説明

サンプル中のシーケンスの個体数を決定するための方法、その方法を実施するためのキット及び装置

【課題】サンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法は、サンプルの1つ又は複数のシーケンスの複数の異なる目的断片を増幅産物となるように増幅することのできる1回又は複数回の増幅反応を実施する工程と、サンプルのシーケンスの特定の異なる目的断片が増幅されたかどうかを検出する工程と、増幅産物中に存在する又は存在しない特定の異なる目的断片の個体数に基づいて、サンプル中の1つ又は複数のシーケンスの個体数を決定する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの所定のシーケンス、もしくは、所定のシーケンスと同一またはほぼ同一の(相同性の)複数のシーケンスの個体数を決定するための方法、その方法を実施するためのキット及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シーケンス分析の他に、核酸の定量分析は、分子医学における主要課題の1つである。細胞、組織、及び、有機体の生態を基本的に理解するには、遺伝子シーケンスの組成と個体数とを例えばDNAレベルまたはその転写(RNAレベル)で知ることが必要不可欠である。有機体間の相違、遺伝子に起因する病気の原因、および、疾病素質は、シーケンスの相違(変異、例えば欠失、插入)および存在するシーケンスの個体数に基づいている。したがって、ゲノム(DNA)およびトランスクリプトーム(RNA)の定量分析は、分子医学の中心的な課題となっている。
【0003】
遺伝子情報の全体は、有機体のゲノム中に固定されている。情報担体(G、A、TおよびCの塩基配列を有する核酸の遺伝子シーケンス=DNA)の変化は、病気として発現する可能性がある。多方面において、定義されたシーケンス断片に関して定量的に示された証拠は、診断に必要不可欠である。例えば、遺伝子シーケンスの個体数が異なることに起因する臨床像は様々である。
【0004】
全染色体のトリソミー/モノソミー
21トリソミー、ダウン症候群:染色体(21)全体に関するものであり、各細胞につき(2つのコピーではなく)3つのコピーがある。
【0005】
反復配列
ハンチントン病:特定の配列(CAG)が直接前後に38コピー以上連続している。病気促進につながる疾病素質は、この配列の反復の数に伴って増大する。ヒトにおける三核種シーケンスの他の例としては、ケネディー症候群または脊髄小脳失調1があげられる。
【0006】
小さなシーケンス断片の染色体微小欠失
臨床的な症候群の増加について、染色体微小欠失がある役割を果たしていることが分かる。例えばウォルフ・ヒルシュホーン症候群(4P16.3の欠失)、ウィリアムズビューレン症候群(7q11.23、ある遺伝子全体の欠失に該当する)、又は、父系遺伝子のみに該当するプラダーラプハルトウィリー症候群(15q11−q13)などの多数の例がある。より稀なのは微小重複であるが、このような断片を見出すことは、方法上の理由により今日では非常に困難である。
【0007】
点変異
多数の臨床像は、ちょうど1つの塩基位置が変化して存在することにより生じ、このことは、結果として生じる蛋白質において機能障害となる。このような場合(一塩基変異多型、SNP)においても、定量的に示された証拠は、重要な意味を持っている。なぜなら、変異または対立遺伝子は全ての細胞には生じず、つまり、異なる頻度で発現する可能性があるからである。遺伝子シーケンス中にないこのような種類の変異は、ゲノム中に非常に頻繁に生じており、通例では臨床像にはならない。しかしながら、これらは、マーカーとして適切である。なぜなら、多くの腫瘍細胞は、両親型の対立遺伝子の1つを失う傾向を有しているからである(ヘテロ接合体の喪失、LOH)。元々は2つのシーケンス変異体のうち1つだけが存在していることを立証することは、腫瘍診断のために潜在的に非常に意味がある。この状態を確実かつ定量的に認識するための方法上の開発に、デジタルRCRがある(特許文献1)。
【0008】
全ての上記の例において、分子の診断は、シーケンス断片の定量化によって行われる、すなわち、所定のシーケンスがサンプル中にどれほどの頻度で含まれているかを検出する必要がある。
【0009】
従来技術
今日、上記のようなDNAについての課題を解決するために、診断および検査において主に以下の方法が使用されている。
【0010】
FISH法によるインシチュハイブリダイゼーション(蛍光性インシチュハイブリダイゼーション)のための染色体特異性プローブ分子について、特許文献2に記載されている。この場合、様々な蛍光体を様々に組み合わせることにより、全てのヒト染色体を同時に検出することができる。
【0011】
分析される染色体を、染料によってマークされたハイブリダイゼーションプローブと接触させることにより、シーケンス相補的な断片を見出すことができる。シーケンス特異性のハイブリダイゼーションの後に洗浄工程を行い、続いて、細胞の蛍光信号を蛍光顕微鏡によって評価する。蛍光信号があれば、シーケンスが存在している。したがって、例えば、完全な染色体が存在していると結論付けることができる。蛍光信号がなければ、染色体が欠失しているか、または、プローブの領域に微小欠失が存在している。今日、FISHは、使用する蛍光染料によって評価時に区別される、1つのゲノム内の複数の様々なシーケンスのコピー数を、並行して決定することができる。上記の数は、同時に使用することのできる蛍光染料の数によって制限されている。典型的には、全てが同じ遺伝子状態を有する細胞集団が検査される。
【0012】
FISH分析の有効性を確認することは非常に困難である。非特許文献1には、FISH分析の結果の解釈について、「細胞分裂間期分析に使用されるサンプルは、(90%を上回る)高効率でハイブリダイズするように選択されるほうがよい」と記載されている。すなわち、一方では少なくとも100個の細胞が必要であり、他方ではこの証言はFISHによる単細胞診断を一般的に除外している。この方法は、単細胞診断には不十分である。
【0013】
複数のシーケンスのコピー数を並行して決定することのできる他の方法は、CGH(比較ゲノムハイブリダイゼーション、特許文献3:核型分析手段および方法)である。ここでは、患者DNAをある蛍光染料(例えば、赤)によってマークし、基準DNAを第2の染料(例えば、緑)によってマークする。様々なDNA集団を同じ量で混合し、ガラス表面上の染色体伸展標本に対してハイブリダイズさせる。相補的な鎖は、染色体断片の結合場所を求めて競争しあう。患者DNAと基準DNAとにおけるシーケンス断片が同じ頻度であれば、染色体の対応するハイブリダイゼーション場所において、緑と赤の比率が1:1となる。一方の色が多ければ、患者DNAが重複している、または、対応する断片が欠失している、ということが示される。蛍光顕微鏡で染色体伸展標本を分析する。このことは、方法の解像を制限しており、解像度は、約10〜30Mb(1Mb=1メガベース=106シーケンスユニット)である。染色体伸展標本のCGHでは、ある定義されたシーケンスの単一の染色体に、(赤または緑にマークされた)プローブがちょうど1つだけ結合できる。単にこの方法の空間的解像度の低さゆえに、多数の信号を同時に受信することとなり、それゆえ、これらの信号は統計的に比率分析の余地がある。
【0014】
この方法の特別な実施としては、マトリックスCGH(チップまたはアレイフォーマット)が挙げられる。このマトリックスCGHでは、染色体伸展標本の代わりに、DNAアレイの離散型測定点の形で遺伝子断片が存在している。ここでも、2つのハイブリダイゼーション信号の強度比較が行われる。CGHのためには、サンプルを(例えば、PCRによって)増幅するか、または、名目上は同一の多数の細胞が存在している必要がある。
【0015】
原則的に、定量リアルタイムPCR方法は、最少量の核酸(原則的に、シーケンスの1コピー)の検出に適している。定量分析は、内部標準によって保証される(非特許文献2)。この方法は、ルーチン診断に使用される。しかしながら、原材料の量を任意に減らすことはできない。なぜなら、原材料としてのスタート分子が少ない(10〜100個の)場合、確率論的なエラーは、指数的な増幅のせいで非常に大きくなり、定量的に示された証拠を許容しないからである。
【0016】
PCRの他に、上記範囲における定量的に示された証拠を許容しない、酵素をベースとした他の増幅方法がある(例えば、NASBA1 LCR,SDA RT−PCRまたはQs−レプリカーゼ;非特許文献2の総覧)。
【0017】
全ての上記方法は、シーケンスの定量分析の際に様々な欠点を有している。その結果、これらは、コピー数についての絶対的な証拠を示すには適切なものではない。
【0018】
今日、シーケンス断片を(0,1,2,3から約10までの範囲において)計数する簡単且つ確実な方法はない。なぜなら、2つの開発は、完全に逆行するものだからである。a)増幅せずに作業する場合は、多数(CGHでは典型的に106個の数)の細胞が必要不可欠であり、他方では、蛍光を測定できない。ハイブリダイゼーション反応の複雑性(非特異性の結合、交差反応、遅く且つ大抵の場合は未知である運動)と、コストのかかるサンプルの準備(サンプルの精製、蛍光染料が付加する際の未知の効率)とにより、遺伝子シーケンスの定量化は実験的に非常に複雑であり、結果の解釈は決して明白ではない。b)ある定義されたシーケンスの(0,1,2,3..の意味での)コピー数を例えばリアルタイムPCR時の信号の上昇に基づいて決定するために、少ない原材料の定量的な増幅反応を行う場合、指数的な増幅率のせいでエラーが多くなる。
【0019】
特許文献1に、サンプル中のシーケンスの相対的な個体数を決定するための、デジタル増幅またはデジタルPCRと呼ばれる方法が記載されている。ここでは、サンプルを、検査される複数のシーケンスのうちの1つのシーケンスの単一の分子が1つの反応槽にできる限り1つしか存在しなくなるまで希釈し、多数の反応槽に分配する。次に、複数の反応槽に分配したサンプルを、複数のプライマーによって増幅する。この場合、プライマーは、それぞれ、シーケンスの1つに対して特異性を有するものであり、特定のマーカーが備えられている。増幅後、増幅産物に結合したマーカーに基づいて、どの反応槽にシーケンスのうちどれが存在していたかを識別する。シーケンスのうちそれぞれ1つの特定のシーケンスを含む反応槽を数えることにより、元のサンプル中のシーケンスの割合を立証する事ができる。この方法は、主に連続希釈法に起因するかなりの不確実性を有している。なぜなら、ある1つの反応槽に複数のシーケンス分子が含まれていないかどうかということを絶対的な確実性で確定することは決してできず、それゆえ、結果が変わる可能性があるからである。そのうえ、この方法では、割合が絶対的にではなく相対的に決定されてしまう。
【0020】
シーケンスの相対的な個体数を決定することのできる他の方法は、特許文献4に記載されている。この方法では、例えば、ある遺伝子材料の範囲限定可能な複数の部分集合(すなわち、分離した核酸またはシーケンス)の1つが、その他の範囲限定可能な部分集合よりも頻繁にサンプル中に存在しているのか、それとも、稀に存在しているのかが決定される。従来技術によるこの方法の具体的な実施形態は、細胞中の個々の染色体の相対的な個体数の決定(例えば、異数体があるかどうかの決定)に関する。特許文献4に開示された方法の実施形態では、まず、単細胞増幅(例えば、全ゲノム増幅(WGA))が、1つの非特異性プライマーまたは複数のこのようなプライマーによって行われる。この場合、1つの染色体に対して特異性を有する複数の目的シーケンスが、それぞれ理論的に増幅される必要がある。しかしながら、このような全ゲノム増幅は、100%まで効率的に行われないので、統計的な平均値において、論理的にはプライマーによって増幅可能な目的シーケンスの全てが増幅されるわけではない。増幅反応後、各染色体に対して特異性を有する目的シーケンスが検出される。
【特許文献1】米国特許第6,440,706号明細書
【特許文献2】米国特許第5,817,462号明細書
【特許文献3】国際公開第00/24925号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/027089号パンフレット
【非特許文献1】DE Rooney ed.、「ヒト細胞遺伝学体質分析(Human Cytogenetics Constitutional Analysis)」、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、2001年
【非特許文献2】Hagen-Mann, K. & Mann, W.、「核酸の生体外の増幅のためのRT−PCRおよびPCRの代替方法(RT-PCR and alternative methods to PCR for in vitro amplification of nucleic acids.)」、1995年、Exp. Clin. Endocrinol. 103: 150-155
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記方法のいずれも、サンプル中における例えば10個以下の数のほぼ同一のシーケンスを計数することができない。大抵の方法は、このような少数のシーケンスを定量的に検出するには原則的に適していない。デジタルPCRによってのみ、比較的少ない量で存在する異なるシーケンスの相対的な個体数を確定することができる。連続希釈法の使用により、非常に少ない数(例えば10以下)で存在するシーケンスの相対的な個体数の確定には問題がある。
【0022】
本発明の目的は、サンプルの所定のシーケンス、もしくは、所定のシーケンスと同一またはほぼ同一の(相同性の)複数のシーケンスの個体数を決定するための方法であって、たとえサンプルのシーケンスの数が少なくても、確実に、簡単に、かつ、低コストで実施可能な方法、その方法を実施するためのキット及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係るサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法は、サンプルの1つ又は複数のシーケンスの複数の異なる目的断片を増幅産物となるように増幅することのできる1回又は複数回の増幅反応を実施する工程と、サンプルのシーケンスの特定の異なる目的断片が増幅されたかどうかを検出する工程と、増幅産物中に存在する又は存在しない特定の異なる目的断片の個体数に基づいて、サンプル中の1つ又は複数のシーケンスの個体数を決定する工程とを含むことを特徴とする。
【0024】
本発明に係るサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法を実施するためのキットは、(i)サンプル中の個体数が決定される所定のシーケンスの数mの目的断片を、それぞれ異なる増幅産物となるように増幅することのできる、1つ又は複数の特異性プライマーと、(ii)場合によっては、対照サンプル中の所定のシーケンスの個体数の各可能性のある値nに対する対照サンプル、及び/又は、(iii)場合によっては、(i)のプライマーを用いた増幅反応、及び/又は、計数されるシーケンスを既知の個体数含む対照サンプルの結果と、(iv)増幅反応に対する反応条件の説明書とを含むことを特徴とする。
【0025】
本発明に係るサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法を実施するための装置は、(a)サンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法を実施するための固定キャリアと、(b)(a)の固定キャリア上で得られた増幅産物を検出するためのユニットと、(c)所定のシーケンスを既知の個体数含む対照サンプルから得られた格納された対照データ、又は、(d)対照サンプルを請求項1乃至26のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法と同じ条件下で分析することのできる対照管理部と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、サンプルのシーケンスの数が少なくても、確実に、簡単に、かつ、低コストで実施をすることができるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法、その方法を実施するためのキット及び装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、請求項1に記載の方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0028】
サンプル中の1つの所定のシーケンス、もしくは、同一またはほぼ同一の(相同性の)複数のシーケンスの個体数を決定するための本発明の方法は、サンプルの1つまたは複数のシーケンスの複数の目的断片を増幅産物となるように増幅することのできる1回または複数回の増幅反応を実施する工程と、サンプルのシーケンスの特定の目的断片が増幅されたかどうかを検出する工程と、増幅産物中に存在するまたは存在しない特定の目的断片の個体数に基づいて、サンプル中の1つまたは複数のシーケンスの個体数を決定する工程とを含んでいる。
【0029】
本発明の方法の好ましい実施形態は、請求項2に記載されている。この方法は、サンプル中の1つの所定のシーケンス、もしくは、前記所定のシーケンスと同一またはほぼ同一の複数のシーケンスの個体数nを決定するための方法であって、(a)上記シーケンスを決定されることとなる個体数n個含むサンプルを用意する工程と、(b)上記サンプル中の上記所定のシーケンスの数mの目的断片をそれぞれ異なる増幅産物となるように増幅することのできるプライマーを用意する工程と、(c)(a)の上記サンプルと(b)の上記プライマーとを用いる1回または複数回の増幅反応を、成功する増幅反応の数が上記サンプル中の上記所定のシーケンスの上記個体数nに応じているように選択されている反応条件下で実施する工程と、(d)工程(c)で増幅された上記目的断片を検出し、上記成功した増幅反応の数を決定する工程と、(e)上記サンプル中に含まれる上記所定のシーケンスの上記個体数nを決定する工程とを含んでいる。
【0030】
上記サンプル中に含まれる上記所定のシーケンスの上記個体数nを、上記所定のシーケンスを既知の個体数含む1つまたは複数の対象との比較によって決定することが好ましい。対象は、本発明の方法が並行して行われる対照サンプルであってもよく、その場合は、この並行対照サンプルに対して、サンプルに増幅反応を実施する場合と同じ反応条件が適用される。また、対照サンプルに対して、サンプルとは無関係に本発明の方法を行い、サンプルと比較するための対象としての役割を果たす有効データまたは基準データを生成することもできる。
【0031】
元々のシーケンスの複数の目的断片の増幅は、シーケンスの1つの特定の目的断片または少数の特定の目的断片に対してそれぞれ特異性を有する複数のプライマー対またはプライマーの組み合わせを使用すること、もしくは、多数の特定の目的断片に対してそれぞれ特異性を有する複数のプライマーを使用することなどによって行える。
【0032】
本発明の目的のために、プライマーという概念は、単一のプライマーだけではなく、プライマー対(すなわち、フォワードプライマーおよびリバースプライマー)およびプライマーの組み合わせ(1つの特定の目的断片に対してそれぞれ2つ以上のフォワードプライマーおよびリバースプライマー)を含んでいる。
【0033】
多数の特定の目的断片を増幅するプライマーを使用するPCR方法は、IRS−PCR(Inter-Repetetive-Sequence-PCR)またはWGA−PCR(Whole-Genome-Amplification-PCR)と呼ばれる。すなわち、プライマーは、多数の異なるシーケンスを増幅する限り非特異性である。
【0034】
本発明の発明者は、シーケンスの複数の異なる特定の目的断片の増幅時に増幅される異なる目的断片の数がサンプル中に元々存在するシーケンスの数に応じている、ということを立証した。サンプル中に存在するシーケンスの数が少ないほど、前記シーケンスから増幅される異なる目的断片の数も少ない。
【0035】
その原因としては各増幅の成功が特定の確率または効率に従っている、すなわち、各増幅が絶対的な確実性で実施されない、ということが考えられる。したがって、例えば複数の異なる断片を同時に増幅する場合は、個々の異なる断片の増幅反応の間に競争が生じる。その結果、所定のシーケンスのうちの1つまたは少数しかサンプル材料中に存在していない場合、まるで多数のシーケンスが増幅されたかのように、個々の異なる断片の小数が増幅される。
【0036】
効率は多数の要因に依存している。多数の要因の例としては、プライマーの選択、増幅されるシーケンスの長さ、および、その他の反応条件(例えばPCRの場合は、温度プロトコル、サイクルの期間、サイクルの数、反応剤の濃度、反応体積、ポリメラーゼなど)が挙げられる。当業者は、所望の効率が達成されるように、これらのパラメータを調整することができる。
【0037】
これらの要因を決定することにより、ある程度の範囲における増幅の効率を決定することも可能である。例えばシーケンスをできる限り高い確実性で増幅したほうがよいが少数のシーケンスしかない場合は、できる限り1に近い効率であれば有利である。このことは、例えば、診断用のPCR(病原の検出)および同様の他のアプリケーションにおいて有利である。
【0038】
他方では、本発明の方法でのように、とりわけ、サンプルが所定のシーケンスをたった1回含んでいるのか、2回含んでいるのか、3回含んでいるのか、または、この程度の少数含んでいるのかを判断する場合、増幅の効率を平均値に(例えば0.1〜0.9、好ましくは0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.7、好ましくは0.4〜0.6の範囲に、最も好ましくは約0.5に)設定することがより有利である。増幅の効率は、元々存在するシーケンス(すなわち、核酸分子)の絶対量についての統計的に意味のある証拠となり得る範囲であるほうがよい。
【0039】
したがって、効率という概念を、以下では、任意の多数の原材料が存在していると仮定した増幅の確率と解釈する。本発明に適した増幅の効率は、典型的には、0.5〜1の範囲である。これに対して、シーケンスのスタートコピーの数が少ない場合に特定の断片が増幅される実際の確率は、原材料の量、すなわち、サンプル中の所定のシーケンスの数に依存しており、基本的に、0〜1の全ての可能な範囲を含み得る。
【0040】
したがって、例えば、ある1つのシーケンスの複数の目的断片を増幅する特定の条件下では、これら複数の目的断片に対してそれぞれ適切なプライマーを選択した場合でも、各増幅反応において全ての目的断片が増幅されるわけではない。したがって、このことは、特に、元々の鋳型(すなわち、目的断片が増幅される元々のシーケンス)がほんのわずかなコピー数で(例えば、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10の範囲で)存在している場合に該当する。
【0041】
各増幅反応にはある程度のエラー確率があるので、従来技術の方法によって、鋳型のどの異なる数が増幅反応のために含まれているのかを異なるサンプル間で区別することは非常に困難である。例えば、あるサンプルが、それぞれ特定の目的断片が増幅される2つのシーケンスを含んでおり、第2のサンプルが、特定の目的断片が増幅されるこれらのシーケンスの3つを含んでいる可能性がある。従来技術の増幅方法では、このような小さい範囲の数である場合、増幅の結果に基づいて元々の鋳型、すなわち、サンプル中に元々存在するシーケンスの個体数を逆推論することはこれまで不可能であった。
【0042】
しかしながら、本発明の方法では、サンプル中に元々存在するシーケンスの絶対数を、本発明の目的のためにnで表されるこの数が特にn=0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10の範囲にある場合に、決定することができる。nは、好ましくは0〜100、好ましくは0〜30、好ましくは0〜10、好ましくは0〜5の範囲である。本発明の方法を、n=0,1,2,3および4のシーケンス数を有するサンプルを定量的に決定する事ができるように設定することが特に有利である。
【0043】
このため、n=1に対する増幅反応の効率が0.2〜0.8、好ましくは0.4〜0.6の範囲になるように増幅条件を選択することが好ましい。上記増幅効率は、約0.5程度であることが特に好ましい。このことは、サンプル中のシーケンスの数nが1であり(すなわち、このシーケンスはサンプル中にたった1回存在しており、つまり、ただ1つの鋳型が利用可能であり)、かつ、このシーケンスに対して数mの目的断片を増幅する場合、統計的な平均値における0.5の効率では、増幅反応後に目的断片の半分だけを検出できることを意味している。
【0044】
したがって、本発明の方法により、サンプル中に存在するシーケンスのコピー数について量的な証拠を示すことができる。この目的のために、増幅反応を行い、シーケンスの複数の異なる目的断片を増幅産物となるように増幅する。複数の目的断片が増幅される所定のシーケンスが、非常に少ないコピー数で存在しており、増幅効率が1未満である場合、たとえ増幅反応を複数のサイクルで実施したとしても、選択された目的断片の全ては増幅反応によって実際に増幅されない確率が高くなる。サンプルの増幅反応の結果を、複数の異なる目的断片の検出によって1つの所定のシーケンスと比較する場合、および、この結果を、所定のシーケンスを2コピー含むサンプルの同じ条件下で実施された増幅反応と比較する場合、2コピーを有するサンプルに対しては、統計的に有効な確率で、正に検出可能な、増幅された、より多数の目的断片が得られる。
【0045】
この統計的な方法を以下に詳しく説明する。
【0046】
定義されたPCRプロトコル(とりわけ、温度プロトコル、サイクル数、反応剤の濃度、体積、増幅産物の検出時の閾値)に基づいて、特異性のプライマーまたはプライマー対を用いて実施された増幅反応の増幅産物の存在または不在は、原材料中のシーケンスのコピー数に応じている。本発明の計数方法を、以下で例示的に思考実験において説明する。
【0047】
サンプル中のコピー数0、1、および2以下は、90%以上の確実性で区別されるほうがよい。これらのコピー数を極体中の染色体に関連付けると、モノソミー(極体中のコピー数2)の場合と、健康な細胞(極体中のコピー数1)の場合と、トリソミー(極体中のコピー数0)の場合とが区別される。まず、蛍光によってマークされたm=8の異なるプライマーと、定義されたPCRプロトコルとによって、コピー数n=0,1,2の分かっている対照サンプルにPCRを行う。増幅産物の検出を、増幅産物の存在についての5重のバックグラウンド信号の閾値を用いるアレイ上のハイブリダイゼーションによって行う。k=100の実験毎に、コピー数nの3つの場合に対して、以下の個体数分布が得られる。
【0048】
【表1】

【0049】
より大きな数kに対しても上記分布は変化しないということを前提として、上記表から以下の結論を引き出せる。不特定のコピー数を有するサンプルに対して同じ実験を実施し、結果5/8、6/8、7/8、または、8/8が正であれば、コピー数n=2であるということを、必要とされる確実性で結論付けることができる。結果0/8が正であれば、元々のコピー数は、90%を上回る信頼度でn=0である。結果が2/8、3/8であれば、必要とされる確実性でコピー数n=1である。結果1/8および4/8を、必要とされる信頼度で判断することはできない。これらの場合にも必要とされる確実性で判断したいならば、例えば異なる増幅の数mを増やしてもよいし、または、PCRプロトコルを変更してもよい。他の思考実験において、m=12とすれば、以下の表2の対応する対照サンプルでの個体数分布が得られる。
【0050】
【表2】

【0051】
この場合、正の増幅反応の数は交差していない。すなわち、全ての当該値nを必要とされる信頼区間で判断できる。そこで、対照サンプルについての他の思考実験を、以下の結果となる他のPCR条件下で(サイクル数I=30をI=27に低減して)実施する。
【0052】
【表3】

【0053】
この場合は、値1/12および6/12に対して証拠をはっきりと示すことはできない。他の反復工程において、例えば検出の閾値を調節することにより、同じ実験に基づいて交差していない結果を得ることを再び試みてもよい。
【0054】
一般的に、本発明の計数法の最適化の目的は、出来る限りないm回のPCR反応によって、所望の範囲におけるコピー数nを確実に判断することである。このため、PCR条件、および、場合によってはプライマーを対応して最適化する必要がある。したがって、得られたパラメータは、本発明のキットに添付されていてもよく、使用者が使用者の結果を解釈するために役立つ。
【0055】
表4は、互いに独立して検査された結果の数が上昇した場合に証拠の統計的な確実性がどれほど上昇するかを示している。正規分布が基礎とされている。
【0056】
【表4】

【0057】
目的シーケンスに関する結果が、名目上は同一の原材料を用いる複数の単一実験(最後の場合は互いに依存していない32回の単一反応)において得られるのか、または、ただ1つの多重反応(例えば、ただ1つの細胞を基礎とする32重)において得られるのかは無関係である。
【0058】
本発明の方法を実施する際には、多重実験において増幅反応の依存性が互いに決められている、ということも可能である。
【0059】
本発明の方法では、反応条件を、成功した増幅反応についての上記で例示した分布ができる限りはっきりするように設定することが好ましい。すなわち、特に、個体数の少ない所定のシーケンスを検出するために、n=1を有するサンプルを、n=2のサンプルおよびn=3のサンプルと区別できる。
【0060】
驚くべきことに、増幅反応において、特にPCR増幅反応において、上記で説明したような分布は、条件が適切に設定されている場合は予測以上により一層はっきりとしている、ということが明示された。
【0061】
したがって、本発明の方法は、シーケンスの少数の(好ましくは0〜10の範囲の数である)個体数を決定するためにも特に適している。シーケンスの数の予期される数範囲に応じて、独立したPCR反応の数mとPCR条件とを、シーケンスの予期される数についての結果の信頼性が最適になるように設定できることが好ましい。
【0062】
サンプル材料として、ただ1つの細胞のゲノムのみを使用することが好ましく、この場合、所定のシーケンスが存在していないのか、もしくは、例えば1回または2回または3回または4回または5回存在しているのかを、本発明の方法によって確実に立証することができる。
【0063】
本発明の方法は、特に極体分析にも適している。
【0064】
所定のシーケンスは、例えば染色体であってもよいし、染色体の小部分、または、染色体の一部であってもよい。しかしながら、所定のシーケンスは、遺伝子、または、より大きなシーケンス断片であってもよい。基本的に、本発明の方法は、核酸および核酸シーケンスの各種(例えばプラスミドおよび他の人工シーケンス)に対して使用することができる。したがって、以下で例示する実施形態は、制限を目的として示すものではなく、原サンプル中の少数の核酸シーケンスの定量的検出の各々に適している。核酸シーケンスは、DNA、RNA、mRNA、cDNAまたは遺伝子DNAであってもよい。
【0065】
特に、本発明の方法は、ただ1つの細胞における染色体の数を決定するために適している。すなわち、この方法は、異数体の存在の確定に適している。
【0066】
本発明の方法は、複数の実施形態で実施することができる。
【0067】
染色体分析のために例示的に説明される第1実施形態では、特異性プライマーを用いて単細胞増幅が実施される。この場合は、細胞に対して、WGA、すなわち、非特異性増幅をまず実施する必要がない。
【0068】
しかしながら、好ましい第2実施形態では、単細胞または少数の細胞の核酸材料を非特異的に増幅するために、WGAを先ず実施する。続いて、請求項1に基づく特異性増幅を行う。PCRなどの増幅反応がこのように2つ次々と連続する場合も、増幅産物の数は、計数されるシーケンスのサンプル中に元々存在するコピー数に応じている。次に、表1〜3と同様の表を全プロセスに対して実験的に決定し、使用者は、これを基礎として使用者のサンプルでのコピー数を推定できる。この場合も、増幅産物が存在しているかしていないかについてある程度の確率分布が生じている。
【0069】
特異性増幅では、細胞に対する増幅反応を、特異性のプライマーまたは対応するプライマー対/プライマーの組み合わせを用いて行う。この場合、プライマーまたはプライマー対は、特定かつ特異性の数mの目的断片が染色体毎に増幅され得るように選択されている。染色体分析に対して、増幅される目的断片の数mは、少なくとも4であることが好ましく、少なくとも6であることがより好ましく、少なくとも8であることがより好ましい。染色体毎に、より多くの(例えば、10,12,14,16,20,30またはそれ以上の)目的断片を選択することもできる。しかしながら、ここでは、染色体毎に目的シーケンスの適切な数を選択することは当業者に委ねられている。各染色体に対して特異性を有する目的シーケンスの数m(この場合は染色体毎のmと解釈される)は、成功した及び成功しなかった増幅反応の統計的分布において、最終的に、鋳型分子のもともと存在する数についての証拠となり得るように十分に多い方がよい。他方では、染色体毎の特異性目的断片の数mは、使用されるプライマー又はプライマー対の数が妥当な程度を上回らないように、多すぎないほうがよい。既に説明したように、当業者は、染色体毎に増幅される目的断片の数mを、分析及び増幅方法に応じて独自に選択し、且つ、相応しい増幅条件を決めることができる。
【0070】
本発明の目的のために、核酸分子の数nの分かっている細胞からそれぞれ対照サンプルを、例えば核酸が全く存在していない細胞を対象0とし、核酸が1回だけ存在する細胞を対象1とするなどして選択して対照実験を行う。続いて、これらの対照サンプルの全てに対する増幅反応を、対応して選択されたプライマーまたはプライマー対を用いて行い、増幅条件を、核酸が1回(n=1)存在する対照サンプルに対して、上記核酸に対して特異性を有する目的断片の数がm=4〜30の範囲となり、増幅効率が約0.5の範囲となるように最適化する。このことは、核酸を2固体含む対照サンプル2を同じ増幅条件下で増幅する場合、増幅効率が著しく高くなることを意味している。このことは、表1からも分かる。
【0071】
本発明の第1実施形態は、個々の細胞中の染色体数の検出に特に好適である。特に、この方法は、極体が半数または倍数の染色体組を含んでいる可能性のある場合の極体分析に適している。ここでは、染色体毎に、各染色体に対して特異性を有する例えば4〜30個の、好ましくは6個の、好ましくは8個の目的断片を選択することが好ましい。目的断片の各々は、各染色体にたった1回存在していることが好ましく、それゆえ特異性である。このような細胞を、1つの染色体に対して1組のプライマー、または、全ての染色体に対して複数組のこのようなプライマーによって増幅する場合、増幅反応は、上記のように、全ての場合に増幅産物を生成するわけではなく、即ち、染色体毎にm個の目的断片のうちのいくつかは増幅されず、後に検出もできない。例えば、染色体が一回だけ存在している場合は、各染色体の例えば8個の目的断片のうちの4個(統計的な平均値)だけが増幅されるように、条件を設定することができる。このことは、結果において、対応するプローブによる後続の検出が4/8の結果となることを意味している。対照サンプルに基づいて増幅効率を予め0.5の値に決めておいた場合、結果4/8に基づいてサンプル中に染色体は1回だけ存在していたと結論づけることができる。
【0072】
例1によって、極体が染色体2を1回含んでいるのか、または、2回含んでいるのかを検査することができる。1つの極体に染色体が1回存在しているのかまたは2回存在しているのかという疑問は、極体の検査にとって意義がある。しかしながら、他の問題提起においては、所定のシーケンスが他の個体数で存在しているかどうか、および、可能性のある数範囲がこの例のように1および2の2つの数だけを含むのではなくて例えば3、4、または、5個の数の数範囲を含んでいるかどうかを確定することは有効である。より大きな数範囲、例えば所定のシーケンスがサンプル中に3回含まれているのか、4回含まれているのか、5回含まれているのか、または、6回含まれているのかも認識できるように、基本的には本発明を使用することができる。より大きな数範囲は、より大きな統計的根拠によってのみ認識可能である。ここでは、所定のシーケンスのより多くの異なる断片を増幅し、検出する必要がある。
【0073】
本発明の方法は、例えば20未満、10未満、好ましくは5または3未満である少数の所定のシーケンスの個体数を決定するためまたは計数するために特に適している。なぜなら、増幅の成功したシーケンス断片の数の統計的な拡張は、サンプル中の所定のシーケンスが少数である場合、特に明瞭だからである。
【0074】
例1では、統計的な方法としてXテストが使用される。しかしながら、他の統計的な方法も増幅結果の評価に適している。例えば、平均値比較(tテスト、Fテスト)、分散分析法方法(ANOVA、MANOVA)、多フィールドX検査または階層対数線形方法などが可能である。
【0075】
しかしながら、好ましい第2実施形態において、特異性目的断片に対して特異性を有するプライマーにより、サンプルに対する増幅反応を直接行う代わりに、全ゲノム増幅を先ず行うことも可能である。請求項1に基づく特異性増幅を後に行うWGA増幅に対して、親核酸(鋳型)の数nの分かっている対照サンプルの統計的な決定を参考にして、増幅条件を、以下のように決定することもできる。すなわち、増幅された目的断片の数から、正すなわち成功した増幅反応と、負すなわち成功しなかった増幅反応との統計的な分布を参考にして、予め選択した目的断片の数(m)と比較して、元々存在する核酸の数(n)を結論付けるように、増幅条件を決定することもできる。したがって、個体数表(表1、2、3)は、双方の増幅の組み合わせに関連している。
【0076】
この第2実施形態の一例を例1に示す。
【0077】
本発明の範囲内において、検出されるシーケンスの複数の異なる所定の断片を増幅することのできる各増幅方法は、サンプルの増幅に適している。このため、例1のように、単一のプライマーを使用してもよい。しかしながら、特定の断片または少数の断片に対してそれぞれ特異性を有する複数のプライマー対を使用することもできる。
【0078】
増幅産物は、例えば、電気泳動法、DNAアレイ上のハイブリダイゼーション分析、ビードシステム、もしくは、他の光学的測定、電気的測定または電気化学的測定によって分析することができる。
【0079】
単一の細胞の、または、名目上は同一の少数の細胞のゲノム中の所定のシーケンスの個体数を決定するには、方法の以下のような変形形態が有効である。
1.1細胞、WGA増幅(非特異性の単細胞増幅)、後続のPCR反応(マーカーPCR)の空間的な分離、(上記実施例に対応して)断片を検出する。
2.1細胞、WGA増幅(非特異性の単細胞増幅)、複合ハイブリダイゼーションにより断片を検出する。
3.1細胞、多重PCR、他の増幅をせずに断片を直接検出する。
4.名目上は同一の少数の細胞、反応槽毎にそれぞれ1つの細胞との多重PCR、他の増幅をせずに断片を検出する。
5.名目上は同一の少数の細胞、反応槽毎にそれぞれ1つの細胞との特異性PCR(正確に1つの)反応、他の増幅をせずに断片を検出する。
6.名目上は同一の少数の細胞、反応槽毎にそれぞれ1つの細胞との特異性PCR(正確に1つの)反応、各反応および細胞毎にそれぞれ異なるプライマー対を用いる増幅、断片を検出する。
【0080】
上記方法1〜3を、好ましくは数の分かっている少数の(例えば、10以下の)名目上は同一の細胞を用いて実施することもできる。
【0081】
上記変形形態1および2では、上記実施例のWGA増幅に相当するWGA増幅を実施する。このような単細胞増幅を、統計的な増幅ともいう。
【0082】
番号2の変形形態では、他の増幅をせずに、複合ハイブリダイゼーションによって断片を検出する。複合ハイブリダイゼーションを、DNAアレイまたはビードシステムでの場合のように、複数のプローブが同時に存在している方法と解釈する。
【0083】
番号3および4の変形形態では、多重PCRを実施する。これは、1つの反応槽において同時に実施される、複数の特異性のプライマー対を用いるPCRである。各プライマー対によって、シーケンスの正確に1つの断片が増幅されることが好ましい。このような多重PCRによって、2〜10個の断片を同時に増幅できることが目的に適っている。断片の数がより大きい場合は問題が生じる。なぜなら、その場合は増幅が非特異性になりすぎるからである。
【0084】
変形形態4では、名目上は同一の少数の細胞の遺伝子材料についての情報が、1つのサンプルにまとめられている。変形形態5および6では、まず、少数の名目上は同一の細胞の遺伝子材料を、それぞれ異なる反応槽において互いに独立して、正確に1つの断片を増幅する特異性PCRによって検査する。その後、他の増幅を行わずに(変形形態5)または他の増幅を行って(変形形態6)、断片を検出する。
【0085】
複数の細胞を分析する場合は、個体数の決定についての不確実性がより大きくなる。個体数の決定が最適に行われるのは、単一の細胞を分析する場合である。名目上は同一の細胞が数個ある場合は、結果を比較することができる。本発明の方法は、単一の細胞のゲノム(例えば、極体、母体血からの個々の胎性細胞など)の分析に特に適している。
【0086】
本発明の方法によって、サンプル中の所定のシーケンスの個体数を決定できる。所定のシーケンスは、サンプル中の分離した分子中に何回も存在している可能性がある。しかしながら、所定のシーケンスは、1つの鎖に何重にも形成されていてもよい。したがって、本発明の方法は、1つの鎖に何重にも存在する所定のシーケンスを、分離した分子の形状で存在する所定のシーケンスと同様に計数することができる。決定されるシーケンスは、複数の断片が互いに独立して増幅され得るように、ただ十分に長くなければならない。所定のシーケンスの長さは、少なくとも100個の塩基であり、好ましくは数100個の塩基である。
【0087】
本発明の方法によって、複数の異なる所定のシーケンスの個体数を同時に決定することができ、この場合も、異なるシーケンスが異なる鎖にまたは同じ鎖に形成されていてもよい。同じ鎖では、異なるシーケンスは重なり合っていてもよい。
【0088】
本発明の方法によって、異なるサンプルの所定のシーケンスの相対的な個体数を確定することができる。しかしながら、本発明の方法を、実験手順によって、増幅産物に存在するまたは存在しない特定の断片の個体数がサンプルの所定のシーケンスの絶対数についての証拠であり得るように変更することができる。
【0089】
本発明の方法を、共通の鎖上に存在するシーケンスの個体数を決定するため、および、異なる鎖上に存在するシーケンスの個体数を決定するために使用することができる。シーケンスは、プライマーによって異なる断片がアドレスされ得るように、ただ十分に長いほうがよい。
【0090】
本発明の他の対象は、本発明の方法を実施するためのキットであって、(i)サンプル中の個体数が決定される上記所定のシーケンスの数mの目的断片を、それぞれ異なる増幅産物となるように増幅することのできる、1つまたは複数の特異性プライマーと、
(ii)場合によっては、上記対照サンプル中の上記所定のシーケンスの上記個体数の各可能性のある値nに対する対照サンプル、および/または、
(iii)場合によっては、(i)の上記プライマーを用いた増幅反応、および/または、計数される上記シーケンスを既知の個体数含む対照サンプル(例えば、(ii)の対照サンプル)の結果と、
(iv)上記増幅反応に対する上記反応条件の説明書と
を含むキットである。
【0091】
このキットは、所定のシーケンスを所定のプロトコルに基づいて非特異的に増幅することのできる1つまたは複数の非特異性プライマーをさらに含んでいてもよい。
【0092】
対照増幅反応の結果の説明書は、格納されたデータの形状であってもよいし、または、印刷された資料がキットに添付されていてもよい。対照増幅反応の結果から、使用者は結果を読み取り、実際のサンプルからの使用者の独自の結果と比較することができる。
【0093】
本発明の方法を、小さな空間において(例えば、固定キャリア、チップ、またはスライドなどの上で)実施することができる。マルチウエルプレート(例えば、マイクロタイタープレート)においても、この方法を実施することができる。固定キャリアは、スライド、CD、またはDNAアレイフォーマットに対して使用されるその他の固定キャリアであることが好ましい。
【0094】
本発明の他の対象は、本発明の方法を実施するのに適した装置である。この装置は、例えばマークされたプローブによって「捕捉」された核酸を検出するためのユニット、すなわち、例えば、蛍光を検出するため、または、比色測定法のためのユニットを備えていることが好ましい。この装置は、比較データとしての役割を果たす格納されたデータをさらに有しており、この格納されたデータによって、比較によってサンプル中に元々含まれている所定のシーケンスの絶対数の決定が可能となるように、対照データに増幅の結果を割り当てることができる。もしくは、装置は、装置に格納されている対照データの代わりに、または、対照データに加えてさらに、サンプルと同じ条件下で対照サンプルを分析することのできる対照管理部を備えていてもよい。対照サンプルは、例えば実際の検査において検出される核酸または所定のシーケンスをn=0、n=1、n=2、n=3などの数で含んでいる。したがって、本発明の方法は、実際のサンプルによるのと全く同じように対照によって行われる。
【0095】
添付の図を参照して本発明をさらに説明する。
【0096】
本発明の方法を以下の例を参考に説明する。
(例1)
【0097】
1つの極体に染色体2が、1回存在しているのか、または、2回存在しているのかを検査する。
【0098】
このため、極体を採取した後、蒸留水によって洗浄し、コーティングされたスライド上に置いた。この極体を、サンプル1とした。比較のため、2つの極体を有するサンプル2を同様に用意した。
【0099】
単細胞WGA−PCR
単細胞WGA−PCRによって、双方のサンプルを増幅した。単細胞WGA−PCRは、単一の細胞または少数の細胞の遺伝子材料を増幅するように設定されている。単細胞WGA−PCRを、スライド上で実施し、この場合、サンプル上に、それぞれ1μlのPCR−Mixと5μlの鉱物油とを加えた。
【0100】
25μlのPCR−Mixは、以下のように組成されている。
19.125μlのアンプル水
2.5μlのMgCl(25mM)
2.5μlのdNTP混合物(それぞれ2nM)
0.375μlのQiagen社のHot Star Taq-DNAポリメラーゼ(5U/μl)
0.5μlのAle1プライマー(100pmol/μl)
Ale1プライマーは、以下のシーケンスを含んでいる。
Ale1 5'-TCCCAAAGTGCTGGGATTACAG-3’ (SEQ ID No. 1)
1つのサンプルと、PCR−Mixと、油膜とをそれぞれ含むPCRバッチを、以下のPCR条件で攪拌した。
変性: 95℃で15分
40サイクル 94℃で30秒
62℃で30秒
72℃で30秒
変位 72℃で10分
このPCRでは、サンプルの複数の異なる断片が同時に増幅される。したがって、このPCRを、WGA−PCRとも称する。
【0101】
PCR生成物を、20μlのTEバッファへ移した。そのうちの2μlをポリアクリルアミドゲル上で分析し、15μlをマーカーPCRによって増幅した。残りを−20℃で凍結した。
【0102】
マーカーPCR
サンプルの特定の断片が単細胞WGA−PCRによって増幅されたかどうか、を検出するために、マーカーPCRを実施した。
【0103】
マーカーPCRによって、単細胞PCRのPCR生成物の複数の部分を、これらの断片の1つに対してそれぞれ特異性である各1つの異なるプライマー対をその都度用いて増幅した。各単一のマーカーPCRに対して、以下のPCRバッチを用意した。
1.5925μlのアンプル水
0.6μlのバッファ
0.6μlのMgCl(25mM)
0.0325μlのPromega社のTaqポリメラーゼ(5U/μl)
0.075μlの単細胞PCRのPCR生成物
2.5μlのプライマー(2pmol/μl)が準備された
プライマー対をマイクロタイタープレートの反応槽に入れ、これに残りのPCRバッチをピペットで加えた。単細胞PCRによって染色体2から増幅された断片を検出するために、以下の8個のプライマー対を使用した。
RH102790 5'-TGAAGTCATCGTCTATAAGGCA-3' 5'-TCTATTTGTCCTGGGACCCA-3'
SHGC-31419 5'-TCCTATTTTGAGGGCGAGG-3' 5'-ATAAATACAAACATGTCAGACTGGG -3'
SHGC-62010 5'-AAGGTTTTATAATGGAAACACTG-3' 5'-TGAGTTCTGGAATTCATTACATA-5'
RH102813 5'-CCAACCACTTCAAGAAATAGGC-3' 5'-AATACAGTGTGGCCAAAGCC-3'
SHGC-30955 5'-GTTTTTTCTTTGAGTGACACAAGC-3' 5'-ACTTGTGTGATTTGTAAGCTGAAC-3'
G62066 5'-GCCTCACAAGCCTCATCAGT-3' 5'-CGGACTTGTCTAGAAATGAGCA-3'
G31877 5'-TTGGCCTCCACTTTACAGAC-3' 5'-CACCCGGCCTATGGACAGA-3'
SHGC-144725 5'-ATGGACAGGATGGTGATAAGGAA-3' 5'-AGATGCAAGGAAAGATGCTTACG-3'
上記プライマーのシーケンスをSEQ ID No.2〜17で示す。
【0104】
以下のPCR条件で、双方のサンプルを、それぞれ8個のPCRバッチにおいて、上記プライマー対の1つによってそれぞれ増幅する。
変性: 95℃で3分
35サイクル 95℃で30秒
55℃で30秒
72℃で30秒
変位 72℃で10分
増幅後、16個の増幅産物を、1つのローディングバッファーによって、ポリアクリルアミドゲル上で、各所定のシーケンス断片が存在していたかどうか、すなわち、増幅が正に行われたのかまたは負に行われたのかについてそれぞれ分析した。ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動検査の対応する画像を図2aおよび図2bに示す。なお、図2aは、サンプル1の巻きフィルム、図2bはサンプル2の巻きフィルムを示している。これらの画像に基づいて、サンプル1では2つの正の増幅産物が確定された、ということを認識できる。残りのその他の6個の増幅産物は、負である、すなわち、マーカーPCRのプライマーの選択によって予め決められた染色体2の所定の断片のうちの2つだけが、単細胞PCRによって増幅された。サンプル2では、8個の増幅産物が確定された。すなわち、8個の所定の断片の全てが、単細胞PCRによって増幅された。結果は図1にまとめられている。
【0105】
図2aおよび図2bに示す例において、サンプル2では8個全ての断片が増幅されたのに対してサンプル1では番号2および7の付された断片だけが増幅された、ということがはっきりと分かる。なお、番号2の付された断片に対する信号はより弱い。例えば負の増幅については「0」、および、正の増幅については「1」によっても示すことのできる純粋に数字の結果を得るために、断片の正の増幅と負の増幅とを区別する閾値を決めることが基本的には有利である。これらの閾値は、断片を検出するために選択された方法に応じて経験的に決める必要がある。
【0106】
例1は、サンプル中の所定のシーケンスの数がより少ない場合(ここでは、サンプル1の染色体2)、サンプル中の所定のシーケンスの数がより多い場合(ここでは、サンプル2の染色体2)よりも少ないシーケンスの断片が増幅されるという効果を非常に顕著に示す。
【0107】
この結果が純粋に無作為の任意抽出に基づいているのか、または、有意性を有しているのかを、統計的な方法によって確定することができる。適切な統計的な方法は、例えばL. Cavalli - Sforza, Biometrie, Gustav Fischer出版社, Stuttgart, 1974の22章に記載されているようなXテスト(カイ2乗検定とも言う)である。確定された結果に対してこのテストを行う場合、Xに対して9.6、および、誤り確率Pに対して0.003の値が出る。このことは、「観察される個体数における相違が無作為である」という仮定がP=0.003の誤り確率によって打ち消される、ということを意味している。
【0108】
したがって、この方法によって、サンプル2にはサンプル1よりも多くの染色体2が含まれている、ということが立証された。
【0109】
上記方法を数回実施し、結果を統計的に評価する場合、これにより確定される統計的なデータを参考にして、サンプル中の染色体2の絶対数を、増幅産物中の特定の断片の存在または不在の個体数に基づいて決定することができる。このことは、サンプルの所定のシーケンスの絶対数を計数するための方法の有効化を示す。この有効化の際に、上記閾値の影響について考慮する必要がある。閾値を高く設定すれば、正に増幅される断片はより少なく、これに対し、閾値が低い場合は、より多くの正の増幅が行われる。
(例2)
【0110】
特定の染色体の存在または不在について7個の細胞株(P1−2〜P1−8)をテストした。これらの細胞株は、Coriell社から取得したものである。Coriell社から取得した細胞は、Coriell社自身によって特定の染色体の存在または不在について既にテストされている。これらの細胞を、本発明の方法によって同じくテストした。結果を図3に示す(透明な方眼区画:染色体存在(方法の結果は一致する)。斜線の付いた方眼区画:染色体不在(方法の結果は一致する)。点の付いた方眼区画:染色体の存在を、本発明の方法は示し、他の方法は示さない。黒い方眼区画:本発明の方法は染色体の不在を示し、他の方法は染色体の存在を示す。)。
【0111】
細胞のDNAは、取り出され、パックラベルに基づいて、ヒト染色体についてある特定のパネルを含んでいる。Coriell社の証拠に加えて、Coriell社のウエブサイトのブロッティングテストに基づく試験結果も用いてもよい。 なぜこの会社が2つの説明書を作っているのかはわからない。ブロッティングテストは、細胞の小部分にのみ含まれている染色体も検出するために、明らかに十分な感度である。図3の第3列は、チップの結果をそれぞれ示している。
【0112】
結果:
本発明の方法の結果は、90%を上回るケースにおいて、他の方法の結果に一致している。
【0113】
本発明に基づくCoriell社の細胞に対するPCRの実験的な実施:
各10ngの染色体DNAを、表5及び表6に示すように25μlのAle中でPCR(プライマーAle1による全ゲノム増幅、例1参照)し、標準条件に基づいて攪拌した。
【0114】
【表5】

【0115】
【表6】

【0116】
25μlのPCRバッチを洗浄し(PCR浄化キットMacherey & Nagel社)、表7に示すように250μlの溶離バッファに入れ、そのうち、それぞれ1μlを、チップのMaster-Mixの添付された錨状体上にそれぞれ与えた。
【0117】
【表7】

【0118】
そして、このバッチを、以下の条件で攪拌し、ハイブリダイズさせた。
【0119】
【表8】

【0120】
続いて、スライドを洗浄し、スキャンした(Axxon社またはTecan社の標準的なスキャナ)。
(例3)
【0121】
ヒト卵母細胞の減数分裂の間に、あるシーケンスの4つのコピーを有する倍数の染色体組は、ただ1つのコピーを有する成熟卵母細胞に還元される。分裂は、2工程で行われる。
a.卵母細胞における相同染色体の分裂←→1.極体
b.成熟卵母細胞における染色分体の分裂←→2.極体
第1極体は、あるシーケンスの2つのコピーを含んでおり、成熟卵母細胞および第2極体は、あるシーケンスの1つのコピーをそれぞれ含んでいる。以下の分裂(一部は誤った分裂)が考えられる。
成熟卵母細胞は4つのコピーを含んでいる。←→極体はコピーを含んでいない。
成熟卵母細胞は3つのコピーを含んでいる。←→極体は1つのコピーを含んでいる。
成熟卵母細胞は2つのコピーを含んでいる。←→極体は2つのコピーを含んでいる。
成熟卵母細胞は1つのコピーを含んでいる。←→極体は3つのコピーを含んでいる。
成熟卵母細胞はコピーを含んでいない。←→極体は4つのコピーを含んでいる。
【0122】
誤った分裂が生じ、誤った分裂は、本発明の方法の正確さを示すために役立ち得る。
【0123】
上記例では、対応する極体と卵母細胞とが検査される。蛍光インシチュハイブリダイゼーション(FISH)が4つの正しい信号を示すならば、極体中にシーケンスを検出することはできないであろう。FISHが3つ以下の信号を示すならば、本発明の方法は正である(極体は少なくとも1つのコピーを含んでいる)に違いない。
【0124】
以下の実験は、確立されたFISH方法に対するチップ結果の対応を示す。単細胞の処理およびFISHハイブリダイゼーションを、各キットに添付のVysis社のプロトコルに基づいて行う。
【0125】
Vysis社のハイブリダイゼーションキットを用いたヒト卵母細胞のFISH分析の結果を図4に示す。最大の点(オリジナルでは青)は、蛍光によってマークされたプローブ分子であり、このプローブ分子は、染色体16を特異的に検出する。4つの正の信号(偽信号無し)は、卵母細胞中に4つの染色分体があり、減数分裂の間に染色分体は卵母細胞中に誤って残留していることを示している。
【0126】
チップ毎の対応する分析全染色体の存在/不在について、全ゲノム増幅に基づいて、極体増幅産物を検査する。実験の手順は上記で例1および例2において説明した。PCR条件および成分は例2と同様であるが、鋳型(DNA)は、チップ上に鋳型として存在する極体によって置換されている。
【0127】
スキャンの結果:イメージファイルのイメージ分析を、Alopex社のプログラム「TIFFアナライザー」を用いて行う。染色体16は、検出されない。この分析の結果を図5の欄5に示す。
【0128】
したがって、対応する第1極体は、染色体16を含んでいない。このことを、チップによって示すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明は、サンプル中のシーケンスの個体数を決定するための方法、その方法を実施するためのキット及び装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】第1例の結果を示す表である。
【図2】aは、所定の断片を検出するための電気泳動検査の画像である。bは、所定の断片を検出するための電気泳動検査の画像である。
【図3】一方側にCoriell社の、かつ、他方側に本発明の方法の、7個の細胞株についての染色体の存在または不在に関する比較を示す図である。
【図4】Vysis社のハイブリダイゼーションキットを用いたヒト卵母細胞のFISH分析の結果を示す図である。
【図5】プログラム「TIFFアナライザー」を用いるスキャンのイメージ分析を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの1つの所定のシーケンス、もしくは、前記所定のシーケンスと同一又はほぼ同一の複数のシーケンスの個体数を決定する方法であって、
上記サンプルの上記1つ又は複数のシーケンスの複数の異なる目的断片を増幅産物となるように増幅することのできる1回又は複数回の増幅反応を実施する工程と、
上記サンプルの上記シーケンスの特定の異なる目的断片が増幅されたかどうかを検出する工程と、
上記増幅産物中に存在する又は存在しない上記特定の異なる目的断片の個体数に基づいて、上記サンプル中の上記1つ又は複数のシーケンスの個体数を決定する工程と
を含むサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
(a)上記シーケンスを個体数n個含むサンプルを用意する工程と、
(b)上記サンプル中の上記所定のシーケンスの数mの目的断片をそれぞれ異なる増幅産物となるように増幅することのできるプライマーを用意する工程と、
(c)上記工程(a)の上記サンプルと上記工程(b)の上記プライマーとを用いる1回又は複数回の増幅反応を、成功する増幅反応の数が上記サンプル中の所定のシーケンスの個体数nに対応するように選択した反応条件下で実施する工程と、
(d)上記工程(c)で増幅された上記目的断片を検出し、上記成功した増幅反応の数を決定する工程と、
(e)上記サンプル中に含まれる所定のシーケンスの個体数nを決定する工程と
を含むサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
(f)上記サンプルに含まれるシーケンスの個体数nを、上記所定のシーケンスを既知の個体数含む1つ又は複数の対象との比較によって決定する工程をさらに含むサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項4】
請求項3に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記工程(f)の上記対象は、上記シーケンスを既知の固体数含む対照サンプルであり、該対照サンプルに、上記サンプルと同じ増幅条件を適用するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項5】
請求項3に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記工程(f)の上記対象が、上記シーケンスを既知の個体数含む対照サンプルの有効データであって、該対照サンプルには、上記サンプルと同じ上記増幅条件が適用されているサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記増幅反応を実施する工程が、
(i)上記所定のシーケンスを非特異的に増幅する1つ又は複数の非特異性プライマーを用いる第1増幅反応の実施と、
(ii)上記各目的断片に対して特異性のプライマーを用いる第2増幅反応の実施と、を含むサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記サンプルは、単細胞である、及び/又は、ただ1つの細胞の上記シーケンスを含んでいるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記サンプルは、極体である、及び/又は、ただ1つの極体の上記シーケンスを含んでいるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記所定のシーケンスは、染色体、又は、染色体の小部分又は一部であるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記サンプル中の所定のシーケンスの個体数nは、0〜100であり、好ましくは0〜30であり、より好ましくは0〜10であるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記サンプル中の所定のシーケンスの個体数nは、0〜5であるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項12】
請求項11に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記サンプル中の所定のシーケンスの個体数nは、0、1、2、又は、3であるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記成功する増幅反応の閾値が決められているサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記反応条件を、任意の目的断片に対するn=1のための上記増幅反応の効率が0.2と1未満との間であるように選択するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項15】
請求項10に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記反応条件を、任意の目的断片に対するn=1のための上記増幅反応の効率が0.4と0.6との間、好ましくは、例えば約0.5となるように選択するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記所定のシーケンスに対して特異性を有する上記目的断片の数mが、少なくとも4であるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項17】
請求項16に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記所定のシーケンスに対して特異性を有する上記目的断片の数mが、少なくとも6であるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項18】
請求項16又は17に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記所定のシーケンスに対して特異性を有する上記目的断片の数mが、少なくとも8であるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記所定の異なる目的断片の増幅産物の存在又は不在に基づいて上記サンプル中の1つ又は複数の所定のシーケンスの個体数nを決定する際に、該所定のシーケンスを既知の個体数含む対照サンプルから得た有効データを使用することで、該所定のシーケンスの絶対的な個体数を決定するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記増幅反応を実施するために、プライマー(統計的なプライマー)のうち、上記1つ又は複数のシーケンスの異なる目的断片の増幅に適した1種類を使用するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項21】
請求項20に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記所定のシーケンスの特定の目的断片が増幅されたかどうかを検査するために、上記増幅産物を、該特定の異なる目的断片の1つ又は複数に対してそれぞれ特異性を有する数種類のプライマーを用いて増幅するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記サンプルの上記増幅反応を実施するために、上記特定の異なる目的断片の1つ又は複数に対してそれぞれ特異性を有する数種類のプライマーを用いるサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記増幅産物に対し、電気泳動、DNAアレイ上のハイブリダイゼーション分析、マーキング法、ビードシステム、もしくは、その他の光学的、電気的又は電気化学的な測定によって、上記異なる断片の存在について検査し、各目的断片の増幅産物の量が特定の閾値を上回っているかどうかを決定するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
マーキングのついた特異性プライマーを使用し、
上記特定の異なる目的断片の検査の際に、上記各プライマーを用いてある特定の異なる目的断片に対して割り当てられている上記マーキングが、所定の閾値を上回っているかどうかを検出するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記1つ又は複数の所定のシーケンスの個体数を、上記増幅産物中の所定の目的断片の個体数の統計的な分析によって決定するサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項26】
請求項25に記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法において、
上記統計的な分析の証拠は、10%未満、好ましくは1%未満の誤り確率を含むサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法を実施するためのキットであって、
(i)サンプル中の個体数が決定される上記所定のシーケンスの数mの目的断片を、それぞれ異なる増幅産物となるように増幅することのできる、1つ又は複数の特異性プライマーと、
(ii)場合によっては、上記対照サンプル中の上記所定のシーケンスの個体数の各可能性のある値nに対する対照サンプル、及び/又は、
(iii)場合によっては、上記(i)の上記プライマーを用いた増幅反応、及び/又は、計数される上記シーケンスを既知の個体数含む対照サンプルの結果と、
(iv)上記増幅反応に対する上記反応条件の説明書と
を含むキット。
【請求項28】
請求項27に記載されたキットにおいて、
(v)上記所定のシーケンスを非特異的に増幅することのできる1つ又は複数の非特異性プライマーと、
(vi)場合によっては、上記(i)及び(v)のプライマーを用いる増幅反応、及び/又は、計数される上記シーケンスを既知の個体数含む対照サンプルの結果と、
(vii)上記増幅反応に対する上記反応条件の説明書と
をさらに含むキット。
【請求項29】
請求項27又は28に記載されたキットにおいて、
上記増幅反応を実施するための試薬をさらに含むキット。
【請求項30】
請求項27乃至29のいずれかに記載されたキットにおいて、
上記増幅反応、及び/又は、上記増幅された目的断片の検出を実施するための固定キャリアをさらに含むキット。
【請求項31】
請求項30に記載されたキットにおいて、
上記固定キャリアが、チップ又はスライドであるキット。
【請求項32】
請求項27乃至31のいずれかに記載されたキットにおいて、
上記特異性目的断片の検出に適したプローブをさらに含むキット。
【請求項33】
請求項1乃至26のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法を実施するための装置であって、
(a)請求項1乃至26のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法を実施するための固定キャリアと、
(b)上記(a)の上記固定キャリア上で得られた増幅産物を検出するためのユニットと、
(c)上記所定のシーケンスを既知の個体数含む対照サンプルから得られた格納された対照データ、又は、
(d)上記対照サンプルを請求項1乃至26のいずれかに記載されたサンプル中のシーケンスの個体数を決定する方法と同じ条件下で分析することのできる対照管理部と
を備える装置。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−507963(P2008−507963A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523013(P2007−523013)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008156
【国際公開番号】WO2006/010610
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(502096196)アドヴァリティクス アーゲー (9)
【Fターム(参考)】