説明

サービスプラグの装着構造

【課題】サービスプラグが接続される電極に端子を接続する作業性を向上する。
【解決手段】複数の電池5を正極と負極を交互に配置して隣り合う電池5の正極と負極を導体で接続して構成される電池モジュール3の隣り合う一組の電池の前記正極と前記負極間に開閉可能に装着されるサービスプラグ1の装着構造において、一組の電池5の電極を臨む開口21が形成された絶縁基板19と、絶縁基板19を挟んでボルト締めによって電極にそれぞれ接続される一組の端子13と、一組の端子13にそれぞれ接続された一組の電線11と、一組の電線11の他端側に接続されサービスプラグ1が装脱可能に接続される接続具20とを備え、絶縁基板19に、ボルト締めのときに各端子13に当接して各端子13のとも回りを規制する突部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービスプラグの装着構造に係り、特に、複数の電池を直列接続して構成される電池モジュールのパワー回路を開閉するサービスプラグの装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、自動車等の駆動用電源に複数の電池を直列接続した電池モジュールを用いる場合、隣接する電池の正極と負極のうちの一組の直列接続を開放状態にしておき、その電極間をサービスプラグで着脱接続することが提案されている。そして、電池モジュールの保守、電池モジュールの負荷である電子機器を保守する際などにサービスプラグを取り外して、電池モジュールの主回路を遮断して安全を確保するようにしている。特に、同文献は、直列接続が開放された正極と負極にそれぞれ受け端子を取付け、その受け端子にサービスプラグを着脱可能に装着するようにしている。
【0003】
しかし、特許文献1は、電池モジュールの受け端子にサービスプラグを直接装着するようにしているから、サービスプラグを着脱できる位置に電池モジュールを設置しなければならない。また、サービスプラグの形状等が制限されるといった問題がある。
【0004】
一方、特許文献2には、複数の電池を直列接続した複数の電池モジュールを直列接続したバッテリパックにおいて、作業しやすい位置にサービスプラグを配置するため、隣接する電池モジュールの正極と負極にそれぞれ電線を接続し、電線の先にコンセントを接続し、コンセントを所望の位置に固定してサービスプラグを着脱可能に装着することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−343331号公報
【特許文献2】特開2009−152135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2のように電極に電線を接続する場合、端子を介して電極と電線を接続することになる。この場合、電線が接続された端子を所望の位置に位置決めし、動かないように端子を押さえながらボルト締めして電極に端子を接続する。しかしながら、特許文献2は、電極に端子を接続する作業を考慮しておらず、作業性を向上させる余地がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、サービスプラグが接続される電極に端子を接続する作業性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、複数の電池を正極と負極を交互に配置して隣り合う電池の正極と負極を導体で接続して構成される電池モジュールの隣り合う一組の電池の正極と負極間に開閉可能に装着されるサービスプラグの装着構造において、一組の電池の電極を臨む開口が形成された絶縁基板と、絶縁基板を挟んでボルト締めによって電極にそれぞれ接続される一組の端子と、一組の端子にそれぞれ接続された一組の電線と、一組の電線の他端側に接続されサービスプラグが装脱可能に接続される接続具とを備え、絶縁基板には、ボルト締めのときに各端子に当接して各端子のとも回りを規制する突部が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
これによれば、隣り合う一組の電池の正極と負極に、サービスプラグを接続するための一組の端子を接続する際、とも回りを防止するために各端子を手などで押さえなくても、各端子に突部が当接して各端子のとも回りを防止できるから、サービスプラグが接続される電池の電極に端子を接続する作業性を向上できる。
【0010】
このような突部として、例えば、絶縁基板に各端子に対応する間隔を空けて対向させた壁を立設してその壁間に各端子を配置することで、ボルト締めによって各端子がとも回りしようとしても各端子を壁に当接させて止めることができるから、各端子のとも回りを防止できる。
【0011】
この場合において、絶縁基板に立設させた壁の対向する面にリブを突設して、各端子をリブよりも絶縁基板側に配置するように形成できる。これによれば、何らかの外力により各端子が壁間から脱出しようとしても、各端子にリブが当接して各端子の脱出を防止できるから、電池の電極に端子を接続する作業性を一層向上できる。
【0012】
また、各端子にスリットを形成し、そのスリットに係合する突起を絶縁基板又は絶縁基板に立設した壁に設けることができる。これによれば、端子のスリットと突起を係合させることで端子を位置決めできるとともに、端子が絶縁基板から離れることを防止できるから、電池の電極に端子を接続する作業性をより一層向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サービスプラグが接続される電極に端子を接続する作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態のサービスプラグの装着構造によってサービスプラグが装着された電池モジュールの斜視図である。
【図2】図1の四角で囲った部分の拡大図である。
【図3】図2のカバーを開けた状態を示す平面図である。
【図4】図3の電極に接続される端子の平面図である。
【図5】図3の絶縁基板の平面図である。
【図6】図2のリブの位置の断面図である。
【図7】図2のリブの位置の断面を電線側に向かって見た図である。
【図8】図2の突起が端子に係合した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。図1〜6に示すように、本実施形態のサービスプラグ1が装着される電池モジュール3は、複数の電池5を正極と負極を交互に配置して隣り合う電池5の正極と負極を複数の導体、例えば、複数のバスバでそれぞれ接続して構成されている。各電池5の正極と負極には、例えば、ねじ山が形成された柱状の端子部7が突設されている。複数のバスバは、それぞれバスバモジュール9に収容固定されている。各バスバには、隣り合う電池5の一組の端子部7が挿入される一組の挿入穴が形成され、各挿入穴に端子部7を挿入してナットを螺合するボルト締めによって隣り合う電池5の正極と負極を接続するようになっている。
【0016】
このように構成される電池モジュール3の隣接する電池5のうちの一組の電池5の端子部7間は、バスバで接続されずに開放状態になっている。この開放状態になっている端子部7間は、サービスプラグ1で開閉可能に接続される。これにより、電池モジュール3の保守、電池モジュール3の負荷である電子機器を保守する際などに保守用のサービスプラグ1を取り外すことで、電池モジュール3のパワー回路を遮断して作業の安全を確保するようになっている。
【0017】
ここで、本実施形態の特徴であるサービスプラグ1を装着する構造について説明する。開放状態の各端子部7にはそれぞれ電線11が接続された一組の端子、例えば、一組の丸形板端子(以下、LA端子という。)13が接続される。各LA端子13は、一端に電線11が接続される電線接続部15が形成され、他端に端子部7が挿入される挿入穴17が形成され、側部にはスリット18が形成されてている。一組の電線11の他端には、サービスプラグ1が装脱可能に接続される接続具20が設けられている。接続具20は、サービスプラグ1が装着されることで一組の電線11間が導通され、サービスプラグ1が脱離されることで一組の電線11間の導通が遮断されるようになっている。これにより、サービスプラグ1を装着すると電池モジュール3のパワー回路が接続され、サービスプラグ1が脱離されると電池モジュール3のパワー回路が遮断される。このように構成することにより、例えば、サービスプラグ1を脱離して電池モジュール3に高電圧が流れないようにしてから電池モジュール3の保守作業を行うことができ、作業の安全を確保できる。
【0018】
各LA端子13は、例えば、樹脂製の絶縁基板19に配置され、絶縁基板19を挟んでボルト締めによって各端子部7にそれぞれ接続されるようになっている。各LA端子13とナット26の間には、座金24が狭設されるようになっている。
【0019】
絶縁基板19は、隣り合う一組の開口21と、ボルト締めのときに各LA端子13に当接して各LA端子13のとも回りを規制する突部である複数の壁23と、開閉可能なカバー25を備えている。一組の開口21は、一組の端子部7の配列方向に沿って形成され、各開口21に各端子部7が挿入されるようになっている。複数(本実施形態では3つ)の壁23は、LA端子13の幅に対応する間隔を空けて対向して絶縁基板19に立設されている。各壁23は、例えば、絶縁基板19と同じ絶縁性の樹脂で形成され、各壁23の間にそれぞれLA端子13が挿入されるようになっている。各壁23の対向する面には、各壁23の一部を基部側から切り起こしたような形状の舌片状のリブ27が形成されている。各壁23の各リブ27が形成された位置には、各リブ27に対応する開口22が形成されている。各リブ27の先端部と絶縁基板19の間には、各LA端子13を挿入可能な隙間が形成されている。また、各壁23のLA端子13のスリット18に対応する位置には、スリット18に係合可能な突起である突状部29が形成されている。突状部29は、各壁23の高さ方向に沿って形成されている。カバー25は、ヒンジ部31と、壁23の凹部に係合される凸部32を備え、LA端子13が配置される壁23間の空間を開閉可能になっている。
【0020】
このように構成される本実施形態のサービスプラグ1を装着する作業を説明する。バスバモジュール9の開放状態の一組の端子部7の位置には、一組のLA端子13が配置される絶縁基板19が設けられている。言い換えると、バスバモジュール9の複数のバスバ固定部のうちの一箇所に、一組のLA端子13を配置する絶縁基板19が形成されている。この絶縁基板19に立設された壁23の間に上方から各LA端子13を挿入する。この際、各LA端子13のスリット18を各壁23の突状部29に位置合わせして係合させることで、各LA端子13が突状部29にガイドされて所定の位置に挿入される。壁23の間に各LA端子13を挿入すると、各LA端子13の側部に各リブ27が当接する。この状態で各LA端子13を押し込むと、各リブ27が弾性変形して壁23の各開口22に各リブ27が進入し、対向するリブ27の間の間隔が広がる。そして、各LA端子13が各リブ27の先端を通過すると、各リブ27が弾性により元の位置に復帰する。これにより、図7に示すように各LA端子13が壁23間から脱出する方向(矢印33の方向)に動いても、各LA端子13にリブ27が当接するから、各LA端子13が各壁23間から脱出することを防止できる。また、各LA端子13のスリット18と壁23の突状部29を係合させているので、LA端子13を所望の位置に位置決めできるとともに、図8に示すようにLA端子13が絶縁基板19に沿って脱離する方向(矢印35の方向)の動きを規制できる。これらのリブ27と突状部29によってLA端子13は、絶縁基板19に固定される。
【0021】
この状態でバスバモジュール9を各電池5の端子部7に位置合わせして設置すると、絶縁基板19の開口21に一組の端子部7が挿入されて各LA端子13の挿入穴17から突出する。この際、端子部7の挿入力によって各LA端子13が絶縁基板19から浮き上がろうとしても、各LA端子13にリブ27が当接して各LA端子13が壁23間から脱出することを防止できる。そして、各端子部7に座金24を介してナット26を締結する。この際、ナット26の締結力によって各LA端子13がとも回りしようとしても、各LA端子13が壁23間に挟まれて固定されているので、各LA端子13を手などで押さえなくても各LA端子13のとも回りを防止できる。これにより、絶縁基板19を挟んで開放状態の一組の端子部7にそれぞれLA端子13が接続される。各LA端子13の接続が完了した後、カバー25を閉じることで端子部7と各LA端子13を保護できる。そして、各LA端子13に接続されている一組の電線11の他端に接続された接続具20にサービスプラグ1を装着して一組の電線11間を導通させることで、開放状態の一組の端子部7間が導通されて全ての電池5が直列接続される。
【0022】
このように本実施形態によれば、電池5の端子部7とLA端子13をボルト締めにより締結する際、LA端子13に壁23が当接してLA端子13のとも回りを防止できるから、LA端子13を手などで押さえる必要がなく、LA端子13を電池5の端子部7に容易に接続できる。その結果、LA端子13に接続された電線11を介して電池5の端子部7とサービスプラグ1を接続する作業性を向上できる。
【0023】
また、本実施形態は、サービスプラグ1が装着される接続具20を電池モジュール3に固定せず浮動状態にしているから、接続具20を固定するための構造を別途設ける必要がなく、電池モジュール3の構造を簡単化できる。なお、構造が複雑になるが、接続具20を電池モジュール3に固定する構造を採用できる。
【0024】
また、各LA端子13に当接するリブ27を省略することはできるが、リブ27を設けることで端子部7の挿入方向にLA端子13が動くことを防止できるので、リブ27を設けることで端子部7にLA端子13を接続する作業が容易になる。
【0025】
また、各LA端子13にスリット18の絶縁基板19側の突状部29を係合させているが、スリット18や突状部29を省略することができる。しかし、スリット18に突状部29を係合させる構造を採用することで、各LA端子13が絶縁基板19側に固定されるから、作業時に電線11が引っ張られたとしても各LA端子13が絶縁基板19から脱落することを防止できる。なお、スリット18と係合する突状部29は、絶縁基板19又は壁23の少なくとも一方に形成することができる。
【0026】
また、本実施形態は、ボルト締めのときの各LA端子13のとも回りを規制する突部として、各LA端子13の幅に対応する間隔を空けて対向して立設した複数の壁23を用いているが、とも回りを規制する突部は複数の壁23に限定されるものではない。要は、ボルト締めのときに各LA端子13に当接してとも回りを規制する突部であれば、適宜選択できる。
【0027】
なお、電池5の端子部7に接続する端子は、LA端子13に限定されず、一端に電池5の端子部7を接続でき、他端に電線11を接続できる端子を適宜選択できる。
【0028】
また、電池5の端子部7がそれぞれ挿入される一組の開口は、端子部7を臨むように形成されていればよく、本実施形態に限定されるものではない。
【0029】
また、絶縁基板19をバスバモジュール9に一体成形し、或いは、バスバモジュール9に係合又は連結して、絶縁基板19をバスバモジュール9に設けることができる。また、2つのバスバモジュール9に絶縁基板19を係合又は連結して、2つのバスバモジュール9で絶縁基板19を指示するように構成できる。また、絶縁基板19とバスバモジュール9を別々に取り付けるように構成できる。
【0030】
また、リブ27は、舌片状に限定されず、適宜選択できる。要は、壁23間からのLA端子13の脱出を規制するように、壁23の対向する面からリブ27を突出させてLA端子13に当接する構造を採用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 サービスプラグ
3 電池モジュール
5 電池
7 端子部
11 電線
13 LA端子
18 スリット
19 絶縁基板
20 接続具
21 開口
23 壁
27 リブ
29 突状部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を正極と負極を交互に配置して隣り合う電池の正極と負極を導体で接続して構成される電池モジュールの隣り合う一組の電池の前記正極と前記負極間に開閉可能に装着されるサービスプラグの装着構造において、
前記一組の電池の電極を臨む開口が形成された絶縁基板と、該絶縁基板を挟んでボルト締めによって前記電極にそれぞれ接続される一組の端子と、該一組の端子にそれぞれ接続された一組の電線と、該一組の電線の他端側に接続され前記サービスプラグが装脱可能に接続される接続具とを備え、
前記絶縁基板には、前記ボルト締めのときに前記各端子に当接して前記各端子のとも回りを規制する突部が形成されてなることを特徴とするサービスプラグの装着構造。
【請求項2】
請求項1に記載のサービスプラグの装着構造において、
前記突部は、前記各端子の幅に対応する間隔を空けて対向して立設される壁であり、該壁間に前記各端子が配置されてなることを特徴とするサービスプラグの装着構造。
【請求項3】
請求項2に記載のサービスプラグの装着構造において、
前記壁の対向する面から突出するリブが設けられ、前記各端子は、前記リブよりも前記絶縁基板側に配置されることを特徴とするサービスプラグの装着構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のサービスプラグの装着構造において、
前記絶縁基板又は前記壁の少なくとも一方に、前記各端子に形成されたスリットと係合する突起が設けられてなることを特徴とするサービスプラグの装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26059(P2013−26059A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160603(P2011−160603)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】