説明

ゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤ

【課題】コード/ゴム間の接着を確保し、芯素線/側素線間の接触を回避し、かつ寸法変化の抑制を可能にしたスチールコード及びそれを用いた空気入りタイヤの提供。
【解決手段】ベルト用スチールコード10は、螺癖付けされた1本の芯素線11の周りに5本の側素線12を配置し、かつ芯素線11、側素線12の外接円が偏平構造を有し、外接円の長径Dl/短径Ds比が1.1≦Dl/Ds≦2.0である。芯素線11は側素線12より細く、芯素線11の捩じれ方向は側素線12の撚り方向と同一であり、側素線12の撚りピッチP12は芯素線11の癖付けピッチ11に対して5倍であり、側素線12の外接円の径の1/5倍である第1楕円軌道及び該第1楕円軌道上で側素線12と同一径の仮想円の中心を移動させた該仮想円に外接する第2楕円軌道を想定したとき、芯素線11は第2楕円軌道内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1+5構成のゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、コードとゴムとの間に十分な接着性を確保しながら、芯素線と側素線との接触を回避し、かつ寸法変化を抑制することを可能にしたゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
1本の芯素線の外側にN本(例えば、3本〜8本)の側素線を撚り合わせてなる1+N構成のスチールコードのゴム浸透性を改善するために、芯素線に波状又は螺旋状の癖付けを施したり、或いは、芯素線の癖付けに加えてコードを偏平形状にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ゴム浸透性の確保の観点から、N本の素線を同時に撚り合わせてなる1×N構成のオープン構造の検討も進められている。
【0003】
しかしながら、従来の1+N構成のスチールコードにおいては、偏平加工時に芯素線と側素線との接触が避けられないため、コード径が大きくなる傾向があり、その結果として、ゴムとコードとの複合体からなるシートを成形したとき、そのシートが厚くなり、軽量化の点で不利である。また、芯素線と側素線とが接触していると、スチールコードをゴム補強材として用いたときに素線同士の擦れによって素線の表面に傷が形成され、耐久性の点でも好ましくない。
【0004】
一方、1×N構成のオープン構造を有するスチールコードは、ゴム浸透性が良く、ゴムとコードとの複合体の厚さを低減することが可能であるが、オープン構造であるが故に伸びが大きくなる傾向がある。そのため、例えば、1×N構成のオープン構造を有するスチールコードを空気入りラジアルタイヤのベルト層に用いた場合、走行後にタイヤの寸法変化が起き易いという欠点がある。
【特許文献1】特開平8−325962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コードとゴムとの間に十分な接着性を確保しながら、芯素線と側素線との接触を回避し、かつ寸法変化を抑制することを可能にしたゴム補強用スチールコード及びそれを用いた空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のゴム補強用スチールコードは、螺旋状の癖付けを施した1本の芯素線の外側に5本の側素線を撚り合わせて配置し、かつ前記芯素線の外接円及び前記側素線の外接円がそれぞれ楕円形状をなす偏平構造を有し、前記側素線の外接円の長径Dlと短径Dsとの比が1.1≦Dl/Ds≦2.0の範囲にあるスチールコードにおいて、前記芯素線が前記側素線よりも細いものであり、前記芯素線の捩じれ方向が前記側素線の撚り方向と同一であり、前記側素線の撚りピッチが前記芯素線の癖付けピッチに対して実質的に5倍であり、前記側素線の外接円の径寸法に対して実質的に1/5倍の径寸法を持つ第1楕円軌道及び該第1楕円軌道上で前記側素線と同一径の仮想円の中心を移動させた場合の該仮想円に外接する第2楕円軌道を想定したとき、前記芯素線が前記第2楕円軌道内に位置することを特徴とするものである。
【0007】
また、上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、ベルト層にスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記スチールコードは、螺旋状の癖付けを施した1本の芯素線の外側に5本の側素線を撚り合わせて配置し、かつ前記芯素線の外接円及び前記側素線の外接円がそれぞれ楕円形状をなす偏平構造を有し、前記側素線の外接円の長径Dlと短径Dsとの比が1.1≦Dl/Ds≦2.0の範囲にあるスチールコードであって、前記芯素線が前記側素線よりも細いものであり、前記芯素線の捩じれ方向が前記側素線の撚り方向と同一であり、前記側素線の撚りピッチが前記芯素線の癖付けピッチに対して実質的に5倍であり、前記側素線の外接円の径寸法に対して実質的に1/5倍の径寸法を持つ第1楕円軌道及び該第1楕円軌道上で前記側素線と同一径の仮想円の中心を移動させた場合の該仮想円に外接する第2楕円軌道を想定したとき、前記芯素線が前記第2楕円軌道内に位置することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、1+5構成の偏平構造を有するスチールコードにおいて、芯素線を側素線よりも細いものとし、芯素線の捩じれ方向を側素線の撚り方向と同一とし、側素線の撚りピッチを芯素線の癖付けピッチに対して実質的に5倍とし、側素線の外接円の径寸法に対して実質的に1/5倍の径寸法を持つ第1楕円軌道及び該第1楕円軌道上で側素線と同一径の仮想円の中心を移動させた場合の該仮想円に外接する第2楕円軌道を想定したとき、芯素線が第2楕円軌道内に位置するようにしたことにより、偏平化処理を行う際に側素線間への芯素線の割り込みを生じさせ、芯素線と側素線との接触を少なくすることができる。これにより、1×6構成のスチールコードと同様のゴム浸透性を確保し、コードとゴムとの間の接着性を十分に確保しながら、従来の1+5構成のスチールコードに比べてコード径の増大を抑え、更には素線同士の擦れを防止することができる。
【0009】
また、側素線の内側には芯素線を配置しているため、1×6構成のスチールコードの欠点である低荷重時での伸びの発生を抑制することができる。そのため、上記スチールコードをゴム製品の補強材として用いた場合、ゴム製品の使用に伴う寸法変化を抑制することができる。特に、上記スチールコードを空気入りラジアルタイヤのベルト層に用いた場合には、タイヤの走行に伴う寸法変化(外径成長)を抑制することができる。
【0010】
上記撚り構造において、側素線の撚りピッチは芯素線の癖付けピッチに対して5倍とすることが理想であるが、製造上の誤差は許容される。側素線の撚りピッチの許容される誤差範囲は、芯素線の癖付けピッチに対して5倍の値の95%〜105%とする。
【0011】
本発明において、芯素線の素線径は0.20mm〜0.45mmであることが好ましい。このような寸法は空気入りラジアルタイヤのベルト層において好適である。但し、本発明のゴム補強用スチールコードは、ベルト層以外のタイヤ構成部材やコンベヤベルト等のゴム製品の補強材として使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層6,6が埋設されている。これらベルト層6,6は補強コードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層6の補強コードとしては、1+5構成のスチールコードが使用されている。更に必要に応じて、ベルト層6,6の外周側には、補強コードをタイヤ周方向に巻回してなるベルトカバー層を配置しても良い。
【0014】
図1は乗用車用又はライトトラック用の空気入りラジアルタイヤを図示するものであるが、本発明は図2に示すようなトラック・バス用の空気入りラジアルタイヤにも適用することが可能である。
【0015】
図3は本発明の空気入りラジアルタイヤのベルト層に使用される1+5構成のスチールコードを示す平面図であり、図4はその断面図である。なお、図3は素線配置の理解を容易にするために全ての素線を同一太さにて細く描写した状態を示すものである。図3及び図4に示すように、スチールコード10は、螺旋状の癖付けを施した1本の芯素線11の外側に5本の側素線12を撚り合わせて配置し、かつ芯素線11の外接円C11及び側素線の外接円C12がそれぞれ楕円形状をなす偏平構造を有している。これら外接円C11,C12は長径方向が互いに一致している。芯素線11は側素線12よりも細いものである。ベルトコードとして、芯素線11の素線径dcは0.10mm〜0.45mmの範囲とし、側素線12の素線径dsは0.20mm〜0.45mmの範囲にすると良い。
【0016】
スチールコード10において、芯素線11及び側素線12はいずれも螺旋状に延伸するものであるが、芯素線11の捩じれ方向は側素線12の撚り方向と同一であり、側素線12の撚りピッチP12は芯素線11の癖付けピッチP11に対して約5倍である。ここで、側素線12の外接円C12の径寸法に対して約1/5倍の径寸法を持つ第1楕円軌道C1及び第1楕円軌道C1上で側素線12と同一径の仮想円13の中心Oを移動させた場合の該仮想円13に外接する第2楕円軌道C2を想定したとき、芯素線11は第2楕円軌道C2の内側に位置している。第1楕円軌道C1は側素線12の外接円C12と相似関係にあり、その短径及び長径がそれぞれ側素線12の外接円C12の短径Ds及び長径Dlの約1/5倍である。図4においては、芯素線11の外接円C11と第2楕円軌道C2とが一致する場合を示しているが、芯素線11の外接円C11は第2楕円軌道C2よりも径寸法が小さいものであっても良い。
【0017】
上記スチールコード10においては、撚り合わせ後に偏平化処理した際の芯素線11と側素線12との接触が少なくなり、しかも側素線12,12間への芯素線11の割り込みを生じ易くなる。これは、側素線12の撚りピッチP12と芯素線11の癖付けピッチP11との比、及び、第2楕円軌道C2にて規定される芯素線11の振幅に基づいて、図3に示すように、芯素線11が側素線12に対して平行に近い状態となるように配置されるからである。このような割り込み構造は、芯素線11の捩じれ方向が側素線12の撚り方向と逆である場合、又は、芯素線11の癖付けピッチP11と側素線12の撚りピッチP12とが上記関係を満たしていない場合には生じない。
【0018】
上記構成により、1×6構成のスチールコードと同様のゴム浸透性を確保し、スチールコード10のゴムに対する接着性を十分に確保しながら、従来の1+5構成のスチールコードに比べてコード径の増大を抑え、更には素線同士の擦れを防止することができる。
【0019】
ここで、側素線12の外接円C12の短径Dsと長径Dlとの比は、1.1≦Dl/Ds≦2.0の関係に設定する。つまり、Dl/Ds≧1.1によりゴム浸透性に優れた偏平構造を規定する。但し、コードのバラケを防止するためにDl/Ds≦2.0の関係を満足するものとする。
【0020】
側素線12の外接円C12の短径Dsは、側素線12の素線径dsに対して、2.5ds<Ds<3dsの関係にすると良い。つまり、Ds<3dsとすることで芯素線11が隣接する側素線12,12間に食い込んだ状態にする。但し、側素線12の内側には芯素線11を配置する必要があるため2.5ds<Dsを満足することが望ましい。
【0021】
側素線12の外接円C12の長径Dlは、側素線12の素線径dsに対して、3.6ds<Dl<3.9dsの関係にすると良い。つまり、Dl>3.6dsとすることで芯素線11及び側素線12の間隔を確保し、ゴム浸透性を高めることができる。但し、コードのバラケを防止するために3.9ds>Dlを満足することが望ましい。
【0022】
芯素線11の外接円C11の短径Disは、側素線12の素線径dsに対して、1.0ds<Disの関係にすると良い。一方、芯素線11の外接円C11の長径Dilは、側素線12の素線径dsに対して、Dil>1.1dsの関係にすると良い。つまり、1.0ds<Dis、かつ、Dil>1.1dsを満足することでコード内へのゴム浸透性を高めることができる。
【0023】
上述したスチールコード10は、空気入りラジアルタイヤのベルト層6において、その長径方向がベルト層6の面方向と一致するようにコートゴム中に埋設される。そして、このようなスチールコード10をベルト層6に使用した空気入りラジアルタイヤでは、スチールコード10のゴムに対する接着性が良好であり、しかもコード径(側素線12の外接円C12の短径Ds)が小さいためベルト層6を薄くして軽量化が可能であり、素線同士の擦れが生じ難いため耐久性が良好である。また、スチールコード10の側素線12の内側には芯素線11が存在するため、タイヤの走行に伴う寸法変化(外径成長)を抑制することができる。
【実施例】
【0024】
螺旋状の癖付けを施した1本の芯素線の外側に5本の側素線(ds=0.25mm)を撚り合わせて配置し、かつ芯素線の外接円及び側素線の外接円がそれぞれ楕円形状をなす1+5構成のスチールコードにおいて、側素線の素線径ds、側素線の撚りピッチP12、芯素線の素線径dc、芯素線の癖付けピッチP11、芯素線の癖付け構造、側素線の外接円の径寸法及び側素線の素線径から求められる第2楕円軌道(C2)の長径に対する芯素線の外接円の長径Dilの比、第2楕円軌道(C2)の短径に対する芯素線の外接円の短径Disの比、側素線の外接円の長径Dlと短径Dsとの比、芯素線の癖付けピッチP11と側素線の撚りピッチP12との比を表1のように種々異ならせた実施例1〜4及び比較例1〜6のスチールコードを用意した。対比のため、比較例7として、6本の素線(ds=0.25mm)を撚り合わせてなる1×6構成のスチールコードを用意した。表1の芯素線の癖付け構造について、「螺旋同一」は螺旋状の癖付けを施した芯素線の捩じれ方向が側素線の撚り方向と同一であることを意味し、「螺旋逆向」は螺旋状の癖付けを施した芯素線の捩じれ方向が側素線の撚り方向と逆向きであることを意味する。
【0025】
これら実施例1〜4及び比較例1〜7のスチールコードについて、下記の方法により、ゴム浸透率及び初期伸び率を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0026】
ゴム浸透率:
各スチールコードをゴム被覆してコード当たり10Nの引っ張り荷重を掛けた状態で加硫した後、該スチールコードを分解し、ゴム浸透率(芯部へのゴム浸透具合)を求めた。ここで、「100%」は芯部まで完全にゴムが浸透している状態を意味する。
【0027】
初期伸び率:
JIS G3510に準拠して、各スチールコードの初期伸び率(%)を求めた。つまり、各スチールコードに対する引っ張り荷重を徐々に増加させ、そのときの伸び率を測定し、荷重100N時の伸び率と荷重5N時の伸び率との差を求め、これを初期伸び率とした。
【0028】
また、実施例1〜4及び比較例1〜7のスチールコードをベルト層に使用した空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:265/70R15)を製作し、ドラム走行後のスチールコードの素線表面傷を評価した。即ち、2万kmの室内耐久走行後、タイヤのベルト層からスチールコードを取り出し、素線を分解して表面傷の個数を計測した。評価結果は、芯素線表面傷が無い場合を「無」で示し、側素線20ピッチ分のコード長さ当たりの芯素線表面傷の個数が250個未満である場合を「微」で示し、250〜300個である場合を「少」で示し、300個超である場合を「多」で示した。
【0029】
【表1】

【0030】
この表1から明らかなように、実施例1〜4のスチールコードは、ゴム浸透率が高く、しかも1×6構成のスチールコード(比較例7)に比べて初期伸び率が小さいものであった。また、実施例1〜4のスチールコードをベルト層に用いた空気入りラジアルタイヤはドラム走行後のスチールコードの素線表面傷が僅かであった。
【0031】
一方、比較例1〜6のスチールコードをベルト層に用いた空気入りラジアルタイヤはドラム走行後のスチールコードの素線表面傷が実施例1〜4に比べて多くなっていた。また、比較例3,6のスチールコードはゴム浸透率も不十分であった。
【0032】
次に、螺旋状の癖付けを施した1本の芯素線の外側に5本の側素線(ds=0.37mm)を撚り合わせて配置し、かつ芯素線の外接円及び側素線の外接円がそれぞれ楕円形状をなす1+5構成のスチールコードにおいて、側素線の素線径ds、側素線の撚りピッチP12、芯素線の素線径dc、芯素線の癖付けピッチP11、芯素線の癖付け構造、側素線の外接円の径寸法及び側素線の素線径から求められる第2楕円軌道(C2)の長径に対する芯素線の外接円の長径Dilの比、第2楕円軌道(C2)の短径に対する芯素線の外接円の短径Disの比、側素線の外接円の長径Dlと短径Dsとの比、芯素線の癖付けピッチP11と側素線の撚りピッチP12との比を表2のように設定した実施例5及び比較例8〜9のスチールコードを用意した。対比のため、比較例10として、6本の素線(ds=0.37mm)を撚り合わせてなる1×6構成のスチールコードを用意した。表2の芯素線の癖付け構造について、「螺旋同一」は螺旋状の癖付けを施した芯素線の捩じれ方向が側素線の撚り方向と同一であることを意味し、「平面波」は芯素線に平面波の癖付けを施したことを意味する。
【0033】
これら実施例5及び比較例8〜10のスチールコードについて、上述の方法により、ゴム浸透率及び初期伸び率を評価し、その結果を表2に併せて示した。
【0034】
また、実施例5及び比較例8〜10のスチールコードをベルト層に使用した空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:11R22.5)を製作し、実車走行後の外径成長とスチールコードの素線表面傷を評価した。即ち、5万kmのフィールド走行後、溝底でのタイヤ外径を測定し、新品時からの成長量を求めた。評価結果は、比較例10を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほど外径成長が少ないことを意味する。また、走行後のタイヤのベルト層からスチールコードを取り出し、素線を分解して表面傷の個数を計測した。評価結果は、芯素線表面傷が無い場合を「無」で示し、側素線20ピッチ分のコード長さ当たりの芯素線表面傷の個数が250個未満である場合を「微」で示し、250〜300個である場合を「少」で示し、300個超である場合を「多」で示した。
【0035】
【表2】

【0036】
この表2から明らかなように、実施例5のスチールコードは、ゴム浸透率が高く、しかも1×6構成のスチールコード(比較例10)に比べて初期伸び率が小さいものであった。また、実施例5のスチールコードをベルト層に用いた空気入りラジアルタイヤは走行に伴う外径成長が少なく、実車走行後のスチールコードの素線表面傷が僅かであった。
【0037】
一方、比較例8〜9のスチールコードをベルト層に用いた空気入りラジアルタイヤは実車走行後のスチールコードの素線表面傷が実施例5に比べて多くなっていた。また、比較例9のスチールコードはゴム浸透率も不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す子午線半断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す子午線半断面図である。
【図3】本発明の空気入りラジアルタイヤのベルト層に使用される1+5構成のスチールコードを示す平面図である。
【図4】図3に示すスチールコードの断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ベルト層
10 スチールコード
11 芯素線
12 側素線
C1 第1楕円軌道
C2 第2楕円軌道
C11 芯素線の外接円
C12 側素線の外接円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の癖付けを施した1本の芯素線の外側に5本の側素線を撚り合わせて配置し、かつ前記芯素線の外接円及び前記側素線の外接円がそれぞれ楕円形状をなす偏平構造を有し、前記側素線の外接円の長径Dlと短径Dsとの比が1.1≦Dl/Ds≦2.0の範囲にあるスチールコードにおいて、前記芯素線が前記側素線よりも細いものであり、前記芯素線の捩じれ方向が前記側素線の撚り方向と同一であり、前記側素線の撚りピッチが前記芯素線の癖付けピッチに対して実質的に5倍であり、前記側素線の外接円の径寸法に対して実質的に1/5倍の径寸法を持つ第1楕円軌道及び該第1楕円軌道上で前記側素線と同一径の仮想円の中心を移動させた場合の該仮想円に外接する第2楕円軌道を想定したとき、前記芯素線が前記第2楕円軌道内に位置することを特徴とするゴム補強用スチールコード。
【請求項2】
前記芯素線の素線径が0.20mm〜0.45mmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用スチールコード。
【請求項3】
ベルト層にスチールコードを用いた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記スチールコードは、螺旋状の癖付けを施した1本の芯素線の外側に5本の側素線を撚り合わせて配置し、かつ前記芯素線の外接円及び前記側素線の外接円がそれぞれ楕円形状をなす偏平構造を有し、前記側素線の外接円の長径Dlと短径Dsとの比が1.1≦Dl/Ds≦2.0の範囲にあるスチールコードであって、前記芯素線が前記側素線よりも細いものであり、前記芯素線の捩じれ方向が前記側素線の撚り方向と同一であり、前記側素線の撚りピッチが前記芯素線の癖付けピッチに対して実質的に5倍であり、前記側素線の外接円の径寸法に対して実質的に1/5倍の径寸法を持つ第1楕円軌道及び該第1楕円軌道上で前記側素線と同一径の仮想円の中心を移動させた場合の該仮想円に外接する第2楕円軌道を想定したとき、前記芯素線が前記第2楕円軌道内に位置することを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記芯素線の素線径が0.20mm〜0.45mmであることを特徴とする請求項3に記載の空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−57661(P2009−57661A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226316(P2007−226316)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】