説明

サスペンションメンバ

【課題】左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とが備えられ、板状本体の上下一方の面に膨出形成されたブラケット部にステアリング部材またはスタビライザを取り付けるための取り付け座が設けられたサスペンションメンバの効果的な軽量化を図る。
【解決手段】4つのアーム支持部3R,3L,4R,4Lを除いた板状本体2の外周部位に、各外周部位から上下双方向に立設されたフランジ部2Fを設け、ブラケット部8R,8Lの互いに対向する内側面どうしがリブRS1,RS2によって接続されたサスペンションメンバ1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、これら4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とを備えたサスペンションメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサスペンションメンバに関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたサスペンションメンバでは、2つのプレス成形体を上下に重ね合わせて接合した一般的なサスペンションメンバに対する軽量化を図るために、サスペンションメンバのベース部をアルミニウム合金によって一体的に鋳造している。ベース部は、4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体と、板状本体の前後の2辺などから下方に延設されたフランジ部とを有する。尚、ロアアーム取付用のブラケットはベース部の左右両端にボルトで連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−69965号公報(0031段落、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記されたサスペンションメンバでは、左右のサスペンションアームから加えられる車両幅方向に沿った軸心周りでの捻りを伴う外力などに基づいて、前後のフランジ部の下端側の間隔を前後に広げるような応力が作用し易いため、この応力によるベース部の過剰な変形や破損を防ぐために、板状本体の下面から一体的に立設された多数のリブが、特に前後のフランジ部どうしを接続するように、梁状に張りめぐらされている。その結果、アルミニウム合金による鋳造部品を用いているにも関わらず十分な軽量化が達成されないという問題が見られた。
【0005】
尚、特許文献1に記されたサスペンションメンバでは、前述したフランジ部の下端側を前後に広げるような応力によるベース部の過剰な変形や破損を防ぐために、フランジ部を先端から基端に向かって次第に肉厚の増すテーパ状とすることで、ベース部の断面の図心を板状本体寄りに近付ける手法が有効と考えられる。しかし、この手法でもフランジ部の基端側肉厚化によって必然的に重量が増す傾向となるために、やはり十分な軽量化を達成し難い状況が見られた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術が与える課題に鑑み、より効果的に軽量化を図ることの可能なサスペンションメンバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるサスペンションメンバの特徴構成は、
左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、前記4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とが備えられ、前記板状本体の上下一方の面に膨出形成されたブラケット部にステアリング部材またはスタビライザを取り付けるための取り付け座が設けられたサスペンションメンバであって、
右前側と左前側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された前記板状本体の外周部位と、右後側と左後側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された前記板状本体の外周部位と、右前側と右後側の一対のアーム支持部の間で前後方向に延設された前記板状本体の外周部位と、左前側と左後側の一対のアーム支持部の間で前後方向に延設された前記板状本体の外周部位とに、前記各外周部位から上下双方向に立設されたフランジが備えられており、
前記ブラケット部の互いに対向する内側面どうしがリブによって接続されている点にある。
【0008】
上記の特徴構成によるサスペンションメンバでは、右前側のアーム支持部と左前側のアーム支持部との間および右後側のアーム支持部と左後側のアーム支持部との間で左右方向に延設された2箇所の外周部位と、右前側のアーム支持部と右後側のアーム支持部との間および左前側のアーム支持部と左後側のアーム支持部との間で前後方向に延設された2箇所の外周部位とに、従来技術のような専ら下向きに立設されたフランジではなく、上下の双方向に立設されたフランジが備えられているので、側面視及び正面視での断面の図心が板状本体に近い位置に来る結果となり、前後のフランジを接続する多数のリブを設けなくても、また、フランジを先端から基端に向かって次第に肉厚の増すテーパ状としなくても、車両幅方向に沿った軸心周りでの捻りを伴う外力によって前後や左右のフランジの縁部どうしを外側に広げる応力に対する剛性が高められる。
【0009】
また、ステアリング部材またはスタビライザを取り付けるために板状本体の一方の面に膨出形成されたブラケット部については、このようなブラケット部を設けることによって局部的に断面の図心が板状本体から上下方向に離れる傾向が、ブラケット部の互いに対向する内側面どうしを接続するリブによって抑制されるので、ブラケット部の配置に関わらずサスペンションメンバの全体において、左右のサスペンションアームなどから加えられる外力に対する剛性が効果的に向上する。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記板状本体の前記一方の面または他方の面に膨出形成された補助ブラケット部にエンジンからのトルクロッドを取り付けるための取り付け座が設けられており、前記補助ブラケット部の基端部に、前記補助ブラケット部の開口部を閉鎖する蓋状部材が締結されている点にある。
【0011】
例えばエンジンを横置き搭載する場合などにおいて、エンジンからのトルクロッドを取り付けるための補助ブラケット部が板状本体のいずれかの面に膨出形成されている形態では、このような補助ブラケット部を設けることによって局部的に図心が板状本体から上下方向に離れる傾向が生じる。しかし、本構成であれば、補助ブラケット部の基端部に蓋状部材を締結することによって、補助ブラケット部の存在に関わらず図心が板状本体の付近に維持されるので、サスペンションメンバの全体において、トルクロッドを介してエンジンから加えられる外力や左右のサスペンションアームから加えられる外力に対する剛性が効果的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の前部構造を示す側面図である。
【図2】サスペンションメンバを示す平面図である。
【図3】図2のIII−IIIで示す矢視による断面図である。
【図4】図2のIV−IVで示す矢視による断面図である。
【図5】サスペンションメンバの上面を見た斜視図である。
【図6】サスペンションメンバの下面を見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に、ステアリングによって操向される左右の前輪50を備えた車両に用いられる前輪用のサスペンションメンバ1を示す。サスペンションメンバ1は、車両の前部で車両前後方向に延設された左右一対のサイドメンバ20を橋渡しするように、車幅方向に配設されている。
【0014】
サスペンションメンバ1の左右両端付近には、左右のサスペンションアーム30が上下揺動自在に取り付けられている。左右の前輪50は、このサスペンションアーム30の遊端側に支持され、前輪50の前方又は上方に配置された横置きエンジン(不図示)によって駆動される。サスペンションアーム30の基端側は二股状に分岐されて、前側連結部30aと後側連結部30bとを有する。
【0015】
(アーム支持部の構成)
このサスペンションメンバ1は、溶融アルミニウム合金を金型内へ射出、凝固させて得られた一体型のダイキャスト製であり、サスペンションアーム30を上下揺動自在に支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部3R,3L,4R,4L、及び、これら4つのアーム支持部3R,3L,4R,4Lの間で前後左右方向に一体的に延出された板状本体2を有する。
【0016】
サスペンションメンバ1の前側のアーム支持部3R,3Lは、サスペンションアーム30の前側連結部30aを支持するために、下方と側方が開放された略直方体状の函状を呈している。前側連結部30aはアーム支持部3R,3Lに収納された後、アーム支持部3R,3Lに形成された前後の貫通孔h1に挿通されたボルトB1によって上下揺動自在に取り付けられる。
【0017】
サスペンションメンバ1の後側のアーム支持部4R,4Lは、サスペンションアーム30の後側連結部30bを支持するために、前方と側方が開放された側面視で概してコの字状の断面形状を備えている。後側連結部30bは、アーム支持部4R,4Lに収納された後、アーム支持部4R,4Lに形成された上下の貫通孔h2に挿通されたボルトB2によって、サイドメンバ20から下方に突出した連結部20aと共に結合される。
【0018】
また、サスペンションメンバ1の左右両端部付近には、サイドメンバ20を連結するための前部ステー部5R,5Lと後部ステー部6R,6Lとが一体的に形成されている。前部ステー部5R,5Lは、前側の左右一対のアーム支持部3R,3Lの後端付近から斜め上方外側に延設されている。後部ステー部6R,6Lは、後側の左右一対のアーム支持部4R,4Lの後端付近から更に後向きに延設されている。図1及び図5に示すように、左右のサイドメンバ20は、前部ステー部5R,5L及び後部ステー部6R,6Lの各先端に形成された貫通孔h3,h4を介してボルトB3,B4で連結される。
【0019】
(ブラケット部の構成)
板状本体2の上面の車両幅方向に関してアーム支持部3R,3L,4R,4Lの若干内側の位置には、一対の第1ブラケット部7R,7Lが、その更に内側の位置には、一対の第2ブラケット部8R,8L(ブラケット部の一例)が上向きに膨出形成されている。第1ブラケット部7R,7L及び第2ブラケット部8R,8Lは、平面視において概して長円形のカップを伏せた形状を呈し、概して車両の前後方向に延設されている。
【0020】
外側の一対の第1ブラケット部7R,7Lの天井部の上面は、スタビライザ40を取り付けるための取り付け座を構成しており、第1ブラケット部7R,7Lよりも大きな内側の一対の第2ブラケット部8R,8Lの上面は、ラックアンドピニオン式などのステアリング部材(不図示)を取り付けるための取り付け座を構成している。
【0021】
スタビライザ40は、第1ブラケット部7R,7Lの取り付け座に一対のボルトB5で連結されたホルダ40Hによって、車両の幅方向に延びた軸心廻りで回転自在に支持される。また、スタビライザ40の両端部はサスペンションアーム30又は前輪50のナックル(不図示)に接続される。
【0022】
さらに、板状本体2の上面の車両幅方向に関してほぼ中央の位置には、単一で比較的大型の第3ブラケット部9(補助ブラケット部の一例)がやはり上向きに膨出形成されている。第3ブラケット部9は平面視において概して矩形のカップを伏せた形状を呈している。第3ブラケット部9は、前端がエンジンの取り付け補助部60に連結されたトルクロッド65の後端65Aを取り付けるために設けられている。トルクロッド65の後端65Aを連結するための取り付け座9Sは、第3ブラケット部9の底部の下面側に配置されている。
【0023】
(上下フランジの構成)
4つのアーム支持部3R,3L,4R,4Lの設置箇所を除く板状本体2の外周部位のほぼ全てには、補強用の上下フランジ2Fが一体的に備えられている。図2における右側の第1ブラケット部7Rの中心付近を車両前後方向に通るIV−IV矢視の断面を図4に示す。図4に示される板状本体2の後端のように、上下フランジ2Fは、板状本体2の外周部位から上方に延出された上方フランジ部FUと、板状本体2の外周部位から下方に延出された下方フランジ部FLとを備えることで、上下双方向に延出されている。
【0024】
上下フランジ2Fは、板状本体2と同等の厚さと、上方フランジ部FUと下方フランジ部FLとが一直線状に連設された断面形状とを備え、全体として鉛直方向よりも僅かに下広がりに斜めに延びている。概して下方フランジ部FLは上方フランジ部FUよりも上下寸法が大きく、必要に応じて、下方フランジ部FLの下端部は厚みを増すことで補強されている。図4に示される板状本体2の前端のように、板状本体2の外周部位から下方フランジ部FLのみが延設された箇所も例外的に存在する。
【0025】
尚、第3ブラケット部9の車両幅方向に関する中心の前方には、トルクロッド65の後端65Aを第3ブラケット部9の内部に受け入れるための前向き開口部9hが形成されており、この前向き開口部9hの上縁部にも上下双方向に短い寸法で延出された上下フランジ2Fが形成されている。
【0026】
このように板状本体2の外周部位の大部分に上下フランジ2Fを設けた結果、サスペンションメンバ1を任意の方向を向く鉛直な平面で切った断面の大半は概してH字状を呈することで、側面視や正面視での断面の図心が板状本体2の付近に得られている。特に車両の走行中に、前輪50などから捻りを含む外力が主に加えられるのは板状本体2の中でもアーム支持部3R,3L,4R,4Lを除く箇所となるので、捻り応力が大きく作用する箇所のほぼ全ての外周部位に上下フランジ2Fが備えられていることになる。
【0027】
具体的には、上下フランジ2Fが設置されている領域は、右前側のアーム支持部3Rと左前側のアーム支持部3Lとの間で左右方向に延設された第1外周部位E1と、右後側のアーム支持部4Rと左後側のアーム支持部4Lとの間で左右方向に延設された第2外周部位E2(第3ブラケット部9の設置箇所を除く)と、右前側のアーム支持部3Rと右後側のアーム支持部4Rとの間で前後方向に延設された第3外周部位E3と、左前側のアーム支持部3Lと左後側のアーム支持部4Lとの間で前後方向に延設された第4外周部位E4となる。
【0028】
(縦リブの構成)
図6に示すように、サスペンションメンバ1の裏面の特定箇所には平板状の縦リブが一体的に設けられている。縦リブは板状本体2の下面から概して鉛直方向の下向きに立設されている。縦リブは、第3ブラケット部9の左右の側壁部9Aの基端部に沿って前後方向に延出された一対の前後リブRAと、各前後リブRAよりも車両幅方向に関して左右外側の領域に設けられた斜行リブRSとからなる。
【0029】
斜行リブRSは、左右の前後リブRAと後方の上下フランジ2Fとの交差位置付近から前方のアーム支持部3R,3Lの内側後方コーナー部に向かって車両幅方向に対して傾斜した直線状に延設された第1斜行リブRS1(リブの一例)と、左右の前後リブRAと前方の上下フランジ2Fとの交差位置付近から後方のアーム支持部4R,4Lに向かって車両幅方向に対して傾斜した直線状に延設された第2斜行リブRS2(リブの一例)とを含む。
【0030】
斜行リブRSは、さらに、第2斜行リブRS2よりも前方の位置で、第2斜行リブRS2とほぼ平行に延出された第3斜行リブRS3(リブの一例)及び第4斜行リブRS4(リブの一例)を含む。
第3斜行リブRS3は、第1斜行リブRS1と第2斜行リブRS2の交差位置と、前方のアーム支持部3R,3Lの内側後方コーナー部との中間的な位置で第1斜行リブRS1と一体的に交差する形態になっている。
【0031】
第4斜行リブRS4は、前方のアーム支持部3R,3Lの内側後方コーナー部と前方の上下フランジ2Fとを接続するように延設されているので、第4斜行リブRS4の後端が前方のアーム支持部3R,3Lの内側後方コーナー部にて第1斜行リブRS1の前端と出会う形態になっている。
【0032】
図に示すサスペンションメンバ1の例では、平面視において、第1斜行リブRS1は車両幅方向に対して約45°の傾斜角度を備え、第2、第3、第4斜行リブRS2、RS3,RS4は車両幅方向に対して30°〜40°の傾斜角度を備えるが、各斜行リブRSの傾斜角度は各アーム支持部3R,3L,4R,4Lや第3ブラケット部9の位置関係に応じて適宜変更することができる。
【0033】
(斜行リブと第2ブラケット部の関係)
図6に示すように、斜行リブRSの一部は、板状本体2の裏面から一体的に立設された状態を保ちながら、左右の各第2ブラケット部8R,8Lを斜めに横断するように延設されている。その結果、各第2ブラケット部8R,8Lの互いに対向する内側面どうしは、取り付け座の裏面に相当する第2ブラケット部8R,8Lの底面の大半も含めて、第1、第2、第3斜行リブRS1,RS2,RS3の各一部によって一体的に接続された状態となっている。
【0034】
第1斜行リブRS1と第2斜行リブRS2との交差位置は、第2ブラケット部8R,8Lの車両幅方向に関して内側の内側面と一致するように配置されている。同様に、第1斜行リブRS1と第3斜行リブRS3との交差位置は、第2ブラケット部8R,8Lの車両幅方向に関して外側の内側面と一致するように配置されている。
【0035】
その結果、第2ブラケット部8R,8Lの内側面では、第3斜行リブRS3の一部と、第1斜行リブRS1の一部と、第2斜行リブRS2の一部とが、互いに向きを変えながら車両の前方から後方に向けて延設されることで、平面視においてジグザグ状に延びている。また、第2斜行リブRS2の前端は、第2ブラケット部8R,8Lの前方内側の側面と、前方の上下フランジ2Fとが結合される位置と一致するように配置されている。
【0036】
第2ブラケット部8R,8Lの設置箇所では、上方に突出形成された第2ブラケット部8R,8Lによって断面の図心が板状本体2から上方に離間する傾向がある。しかし、前述したように斜行リブRSの一部が第2ブラケット部8R,8Lの互いに対向する内側面どうしを接続するように延出され、且つ、板状本体2の下面の標準位置を越えて更に下方まで延出されることで、第2ブラケット部8R,8Lの設置箇所でも断面の図心が周囲の板状本体2の高さ近くに維持されている。
【0037】
前後リブRAおよび斜行リブRSからなる縦リブの高さは、概して縦リブの下端が上下フランジ2Fを構成する下方フランジ部FLの下端よりも上方に位置するように設定されている。
尚、右側の第2ブラケット部8Rの内側付近に隣接した箇所は、本来なら平面視で右側の第1斜行リブRS1と第2斜行リブRS2とが交差する位置に相当するが、サスペンションメンバ1の下方で前後向きに配設される排気管(不図示)との干渉を避ける目的で、板状本体2が僅かに上向きに突出した湾曲状に形成されており、第1斜行リブRS1及び第2斜行リブRS2も例外的に設置を略されている。
【0038】
尚、斜行リブRSが上下フランジ2Fを構成する下部フランジ部FLや第2ブラケット部8R,8Lの内側面と接合される部位では、必要に応じて、板状本体2や上下フランジ2Fの厚さを越える外径を備え、上下に延びた円柱状の小ボス部2Dが、その径方向の一部を下部フランジ部FLや第2ブラケット部8R,8Lの内側面と一体化させるように形成されており、斜行リブRSはこの小ボス部2Dの周面から径方向外向きに一体的に延出されている。小ボス部2Dは、第3斜行リブRS3と下部フランジ部FLとの接合位置や、第1斜行リブRS1と第2ブラケット部8R,8Lの内側の内側面との接合位置などに設けられている。
【0039】
(蓋状部材の構成)
第3ブラケット部9については、その天井部の下面側に位置する取り付け座9Sにトルクロッド65の後端65AをボルトB6で連結するので、その内側面どうしを接続する縦リブなどを設けることができない。その代わりに、第3ブラケット部9の下向き開口部9pには、サスペンションメンバ1と同等の剛性を備えた概して矩形の蓋状部材12が締結されている。蓋状部材12もサスペンションメンバ1と同等材質のダイキャスト製とされており、トルクロッド65の後端65Aを保護すると同時に、やはり第3ブラケット部9の設置に関わらず断面の図心を板状本体2の高さ付近に維持する役目を果たしている。
【0040】
第3ブラケット部9の基端部では、上下フランジ2Fを構成する下部フランジFLに沿って、小ボス部2Dよりも大径のネジボス部2Eが雌ネジを形成するための箇所として一体的に形成されている。互いに前後方向で対向する各一対のネジボス部2Eの周面には、上下に延びた円柱状の小ボス部2Dがその径方向の一部をネジボス部2Eと一体化させるように形成されており、前後の小ボス部2Dの外周面から前述した前後リブRAが延出されている。
【0041】
トルクロッド65の後端65Aを、第3ブラケット部9の前向き開口部9hから内部に導入し、取り付け座9Sに載置した状態で、さらに、蓋状部材12を第3ブラケット部9の下向き開口部9pを閉じるように配置した状態で、取り付け座9Sと後端65Aと蓋状部材12の各貫通孔に長尺ボルトB6を上から挿通し、蓋状部材12の下方に配置したナットN6を螺合させる。引き続き、蓋状部材12の四隅の貫通孔に挿通した4本のボルトB7を各ネジボス部2Eの雌ネジに締め付けることで蓋状部材12がサスペンションメンバ1に締結される。
【0042】
以上の結果、前後リブRA及び斜行リブRSからなる縦リブ並びに蓋状部材12は、特に、左右のサスペンションアーム30及びトルクロッド65などから入力される外力による、サスペンションメンバ1を車両幅方向に延びた横軸心回りで捻るネジリ変形、及び、前後左右のアーム支持部3R,3L,4R,4Lをサスペンションメンバ1の車両幅方向中心部に対して上下方向に変位させる曲げ変形に対する剛性を効果的に高めている。
【0043】
〔別実施形態〕
〈1〉トルクロッド65を連結するための第3ブラケット部9が省略されたサスペンションメンバ1にも適用することができ、その場合は、第3ブラケット部9の代わりに、例えば平面視におけるサスペンションメンバ1の前後左右の中心付近で互いに交差する一対の斜行リブRSを設けることができる。この場合も一対の前後リブRAは上記の実施形態とほぼ同様な形態で採用することが可能である。
【0044】
〈2〉第2ブラケット部8R,8Lのみならず第1ブラケット部7R,7Lの互いに対向する内側面どうしも縦リブによって接続されている形態で実施してもよい。
【0045】
〈3〉第1ブラケット部7R,7L、第2ブラケット部8R,8L、第3ブラケット部9の全部または一部が板状本体2の下面に下向きに膨出形成された形態で実施してもよく、その場合は、前後リブRAや斜行リブRSなどの縦リブを板状本体2の上面側に設けるとよい。
【0046】
〈4〉上記の実施形態とは逆に上方フランジ部FUが下方フランジ部FLよりも長い形態や、上方フランジ部FUと下方フランジ部FLの長さが概して同じ形態で実施してもよい。また、上下フランジ2Fは、斜めに延出した形態に限らず、鉛直に延出した形態で実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とが備えられ、板状本体の上下一方の面に膨出形成されたブラケット部にステアリング部材またはスタビライザを取り付けるための取り付け座が設けられたサスペンションメンバの構成に関する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 サスペンションメンバ
2 板状本体
2E ネジボス部(第3ブラケット部の基端部)
2F 上下フランジ
3L 左前側のアーム支持部
3R 右前側のアーム支持部
4L 左後側のアーム支持部
4R 右後側のアーム支持部
7L 第1ブラケット部
7R 第1ブラケット部
8L 第2ブラケット部(ブラケット部)
8R 第2ブラケット部(ブラケット部)
9 第3ブラケット部(補助ブラケット部)
9p 下向き開口部(開口部)
9S 取り付け座
12 蓋状部材
30 サスペンションアーム(前輪用サスペンションアーム)
40 スタビライザ
65 トルクロッド
E1 第1外周部位
E2 第2外周部位
E3 第3外周部位
E4 第4外周部位
RA 前後リブ(リブ)
RS 斜行リブ(リブ)
RS1 第1斜行リブ(リブ)
RS2 第2斜行リブ(リブ)
RS3 第3斜行リブ(リブ)
RS4 第4斜行リブ(リブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の前輪用サスペンションアームを支持するべく車両の前後左右に離間配置された4つのアーム支持部と、前記4つのアーム支持部の間で前後左右方向に延出された板状本体とが備えられ、前記板状本体の上下一方の面に膨出形成されたブラケット部にステアリング部材またはスタビライザを取り付けるための取り付け座が設けられたサスペンションメンバであって、
右前側と左前側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された前記板状本体の外周部位と、右後側と左後側の一対のアーム支持部の間で左右方向に延設された前記板状本体の外周部位と、右前側と右後側の一対のアーム支持部の間で前後方向に延設された前記板状本体の外周部位と、左前側と左後側の一対のアーム支持部の間で前後方向に延設された前記板状本体の外周部位とに、前記各外周部位から上下双方向に立設されたフランジが備えられており、
前記ブラケット部の互いに対向する内側面どうしがリブによって接続されているサスペンションメンバ。
【請求項2】
前記板状本体の前記一方の面または他方の面に膨出形成された補助ブラケット部にエンジンからのトルクロッドを取り付けるための取り付け座が設けられており、前記補助ブラケット部の基端部に、前記補助ブラケット部の開口部を閉鎖する蓋状部材が締結されている請求項1に記載のサスペンションメンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−91693(P2012−91693A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241128(P2010−241128)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】