説明

ゴム部材用塗布装置

【課題】円環状ゴム部材の内周面に塗布剤を均一にかつ過不足なく塗布することのできる装置を提供する。
【解決手段】駆動ローラー11a,11bと従動ローラー11c,11dとを有しプレキュアトレッドなどの円環状に形成されたゴム部材30を内周面30b側から保持しながら回転させる回転手段11と、塗布剤が収納される塗布剤槽12aと上側がゴム部材30の内周面30bに当接し下側が塗布剤槽12a内に浸漬されて回転する塗装ローラー12bとを有する塗布手段12と、ゴム部材30の内周面30bに当接する塗布剤掻き取りバー13aとを備え、ゴム部材30を回転させながら内周面30bに塗装ローラー12bを当接させて塗布剤を塗布するとともに、余分な塗布剤を塗布剤掻き取りバー13aで掻き取るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状に形成されたゴム部材の内周面に塗布剤を塗布する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トレッドが消耗した中古タイヤを再生する方法としては、中古タイヤの表面を削り取った後、更にバフマシーン等でバフ研磨してトレッドを除去して台タイヤを作製し、この台タイヤに、予め加硫されて表面にトレッドパターンが形成されたトレッド(プレキュアトレッド)を組み付けた後、加硫缶内で台タイヤとプレキュアトレッドとを加硫接着する方法が知られている。
台タイヤにプレキュアトレッドを組み付ける方法としては、従来、帯状のプレキュアトレッドを台タイヤの周面に貼り付ける方法が多く用いられているが、ジョイント部に折れ重なりや段ずれが生じたり、ジョイント量の過不足が起こるなどの問題があった。そこで、近年は、プレキュアトレッドを予め円環状に形成し、この円環状のプレキュアトレッドを拡径して台タイヤの周面にプレキュアトレッドを当接させた後、押圧ローラーにてプレキュアトレッドを台タイヤに押し付けてなじませる方法が用いられるようになってきている。
【0003】
台タイヤにプレキュアトレッドを組み付ける際には、台タイヤの外周面もしくはプレキュアトレッドの内周面に予め接着剤を塗布しておくことで、台タイヤとプレキュアトレッドとを確実に密着させることができる。
台タイヤ側に接着剤を塗布する方法としては、台タイヤを回転させるとともに、噴射ノズルを台タイヤの幅方向に走査させながら接着剤を噴射して、バフ面の前面に接着剤を塗布することで、スカイブしたワイヤー露出部分の穴埋めと接着剤塗布とを同時に行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
なお、樹脂チューブやパイプなどの円筒部材の内面にシリコーン液やグリースなどを塗布する装置については知られている(例えば、特許文献2,3参照)が、円環状のプレキュアトレッド内周面に接着剤を塗布する装置については未だに開発されておらず、現在は、作業員が刷毛により手作業にて接着剤を塗布していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−129343号公報
【特許文献2】特開平6−335654号公報
【特許文献3】特開2009−112984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接着剤の塗布を手作業にて行うと、塗りムラによる品質のばらつきが出やすいだけでなく、作業効率が悪かった。また、接着剤が周囲に飛散することから、作業環境にも問題があった。
そこで、円環状のプレキュアトレッドなどの円環状ゴム部材の内周面に接着剤もしくは塗料などの塗布剤を自動的に塗布する装置の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、円環状ゴム部材の内周面に塗布剤を均一にかつ過不足なく塗布することのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円環状に形成されたゴム部材の内周面に塗布剤を塗布する装置であって、駆動ローラーを含む少なくとも3本のローラーを有し前記ゴム部材を内周面側から保持しながら回転させる回転手段と、塗布剤を供給する塗布剤供給手段と前記塗布剤供給手段から供給される塗布剤を前記ゴム部材の内周面に塗布する塗布部材とを有する塗布手段とを備え、前記塗布部材は、前記回転手段に保持されて回転するゴム部材の内側に、前記ゴム部材の内周面に当接するように配置されることを特徴とする。
なお、塗布剤は、トレッドゴム接着用セメントなどの液状の接着剤や、樹脂もしくは顔料を溶剤で溶かした塗料などを指す。
このように、円環状に形成されたゴム部材を移動させながら、その内周面に塗布部材を当接させて塗布剤供給手段から供給される塗布剤をゴム部材の内周面に塗布するようにしたので、塗布剤を効率よく塗布することができるとともに、塗布剤を均一にかつ過不足なく塗布することができる。
【0008】
また、本発明は、前記塗布剤供給手段が塗布剤を収納する塗布剤槽を備え、前記塗布部材が、外周面が前記ゴム部材の内周面に当接し、かつ、前記外周面の一部が前記塗布剤槽内に浸漬される塗布ローラーを備えることを特徴とする。
このように塗布手段として塗布剤槽と塗布ローラーとを用いれば、簡単な構成で塗布剤を均一にかつ過不足なく塗布することができる。
また、本発明は、前記ゴム部材の外周面側で、かつ、前記塗布ローラーに対向する位置に配置されて、前記ゴム部材の外周面に当接する押さえローラーを備えたことを特徴とする。
これにより、ゴム部材の撓みをなくすことができるので、塗布剤を更に均一に塗布することができる。
また、本発明は、前記ゴム部材の内周面側で、かつ、前記塗布ローラーの前記ゴム部材の移動方向側に、前記ゴム部材の内周面に当接する塗布剤掻き取り部材が配置されていることを特徴とする。
これにより、余分な塗布剤を確実に掻き取ることができるので、塗布剤を過不足なく塗布することができる。
また、本発明は、前記ゴム部材を内周面側から保持する少なくとも3本のローラーの間隔を変更する手段を備えたことを特徴とする。
このようにローラーの間隔を変更可能とすれば、大きさ(径)の異なる円環状ゴム部材であっても同一の装置で塗布剤を塗布できる。
【0009】
また、本発明は、前記ゴム部材の内周面側で、かつ、前記塗布手段の前記ゴム部材の移動方向側に配置されて、前記ゴム部材の内周面にフィルムを貼着するフィルム貼着装置を備え、前記フィルム貼着装置が、前記フィルムを送出するフィルム送出手段と、前記フィルム送出手段から送り出されたフィルムを前記ゴム部材の内周面に押し付けて貼着させる貼着手段と、前記フィルムを切断する切断手段とを備えることを特徴とする。
このように、塗布装置にフィルム貼着装置を組み込むことで、円環状ゴム部材の内周面への塗布剤の塗布と塗布面を保護するための汚染防止用のフィルムの貼着作業とを同時に自動化できるので、生産性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態1に係る円環状ゴム部材用塗布装置を示す図である。
【図2】接着剤の塗布方法を説明するための図である。
【図3】ローラーの配置方法の他の例を示す図である。
【図4】本実施の形態2に係る円環状ゴム部材用塗布装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
実施の形態1.
図1(a),(b)は、本実施の形態1に係る円環状ゴム部材用塗布装置(以下、塗布装置という)10の概略構成を示す図で、(a)は正面図、(b)は右側面図である。本例では、円環状に形成されたプレキュアトレッドの内周面に接着剤を塗布する塗布装置について説明する。
塗布装置10は、回転手段11と、塗布手段12と、塗布剤掻き取り手段13と、塗布剤回収槽14とを備える。
回転手段11は2本の駆動ローラー11a,11bと、2本の従動ローラー11c,11dと、ローラー駆動手段11mと、ローラー移動手段11kとを備える。
塗布手段12は塗布剤槽12aと、塗布ローラー12bと、押さえローラー12cと、昇降手段12kとを備える。
塗布装置10の各部品は、水平板状の基台21と、この基台21に立設された固定保持台22と、基台21上を水平方向に移動可能な移動保持台23とに取付けられる。
なお、符号24は塗布装置10及び基台21を覆う透明なケースで、ケース24には、前扉24aと排気ダクト24bとが設けられている。
【0013】
駆動ローラー11a,11bと従動ローラー11c,11dとは、基台21に垂直な平面上に長方形の各頂点を形成するよう配置される。具体的には、図1の右上側を右上方向とすると、駆動ローラー11aは、水平板状の基台21の右側に立設された固定保持台22の右上に配置され、駆動ローラー11bは駆動ローラー11aの下側である固定保持台22の右下に配置される。一方、従動ローラー11cは、水平板状の基台21の左側に左右方向に移動可能に取付けられた移動保持台23の上側に配置され、従動ローラー11dは従動ローラー11cの下側である移動保持台23の下側に配置される。
これら4本のローラー11a〜11dに、予め加硫・成形された円環状のトレッド(以下、プレキュアトレッドという)30が掛け渡される。
なお、掛け渡されるプレキュアトレッド30は、トレッドパターンが形成されている側の面が外周面30aで、台タイヤに接着される側の面が内周面30bになるように円環状に形成されており、内周面30bが内側になるように4本のローラー11a〜11dに掛け渡される。以下、ローラー11a〜11dの基部である固定保持台22側もしくは移動保持台23側を軸部111とし、プレキュアトレッドが掛け渡される先端側を保持部112とする。本例では、プレキュアトレッド30を確実に回転させるため、各ローラー11a〜11dの保持部112の表面にローレット加工を施している。
各ローラー11a〜11dとしては、金属ローラー、スポンジローラー、もしくは、ファイバーローラーなどを用いることができる。
【0014】
ローラー駆動手段11mは、基台21に設置された駆動用モーター11Mと、駆動用モーター11Mの出力軸11jと駆動ローラー11a,11bの軸部111とに掛け渡されたベルト11Bとを備える。駆動用モーター11Mとしては、モーターと減速機とを備えたギヤドモータが好適に用いられる。
本例では、駆動用モーター11Mを回転させることで、プレキュアトレッド30を反時計回りに回転させる。これにより、プレキュアトレッド30の駆動ローラー11aと従動ローラー11cとの間に掛け渡された部分が右から左に、すなわち、駆動ローラー11a側から従動ローラー11c側に移動する。以下、駆動ローラー11a側を上流側、従動ローラー11c側を下流側という。
ローラー移動手段11kは、水平板状の基台21に敷設されたレール25と、移動保持台23の下部に取付けられたガイド部材26と、移動保持台23を左右にスライドさせるスライド機構27とを備える。スライド機構27により移動保持台23をレール25に沿って左右に移動させることで、従動ローラー11c,11dを左右に移動させることができる。
スライド機構27としては、例えば、シリンダー装置のシリンダーロッドの先端をガイド部材26に取付けてシリンダーロッドを伸縮させる機構や、ガイド部材26にワイヤーを取付けてこれを巻取ったり巻戻したりする機構など、周知のスライド機構を用いることができる。
【0015】
塗布剤供給手段である塗布剤槽12aは上部が開口した容器で、この容器内には、例えば、トレッドゴム接着用セメントなどの液状の接着剤が収納されている。
塗布部材である塗布ローラー12bは4本のローラー11a〜11dの作る長方形の内側に配置されている。塗布ローラー12bの外周面は、上側が4本のローラー11a〜11dに掛け渡されたプレキュアトレッド30の内周面30bに当接し、下側が塗布剤槽12a内に浸漬され、図示しない塗装ローラー駆動用モーターにより回転する。
押さえローラー12cはプレキュアトレッド30の外周面30a側の塗布ローラー12bに対向する位置に配置されて、プレキュアトレッド30の外周面30aに当接する。
昇降手段12kは、塗布剤槽12aと固定保持台22との間に配置される。詳細には、塗布剤槽12aが、固定保持台22から前方(図1(a)の紙面裏側から紙面表側に向かう方向)に突出するように設けられた水平板状の塗布剤槽設置台22aに昇降手段12kを介して設置される。
昇降手段12kとしては、例えば、シリンダー装置120などを用いることができる。シリンダー装置120の本体121は塗布剤槽設置台22a上に固定され、シリンダーロッド122の先端が塗布剤槽12aの底部に固定される。これにより、シリンダーロッド122を伸縮させることで、塗布剤槽12aを上下させることができる。塗布ローラー12bについては、塗布ローラー12bの回転軸を塗布剤槽12aに回転可能に取付けておけば、塗布ローラー12bも塗布剤槽12aと同時に上下させることができる。
【0016】
塗布剤掻き取り手段13は塗布剤掻き取りバー13aと、掻き取りバー移動手段13bとを備え、プレキュアトレッド30の内側で、かつ、塗布ローラー12bの下流側に配置される。塗布剤回収槽14は塗布剤掻き取りバー13aの下部に配置される上部が開口した容器で、この容器内に、塗布剤掻き取りバー13aで掻き取られて回収された接着剤が収納される。塗布剤回収槽14は塗布剤槽設置台22a上に設置される。
塗布剤掻き取りバー13aとしては、ウレタンフォームのような柔らかい材料を用いることが好ましい。これにより、プレキュアトレッド30の内周面30bに塗布された接着剤のうちの余分な接着剤のみを掻き取って回収することができる。
また、掻き取りバー移動手段13bとしては、例えば、シリンダー装置などを用いることができる。シリンダー装置を用いた場合には、シリンダー本体は取付け部材13mにより塗布剤槽設置台22a上に設置され、シリンダーロッドの先端は塗布剤掻き取りバー13aに取付けられる。
【0017】
次に、本発明による塗布装置10を用いてプレキュアトレッド30の内周面に接着剤を塗布する方法について説明する。
はじめに、ケース24の前扉24aを開いて、4本のローラー11a〜11dの外側にプレキュアトレッド30を掛け渡す。従動ローラー11c,11dの初期位置は、プレキュアトレッド30が若干弛んだ状態で掛け渡されるように、塗布時よりも駆動ローラー11a,11b側になるように調整されているものとする。
次に、ローラー移動手段11kのスライド機構27を作動させ、移動保持台23を左側、すなわち、固定保持台22から遠ざける方向に移動させてプレキュアトレッド30を伸長させ、プレキュアトレッド30全体に張力を与えてプレキュアトレッド30をセッティングする。
プレキュアトレッド30に張力を与えることで、各ローラー11a〜11dにはプレキュアトレッド30からの圧力が作用するので、駆動ローラー11a,11bを回転させれば、プレキュアトレッド30を4本のローラー11a〜11dの外側に保持しつつ4本のローラー11a〜11dの作る長方形に沿って回転させることができる。
なお、駆動ローラー11a,11bを4本のローラー11a〜11dの作る長方形の内側方向に移動する手段を設け、駆動ローラー11a,11bの初期位置を長方形の内側、すなわち、プレキュアトレッド30が若干弛んだ状態で掛け渡されるような位置に設定し、プレキュアトレッド30を掛け渡した後に、駆動ローラー11a,11bを長方形の頂点の位置に戻してプレキュアトレッド30に張力を与えるようにしてもよい。
【0018】
プレキュアトレッド30のセッティングが終了した後には、前扉24aを閉め、排気ダクト24bを稼働させる。これにより、塗布時の接着剤の飛散を防ぐことができるとともに、ケース24内に気化した溶剤が滞留することを防ぐことができる。なお、排気ダクト24bは常時稼働させてもよい。
次に、ローラー駆動手段11mの駆動用モーター11Mを駆動して駆動ローラー11a,11bを回転させることでプレキュアトレッド30を回転させるとともに、塗布剤槽12aと塗布ローラー12bとを上昇させ、更に、塗布ローラー12bを回転させながら、塗布ローラー12bの外周面をプレキュアトレッド30の内周面30bに押し付ける。
図2に示すように、塗布ローラー12bの外周面の一部は塗布剤槽12a内に浸漬されているので、塗布ローラー12bは外周面に接着剤Aを付着させながら回転し、プレキュアトレッド30の内周面30bに当接する。これにより、塗布ローラー12bの外周面に付着された接着剤Aがプレキュアトレッド30の内周面30bに押し付けられるので、接着剤Aをプレキュアトレッド30の内周面30bに塗布することができる。
本例では、プレキュアトレッド30を塗布ローラー12bと押さえローラー12cとで挟むようにしながら接着剤Aを塗布するようにしているので、塗布ローラー12bをプレキュアトレッド30に押し付けても、プレキュアトレッド30が撓むことはない。したがって、プレキュアトレッド30の内周面30bに均一にかつ確実に接着剤Aを塗布することができる。
【0019】
接着剤が塗布されたプレキュアトレッド30の内周面30bは、図1に示すように、下流側でウレタンフォームなどから成る塗布剤掻き取りバー13aに接触する。これにより、塗布された接着剤のうちの余分な接着剤が掻き取られる。この掻き取られた接着剤は塗布剤回収槽14に収納された後回収される。
そして、プレキュアトレッド30がほぼ一周分の距離(実際には、一周分の距離に駆動ローラー11aと塗布ローラー12bとの距離を加えた距離)回転した後、駆動ローラー11a,11bの回転を停止させて接着剤の塗布作業を終了する。
塗布作業の終了後には従動ローラー11c,11dを初期位置に戻し、プレキュアトレッド30を弛ませる。
最後に、ケース24の前扉24aを開いて内面に接着剤が塗布されたプレキュアトレッド30を取り出してから、次に接着剤を塗布するプレキュアトレッド30をローラー11a〜11dの外側に掛け渡す。
【0020】
このように、本実施の形態1では、塗布装置10を、駆動ローラー11a,11bと従動ローラー11c,11dとを有し、4本のローラー11a〜11dに掛け渡されたプレキュアトレッド30を内周面30b側から保持しながら回転させる回転手段11と、液状の接着剤が収納される塗布剤槽12aと上側がプレキュアトレッド30の内周面30bに当接し下側が塗布剤槽12a内に浸漬されて回転する塗装ローラー12bとを有し、プレキュアトレッド30を内周面30bに接着剤を塗布する塗布手段12と、プレキュアトレッド30の内周面30bに当接する塗布剤掻き取りバー13aを有する塗布剤掻き取り手段13とを備えた構成とし、プレキュアトレッド30を回転させながら内周面30bに塗装ローラー12bを当接させて接着剤を塗布するとともに、塗布された接着剤のうちの余分な接着剤を塗布剤掻き取りバー13aで掻き取るようにしたので、プレキュアトレッド30の内周面30bに接着剤を均一にかつ過不足なく塗布することができる。また、塗布作業を自動化できるので、作業効率を著しく向上させることができる。
【0021】
なお、前記実施の形態1では、塗布装置10を用いて円環状に形成されたプレキュアトレッドの内周面に接着剤を塗布する例について説明したが、本発明の塗布装置10を用いて円環状ゴム部材の内周面に樹脂コーティングするなど、円環状ゴム部材の内周面に接着剤や塗料などの液状の塗布剤を塗布することも可能である。
また、前記例では、4本のローラー11a〜11dにプレキュアトレッド30を掛け渡したが、ローラーの本数は4本に限るものではなく、3本であっても5本以上であってもよい。但し、3本の場合には、塗布手段12や塗布剤掻き取り手段13の配置に工夫が必要なので、ローラーの本数としては4本以上とすることが好ましい。なお、ローラーのうち少なくとも1本は駆動ローラーとする必要があることはいうまでもない。
【0022】
また、本発明の塗布装置10を用いて様々な径の円環状ゴム部材の内周面に塗布剤を塗布することも可能である。具体的には、ローラー移動手段11kのストロークを大きくして移動保持台23の移動距離を長くすることで、駆動ローラー11a,11bと従動ローラー11c,11dとの距離を大きくしたり、図3(a)に示すように、移動保持台23の従動ローラー11c,11dの左側に従動ローラー11pを設けたり、図3(b)に示すように、従動ローラー11cと従動ローラー11dとの間に従動ローラー11qを設けるなどすれば、径の大きな円環状ゴム部材であっても塗布剤を塗布することができる。
また、前記例では4本のローラー11a〜11dを基台21に垂直な面内に配置したが、4本のローラー11a〜11dを水平面内に配置する構成であってもよい。この場合、プレキュアトレッド30の幅方向が上下方向となるので、塗布剤供給手段として塗布剤槽12aに代えて、塗布ローラー12bの外周面に接着剤を吹き付けるノズルを備えた塗布剤供給手段を用いることが好ましい。
【0023】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、塗布剤の塗布のみ行う塗布装置10について説明したが、図4に示すように、前記塗布装置10に、プレキュアトレッド30の内周面30bにフィルムを貼着するフィルム貼着装置40を追加することで、プレキュアトレッド30の内周面30bへの接着剤の塗布と塗布面を保護するための汚染防止用のフィルムの貼着作業とを同時に行うことができる塗布装置10Zを構成することができる。なお、塗布装置10Zに用いられる塗布装置10は、実施の形態1と同じであるので、説明を省略する。
フィルム貼着装置40は、フィルム送出手段41と、貼着手段42と、切断手段としてのカッター43と、押付手段44とを備え、駆動ローラー11aと従動ローラー11cとの間で、塗布装置10の下流側に配置される。
本例では、基台21に第2の固定保持台28を立設し、この第2の固定保持台28にフィルム貼着装置40を取付けたが、従動ローラー11c,11dが取付けられている移動保持台23にフィルム貼着装置40を取付けてもよい。
【0024】
フィルム送出手段41は、4本のローラー11a〜11dに掛け渡されるプレキュアトレッド30の内側に配置されたフィルムローラー41aを備え、ローラー41aの外周面に予め巻付けられたポリエステル等の樹脂から成る汚染防止用のフィルム(以下、フィルムという)Fを貼着手段42に送出する。フィルムローラー41aは第2の固定保持台28に固定された軸部材41bの周りに回転可能に取付けられている。
貼着手段42は、フィルム貼り合わせアーム42aとフィルム押さえローラー42bとを備える。フィルム貼り合わせアーム42aは、フィルム押さえローラー42bと協同してフィルムローラー41aからフィルム貼り合わせアーム42aとフィルム押さえローラー42bとの隙間に送出されたフィルムFをプレキュアトレッド30の内周面30bに押し付ける。
カッター43は、フィルム貼り合わせアーム42aの下流側に設けられて、フィルムFがプレキュアトレッド30の内周面30bに一周分もしくは一周分よりも少し長めに貼着された時点でフィルムFを切断する。
押付手段44はフィルム貼り合わせアーム42aとフィルム押さえローラー42bとを一体にプレキュアトレッド30の内周面30b側に移動させる。
【0025】
塗布装置10により接着剤が塗布されたプレキュアトレッド30の内周面30bには、下流側において、押付手段44によりプレキュアトレッド30の内周面30b側に押し付けられフィルム貼り合わせアーム42aとフィルム押さえローラー42bとの間から送り出されるフィルムFが押し付けられる。
接着剤は乾燥していない状態なので、押し付けられたフィルムFは接着剤の塗布されたプレキュアトレッド30の内周面30bに付着する。フィルムFは、プレキュアトレッド30の回転に伴ってフィルム送出手段41から巻き出されてプレキュアトレッド30の内周面に順次貼着される。そして、プレキュアトレッド30が一周分もしくは一周分よりも少し進んで貼着手段42の位置もしくは貼着手段42よりも少し下流側の位置にきたとき、カッター43がプレキュアトレッド30の内周面30b側に押し出されて、フィルムFが切断される。
フィルムFの切断後には、貼着手段42とカッター43とをプレキュアトレッド30の内周面30bから遠ざけるとともに、従動ローラー11c,11dを初期位置に戻しプレキュアトレッド30を弛ませ、プレキュアトレッド30を取り出す。
このように、塗布装置10にフィルムフィルム貼着装置40を組み込むことで、プレキュアトレッド30の内周面30bへの接着剤の塗布と汚染防止用のフィルムFの貼着作業とを同時に行うことができるので、生産性を大幅に向上させることができる。
【0026】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、プレキュアトレッドなどの円環状部材の内周面に塗布剤を効率よく、かつ、均一に塗布することができるので、生産性を向上させることができるとともに、品質のばらつきをなくすことができる。
【符号の説明】
【0028】
10 円環状ゴム部材用塗布装置、11 回転手段、11a,11b 駆動ローラー、
11c,11d 従動ローラー、11m ローラー駆動手段、
11M 駆動用モーター、11B ベルト、11k ローラー移動手段、
12 塗布手段、12a 塗布剤槽、12b 塗布ローラー、12c 押さえローラー、
12k 昇降手段、121 シリンダー装置の本体、122 シリンダーロッド、
13 塗布剤掻き取り手段、13a 塗布剤掻き取りバー、
13b 掻き取りバー移動手段、14 塗布剤回収槽、
21 基台、22 固定保持台、22a 塗布剤槽設置台、23 移動保持台、
24 ケース、24a 前扉、24b 排気ダクト、25 レール、26 ガイド部材、
27 スライド機構、28 第2の固定保持台、
30 プレキュアトレッド、30a 外周面、30b 内周面、
40 フィルム貼着装置、41 フィルム送出手段、41a フィルムローラー、
41b 軸部材、42 貼着手段、42a フィルム貼り合わせアーム、
42b フィルム押さえローラー、43 カッター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状に形成されたゴム部材の内周面に塗布剤を塗布する装置であって、
駆動ローラーを含む少なくとも3本のローラーを有し前記ゴム部材を内周面側から保持しながら回転させる回転手段と、
塗布剤を供給する塗布剤供給手段と前記塗布剤供給手段から供給される塗布剤を前記ゴム部材の内周面に塗布する塗布部材とを有する塗布手段とを備え、
前記塗布部材は、前記回転手段に保持されて回転するゴム部材の内側に、前記ゴム部材の内周面に当接するように配置されることを特徴とするゴム部材用塗布装置。
【請求項2】
前記塗布剤供給手段が塗布剤を収納する塗布剤槽を備え、
前記塗布部材が、外周面が前記ゴム部材の内周面に当接し、かつ、前記外周面の一部が前記塗布剤槽内に浸漬される塗布ローラーを備えることを特徴とする請求項1に記載のゴム部材用塗布装置。
【請求項3】
前記ゴム部材の外周面側で、かつ、前記塗布ローラーに対向する位置に配置されて、前記ゴム部材の外周面に当接する押さえローラーを備えたことを特徴とする請求項2に記載のゴム部材用塗布装置。
【請求項4】
前記ゴム部材の内周面側で、かつ、前記塗布ローラーの前記ゴム部材の移動方向側に、前記ゴム部材の内周面に当接する塗布剤掻き取り部材が配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のゴム部材用塗布装置。
【請求項5】
前記ゴム部材を内周面側から保持する少なくとも3本のローラーの間隔を変更する手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のゴム部材用塗布装置。
【請求項6】
前記ゴム部材の内周面側で、かつ、前記塗布手段の前記ゴム部材の移動方向側に配置されて、前記ゴム部材の内周面にフィルムを貼着するフィルム貼着装置を備え、
前記フィルム貼着装置は、
前記フィルムを送出するフィルム送出手段と、
前記フィルム送出手段から送り出されたフィルムを前記ゴム部材の内周面に押し付けて貼着させる貼着手段と、
前記フィルムを切断する切断手段とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のゴム部材用塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−40692(P2012−40692A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181016(P2010−181016)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】