サーキット走行車両位置情報提供システム
【課題】サーキット上の全ての参加車両の位置を表示することができて、レースの状況、込み合っている部分などの有益な情報を提供することができるサーキット走行車両位置情報提供システムを提供する。
【解決手段】各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得すると、車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化することにより、各車両の基準地点の通過を捕える。さらに、基準地点通過からの経過時間から、公認のラップタイムを用い、その車両の車両ラップタイムと基準のラップタイムとのずれから経過時間におけるその車両の車両位置を求めて、それを表示装置にサーキットと合わせて表示する。
【解決手段】各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得すると、車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化することにより、各車両の基準地点の通過を捕える。さらに、基準地点通過からの経過時間から、公認のラップタイムを用い、その車両の車両ラップタイムと基準のラップタイムとのずれから経過時間におけるその車両の車両位置を求めて、それを表示装置にサーキットと合わせて表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーキットを周回走行する車両の位置情報を提供し、または、その車両位置情報を表示するサーキット走行車両位置情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサーキットで走行する車両の位置を決めるための位置決めシステムとして特許文献1に記載されたものが知られている。これによれば、各レーシングカーが自己の位置に関する位置決めデータを得て、これを中央装置へと送り、中央装置の計算装置が、サーキット上のレーシングカーの位置を計算し、位置決めシステムに参加しているレーシングカーのサーキット上の位置を大画面のビデオ・ディスプレーに表示したり、計算装置で計算された位置の信号を、放送用、テレビ用または他の通信機関、例えば、インターネットのプロバイダーに送ることができるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特表2003−514293(段落番号0028〜0034)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる上記公報に記載の位置決めシステムでは、次のような問題がある。
・位置決めシステムに参加しているレーシングカーからの位置情報しか取得することができず、位置決めシステムに参加を拒否しているレーシングカーについての位置情報は全く得ることができない。そのために、実際のサーキット上の全てのレーシングカーを表示することはできず、システムとしては不完全なものとなる。
・各レーシングカーの位置決めデータを得るために上記公報ではGPSを用いているが、GPSでは、サーキットに立体交差があると信号が切断されてしまい、再接続されるまでに時間を要する(約30秒程度)ために、その間、レーシングカーの位置決めデータが途切れることになる。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、サーキット上の全ての参加車両の位置を表示することができて、レースの状況、どの地点で込み合っているかなどの有益な情報を提供することができるサーキット走行車両位置情報提供システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力する、コンピュータによって実現されるサーキット走行車両位置情報提供システムであって、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、
サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
を備え、
前記ラップタイム取得手段は、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、を備え、
前記位置計算手段は、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、を備える
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置をサーキットの表示と共に表示する表示装置をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記車両位置計算手段が、各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記オフセット計算手段が、公認のラップタイムデータの最新のラップタイムまたは最新を含め最新から複数の平均ラップタイムを前記車両タップタイムとすることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記車両位置計算手段が、前記オフセットを用いて、各車両が基準ラップタイムで走行したと仮定したときに同じ車両位置に達する経過時間(以下、修正経過時間)を求め、第1記憶手段を参照して、その修正経過時間に対応する車両位置を現在の車両位置とすることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記車両位置計算手段が、第1記憶手段を参照して、計時手段からの経過時間に対応する速度、走行距離若しくは車両位置を取得し、取得した値をオフセット分だけ修正してその車両位置を現在の車両位置とすることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ラップタイム更新手段が、車両がピットインしていることを表す公認のピットインデータを公認のラップタイムデータと共に併せて取得して第3記憶手段に記憶しており、前記車両位置計算手段は、ある車両に対応してピットインデータが取得されたときに、現在の車両位置として基準地点を第2記憶手段に記録することを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のものにおいて、前記オフセット計算手段が、ピットイン直後の車両に対して、または計算したオフセットと前のオフセットとの差が閾値以上である車両に対して、最新のラップタイムを除く過去のラップタイムの平均からオフセットを求めることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、コンピュータに、基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力させるためのサーキット走行車両位置情報提供プログラムであって、コンピュータを、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
して機能させ、さらに、
前記ラップタイム取得手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、して機能させ、
前記位置計算手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、して機能させる
ことを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記車両位置計算手段は、各車両について現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、各車両が基準地点を通過する毎に提供される、各車両の公認のラップタイムデータを利用する。この公認のラップタイムデータは、通常、レース主催者等が提供しており、リアルタイムで容易に入手可能である。ちなみに、このように入手可能な公認のデータの中には、図5に示すように、ラップタイムデータの他にベストラップタイムデータや各車両の現在の順位といったデータもある。しかしながら、こういったラップタイムデータ及び順位データからは車両の調子や勝負の状況といったことは分かるかもしれないが、サーキット上の状況は全く分からない。本発明では、ラップタイム更新手段が、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得すると、初期化手段が、車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化することにより、各車両の基準地点の通過をほぼ正確に捕えることができる。そして、オフセット計算手段が、その公認のラップタイムから車両ラップタイムを求め、記憶手段に予め記録されている基準のラップタイムとのずれであるオフセットを求める。
【0017】
さらに、計時手段が基準地点通過からの経過時間を計時し、車両位置計算手段がオフセットからその経過時間におけるその車両の車両位置を求めることができる。求められた車両の車両位置は、正確な車両位置ではなく予測車両位置ではあるが、各車両のラップタイムはラップ毎に大きく変動しないために、サーキットの状況を分かるようにする目的は十分に達することができる。
【0018】
これによれば、公認のラップタイムデータを用いるために、レースに参加している全ての車両のデータを取得でき、任意の車両のサーキット上の位置を求めることができて、それを表示することができるようになる。予測車両位置であっても、サーキット上でどこが輻輳しているか、着目している車両がどの地点にいるかといったことを知ることは非常に有効である。レース関係者であれば、その車両のピットインのタイミングを図ったり、ドライバに注意を促がしたりすることができるようになる。また、観戦者であれば、通常一部の状況しか分からないテレビ観戦やスタンド観戦と合わせて、レース全体の状況が分かり、一層の興味・関心を喚起させることができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、求めた現在の車両位置をサーキットの表示と共に表示することで、有用性が高まることとなる。
【0020】
請求項3及び10記載の発明によれば、求めた現在の車両位置データを外部に配信することにより、そのデータの利用範囲が広がり、有用性が一層高まることになる。外部としては、専用回線、イントラネット又はインターネットを介して、及び/又はWWWサーバを介して、インターネットプロバイダ、テレビ局、ゲーム関連企業といった様々な媒体に配信することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、最新のラップタイムまたは最新から複数の平均ラップタイムを車両ラップタイムとして、基準ラップタイムとのずれを求めることにより、現在の状況を最も反映した計算をすることができ、車両位置を正確に求めることができるようになる。
【0022】
請求項5または6記載の発明によれば、オフセットを用いて第1記憶手段に記録されている基準のデータを修正することで、その車両の車両ラップタイムに合致した車両位置を求めることができるようになる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、公認のピットインデータを利用して、そのピットインデータから現時点でピットインしており走行していないことが明らかな車両を基準地点で表示することにより、正確な車両位置を求めることができるようになる。
【0024】
請求項8記載の発明によれば、ピットイン直後の車両は一般的にラップタイムが遅くなることがあり、またはそれ以外の何らかの理由によりラップタイムがその車両の標準的なラップタイムよりも大きく異なることもあり得るので、その標準から外れたラップタイムを使用せずにオフセットを求めることで、オフセットの精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に関わるサーキット走行車両位置情報提供システムの全体構成ブロック図である。ここで、適用可能な走行車両としては任意のものが可能であり、四輪車、二輪車、カートといったサーキットを複数周、周回するものであれば、任意の車両に適用可能である。
【0026】
図において、該サーキット走行車両位置情報提供システムが実現されるコンピュータ10は、CPU、ROM、RAM等を有し、プログラムに従いデータの転送、演算、一時的なデータの格納またはメインプログラムの格納を行う制御回路12と、ラップタイムデータといった公認の車両状況データを提供するサーバ装置20との間で無線または有線でデータの入出力の制御を行うI/O制御回路14と、データ及びプログラムの格納を行う記憶装置16と、を備えている。同時にCPUは、コンピュータが立ち上げられたときからの経過時間をms単位で計時してCPU内部カウントを出力するCPU内部カウンタを有する。コンピュータ10には、表示装置18が接続される。
【0027】
サーバ装置20は、レース主催者等の公認の装置であり、レース主催者等が公式に発表する最新のラップタイムデータ等の公認車両状況データが公認車両状況ファイル22に格納されており、これらの公認車両状況データの提供元となる。このようなサーバ装置20は公知である。
【0028】
サーバ装置20に格納され、且つサーバ装置20が提供可能となった公認車両状況データとしては、図5に示すように、「現在時刻」の他に、車両ごとに予め割り当てられており各車両を特定するゼッケン(図5において「Car No」以下、車両識別データという)と、この「車両識別データ」に関連付けて、「ポジション」(図5において「Pos」)、「最新ラップタイム」(図5において「NowTime」)、「ベストラップタイム」(図5において「BestTime」)、「ラップ数」(図5において「Lap」)及び「ピットフラグ」(図5において「Pit」)、「車両名」(図5において「Machine」)、「クラス」(図5において「Class」)の各データがある。「ポジション」とは順位である。「最新ラップタイムデータ」は任意の手段によって計測された公認の記録であり、最新の周回において、基準地点となるスタートラインから一周するのに要した時間、即ちラップタイムであり、「ベストラップタイム」とは、過去のラップタイムの中で最も速く周回したときのラップタイムである。また、「ラップ数」はサーキットを周回した回数となる。「ピットフラグ」は、車両がピットインしている場合に立つフラグ(「P」で表される)である。以上のデータは、原則的に各車両がスタートラインを通過する毎に更新される。
【0029】
サーキット走行車両位置情報提供システムが実現されるコンピュータ10は、そのプログラムによって実現される機能として、大きく、サーバ装置20からラップタイムを取得するラップタイム取得手段100と、各車両の車両位置を計算する位置計算手段120とを備えており、各手段はそれぞれ独立して処理を行なう。
【0030】
ラップタイム取得手段100は、さらに、サーバ装置20から各車両の更新されたラップタイムを取得するラップタイム更新手段102と、更新されたラップタイムが取得されると該当車両に関連する経過時間及び車両位置の初期化を行なう初期化手段104と、ラップタイム更新手段で取得されたラップタイムからその予め設定された基準ラップタイムからのずれ、具体的には比率を表すオフセットを計算するオフセット計算手段106とを備える。
【0031】
また位置計算手段120は、さらに、各車両について、ラップタイムが更新されてから描画タイミングで、現在の経過時間を出力する計時手段122と、計時手段からの経過時間とオフセット計算手段からのオフセットにより現在の予測距離を求める距離計算手段124と、距離計算手段124により予測距離からサーキットマップ上の座標を求めるサーキット座標計算手段126と、サーキット座標計算手段126からの座標から描画を行なう描画手段128と、を備える。位置計算手段120の各手段は描画タイミングで車両毎に独立処理を行なう。距離計算手段124とサーキット座標計算手段126とは、併せて車両位置計算手段を構成する。
【0032】
また、サーキット走行車両位置情報提供システムが実現されるコンピュータ10は、前述のように、対象となるサーキットの基準ラップタイムLsのデータを予め記録しており、且つ、その基準ラップタイムでそのサーキットを走行したときの、単位時間Δt経過毎の経過時間と基準データとしての基準車速とが配列的に関連付けられた基準ファイル200を第1記憶手段として記憶装置に備えている。この基準ファイル200は、実測によって予め求めておくものであり、レースに参加するのとほぼ同じクラスの車両で普通のドライバがサーキットを走行したときの車速を単位時間経過毎に求めておき、これを基準車速として格納しておく(図2(a))。
【0033】
さらには、基準地点からの走行距離とサーキットマップ上の座標とが配列的に関連付けられた座標ファイル202を記憶装置に備えている(図2(b))。基準地点からの走行距離と、サーキットマップとの座標は一義的に予め対応づけることができる。通常、サーキットには勾配があるので、走行距離は、三次元の座標と一義的に対応付けられることになるが、表示方法が二次元画像である場合には、三次元座標のうちの高度を表す座標については省略し、水平面に投影した二次元座標とすることが可能である。
【0034】
さらには、コンピュータ10は、サーバ装置20から取得される公認車両状況ファイル22から抽出された各車両の最新のラップタイム及びピットフラグ等の車両状況データを記録する車両状況ファイル204(第3記憶手段)と、エントリファイル206と、演算によって求める車両予測メモリ208(第2記憶手段)と、を備えている。
【0035】
車両状況ファイル204は、三次元ファイル構造をとっており、ラップ数毎に、車両識別データ毎で、「ポジション(Position)」、「ピットフラグ(PitFlag)」、「ベストラップタイム(BestTime)」「最新ラップタイム(NowTime)」及び「積算ラップタイム(Σ)」の各車両状況データを有する(図3)。途中、棄権した車両があった場合には、棄権したラップ数以降のデータは格納されない。
【0036】
エントリファイル206は、そのレースに参加する車両の車両識別データにその車両の「車両名」、「クラス」等が関連付けられて格納される。これらのデータは、表示のために使用されるが、レース中変化することがないデータであり、サーバ装置20の公認車両状況ファイル22を最初に読み出したときに、必要なデータを予め読み込んでおくことができる。または、別途コンピュータ10の付属の入力手段から予め入力されることでもよい。
【0037】
車両予測メモリ208(第2記憶手段)は、各車両識別データに関連付けられて、その車両の「合計経過時間」、「修正合計経過時間」、「走行距離」、「車両位置」、「オフセット」、「CPU内部カウント」を有する。これらのデータは、レースの進行と共に随時変化していくものであるが、詳細については以下に説明する。
【0038】
以上のように構成されるサーキット走行車両位置情報提供システムの処理について以下、説明する。
【0039】
ラップタイム更新手段102は、図6に示すように、常時一定周期で、サーバ装置20の公認車両状況ファイル22を読み出し、コンピュータ10に既に格納している車両状況ファイル204の対応するデータと比較して、その中で、レース参加中の車両の中のいずれかの車両の車両状況データが更新されたか否かを判定している(ステップS12)。データが更新されたということは、その車両が周回して基準地点を通過したことを表しており、その判定として具体的には、いずれかの車両の「ラップ数」が変化したかを見ることを例示することができるが、これ以外の項目を組み合わせてまたは単独で比較することもできる。ある車両識別データに対応付けられたラップ数等の項目が変更されていれば、その車両識別データに対応する「ポジション」、「最新ラップタイム」、「ベストラップタイム」、「ラップ数」及び「ピットフラグ」のデータを読み出し、対応する車両状況ファイル204の領域に格納する。
【0040】
次に、初期化手段104は、CPU内部カウントを取得し(ステップS14)、その値を車両予測メモリ208における更新された当該車両の「CPU内部カウント」として格納し、車両予測メモリ208における当該車両に関連する「経過時間」を初期化(=0)し(ステップS16)、「車両位置」、「走行距離」を初期化する(ステップS18)。車両位置の初期値は基準地点、走行距離の初期値は0である。
【0041】
次に、オフセット計算手段106は、取得されたラップタイム、ここでは最新ラップタイムLから基準ラップタイムLsからのずれを表すオフセットを求める(ステップS20)。この場合のオフセットは、両者の割合となる
オフセット=L/Ls
の式によって求め、この最新のオフセットを、車両予測メモリ208の該当領域に書き込む。
【0042】
以上の初期化手段104によって初期化された経過時間及び車両位置と、オフセット計算手段106からのオフセットの各データは、位置計算手段120へと入力されて、使用される。
【0043】
位置計算手段120では、おおまかに、図7に示すように、計時手段122による経過時間の計算(ステップS32)と、距離計算手段124による走行距離の計算(ステップS34)と、サーキット座標計算手段126による座標の計算(ステップS36)と、描画手段128による描画(ステップS38)とが、行なわれている。但し、これらの処理は順次行なわれるのではなく、独立に並列処理されることが可能である。
【0044】
位置計算手段120の計時手段122は、図8に示すように、初期化手段によって経過時間が初期化された後、CPU内部カウントを取得し(ステップS42)、車両予測メモリ208で記憶されていた前回のCPU内部カウントと今回のCPU内部カウントの差分から、今回経過時間を、
今回経過時間=今回CPU内部カウント−前回CPU内部カウント
とし(ステップS44)、記憶されていた前回の(処理前)合計経過時間と今回経過時間から
合計経過時間T=(処理前)合計経過時間+今回経過時間
により現在の合計経過時間を求め(ステップS46)、このステップS42〜S46を順次繰り返して車両予測メモリ208の合計経過時間を更新しており、最新の合計経過時間を距離計算手段124へと出力している。
【0045】
距離計算手段124は、図9に示すように、まず、計時手段122からの最新の合計経過時間に対して、オフセットを用いて、合計経過時間の修正を行なう(ステップS52)。修正合計経過時間は、
修正合計経過時間T’=合計経過時間T/オフセット
として表される。これは、オフセットが1より小さいとき、即ち、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが小さい場合、車両は基準よりも速く走っているので、時間軸を伸ばし、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが大きい場合、車両は基準よりも遅く走っているので、時間軸を短くする、ことを意味する。
【0046】
但し、修正合計経過時間が基準ラップタイムLsよりも大きいかどうかを判定する(ステップS53)。修正合計経過時間が基準ラップタイムLsよりも大きくなっている場合には、基準地点を通過していることになるので、本来ならば公認のラップタイムが更新されているはずであるのが、まだ更新されていない場合であり、その場合には、走行距離は最大走行距離、即ち、サーキットの全長とする(ステップS64)。これは現在の実際のラップタイムが、処理の基準としている過去の最新のラップタイムよりも遅い場合に発生する。
【0047】
次いで、変数tを初期化(=t0)し(ステップS54)、修正合計経過時間T’とtの比較を行い(ステップS56)、tが合計経過時間よりも小さい場合には、基準ファイル200からtに対応する基準速度データを取得し(ステップS58)、走行距離を以下の式から求める(ステップS60)。
走行距離=(処理前)走行距離+基準速度×Δt
【0048】
次いで、tをΔt加算して(ステップS62)、tがT’よりも大きくなるまで、ステップS56〜ステップS62を繰り返して基準速度×単位時間Δtの積算を行なうことにより、修正合計経過時間における走行距離を求めることができる。こうして求められた走行距離は、車両予測メモリ208に更新され、サーキット座標計算手段126へと出力される(ステップS66)。
【0049】
サーキット座標計算手段126では、図10に示すように、まず、ピットフラグが立っているかどうかを判定する(ステップS71)。ピットフラグが立っている車両は、ピットインしていてサーキットを走行していないので、車両位置は今までの計算に拘わらず、車両位置を基準地点座標とする(ステップS76)。勿論、前述の処理によって最新のラップタイムを利用してサーキット上で走行しているものとして表示しても構わない場合には、ステップS71の判定は不要である。
【0050】
次に、出力された走行距離が最大走行距離であるサーキット全長よりも大きいかどうかを判定し(ステップS72)、大きい場合には、車両位置を基準地点座標とする(ステップS76)。最大走行距離よりも走行距離の方が大きいというのは、実際にはありえないことではあるが、計算上で基準地点を通過していることになるので、その終点、即ち、基準地点を座標データとする。
【0051】
ステップS72の判定で、出力された走行距離が最大走行距離であるサーキット全長よりも小さい場合には座標ファイル202を参照して、走行距離に対応する座標を取得する(ステップS74)。そして、取得した座標データを車両予測メモリ208の該当領域に書き込み、車両識別データと合わせて表示装置18に描画する(ステップS78)。
【0052】
以上の処理を、それぞれの車両について並列に行なうことにより、表示装置18には、図11に符号18aで示すように、レースに参加している全ての車両のサーキット上の予測車両位置を表示することができる。表示18a中、番号は車両識別データである「Car No.」である。これによって、サーキット上でのレースの状況、輻輳部分などが、一目で分かるようになる。
【0053】
表示装置18には、併せて、ポジション順に並んだ車両のリスト18b、選択された車両のラップタイムの推移18cなどを表示することも可能であり、レースの詳細情報を併せて提供することができる。よって、プログラムがインストールされたコンピュータを有する各参加チームは、それぞれサーバ装置20から公認車両状況データを取得することにより、各チームのコンピュータ10に接続された表示装置18にサーキット状況を表示させることが可能である。
【0054】
以上の処理においては、次のような様々な変形が可能である。
・基準ファイル200において経過時間と基準速度とが対応付けられて記録されていたが、これに限るものではなく、予め基準速度を積算により基準走行距離に変換しておき、経過時間と基準走行距離とを対応付けて記録しておくこともできる。その場合には、図12に示すように、修正合計経過時間T’を求めると、そのT’に対応する走行距離を直接求めることができる(ステップS80)。さらには、走行距離は車両位置と一義的に関連付けられるので、基準ファイル200において経過時間と基準車両位置とを対応付けて記録することにより、座標ファイル202を省略することも可能である。これにより、距離計算手段124とサーキット座標計算手段126は、一つの手段として統合することが可能である。
【0055】
・距離計算手段124において、修正合計経過時間を求める代わりに、オフセットを用いて速度(または距離でもよい)を修正することも可能である。即ち、図13に示すように、その該当する基準ファイル200を参照し、tに対応する基準速度データ(または基準走行距離)を取得する(ステップS58)。次いで、オフセットを用いて、その基準速度データの修正を行う(ステップS86)。即ち、
修正基準速度データ=基準速度データ/オフセット
として表される。これは、オフセットが1より小さいとき、即ち、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが小さい場合、車両は基準よりも速く走っているので、速度を速くし、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが大きい場合、車両は基準よりも遅く走っているので、速度を遅くする、ことを意味する。
【0056】
次いで、走行距離を以下の式から求める(ステップS60)。
走行距離=(処理前)走行距離+修正基準速度×Δt
【0057】
そして、tをΔt加算して(ステップS88)、tがT’よりも大きくなるまで、ステップS82〜ステップS88を繰り返して基準速度×単位時間Δtの積算を行なうことにより、修正合計経過時間における走行距離を求めることができる。但し、tがLsよりも大きくなると(ステップS90)、基準ファイル200には、該当する経過時間がないので、その場合には、t=t−Lsの処理を行い(ステップS92)、該当する経過時間が存在するようにするとよい。
【0058】
・オフセット計算手段106の処理において、1つの最新ラップタイムに基づいてオフセットを求めていたが、これに限るものではなく、最新の複数のラップタイムの平均のラップタイムに基づいて、これと基準ラップタイムとのずれを求めてオフセットとすることも可能である。または、1つまたは複数の最新のラップタイムを使用するのではなく、過去のすべてのラップタイムの平均のラップタイムと基準ラップタイムとのずれを求めてオフセットとすることも可能である。しかしながら、通常、ラップタイムは、天候、車両の状態などにも左右される傾向にあり、レースの段階に応じて大きく変化することも多いので、1つまたは複数の最新のラップタイムを用いて計算を行なうことが好ましい。
【0059】
・ピットイン直後の最新ラップタイムは、ピットインしている時間が加算されるために値が大きくなる。そのため、最新のラップタイムを使用した計算では、速度の遅い車両として表示されることになる。このような不具合を防止するために、オフセット計算手段106では、車両状況ファイル204の前のラップのピットインフラグのデータを必ず参照するようにして、ピットインのフラグが立っている場合には、最新のラップタイムを使用する代わりに、その前のラップタイムを使用するか、その前の複数のラップタイムの平均を使用するか、または全ラップタイムの平均を使用してオフセットを求めるようにすることができる。
【0060】
・または、ピットインを含め何らかのアクシデントにより最新のラップタイムが今までのラップタイムと比較して、大きく異なる場合には、その最新のラップタイムを使用しないようにすることもできる。具体的には、オフセット計算手段106では、新しく計算したオフセットと、車両予測メモリ208に格納されている今までのオフセットとを比較し、その差異が閾値以上である場合に、新しく計算したオフセットを採用せずに、今までのオフセットを採用するようにすることもできる。
【0061】
・コンピュータ10に接続された表示装置18に表示させる他に、以上の各車両の車両位置データは、コンピュータ10から無線または有線によってレース場内にある大型スクリーンに送られて、そこで表示させることも可能である。これによって、関係者、スタンドに居る観戦者が皆、サーキット状況を把握することができるようになる。
【0062】
さらには、コンピュータ10からさらにI/O制御回路14を介して、各車両の車両位置データは、無線または有線のいずれかによって外部へと出力することも可能である。また、このデータをインターネットプロバイダのWWWサーバを介してインターネットで配信することも可能であり、またはテレビ局といった通信機関を介して配信することも可能である。例えば、レースをレース場で見ている観戦者または自宅等で実況をテレビまたはインターネットで見ている観戦者が自己のコンピュータを操作しプロバイダを介してインターネットに接続して、この各車両の車両位置データを取得して、自己のコンピュータの表示装置に表示させることもできる。または、ゲーム関連企業を介しての配信により、この車両位置データをゲームの情報としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態にかかるサーキット走行車両位置情報提供システムの全体構成ブロック図である。
【図2】(a)は図1の基準ファイル、(b)は座標ファイルの構成例である。
【図3】図1の車両状況ファイルの構成例である。
【図4】(a)は図1のエントリファイル、(b)は車両予測メモリの構成例である。
【図5】サーバ装置から提供される公認車両状況ファイルの構成例である。
【図6】ラップタイム更新処理を表すフローチャートである。
【図7】位置計算処理を表すフローチャートである。
【図8】経過時間の計算処理を表すフローチャートである。
【図9】走行距離の計算処理を表すフローチャートである。
【図10】座標の計算処理を表すフローチャートである。
【図11】表示装置での表示例である。
【図12】走行距離の計算処理を表す別のフローチャートである。
【図13】走行距離の計算処理を表すさらに別のフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10 コンピュータ
100 ラップタイム取得手段
102 ラップタイム更新手段
104 初期化手段
106 オフセット計算手段
120 位置計算手段
122 計時手段
124 距離計算手段(車両位置計算手段)
126 サーキット座標計算手段(車両位置計算手段)
200 基準ファイル
202 座標ファイル
208 車両予測メモリ(第2記憶手段)
18 表示装置
T’ 修正合計経過時間
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーキットを周回走行する車両の位置情報を提供し、または、その車両位置情報を表示するサーキット走行車両位置情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサーキットで走行する車両の位置を決めるための位置決めシステムとして特許文献1に記載されたものが知られている。これによれば、各レーシングカーが自己の位置に関する位置決めデータを得て、これを中央装置へと送り、中央装置の計算装置が、サーキット上のレーシングカーの位置を計算し、位置決めシステムに参加しているレーシングカーのサーキット上の位置を大画面のビデオ・ディスプレーに表示したり、計算装置で計算された位置の信号を、放送用、テレビ用または他の通信機関、例えば、インターネットのプロバイダーに送ることができるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特表2003−514293(段落番号0028〜0034)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる上記公報に記載の位置決めシステムでは、次のような問題がある。
・位置決めシステムに参加しているレーシングカーからの位置情報しか取得することができず、位置決めシステムに参加を拒否しているレーシングカーについての位置情報は全く得ることができない。そのために、実際のサーキット上の全てのレーシングカーを表示することはできず、システムとしては不完全なものとなる。
・各レーシングカーの位置決めデータを得るために上記公報ではGPSを用いているが、GPSでは、サーキットに立体交差があると信号が切断されてしまい、再接続されるまでに時間を要する(約30秒程度)ために、その間、レーシングカーの位置決めデータが途切れることになる。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、サーキット上の全ての参加車両の位置を表示することができて、レースの状況、どの地点で込み合っているかなどの有益な情報を提供することができるサーキット走行車両位置情報提供システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力する、コンピュータによって実現されるサーキット走行車両位置情報提供システムであって、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、
サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
を備え、
前記ラップタイム取得手段は、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、を備え、
前記位置計算手段は、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、を備える
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置をサーキットの表示と共に表示する表示装置をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記車両位置計算手段が、各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記オフセット計算手段が、公認のラップタイムデータの最新のラップタイムまたは最新を含め最新から複数の平均ラップタイムを前記車両タップタイムとすることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記車両位置計算手段が、前記オフセットを用いて、各車両が基準ラップタイムで走行したと仮定したときに同じ車両位置に達する経過時間(以下、修正経過時間)を求め、第1記憶手段を参照して、その修正経過時間に対応する車両位置を現在の車両位置とすることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記車両位置計算手段が、第1記憶手段を参照して、計時手段からの経過時間に対応する速度、走行距離若しくは車両位置を取得し、取得した値をオフセット分だけ修正してその車両位置を現在の車両位置とすることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ラップタイム更新手段が、車両がピットインしていることを表す公認のピットインデータを公認のラップタイムデータと共に併せて取得して第3記憶手段に記憶しており、前記車両位置計算手段は、ある車両に対応してピットインデータが取得されたときに、現在の車両位置として基準地点を第2記憶手段に記録することを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のものにおいて、前記オフセット計算手段が、ピットイン直後の車両に対して、または計算したオフセットと前のオフセットとの差が閾値以上である車両に対して、最新のラップタイムを除く過去のラップタイムの平均からオフセットを求めることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、コンピュータに、基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力させるためのサーキット走行車両位置情報提供プログラムであって、コンピュータを、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
して機能させ、さらに、
前記ラップタイム取得手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、して機能させ、
前記位置計算手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、して機能させる
ことを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記車両位置計算手段は、各車両について現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、各車両が基準地点を通過する毎に提供される、各車両の公認のラップタイムデータを利用する。この公認のラップタイムデータは、通常、レース主催者等が提供しており、リアルタイムで容易に入手可能である。ちなみに、このように入手可能な公認のデータの中には、図5に示すように、ラップタイムデータの他にベストラップタイムデータや各車両の現在の順位といったデータもある。しかしながら、こういったラップタイムデータ及び順位データからは車両の調子や勝負の状況といったことは分かるかもしれないが、サーキット上の状況は全く分からない。本発明では、ラップタイム更新手段が、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得すると、初期化手段が、車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化することにより、各車両の基準地点の通過をほぼ正確に捕えることができる。そして、オフセット計算手段が、その公認のラップタイムから車両ラップタイムを求め、記憶手段に予め記録されている基準のラップタイムとのずれであるオフセットを求める。
【0017】
さらに、計時手段が基準地点通過からの経過時間を計時し、車両位置計算手段がオフセットからその経過時間におけるその車両の車両位置を求めることができる。求められた車両の車両位置は、正確な車両位置ではなく予測車両位置ではあるが、各車両のラップタイムはラップ毎に大きく変動しないために、サーキットの状況を分かるようにする目的は十分に達することができる。
【0018】
これによれば、公認のラップタイムデータを用いるために、レースに参加している全ての車両のデータを取得でき、任意の車両のサーキット上の位置を求めることができて、それを表示することができるようになる。予測車両位置であっても、サーキット上でどこが輻輳しているか、着目している車両がどの地点にいるかといったことを知ることは非常に有効である。レース関係者であれば、その車両のピットインのタイミングを図ったり、ドライバに注意を促がしたりすることができるようになる。また、観戦者であれば、通常一部の状況しか分からないテレビ観戦やスタンド観戦と合わせて、レース全体の状況が分かり、一層の興味・関心を喚起させることができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、求めた現在の車両位置をサーキットの表示と共に表示することで、有用性が高まることとなる。
【0020】
請求項3及び10記載の発明によれば、求めた現在の車両位置データを外部に配信することにより、そのデータの利用範囲が広がり、有用性が一層高まることになる。外部としては、専用回線、イントラネット又はインターネットを介して、及び/又はWWWサーバを介して、インターネットプロバイダ、テレビ局、ゲーム関連企業といった様々な媒体に配信することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、最新のラップタイムまたは最新から複数の平均ラップタイムを車両ラップタイムとして、基準ラップタイムとのずれを求めることにより、現在の状況を最も反映した計算をすることができ、車両位置を正確に求めることができるようになる。
【0022】
請求項5または6記載の発明によれば、オフセットを用いて第1記憶手段に記録されている基準のデータを修正することで、その車両の車両ラップタイムに合致した車両位置を求めることができるようになる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、公認のピットインデータを利用して、そのピットインデータから現時点でピットインしており走行していないことが明らかな車両を基準地点で表示することにより、正確な車両位置を求めることができるようになる。
【0024】
請求項8記載の発明によれば、ピットイン直後の車両は一般的にラップタイムが遅くなることがあり、またはそれ以外の何らかの理由によりラップタイムがその車両の標準的なラップタイムよりも大きく異なることもあり得るので、その標準から外れたラップタイムを使用せずにオフセットを求めることで、オフセットの精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に関わるサーキット走行車両位置情報提供システムの全体構成ブロック図である。ここで、適用可能な走行車両としては任意のものが可能であり、四輪車、二輪車、カートといったサーキットを複数周、周回するものであれば、任意の車両に適用可能である。
【0026】
図において、該サーキット走行車両位置情報提供システムが実現されるコンピュータ10は、CPU、ROM、RAM等を有し、プログラムに従いデータの転送、演算、一時的なデータの格納またはメインプログラムの格納を行う制御回路12と、ラップタイムデータといった公認の車両状況データを提供するサーバ装置20との間で無線または有線でデータの入出力の制御を行うI/O制御回路14と、データ及びプログラムの格納を行う記憶装置16と、を備えている。同時にCPUは、コンピュータが立ち上げられたときからの経過時間をms単位で計時してCPU内部カウントを出力するCPU内部カウンタを有する。コンピュータ10には、表示装置18が接続される。
【0027】
サーバ装置20は、レース主催者等の公認の装置であり、レース主催者等が公式に発表する最新のラップタイムデータ等の公認車両状況データが公認車両状況ファイル22に格納されており、これらの公認車両状況データの提供元となる。このようなサーバ装置20は公知である。
【0028】
サーバ装置20に格納され、且つサーバ装置20が提供可能となった公認車両状況データとしては、図5に示すように、「現在時刻」の他に、車両ごとに予め割り当てられており各車両を特定するゼッケン(図5において「Car No」以下、車両識別データという)と、この「車両識別データ」に関連付けて、「ポジション」(図5において「Pos」)、「最新ラップタイム」(図5において「NowTime」)、「ベストラップタイム」(図5において「BestTime」)、「ラップ数」(図5において「Lap」)及び「ピットフラグ」(図5において「Pit」)、「車両名」(図5において「Machine」)、「クラス」(図5において「Class」)の各データがある。「ポジション」とは順位である。「最新ラップタイムデータ」は任意の手段によって計測された公認の記録であり、最新の周回において、基準地点となるスタートラインから一周するのに要した時間、即ちラップタイムであり、「ベストラップタイム」とは、過去のラップタイムの中で最も速く周回したときのラップタイムである。また、「ラップ数」はサーキットを周回した回数となる。「ピットフラグ」は、車両がピットインしている場合に立つフラグ(「P」で表される)である。以上のデータは、原則的に各車両がスタートラインを通過する毎に更新される。
【0029】
サーキット走行車両位置情報提供システムが実現されるコンピュータ10は、そのプログラムによって実現される機能として、大きく、サーバ装置20からラップタイムを取得するラップタイム取得手段100と、各車両の車両位置を計算する位置計算手段120とを備えており、各手段はそれぞれ独立して処理を行なう。
【0030】
ラップタイム取得手段100は、さらに、サーバ装置20から各車両の更新されたラップタイムを取得するラップタイム更新手段102と、更新されたラップタイムが取得されると該当車両に関連する経過時間及び車両位置の初期化を行なう初期化手段104と、ラップタイム更新手段で取得されたラップタイムからその予め設定された基準ラップタイムからのずれ、具体的には比率を表すオフセットを計算するオフセット計算手段106とを備える。
【0031】
また位置計算手段120は、さらに、各車両について、ラップタイムが更新されてから描画タイミングで、現在の経過時間を出力する計時手段122と、計時手段からの経過時間とオフセット計算手段からのオフセットにより現在の予測距離を求める距離計算手段124と、距離計算手段124により予測距離からサーキットマップ上の座標を求めるサーキット座標計算手段126と、サーキット座標計算手段126からの座標から描画を行なう描画手段128と、を備える。位置計算手段120の各手段は描画タイミングで車両毎に独立処理を行なう。距離計算手段124とサーキット座標計算手段126とは、併せて車両位置計算手段を構成する。
【0032】
また、サーキット走行車両位置情報提供システムが実現されるコンピュータ10は、前述のように、対象となるサーキットの基準ラップタイムLsのデータを予め記録しており、且つ、その基準ラップタイムでそのサーキットを走行したときの、単位時間Δt経過毎の経過時間と基準データとしての基準車速とが配列的に関連付けられた基準ファイル200を第1記憶手段として記憶装置に備えている。この基準ファイル200は、実測によって予め求めておくものであり、レースに参加するのとほぼ同じクラスの車両で普通のドライバがサーキットを走行したときの車速を単位時間経過毎に求めておき、これを基準車速として格納しておく(図2(a))。
【0033】
さらには、基準地点からの走行距離とサーキットマップ上の座標とが配列的に関連付けられた座標ファイル202を記憶装置に備えている(図2(b))。基準地点からの走行距離と、サーキットマップとの座標は一義的に予め対応づけることができる。通常、サーキットには勾配があるので、走行距離は、三次元の座標と一義的に対応付けられることになるが、表示方法が二次元画像である場合には、三次元座標のうちの高度を表す座標については省略し、水平面に投影した二次元座標とすることが可能である。
【0034】
さらには、コンピュータ10は、サーバ装置20から取得される公認車両状況ファイル22から抽出された各車両の最新のラップタイム及びピットフラグ等の車両状況データを記録する車両状況ファイル204(第3記憶手段)と、エントリファイル206と、演算によって求める車両予測メモリ208(第2記憶手段)と、を備えている。
【0035】
車両状況ファイル204は、三次元ファイル構造をとっており、ラップ数毎に、車両識別データ毎で、「ポジション(Position)」、「ピットフラグ(PitFlag)」、「ベストラップタイム(BestTime)」「最新ラップタイム(NowTime)」及び「積算ラップタイム(Σ)」の各車両状況データを有する(図3)。途中、棄権した車両があった場合には、棄権したラップ数以降のデータは格納されない。
【0036】
エントリファイル206は、そのレースに参加する車両の車両識別データにその車両の「車両名」、「クラス」等が関連付けられて格納される。これらのデータは、表示のために使用されるが、レース中変化することがないデータであり、サーバ装置20の公認車両状況ファイル22を最初に読み出したときに、必要なデータを予め読み込んでおくことができる。または、別途コンピュータ10の付属の入力手段から予め入力されることでもよい。
【0037】
車両予測メモリ208(第2記憶手段)は、各車両識別データに関連付けられて、その車両の「合計経過時間」、「修正合計経過時間」、「走行距離」、「車両位置」、「オフセット」、「CPU内部カウント」を有する。これらのデータは、レースの進行と共に随時変化していくものであるが、詳細については以下に説明する。
【0038】
以上のように構成されるサーキット走行車両位置情報提供システムの処理について以下、説明する。
【0039】
ラップタイム更新手段102は、図6に示すように、常時一定周期で、サーバ装置20の公認車両状況ファイル22を読み出し、コンピュータ10に既に格納している車両状況ファイル204の対応するデータと比較して、その中で、レース参加中の車両の中のいずれかの車両の車両状況データが更新されたか否かを判定している(ステップS12)。データが更新されたということは、その車両が周回して基準地点を通過したことを表しており、その判定として具体的には、いずれかの車両の「ラップ数」が変化したかを見ることを例示することができるが、これ以外の項目を組み合わせてまたは単独で比較することもできる。ある車両識別データに対応付けられたラップ数等の項目が変更されていれば、その車両識別データに対応する「ポジション」、「最新ラップタイム」、「ベストラップタイム」、「ラップ数」及び「ピットフラグ」のデータを読み出し、対応する車両状況ファイル204の領域に格納する。
【0040】
次に、初期化手段104は、CPU内部カウントを取得し(ステップS14)、その値を車両予測メモリ208における更新された当該車両の「CPU内部カウント」として格納し、車両予測メモリ208における当該車両に関連する「経過時間」を初期化(=0)し(ステップS16)、「車両位置」、「走行距離」を初期化する(ステップS18)。車両位置の初期値は基準地点、走行距離の初期値は0である。
【0041】
次に、オフセット計算手段106は、取得されたラップタイム、ここでは最新ラップタイムLから基準ラップタイムLsからのずれを表すオフセットを求める(ステップS20)。この場合のオフセットは、両者の割合となる
オフセット=L/Ls
の式によって求め、この最新のオフセットを、車両予測メモリ208の該当領域に書き込む。
【0042】
以上の初期化手段104によって初期化された経過時間及び車両位置と、オフセット計算手段106からのオフセットの各データは、位置計算手段120へと入力されて、使用される。
【0043】
位置計算手段120では、おおまかに、図7に示すように、計時手段122による経過時間の計算(ステップS32)と、距離計算手段124による走行距離の計算(ステップS34)と、サーキット座標計算手段126による座標の計算(ステップS36)と、描画手段128による描画(ステップS38)とが、行なわれている。但し、これらの処理は順次行なわれるのではなく、独立に並列処理されることが可能である。
【0044】
位置計算手段120の計時手段122は、図8に示すように、初期化手段によって経過時間が初期化された後、CPU内部カウントを取得し(ステップS42)、車両予測メモリ208で記憶されていた前回のCPU内部カウントと今回のCPU内部カウントの差分から、今回経過時間を、
今回経過時間=今回CPU内部カウント−前回CPU内部カウント
とし(ステップS44)、記憶されていた前回の(処理前)合計経過時間と今回経過時間から
合計経過時間T=(処理前)合計経過時間+今回経過時間
により現在の合計経過時間を求め(ステップS46)、このステップS42〜S46を順次繰り返して車両予測メモリ208の合計経過時間を更新しており、最新の合計経過時間を距離計算手段124へと出力している。
【0045】
距離計算手段124は、図9に示すように、まず、計時手段122からの最新の合計経過時間に対して、オフセットを用いて、合計経過時間の修正を行なう(ステップS52)。修正合計経過時間は、
修正合計経過時間T’=合計経過時間T/オフセット
として表される。これは、オフセットが1より小さいとき、即ち、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが小さい場合、車両は基準よりも速く走っているので、時間軸を伸ばし、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが大きい場合、車両は基準よりも遅く走っているので、時間軸を短くする、ことを意味する。
【0046】
但し、修正合計経過時間が基準ラップタイムLsよりも大きいかどうかを判定する(ステップS53)。修正合計経過時間が基準ラップタイムLsよりも大きくなっている場合には、基準地点を通過していることになるので、本来ならば公認のラップタイムが更新されているはずであるのが、まだ更新されていない場合であり、その場合には、走行距離は最大走行距離、即ち、サーキットの全長とする(ステップS64)。これは現在の実際のラップタイムが、処理の基準としている過去の最新のラップタイムよりも遅い場合に発生する。
【0047】
次いで、変数tを初期化(=t0)し(ステップS54)、修正合計経過時間T’とtの比較を行い(ステップS56)、tが合計経過時間よりも小さい場合には、基準ファイル200からtに対応する基準速度データを取得し(ステップS58)、走行距離を以下の式から求める(ステップS60)。
走行距離=(処理前)走行距離+基準速度×Δt
【0048】
次いで、tをΔt加算して(ステップS62)、tがT’よりも大きくなるまで、ステップS56〜ステップS62を繰り返して基準速度×単位時間Δtの積算を行なうことにより、修正合計経過時間における走行距離を求めることができる。こうして求められた走行距離は、車両予測メモリ208に更新され、サーキット座標計算手段126へと出力される(ステップS66)。
【0049】
サーキット座標計算手段126では、図10に示すように、まず、ピットフラグが立っているかどうかを判定する(ステップS71)。ピットフラグが立っている車両は、ピットインしていてサーキットを走行していないので、車両位置は今までの計算に拘わらず、車両位置を基準地点座標とする(ステップS76)。勿論、前述の処理によって最新のラップタイムを利用してサーキット上で走行しているものとして表示しても構わない場合には、ステップS71の判定は不要である。
【0050】
次に、出力された走行距離が最大走行距離であるサーキット全長よりも大きいかどうかを判定し(ステップS72)、大きい場合には、車両位置を基準地点座標とする(ステップS76)。最大走行距離よりも走行距離の方が大きいというのは、実際にはありえないことではあるが、計算上で基準地点を通過していることになるので、その終点、即ち、基準地点を座標データとする。
【0051】
ステップS72の判定で、出力された走行距離が最大走行距離であるサーキット全長よりも小さい場合には座標ファイル202を参照して、走行距離に対応する座標を取得する(ステップS74)。そして、取得した座標データを車両予測メモリ208の該当領域に書き込み、車両識別データと合わせて表示装置18に描画する(ステップS78)。
【0052】
以上の処理を、それぞれの車両について並列に行なうことにより、表示装置18には、図11に符号18aで示すように、レースに参加している全ての車両のサーキット上の予測車両位置を表示することができる。表示18a中、番号は車両識別データである「Car No.」である。これによって、サーキット上でのレースの状況、輻輳部分などが、一目で分かるようになる。
【0053】
表示装置18には、併せて、ポジション順に並んだ車両のリスト18b、選択された車両のラップタイムの推移18cなどを表示することも可能であり、レースの詳細情報を併せて提供することができる。よって、プログラムがインストールされたコンピュータを有する各参加チームは、それぞれサーバ装置20から公認車両状況データを取得することにより、各チームのコンピュータ10に接続された表示装置18にサーキット状況を表示させることが可能である。
【0054】
以上の処理においては、次のような様々な変形が可能である。
・基準ファイル200において経過時間と基準速度とが対応付けられて記録されていたが、これに限るものではなく、予め基準速度を積算により基準走行距離に変換しておき、経過時間と基準走行距離とを対応付けて記録しておくこともできる。その場合には、図12に示すように、修正合計経過時間T’を求めると、そのT’に対応する走行距離を直接求めることができる(ステップS80)。さらには、走行距離は車両位置と一義的に関連付けられるので、基準ファイル200において経過時間と基準車両位置とを対応付けて記録することにより、座標ファイル202を省略することも可能である。これにより、距離計算手段124とサーキット座標計算手段126は、一つの手段として統合することが可能である。
【0055】
・距離計算手段124において、修正合計経過時間を求める代わりに、オフセットを用いて速度(または距離でもよい)を修正することも可能である。即ち、図13に示すように、その該当する基準ファイル200を参照し、tに対応する基準速度データ(または基準走行距離)を取得する(ステップS58)。次いで、オフセットを用いて、その基準速度データの修正を行う(ステップS86)。即ち、
修正基準速度データ=基準速度データ/オフセット
として表される。これは、オフセットが1より小さいとき、即ち、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが小さい場合、車両は基準よりも速く走っているので、速度を速くし、基準ラップタイムLsよりも最新ラップタイムLが大きい場合、車両は基準よりも遅く走っているので、速度を遅くする、ことを意味する。
【0056】
次いで、走行距離を以下の式から求める(ステップS60)。
走行距離=(処理前)走行距離+修正基準速度×Δt
【0057】
そして、tをΔt加算して(ステップS88)、tがT’よりも大きくなるまで、ステップS82〜ステップS88を繰り返して基準速度×単位時間Δtの積算を行なうことにより、修正合計経過時間における走行距離を求めることができる。但し、tがLsよりも大きくなると(ステップS90)、基準ファイル200には、該当する経過時間がないので、その場合には、t=t−Lsの処理を行い(ステップS92)、該当する経過時間が存在するようにするとよい。
【0058】
・オフセット計算手段106の処理において、1つの最新ラップタイムに基づいてオフセットを求めていたが、これに限るものではなく、最新の複数のラップタイムの平均のラップタイムに基づいて、これと基準ラップタイムとのずれを求めてオフセットとすることも可能である。または、1つまたは複数の最新のラップタイムを使用するのではなく、過去のすべてのラップタイムの平均のラップタイムと基準ラップタイムとのずれを求めてオフセットとすることも可能である。しかしながら、通常、ラップタイムは、天候、車両の状態などにも左右される傾向にあり、レースの段階に応じて大きく変化することも多いので、1つまたは複数の最新のラップタイムを用いて計算を行なうことが好ましい。
【0059】
・ピットイン直後の最新ラップタイムは、ピットインしている時間が加算されるために値が大きくなる。そのため、最新のラップタイムを使用した計算では、速度の遅い車両として表示されることになる。このような不具合を防止するために、オフセット計算手段106では、車両状況ファイル204の前のラップのピットインフラグのデータを必ず参照するようにして、ピットインのフラグが立っている場合には、最新のラップタイムを使用する代わりに、その前のラップタイムを使用するか、その前の複数のラップタイムの平均を使用するか、または全ラップタイムの平均を使用してオフセットを求めるようにすることができる。
【0060】
・または、ピットインを含め何らかのアクシデントにより最新のラップタイムが今までのラップタイムと比較して、大きく異なる場合には、その最新のラップタイムを使用しないようにすることもできる。具体的には、オフセット計算手段106では、新しく計算したオフセットと、車両予測メモリ208に格納されている今までのオフセットとを比較し、その差異が閾値以上である場合に、新しく計算したオフセットを採用せずに、今までのオフセットを採用するようにすることもできる。
【0061】
・コンピュータ10に接続された表示装置18に表示させる他に、以上の各車両の車両位置データは、コンピュータ10から無線または有線によってレース場内にある大型スクリーンに送られて、そこで表示させることも可能である。これによって、関係者、スタンドに居る観戦者が皆、サーキット状況を把握することができるようになる。
【0062】
さらには、コンピュータ10からさらにI/O制御回路14を介して、各車両の車両位置データは、無線または有線のいずれかによって外部へと出力することも可能である。また、このデータをインターネットプロバイダのWWWサーバを介してインターネットで配信することも可能であり、またはテレビ局といった通信機関を介して配信することも可能である。例えば、レースをレース場で見ている観戦者または自宅等で実況をテレビまたはインターネットで見ている観戦者が自己のコンピュータを操作しプロバイダを介してインターネットに接続して、この各車両の車両位置データを取得して、自己のコンピュータの表示装置に表示させることもできる。または、ゲーム関連企業を介しての配信により、この車両位置データをゲームの情報としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態にかかるサーキット走行車両位置情報提供システムの全体構成ブロック図である。
【図2】(a)は図1の基準ファイル、(b)は座標ファイルの構成例である。
【図3】図1の車両状況ファイルの構成例である。
【図4】(a)は図1のエントリファイル、(b)は車両予測メモリの構成例である。
【図5】サーバ装置から提供される公認車両状況ファイルの構成例である。
【図6】ラップタイム更新処理を表すフローチャートである。
【図7】位置計算処理を表すフローチャートである。
【図8】経過時間の計算処理を表すフローチャートである。
【図9】走行距離の計算処理を表すフローチャートである。
【図10】座標の計算処理を表すフローチャートである。
【図11】表示装置での表示例である。
【図12】走行距離の計算処理を表す別のフローチャートである。
【図13】走行距離の計算処理を表すさらに別のフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10 コンピュータ
100 ラップタイム取得手段
102 ラップタイム更新手段
104 初期化手段
106 オフセット計算手段
120 位置計算手段
122 計時手段
124 距離計算手段(車両位置計算手段)
126 サーキット座標計算手段(車両位置計算手段)
200 基準ファイル
202 座標ファイル
208 車両予測メモリ(第2記憶手段)
18 表示装置
T’ 修正合計経過時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力する、コンピュータによって実現されるサーキット走行車両位置情報提供システムであって、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、
サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
を備え、
前記ラップタイム取得手段は、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、を備え、
前記位置計算手段は、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、を備える
ことを特徴とするサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項2】
各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置をサーキットの表示と共に表示する表示装置をさらに備える請求項1記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項3】
前記車両位置計算手段は、各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力する請求項1記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項4】
前記オフセット計算手段は、公認のラップタイムデータの最新のラップタイムまたは最新を含め最新から複数の平均ラップタイムを前記車両タップタイムとする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項5】
前記車両位置計算手段は、前記オフセットを用いて、各車両が基準ラップタイムで走行したと仮定したときに同じ車両位置に達する経過時間(以下、修正経過時間)を求め、第1記憶手段を参照して、その修正経過時間に対応する車両位置を現在の車両位置とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項6】
前記車両位置計算手段は、第1記憶手段を参照して、計時手段からの経過時間に対応する速度、走行距離若しくは車両位置を取得し、取得した値をオフセット分だけ修正してその車両位置を現在の車両位置とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項7】
前記ラップタイム更新手段は、車両がピットインしていることを表す公認のピットインデータを公認のラップタイムデータと共に併せて取得して第3記憶手段に記憶しており、前記車両位置計算手段は、ある車両に対応してピットインデータが取得されたときに、現在の車両位置として基準地点を第2記憶手段に記録する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項8】
前記オフセット計算手段は、ピットイン直後の車両に対して、または計算したオフセットと前のオフセットとの差が閾値以上である車両に対して、最新のラップタイムを除く過去のラップタイムの平均からオフセットを求める請求項1ないし7のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項9】
コンピュータに、基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力させるためのサーキット走行車両位置情報提供プログラムであって、コンピュータを、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
して機能させ、さらに、
前記ラップタイム取得手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、して機能させ、
前記位置計算手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、して機能させるサーキット走行車両位置情報提供プログラム。
【請求項10】
前記車両位置計算手段は、各車両について現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力する請求項9記載のサーキット走行車両位置情報提供プログラム。
【請求項1】
基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力する、コンピュータによって実現されるサーキット走行車両位置情報提供システムであって、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、
サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
を備え、
前記ラップタイム取得手段は、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、を備え、
前記位置計算手段は、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、を備える
ことを特徴とするサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項2】
各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置をサーキットの表示と共に表示する表示装置をさらに備える請求項1記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項3】
前記車両位置計算手段は、各車両について車両位置計算手段で求めた現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力する請求項1記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項4】
前記オフセット計算手段は、公認のラップタイムデータの最新のラップタイムまたは最新を含め最新から複数の平均ラップタイムを前記車両タップタイムとする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項5】
前記車両位置計算手段は、前記オフセットを用いて、各車両が基準ラップタイムで走行したと仮定したときに同じ車両位置に達する経過時間(以下、修正経過時間)を求め、第1記憶手段を参照して、その修正経過時間に対応する車両位置を現在の車両位置とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項6】
前記車両位置計算手段は、第1記憶手段を参照して、計時手段からの経過時間に対応する速度、走行距離若しくは車両位置を取得し、取得した値をオフセット分だけ修正してその車両位置を現在の車両位置とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項7】
前記ラップタイム更新手段は、車両がピットインしていることを表す公認のピットインデータを公認のラップタイムデータと共に併せて取得して第3記憶手段に記憶しており、前記車両位置計算手段は、ある車両に対応してピットインデータが取得されたときに、現在の車両位置として基準地点を第2記憶手段に記録する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項8】
前記オフセット計算手段は、ピットイン直後の車両に対して、または計算したオフセットと前のオフセットとの差が閾値以上である車両に対して、最新のラップタイムを除く過去のラップタイムの平均からオフセットを求める請求項1ないし7のいずれか1項に記載のサーキット走行車両位置情報提供システム。
【請求項9】
コンピュータに、基準地点を有するサーキットを周回する車両の、サーキット上の位置情報を出力させるためのサーキット走行車両位置情報提供プログラムであって、コンピュータを、
各車両が基準地点を通過する毎に、その車両に関連付けて公認のラップタイムデータを有線または無線によって取得するラップタイム取得手段と、前記取得したラップタイムに基づき各車両の車両位置を計算する位置計算手段と、サーキット一周をある基準ラップタイムで走行したときの単位時間経過毎の経過時間と速度、走行距離または車両位置といった基準データとの関係を予め記録する第1記憶手段と、各車両に関連付けて現在の車両位置と経過時間とを記録する第2記憶手段と、
して機能させ、さらに、
前記ラップタイム取得手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過した毎に、その各車両に関連付けて公認のラップタイムデータを取得するラップタイム更新手段と、第2記憶手段に記録されるその車両の車両位置を基準地点に初期化し、経過時間を初期値に初期化する初期化手段と、公認のラップタイムデータに基づくその車両のラップタイム(以下、車両ラップタイム)と前記基準ラップタイムとのずれを表すオフセットを求めるオフセット計算手段と、して機能させ、
前記位置計算手段は、コンピュータを、各車両が基準地点を通過してからの経過時間を計時して経過時間を更新する計時手段と、第1記憶手段の基準データを取得し、オフセット計算手段で求めたオフセットを用いて、前記計時手段からの経過時間から各車両の予想車両位置を求めて現在の車両位置として第2記憶手段に記録する車両位置計算手段と、して機能させるサーキット走行車両位置情報提供プログラム。
【請求項10】
前記車両位置計算手段は、各車両について現在の車両位置データを車両識別データと共に、車両位置表示のために外部へ出力する請求項9記載のサーキット走行車両位置情報提供プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−233462(P2007−233462A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50885(P2006−50885)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(506068128)株式会社M−TEC (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(506068128)株式会社M−TEC (1)
【Fターム(参考)】
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