鉛メッキ処理が施されたフィラメント11a、11bに水などが到達してしまった場合であっても、このフィラメント11a、11bに形成された亜鉛メッキ層をフィラメント11a、11bよりも優先的に腐食させ、フィラメント11a、11bの腐食を遅らせることができる。したがって、亜鉛メッキ処理が施されたフィラメント11a、11bの強度を確保することが可能になり、このスチールコード10によるコンベヤベルト1の補強を確実なものとすることができる。
【0021】
また、亜鉛メッキ処理が、側ストランド12Aよりも内側に位置する全てのフィラメント11a、11b、および側ストランド12Aの芯フィラメント11bに施されているので、スチールコード10を構成する多数のフィラメント11a、11bのうち、ベルト本体2に特に当接し易い側ストランド12Aの側フィラメント11aに限定して、ベルト本体2との接着性を向上させるブラスメッキ処理が施される一方、その他のフィラメント11a、11bには全て、フィラメント11a、11bの腐食を遅らせる亜鉛メッキ処理が施されることとなる。したがって、前述の作用効果が確実に奏功されることとなる。
【0022】
また本実施形態に係るコンベヤベルト1によれば、前記スチールコード10が、ベルト本体2にベルト周方向に沿って埋設されているので、スチールコード10によってこのコンベヤベルト1のベルト周方向に沿った引張強度(ベルト強力)の補強を確実なものとしつつ、スチールコード10とベルト本体2との接着性を向上させることができる。
なおコンベヤベルト1では、特に、スチールコード10による補強、およびスチールコード10とベルト本体2との接着性がいずれも求められるので、前述の作用効果が顕著に奏功されることになる。
【0023】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、本発明に係るスチールコードを、コンベヤベルト1のベルト本体2に埋設されるスチールコード10に適用するものとしたが、これに代えて、タイヤに用いられるスチールコード等、他のゴム体に埋設されそのゴム体を補強するスチールコードに適用することも可能である。
【0024】
また前記実施形態では、スチールコード10は、いわゆる7×7構造であるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば、図3に示すスチールコード20のような、いわゆる7×19構造であっても良い。
このスチールコード20を構成するストランド12A、12Bは、その外周部を構成する12本の最外層フィラメント21aと、これらの最外層フィラメント21aに囲まれて該最外層フィラメント21aの内側に位置する1つの芯フィラメント(内側フィラメント)21bと、最外層フィラメント21aに囲まれて該最外層フィラメント21aの内側に位置するとともに1つの芯フィラメント21bの周囲に配置された6つの中間フィラメント(内側フィラメント)21cと、で構成されている。この場合、側ストランド12Aの最外層フィラメント21aに、ブラスメッキ処理が施されていれば良い。また、側ストランド12Aを構成するフィラメント21a、21b、21cのうち、最外層フィラメント21aの内側に位置する芯フィラメント21bおよび中間フィラメント21cに、亜鉛メッキ処理が施されていることが好ましい。
さらに前記実施形態では、芯フィラメント11b、21bは、1つであるものとしたが、これに限られるものではなく、複数あっても良い。
【0025】
また前記実施形態では、スチールコード10、20は、7つのストランド12A、12Bで構成されているものとしたが、これに限られるものではなく、ストランドが、複数撚り合わされてなる構成であれば良い。例えば、スチールコードの外周部を構成する最外層ストランドの内側に、複数のストランドが配置されていても良い。また、側ストランド(最外層ストランド)12Aは6つに限られるものではなく、6つより多くても少なくても良い。
【0026】
また前記実施形態では、亜鉛メッキ処理は、複数の側ストランド12Aよりも内側に位置する全てのフィラメント11a、11b、21a、21b、21cに施されているものとしたが、これに限られるものではない。
例えば、図2に示すスチールコード10の芯ストランド12Bを構成するフィラメント11a、11bのうち、側フィラメント11aに、ブラスメッキ処理が施されるとともに、芯フィラメント11bに、亜鉛メッキ処理が施されていても良い。
なおこのように、亜鉛メッキ処理が、複数のストランド12A、12Bのうち、側ストランド12Aよりも内側に位置するストランドである芯ストランド12Bの芯フィラメント11bに施されている場合には、コンベヤベルト1の補強をより確実なものとすることができる。すなわちこの場合、前記亜鉛メッキ処理が、芯ストランド12Bの側フィラメント11aに施されている場合に比べて、亜鉛メッキ処理が施されたフィラメント11bに水などが到達しにくくなるため、このフィラメント11bの腐食をより遅らせることが可能になる。
【0027】
さらに前記実施形態では、側ストランド12Aの芯フィラメント11bに、亜鉛メッキ処理が施されているものとしたが、これに代えて、ブラスメッキ処理が施されていても良い。
さらにまた、前記実施形態では、側ストランド12Aの側フィラメント11aには、ブラスメッキ処理が施されることにより、銅および亜鉛の総量に対する銅の比率が例えば60〜70質量パーセントとされたブラスメッキが形成されるものとしたが、前記比率はこれに限られるものではない。
【0028】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 コンベヤベルト
2 ベルト本体
10、20 スチールコード
11a 側フィラメント(最外層フィラメント)
11b、21b 芯フィラメント(内側フィラメント)
12A 側ストランド(最外層ストランド)
12B 芯ストランド(ストランド)
21a 最外層フィラメント
21c 中間フィラメント(内側フィラメント)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部を構成する複数の最外層フィラメント、およびこれらの最外層フィラメントの内側に位置する内側フィラメントを有するストランドが、複数撚り合わされてなるゴム体補強用スチールコードであって、
複数の前記ストランドのうち、当該ゴム体補強用スチールコードの外周部を構成する最外層ストランドの前記最外層フィラメントには、ブラスメッキ処理が施され、
前記最外層ストランドよりも内側に位置する少なくとも1つのフィラメントには、亜鉛メッキ処理が施されていることを特徴とするゴム体補強用スチールコード。
【請求項2】
請求項1記載のゴム体補強用スチールコードであって、
前記亜鉛メッキ処理は、前記最外層ストランドよりも内側に位置する全てのフィラメント、および前記最外層ストランドの前記内側フィラメントに施されていることを特徴とするゴム体補強用スチールコード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム体補強用スチールコードが、ゴム材料で無端帯状に形成されたベルト本体にベルト周方向に沿って埋設されていることを特徴とするコンベヤベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−202291(P2011−202291A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68103(P2010−68103)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】