説明

サクランボの加工方法及びサクランボ漬の製造方法

【課題】
生サクランボを食味・食感共殆ど生の状態を維持させて長期保持し得るサクランボの加工方法を提供する。
【解決手段】
A.リンゴ果汁からリンゴ酒を造り、更に酢酸醗酵してリンゴ酢とし、このリンゴ酢を三年間熟成して本格醸造リンゴ酢とする。
B.帆立貝の貝殻を使用する。
BにAを注ぎ48時間経過後Bは溶けて溶液となり、この溶液に生サクランボを漬す。
このサクランボは殆ど生の状態を保ち長期保存しても変質しない。またこのサクランボは、塩漬、酢漬、砂糖漬としても変質しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクランボを生のままに近い色合いと食感を残して長期保存できるサクランボの加工方法、及びこの加工したサクランボを利用したサクランボ漬の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊細で可憐で人気のあるサクランボは日持ちが短く、すぐに傷んでしまう欠点があり、長期保存する場合には塩漬や瓶詰、缶詰等にする以外にはなく、この場合は生サクランボの食感や味はなく、単にサクランボの姿をしているのみで、漬物は漬け液の味しかなく、缶詰などではケーキやアイスクリームの飾り物として利用されている。
【特許文献1】特開2000−236808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため強いてサクランボの表皮や果肉の軟化を防ぐためには乳酸カルシウムやみょうばん等の食品添加物を使用して保存する方法も考えられる。また最近は食品に対しての消費者のニーズは安全で安心して食べられることを求める傾向が一般的に強まって来ている。
【0004】
安全安心が食品に求められる内容の第1は食品添加物の有無である。消費者のニーズは厚生労働省が認可している食品添加物も極力使用して欲しくないことを望んでいるのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は、この点に鑑み鋭意研究を続けた結果本発明に到達したもので、本発明は、リンゴ果汁から醸造した本格醸造のリンゴ酢を用い、これに帆立貝等の貝殻を投入して溶解させて2日程経過すると帆立の貝殻は溶けてカルシウム成分が溶出し、この液に生のサクランボを浸漬する。10日後このサクランボを取出して食したが、食感・色・表皮の張り共に生のものと変りなく、さらに30日経過後変化がなく、昨年収穫して同様に処理したサクランボも変化することなく食することができて現在に至っている。また、この加工サクランボは漬物用として利用しても従来のサクランボ漬、また製菓材料等として軸と種を取りのぞき利用することも可能で、従来のサクランボ漬物とは食感等に格段の差がある。
【発明の効果】
【0006】
本発明により得られたサクランボは、従来有害視されている食品添加物を一切使用せず、しかもサクランボの食味や食感を損うことなく長期間の保存が可能で、しかもサクランボ漬としての利用も味覚等を変えることなく加工できるため、この利用価値はきわめて大きく、サクランボの活用に特に顕著な作用効果を奏する。
【実施例1】
【0007】
本発明に使用するリンゴ酢は、アルコール類を添加することなく、リンゴ果汁に醗酵菌を作用させてリンゴ酒を造り、更に酢酸菌を培養して酢酸醗酵によりリンゴ酢を醸造したもので、これを三年間熟成させ本格醸造のリンゴ酢とする。また帆立貝の貝殻は青森産の産業廃棄物として多量に放出される貝殻を洗浄して使用する。
【0008】
まず貝殻に本格醸造のリンゴ酢を注ぐ、貝殻はリンゴ酢に反応して融け出し48時間経過後、貝殻は溶融し液はカルシウムの反応によって殆んど中性になる。この溶液はカルシウム成分とミネラル成分を約9%含有した液体となり、この溶液の中に生サクランボを投入する。
【0009】
ここで投入するサクランボの種類は、いずれでもよいが、実施例では、
(1)果肉の比較的硬い、粒の大きなナポレオン種を使用した。
(2)一番人気のある甘味が強く果肉の軟らかい佐藤錦を使用した。
一週間後、(1),(2)のサクランボには特に変化はなく、この時点で浸漬液を採取し、分析した結果、前記のカルシウム成分、ミネラル成分は0.2〜0.4%に減少していた。
【0010】
このままの状態で30日保存した後、(1),(2)のサクランボを取出し、食味・食感を調べたが、(1)のナポレオンはナポレオン特有の食味・食感が残り、(2)の佐藤錦は佐藤錦特有の食味・食感があって、特に果肉の軟化・果皮の変色や退化など見られなかった。
【実施例2】
【0011】
前記実施例で、加工後30日経過した後サクランボを取出し砂糖漬とした。この砂糖漬のサクランボは菓子用の飾りとしてケーキやアイスクリームの上に載せて使用するのに適している。
【0012】
前記実施例の加工サクランボ1kgに対して、砂糖500g、蜂蜜200g、前記加工液500ccをガラス容器に入れ、密封し、常温で3ヶ月保存した。容器からサクランボを取出して観察した。外観は殆ど変化はなく、色・艶・張り等生のサクランボに近く、食味も十分残っていて、従来のサクランボ漬とは全く違い、生食の感が十分残っていた。
【0013】
なお、先の実施例で帆立貝の貝殻を使用したが蛤やアサリの貝殻を使用しても同様にカルシウム分が溶出して同様の結果が生じる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
上述のように本発明により加工されたサクランボは季節外であっても十分に新鮮なサクランボの食味が楽しめるため、一年中サクランボが楽しめ、贈答品としても使用に適し、さらに酢漬・塩漬・砂糖漬等にも従来の漬物としてのサクランボの味覚、食味を変え、さらに加工のための添加物の使用がなく安心して利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ果汁から醸造した本格醸造のリンゴ酢に帆立貝等の貝殻を投入して溶解させ2日間経過した液に生サクランボを浸漬することを特徴としたサクランボの加工方法。
【請求項2】
リンゴ果汁から醸造した本格醸造のリンゴ酢に帆立貝等の貝殻を投入して溶解させ2日間経過した液に生サクランボを浸漬し、この加工サクランボを漬物液に浸漬するサクランボ漬の製造方法。

【公開番号】特開2010−17106(P2010−17106A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178562(P2008−178562)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(503263159)有限会社壽屋漬物道場 (1)
【Fターム(参考)】