説明

ゴム物品補強用スチールコードおよび空気入りタイヤ

【課題】そこで本発明は、所期した楕円形を有し、この楕円形における短軸および長軸との比がコード長手方向にて均一である、オープン構造のスチールコードを提供することを目的とする。
【解決手段】7本以上の素線からなる単層オープン構造のスチールコードであって、コード長手方向に連続する楕円形の断面形状を有し、該楕円形における短軸Aおよび長軸Bの比A/Bが0.4〜0.8、前記素線の直径dが0.12〜0.26mm、コードの撚りピッチaと素線の直径dとの比a/dが30〜80とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性に優れかつ耐久性の高いスチールコード並びに、操縦安定性、耐久性および軽量化を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤ、中でも乗用車用タイヤは、1対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスを骨格とし、このカーカスのタイヤ径方向外側に少なくとも2層のゴムシートからなるベルトを配置し、さらにその外側にトレッドを配置した構造が一般的である。
【0003】
特に、空気入りタイヤのベルト部分を、タイヤの赤道面に対して所定の傾斜角度で配置した、主にコードをゴムで被覆したゴムシートの少なくとも2枚を、層間で交差するように積層した構造とすることによって、車輌性能に合致した操縦性能および耐久性を有する空気入りタイヤが知られている。
【0004】
かような空気入りタイヤのベルトの補強に供するコードは、引張り強さが高いほど、タイヤのコーナリング時にベルトの面内の変形が抑制される。また、コードの曲げ剛性が小さいほど、ベルトのバックリングが抑制され接地面を大きくできる。さらに突起物などを乗り越した際に受ける衝撃が吸収されるため、乗り心地が向上する。かように曲げ剛性を小さくしたコードとして、有機繊維を使用して剛性を9.8MPa以下に抑制したコードが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、有機繊維を使用したコードは、発熱時にゴムとの接着耐久性がスチールコードと対比すると劣ってしまうため実用的ではない。また、撚り構造が複雑になってしまうため、タイヤに適用した際、ゴムがコード内部に十分に浸透しないことから、ゴム製品の耐久性が問題になる懸念がある。
【0006】
この耐久性に関して、スチールコードにおいては、タイヤの外傷からタイヤの内部に浸入した水分によって、スチールコードが腐食し、この腐食に起因した耐久性の低下を抑制することが必要とされている。すなわち、タイヤの外傷からタイヤの内部に水分が浸入した際、この水分がコードに達すると、この水分によってコードが腐食してしまう。そして、コード内部に隙間があると、この隙間を介して水分がコード長手方向に伝播して、コードに沿って腐食域が拡大することになる。その結果、この腐食に起因してスチールコードの耐久性が低下する。
【0007】
この、耐久性の低下を抑制するスチールコードとして、コード長手方向と直交する断面において、素線同士が互いに離間して配置されているオープン構造のものが提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。かようなスチールコードは、素線間に間隙を有するため、加硫成形時に、コード外部から内部へゴムを容易に浸入させて、コード内部の間隙をゴムで満たすことができる。そのため、例えばタイヤ外傷を介してタイヤ内部に浸入した水分がコード内を伝播する隙間がなくなる結果、腐食域の拡大は抑制され、スチールコードの耐久性低下を抑制することが可能となる。
【0008】
一方で、近年は、車輌の操縦安定性の向上や、地球の環境問題を発端とした自動車の低燃費化に対する要求が強くなってきており、上記したように素線間に隙間を設けることに加えてコード長手方向と直交する断面形状が楕円形としたスチールコードが提案されている(特許文献4参照)。
【0009】
すなわち、コード長手方向と直交する断面形状を楕円形とする、コードの扁平化によって、空気入りタイヤの補強に供するベルトの面内曲げ剛性が増加するため、車輌の操縦安定性が向上する。また、ベルトの厚みを薄くすることができるため、空気入りタイヤの軽量化が可能となり、車輌の低燃費化が促進される。
【特許文献1】特開平10−203110号公報
【特許文献2】特開平9−158066号公報
【特許文献3】特開平11−81168号公報
【特許文献4】特開平6−1108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このスチールコードは複数本の素線を同一ピッチで撚り合わせていることから、楕円形における短軸および長軸との比が、スチールコードの長手方向にて安定しない不利を招いてしまう。なぜなら、複数本の素線を撚り合わせた時に、コードの外郭形状を構成する素線とコードの内部を構成する素線の入れ替わりが発生し、適正なコード外郭形状を得られないためである。
【0011】
そして、スチールコードの短軸および長軸との比が長手方向に均一でないと、スチールコードをタイヤのベルトに適用した際、並列に引き揃えた隣り合うスチールコード同士の間隙が確保できない部分が生じ、ここを起点としたベルトの故障を引き起こす不利を招いてしまう。
【0012】
また、上記した操縦安定性の向上や低燃費化には、コードの扁平化を進めることが有効であるが、上述のいずれのコードも、コードの軸心部分に素線を有する、芯部のある構造であるため、扁平化を促進することが難しい。特に、コードを構成する素線本数が7本以上であり、かつ素線間に隙間のあるオープン構造を所期して扁平化を促進する場合、コードの軸心部分に素線を配置しない空洞部が、コード長手方向に連続する構造のスチールコード、いわゆる単層オープン構造のスチールコードであっても、所期した扁平化を得ることが困難である問題を抱えてしまう。
【0013】
なぜなら、かようなスチールコードは、スチールコードを構成する素線の本数をN本(N≧7)としたとき、幾何学上、N−1本で構成されるコードの内部には、素線の径より大きい空洞部が形成されるため、コードを構成する一部の素線が、コード径方向内側に向かって、コード内部の空洞部に入り込んでしまう。その結果、コード軸方向と直交する断面がコード長手方向で均一でないスチールコードになってしまう。
【0014】
そこで本発明は、所期した楕円形を有し、この楕円形における短軸および長軸との比がコード長手方向にて均一である、特に単層オープン構造のスチールコードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者は、7本以上の素線を撚り合わせた単層オープン構造のスチールコードにおいて、所期した楕円形を付与する方途について鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
(1) 7本以上の素線からなる単層オープン構造のスチールコードであって、コード長手方向に連続する楕円形の断面形状を有し、該楕円形における短軸Aおよび長軸Bの比A/Bが0.4〜0.8、前記素線の直径dが0.12〜0.26mm、コードの撚りピッチaと素線の直径dとの比a/dが30〜80であることを特徴とするスチールコード。
【0017】
(2)上記素線は、引張り強さが2924〜3922.66MPaである上記(1)に記載のスチールコード。
【0018】
(3)上記スチールコードは、コード軸方向と直交する断面の形状が円形であるスチールコードを楕円形に型付けたものである上記(1)または(2)に記載のスチールコード。
【0019】
(4)上記スチールコードは、コード径方向における振幅λがλ≦0.8×長軸Bとなる波型の型付け形状を有する上記(1)ないし(3)に記載のスチールコード。
【0020】
(5)並行に配列した複数本のスチールコードをゴムで被覆してなるスチールコード層を有する空気入りタイヤであって、該スチールコード層は、(1)ないし(4)に記載のスチールコードを、その長軸がタイヤの回転軸方向に沿う向きに配置してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【0021】
(6)1対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスを有し、このカーカスのタイヤ径方向外側に、少なくとも1層のベルトをそなえる空気入りタイヤであって、該ベルトに、上記(1)ないし(4)に記載のスチールコードを適用してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、7本以上の素線からなる単層オープン構造のスチールコードが所期した楕円形を有していることによって、可撓性および耐久性に優れたスチールコードを提供することが可能となる。さらに、このスチールコードを空気入りタイヤの補強に供することによって、操縦安定性および軽量化に優れた空気入りタイヤを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
まず、本発明に従うスチールコードについて、コード長手方向と直交する断面を図1に示す。
すなわち、図1に示すスチールコード1は、7本の素線2をコードの輪郭に沿って、素線2相互間で間隙Sを介して分散配置した、単層オープン構造を有し、コード軸方向と直交する断面の形状が楕円形となっている。また、図2に示すスチールコード1は、8本の素線2をコード輪郭に沿って、図1と同様に、素線2相互間で間隙Sを介して分散配置した、単層オープン構造を有し、コード軸方向と直交する断面の形状が楕円形となっている。
【0024】
ここで、本発明のスチールコード1は、7本以上の素線からなるものを対象とする。なぜなら、素線2の本数が7本以上からなるスチールコード1は、このスチールコード1を構成する一部の素線2が、コード径方向内側に向かって、コード内部の空洞部に入り込むことがないため、単層オープン構造が維持されたまま、コード断面形状を所期した楕円形にすることが可能となるからである。従って、本発明で対象とするスチールコード1は、構成する素線の本数を7本以上に限定した。
【0025】
なお、本発明では、スチールコード1を構成する素線の本数の上限については、特に規定しないが、好ましくは10本とすることが好ましい。すなわち、10本を超えると、コードの外郭形状を維持するための素線の型付け量が大きくなり、結果としてコード形状の不安定を招くおそれがある。
【0026】
上記したように、本発明のスチールコード1は、単層オープン構造であって、コード長手方向に連続する後述する所定の楕円形の断面形状を有することが肝要である。すなわち、単層オープン構造とすれば、スチールコード1の軸心部分は素線の無い空洞となるため、所期した扁平の楕円形を得ることが可能となる。また、スチールコード1を構成する素線2の相互間に間隙が確保されるため、加硫成形時にコード外部からコード内部へ、ゴムを十分に浸入させることが可能となる。その結果、スチールコード1の耐腐食性が向上すると共に、素線同士の擦れ合いによって摩耗するフレッティング摩耗を抑制することが可能となる。
【0027】
さらに本発明のスチールコード1は、このコード1の軸心部分の空洞部に、コード1を構成する一部の素線が、コード径方向内側に向かって入り込むことがないため、コード長手方向と直交する断面形状をコード長手方向にわたり、所定の楕円形を維持することが可能になる。従って、このスチールコード1を空気入りタイヤのベルトの補強に供した際、かようなスチールコードを、その長軸がタイヤの回転軸方向に沿う向きに配置して、ベルトの厚みを薄くすることができるため、このベルトに必要な被覆ゴムの量を減少させることが可能となり、ベルトの軽量化を達成することができる。
【0028】
また、本発明のスチールコード1は、所期した扁平の楕円形とすることによって、
上記のコード配置の下、ベルト面内方向の剛性が向上するため、ベルトの剛性を確保することが可能となる。
【0029】
ここで、コード断面に与える楕円形状は、その短軸Aおよび長軸Bの比A/Bが、0.4〜0.8であることが肝要である。まず、比A/Bが0.4未満であると、加硫成形時において、コード外部からコード内部へのゴム浸透性は向上するが、長軸Bが必要以上に大きくなり問題となってしまう。すなわち、長軸Bが必要以上に大きくなったスチールコード1を空気入りタイヤのベルトの補強に供した際、タイヤの基本性能のために単位幅あたりに必要となるスチールコード1の本数を確保することができなくなる。
【0030】
一方、比A/Bが0.8を超えると、コードを埋設するベルトの厚みが増加してコード被覆ゴムの量が必要以上に増えてしまうため、ベルトの軽量化を見込むことができない。
【0031】
また、素線2の直径dは0.12〜0.26mmであることが肝要である。すなわち、素線2の直径dが0.12mm未満であると、タイヤの基本性能、特に強度に関して必要な強力を確保する事が困難になってしまう
【0032】
一方、素線2の直径dが0.26mmを超えると、ベルトの面外曲げ剛性が大きくなり、操縦性能の低下を招いてしまう。
【0033】
なお、本発明のスチールコード1は、素線径dが上記した範囲内であれば、異なった径の素線を組み合わせたスチールコード、例えば、径dが0.175mmや0.15mmの素線を組み合わせたスチールコードであっても、本発明の有利な効果を得ることが可能である。
【0034】
そして、スチールコード1の撚りピッチaと素線の直径dとの比a/dが30〜80であることが肝要である。すなわち、比a/dが30未満であると、製造上、生産性が悪化して、コストが増加してしまう。
【0035】
一方、比a/dが80を超えると、コードの外郭形状が安定せずに撚り合わせ時にコードを構成する素線同士の入れ替わりが発生し易くなってしまう。
【0036】
そして、素線2はタイヤに必要な強力を確保するため、引張り強さが2924〜3922.66MPaであることが好ましい。
【0037】
以上の要件を満足するスチールコード1は、コード長手方向と直交する断面の形状が円形であるスチールコードを、上記した所定の楕円形に型付けして作製することが好ましい。
【0038】
さらに、上記の型付けを施すに当り、コード径方向における振幅λがλ≦0.8×長軸Bとなる波型の型付けを行うことが好ましい。ここで、波型の型付けとは、図3に示すように、コード長手方向に向かってうねりを伴った形状であることを意味する。そして、この振幅λが0.8×長軸Bの値を超えると、コードを埋設するベルトの厚みが増加してコード被覆ゴムの量が必要以上に増えてしまうため、ベルトの軽量効果が見込めない。
【0039】
ちなみに、コード型付けにおける振幅λは、ギアを有する型付け装置において調整することが好ましい。この装置は、スチールコードの振幅λを調整すると共に、円形のスチールコードを所定の楕円形に加工することも可能である。一般的に、スチールコードは、図4に示す千鳥足状に配したフラットロール間にコードを通して楕円形に加工されているが、本発明では、図5に示すギア4a、4bからなるギア対4を用いて、楕円形に加工することもできる。
【0040】
すなわち、図5に示すギア対4の間にスチールコードを通すと、このスチールコードは、コード長手方向に波型に型付けされるとともに、楕円形に加工される。その際、ギア対4における各々ギアにおけるピッチPは、0.2a≦P≦1.5a(a:コード撚りピッチ)であることが好ましい。なぜなら、ギアのピッチが0.2a未満では、スチールコードを楕円形の断面に加工し難く、所望とする楕円形の断面を得ることが困難となってしまう。一方、ギアのピッチが1.5aを超えると、加工後のコード性状が悪化するため好ましくない。
【0041】
ちなみに、コードにλ≦0.8×長軸Bとなる型付けを与えるに際し、スチールコードをギアにて波型および楕円形に型付けた後、ギア通過にて振幅λが拡大した場合は、図4に示したフラットロールに通すことによって振幅λを減少させて調整をすることができる。
【0042】
さて、以上のスチールコードは、その複数本を所定の間隔を置いて互いに並行に配列してゴムシートに埋設してなるスチールコード層を、タイヤのベルトおよびカーカスに適用してタイヤの補強に供するもので、タイヤの構造としては、在来のタイヤに則るものでよい。例えば、図6に示すタイヤ構造が有利に適合する。なお、同図において、符号5がビードコア、このビードコア5にタイヤの内側から外側に巻き回したカーカス6、このカーカス6上に配置する少なくとも2層構造のベルト7、このベルト7上に配置する少なくとも2層のベルト補強層8、このベルト補強層8の端部からショルダー部に配置された一対のベルト補強層9および10はカーカス6のクラウン部に配置するトレッドである。
【0043】
そして、上記のスチールコード層は、本発明のスチールコード1をその楕円断面における長軸がタイヤの回転軸方向に沿う向きに配置してなることが肝要である。すなわち、スチールコード1を、その長軸がタイヤの回転軸方向に沿う向きに、配置すれば、ベルトの厚みが薄くなる結果、コード被覆ゴムの量を減少することが可能となる。その結果、ベルトの軽量化を実現することが可能となり、タイヤの軽量化も可能となる。
【0044】
また、本発明に従うスチールコード層は、スチールコードを、その長軸がタイヤの回転軸方向に沿う向きに配置されたものであるから、このスチールコード層をベルトに適用することによって該ベルトの面内曲げ剛性(ベルトの各層の面に沿う向きに生じる変形に抗する能力)が増加し、面外曲げ剛性(ベルトの面と直交する向きに生じる変形に抗する能力)が減少して、タイヤの接地性が改良され、トラクション性能が向上すると共に、バックリングも抑制される。
【0045】
さらに、スチールコードの曲げバネ定数や反発弾性率が小さいため、高速走行下であっても緩やかなまたスムーズな挙動となる。その結果、高速走行下におけるハンドリング操作時において、ドライバーが感ずる操縦安定フィーリングでは顕著な差となって現れる。そして、本発明のタイヤのベルトは、路面から受ける外力の吸水性や分散性も高くなるため、低騒音化に効果がある。
【実施例】
【0046】
表1−1および表1−2の仕様の下、図1に示す単層オープン構造の扁平スチールコードを基本とした種々のスチールコードを作製した。そして、このスチールコードをベルトの補強に供して、サイズ225/45R17の空気入りタイヤを作製した。その後、この空気入りタイヤを用いて、操縦安定性、腐食耐久性、ベルト重量およびゴム浸透性について調査した。その結果を表1−1および表1−2に示す。
【0047】
なお、上記した空気入りタイヤのベルト構造は、図6に示すタイヤ構造と同様の構造であり、図6に示すタイヤ幅方向の断面において、ベルトのタイヤ径方向外側に少なくとも2層のベルト補強層8を配置し、さらにこのベルト補強層8のタイヤ径方向外側に、ベルト補強層8の端部からショルダー部に配置された一対のベルト補強層9からなる。
【0048】
操縦安定性は、4輪乗用車に、空気圧が210kPaとする上記の空気入りタイヤを装着させて、テスト車輌とし、このテスト車輌をテストドライバーがテストコースにて走行させて、そのときのテストドライバーによる乗り心地を含む操縦安定性をフィーリング評価した。その結果を従来例1における空気入りタイヤのフィーリング結果と比較して表1−1および表1−2に表示した。なお、評価における基準点を以下の通りである。
+3:良い
+2:やや良い
+1:やや良いと思われる
±0:変わらない
−1:やや悪いと思われる
−2:やや悪い
−3:悪い
【0049】
腐食耐久性は、試作した空気入りタイヤを、JATMA規格に定める標準リムに装着後、JATMA YEAR BOOKにおける最大負荷能力に対応する空気圧を充填し、乗用車に装着した。そして、舗装路をこの乗用車が50000km走行した後、空気入りタイヤを解剖してカット傷からのスチールコードの腐食長さを調査することによって評価した。ここで、腐食長さは10mm以下であれば耐久性に問題はない。
【0050】
ベルト重量は、表1−1および表1−2に示す種々のコードの複数本を、各コードの長軸がベルトの幅方向に沿う配置の下に並べてゴム引きしたプライの2枚を積層することによってスチールコードプライを作製し、その重量を測定して評価した。その際、全てのプライのスチールコード量を同一にするとともに、スチールコードの外郭を通って該コードの長軸に平行の接線とスチールコードプライの表面との距離を全てのスチールコードプライで同一にして、各スチールコードプライを作製した。なお、測定結果は、従来例1のスチールコードを使用したときのプライでの重量を100として指数表示した。
【0051】
【表1−1】

【0052】
【表1−2】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に従うスチールコードにおけるコード長手方向と直交する断面 を示す図である。
【図2】本発明に従うスチールコードにおけるコード長手方向と直交する断面 を示す図である。
【図3】本発明に従うスチールコードにおける波型の型付け形状を示す図であ る。
【図4】本発明に従うフラットロールを示す図である。
【図5】本発明に従うギアを示す図である。
【図6】本発明に従うスチールコードを適用するのに好適なタイヤ構造を示す 断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1スチールコード
2素線
4ギア対
5ビードコア
6カーカス
7ベルト
8ベルト補強層
9ベルト補強層
10トレッド
S間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7本以上の素線からなる単層オープン構造のスチールコードであって、コード長手方向に連続する楕円形の断面形状を有し、該楕円形における短軸Aおよび長軸Bの比A/Bが0.4〜0.8、前記素線の直径dが0.12〜0.26mm、コードの撚りピッチaと素線の直径dとの比a/dが30〜80であることを特徴とするスチールコード。
【請求項2】
前記素線は、引張り強さが2924〜3922.66MPaである請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
前記スチールコードは、コード軸方向と直交する断面の形状が円形であるスチールコードを楕円形に型付けたものである請求項1または2に記載のスチールコード。
【請求項4】
前記スチールコードは、コード径方向における振幅λがλ≦0.8×長軸Bとなる波型の型付け形状を有する請求項1ないし3に記載のスチールコード。
【請求項5】
並行に配列した複数本のスチールコードをゴムで被覆してなるスチールコード層を有する空気入りタイヤであって、該スチールコード層は、請求項1ないし4に記載のスチールコードを、その長軸がタイヤの回転軸方向に沿う向きに配置してなることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項6】
1対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスを有し、このカーカスのタイヤ径方向外側に、少なくとも1層のベルトをそなえる空気入りタイヤであって、該ベルトに、請求項1ないし4に記載のスチールコードを適用してなることを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−62655(P2009−62655A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233176(P2007−233176)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】