説明

サイクロン除塵装置

【課題】吸引室内での吸引流体の旋回速度を上げて除去物分離性能や処理効率の向上を図るとともに、装置の小型化を図り得たサイクロン除塵装置を提供する。
【解決手段】排気口42aが上端側に形成され、吸気口25が周壁部41に接続された吸引室40を、その周壁部41の下端開口41aによって排出口を構成し、周壁部41を下部よりも上部が小径となるテーパ状に形成し、排出口の下方に除去物回収用の貯留部5を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や各種作業場で発生する塵埃や溶接ブースで発生する溶接ヒュームなど、各種作業機器周りで発生するオイルミストや油煙、溶接ヒュームのように、気体や蒸気中に何等かの除塵対象物(以下、除去物と総称する)を含んで全体としては気相を呈する流体(以下、本明細書中では「吸引流体」と呼称する。)や、気体とともに吸引される洗浄水や油などの液体を含む流体(以下、本明細書中では「吸引流体」と呼称する。)を処理対象として、その吸引流体中から塵埃や液体などの除去物を分離、及び除去することのできるサイクロン除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサイクロン除塵装置としては、下記[1]に記載の技術が知られている。
[1]旋回入り口部が接続された吸引室を円筒状に形成してあり、その円筒状の吸引室の下方に下方側ほど小径となる絞り部を備え、その絞り部の下端に対向させて反転仕切り板を設け、さらにその下方側に集塵部及びダストボックスを設けたサイクロン装置(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−223465号公報(段落〔0008〕、〔0009〕、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に示される技術によれば、吸引室が円筒状に形成されているので、吸引室内での吸引流体の旋回速度を上げると、吸引流体の旋回方向での慣性が大きくなって、吸引室内で旋回下降流が生じるまでにかなり長い時間を要し、その結果、吸引室内で吸引流体が停滞した状態となって、除去物の分離処理時間も長くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、吸引室内での吸引流体の旋回速度を上げて除去物分離性能や処理効率の向上を図るとともに、装置の小型化を図り得たサイクロン除塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明によるサイクロン除塵装置では、下記の技術手段を講じたものである。
〔解決手段1〕
本発明のサイクロン除塵装置は、請求項1に記載のように、吸引流体を旋回流動させる吸引室に対して、処理対象の吸引流体を導入する吸気口と、導入された吸引流体から分離された除去物を吸引室外へ排出するための排出口と、除去物分離後の吸引流体を前記吸引室外へ吸引導出する排気口とを連通させたサイクロン除塵装置であって、
前記吸引室を、前記排気口が上端側に形成され、前記吸気口が周壁部に接続され、その周壁部の下端開口によって前記排出口を構成するとともに、前記周壁部を下部よりも上部が小径となるテーパ状に形成し、
前記排出口の下方に除去物回収用の貯留部を設けてあることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した構成によると、吸引室が、下部よりも上部が小径となるテーパ状に形成された周壁部を備えるサイクロンによって構成されているので、この吸引室内での吸引流体の旋回速度を上げても吸引流体が吸引室内で停滞して除去物の分離処理に時間を要するというような不具合を避けることができる。つまり、吸引室内で吸引流体の旋回速度を上げれば吸引流体中の除去物の分離を良好に行うことができて有用であるが、例えば、この吸引室を単なる円筒状に形成して吸引流体の旋回速度を上げた場合には、吸引流体の旋回方向での慣性が大きくなって、吸引室内で旋回下降流が生じるまでにかなり長い時間を要し、吸引室内で吸引流体が停滞した状態となって、除去物の分離に長い時間を要することになる。
これに比べて解決手段1にかかる本発明のものでは、上述のように吸引室の周壁部が下部よりも上部が小径となるテーパ状に形成されていることにより、旋回中の吸引流体に対して下向きの分力を与えることができる。したがって、吸引流体の旋回速度の衰えを待つことなく、重力の作用とも相俟って積極的に旋回流の位置を下方へ移動させることができるので上述のような吸引室内での停滞を避けることができる。
【0008】
このように、本発明のものでは、吸引室内での吸引流体の旋回速度を上げて吸引流体中の除去物の分離を良好に行うことができるとともに、吸引流体の旋回速度を上げても除去物分離の処理に要する時間が長くなる傾向を回避してより効率の良い除去物分離を行うことができる利点がある。これによって、吸引流体から除去物を分離するための構造部分を上下方向長さの短いコンパクトな構造で構成することができ、装置の小型化、あるいは貯留空間の容積拡大を図り得る利点がある。
また、吸引室内での吸引流体の旋回速度を上げることによって吸気口側での吸引力も高められるので、比較的質量の大きい液体を含む吸引流体の吸い込み、ならびにその吸引流体からの質量の大きい除去物分離も良好に行える利点もある。
【0009】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、前記排出口の下端側に、その排出口よりも大径で除去物が前記吸引室内における旋回流の旋回半径よりも外側へ流動することを許容する除去物ガイド部を設けてあることを特徴とする。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段2で示した構成によると、吸引流体の旋回流が吸引室の下端に達すると、前記テーパ状の吸引室の下端側にその吸引室の下端の排出口よりも径の大きい除去物ガイド部が存在することによって、吸引室内における旋回流よりも外側へ吸引流体中の除去物が効率よく分離され、分離した除去物に対する旋回流の影響も急速に弱められて下方の貯留部に落下供給されることになる。これによって、吸引流体からの質量の大きい除去物分離をより一層良好に行える利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項3に記載のように、前記吸引室の上部に、該吸引室の内面を伝う除去物の吸引室よりも上方側への流動を制限するように、上端が下端側よりも小径となるテーパ状の堰き止め部材の上端側を支持させてある点に特徴がある。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、前記吸引室の上部に設けられたテーパ状の堰き止め部材が存在することによって、下部よりも上部が小径となるテーパ状の吸引室の周壁を伝って除去物が上昇してきたとしても、それ以上の除去物の伝い上がりを抑止することができる利点がある。
【0013】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項4に記載のように、前記吸引室の排出口部分に対向させて、その排出口部分の口径よりも小径の底板を設けてある点に特徴がある。
【0014】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4で示した構成によると、吸引室の排出口部分に対向して底板が存在することにより、排出口から貯留部内へ回収された除去物に対して、吸引室内の旋回流による吸引作用が及ぶことを低減できる。したがって、貯留部に回収された除去物が再び舞い上がって除去物の捕集効率が低下してしまうような事態の発生を回避し得る利点がある。
【0015】
〔解決手段5〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項5に記載のように、前記貯留部としての貯留容器を備え、その貯留容器内に貯留された除去物によって押し上げられるフロートと、そのフロートの所定高さ位置への押し上げに伴って、前記吸引室を出た吸引流体の上方側への排気流路を閉塞する弁体とを備えた点に特徴がある。
【0016】
〔解決手段5にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段5で示した構成によると、貯留容器内に回収された除去物の量が、貯留容器の所定高さ位置に達したとき、除去物によって押し上げられたフロートが弁体を操作して排気流路を閉塞することができる。
これによって、貯留容器内での除去物の貯留量が所定量に達すると自動的に吸引流体の吸引が停止されるので、除去物が貯留容器から溢れ出るような事態の発生を未然に防止し、貯留容器側での除去物の回収状況を気にしながら作業を行う必要もなく便利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】サイクロン除塵装置を用いた掃除機の正面図である。
【図2】サイクロン除塵装置を用いた掃除機の側面図である。
【図3】サイクロン除塵装置を用いた掃除機の縦断正面図である。
【図4】図3におけるIV-IV線断面図である。
【図5】サイクロン処理部を示す拡大断面図である。
【図6】起風部を示す縦断正面図である。
【図7】別実施形態の起風部を示す縦断正面図である。
【図8】除去物ガイド部の別実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1乃至図6は、本発明のサイクロン除塵装置を掃除機に適用した場合を例示したものであり、後部側に備えた左右一対の固定転輪10aと前部側に備えた左右一対のキャスター車輪10bとで支持された台座11に、後方側に握り部12aを備えた操作ハンドル枠12を一体に装備させて台車1を構成し、この台車1にサイクロン除塵装置2を搭載して掃除機を構成している。
前記サイクロン除塵装置2は、大別して、吸引風を発生させるための起風部3、吸引した吸引流体から除塵物を除去するための除塵部4、及び吸引流体から除去された除去物を貯留するための貯留部5を備えている。
【0019】
前記サイクロン除塵装置2は、前記起風部3を内装する起風ケース21と除塵部4を内装する除塵ケース22とを一体化したケース主部20が、貯留部5を構成する貯留容器50に対して分離自在に構成してあり、貯留容器50は台座11に対して積み降ろし可能に構成してある。
そして、前記ケース主部20の上下方向での中間部箇所に相当する前記除塵ケース22部分は、平面視でコの字状に形成された取付枠13の開放側端部に対して左右両側でボルト連結してあり、その取付枠13は、前記開放側の端部に前記操作ハンドル枠12の左右の直立杆部分12bに対して外嵌する左右一対のボス部13aを備え、操作ハンドル枠12に対して上下スライド可能に装着されている。
したがって、前記取付枠13を手で持って操作ハンドル枠12に対して上下摺動移動させることにより、ケース主部20の全体を上下位置変化させることができるように構成されている。
【0020】
前記ケース主部20の下部は、図2に示すように台座11の進行方向後方側箇所における左右方向での中央部箇所で、台座11との間にガスダンパ14を介して連結されている。このガスダンパ14は、図2に示す状態からケース主部20を上昇させる方向への伸長側に付勢されているものであり、ケース主部20の下端が貯留容器50の上端から少し浮き上がる程度の位置で、ケース主部20の重量とガスダンパ14の付勢力とがバランスするように前記付勢力を設定してある。つまり、ケース主部20の下端位置が貯留容器50の上端と同じ高さに位置する状態では、ケース主部20の重量に対してガスダンパ14による上昇側への付勢力が僅かに勝るようにガスダンパ14の付勢力を設定してある。
【0021】
そして、前記取付枠13の前記ボス部13aの下部には、操作ハンドル枠12に対する取付枠13の上下方向での相対移動を許容する状態と、その上下移動を阻止する状態とに切り換え操作自在なロック装置15を設けてある。
このロック装置15は、その詳細な構造の説明は省略するが、図2に示すように、取付枠13側に備えさせた挿抜操作可能な係止ピン15aと、操作ハンドル枠12側に備えさせた係止孔(図示せず)との係脱によってロック状態とロック解除状態とに切換自在に構成してある。
したがって、前記ガスダンパ14の付勢力に抗してケース主部20を押し下げ、ケース主部20が貯留容器50の上に搭載された状態となる作業位置で前記係止ピン15aを操作ハンドル枠12側の係止孔に差し込んで使用状態で位置固定とすることができる。そして、前記係止ピン15aを抜いて前記ガスダンパ14の付勢力とともにケース主部20を貯留容器50の上端から少し離した上方位置で操作ハンドル枠12側の別の係止孔に前記係止ピン15aを差し込むことにより、前記ケース主部20を貯留容器50の上端から浮かした非作業位置で位置固定することができ、この状態で前記貯留容器50を引き出して除去物を廃棄することができる。
【0022】
図1及び図2に示すように、前記ケース主部20の起風ケース21と除塵ケース22とは、周方向の2箇所に設けたバックル23で連結及び連結解除可能に構成してあり、除塵ケース22でも、後述するサイクロン処理部4Aを内装するサイクロンケース部22aと、フィルター処理部4Bを内装するフィルターケース部22bとを、周方向の3箇所に設けたバックル24で連結及び連結解除可能に構成してある。
前記除塵部4には、掃除機用ホース(図外)を取付可能な吸気口25が突設してあり、前記起風部3には、起風ケース21の外周全域から処理済みの吸引流体を排出するための外周排気口26と、外周部の一箇所から排出する排気口ダクト27とが設けられている。
【0023】
〔除塵部〕
図3乃至図5に示すように、除塵部4は、前記ケース主部20内の下段側に設けられたサイクロン処理部4Aと、そのサイクロン処理部4Aの上段側に設けられたフィルター処理部4Bとから構成されている。
【0024】
前記サイクロン処理部4Aは、前記吸気口25に接続された吸引室40と、その吸引室40の下端側に連設された除去物ガイド部43と、前記吸引室40の上側に形成された排気ガイド室44と、前記吸引室40の上部で、吸引室40の周壁部41や天井部42内面を伝う液体の上昇側への流動を制限する堰き止め部材46と、貯留容器50に回収された除去物の舞い上がりを抑制するための底板48とを備えて構成されている。
【0025】
前記吸引室40は、下部よりも上部が小径となるテーパ状(このテーパ状とは、吸引流体の上方への流れ方向に対してのテーパであることを意味する)に形成された周壁部41を備えている。この周壁部41の上下方向での中間位置に、前記吸気口25に連なる吸気路25aが周壁部41の接線方向で接続され、吸気路25aの終端開口25bから吸引室40内へ吸引流体が導入される。
前記周壁部41の上端に連なる天井部42に、処理済みの吸引流体が通過するための上部開口42a(排気口に相当する)を形成してあり、周壁部41の下端に形成された下端開口41aによって排出口が構成されている。
前記吸引室40に接続される吸気路25aは、図4に示すように、前方側へ向けられた吸気口25の位置から吸引室40の周壁部41の外周をほぼ半周して徐々に旋回半径を縮小させながら吸気路25aの終端開口25bに達するように経路長さを定めてある。
【0026】
前記周壁部41の下端開口41aに連なって、周壁部41の下端開口41aよりも径の大きい除去物ガイド部43が一体に設けられている。
この除去物ガイド部43は、周壁部41の下端から水平方向の外方へ広がる下向き面43aと、その下向き面43aの外方側端部に位置する円筒状の内周面43bと、その内周面43bの下端から半径方向内方側へ延出されて内方側ほど下方側へ傾斜した円環状の傾斜面43cとを備えている。
また、この除去物ガイド部43の外周側には、水平方向での外方側へ突出するフランジ部43dが一体に形成してあり、このフランジ部43を介して、吸引室40の下部がケース主部20の除塵ケース22に取り付けられている。
【0027】
前記吸引室40の天井部42には、前記吸引室40の上側で排気ガイド室44を構成するための戴頭円錐状の室壁構成部材45と、周壁部41内面を伝う液体の上昇側への流動を制限する堰き止め部材46とを共通の取付ボルト47を介して装着してある。
【0028】
前記室壁構成部材45は、下部よりも上部が小径となるテーパ状(このテーパ状とは、吸引流体の上方への流れ方向に対してのテーパであることを意味する)に形成された周壁部45aを備え、かつ天井面45bに円筒状に形成された筒状堰き止め部材45cを備え、この筒状堰き止め部材45cの内部が前記排気ガイド室44からさらに吸引流体の流れ方向での下流側となる上方の排気流路を構成するものである。
したがって、吸引室40を出て排気ガイド室44に導入された吸引流体は、排気ガイド室44内での旋回中に残留除去物のさらなる分離を行うとともに、この排気ガイド室44の内面に液滴等が付着することがあっても、その液滴が排気ガイド室44の内面を伝って上方のフィルター処理部4B側に流れることは、前記筒状堰き止め部材45cによってほぼ確実に抑制することができる。
【0029】
前記堰き止め部材46は、下部よりも上部が小径となるテーパ状(このテーパ状とは、吸引流体の上方への流れ方向に対してのテーパであることを意味する)の下部部分46aと、その下部部分46aの上端に連なって、下部よりも上部が大径となる逆テーパ状の上部部分46bとを備えている。
したがって、吸引室40内で周壁部41や天井部42を伝って上方側へ移動しようとする液体の上方側への移動をこの堰き止め部材46部分で制限することができる。
【0030】
前記排気ガイド室44の天井面45bに備えた筒状堰き止め部材45cには、その上端側と下端側とに、筒状堰き止め部材45cの径方向に延設したステー45dを介して筒状部材45eが支持されており、この筒状部材45eの下端部に前記底板48が装着されている。底板48は、前記吸引室40の周壁部41の下端開口41aによって形成されている排出口部分に対向する位置に配設されている。
【0031】
前記底板48は、前記吸引室40の下端開口41aの口径よりも小径の下板部分48aと、その上側で中央部が盛り上がった形状の上板部分48bとを備えて中空状に形成されている。
この底板48は、前記下端開口41aの口径よりも小径であるとともに、前記吸引室40の天井部に設けた堰き止め部材46の内径よりも大きな径を有していて、その底板48の外周縁と前記下端開口41aの内周縁との間に除去物が通過するための通路が形成されている。この通路の面積は、前記除去物の通過は許しながら、下方の貯留容器50に貯留されている除去物が吸引室40内での吸引流体の旋回によって再び舞いあがるような影響を少なくし得るようにその通路面積の大きさを設定してあり、底板48が存在することで下方の貯留容器50に貯留されている除去物の舞いあがりをより効果的に抑制し得るように構成してある。
【0032】
前記底板48の下方には、フロート弁7のフロート70が設けられている。このフロート弁7は、前記フロート70の上部に前記底板48を貫通して前記筒状部材45eに内挿された操作軸71と、操作軸71の上端に取り付けられた弁体72とを備えている。
前記弁体72は、中央部に通気孔72aを備えた円板状部材によって構成され、フィルター処理部4Bとの連通孔73を開閉可能に構成してある。つまり、図5中に仮想線で示したように、貯留容器50に除去物が貯留されて、前記フロート70が所定高さまで押し上げられると、前記弁体72が上昇して前記連通孔73を閉塞する。除去物の貯留量が少なくて、前記フロート70に除去物による押し上げ力が作用していない状態では、自重によってフロート70が下降し、弁体72は前記連通孔73を閉塞する位置から離れて下方に位置した開放状態となる。上記の弁体72によって連通孔73が閉じられると、排気流路が閉塞された状態である。
【0033】
前記フィルター処理部4Bでは、図3に示すように、前記連通孔73を通過した吸引流体が図中矢印のように、円筒状のフィルターエレメント49の外周側から内周側に入り込み、上方の起風部3側へ吸い込まれるように構成されている。
前記フィルターエレメント49は、洗浄可能な布状の濾材をつづら折り状に折り込んで環状に形成してあり、最終的に気相流体中に残留しているオイルミスト、塵埃、および溶接ヒュームなどを除去できるように設けられたものである。
【0034】
〔起風部〕
前記起風部3は、図3及び図6に示すように、ケース主部20の起風ケース21の内部に、単一の電動モータ30を配設するとともに、その単一の電動モータ30の下部に単一の起風ファン31を備えて構成されている。
前記起風ファン31は、起風ケース21の底板21Aの上側に形成された起風室32に装備されていて、起風室32の下面側及び前記底板21Aに形成された下部開口32aから前記フィルター処理部4Bのフィルターエレメント49を通過した吸引流体を吸引して周方向に排出するターボファンによって構成されている。
【0035】
起風室32の室壁33の外周上部の複数箇所には排気用開口33aが形成してあり、さらに前記起風室32の外周側には、前記室壁33との間に間隔を隔てて設けた隔壁34を一体に設けてあり、前記室壁33と隔壁34との間、及び隔壁34の下端と前記起風ケース21の底板21Aの上面との間に排気用通路rが形成されている。
前記排気用通路rの上側には、前記隔壁34の外周側で隔壁34との間に間隔を隔てて、隔壁34の外側に排気用チャンバー35を形成するシャッター部材36が設けられている。このシャッター部材36は、排気用チャンバー35の上側の起風ケース21内に設けた磁石37によって図6に示す浮き上がり状態で支持されており、シャッター部材36を前記磁石37の磁力に抗して押し下げれば、シャッター部材36の下面側に装着されたリング状のゴム製、あるいはスポンジ製のパッキン36aによって前記排気用通路rが遮断され、処理済みの吸引流体が外方側への排出されることを阻止した状態に、ワンタッチ操作で切り換えられるように構成してある。
【0036】
シャッター部材36が図6に示す浮き上がり状態であれば、起風室32から排出される処理済みの吸引流体は図6に示すように前記排気用通路rを流れて、主に起風ケース21の外周側で、前記起風ケース21の底板21Aの上面とシャッター部材36の下面との間の全周にわたって形成される外周排気口26から半径方向での外方へ排出されるように構成されている。
前記シャッター部材36を押し下げて前記排気用通路rの外方側への流れを止めると、起風室32から排出される処理済みの吸引流体は前記排気チャンバー35に流れ込んで、前記シャッター部材36の外周側の一箇所に形成してある排気ダクト27(図2参照)から外部へ排出されるように構成してある。
【0037】
〔貯留部〕
前記貯留部5は、図3に示すように、台車1に搭載した、透明、または半透明の合成樹脂材料で内部を透視可能に形成された貯留容器50によって構成してある。
この貯留容器50は、上端側の開口縁50aがケース主部20の除塵ケース22の下端側のフランジ部22Bが搭載可能である大きさに形成され、予定する貯留量だけ除去物が貯留されたときに、前記フロート弁7のフロート70が除去物によって押し上げられるように、貯留量を設定した大きさの容器によって構成してある。
【0038】
〔他の実施形態の1〕
上記の実施形態では、起風部3として、起風ケース21の内部に、単一の電動モータ30と単一の起風ファン31とを備えた構造のものを示したが、これに限らず、例えば、図7に示すように、電動モータ30と起風ファン31との対を2組備えたもの、あるいは、それ以上の複数組を備えたものであってもよい。
この図7に示す構造のものでは、電動モータ30と起風ファン31とが、前記実施形態で説明した単一の電動モータ30や単一の起風ファン31よりは少し径方向寸法の小さいもので構成され、起風ファン31を内装する各起風室32の下面側に形成された下部開口32a同士の間で、前記底板21Aの下面側に仕切壁38を設けてあり、各起風ファン31毎に形成された独立した起風室32に対して個々に前記フィルターエレメント49を通過した吸引流体を導くように形成してある点で前記実施形態のものと異なっている。
電動モータ30と起風ファン31との対が3組以上の複数組であれば、図示しないが、起風室32も組数に対応させた数だけ形成し、各組毎の起風室32に向けて、フィルターエレメント49を通過した吸引流体が導かれるように仕切壁38を設ければよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0039】
〔他の実施形態の2〕
上記の実施形態では、吸引流体を旋回流動させる吸引室40を一箇所にのみ設けた構造のものを例示したが、これに限らず、吸引室40を複数箇所に設け、処理対象の吸引流体を前段の吸引室40から後段の吸引室40へと順に移行させて段階的に処理するように構成してもよい。
尚、この場合、吸引室40としては、同じ構造の吸引室40を多段に用いてもよいが、吸引流体に含まれる処理対象物に対する処理性能が異なるように、つまり、例えば水分を多く含む処理物に対する処理能力が高い吸引室40とか、質量の小さい微粉末に対する処理能力が高いなど、処理機能の異なる種類の吸引室40を組み合わせて用いるようにしてもよい。
その他の構成は前記実施形態で示した構造と同様である。
【0040】
〔他の実施形態の3〕
上記の実施形態では、除去物ガイド部43として、周壁部41の下端から水平方向の外方へ広がる下向き面43aと、その下向き面43aの外方側端部に位置する円筒状の内周面43bと、その内周面43bの下端から半径方向内方側へ延出されて内方側ほど下方側へ傾斜した円環状の傾斜面43cとを備えた構造のものを示したが、このような構造に限らず、例えば、図8(a)に示すように、周壁部41の下端から水平方向の外方へ広がる下向き面43aと、その下向き面43aの外方側端部に位置する円筒状の内周面43bとから構成した構造のもの、あるいは、図8(b)に示すように、周壁部41の下端から水平方向の外方へ広がる下向き面43aと、その下向き面43aの外方側端部に位置する円筒状の内周面43bとを備えるとともに、前記円筒状の内周面43bから筒内方側へ水平に延出された鍔部43eとから構成したものであってもよい。
尚、除去物ガイド部43の前記下向き面43aは、必ずしも水平方向に沿う面である必要はないが、前記周壁部41の延長線41bよりも半径方向外方に位置するように設けることが望ましい。このように前記延長線41bの外側に位置するように形成することによって、吸引室40内の旋回流とともに旋回する除去物が旋回流から外側へ飛び出し易くなる傾向を持つ。
その他の構成は前記実施形態で示した構造と同様である。
【0041】
〔他の実施形態の4〕
除塵部4として、上記の実施形態では、吸引室40の他に、除去物ガイド部43や、排気ガイド室44、及び堰き止め部材46を備えたものであるが、このような構造に限らず、除去物ガイド部43や、排気ガイド室44、あるいは堰き止め部材46のいずれか、もしくはその全部を省いたり、代替え可能な他の手段を用いたものであってもよい。除去物ガイド部43を省いた場合は、吸引室40の下端側に直接的に貯留容器50が設置される、あるいは、下部よりも上部が小径となるテーパ状に形成された吸引室40を構成する周壁部ではない、例えば直管状の壁部を存在させて、その下側に貯留容器50が設置される構造などであってもよい。
その他の構成は前記実施形態で示した構造と同様である。
【0042】
〔他の実施形態の5〕
サイクロン除塵装置2としては、上記の実施形態で示したような、起風部3、除塵部4、及び貯留部5が一体に構成されたものに限らず、各部を別々に構成して、別々の箇所に配設して吸引流体の流路で接続することによって用いるようにしても良い。
その他の構成は前記実施形態で示した構造と同様である。
【0043】
〔他の実施形態の6〕
貯留部5としては、上記の実施形態で示したような貯留容器50を備えたものに限らず、例えば、吸引室40の排出口から、工作機械等が備える塵埃貯留箇所を貯留部5として利用し、そこに直接に落下させるようにしても良い。
その他の構成は前記実施形態で示した構造と同様である。
【0044】
〔他の実施形態の7〕
上記の実施形態における起風部3での排気方向の切換は、必ずしも必要なものではなく、全周方向、もしくは一方向のいずれか一方のみの排気形態を備えるものであってもよい。
その他の構成は前記実施形態で示した構造と同様である。
【0045】
〔他の実施形態の8〕
前記底板48としては、上記の実施形態で示したような中空状の立体構造のものに限らず、単なる扁平な板状体によって構成してもよい。この場合、それぞれの吸引室40から、貯留容器50に除去物が落下することを許容する通路を確保できるように、その径方向寸法、あるいは、高さ位置を設定すればよい。
尚、これらの底板48は、除去物回収効率を向上させるために用いるのが望ましいが必ずしも必要不可欠なものではなく、省略することは可能である。
その他の構成は前記実施形態で示した構造と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のサイクロン除塵装置2は、実施形態で示したような掃除機に適用したものに限らず、据え付け型の集塵機等、各種の除塵対象機器に適用することも可能である。この場合、サイクロン除塵装置2の貯留部5や起風部3、及び除塵部4が、それぞれ別体で構成されて別々の位置に設けられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
5 貯留部
25 吸気口
40 吸引室
41 周壁部
41a 排出口
42a 排気口
43 除去物ガイド部
46 堰き止め部材
48 底板
50 貯留容器
70 フロート
72 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引流体を旋回流動させる吸引室に対して、処理対象の吸引流体を導入する吸気口と、導入された吸引流体から分離された除去物を吸引室外へ排出するための排出口と、除去物分離後の吸引流体を前記吸引室外へ吸引導出する排気口とを連通させたサイクロン除塵装置であって、
前記吸引室を、前記排気口が上端側に形成され、前記吸気口が周壁部に接続され、その周壁部の下端開口によって前記排出口を構成するとともに、前記周壁部を下部よりも上部が小径となるテーパ状に形成し、
前記排出口の下方に除去物回収用の貯留部を設けてあることを特徴とするサイクロン除塵装置。
【請求項2】
前記排出口の下端側に、その排出口よりも大径で除去物が前記吸引室内における旋回流の旋回半径よりも外側へ流動することを許容する除去物ガイド部を設けてある請求項1記載のサイクロン除塵装置。
【請求項3】
前記吸引室の上部に、該吸引室の内面を伝う除去物の吸引室よりも上方側への流動を制限するように、上端が下端側よりも小径となるテーパ状の堰き止め部材の上端側を支持させてある請求項1又は2記載のサイクロン除塵装置。
【請求項4】
前記吸引室の排出口部分に対向させて、その排出口部分の口径よりも小径の底板を設けてある請求項1〜3の何れか一項記載のサイクロン除塵装置。
【請求項5】
前記貯留部としての貯留容器を備え、その貯留容器内に貯留された除去物によって押し上げられるフロートと、そのフロートの所定高さ位置への押し上げに伴って、前記吸引室を出た吸引流体の上方側への排気流路を閉塞する弁体とを備えた請求項1〜4の何れか一項記載のサイクロン除塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−71018(P2013−71018A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209472(P2011−209472)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(594122210)株式会社赤松電機製作所 (6)
【Fターム(参考)】