説明

サーマルプリンタ

【課題】リボンにおける印刷済みインクの通電開始位置や終了位置の位置ズレが次の通電開始予定位置に影響することを回避する。
【解決手段】サーマルプリンタは、ヘッドダウン状態でサーマルヘッド1への通電をせずにリボンRb及び用紙Paを空搬送することで印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクMの通電開始予定位置p4へリボンを繰り出す頭出し搬送動作を行う。印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクMの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出すために必要な空搬送距離W’を、印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離Bに基づき算出するために必要なパラメータ(A,C,G)を予め設定しておき、塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した実通電開始位置p1までの距離Bに対応する情報を検出し、検出した情報及びパラメータ(A,C,G)に基づき空搬送距離Wを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドの加熱によりリボンに塗布されたインクを用紙に熱転写して印刷を行うサーマルプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、例えばイエロー、マゼンタ、シアン等の複数色のインクの塗布領域が所定の繰り出し方向に沿って順次配列されたリボンをサーマルヘッドにより用紙に押し当てたヘッドダウン状態でリボンを用紙と共に搬送しつつサーマルヘッドに通電することで通電開始位置から通電終了位置までリボンに塗布されたインクを用紙に熱転写させる印刷搬送動作と、次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出す頭出し搬送動作とを実行可能に構成されており、例えばイエローの印刷搬送動作、マゼンタの頭出し搬送動作、マゼンタの印刷搬送動作…というように印刷搬送動作と頭出し搬送動作とを順に実行することにより複数種のインクを用紙に順次印刷する装置である。
【0003】
この種のサーマルプリンタとして例えば特許文献1には、供給側リボンローラと巻取側リボンローラとの間でリボンを繰り出し又は巻き戻すリボン搬送手段と、対をなすローラで用紙を挟持しつつローラの回転により用紙を搬送する用紙搬送機構とを備え、リボン及び用紙を圧接したヘッドダウン状態で用紙搬送機構を通じて用紙を搬送することによりリボン及び用紙を共に搬送し、サーマルヘッドへの通電によりリボンのインクを熱転写する印刷搬送動作を行うサーマルプリンタが開示されている。
【0004】
また、頭出し搬送動作の一種として特許文献1には、次のインクの塗布領域先端(エッジ)を検出するエッジセンサと、リボンの繰り出し量を検出するロータリーエンコーダ等の繰り出し量検出部とを有し、エッジセンサでの検出時から繰り出し量検出部により計測される値に基づきリボン搬送手段によるリボンの搬送を制御することで頭出し搬送動作を行うサーマルプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−21437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、用紙及びリボンの搬送速度が一定でない状態(安定していない状態)でサーマルヘッドへの通電による熱転写(印刷)を行うと、搬送速度の変化により印刷結果にムラが生じてしまうことがあり、これを防止するために、ヘッドダウン状態でリボン及び用紙の搬送を開始し、搬送速度をほぼ一定にするために必要な助走距離、搬送した位置から熱転写を開始する制御を行うことが一般的である。
【0007】
ところが、上記の助走距離をある程度必要とするプリンタの場合は、印刷済みインクの通電終了位置と次のインクの通電開始予定位置と間の距離が、上記エッジセンサを用いた頭出し搬送動作を行うには不足する場合があり、この場合、エッジセンサを用いた頭出し搬送動作の代わりに、ヘッドダウン状態でサーマルヘッドへの通電をせずにリボン及び用紙を上記助走を兼ねて空搬送することにより、図6(a)に示す印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクMの通電開始予定位置p4へ頭出しする頭出し搬送動作を行うことが考えられる。この場合、印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出すために必要な空搬送距離Wは、次のように算出される。すなわち、印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離B及び印刷済みインクYにおける通電開始位置p1から通電終了位置p3までの通電領域長Cを、各々のインクY,Mの塗布領域先端eg1,eg2同士の間の距離Aから差し引いて印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクMの塗布領域先端eg2までの距離Dを算出し、この算出した距離Dに対して次のインクMの塗布領域先端eg2から次のインクMの通電開始予定位置p4までの距離Eを加算して空搬送距離Wが算出される。数式を以下に示す。
D=A−B−C
W=D+E
【0008】
しかしながら、この空搬送距離Wは、全て予定通りに頭出しされることを前提として算出されたものであるので、図6(b)に示すように、実際の通電開始位置p1’や通電終了位置p3’が予定の位置p1,p3とズレてしまっても、ズレた通電終了位置p3’から予定通りの空搬送距離W分、空搬送することになり、或るインクYの通電開始位置p1’のズレαが次の色Mの通電開始予定位置p4’のズレとなり、位置ズレが次のインクに順次引き継がれて蓄積してしまう。
【0009】
この位置ズレが蓄積しても支障なく印刷を可能とするためには、リボンの塗布領域を実際に印刷で用いる使用領域(通電領域)よりも広く設定しておき、通電領域のバラツキを吸収するようにすることが一つの有効な手段として考えられるものの、塗布領域のうちのいずれかの部位は印刷に使用されない余白部位となって無駄であり、リボンコストの増大を招いてしまう。
【0010】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、リボンにおける印刷済みインクの通電開始位置や通電終了位置の位置ズレが次のインクの通電開始予定位置に引き継がれることを回避して、リボンコストを低減させたサーマルプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明のサーマルプリンタは、複数色のインクの塗布領域が所定の繰り出し方向に沿って順次配列されたリボンをサーマルヘッドにより用紙に押し当てたヘッドダウン状態でサーマルヘッドへの通電を行いつつリボン及び用紙を搬送することで通電開始位置から通電終了位置までのインクを用紙に熱転写する印刷搬送動作と、ヘッドダウン状態でサーマルヘッドへの通電をせずにリボン及び用紙を空搬送することで印刷済みインクの通電終了位置から次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出す頭出し搬送動作とを行うことにより複数種類のインクを用いた印刷を行うサーマルプリンタであって、印刷済みインクの通電終了位置から次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出すために必要な空搬送距離を、印刷済みインクにおける塗布領域先端から通電開始位置までの距離に基づき算出するために必要なパラメータを予め設定しておき、印刷済みインクにおける塗布領域先端から実際に通電を開始した実通電開始位置までの距離に対応する実通電位置情報を検出し、検出した実通電位置情報及び前記パラメータに基づき前記空搬送距離を算出する空搬送距離算出部を設け、算出した空搬送距離、空搬送するようにしたことを特徴とする。
【0013】
このように、印刷済みインクの通電終了位置から次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出すために必要な空搬送距離を、印刷済みインクにおける塗布領域先端から通電開始位置までの距離に基づき算出するために必要なパラメータを予め設定しておき、印刷済みインクにおける塗布領域先端から実際に通電を開始した実通電開始位置までの距離に対応する実通電位置情報を検出し、検出した実通電位置情報及び上記パラメータに基づき空搬送距離を算出する空搬送距離算出部を設け、算出した空搬送距離、空搬送するようにしたので、実際に通電を開始した実通電開始位置が予定の位置とズレてしまっても、次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出すための空搬送距離が適切に算出されるので、或るインクの印刷時に生じた通電開始位置や通電終了位置のズレが次のインクの通電開始予定位置に引き継がれることを回避することが可能となる。しかも、或るインクの印刷時に生じる位置ズレが次のインクの通電開始予定位置に引き継がれても支障なく印刷を可能とするためにインクの塗布領域を実際の印刷で用いる使用領域よりも広く設定する必要がなくなるので、塗布領域のうち印刷に使用されない余白部位を低減又は無くしたリボン設計を可能として、リボンコストを低減させることが可能となる。
【0014】
新たな機構を別途に設けることを避けて製造コストを抑制しつつ上記構成を実現するためには、次のインクの塗布領域先端を検出するエッジセンサを更に備えるとともに、インクの塗布領域先端同士の間の距離と、前記エッジセンサによる検出時におけるサーマルヘッドの位置から次のインクの塗布領域先端までの距離とを前記パラメータとして予め設定しておき、前記実通電位置情報として通電開始位置から前記エッジセンサで塗布領域先端が検出されるまでの前記リボン及び用紙の搬送距離を検出し、検出した搬送距離及び前記パラメータに基づき印刷済みインクにおける塗布領域先端から実際に通電を開始した実通電開始位置までの距離を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上説明したように、印刷済みインクの通電終了位置から次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出すために必要な空搬送距離を、印刷済みインクにおける塗布領域先端から通電開始位置までの距離に基づき算出するために必要なパラメータを予め設定しておき、印刷済みインクにおける塗布領域先端から実際に通電を開始した実通電開始位置までの距離に対応する実通電位置情報を検出し、検出した実通電位置情報及び上記パラメータに基づき空搬送距離を算出する空搬送距離算出部を設け、算出した空搬送距離、空搬送するようにしたので、実際に通電を開始した実通電開始位置が予定の位置とズレてしまっても、次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出すための空搬送距離を適切に算出して、或るインクの印刷時に生じた通電開始位置や通電終了位置のズレが次のインクの通電開始予定位置に引き継がれることを回避することが可能となる。しかも、或るインクの印刷時に生じる位置ズレが次のインクの通電開始予定位置に引き継がれても支障なく印刷を可能とするためにインクの塗布領域を実際の印刷で用いる使用領域よりも広く設定する必要がなくなるので、塗布領域のうち印刷に使用されない余白部位を低減又は無くしたリボン設計を可能として、リボンコストを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタを模式的に示す構成図。
【図2】印刷搬送動作及び頭出し搬送動作を模式的に示す図。
【図3】印刷搬送動作及び頭出し搬送動作を模式的に示す図。
【図4】空搬送距離算出処理ルーリンを示すフローチャート。
【図5】インクリボンの構成図および本実施形態において位置ズレが発生したときのリボン使用状態を示す図。
【図6】従来のサーマルプリンタで位置ズレが発生したときのリボン使用状態を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態のサーマルプリンタは、図5(a)に示すように、イエロー、マゼンタ、シアン等の複数種のインクが塗布されたリボンRbを用い、複数種類のインクを記録媒体たる用紙に順次印刷してカラー印刷を行うプリンタである。本実施形態では、互いに異なる色のインク(イエローY,マゼンタM,シアンCY,オーバーコートOP)を一つのセットsetとして、単一のリボンRbが複数セットsetを有するように構成し、各々のセットsetを構成するインクの塗布領域Y,M,CY,OPがリボンRbの繰り出し方向に沿って順次配列されている。
【0019】
サーマルプリンタの具体的な構成は、図1に示すように、サーマルヘッド1及びサーマルヘッド1に対向するプラテンローラ2と、用紙Paを搬送する用紙搬送機構3と、リボンRbをサーマルヘッド1に対して繰り出し又は巻き戻すリボン搬送手段4と、インクのエッジとも呼ばれる塗布領域先端eg(eg1,eg2)を検出するエッジセンサ5と、信号線S1〜S5を介して各部1〜5と電気的に接続され各部1〜5の制御を行う制御手段7とを有している。
【0020】
サーマルヘッド1及びプラテンローラ2は、相対接離自在に構成されて、ヘッドダウン状態とヘッドアップ状態とを切り替え可能にしている。ヘッドダウン状態は、図2(b)に示すように、サーマルヘッド1及びプラテンローラ2でリボンRb及び用紙Paを圧接した状態であり、ヘッドアップ状態は、図3(d)に示すように、サーマルヘッド1及びプラテンローラ2を離間させてリボンRb及び用紙Paの圧接状態を開放した状態である。
【0021】
用紙搬送機構3は、図1及び図2に示すように、マイクログリップローラ31及びピンチローラ32を有し、両ローラ31・32で用紙Paを挟持しつつマイクログリップローラ31をモータ等の用紙駆動部33で回転駆動することで用紙Paを搬送する。マイクログリップローラ31の駆動源たる用紙駆動部33には位置決め機能を有するステッピングモータが用いられており、ステッピングモータに対し一パルス通電する毎に所定の単位距離、用紙を搬送するもので、通電パルス数を計測することにより搬送距離を検出することを可能にしている。なお、用紙Paは、ロール状に巻回された状態で給紙部pfに保持されて、サーマルヘッド1に対し繰り出し又は巻き戻し可能にされている。
【0022】
リボン搬送手段4は、図1に示すように、サーマルヘッド1に繰り出すインクリボンRbを保持する供給側リボンローラ41と、サーマルヘッド1に至ったインクリボンRbを巻き取る巻取側リボンローラ42と、両リボンローラ41・42を回転駆動させるDCモータ等のリボン駆動部43・43とを有し、巻取側リボンローラ42を回転駆動することで供給側リボンローラ41からサーマルヘッド1に対しリボンRbが繰り出され、供給側リボンローラ41を回転駆動することで繰り出されたリボンRbが巻き戻される。
【0023】
エッジセンサ5は、図1に示すように、供給側リボンローラ41からサーマルヘッド1に至るリボンRbを挟み込む位置に配置される発光部51及び受光部52で構成され、発光部51で発光された光が受光部52で受光されるか否かでエッジとも呼ばれるインクの塗布領域先端eg(eg1,eg2)を検出する。
【0024】
図1に示す制御手段7は、外部から受け付けた印刷指令に基づいて上記各部1〜5の駆動を制御するもので、図2に示すように、リボンRbをサーマルヘッド1により用紙Paに押し当てたヘッドダウン状態でリボンRbを用紙Paと共に搬送しつつサーマルヘッド1に通電することで通電開始位置p1から通電終了位置p3までリボンRbに塗布されたインクを用紙Paに熱転写する印刷搬送動作と、次のインクの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出す頭出し搬送動作とを実行可能に構成されており、例えばイエローの印刷搬送動作、マゼンタの頭出し搬送動作、マゼンタの印刷搬送動作…というように印刷搬送動作と頭出し搬送動作とを交互に実行することにより複数種のインクを用紙に順次熱転写して印刷する。図1に示す制御手段7は、周知のサーマルプリンタと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に図示しない印刷制御処理ルーチンや図4に示す空搬送距離算出処理ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、図1に示す印刷制御部71と、空搬送距離算出部72とを実現する。
【0025】
図1の印刷制御部71は、各部1〜5の制御を通じて、サーマルヘッド1の昇降、印刷指令に基づくサーマルヘッド1への通電、並びに、用紙Paの搬送方向に対する用紙Pa及びリボンRbの搬送を関連付けた印刷搬送動作、並びに、通電終了位置p3から次のインクの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出す頭出し搬送動作を司るものである。印刷搬送動作及び頭出し搬送動作を例を挙げて説明すると、まず、図2(b)に示すように、サーマルヘッド1に対するリボンRbの相対位置が通電開始位置p1となるときからサーマルヘッド1への通電を開始して、図3(d)に示す通電終了位置p3までリボンRb及び用紙Paを共に搬送し、図2(a)に示すようにリボンRbのうち通電開始位置p1から通電終了位置p3までのインクYを用紙Paに熱転写し、印刷搬送動作を終える。次に、図3(d)に示すようにヘッドアップ状態にして用紙Paのみを戻す。この用紙戻しでは、用紙Paのうち印刷を開始すべき位置stとリボンRbの通電開始予定位置p4とが一致するように、次の頭出し搬送動作における空搬送距離W分、用紙Paを余分に戻した状態にする。そして、図3(e)に示すように、再度ヘッドダウン状態にして、用紙Pa及びリボンRbを空搬送距離W分搬送することで、次のインクの通電開始予定位置p4にリボンRbを繰り出す頭出し搬送動作を行い、続けて、図3(f)に示すように、サーマルヘッド1への通電を開始して次の印刷搬送動作を開始する。この一連の動作を反復実施することにより複数種のインクを用いた印刷を行う。
【0026】
図1の空搬送距離算出部72は、図1及び図2(a)に示すように、頭出し搬送動作において通電終了位置p3から次のインクの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出すために必要な空搬送距離Wを算出するもので、インクの塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離Bに対応する実通電位置情報を検出し、検出した実通電位置情報及び予め設定したパラメータ73に基づき空搬送距離Wを、下記数式を用いて算出する。
【0027】
パラメータ73は、インクの塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離Bに基づき空搬送距離Wを算出するために必要なもので、具体的には、インクの塗布領域先端eg1,eg2同士の間の距離Aと、エッジセンサ5による検出時のサーマルヘッド1の位置p2から次のインクの塗布領域先端eg2までの距離Gと、次のインクの塗布領域先端eg2から通電開始予定位置p4までの距離Eと、通電開始位置p1から通電終了位置p3までの距離C(印刷内容のサイズ)である。これらパラメータは固定である。なお、本実施形態では、通電開始位置から通電終了位置までの距離C(印刷内容のサイズ)が印刷指令に応じて変化しない設定、すなわち一定にしているので、この距離Cもパラメータに記憶してあるが、印刷指令に応じて通電開始位置p1から通電終了位置p3までの距離Cが変わる場合には、印刷指令から直接取得するようにしてもよい。
【0028】
また、空搬送距離算出部72は、インクの塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離Bに対応する実通電位置情報として、通電開始位置p1からエッジセンサ5で塗布領域先端eg2が検出されるまでにリボンRb及び用紙Paを用紙搬送機構3で搬送した搬送距離Fを検出(計測)し、この検出(計測)した搬送距離Fと上記パラメータとに基づきインクの塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した実通電開始位置p1までの距離Bを算出する。算出に用いる式は、次の通りである。
B=A−(F+G) …数式(1)
D=A−B−C ………数式(2)
W=D+E ……………数式(3)
【0029】
すなわち、制御手段7は、図2(b)に示すように、サーマルヘッド1に対するリボンRbの相対位置が通電開始位置p1であるときからサーマルヘッド1への通電を開始する印刷搬送動作を行うとともに、用紙搬送機構3を構成するマイクログリップローラ31への通電パルス数の計測(カウント)を開始する(図4の処理ST1:YES,ST2参照)。図2(c)に示すように、サーマルヘッド1への通電中にエッジセンサ5により次のインクの塗布領域先端eg2(エッジ)が検出されると(図4の処理ST3:YES参照)、この時点まで計測されるマイクログリップローラ31への通電パルス数に基づき搬送距離Fを検出し(図4の処理ST4参照)、数式(1)を用いてインクの塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離Bを算出し、数式(2)〜(3)を用いて空搬送距離Wを算出する(図4の処理ST5〜処理ST7参照)。
【0030】
図3(d)に示す通電終了位置p3までリボンRb及び用紙Paを共に搬送し、図2(a)に示すリボンのうち通電開始位置p1から通電終了位置p3までのインクYを用紙Paに熱転写して印刷搬送動作を終える。次に、図3(d)に示すようにヘッドアップ状態にして用紙Paのみを戻す。そして、図3(e)に示すように、再度ヘッドダウン状態にして、用紙Pa及びリボンRbを空搬送距離W分搬送することで、次のインクMの通電開始予定位置p4にリボンRbを繰り出す頭出し搬送動作を行い、続けて、図3(f)に示すサーマルヘッド1への通電を開始して次の印刷搬送動作を開始する。
【0031】
したがって、図5(b)に示すように、例えば、通電開始位置p1’や通電終了位置p3’が予定の位置p1,p3からズレしまっても、インクの塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した位置p1’までの距離B’が算出されて、次のインクMの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出すために必要な空搬送距離W’が適切に算出されて、空搬送されることになる。
【0032】
以上のように本実施形態に係るサーマルプリンタは、複数色のインクの塗布領域が所定の繰り出し方向に沿って順次配列されたリボンRbをサーマルヘッド1により用紙Paに押し当てたヘッドダウン状態でサーマルヘッド1への通電を行いつつリボンRb及び用紙Paを搬送することで通電開始位置p1から通電終了位置p3までのインクを用紙Paに熱転写する印刷搬送動作と、ヘッドダウン状態でサーマルヘッド1への通電をせずにリボンRb及び用紙Paを空搬送することで印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクMの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出す頭出し搬送動作とを行うことにより複数種類のインク(Y,M等)を用いた印刷を行うにあたり、印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクMの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出すために必要な空搬送距離Wを、印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離Bに基づき算出するために必要なパラメータ73を予め設定しておき、印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した実通電開始位置p1までの距離Bに対応する実通電位置情報を検出し、検出した実通電位置情報及びパラメータ73に基づき空搬送距離Wを算出する空搬送距離算出部72を設け、算出した空搬送距離W、空搬送するようにしている。
【0033】
このように、印刷済みインクYの通電終了位置p3から次のインクMの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出すために必要な空搬送距離Wを、印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から通電開始位置p1までの距離Bに基づき算出するために必要なパラメータ73を予め設定しておき、印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した実通電開始位置p1までの距離Bに対応する実通電位置情報を検出し、検出した情報及び上記パラメータに基づき空搬送距離Wを算出する空搬送距離算出部72を設け、算出した空搬送距離W、空搬送するようにしたので、図5(b)に示すように、実際に通電を開始した実通電開始位置p1’が予定の位置p1とズレてしまっても、次のインクMの通電開始予定位置p4へリボンRbを繰り出すための空搬送距離W’が適切に算出されるので、或るインクYの印刷時に生じた通電開始位置p1や通電終了位置p3のズレが次のインクMの通電開始予定位置p4に引き継がれることを回避することが可能となる。しかも、或るインクYの印刷時に生じる位置ズレが次のインクMの通電開始予定位置に引き継がれても支障なく印刷を可能とするためにインクの塗布領域を実際の印刷で用いる使用領域よりも広く設定する必要がなくなるので、塗布領域のうち印刷に使用されない余白部位を低減又は無くしたリボン設計を可能として、リボンコストを低減させることが可能となる。
【0034】
さらに、本実施形態では、次のインクMの塗布領域先端eg2を検出するエッジセンサ5を更に備えるとともに、インクY,Mの塗布領域先端eg1,eg2同士の間の距離Aと、エッジセンサ5による検出時におけるサーマルヘッドの位置p2から次のインクMの塗布領域先端eg2までの距離Gとを上記パラメータ73として予め設定しておき、実通電位置情報として通電開始位置p1からエッジセンサ5で塗布領域先端eg2が検出されるまでのリボンRb及び用紙Paの搬送距離Fを検出し、検出した搬送距離F及びパラメータ73に基づき印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した実通電開始位置p1までの距離Bを算出するので、例えばヘッドアップ状態でリボンを繰り出す頭出し制御等に用いられる既存のエッジセンサ5を用いて、印刷済みインクYの塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した実通電開始位置p1までの距離Bを算出するので、この距離Bを検出する新たなセンサ等を別途に設けることを避けて製造コストを抑制しつつ上記構成を実現することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0036】
例えば、空搬送距離算出部72は、実通電位置情報として通電開始位置p1からエッジセンサ5で塗布領域先端eg2が検出されるまでのリボンRb及び用紙Paの搬送距離Fを検出しているが、印刷済みインクYにおける塗布領域先端eg1から実際に通電を開始した実通電開始位置p1までの距離Bを検出することができれば、これに限定されるものではない。例えば、リボンの適所に位置検出用のマークを付しておき、このマークに基づき通電開始位置を検出するように構成してもよい。
【0037】
その他、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…サーマルヘッド
5…エッジセンサ
72…空搬送距離算出部
73…パラメータ
p1…印刷済みインクの通電開始位置
p2…エッジ検出時におけるサーマルヘッドの位置
p3…印刷済みインクの通電終了位置
p4…次のインクの通電開始予定位置
Pa…用紙
Rb…リボン
eg1,eg2…インクの塗布領域先端
eg1…印刷済みインクの塗布領域先端
eg2…次のインクの塗布領域先端
A…インクの塗布領域先端同士の間の距離
G…エッジ検出時におけるサーマルヘッドの位置から次のインクの塗布領域先端までの距離
B…印刷済みインクにおける塗布領域先端から実際に通電を開始した実通電開始位置までの距離
W…空搬送距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のインクの塗布領域が所定の繰り出し方向に沿って順次配列されたリボンをサーマルヘッドにより用紙に押し当てたヘッドダウン状態でサーマルヘッドへの通電を行いつつリボン及び用紙を搬送することで通電開始位置から通電終了位置までのインクを用紙に熱転写する印刷搬送動作と、ヘッドダウン状態でサーマルヘッドへの通電をせずにリボン及び用紙を空搬送することで印刷済みインクの通電終了位置から次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出す頭出し搬送動作とを行うことにより複数種類のインクを用いた印刷を行うサーマルプリンタであって、
印刷済みインクの通電終了位置から次のインクの通電開始予定位置へリボンを繰り出すために必要な空搬送距離を、印刷済みインクにおける塗布領域先端から通電開始位置までの距離に基づき算出するために必要なパラメータを予め設定しておき、
印刷済みインクにおける塗布領域先端から実際に通電を開始した実通電開始位置までの距離に対応する実通電位置情報を検出し、検出した実通電位置情報及び前記パラメータに基づき前記空搬送距離を算出する空搬送距離算出部を設け、算出した空搬送距離、空搬送するようにしたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
次のインクの塗布領域先端を検出するエッジセンサを更に備えるとともに、インクの塗布領域先端同士の間の距離と、前記エッジセンサによる検出時におけるサーマルヘッドの位置から次のインクの塗布領域先端までの距離とを前記パラメータとして予め設定しておき、
前記実通電位置情報として通電開始位置から前記エッジセンサで塗布領域先端が検出されるまでの前記リボン及び用紙の搬送距離を検出し、検出した搬送距離及び前記パラメータに基づき印刷済みインクにおける塗布領域先端から実際に通電を開始した実通電開始位置までの距離を算出する請求項1に記載のサーマルプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66550(P2012−66550A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215416(P2010−215416)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】