説明

サイドメンバ及びその製造方法

【課題】その長手方向両端部にキックアップ部(又は、キックダウン部)が形成される場合であっても材料歩留まりを低減できるサイドメンバを提供する。
【解決手段】長辺82の長手方向中央点82aを中心にして平板状部材80を180°回転させることにより、図2(b)の二点鎖線で示すように平板状部材80’が得られる。平板状部材80の長辺82と平板状部材80’の長辺82’は、長手方向中央点82a(82’a)に関して点対称となっているので、図2(c)に示すように、長辺82と長辺82’は一致する(重なる)。従って、1枚の鋼板100から複数の平板状部材80を切り出す場合、図2(c)に示すように、2枚の平板状部材80,80’の長辺同士82,82’を接触させた(一致させた)ものを一組として、この一組を連続して鋼板から同時に切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックやバスなどの車両のフレームに使用されるサイドメンバ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスなどのフレーム(車枠)としては、一般に、はしご形フレームと呼ばれるものが使用されている。このはしご形フレームは通常、所定間隔離れて車輛の長さ方向に延びる2本のサイドメンバ(縦材)と、このサイドメンバに長手方向の両端部がリベットや溶接で固定された複数本のクロスメンバ(横材)とから構成されている。
【0003】
サイドメンバには、その長手方向一端部(又は両端部)が長手方向中央部よりも高くなったキックアップ部を備えたタイプや、その長手方向一端部(又は両端部)が長手方向中央部よりも低くなったキックダウン部を備えたタイプのものがある。キックアップ部を備えたサイドメンバ及びその製造方法について、図7と図8を参照して説明する。
【0004】
図7は、キックアップ部を備えたサイドメンバの一例を示す斜視図である。図8は、図7に示すサイドメンバを製造する際の一工程を示す斜視図であり、展開状態のサイドメンバを鋼板から切り出す工程を示す。
【0005】
サイドメンバ10は横断面がコ字状のものであり、その長手方向(矢印A方向であり、車両の前後方向に相当する)の両端部には、長手方向中央部12よりも高くなったキックアップ部14,16が形成されている。キックアップ部14は、長手方向中央部12の長手方向一端12aから上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部14aと、キックアップ傾斜部14aの上端から直線状に延びるキックアップ直線部14bとから構成されている。キックアップ部16も同様に、長手方向中央部12の長手方向一端12bから上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部16aと、キックアップ傾斜部16aの上端から直線状に延びるキックアップ直線部16bとから構成されている。
【0006】
上記のような形状のサイドメンバ10の材料取りに際しては、図8に示すように、サイドメンバ10の複数の展開形状を1枚の大板20から切断するのが一般的である。この場合、図8の斜線で示した部分はスクラップとして廃却される材料となる。1枚の大板20から切断できる展開形状の枚数には限度があるので、特に大板20の一方の長辺の長手方向(矢印A方向)中央部のスクラップおよび他方の長辺の長手方向(矢印A方向)両端部のスクラップが歩留りに及ぼす影響を無視できない。なお、キックアップ部14,16に代えてキックダウン部が形成されるサイドメンバであっても、上記の歩留まりに関しては同様である。
【0007】
上記のような大板20の長手方向中央部におけるスクラップをなくし、材料取りに際しての歩留りを向上する従来の技術を図9を参照して説明する。図9は、材料取りに際しての歩留りを向上する従来の技術を示す模式図である。
【0008】
図9に示すように、キックダウン部3をもつサイドメンバ1a’,1b’の材料取りに際しては、キックダウン部3の下面形状を形取りした2つのブランク1a,1bを相互に180度向きを変えて切断し、その後、キックダウン部3の上面形状とテーパ部4の形状を形取りする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【0009】
この技術によれば、前端のキックダウン部3の下面形状と後端のテーパ部4の形状を相殺することにより材料歩留りを向上させている。従って、図7や図8に示すように、長手方向両端部ともにキックアップ形状を有するようなサイドメンバ10には、図9に示す技術は適用できない。
【特許文献1】特開昭62−050282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、その長手方向両端部にキックアップ部(又は、キックダウン部)が形成される場合であっても材料歩留まりを低減できるサイドメンバ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明のサイドメンバは、直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部と、該キックアップ傾斜部の上端から直線状に延びるキックアップ直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバにおいて、
(1)前記横断面コ字状部材は、前記長手方向中央部と前記キックアップ直線部とが前記キックアップ傾斜部を挟んで同じ長さの位置で分割された分割部を備えたものであり、
(2)該分割部は、前記コ字状を展開して得られる一対の長辺及び短辺をもつ平板状部材の少なくとも1つの長辺が、その長手方向中央点に関して点対称となっているものであることを特徴とするものである。
【0012】
また、上記目的を達成するための本願発明の他のサイドメンバは、直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から下方に傾斜しながら延びるキックダウン傾斜部と、該キックダウン傾斜部の下端から直線状に延びるキックダウン直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバにおいて、
(3)前記横断面コ字状部材は、前記長手方向中央部と前記キックダウン直線部とが前記キックダウン傾斜部を挟んで同じ長さの位置で分割された分割部を備えたものであり、
(4)該分割部は、前記コ字状を展開して得られる一対の長辺及び短辺をもつ平板状部材の少なくとも1つの長辺が、その長手方向中央点に関して点対称となっているものであることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、
(5)前記分割部は、前記コ字状を展開して得られる一対の長辺及び短辺をもつ平板状部材の一対の長辺それぞれが、その長手方向中央点に関して点対称となっているものであってもよい。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明のサイドメンバ製造方法は、直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部と、該キックアップ傾斜部の上端から直線状に延びるキックアップ直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
(6)前記キックアップ傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックアップ直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
(7)1つの前記平板形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記平板形状を180°回転させた他の1つの前記平板形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの平面形状部材を被加工材から同時に切断し、
(8)この切断によって得られた平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
(9)この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするものである。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明の他のサイドメンバ製造方法は、直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から下方に傾斜しながら延びるキックダウン傾斜部と、該キックダウン傾斜部の下端から直線状に延びるキックダウン直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
(10)前記キックダウン傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックダウン直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
(11)1つの前記平板形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記平板形状を180°回転させた他の1つの前記平板形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの平面形状部材を被加工材から同時に切断し、
(12)この切断によって得られた平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
(13)この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするものである。
【0016】
また、上記目的を達成するためのさらに他の本発明のサイドメンバ製造方法は、直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部と、該キックアップ傾斜部の上端から直線状に延びるキックアップ直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
(14)前記キックアップ傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックアップ直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
(15)前記キックアップ傾斜部の傾斜が緩やかになるように前記平板形状を伸ばした伸ばし形状を得、
(16)1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記伸ばし形状を180°回転させた他の1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの伸ばし形状部材を被加工材から同時に切断し、
(17)この切断によって得られた伸ばし形状部材を面内方向に曲げることにより、前記平板形状の平板形状部材を作製し、
(18)作製された平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
(19)この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするものである。
【0017】
また、上記目的を達成するための本発明のさらに他のサイドメンバ製造方法は、直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から下方に傾斜しながら延びるキックダウン傾斜部と、該キックダウン傾斜部の下端から直線状に延びるキックダウン直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
(20)前記キックダウン傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックダウン直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
(21)前記キックダウン傾斜部の傾斜が緩やかになるように前記平板形状を伸ばした伸ばし形状を得、
(22)1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記伸ばし形状を180°回転させた他の1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの伸ばし形状部材を被加工材から同時に切断し、
(23)この切断によって得られた伸ばし形状部材を面内方向に曲げることにより、前記平板形状の平板形状部材を作製し、
(24)作製された平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
(25)この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするものである。
【0018】
ここで、
(26)前記被加工材として、ロール状に巻かれたロール状鋼板を用いてもよい。
【0019】
なお、ここでいう「長辺」及び「短辺」とは、直線状の辺には限定されず、曲線状の辺も含む概念である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コ字状を展開して得られる平板状部材の少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となっているので、2つの平板状部材の点対称となっている長辺同士を一致させて同時に切断することにより、サイドメンバの長手方向両端部にキックアップ部(又は、キックダウン部)が形成される場合であっても材料歩留まりを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、トラックやバスなどの車両のフレームに使用されるサイドメンバに実現された。
【実施例1】
【0022】
図1と図2を参照して、本発明の実施例1を説明する。図1は、本発明の実施例1のサイドメンバを示す斜視図である。図2(a)は、図1に示すサイドメンバの第2分割部を示す斜視図であり、(b)は、第2分割部を展開した展開形状を示す斜視図であり、(c)は、第2分割部を展開した展開形状を材料取りする様子を示す斜視図である。
【0023】
サイドメンバ30の全体形状は、図7に示す従来のサイドメンバ10と同様であるが、サイドメンバ30の特徴は、後述するように分割されて溶接されている点に特徴がある。サイドメンバ30は、長手方向(矢印A方向)に直線状に延びる長手方向中央部40と、この長手方向中央部40の長手方向一端に連続して延びる第1キックアップ部50と、長手方向中央部40の長手方向他端に連続して延びる第2キックアップ部60とから構成されている。長手方向中央部40、第1キックアップ部50、及び第2キックアップ部60の長さや形状は、サイドメンバ30が用いられる車種によって様々である。
【0024】
第1キックアップ部50は、長手方向中央部40の長手方向一端42から上方に傾斜しながら延びる第1キックアップ傾斜部52と、この第1キックアップ傾斜部52の上端52aから直線状に延びる第1キックアップ直線部54とから構成されている。第2キックアップ部60も同様に長手方向中央部40の長手方向一端44から上方に傾斜しながら延びる第2キックアップ傾斜部62と、この第2キックアップ傾斜部62の上端62aから直線状に延びる第2キックアップ直線部64とから構成されている。上記した長手方向中央部40、第1キックアップ部50、及び第2キックアップ部60は全て、横断面がコ字状の横断面コ字状部材からなるが、後述するように、横断面がロ字状(矩形閉断面)をもつサイドメンバもある。
【0025】
上述したようにサイドメンバ30は複数の分割部を溶接して構成されている。この複数の分割部は、直線状に延びる第1分割部(図1における長さL1に相当する部分)、第3分割部(図1における長さL3に相当する部分)、及び第5分割部(図1における長さL5に相当する部分)、並びに、第1キックアップ傾斜部52とその前後の部分を含む第2分割部(図1における長さL2に相当する部分)及び第2キックアップ傾斜部62とその前後の部分を含む第4分割部(図1における長さL4に相当する部分)からなる。第1分割部は、サイドメンバ30の長手方向一端32から第1キックアップ部50の第1キックアップ直線部54の途中部分54aまでの直線状部分に相当する部分である。第2分割部は、第1キックアップ直線部54の途中部分54aから長手方向中央部40の途中部分40aまでの部分である。第3分割部は、長手方向中央部40の途中部分40aから途中部分40bまでの部分である。第4分割部は、途中部分40bから第2キックアップ直線部64の途中部分64aまでの部分である。第5分割部は、途中部分64aからサイドメンバ30の長手方向他端34までの部分である。
【0026】
本発明では、第2分割部と第4分割部(これらが本発明にいう分割部の一例である)の形状に特徴があり、両者の特徴は同じであるので、ここでは、第2分割部について説明する。
【0027】
第2分割部は、長手方向中央部40と第1キックアップ直線部54とが第1キックアップ傾斜部52を挟んで同じ長さの位置で分割されたものである。即ち、第1キックアップ直線部54の途中部分54aから第1キックアップ傾斜部52の上端52aまでの長さL6は、第1キックアップ傾斜部52の下端52bから長手方向中央部40の途中部分40aまでの長さL6に等しい。ここでは、2つの長さL6を等しいとしたが、多少の誤差があってもよく、両者は略(ほぼ)等しければ良い。このように両者を等しく(又は、略等しく)した理由は、後述するように、サイドメンバ30を鋼板から材料取りする際にスクラップを低減させて歩留りを向上させるためである。
【0028】
図2では第2分割部を符号「70」で表しており、横断面がコ字状の第2分割部70を展開することにより、一対の長辺82,84及び短辺86,88をもつ平板状部材(展開形状の部材)80が得られる。この平板状部材80を周知のプレス成型方法でプレスすることにより第2分割部70が得られる。平板状部材80の長辺82は、その長手方向中央点82aに関して点対称となっている。本実施例1では、長辺84は、長辺82とは違って、その長手方向中央点に関して対称になっていない。なお、後述する実施例2では、2つの長辺82,84がその長手方向中央点に関して対称になっている。
【0029】
長手方向中央点82aを中心にして平板状部材80を180°回転させることにより、図2(b)の二点鎖線で示すように平板状部材80’が得られる。平板状部材80の長辺82と平板状部材80’の長辺82’は、長手方向中央点82a(82’a)に関して点対称となっているので、図2(c)に示すように、長辺82と長辺82’は一致する(重なる)。従って、1枚の鋼板(又は、ロール状に巻かれたロール状鋼板)100から複数の平板状部材80を切り出す場合、図2(c)に示すように、2枚の平板状部材80,80’の長辺同士82,82’を接触させた(一致させた)ものを一組として、この一組を連続して鋼板から同時に切断する。この場合、一組の平板状部材80,80’の間には、スクラップが発生せず、一組とこの一組に隣接する他の一組の間に、長辺84’と長辺84の形状の差に起因するスクラップ(図2(c)の斜線部分)が発生する。また、一組の平板状部材80,80’の短辺86,88’はほぼ直線状となり、短辺88,86’もほぼ直線状となるので、適宜のサイズの鋼板100を使用することにより、第2分割部70の長手方向両端の外側におけるスクラップを低減でき、歩留まりが向上する。
【0030】
上記した例では、全体に亘って横断面がコ字状のサイドメンバ30を例に挙げて説明したが、図3(a)の断面図に示すように、それぞれがコ字状の横断面をもつ2つの部材110,112を溶接して一つにした矩形横断面のサイドメンバにも本発明を適用できる。また、図3(b)の横断面に示すように、コ字状の横断面をもつ部材110の隅部にL字状の横断面をもつ補強部材114,116を溶接したサイドメンバにも本発明を適用できる。
【0031】
また、上記のサイドメンバ30は2つのキックアップ部50,60をもつものとしたが、いずれか一つのキックアップ部しかもたないサイドメンバにも本発明を適用できる。さらに、図4に示すようにキックダウン部130,132が形成されたサイドメンバ120にも本発明を適用できる。
【実施例2】
【0032】
図5を参照して、本発明の実施例2を説明する。図5(a)は、2つの長辺がともにその長手方向中央点に関して点対称である第2分割部を示す斜視図であり、(b)は、(a)の第2分割部を展開した展開形状を示す斜視図であり、(c)は、(a)の第2分割部を展開した展開形状を材料取りする様子を示す斜視図である。
【0033】
図5では、図2に示す第2分割部70とほぼ同じ形状の第2分割部170を示すが、この第2分割部170の一対の長辺はいずれもその長手方向中央点に関して点対称である。横断面がコ字状の第2分割部170を展開することにより、一対の長辺182,184及び短辺186,188をもつ平板状部材(展開形状の部材)180が得られる。この平板状部材180を周知のプレス成型方法でプレスすることにより第2分割部170が得られる。なお、平板状部材180の長辺182は、その長手方向中央点182aに関して点対称となっている。同様に、長辺184は、その長手方向中央点184aに関して点対称となっている。
【0034】
長手方向中央点182aを中心にして平板状部材180を180°回転させることにより、図5(b)の二点鎖線で示すように平板状部材180’が得られる。平板状部材180の長辺182と平板状部材180’の長辺182’は、長手方向中央点182a(182’a)に関して点対称となっているので、図5(c)に示すように、長辺182と長辺182’は一致する(重なる)。同様に、平板状部材180の長辺184と平板状部材180’の長辺184’は、長手方向中央点184a(184’a)に関して点対称となっているので、図5(c)に示すように、長辺184と長辺184’は一致する(重なる)。従って、1枚の鋼板(又は、ロール状に巻かれたロール状鋼板)100から複数の平板状部材180を切り出す場合、図5(c)に示すように、2枚の平板状部材180,180’の長辺同士182,182’を一致させたものを一組として、この一組を連続して鋼板100から同時に切断する。この場合、一組の平板状部材180,180’の間には、スクラップが発生せず、一組とこの一組に隣接する他の一組の間においても、長辺184’と長辺184が一致するので、これらの間にもスクラップは発生しない。また、一組の平板状部材180,180’の短辺186,188’はほぼ直線状となり、短辺188,186’もほぼ直線状となるので、適宜のサイズの鋼板100を使用することにより、第2分割部170の長手方向両端の外側におけるスクラップをいっそう低減でき、いっそう歩留まりが向上する。なお、図3、図4の場合についても実施例1と同様である。
【実施例3】
【0035】
図6を参照して、本発明の実施例6を説明する。図6は、図5に示す第2分割部をスクラップ無しで製造できる手法を示す模式図であり、(a)は、鋼板からスクラップ無しに複数の平板状部材原材料を切断する様子を示し、(b)は、1つの平板状部材原材料をエッジベンド法によって平板状部材に加工する様子を示し、(c)は、完成した平板状部材を示し、(d)は、平板状部材をプレスして作製された第2分割部を示す。
【0036】
平板状部材180を作製するに際しては、先ず、キックアップ傾斜部152の傾斜が緩やかになるように平板状部材180を伸ばした伸ばし形状280を得る。この場合、伸ばし形状280の一対の長辺282,284はそれぞれ、その長手方向中央点282a,284aに関して点対称になるようにすると共に、一対の長辺282,284と一対の短辺286,288の成す角度(四隅の角度)は90°になるようにする。このようにして作製した伸ばし形状280の長辺282と、この伸ばし形状280を長手方向中央点282aを中心にして180°回転させた形状に相当する他の一つの伸ばし形状280’の長辺282’とを接触させた(一致させた)形状をもつ2つの伸ばし形状部材を一組とし、この一組を、図6(a)に示すように、鋼板100から同時に切断する。この切断では、一枚の鋼板100に代えて、ロール状に巻かれたロール状鋼板を使用し、上記の一組をロール材から連続して作製することにより、スクラップがほとんど発生しないように伸ばし形状280を作製できる。
【0037】
上述のようにして作製した伸ばし形状280を、図6(b)に示すように、プレス金型300を使用して面内方向に曲げる(平板状部材180に加工する)ことにより、図6(c)に示すように平板形状の平板形状部材180を作製する。その後は、実施例2と同様に平板状部材180を周知のプレス成型方法でプレスすることにより、図6(d)に示すように第2分割部170が得られる。
【0038】
上記したサイドメンバ30は、その長手方向に分割された複数の分割部を接合しているので、各分割部ごとに最適な材質や板厚を使用でき、サイドメンバ30の軽量化や更なる材料費の節減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1のサイドメンバを示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示すサイドメンバの第2分割部を示す斜視図であり、(b)は、第2分割部を展開した展開形状を示す斜視図であり、(c)は、第2分割部を展開した展開形状を材料取りする様子を示す斜視図である。
【図3】(a)は、それぞれがコ字状の横断面をもつ2つの部材を溶接して一つにした矩形横断面のサイドメンバを示す断面図であり、(b)は、コ字状の横断面をもつ部材の隅部にL字状の横断面をもつ補強部材を溶接したサイドメンバを示す断面図である。
【図4】2つのキックダウン部が形成されたサイドメンバを示す斜視図である。
【図5】(a)は、2つの長辺がともにその長手方向中央点に関して点対称である第2分割部を示す斜視図であり、(b)は、(a)の第2分割部を展開した展開形状を示す斜視図であり、(c)は、(a)の第2分割部を展開した展開形状を材料取りする様子を示す斜視図である。
【図6】(a)は、鋼板からスクラップ無しに複数の平板状部材原材料を切断する様子を示し、(b)は、1つの平板状部材原材料をエッジベンド法によって平板状部材に加工する様子を示し、(c)は、完成した平板状部材を示し、(d)は、平板状部材をプレスして作製された第2分割部を示す。
【図7】キックアップ部を備えたサイドメンバの一例を示す斜視図である。
【図8】図7に示すサイドメンバを製造する際の一工程を示す斜視図であり、展開状態のサイドメンバを鋼板から切り出す工程を示す。
【図9】材料取りに際しての歩留りを向上する従来の技術を示す模式図である。
【符号の説明】
【0040】
30 サイドメンバ
40 長手方向中央部
50 第1キックアップ部
52 第1キックアップ傾斜部
54 第1キックアップ直線部
60 第2キックアップ部
62 第2キックアップ傾斜部
64 第2キックアップ直線部
70 第2分割部
80 平板状部材
82,84 長辺
82a,82’a 長手方向中央点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部と、該キックアップ傾斜部の上端から直線状に延びるキックアップ直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバにおいて、
前記横断面コ字状部材は、
前記長手方向中央部と前記キックアップ直線部とが前記キックアップ傾斜部を挟んで同じ長さの位置で分割された分割部を備えたものであり、
該分割部は、
前記コ字状を展開して得られる一対の長辺及び短辺をもつ平板状部材の少なくとも1つの長辺が、その長手方向中央点に関して点対称となっているものであることを特徴とするサイドメンバ。
【請求項2】
直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から下方に傾斜しながら延びるキックダウン傾斜部と、該キックダウン傾斜部の下端から直線状に延びるキックダウン直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバにおいて、
前記横断面コ字状部材は、
前記長手方向中央部と前記キックダウン直線部とが前記キックダウン傾斜部を挟んで同じ長さの位置で分割された分割部を備えたものであり、
該分割部は、
前記コ字状を展開して得られる一対の長辺及び短辺をもつ平板状部材の少なくとも1つの長辺が、その長手方向中央点に関して点対称となっているものであることを特徴とするサイドメンバ。
【請求項3】
前記分割部は、
前記コ字状を展開して得られる一対の長辺及び短辺をもつ平板状部材の一対の長辺それぞれが、その長手方向中央点に関して点対称となっているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のサイドメンバ。
【請求項4】
直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部と、該キックアップ傾斜部の上端から直線状に延びるキックアップ直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
前記キックアップ傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックアップ直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
1つの前記平板形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記平板形状を180°回転させた他の1つの前記平板形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの平面形状部材を被加工材から同時に切断し、
この切断によって得られた平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするサイドメンバ製造方法。
【請求項5】
直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から下方に傾斜しながら延びるキックダウン傾斜部と、該キックダウン傾斜部の下端から直線状に延びるキックダウン直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
前記キックダウン傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックダウン直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
1つの前記平板形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記平板形状を180°回転させた他の1つの前記平板形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの平面形状部材を被加工材から同時に切断し、
この切断によって得られた平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするサイドメンバ製造方法。
【請求項6】
直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から上方に傾斜しながら延びるキックアップ傾斜部と、該キックアップ傾斜部の上端から直線状に延びるキックアップ直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
前記キックアップ傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックアップ直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
前記キックアップ傾斜部の傾斜が緩やかになるように前記平板形状を伸ばした伸ばし形状を得、
1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記伸ばし形状を180°回転させた他の1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの伸ばし形状部材を被加工材から同時に切断し、
この切断によって得られた伸ばし形状部材を面内方向に曲げることにより、前記平板形状の平板形状部材を作製し、
作製された平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするサイドメンバ製造方法。
【請求項7】
直線状に延びる長手方向中央部と、該長手方向中央部の長手方向一端から下方に傾斜しながら延びるキックダウン傾斜部と、該キックダウン傾斜部の下端から直線状に延びるキックダウン直線部とが形成されて横断面がコ字状の横断面コ字状部材を備えたサイドメンバを製造するサイドメンバ製造方法において、
前記キックダウン傾斜部を挟んで前記長手方向中央部と前記キックダウン直線部とが同じ長さになるように前記横断面コ字状部材を分割し、この分割したものを展開することにより形成される一対の長辺及び短辺をもつ平板形状であって、且つ、この一対の長辺のうち少なくとも1つの長辺がその長手方向中央点に関して点対称となる平板形状を得、
前記キックダウン傾斜部の傾斜が緩やかになるように前記平板形状を伸ばした伸ばし形状を得、
1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺と、前記長手方向中央点を中心にして他の1つの前記伸ばし形状を180°回転させた他の1つの前記伸ばし形状の1つの前記長辺とを接触させた形状をもつ2つの伸ばし形状部材を被加工材から同時に切断し、
この切断によって得られた伸ばし形状部材を面内方向に曲げることにより、前記平板形状の平板形状部材を作製し、
作製された平板形状部材をプレス加工することにより前記横断面コ字状部材の一部分を作製し、
この一部分を備えたサイドメンバを製造することを特徴とするサイドメンバ製造方法。
【請求項8】
前記被加工材として、ロール状に巻かれたロール状鋼板を用いることを特徴とする請求項4から7までのうちのいずれか一項に記載のサイドメンバ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−202768(P2009−202768A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48121(P2008−48121)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】