説明

ゴム部材裁断装置及び帯状ゴム部材の製造方法

【課題】スチールコードをゴム被覆した長尺のゴム部材を、所要の角度、及び長さで切断するにあたり、その精度を高めたゴム部材裁断装置を提供する。
【解決手段】本発明のゴム部材裁断装置は、スチールコードをゴム被覆した、所定幅のゴム部材を巻回してなる巻取ロール1を、固定テーブル5の周りに揺動可能に配設し、固定テーブル5に、厚み方向に貫通するスロット5a、及び加圧空気噴出口5bを設けるとともに、固定テーブル5の下面側に、複数の電磁石4aを設けた繰出し装置4を配設し、各電磁石4aを固定テーブル上のゴム部材に対して昇降させる昇降駆動手段、及びスチールコードに吸着する磁力を付与する給電手段のそれぞれを設け、スチールコードに磁気吸着してゴム部材を上昇姿勢に保持したそれぞれの電磁石4aを、加圧空気の噴出下で、スロットの延在方向に繰出し変位させる進退駆動手段をもうけてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばタイヤ製造工程において、スチールコードをゴム被覆した長尺のゴム部材を、所要の角度、及び長さで切断するゴム部材裁断装置、及びその装置を用いた帯状ゴム部材の製造方法に関するものであり、特に、切断されるゴム部材の角度及び長さの精度を高める技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
相互に平行に延びる複数本のスチールコードをゴム被覆した、所定幅の未加硫のゴム部材を巻回してなる巻取ロールから、所要の角度で、所要の長さに亘って、間欠的に繰出されるゴム部材を切断する裁断装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、ゴム部材を切断する固定テーブル、及び固定テーブルの周りに揺動可能に配設される旋回テーブルのそれぞれに、巻取ロールから引き出されたゴム部材をそれらに跨がって載置し、固定テーブルの上面に開口させた加圧空気噴出口からの空気の噴出状態下で、各テーブルの上方側に懸架され、吸着手段を備えるとともに平行リンクで固定される2本の棒材の、吸着作用及び上昇変位によってゴム部材を上昇姿勢に保持し、さらに、それぞれの棒材の同期した繰出し変位によってゴム部材を間欠的に繰出して、その後、図示しない押圧部材で固定テーブル上のゴム部材を押圧保持しつつ、これも図示しない切断刃の下降変位によって、繰出されたゴム部材を切断する裁断装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−223431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した裁断装置によるゴム部材の切断に当たって、図6(a)、(b)に示すように、ゴム部材g’を上昇変位させることで、その先端部が切断刃10から離れる側(後退変位側)に移動してしまうため、図6(c)に示すように、2本の棒材11を長さL分、繰出し変位させても、ゴム部材g’は、切断刃10に対して長さL分しか繰出すことができず(L<L)、切断されるゴム部材g’が所要する長さに満たない場合があった。
一方で、押圧部材12の押圧保持下で2本の棒材11の吸着保持を解除した後は、図6(d)に示すように、ゴム部材g’に波打ちが残ってしまう場合があり、押圧部材12の押圧保持を解除すると、図6(e)に示すように、ゴム部材g’の先端部が切断位置を超えてはみ出してしまうため、次にゴム部材g’を上昇変位させる際の、先端部の後退変位分を加えてもなお、はみ出した分を吸収することができず、切断後のゴム部材g’が所要する長さよりも長くなることもあった。
また、ゴム部材g’に残った波打ちによっては、ゴム部材g’の幅方向の左右で波打ちの状態が異なることがあり、これがため、図7(a)に示すように、押圧部材12の押圧保持を解除した後は、ゴム部材g’の先端部が幅方向の左右で異なる方向に移動して(図中、二点鎖線はゴム部材g’の適正な輪郭線を示し、実線は移動後の輪郭線を示す)、図7(b)に示すように、切断されるゴム部材g’に角度及び裁断寸法のずれが発生する場合もあった。
他方、ゴム部材g’の上昇変位量を小さくするほど、ゴム部材g’の先端部の位置ずれを抑えることができるが、上述した方法でゴム部材g’を吸着保持して上昇変位させる場合は、波打ちの形状が比較的大きくなるため、上昇変位量を抑えた状態で繰出し変位させると、ゴム部材g’が、それ自身のタッキネスにより、テーブル13に接触して巻き込まれて吸着手段から脱落する場合があり、作業性が損なわれる懸念があった。
このため、切断されるゴム部材の長さ及び角度のばらつきが抑えられる他、安定的に切断することができる裁断装置の出現が切に望まれていた。
【0005】
本発明の課題は、ゴム部材の、切断刃に向けた繰出し変位において、その先端部の所期する位置からのずれを極力抑えて、切断されるゴム部材の長さ及び角度が高い精度で確保できる上、安定的に切断することができる裁断装置、及び帯状ゴム部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、相互に平行に延びる複数本のスチールコードをゴム被覆した、所定幅の未加硫のゴム部材を巻回してなる巻取ロールを、固定テーブルの周りに揺動可能に配設し、前記ゴム部材を、スチールコードの延在方向に対し、所要の角度で、所要の長さに亘って、前記固定テーブル上に間欠的に繰出すとともに、繰出された該ゴム部材を所要の長さに切断する切断刃を設けてなるゴム部材裁断装置であって、固定テーブルに、該固定テーブルの厚み方向に貫通されて、ゴム部材の繰出し方向に延在するスロットを設けるとともに、固定テーブルの上面に、複数の加圧空気噴出口を開口させて設け、該固定テーブルの下面側に、複数の電磁石を設けた繰出し装置を配設し、該繰出し装置の各電磁石を、前記スロットを経て、固定テーブル上のゴム部材に対して昇降させる昇降駆動手段、及び上昇姿勢の各電磁石に、ゴム部材中のスチールコードに吸着する磁力を付与する給電手段のそれぞれを設け、固定テーブル上で、スチールコードに磁気吸着してゴム部材を上昇姿勢に保持したそれぞれの電磁石を、加圧空気噴出口からの空気の噴出下で、前記スロットの延在方向に繰出し変位させる進退駆動手段をもうけてなるゴム部材裁断装置にある。
【0007】
かかるゴム部材裁断装置において好ましくは、繰出し装置の複数の電磁石の配列は、ゴム部材の切断位置に沿わせた二列であり、かつ、一方の列の一の電磁石から他方の列の一の電磁石に向かう向きが、繰出し変位する向きと同一であって、繰出し装置の操出し変位する向きを、スチールコードの延在する向きに沿わせる角度調整手段を設ける。
【0008】
そしてこの発明の、所要の角度及び長さとなる帯状ゴム部材の製造方法は、切断刃に対して所定角度に巻取ロールを揺動させ、次いで、加圧空気噴出口から空気を噴出させつつ、電磁石の、スチールコードへの磁気吸着下でゴム部材を上昇変位させ、その後、空気を噴出させたまま、ゴム部材をスロットの延在方向に繰出し変位させ、さらに繰出されたゴム部材を切断刃で裁断するにある。
【発明の効果】
【0009】
この発明のゴム部材裁断装置では、固定テーブルの上面に開口させて設けた加圧空気噴出口から、ゴム部材の裏面に向けて空気を噴出させた状態で、固定テーブルの下面側に配設した電磁石による、ゴム部材の裏面側からの保持によって、ゴム部材の波打を小さく抑えたまま、そのゴム部材を上昇変位させることができるので、切断されるゴム部材の長さ及び角度の精度を十分に高めることができる。
【0010】
また、繰出し装置の複数の電磁石を、ゴム部材の切断位置に沿わせた二列に、かつ、一方の列の一の電磁石から他方の列の一の電磁石に向かう向きが、ゴム部材の繰出し変位させる向きと同一となるように配設し、加えて、繰出し装置の操出し変位する向きを、スチールコードの延在する向きに沿わせる角度調整手段を設けた場合は、一方の列の一の電磁石と他方の列の一の電磁石が、ゴム部材中の同一のスチールコードを磁気吸着することになり、吸着作用に伴うゴム部材のずれを極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にしたがうゴム部材裁断装置の全体を、ゴム部材とともに示す略線平面図である。
【図2】図1に示すゴム部材裁断装置の要部を、仮想線で表示する繰出し変位前のゴム部材とともに示す略線拡大平面図である。
【図3】ゴム部材の繰出しから、繰出されたゴム部材の切断工程の終了に到るまでの各種の工程を示す略線拡大断面図である。
【図4】図2に示すゴム部材の、繰出し変位後の姿勢を示す略線拡大平面図である。
【図5】巻取ロールを揺動させてゴム部材の載置角度を変更するとともに、繰出し装置の繰出し変位方向を、その載置角度に合わせて変化させた状態を示す略線拡大平面図である。
【図6】従来のゴム部材裁断装置において、ゴム部材を繰出し変位させる際の、その先端部の位置ずれの発生状況を例示する略線拡大断面図である。
【図7】従来のゴム部材裁断装置において、ゴム部材を繰出し変位させる際の、ゴム部材の先端部の角度ずれの発生状況を例示する略線拡大平面図である。
【図8】帯状ゴム部材の切断幅のばらつきにつき、従来の装置で切断した場合と、本発明に従うゴム部材裁断装置で切断した場合との、測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従うゴム部材裁断装置の全体を示す。ゴム部材裁断装置は、相互に平行に延びる複数本のスチールコードをゴム被覆した、所定幅の未加硫のゴム部材gを巻回してなる巻取ロール1と、巻取ロール1から繰出されたゴム部材gを下方から支持する中間ロール2と、それら巻取ロール1及び中間ロール2とともに揺動変位される揺動テーブル3と、この揺動テーブル3の上面に載置されたゴム部材gの、その下面側に配設した、図1では図示を省略する後述の繰出し装置4による、矢印A方向の繰出し変位を許容する固定テーブル5と、固定テーブル5の上方側に設けられて、繰出し変位後のゴム部材gを固定テーブル5に押し付け保持する押圧部材6と、図1では図示を省略するが、押圧部材6に隣接して配設されて、繰出されたゴム部材gを線分X−Xに沿って切断する、後述の切断刃7と、切断された所定幅のゴム部材gを、矢印B方向に送り出す搬出コンベア8とを備えてなる。
なお、ゴム部材g中のスチールコードは、繰出し変位の向き(矢印A)に沿って延在している。また、切断刃7によって切断された所定幅のゴム部材gを、以下、帯状ゴム部材Gという。
【0013】
ここで、巻取ロール1は、図示は省略するが、巻回されたゴム部材gの、間欠的な繰出しによって連れ回りされるように、中心軸上に回動自在に支持されている。なお、ゴム部材gの操出し変位を補助するために、モータ等の駆動手段を、巻取ロール1を固定した中心軸に連結して、中心軸自身を回転駆動させることも可能である。
また、中間ロール2も、ゴム部材gの操出し変位に伴って連れ回りされるように構成されているが、巻取ロール1と同様にして個別に、又は巻取ロール1と連動させて、回転駆動させることもできる。
【0014】
そして揺動テーブル3は、図示しない円弧状のレール上に、巻取ロール1及び中間ロール2とともに配設されていて、図1に二点鎖線で示すようにゴム部材gとともに、固定テーブル5の周りを任意の角度範囲に亘って揺動変位することができる。
なお、図1の例では、扇形状の固定テーブル5の中心角を小さくし、これにあわせて揺動テーブル3等の揺動変位する範囲も比較的狭くしているが、帯状ゴム部材Gを、タイヤを構成する各種の部材として使用する場合は、種々のタイヤに適用させるべく、線分X−Xに対するゴム部材gの操出し方向を、例えば5〜85度の範囲で可変できるように、揺動テーブル3等の揺動範囲、及び固定テーブル5のサイズを、図示の例よりも広げることもできる。
【0015】
ところで、固定テーブル5は、図2及び図3(a)〜(e)に示すように、その厚み方向に貫通されて、ゴム部材gの繰出し方向に延在するスロット5aを備えている。図示の例では、固定テーブル5は、3本のスロット5aを備えているが、その数は、ゴム部材gの幅等に応じて種々変更することができる。そして、固定テーブル5の下面側には、複数の電磁石4aを、各スロット5aに対応させて位置させてなる、繰出し装置4が配設されている。図示の例では、総計6個の電磁石4aのうち、繰出し変位前方側に配置される3個の電磁石4aと、繰出し変位後方側に配置される3個の電磁石4aとを、ゴム部材gの切断位置である線分X−Xに沿わせて、二列に並べて平行に配置してなる。
ここで、各スロット5a内の、2個の電磁石4a及び4aは、繰出し変位後方側に配置される電磁石4aから繰出し変位前方側に配置される電磁石4aに向かう向きを、図2に符号Sで示す、ゴム部材g中のスチールコードの延在する向き、すなわち、ゴム部材gの繰出し変位する向きと同一になるように配置することが好ましい。これにより、同一スロット5a内の2つの電磁石4aのそれぞれは、後述する給電手段の作用下で、同一のスチールコードを、その中心軸線に対する距離が同一となる部位で吸着することができるので、吸着作用に伴うゴム部材gのずれが十分に抑制されることになる。
【0016】
また、図示の繰出し装置4では、繰出し変位前方側のそれぞれの電磁石4aをともに、前側連結部材4b上に取り付けるとともに、繰出し変位後方側の電磁石4aのそれぞれを、前側連結部材4bと平行に延びる後側連結部材4c上に取り付け配置し、さらに、それら前側連結部材4b及び後側連結部材4cの相互を、2本の接続部材4dでヒンジ連結して、平行リンク機構の下で電磁石4aの全てを一体的に連結している。
これにより、或る一つのスロット5aにおける、繰出し変位後方側の電磁石4aから繰出し変位前方側の電磁石4aに向かう向きが変更されると、平行リンク機構の作用下で、他の全てのスロット5a内の、繰出し変位後方側の電磁石4aから繰出し変位前方側の電磁石4aに向かう向きも、同一の向きに変更される。
なお、前側連結部材4bと後側連結部材4cとの連結には、平行リンク機構に限定されず、平行移動が担保される他のリンク機構を用いてもよい。
【0017】
また、繰出し装置4は、図示は省略するが、例えば直線状のガイドレールと、これに案内される摺動スライダーとからなる直動機構を介して、固定テーブル5に昇降変位可能に取り付けられていて、これもまた図示を省略する昇降駆動手段の作用下で、全ての電磁石4aを、スロット5aを経て、固定テーブル上のゴム部材gに対して上昇変位させることができる。
加えて、繰出し装置4は、図示を省略した同様の直動機構を介して、固定テーブル5に、繰出し変位の向きに進退変位可能に取り付けられていて、図示しない進退駆動手段の作用下で、全ての電磁石4aを一度に、繰出し方向に変位させることができる。
さらに、繰出し装置4を、図示は省略するが、例えば円弧状のガイドレールと、これに案内される揺動スライダーとからなる揺動機構を介して、固定テーブル5に取り付けるとともに、これもまた図示を省略する角度調整手段に駆動連結させる場合は、角度調整手段の作用下で、繰出し装置4の繰出し変位する向きを、巻取ロール1等の、任意の角度での揺動変位にかかわらず、スチールコードの延在する向きに沿わせることができる。
なお、昇降駆動手段、進退駆動手段、及び角度調整手段は、ラックとピニオンとの組み合わせになるものや、ボールねじとモータとの組合せによるものや、シリンダーからなるものとすることもでき、所期する搬送速度や、停止移動精度等に応じて種々のものの中から選択することができる。
【0018】
そして各電磁石4aは、図示しない給電手段にそれぞれ導通可能に連結されていて、その給電手段から各電磁石4aに供給される電流を、通電状態と、非通電状態とに切り替えることにより、ゴム部材g中に延在するスチールコードに吸着する磁力を発生させ、そして脱磁することができる。
【0019】
さらに、固定テーブル5の上面には、複数の加圧空気噴出口5bを開口させて設ける。なお、図2では、加圧空気噴出口5bを3個設けた場合を例示しているが、加圧空気噴出口5bは、固定テーブル5の全面に、好ましくは均等に配設される。そして、各加圧空気噴出口5bは、図示しない、例えばポンプ等の加圧空気供給手段に連通されていて、その加圧空気供給手段の作用下で、上方に向けて加圧空気を噴出することができる。
【0020】
そしてまた、固定テーブル5の上方側には、図3(a)に示すように、押圧部材6が配設される。この押圧部材6は、図示しない直動機構を介して、固定テーブル5に対して直接的に、又は間接的に取り付けられていて、これもまた図示を省略したシリンダーロッド等の伸縮変位によって、固定テーブル5上のゴム部材gを、該テーブル5上の、裁断エッジをもつ後述の剥がしレバー5c上に押圧保持する。
【0021】
ここで、押圧部材6の直下には、図3(e)に示すように、固定テーブル5にヒンジ連結されて、その裁断エッジ側を上方に向けて揺動変位される剥がしレバー5cが配設されている。押圧部材6によって押圧されたゴム部材gは、未加硫ゴムであるために、押し当てられた剥がしレバー5cに、自身のタッキネスによって貼着する傾向があるが、ゴム部材gの端縁を、剥がしレバー5cの揺動変位によって起き上がり姿勢に変位させることで、ゴム部材gを剥がしレバー5cの表面から剥離させることができる
【0022】
ところで、切断刃7は、図3に示すように押圧部材6に隣接して、例えば回転可能に配設されている。そして、図示しない直動機構を介して、固定テーブル5に対して直接的に、又は間接的に取り付けられていて、これもまた図示しないシリンダーロッド等の伸縮変位によって、ゴム部材gに向けて下降変位される。ここで、切断刃7は、図示しない、例えばモータ等の回転駆動手段と駆動連結されていて、シリンダーロッド及び回転駆動手段の作用下で、回転しつつ下降して、図1に示す線分X−Xに沿ってゴム部材gを、埋設したスチールコードとともに切断することができる。
【0023】
また、搬出コンベア8は、固定テーブル5の繰出し変位側に隣接させて配設されていて、切断刃7によって切り離された帯状ゴム部材Gを、図示しないモータ等を駆動連結したコンベアベルトの、矢印Bの方向への走行駆動によって送り出し、ゴム部材gの、新たな繰出し変位分を受け入れ可能とする。
【0024】
上記のように構成されるゴム部材裁断装置を用いて、ゴム部材gを繰出し変位させ、さらに繰出されたゴム部材gを所要の角度及び長さに切断して、帯状ゴム部材Gとするに当たっては、まず、図1に示すように、ゴム部材gを巻回してなる巻取ロール1を、中間ロール2及び揺動テーブル3とともに、切断位置である線分X−Xに対して所要の角度に揺動変位させる。
【0025】
次いで、図3(a)に示す、下降姿勢のゴム部材gに対して、加圧空気噴出口5bから空気を噴出させつつ、電磁石4aの、スチールコードへの磁気吸着下で、図3(b)に示すように、繰出し装置4を上昇変位させる。ここで、ゴム部材gの裏面には、加圧空気噴出口5bからの加圧空気が噴射されて上向きの力が均等に作用しており、繰出し装置4の上昇変位もまた、ゴム部材gの同一の面に対して同一の方向に力を作用させることになるので、従来ゴム部材gに発生しがちであった波打を、小さく抑えることができる。これにより、繰出し変位時に発生しがちであった、繰出されたゴム部材gの長さや角度のばらつきを、十分に抑制することができる。
【0026】
その後、加圧空気の噴射下で、上昇姿勢とされたゴム部材gを、図3(c)及び図4に示すように、所要の長さに亘って間欠的に繰出し変位させる。そして、空気の噴出を停止させた後、図3(d)に示すように、下降変位させた押圧部材6の、ゴム部材gに対する押圧保持下で、切断刃7の回転変位及び下降変位によって、繰出し変位されたゴム部材gを切断することで、所要の角度及び長さの帯状ゴム部材Gが切断されることになる。
【0027】
次いで、電磁石4aの、スチールコードへの磁気吸着を解除するとともに、図3(e)に示すように繰出し装置4を下降変位させ、さらに押圧部材6及び切断刃7を上昇変位させるとともに、剥がしレバー5cを揺動変位させて、ゴム部材gを剥がしレバー5cの表面から剥離させる。併せて、図4に示す搬出コンベア8が備えるコンベアベルトの、矢印Bの方向への走行駆動によって、帯状ゴム部材Gが送り出されて、ゴム部材gの、新たな繰出し変位が受け入れ可能となる。
なお、次の作業の待機のために、繰出し装置4を、元の位置に復帰させる。
【0028】
ところで、固定テーブル5においては、スロット5aを設けたその天板を、例えばスロット5aの角度を変更した他の天板に交換可能とした場合は、巻取ロール1等の、幅広い揺動変位にも、装置の大幅な変更を伴うことなく対応することができる。
【0029】
なお、スロット5aは、図示するように、繰出し変位後方側の幅が、繰出し変位前方側の幅よりも広くなるように形成することが好ましい。すなわち巻取ロール1等は、固定テーブル5に対して揺動変位するので、繰出し変位後方側の電磁石4aから繰出し変位前方側の電磁石4aに向かう向きを、スチールコードの延在する向きに合わせようとする際は、繰出し変位後方側の電磁石4aが、スロット5aの幅方向に対して大きく変位することになるので、スロット5aを上述した形状とすることで、揺動変位させる角度が比較的小さい場合は、図5に示すように、同一の固定テーブル5のまま揺動変位に対応することができる。
【実施例】
【0030】
繰出し装置を、図6のように固定テーブルの上方側に配設した、従来のゴム部材裁断装置、及び図3のように固定テーブルの下方側に配設した、本発明に従うゴム部材裁断装置につき、帯状ゴム部材Gを切断して、切断幅のばらつきについて調査をおこなった。その結果を図8に示す。
【0031】
図8に示すグラフは、一枚の帯状ゴム部材Gの切断方向に沿う複数の部位で、その切断端の相互間距離を測定し、所期する値からのずれ量を示したものである。
ここで横軸は、帯状ゴム部材Gの切断方向に沿う測定点であり、縦軸は、その測定点における切断端の相互間距離の、所期する値からのずれ量である。また、測定によって得られたずれ量から、平均的なばらつきを算出したところ、従来のゴム部材裁断装置での帯状ゴム部材Gのばらつきがσ=1.38mmであるのに対して、本発明に従うゴム部材裁断装置での帯状ゴム部材Gのばらつきはσ=0.36mmであった。
【0032】
グラフ及びばらつきの算出値から明らかなように、従来のゴム部材裁断装置で切断した帯状ゴム部材Gに対して、本発明に従うゴム部材裁断装置で切断した帯状ゴム部材Gは、切断端の相互間距離のばらつきを十分小さく抑えることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 巻取ロール
2 中間ロール
3 揺動テーブル
4 繰出し装置
4a 電磁石
4b 前側連結部材
4c 後側連結部材
4d 接続部材
5 固定テーブル
5a スロット
5b 加圧空気噴出口
5c 剥がしレバー
6 押圧部材
7 切断刃
8 搬出コンベア
g ゴム部材
G 帯状ゴム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に平行に延びる複数本のスチールコードをゴム被覆した、所定幅の未加硫のゴム部材を巻回してなる巻取ロールを、固定テーブルの周りに揺動可能に配設し、前記ゴム部材を、スチールコードの延在方向に対し、所要の角度で、所要の長さに亘って、前記固定テーブル上に間欠的に繰出すとともに、繰出された該ゴム部材を所要の長さに切断する切断刃を設けてなるゴム部材裁断装置であって、
固定テーブルに、該固定テーブルの厚み方向に貫通されて、ゴム部材の繰出し方向に延在するスロットを設けるとともに、固定テーブルの上面に、複数の加圧空気噴出口を開口させて設け、該固定テーブルの下面側に、複数の電磁石を設けた繰出し装置を配設し、該繰出し装置の各電磁石を、前記スロットを経て、固定テーブル上のゴム部材に対して昇降させる昇降駆動手段、及び上昇姿勢の各電磁石に、ゴム部材中のスチールコードに吸着する磁力を付与する給電手段のそれぞれを設け、
固定テーブル上で、スチールコードに磁気吸着してゴム部材を上昇姿勢に保持したそれぞれの電磁石を、加圧空気噴出口からの空気の噴出下で、前記スロットの延在方向に繰出し変位させる進退駆動手段をもうけてなるゴム部材裁断装置。
【請求項2】
繰出し装置の複数の電磁石の配列は、ゴム部材の切断位置に沿わせた二列であり、かつ、一方の列の一の電磁石から他方の列の一の電磁石に向かう向きが、繰出し変位する向きと同一であって、
繰出し装置の操出し変位する向きを、スチールコードの延在する向きに沿わせる角度調整手段を設けてなる請求項1に記載のゴム部材裁断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム部材裁断装置を用いて所要の角度及び長さとなる帯状ゴム部材を製造するに当たり、
切断刃に対して所定角度に巻取ロールを揺動させ、次いで、加圧空気噴出口から空気を噴出させつつ、電磁石の、スチールコードへの磁気吸着下でゴム部材を上昇変位させ、その後、空気を噴出させたまま、ゴム部材をスロットの延在方向に繰出し変位させ、さらに繰出されたゴム部材を切断刃で裁断する、帯状ゴム部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−232472(P2012−232472A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102234(P2011−102234)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】