説明

ゴム物品補強用金属コードとそのコードの製造方法

【課題】圧縮剛性を低下させずにゴム浸透度を向上させ、設備費や製造コストも低減させる。
【解決手段】金属フィラメント1の外周に金属フィラメント2を螺旋状に巻き付けて束10を形成し、その束10と金属フィラメント3を撚ったゴム物品補強用金属コードWである。このコードWは、螺旋状に巻き付けたフィラメント2がスペーサの役目を果たして、各フィラメント1又は3の間に、内から外側に通じる適度な隙間Sを形成し、この隙間Sによって、ゴムの浸透度が高まる。また、その隙間をフィラメントに波状の癖を付けずに形成し、芯のフィラメント1に撚りによる螺旋の回転を与えたので、1×3の撚りのクローズドコードと同等の圧縮剛性を確保できる。フィラメントにフィラメントを螺旋状に巻き付けるだけなので、その設備も安価で、コスト面でも有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮剛性を低下させずに内部へのゴムの浸透度を向上させた低コストのゴム物品補強用金属コードとそのコードの製造方法、及びその金属コードを使用した自動車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乗用車のタイヤ補強用金属コードは、複数本の金属フィラメント(特に記載のない場合、「素線又はストランド」の両者を含む。以下、同じ)を撚り合わせたものであり、そのコードに求められる要件は、ゴムの浸透度と車のコーナリング特性に影響を及ぼす圧縮剛性に優れていることが挙げられる。
しかし、通常、ゴム浸透度を高くするには、各金属フィラメント間の空隙を大きくする方が有利であり、一方、圧縮剛性を高くするには、各金属フィラメント間の空隙を少なくする方が有利であり、そのゴム浸透度と圧縮剛性は二律背反の関係にある。
【0003】
この二律背反の関係のゴム浸透度と圧縮剛性の要求に応え得るとした従来のゴム物品補強用金属コードとして、撚り込み率を高めるために二次元、あるいは三次元の細かな波を付けた2本の素線をほぼ平行に束ねて第1素線束とし、この第1素線束と他の2本の素線(第2素線束)を、第2素線束についても第1素線束と同様な撚り込み率が得られるように第2素線束を第1素線束の波付けピッチよりも大きい螺旋ピッチで第1素線束に絡ませて相互に撚り合わせたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−73672号公報
【0004】
また、2本又は3本のフィラメントを互いに接するように並列した集束体の2組を、そのフィラメント径の8〜30%の隙間を保ちつつほぼ平行に相向き合って撚り合わせたものもある(特許文献2参照)。
【特許文献2】特公昭60−10151号公報
【0005】
さらに、2本の互いに撚り合わされた線条体と2本の平行な線条体とを互いに撚り合わせてゴムの浸透性を高め、優れた弾性性能も確保したものもある(特許文献3参照)。
【特許文献3】特公昭61−01554号公報
【0006】
また、2本組の素線群と3本組の素線群とを、2本組の素線群がコード方向にパラレル状を呈し、3本組の素線群が2本組の素線群に対して半ピッチ毎に大略傘状、大略倒傘状の交互して撚り合わせたものもある(特許文献4参照)。
【特許文献4】特公平03−23673号公報
【0007】
さらに、50mm以上のねじれピッチを有する2本の第1ワイヤ束に、3本の第2ワイヤ束を第1ワイヤ束のねじれピッチよりも小さいピッチ、かつ、第1ワイヤ束との間に第1ワイヤ束のねじれの1ピッチ内で10%以上の隙間が構成されるように螺旋状に巻き付けたものもある(特許文献5参照)。
【特許文献5】特許第3174803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の金属コードは、ゴムの浸透度は向上するが、圧縮剛性は素線に波を付けていない金属コード(コンパクトコード)に比べて低下すると言う問題がある。
すなわち、素線に付与した波が、例え細かくても、また、二次元の波であっても、撚り合わせる過程で撚りピッチ分の三次元の大きな波が付いて細かい波の屈曲部の腹の部分が外側に現れ始める箇所が1撚りピッチに1回あり、この部分が圧縮負荷に対して弱くなるため、圧縮剛性が低下する。また、素線に予め付与する波の高さを大きくしている場合には、細かい波の屈曲部の腹の部分が外側にあるか内側にあるかとは関係なく、コードの全長にわたって圧縮剛性が低下する。
【0009】
特許文献3〜5に記載の金属コードは、素線の束のどれかに一度撚り加工を施した後に最終撚り合わせを行っており、設備費と製造コストの増加が避けられない。また、特許文献2の金属コードは、いわゆるオープン構造のコードであるので、低荷重域の伸度が大きく、中間工程でのコード引き揃え時、コード長さ方向での各素線の位置関係が不安定なために、コードの重なり等のトラブルが発生することがある。
【0010】
この発明は、上記の実状に鑑みてなされたものであって、圧縮剛性を低下させずに内部へのゴムの浸透度を向上させ、また、設備費や製造コストも低減できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明の一手段は、一の金属フィラメント(1本又は複数の金属フィラメント)に他の金属フィラメント(1本又は複数の金属フィラメント)を螺旋状に巻き付け、その束(1又は複数)と、さらに他の金属フィラメント(1本又は複数の金属フィラメント)とを撚り合わせることとしたのである。
また、他の手段は、一の金属フィラメント(1本又は複数の金属フィラメント)に他の金属フィラメント(1本又は複数の金属フィラメント)を螺旋状に巻き付けてフィラメント束を複数形成し、その複数の束をさらに撚り合わせることとしたのである。
【0012】
この構成の金属コードは、上記一の金属フィラメントに他の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたため、その螺旋状に巻き付けたフィラメント束同士、又はそのフィラメント束と他の金属フィラメントを撚り合わせば、螺旋状に巻き付けた金属フィラメントがスペーサの役割を果たして各金属フィラメント間にその内(中)から外側に通じる空隙が生じて、ゴム浸透度の高いものとなる。
また、その金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたフィラメント束をさらに撚っているため、各金属フィラメントの撚り状態がクローズドコードに近いものとなり、特許文献1の技術に比べれば、圧縮剛性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、一の金属フィラメントに他の金属フィラメントを螺旋状に巻き付け、その束をさらに撚り合わせることとしたので、従来の技術と同等なゴム浸透性及び圧縮剛性を容易に得ることができる。
また、単に、一の金属フィラメントに他の金属フィラメントを螺旋状に巻き付け、その束を撚るだけなので、例えば、簡易なサプライ装置とフライヤを用い、撚線機は単撚りタイプのものが1台あればよい等、その設備も安価なものとなり、コスト面の有利なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施形態としては、ゴム内に埋設されてそのゴムを補強する、3本以上の金属フィラメントを撚り合わせたゴム物品補強用金属コードであって、前記金属フィラメントは、少なくとも1組は2本以上を有する2組以上に振分けられて、その金属フィラメントを2本以上有する組の少なくとも1つの組は、少なくとも1本の金属フィラメントが他の金属フィラメントに螺旋状に巻き付けられており、その螺旋状に巻き付けられた状態で前記撚り合わせがなされて、その螺旋状に巻き付けられた組の金属フィラメントと他の組の金属フィラメントとの間にはその両組の各金属フィラメントが囲む内から外周面に通じてゴムが浸透する空隙が形成されている構成を採用することができる。
そのコードをなす金属フィラメントの本数は、3本、4本、5本、6本・・等と3本以上の複数であれば良く、また、そのコードの金属フィラメントの総数に対する「螺旋状に巻き付けられる及び巻き付ける」両金属フィラメントの本数も、1本、2本、3本、4本、5本・・等とそれぞれ任意である。さらに、撚り合わせる束の数も1、2、3、4・・等と任意である。
【0015】
具体的には、例えば、3〜5本の金属フィラメントを(2+1)、(2+2)、(2+2+1)の振り分けにして2〜3組に分け、2本を振り分けた組は1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けてフィラメント束とし、このフィラメント束の1組と1本の金属フィラメント、フィラメント束の2組またはフィラメント束の2組と1本の金属フィラメントを撚りピッチPで撚り合わせなる構成とすることができる。
なお、(n+m)は、n(2以上)本の金属フィラメントからなる1の束と、m(1以上)本の金属フィラメントを撚り合わせたものを言い、例えば、(2+1)は、2本の金属フィラメントからなる1の束と1本の金属フィラメントを撚り合わせたもの、(2+2)は、2本の金属フィラメントからなる1の束と、2本の金属フィラメントからなる1の束を撚り合わせたもの、(2+2+1)は、2本の金属フィラメントからなる1の束と、2本の金属フィラメントからなる1の束と、1本の金属フィラメントを撚り合わせたものを言う。以下、同じ。
【0016】
より具体的には、例えば、3本の金属フィラメントからなる金属コードにおいては、1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けてフィラメント束となし、このフィラメント束と残りの1本の金属フィラメントを撚り合わせた構成(2+1)を採用できる。
【0017】
4本の金属フィラメントからなる金属コードにおいては、1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたフィラメント束を2つ形成し、その両フィラメント束を撚り合わせた構成(2+2)を採用することができる。
また、1本の金属フィラメントの外周に各1本の金属フィラメントを順に螺旋状に巻きつけて形成されるフィラメントの束を有し、そのフィラメントの束とさらに1本の金属フィラメントとを撚り合わせた構成を採用することもできる(3+1)。
この構成では、他の2本の金属フィラメントの間にも隙間が形成され、その隙間にゴムが浸透するため、ゴム浸透度のより優れたものとなる。
さらに、並列配置の2本の金属フィラメントの外周に1本の金属フィラメントを螺旋状に巻きつけて形成されたフィラメント束と、他の1本の金属フィラメントとを撚り合わせた構成を採用することもでき(3+1)、また、1本の金属フィラメントの外周に1本の金属フィラメントを螺旋状に巻きつけてフィラメントの束を形成し、そのフィラメントの束とさらに他の2本の金属フィラメントとを撚り合わせた構成を採用することとしたりすることができる(2+1+1)。
【0018】
5本の金属フィラメントからなる金属コードにおいては、1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けた2つのフィラメント束を形成し、その両フィラメント束とさらに他の金属フィラメントとを撚り合わせた構成を採用することができ(2+2+1)、また、1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたフィラメント束と、他の3本の金属フィラメントとを撚り合わせた構成を採用することもでき(2+1+1+1)、さらに、1本の金属フィラメントの外周に各1本の金属フィラメントを順に螺旋状に巻きつけて形成されるフィラメントの束と、1本の金属フィラメントの外周に1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたもう1組のフィラメントの束とを互いに撚り合わせた構成を採用することもできる(3+2)。
また、並列配置の2本の金属フィラメントの外周に1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたフィラメント束と、1本の金属フィラメントの外周に1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたフィラメント束とを互いに撚り合わせた構成を採用することもでき(3+2)、さらに、1本の金属フィラメントの外周に各1本の金属フィラメントを順に螺旋状に巻きつけて形成されるフィラメントの束と、他の2本の金属フィラメントを撚り合わせた構成を採用することもでき(3+1+1)、また、並列配置の2本の金属フィラメントの外周に1本の金属フィラメントを螺旋状に巻きつけたフィラメント束と、他の2本の金属フィラメントを互いに撚り合わせた構成を採用することとしたりすることができる(3+1+1)。
【0019】
このように、3〜5本の金属フィラメントからなる金属コードの各構成を考え得ることができ、6本、7本、8本・・・以上においても、ゴム物品補強用金属コードとして使用することができる限りにおいて、その金属フィラメントの本数及びその組み合わせも自由であって、同様にして上記各構成を採用することができる。例えば、6本であれば、(2+2+2)、(2+2+1+1)、(2+1+1+1+1)、(3+3)、(3+2+1)、(3+1+1+1)、(4+2)、(4+1+1)、(5+1)の構成等となる。
【0020】
上記各構成のゴム物品補強用金属コードにおいて、上記螺旋状の巻き付け方向と上記撚り方向は、「同じ」又は「逆」の両方を採用できるが、撚りによるさらなる巻き付き力の向上を考えると、同じ方向が好ましい。また、同方向であると、逆方向に巻く場合に比べて巻き付けピッチをコード撚りピッチよりも小さくしてコード長手方向での巻き付け頻度を多くすることができる。
【0021】
しかし、一の金属フィラメントに他の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたフィラメント束が複数あるものにおいては、その各フィラメント束の前記金属フィラメントの巻き付け方向を少なくとも一つは他と異ならせたものとすることができる。
このように、巻き付け方向を異ならせると、撚り合わせ時、その撚り方向と異なった巻き付け方向のフィラメント束と撚り方向と同じ巻き付け方向の他のフィラメント束の両者のその巻き付けによる金属フィラメントの回転差が撚りによって大きくなるため、上記螺旋状に巻き付けた金属フィラメントのスペーサの役割による各金属フィラメント間の空隙がより確実に生じて、ゴムの浸透度を確実に確保できる。
このため、この巻き付け方向を異ならせる場合には、上記撚り方向と巻き付け方向を「同じ」にするフィラメント束の数は、両者(「巻き付け方向を撚り方向と異ならせる」点と「巻き付け方向と撚り方向を同じにする」点)の作用効果の度合を考慮し、実験などに基づいて、最適なものを適宜に決定する。
【0022】
上記撚り合わせ後において、金属フィラメントの螺旋状の巻き付けピッチpwと撚りピッチPの関係は、上記構成が成されるように、実験、実操業によって適宜に設定すれば良いが、pw<Pの場合において、そのpwとPの差が小さ過ぎると、巻き付ける金属フィラメント間の隙間が不十分となってゴムの浸透度に悪影響が出る。一方、その差が大きくなると、ゴム浸透度は向上するが、コードが曲がり易くなって、圧縮剛性の低下を招く。
このため、例えば、一のフィラメント束に一の金属フィラメントを撚り合わせる場合は、0.922≦pw/P≦0.988、一のフィラメント束に他のフィラメント束を撚り合わせる場合は、前者の束は、0.922≦pw/P≦0.988、後者の束は、0.922≦pw/P≦0.991とする。
一方、巻き付け方向を異ならせる場合には、撚り方向と異なる巻き付け方向は、撚りによって巻き戻されるため、その撚りピッチPと異なる方向の巻き付けピッチpwは、1.010≦pw/P≦1.085として、その撚りピッチPと異なる方向の巻き付けピッチpwと撚りピッチPと同一方向の巻き付けピッチpwとのバランスをとる。
【0023】
上記撚りの撚り角α°は、撚りピッチPとコードの直径によって決まり、撚り角α°が小さいと、コード端末の「ばらけ」が生じ、逆に大きいと、コードが曲がり易くなって圧縮剛性が低下する。このため、撚り角α°は、実用できる範囲において、実験、実操業等により適宜に設定すれば良いが、例えば、一のフィラメント束と一の金属フィラメントを撚り合わせる場合は、3.4°≦α°≦7.3°、複数のフィラメント束を撚り合わせる場合は、3.5°≦α°≦7.3°とする。
その撚り角α°は、ワイヤーロープ便覧(昭和42年10月15日 白亜書房発行、154頁)に記載の、金属コード作成後、図40に示す、コード径(層心径)及び撚りピッチを測定して、次式で求める。
tanα=πd’s/P
ただし、α:撚り角(°) d’s:層心径 P:撚りの長さ
【0024】
この構成を成すゴム物品補強用金属コードの製造方法としては、種々のものが考え得るが、例えば、上記螺旋状に巻き付けられる少なくとも1本の金属フィラメントをパスラインの中心に通してこの金属フィラメントの外周に、上記他の金属フィラメントをそれぞれフライヤを用いて螺旋状に巻き付け、さらに、その巻き付け後の少なくとも1のフィラメント束と上記少なくとも1本の金属フィラメントを撚線機に導入して撚り合わせてなる構成を採用する。
また、上記螺旋状に巻き付けられる少なくとも1本の金属フィラメントをパスラインの中心に通してこの金属フィラメントの外周に、上記他の金属フィラメントをそれぞれフライヤを用いて螺旋状に巻き付けて、複数のフィラメント束を形成し、その複数のフィラメント束を撚線機に導入して撚り合わせてなる構成等を採用する。
【0025】
上記の各構成のゴム物品補強用金属コードは、種々のゴム製品の補強用として採用できるが、例えば、自動車用タイヤのゴムに埋設することができる。すなわち、自動車用ゴムタイヤ補強用金属コードとして使用できる。
【実施例】
【0026】
一実施例を図1〜図3に示し、図1は、この実施例のゴム物品補強用金属コードWを、1/3P(P=コードWの撚りピッチ)間隔で長手方向に切断した断面を模式的に示したものである。
このコードWはZ撚りコードであってもよいが、以下の説明は図示のS撚りコードに基づいて行う。図中、各フィラメント1、2、3間において、その中心を結ぶ線分が描かれているのは両フィラメントが束となっていることを示す。
【0027】
また、この図1では、巻き付けピッチpw<Pのため、1撚りピッチ内において、巻き付けたフィラメント3は1ピッチ以上進むため、撚りによって、そのフィラメント3は徐々に離れていき、各フィラメント1、2、3の中心が1直線状に近くなると、後記の巻取り前の矯正器35等により矯正移動されてフィラメント1、2、3が3角形状断面となっている(aiのフィラメント1の鎖線から実線参照)。この作用が繰り返されて、所要の金属コードWとなる。
【0028】
この金属コードWは、図2に示すように、1本の金属フィラメント1に他の1本の金属フィラメント2を螺旋状に巻き付けてフィラメント束10を構成し、このフィラメント束10と残りの1本の金属フィラメント3をピッチPで撚り合わせて構成されている(2+1)。
【0029】
この金属コードWにおいては、撚りによる三次元のS撚り方向の回転とは別に、金属フィラメント1に対する金属フィラメント2の巻き付けによる回転が加えられるため、金属フィラメント2がスペーサの役目を果してフィラメント束10(金属フィラメント1又は2)と金属フィラメント3との間に、その内から外側に通じる適度な隙間Sが形成され、これにより内部へのゴムの浸透度が向上する。
また、各金属フィラメントに細かい波などのイレギュラーなくせが付けられていないため、ゴム浸透度を考慮していない1×3の撚り構造のクローズドコードと同等の圧縮剛性も確保される。因みに、3本の金属フィラメントを単に撚り合わせると、通常の1×3の撚り構造のクローズドコードになり、各金属フィラメント間に外部から隔離された隙間(外側に通じない隙間)ができてゴム浸透度が悪くなるが、この実施例では、金属フィラメント1に金属フィラメント2を螺旋状に巻き付けたフィラメント束10を用いているので、上記隙間Sが生じてもクローズド構造のコードにはならない。
【0030】
金属フィラメント2の金属フィラメント1に対する巻き付け方向は、既述の理由により、コードの撚り方向と同方向にするのがよい。また、金属フィラメント2の撚り合わせ後の巻き付けピッチpwも、既述の理由により0.922≦pw/P≦0.988の条件を満たすように設定するのがよい。
さらに、コードの撚り角α°は、3.4°〜7.3°とするのがよい。その理由も既に述べた。
【0031】
この実施例のゴム物品補強用金属コードWは、例えば、図3で示す装置によって製造する。同図において、21−1、21−2は、リール22−1、22−2をセットするドライブサプライ装置、23−1、23−2はガイド、24はリール置き台25上にセットするリール、30はリール24に装着するフライヤ、31はねじれ逆流防止ローラ、32は撚線機、33は撚線機の目板、34は撚線機の撚り口である。撚線機32の内部には矯正器35が設けられ、さらに、巻き取りリール36がセットされる。
【0032】
この装置において、リール22−1から繰り出される金属フィラメント1をガイド23−1に通してフライヤ30に導き、このフライヤ30の中心ガイドを通り抜けた金属フィラメント1の外周に、リール24から供給される金属フィラメント2を螺旋状に巻き付けてフィラメント束10を得る。
【0033】
つぎに、このフィラメント束10をねじれ逆流防止ローラ31にたすき状に巻き掛け、このねじれ逆流防止ローラ31を通過したフィラメント束10と、ガイド23−2を経由してリール22−2から供給される金属フィラメント3を、目板33のガイド穴と撚り口34に通して撚線機32に導き、この撚線機32で撚り合わせ、矯正器35を通過して完成した金属コードWをリール36に巻き取る。このとき、矯正器35は、コードWの真直、矯正の他、コード長手方向でフィラメント1、2、3の配置が極端に不安定になっている場合(図1のiピッチ目ai断面)にフィラメント1、2、3を適度な配置(3角形断面状)にする役目も果たす。
この製造装置は、単撚り型の簡単な設備であって、設備費や製造コストが低廉である。
【0034】
この実施例において、フィラメント(素線)の巻き付けピッチpw(以下、p1、p2・・とも言う。)、撚りピッチP等を代えたもの(発明品No.3〜13)と、従来の波付け金属コード(従来品No.1〜2)との性能の比較評価試験を行った結果を表1に示す。
この表1に示される従来例の波付け金属コードは、1本の金属フィラメント(素線)のみに波付けを行ったものである。波の付与条件は、以下の通りである。
二次元波付 波付けピッチ:4.7mm(初期設定)
波付け高さ:0.025±0.005mm(撚り合わせ後)
三次元波付 波付けピッチ:1/2.5×P(初期設定)mm P:コード撚りピッチ
波付け高さ:0.028±0.005mm(撚り合わせ後)
二次元波付及び三次元波付の1×3×dの撚り構造のコードの断面を図41及び図42に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
−表1中の特性の説明−
(1)ゴム浸透度:1本の金属コードWに500gfの張力を与えた状態でゴム中で加圧加硫してサンプルを作成した後、ゴム中のコードWを取り出し、フィラメント長手方向に分解して測定サンプルとする。そして、この測定サンプルに対するゴムのコードW内への浸透度合いを目視又は拡大鏡で観察し、観察長全てにゴムが浸透しているものを100%とした。
(2)圧縮剛性:(1)で作成した加圧加硫サンプルにおいて、コード外側にあるゴム厚を約0.5mmになるまで削り、測定サンプルとする。この測定サンプルを圧縮試験機を使用して下記の条件で所定ストロークまで圧縮したときの抵抗値を調べ、基準コード(表1の従来例1のコード)を100%として判定した。
圧縮条件 掴み間隔:50mm
測定変位:6mm
圧縮速度:10mm/min
【0037】
この表1の試験結果から、この実施例の金属コードWは、ゴム浸透度、圧縮剛性の両特性において十分に使用でき、条件を適宜に選択することによって、従来例に比べて優れたものとすることができる。
【0038】
図4〜図6に他の実施例を示し、この実施例の金属コードWは、図5に示すように、1本の金属フィラメント1、3に他の1本の金属フィラメント2、4を螺旋状に巻き付けてフィラメント束を2組形成し(10−1、10−2)、その両フィラメント束10−1、10−2をピッチPで撚り合わせて構成されている。
図4に、このゴム物品補強用金属コードWを、1/4P(P=コードの撚りピッチ)間隔で長手方向に切断した断面を模式的に示し、このコードもZ撚り、S撚りを問わないが、以下の説明は図示のS撚りコードに基づいて行う。
【0039】
この実施例の金属コードWも、フィラメント束10−1、10−2を撚り合わせることによる三次元のS撚り方向の回転とは別に、金属フィラメント1、3に対する金属フィラメント2、4の巻き付けによる回転が加えられるため、金属フィラメント2、4がスペーサの役目を果して各金属フィラメント間に、その金属フィラメントが囲む内から外周面に通じる適度な隙間Sが形成され、これにより内部へのゴムの浸透度が向上する。
【0040】
また、同様に、各金属フィラメント1〜4に細かい波などのイレギュラーなくせが付けられていないため、ゴム浸透度を考慮していない1×4の撚り構造のクローズドコードと同等の圧縮剛性も確保される。4本の金属フィラメントを単に撚り合わせると、普通の1×4の撚り構造のクローズドコードになり各金属フィラメント間に隙間がないため外部から隔離された空間ができることになり、ゴム浸透度が悪くなるが、この実施例では、1本の金属フィラメント1、3に他の1本の金属フィラメント2、4を螺旋状に巻き付けたフィラメント束10−1、10−2を用いてそれを撚り合わせているので、そのフィラメント束10−1、10−2が囲む内から外周面に通じる適度な隙間Sが形成されても、クローズド構造のコードにはならない。
【0041】
フィラメント束10−1、10−2の少なくとも一方は、金属フィラメント1、3に対する金属フィラメント2、4の巻き付け方向をコードの撚り方向と同方向にするのがよく、その要求を満たすと、コード長手方向のフィラメント巻き付け頻度が1撚りピッチ当たりに1回以上確保され、フィラメント間隙間の確保が容易になる。
【0042】
この実施例のゴム物品補強用金属コードWは、例えば、図6で示す装置によって製造する。この装置は、図3に示した装置において、ドライブサプライ装置21−2の後段に、リール24に装着するフライヤ30をさらに設けたものである(リール24−2に装着するフライヤ30−2)。
【0043】
この装置は、リール22−1から繰り出される金属フィラメント1をガイド23−1に通してフライヤ30−1に導き、このフライヤ30−1の中心ガイドを通り抜けた金属フィラメント1の外周に、リール24−1から供給される金属フィラメント2を螺旋状に巻き付けてフィラメント束10−1を得るとともに、リール22−2から繰り出される金属フィラメント3をガイド23−2に通してフライヤ30−2に導き、このフライヤ30−2の中心ガイドを通り抜けた金属フィラメント3の外周に、リール24−2から供給される金属フィラメント4を螺旋状に巻き付けてフィラメント束10−2を得る。
【0044】
この2つのフィラメント束10−1、10−2は、ねじれ逆流防止ローラ31−1、31−2にたすき状にそれぞれ巻き掛けられた後、目板33のガイド穴と撚り口34に通して撚線機32に導き、この撚線機32で撚り合わせ、矯正器35を通過して完成した金属コードWをリール36に巻き取る。
【0045】
図7、図8には、さらに他の実施例を示し、この実施例は、図8に示すように、フィラメント束10−1、10−2にさらに1本の金属フィラメント5を加え、これらを所定の撚りピッチPで撚り合わせて得られる1×5構造の金属コードWとしたものである。
この実施例においても、図7に示すように、フィラメント束10−1又は10−2と金属フィラメント5との間に、そのフィラメント束10−1、10−2と金属フィラメント5で囲まれる内から外周面に通じる間隙Sが生じ、これにより内部へのゴムの浸透度が向上する。
また、同様に、1×5の撚り構造のクローズドコードと同等の圧縮剛性も確保される一方、クローズド構造のコードにはならない。
【0046】
この実施例は、図6に示した装置に、一点鎖線で示すドライブサプライ装置21−3を追加し、このドライブサプライ装置21−3にセットしたリール22−3から金属フィラメント5を繰り出し、これを2つのフィラメント束10−1、10−2と一緒に撚り合わせて製造する。
【0047】
この図4、図7に示した実施例において、図1に示す実施例と同一条件によって、この実施例の金属コードW(図4の実施例:本発明品No.3〜16,図7の実施例:本発明品No.19〜32)と、従来の金属コード(従来品No.〜2、17〜18)を用いて性能の比較評価試験を行った。その結果を表2にまとめる。なお、従来例の二次元波付の1×4×dの撚り構造のコードの断面を図43に、二次元波付の1×5×dの撚り構造のコードの断面を図44に、三次元波付の1×4×dの撚り構造のコードの断面を図45に、三次元波付の1×5×dの撚り構造のコードの断面を図46に各々示す。
【0048】
【表2】

【0049】
この表2の試験結果から、この実施例の金属コードWは、ゴム浸透度、圧縮剛性の両特性において十分に使用でき、条件を適宜に選択することによって、従来例に比べて優れたものとすることができる。
【0050】
図9〜図14にさらに他の実施例を示し、図9〜11に示す実施例は、並列配置の2本の金属フィラメント1、2の外周に1本の金属フィラメント3を螺旋状に巻きつけてフィラメント束10を形成し、その束10と1本の金属フィラメント4とを互いに撚り合わせたものである。
図12〜図14に示す実施例は、そのフィラメント束10−1に、1本の金属フィラメント4の外周に1本の金属フィラメント5を螺旋状に巻きつけてフィラメント束10−2を形成し、その両束10−1、10−2を互いに撚り合わせたものである。
【0051】
これらの実施例の金属コードWも、同様に、図9、図12に示すように、フィラメント3又は3及び5がスペーサの役目を果たして、フィラメント束10と金属フィラメント4又はフィラメント束10−1と10−2との間に、そのフィラメント束10と金属フィラメント4、又はフィラメント束10−1と10−2で囲まれる内から外周面に通じる間隙Sが生じ、これにより内部へのゴムの浸透度が向上する。
また、同様に、1×4、1×5の撚り構造のクローズドコードと同等の圧縮剛性も確保される一方、クローズド構造のコードにはならない。
【0052】
これらの実施例の金属コードWも、例えば、上記各実施例と同様に、図9の実施例は、図11に示す装置、図12に示す実施例は、図14に示す装置によって製造する。
【0053】
この両実施例においても、上記図1の実施例に示した条件によって試験した結果を表3(図9の実施例)、表4(図12の実施例)に示し、この結果から、同様に、ゴム浸透度、圧縮剛性の両特性に優れることがわかる。
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
図15〜図20にさらに他の実施例を示し、図15〜17に示す実施例は、1本の金属フィラメント1の外周に2本の金属フィラメント2、3を螺旋状に巻きつけてフィラメント束10を形成し、その束10と1本の金属フィラメント4とを互いに撚り合わせたものである。
図18〜図20に示す実施例は、そのフィラメント束10−1に、1本の金属フィラメント4の外周に1本の金属フィラメント5を螺旋状に巻きつけてフィラメント束10−2を形成し、その両束10−1、10−2を互いに撚り合わせたものである。
【0057】
これらの実施例の金属コードWも、同様に、図15、図18に示すように、金属フィラメント2、3、又は金属フィラメント2、3、5がスペーサの役目を果たして、フィラメント束10と金属フィラメント4又はフィラメント束10−1と10−2との間に、そのフィラメント束10と金属フィラメント4、又はフィラメント束10−1と10−2で囲まれる内から外周面に通じる間隙Sが生じ、これにより内部へのゴムの浸透度が向上する。
また、同様に、1×4、1×5の撚り構造のクローズドコードと同等の圧縮剛性も確保される一方、クローズド構造のコードにはならない。
【0058】
これらの実施例の金属コードWも、例えば、図1の実施例と同様に、図15の実施例は、図17に示す装置、図18に示す実施例は、図20に示す装置によって製造する。
【0059】
この両実施例においても、上記図1に示した条件によって試験した結果を表5(図15の実施例)、表6(図18の実施例)に示し、この結果から、同様に、ゴム浸透度、圧縮剛性の両特性に優れることがわかる。
【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【0062】
図21〜図28にさらに他の実施例を示し、これらの実施例は、各フィラメント束10−1、10−2の金属フィラメント2と3、3と5、2,3と5の巻き付け方向を異ならせたものであり、図21〜22に示す実施例は、図4に示した実施例において、1本の金属フィラメント1、3の外周に1本の金属フィラメント2、4を螺旋状に巻きつけてフィラメント束10−1、10−2を形成するとともに、その両巻き付け方向を異ならせて、その両束10−1、10−2とを互いに撚り合わせたものである。
【0063】
図23〜25に示す実施例は、図9に示した実施例において、撚り合わせる金属フィラメント4の外周にさらに金属フィラメント5を巻き付け方向を異ならせて巻き付けてフィラメント束10−2を形成し、その両束10−1、10−2を互いに撚り合わせたものである。
【0064】
図26〜28に示す実施例は、図15に示した実施例において、撚り合わせる金属フィラメント4の外周にさらに金属フィラメント5を巻き付け方向を異ならせて巻き付けてフィラメント束10−2を形成し、その両束10−1、10−2を互いに撚り合わせたものである。
【0065】
これらの実施例の金属コードWも、図1の実施例と同様に、図21、図23、図26に示すように、フィラメント2、4(図21)、フィラメント3、5(図23)、又はフィラメント2、3、5(図26)がスペーサの役目を果たして、フィラメント束10−1と10−2で囲まれる内から外周面に通じる内から外側に間隙Sが生じ、これにより内部へのゴムの浸透度が向上する。
また、同様に、1×4、1×5の撚り構造のクローズドコードと同等の圧縮剛性も確保される一方、クローズド構造のコードにはならない。
【0066】
これらの実施例の金属コードWも、例えば、同様に、図21の実施例は、図6に示した装置において、フライヤ30−1とフライヤ30−2の回転方向を異ならせることにより製造し、図23に示す実施例は、図25に示す装置によって製造し、図26に示す実施例は、図28に示す装置によって製造する。
【0067】
この各実施例においても、上記図1に示した条件によって試験した結果を表7(図21の実施例)、表8(図23の実施例)に示し、表9(図26の実施例)に示し、この結果から、同様に、ゴム浸透度、圧縮剛性の両特性に優れることがわかる。
【0068】
【表7】

【0069】
【表8】

【0070】
【表9】

【0071】
上記各実施例において、リール置き台25にセットされるリール24及びフライヤ30をドライブ方式とすることができる。例えば、図3、図14示した製造装置においては、図29、図30に示すように、その各リール24に歯車24aを設けるとともに、フライヤ30にも歯車30aを設け、その各歯車に駆動ピニオン24b、30bを設けたものであり、その駆動ピニオン及び歯車により、各リール及びフライヤを同期させて強制的に回転させ得るようにする。
【0072】
このドライブ方式によって、例えば、リール24の金属フィラメント2、3、5の巻き量に関係なく、フライヤ30の回転数を一定にできるので、金属フィラメント2、3、5を金属フィラメント1又は1、2、4にその長さ方向に一定ピッチに巻き付けることができる(定巻きピッチを得ることができる)。この場合、巻き量の変化に応じてリール24の回転数を変化させて、例えば、巻き量が少なくなれば、リール24の回転数をあげて、常にフライヤ30からフィラメントが単位時間当たり同一長さ繰り出されるようにする。また、金属フィラメント3、5の繰り出しの際のフライヤ30の回転数を変えることにより、そのピッチを任意に変化させることもできる。
【0073】
このドライブ方式は、図6、図11、図17、図20、図25、図28の製造装置において、そのリール置き台25にセットされるリール24及びフライヤ30に採用することができ、同様な作用効果を得ることができることは勿論である。
【0074】
上記各実施例は、この発明の一例を示すに過ぎず、この発明の作用効果を発揮し得る限りにおいて、図32、図33に示すように、基礎となるフィラメント束10−1の数も2本、3本、4本・・・(10−2・・・)、図37に示すように、基礎となるフィラメント束10−1における巻かれる数も2本、3本、4本・・・でその巻き付ける数も2本、3本、4本・・・、図35に示すように、基礎となるフィラメント束10を構成するその螺旋状に巻き付ける金属フィラメントの数は3本、4本・・・、図36に示すように、巻き付けられる金属フィラメントの並列数は3本、4本・・・、一方、図31に示すように、その束10と撚られる金属フィラメントの数も2本、3本、4本・・・、図34に示すように、束10−2の数も2本、3本、4本・・・(10−3・・・)、その束10−2も基礎となる束10−1と同様に、その螺旋状に巻き付ける金属フィラメントの数、巻き付けられる金属フィラメントの並列数等も任意である。
【0075】
また、基礎の束10−1と他の束10−2においては、その各フィラメント束10−2の金属フィラメントの巻き付け方向を少なくとも一つは他と異ならせることができる。例えば、束10−2が2つある場合には、その両束10−2の金属フィラメントの巻き付け方向を基礎の束10−1のそれと異ならせてもよいが、一方のみでもよい。要は、この発明の作用効果を発揮し得る限りにおいて、任意である。また、巻き付け方向を異ならせた場合、図38、図39に示すように、1本、2本・・・の金属フィラメント6とともに撚ることもできる。
【0076】
上記金属フィラメント1、2・・・にメッキ処理したスチールフィラメントを素線として使用すると、スチールコードが得られるが、この発明のコードはスチールコードに限定されない。また、この発明は、S撚り、Z撚りに関係なく、上記各構成のコードに適用できる。そのS撚りコードを製造するときには、各フライヤ30を平面視において反時計回りに回転させることによって金属フィラメント1等に対する金属フィラメント2等の巻き付け方向をコードWの撚り方向と同一方向にすることができる。また、各リール22から繰り出される金属フィラメント1、3等は、撚り合わせるまではねじれが発生しないようにリール22を強制回転させて供給するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】ゴム物品補強用金属コードの一実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図2】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図3】同実施例の製造方法を示す概念図
【図4】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図5】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図6】同実施例の製造方法を示す概念図
【図7】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一切断断面の模式図
【図8】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図9】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図10】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図11】同実施例の製造方法を示す概念図
【図12】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図13】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図14】同実施例の製造方法を示す概念図
【図15】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図16】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図17】同実施例の製造方法を示す概念図
【図18】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図19】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図20】同実施例の製造方法を示す概念図
【図21】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図22】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図23】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図24】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図25】同実施例の製造方法を示す概念図
【図26】ゴム物品補強用金属コードの他の実施例の一定間隔で長手方向に切断した断面の模式図
【図27】同実施例の撚る前の部分斜視図
【図28】同実施例の製造方法を示す概念図
【図29】製造方法の他の実施例を示す概念図
【図30】同製造方法の他の実施例を示す概念図
【図31】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図32】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図33】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図34】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図35】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図36】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図37】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図38】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図39】他の実施例の撚る前の部分斜視図
【図40】ゴム物品補強用金属コードの撚り角の定義図
【図41】二次元波付1×3×dの従来コードの断面図
【図42】三次元波付1×3×dの従来コードの断面図
【図43】二次元波付1×4×dの従来コードの断面図
【図44】二次元波付1×5×dの従来コードの断面図
【図45】三次元波付1×4×dの従来コードの断面図
【図46】三次元波付1×5×dの従来コードの断面図
【符号の説明】
【0078】
1〜6・・ 金属フィラメント
10、10−1、10−2、10−3・・ フィラメント束
21(21−1・・) ドライブサプライ装置
22(22−1・・)、24(24−1・・) リール
23(23−1・・) ガイド
25 リール置き台
30(30−1・・) フライヤ
31(31−1・・) ねじれ逆流防止ローラ
32 撚線機
34 撚り口
35 矯正器
36 巻き取りリール
W ゴム物品補強用金属コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム内に埋設されてそのゴムを補強する、3本以上の金属フィラメントを撚り合わせたゴム物品補強用金属コードであって、
上記金属フィラメントは、少なくとも1組は2本以上を有する2組以上に振分けられて、その金属フィラメントを2本以上有する組の少なくとも1つの組は、少なくとも1本の金属フィラメントが他の金属フィラメントに螺旋状に巻き付けられており、その螺旋状に巻き付けられた状態で上記撚り合わせがなされて、その螺旋状に巻き付けられた組の金属フィラメントと他の組の金属フィラメントとの間にはその両組の各金属フィラメントが囲む内から外周面に通じて上記ゴムが浸透する空隙Sが形成されていることを特徴とするゴム物品補強用金属コード。
但し、3〜5本の金属フィラメントを(2+1)、(2+2)、(2+2+1)の振り分けにして2〜3組に分け、2本を振り分けた組は1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けてフィラメント束とし、このフィラメント束の1組と1本の金属フィラメント、フィラメント束の2組またはフィラメント束の2組と1本の金属フィラメントを撚りピッチPで撚り合わせてなるゴム物品補強用金属コードは除く。
【請求項2】
1本の第1の金属フィラメント(1)の外周に各1本の第2、第3の金属フィラメント(2、3)を順に螺旋状に巻きつけて形成されるフィラメント束(10)を有し、そのフィラメント束(10)と1本の第4の金属フィラメント(4)とを撚り合わせて構成される請求項1に記載のゴム物品補強用金属コード。
【請求項3】
並列配置の2本の金属フィラメント(1、2)の外周に1本の第3の金属フィラメント(3)を螺旋状に巻きつけて形成された第1のフィラメント束(10)と、1本の第4の金属フィラメント(4)とを互いに撚り合わせて構成される請求項1に記載のゴム物品補強用金属コード。
【請求項4】
1本の第1の金属フィラメント(1)の外周に各1本の第2、第3の金属フィラメント(2、3)を順に螺旋状に巻きつけて形成されるフィラメント束(10−1)を有し、このフィラメント束(10−1)と、1本の第4の金属フィラメント(4)の外周に1本の第5の金属フィラメント(5)を螺旋状に巻き付けて形成されるもう1組のフィラメント束(10−2)とを互いに撚り合わせて構成される請求項1に記載のゴム物品補強用金属コード。
【請求項5】
並列配置の2本の金属フィラメント(1、2)の外周に1本の第3の金属フィラメント(3)を螺旋状に巻きつけて形成された第1のフィラメント束(10−1)と、1本の第4の金属フィラメント(4)の外周に1本の第5の金属フィラメント(5)を螺旋状に巻き付けて形成された第2のフィラメント束(10−2)とを互いに撚り合わせて構成される請求項1に記載のゴム物品補強用金属コード。
【請求項6】
一の金属フィラメントに他の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けたフィラメント束が複数あるものにおいては、その各フィラメント束の前記金属フィラメントの巻き付け方向を少なくとも一つは他のフィラメント束の金属フィラメントの巻き付け方向と異ならせたことを特徴とする請求項1、4又は5に記載のゴム物品補強用金属コード。
【請求項7】
上記螺旋状の巻き付け方向を上記撚りの撚り方向と同じにした請求項1乃至6のいずれかに記載のゴム物品補強用金属コード。
【請求項8】
上記撚り合わせ後において、上記金属フィラメントの螺旋状の巻き付けピッチpwを前記撚りピッチPより短くした請求項1乃至7のいずれかに記載のゴム物品補強用金属コード。
【請求項9】
ゴム内に埋設されてそのゴムを補強する、3本以上の金属フィラメントを撚り合わせたゴム物品補強用金属コードの製造方法であって、
上記金属フィラメントは、少なくとも1組は2本以上を有する2組以上に振分けられて、その金属フィラメントを2本以上有する組の少なくとも1つの組は、少なくとも1本の金属フィラメントが他の金属フィラメントに螺旋状に巻き付けられており、その螺旋状に巻き付けられた状態で上記撚り合わせがなされて、その螺旋状に巻き付けられた組の金属フィラメントと他の組の金属フィラメントとの間にはその両組の各金属フィラメントが囲む内から外周面に通じて上記ゴムが浸透する空隙が形成されているものであり、
上記螺旋状に巻き付けられる少なくとも1本の金属フィラメントをパスラインの中心に通してこの金属フィラメントの外周に、上記他の金属フィラメントをそれぞれフライヤを用いて螺旋状に巻き付け、さらに、その巻き付け後の少なくとも1のフィラメント束と上記少なくとも1本の金属フィラメントを撚線機に導入して寄り合わせてなるゴム物品補強用金属コードの製造方法。
但し、3〜5本の金属フィラメントを(2+1)、(2+2+1)の振り分けにして2〜3組に分け、2本を振り分けた組は1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けてフィラメント束とし、このフィラメント束の1組と1本の金属フィラメント、フィラメント束の2組と1本のフィラメントを撚りピッチPで撚り合わせてなるゴム物品補強用金属コードの製造方法は除く。
【請求項10】
ゴム内に埋設されてそのゴムを補強する、3本以上の金属フィラメントを撚り合わせたゴム物品補強用金属コードの製造方法であって、
上記金属フィラメントは、少なくとも1組は2本以上を有する2組以上に振分けられて、その金属フィラメントを2本以上有する組の少なくとも1つの組は、少なくとも1本の金属フィラメントが他の金属フィラメントに螺旋状に巻き付けられており、その螺旋状に巻き付けられた状態で上記撚り合わせがなされて、その螺旋状に巻き付けられた組の金属フィラメントと他の組の金属フィラメントとの間にはその両組の各金属フィラメントが囲む内から外周面に通じて上記ゴムが浸透する空隙が形成されているものであり、
上記螺旋状に巻き付けられる少なくとも1本の金属フィラメントをパスラインの中心に通してこの金属フィラメントの外周に、上記他の金属フィラメントをそれぞれフライヤを用いて螺旋状に巻き付けて、複数のフィラメント束を形成し、その複数のフィラメント束を撚線機に導入して撚り合わせてなるゴム物品補強用金属コードの製造方法。
但し、4本の金属フィラメントを(2+2)の振り分けにして2組に分け、その各組は1本の金属フィラメントに他の1本の金属フィラメントを螺旋状に巻き付けてフィラメント束とし、この2組のフィラメント束を撚りピッチPで撚り合わせてなるゴム物品補強用金属コードの製造方法は除く。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れかに記載のゴム物品補強用金属コードをゴム内に埋設した自動車用タイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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