説明

サイドマッドガードの取付構造

【課題】ボディの取付座が、位置ずれしても、意匠性を低下させるような本体部の変形の発生を抑えて、ボディに取り付けることができるサイドマッドガードの取付構造の提供
【解決手段】サイドマッドガード20は、本体部21と、本体部の下縁21bから、インテグラルヒンジからなるヒンジ部32を間にして、ボディ1の底面6b側に延びる固定部34と、を備える。マッドガードは、ボディへの取付時、本体部の上縁21a側を、ボディの側面6a側に固着させ、また、リベット12を、貫通孔43aを経て、取付孔8に締結して、各締結座42を対応する取付座7に固定させて、ボディに取り付ける。固定部は、各取付座に締結される締結座ごとに、前後方向に分割された複数の取付脚部35から構成され、少なくとも一つの取付脚部41が、インテグラルヒンジからなる二つの補助ヒンジ部45,46を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のボディ側面の下縁側を覆い可能な合成樹脂製のサイドマッドガードをボディに取り付けるサイドマッドガードの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドマッドガードは、合成樹脂製として、車両のボディの側面における下縁側を覆い可能として、前後方向に延びる本体部と、本体部の下縁側からボディ側に延びる固定部と、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。そして、固定部は、本体部との間に、インテグラルヒンジからなるヒンジ部を間にして、配設され、本体部から離れる先端側に、締結座を備えていた。また、ボディの底面側には、前後方向に沿って配設されて、それぞれ、取付孔を有した取付座が、複数配設されていた。そのため、サイドマッドガードの締結座は、複数の取付座に対応して、配設され、そして、それぞれ、各取付座に締結されるねじ等の取付手段を挿通させるための貫通孔を備えていた。
【0003】
このサイドマッドガードは、ボディへの取付時、本体部の上縁側を、ボディの側面側に両面テープ等を利用して固着させて、各締結座を対応する取付座に対して下方側から当接させるとともに、ねじ等の取付手段を、貫通孔を経て、取付孔に締結して、各締結座を対応する取付座に固定させることにより、ボディに取り付けていた。
【特許文献1】特開2005−59811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の取付構造において、サイドマッドガードの各締結座を固定させるボディ側の取付座が、ボディを構成する各種パネルの相互の組付誤差により、左右方向や上下方向等に沿って、所定位置からずれて配置される場合がある。
【0005】
この場合、固定部の各締結座の全てを、ヒンジ部を撓ませて、対応する取付座に当接させつつ、取付手段により、対応する取付座に固定させると、位置ずれした取付部に締結させた締結座近傍のヒンジ部が、本体部の下縁側を、ずれ方向に移動させることから、本体部がねじれるように変形してしまう。その結果、本体部は、上縁側が傾斜して、本体部の上縁側の一部が、ボディの側面から離れて、ボディとの間に大きな隙間を作ってしまう場合があり、サイドマッドカード自体やその周囲の意匠性を低下させてしまう。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ボディの取付座が、位置ずれしても、意匠性を低下させるような本体部の変形の発生を抑えて、ボディに取り付けることができるサイドマッドガードの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る取付構造は、サイドマッドガードが、合成樹脂製として、車両のボディの側面における下縁側を覆い可能に、前後方向に延びる本体部と、本体部の下縁から、インテグラルヒンジからなるヒンジ部を間にして、ボディの底面側に延びる固定部と、を備えて構成され、
ボディが、底面側に、取付孔を有した取付座を、前後方向に沿って複数配設させて構成され、
固定部が、本体部から離れる先端側に、各取付座にそれぞれ固定させる締結座を備え、
各締結座が、取付孔に締結される取付手段を挿通させるための貫通孔を備え、
サイドマッドガードのボディへの取付時、本体部の上縁側を、ボディの側面側に固着させるとともに、各締結座を対応する取付座に下方から当接させつつ、貫通孔を経て取付手段を取付孔に締結し、各締結座を、対応する取付座に固定させることによって、サイドマッドガードをボディに取り付けるサイドマッドガードの取付構造であって、
固定部が、各取付座に締結される所定数の締結座ごとに、前後方向に分割された複数の取付脚部から構成され、
取付脚部の少なくとも一つが、ヒンジ部のインテグラルヒンジと平行なインテグラルヒンジを設けてなる補助ヒンジ部を、二つ以上配設させていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る取付構造では、ボディへの取付時、本体部の上縁側を、ボディの側面側に固着させて、ヒンジ部を撓ませつつ、各取付脚部の締結座を、対応する取付座に対して下方側から当接させるとともに、取付手段を、貫通孔を経て、取付孔に締結して、各締結座を対応する取付座に固定させれば、サイドマッドガードをボディに取り付けることができる。この時、補助ヒンジ部を備えた取付脚部(多ヒンジ脚部とする)を取り付ける取付座が、適正位置から左右方向や上下方向に位置ずれしていても、多ヒンジ脚部には、補助ヒンジ部が二つ以上配設されている。そのため、この多ヒンジ脚部では、締結座を、平行移動させて、位置ずれした取付座に当接させて、固定することができる。この時、多ヒンジ脚部は、位置ずれしていない場合の取付座への固定位置から、単に、平行移動させて、対応する位置ずれした取付座に固定させるだけであり、多ヒンジ脚部における本体部から締結座までの距離が、取付座の位置ずれに対応して調整されるだけで、変形させるように本体部を移動させない。
【0009】
したがって、本発明に係るサイドマッドガードの取付構造では、ボディの取付座が、位置ずれしていても、意匠性を低下させるような本体部の変形を抑えて、サイドマッドガードをボディに取り付けることができる。
【0010】
そして、本発明に係る取付構造では、多ヒンジ脚部を、位置ずれし易い取付座に対応させて、サイドマッドガードに配設させておけば、取付座の位置ずれの有無に拘わらず、隙間の発生を抑えて、車両毎のボディに対して、サイドマッドガードを見栄え良く取り付けることができる。
【0011】
この場合、例えば、サイドマッドガードが、フェンダーパネルと、車両のドアの下方に配置されるとともに、フェンダーパネルと別体としてフェンダーパネルに連なって配置されるドア下パネルと、を覆うように配設される場合には、取付脚部を、フェンダーパネルとドア下パネルとにそれぞれ配設された取付座に対応して、複数配設させるとともに、
フェンダーパネルに取り付けられる取付脚部を、補助ヒンジ部を備えた多ヒンジ脚部とすることが望ましい。
【0012】
このような構成では、フェンダーパネルが、ドア下パネルと別体とされており、ドア下パネルに対して、組付誤差により、左右方向に沿って、所定位置からずれて、配置される場合がある。しかし、フェンダーパネルの取付座が、位置ずれしても、その取付座に固定される締結座は、多ヒンジ脚部の先端に設けられている。そのため、サイドマッドガードは、多ヒンジ脚部の締結座を、位置ずれしていない場合の取付座への固定位置から、単に、平行移動させて、対応する位置ずれした取付座に、固定させるだけで、変形させるような影響を本体部に与えずに、フェンダーパネルからドア下パネルにわたるエリアに、取り付けることができる。
【0013】
この場合、サイドマッドガードの本体部が、前後方向の端部に、車両の左右方向に沿って延びるとともに、フェンダーパネルの底面側に連なるタイヤハウス側に延びる端面壁を備えて、端面壁をタイヤハウスに取付可能な取付手段が、端面壁を挿通してタイヤハウスの取付孔に締結される構成としていれば、取付手段を挿通させるための端面壁に設けられる挿通孔は、左右方向に沿って延びる長穴形状とすることが望ましい。
【0014】
すなわち、フェンダーパネルの取付座が左右方向に沿って位置ずれする場合には、タイヤハウスも、フェンダーパネルの取付座と一体的に左右方向に沿って位置ずれし易い。そしてこの場合、サイドマッドガードにおけるフェンダーパネルの側面を覆う本体部の部位は、多ヒンジ脚部により、ドア下パネルの側面を覆う本体部の部位に連なって、左右方向に位置ずれせずに配置されている。そのため、端面壁の挿通孔が、左右方向に延びる長穴形状であれば、左右方向に位置ずれしたタイヤハウスの取付孔に締結される取付手段は、その左右方向に延びた長穴形状の中で左右にずらしつつ、挿通孔を挿通させて、取付孔に締結することができる。その結果、サイドマッドガードは、本体部における端面壁を、タイヤハウスの取付孔に締結される取付手段を利用して、安定して取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の取付構造に使用するサイドマッドガード(以下、マッドガードとする)20は、図1〜3に示すように、フィラー入りのポリプロピン等の合成樹脂製として、車両Vのボディ1の側面における下縁側を覆い可能として、前後方向に延びる本体部21と、ボディ1の底面側に延びる固定部34と、を備えて構成されている。
【0016】
マッドガード20の本体部21が覆うボディ1の部位は、ドアD,Dの下方に配置されるドア下パネルとしてのサイドパネル2と、車両Vの前側のフェンダーパネル6としている。そして、サイドパネル2とフェンダーパネル6では、図2,3に示すように、本体部21に覆われる下縁側の側面2a,6aが、斜め下向きに膨らむ円弧状として、底面2b,6b側に連なっている。また、サイドパネル2の底面2bとフェンダーパネル6の底面6bには、前後方向に沿って、本体部21の固定部34を取り付けるための複数の取付座3,7が形成されている。各取付座3,7は、取付手段としての拡張式のリベット12を締結させる取付孔4,8を配設させている。各取付座3,7は、その下面(座面)3a,7aを、車内側から車外側にかけて斜め上向きとするように、傾斜して配設され(水平方向からの角度θを約15°としている)、そして、各取付孔4,8は、上方から下方に向けて、車外側にずれるように、斜め下向きの軸方向として、取付座3,7を貫通して配設されている。また、サイドパネル2の取付座3は、前後方向に離れた四箇所に配設されている。フェンダーパネル6の取付座7は、一つとしている。
【0017】
なお、フェンダーパネル6は、サイドパネル2と別体とされており、サイドパネル2に対して、組付誤差により、左右方向に沿ってずれる虞れがあり、特に、フェンダーパネル6の取付座7付近が、サイドパネル2の取付座3の配置位置に対応する所定位置から、左右方向に沿ってずれて配置され易い。
【0018】
また、リベット12は、鍔部13aを備えた筒部13にねじ14を螺着させることにより、筒部13が取付孔4,8の裏面側で拡径して、取付座3,7に対して、固定部34の各取付脚部35における締結座42,52を、固定することとなる。
【0019】
また、フェンダーパネル6のタイヤハウス10(図1参照)側には、図5に示すように、ねじ孔からなる取付孔10aが、形成されている。この取付孔10aには、マッドガード20の本体部21における前側の端面壁26を取り付けるための連結手段としてのねじ16が、締結される。
【0020】
さらに、後方のタイヤハウス11(図1参照)にも、マッドガード20の本体部21における後側の端面壁28を取り付けるための図示しない取付孔が形成されいている。
【0021】
マッドガード20の本体部21は、図2〜5に示すように、サイドパネル2とフェンダーパネル6との側面2a,6aの車外側を覆う側面壁23と、側面壁23の下端から車内側に屈曲して、サイドパネル2とフェンダーパネル6との底面2b,6bの斜め下の車外側を覆う底面壁25と、を備えている。さらに、本体部21の前後方向の両端部(前縁21cと後縁21d)には、車両の左右方向に沿ってタイヤハウス10,11側に延びる端面壁26,28が形成されている。すなわち、この本体部21は、側面壁23、底面壁25、及び、前後の端面壁26,28によって、ボディ1側に開口部を有するような略箱形状としている。そして、本体部21の上縁21aは、前後の両端部を除いて、下方に凹む凹部22を設けて構成されている。すなわち、側面壁23の前後方向の中央部23aは、前縁部23bや後縁部23cに比べて、高さを低くしている。前縁部23bは、側面壁23のフェンダーパネル6を覆っており、後縁部23cは、後側のタイヤハウス11近傍のサイドパネル2の部位を覆っている(図1参照)。
【0022】
また、側面壁23の上端、すなわち、本体部21の上縁21a側には、サイドパネル2やフェンダーパネル6の側面2a,6a側に突出して、両面テープTを利用して、側面2a,6aに固着される接合部24が形成されている(図2,3参照)。
【0023】
さらに、前後の端面壁26,28には、図4に示すように、それぞれ、タイヤハウス10,11に取り付けるための取付手段としてのねじ16を挿通させる挿通孔27,29が、形成されている。前側の端面壁26の挿通孔27は、図5,6に示すように、左右方向の延びる長円形状に形成されている。
【0024】
マッドガード20の固定部34は、図2〜5に示すように、先端側に、ボディ1側の各取付座3,7に固定するための締結座42,52が形成されている。そして、実施形態の固定部34は、各取付座3,7に締結される所定数の締結座42,52ごとに、前後方向に分割された複数の取付脚部35から構成されている。実施形態の場合には、各締結座42,52毎に分割されて、五本の取付脚部35が配設されている。さらに、これらの取付脚部35は、フェンダーパネル6側に固定される締結座42を有した1本の多ヒンジ脚部41と、サイドパネル2側に固定される締結座52を有した4本の一般脚部51と、から構成されている。
【0025】
各取付脚部35(多ヒンジ脚部41と一般脚部51)は、底面壁25の端縁25a、すなわち、本体部21の下縁21b、との間に、インテグラルヒンジからなる薄肉のヒンジ部32を設けて、先端の締結座42,52まで延びて、各取付座3,7に対して、下方側から当接可能に構成されている。各締結座42,52には、各取付座3,7の取付孔4,8に締結されるリベット12を挿通させるための貫通孔43a,53aが貫通されて形成されている。ヒンジ部32は、インテグラルヒンジの薄肉を形成する凹溝32aを、上面側に設けて、前後方向に沿って配設させている。そのため、各取付脚部35は、先端の締結座42,52側を、ヒンジ部32を中心として、上下方向に回動可能に、構成されている。
【0026】
そして、フェンダーパネル6の取付座7に固定される締結座42を有した多ヒンジ脚部41には、ヒンジ部32のインテグラルヒンジと平行なインテグラルヒンジを設けてなる二つの補助ヒンジ部45,46を、配設させている。すなわち、補助ヒンジ部45,46は、インテグラルヒンジを構成される凹溝45a,46aを前後方向に沿わせるように、配設させて構成され、そして、多ヒンジ脚部41のヒンジ部32から先端までの部位を略三等分に分割している。そのため、この多ヒンジ脚部41では、ヒンジ部32と補助ヒンジ部46との間のリンク片48、及び、補助ヒンジ部45,46間のリンク片47と、補助ヒンジ部45から先端側の締結座42とが、ぞれぞれ、ヒンジ部32,45,46を回動中心として、上下方向に回動可能となって、締結座42を、本体部21やヒンジ部32を移動させたり傾斜させたりすることなく、平行移動させることができる。
【0027】
なお、各締結座42,52は、リベット12を挿通させる貫通孔43a,53aを備えた略長方形板状の当て板部43,53と、当て板部43,53の縁から屈曲されて本体部21側に延びる支持板部44,54と、を備えて構成されている。そして、多ヒンジ脚部41の支持板部44は、補助ヒンジ部45までの長さに分断され、一般脚部51では、ヒンジ部32まで長く延びている。
【0028】
また、取付座3,7に締結座42,52を固定してた状態で、本体部21がボディ1側の取付座3,7から安定して支持されるように、ヒンジ部32,45,46は、撓み時の姿勢を維持可能な形状保持性を有するように、肉厚を設定されている。
【0029】
このマッドガード20をボディ1に取り付ける際には、作業者は、本体部21の上縁21a側の接合部24を、両面テープTを利用して、ボディ1のサイドパネル2やフェンダーパネル6の側面2a,6a側に固着させる。また、作業者は、ヒンジ部32,45,46を撓ませつつ、各取付脚部35の締結座42,52を、対応する取付座3,7に対して下方側から当接させ、さらに、リベット12を、貫通孔43a,53aを経て、取付孔4,8に挿入させ、ねじ14を締め付けて、各締結座42,52を対応する取付座3,7に固定させ、さらにまた、ねじ16を使用して、端面壁26,28をタイヤハウス10,11に固定すれば、マッドガード20をボディ1に取り付けることができる(図2,3参照)。
【0030】
この時、補助ヒンジ部45,46を備えた多ヒンジ脚部41は、図6のAに示すように、取付座7が、適正な位置PAから左右方向に沿って、車外側方向にずれた位置PBに位置ずれしていたり、図6のBに示すように、取付座7が、適正な位置PAから左右方向に沿って、車内側方向にずれた位置PCに位置ずれしていても(図6のA,Bでは、各部材にもずれる前とずれた後に位置PA,PB,PCの符号を付している)、多ヒンジ脚部41には、二つの補助ヒンジ部45,46が配設されている。そのため、この多ヒンジ脚部41では、締結座42を、平行移動させて、位置ずれした取付座7(PB,PC)に当接させて、固定することができる。この時、多ヒンジ脚部41は、位置ずれしていない場合の取付座7(PA)への固定位置から、単に、平行移動させて、位置PB,PCにずれた取付座7に固定させるだけであり、多ヒンジ脚部41における本体部21から締結座42までの距離LAが、取付座7の位置ずれに対応して、距離LB,LCに調整されるだけで、変形させるように本体部21を移動させない。
【0031】
なお、図2の一点鎖線に示すように、ヒンジ部32から取付座7まで、補助ヒンジ部45,46を設けない状態の取付脚部36を使用する場合、図6のA,Bの一点鎖線に示すように(符号の末尾にX,Yを付してある)、ヒンジ部32を押したり引いたりして、本体部21(X,Y)の底面壁25や側面壁23を傾斜させたり位置ずれさせたりして、本体部21(X,Y)を変形させることとなって、意匠性を低下させてしまう。
【0032】
したがって、実施形態のマッドガード20の取付構造では、ボディ1の取付座7が、位置ずれしていても、意匠性を低下させるような本体部21の変形を抑えて、マッドガード20をボディ1に取り付けることができる。
【0033】
そして、実施形態の取付構造では、多ヒンジ脚部41を、位置ずれし易いフェンダーパネル6の取付座7に対応させて、マッドガード20に配設させておけば、取付座7の位置ずれの有無に拘わらず、隙間の発生を抑えて、車両毎のボディ1に対して、マッドガード20を見栄え良く取り付けることができる。
【0034】
すなわち、実施形態の場合、固定部34の取付脚部35を、フェンダーパネル6とドア下パネルとしてのサイドパネル2とにそれぞれ配設された取付座7,3に対応して、複数配設させて、フェンダーパネル6に取り付けられる取付脚部35が、補助ヒンジ部45,46を備えた多ヒンジ脚部41としている。そのため、フェンダーパネル6の取付座7が、サイドパネル2の取付座3に対して、組付誤差により、左右方向に沿って、所定位置からずれて、配置されていても、多ヒンジ脚部41の締結座42を、位置ずれしていない場合の取付座7への固定位置(適正な位置PA、図6のA,Bの二点鎖線参照)から、単に、平行移動させて、位置PB,PCにずれた取付座7に固定させるだけで、作業者は、変形させるような影響を本体部21に与えずに、実施形態の取付構造では、フェンダーパネル6からサイドパネル2にわたるエリアに、マッドガード20を取り付けることができる。
【0035】
また、実施形態では、マッドガード20の本体部21が、前端に、車両の左右方向に沿ってタイヤハウス10側に延びる端面壁26を備えて、端面壁26をタイヤハウス10に取付可能なねじ16が、端面壁26を挿通してタイヤハウス10の取付孔10aに締結される構成としている。しかし、取付手段としてのねじ16を挿通させるための端面壁26に設けられる挿通孔27が、左右方向に沿って延びる長穴形状としている。
【0036】
すなわち、フェンダーパネル6の取付座7が左右方向に沿って位置ずれしていれば、タイヤハウス10も、取付座7と一体的に左右方向に沿って位置ずれし易い。しかし、マッドガード20におけるフェンダーパネル6の側面6aを覆う本体部21の部位は、多ヒンジ脚部41により、サイドパネル2の側面2aを覆う本体部21の部位に連なって、左右方向に位置ずれせずに配置されている。
【0037】
この時、端面壁26の挿通孔27が、左右方向に延びる長穴形状であれば、図6のA,Bに示すように、左右方向に位置ずれしたタイヤハウス10の取付孔10aに締結されるねじ16は、その左右方向に延びた長穴形状の中で左右にずらしつつ、挿通孔27を挿通させて、取付孔10aに締結することができる。その結果、マッドガード20は、本体部21における端面壁26を、タイヤハウス10の取付孔10aに締結されるねじ16を利用して、安定して取り付けることができる。
【0038】
なお、実施形態では、多ヒンジ脚部41が、フェンダーパネル6の取付座7の左右方向の位置ずれに対して対処できることを説明した。しかし、多ヒンジ脚部41は、締結座42が、ヒンジ部32や本体部21を変形させるように移動させずに、平行移動できるため、締結座42を平行移動できる範囲内で、取付座7の左右方向の位置ずれのみならず、上下方向の位置ずれ、さらに、左右と上下の複合する位置ずれに、対処可能である。
【0039】
また、実施形態の多ヒンジ脚部41では、二つの補助ヒンジ部45,46を設けた場合を示したが、二つ以上の三つ、あるいは、四つ以上設けてもよい。但し、取付脚部35としての多ヒンジ脚部41では、取付座7に固定されて、安定した姿勢で本体部21を支持する必要もあるため、多くの補助ヒンジ部を設ければ、多ヒンジ脚部41が全長にわたって撓み易くなって、本体部21に対する取付座7からの支持が不安定なることから、極力、補助ヒンジ部を少なくする必要もあり、補助ヒンジ部は二個だけ設けることが望ましい場合もある。
【0040】
さらに、マッドガード20に設ける多ヒンジ脚部41は、実施形態のように、1本だけ設ける構成でもよいが、二本等の複数本としたり、あるいは、全ての取付脚部を多ヒンジ脚部41としてもよい。
【0041】
さらにまた、実施形態では、ドア下パネルとして、サイドパネル2を例示したが、ロッカパネルやサイドシル等のボディ1側のパネルに取り付けられるマッドガードの取付構造に、本発明は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態のサイドマッドガードがボディに取り付けられた状態の車両の概略側面図である。
【図2】実施形態のサイドマッドガードの取付脚部がフェンダーパネルに固定されている状態の概略縦断面図であり、図1のII−II部位に対応する。
【図3】実施形態のサイドマッドガードの取付脚部がサイドパネルに固定されている状態の概略縦断面図であり、図1のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態のサイドマッドガードの斜視図である。
【図5】実施形態のサイドマッドガードにおける補助ヒンジ部を備えた取付脚部の部分拡大斜視図である。
【図6】実施形態のサイドマッドガードにおける補助ヒンジ部を備えた取付脚部が、位置ずれされた取付座に固定される状態をそれぞれ示す概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…ボディ、
2…(ドア下パネル)サイドパネル、
2a,6a…側面、
2b,6b…底面、
3,7…取付座、
4,8…取付孔、
6…フェンダーパネル、
10…タイヤハウス、
10a…(タイヤハウスの)取付孔、
12…(締結座の取付手段)リベット、
16…(端面壁の取付手段)ねじ、
20…サイドマッドガード、
21…本体部、
26…端面壁、
27…挿通孔、
32…ヒンジ部、
34…固定部、
35…取付脚部(41…多ヒンジ脚部、51…一般脚部)、
42,52…締結座、
43a,53a…貫通孔、
45,46…補助ヒンジ部、
D…ドア、
V…車両。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドマッドガードが、合成樹脂製として、車両のボディの側面における下縁側を覆い可能に、前後方向に延びる本体部と、該本体部の下縁から、インテグラルヒンジからなるヒンジ部を間にして、前記ボディの底面側に延びる固定部と、を備えて構成され、
前記ボディが、前記底面側に、取付孔を有した取付座を、前後方向に沿って複数配設させて構成され、
前記固定部が、前記本体部から離れる先端側に、前記各取付座にそれぞれ固定させる締結座を備え、
該各締結座が、前記取付孔に締結される取付手段を挿通させるための貫通孔を備え、
前記サイドマッドガードの前記ボディへの取付時、前記本体部の上縁側を、前記ボディの側面側に固着させるとともに、前記各締結座を対応する前記取付座に下方から当接させつつ、前記貫通孔を経て前記取付手段を前記取付孔に締結し、前記各締結座を、対応する前記取付座に固定させることによって、前記サイドマッドガードを前記ボディに取り付けるサイドマッドガードの取付構造であって、
前記固定部が、前記各取付座に締結される所定数の前記締結座ごとに、前後方向に分割された複数の取付脚部から構成され、
前記取付脚部の少なくとも一つが、前記ヒンジ部のインテグラルヒンジと平行なインテグラルヒンジを設けてなる補助ヒンジ部を、二つ以上配設させていることを特徴とするサイドマッドガードの取付構造。
【請求項2】
前記サイドマッドガードが、フェンダーパネルと、車両のドアの下方に配置されるとともに、前記フェンダーパネルと別体として前記フェンダーパネルに連なって配置されるドア下パネルと、を覆うように配設され、
前記取付脚部が、前記フェンダーパネルと前記ドア下パネルとにそれぞれ配設された前記取付座に対応して、複数配設されるとともに、
前記フェンダーパネルに取り付けられる前記取付脚部が、前記補助ヒンジ部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のサイドマッドガードの取付構造。
【請求項3】
前記サイドマッドガードの前記本体部が、前後方向の端部に、車両の左右方向に沿って延びるとともに、前記フェンダーパネルの底面側に連なるタイヤハウス側に延びる端面壁を備え、
前記端面壁を前記タイヤハウスに取付可能な取付手段が、前記端面壁を挿通して前記タイヤハウスの取付孔に締結される構成として、
前記取付手段を挿通させるための前記端面壁に設けられる挿通孔が、左右方向に沿って延びる長穴形状としていることを特徴とする請求項2に記載のサイドマッドガードの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−83250(P2010−83250A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252771(P2008−252771)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】