説明

シアノボレートアニオンを有する塩

アルカリ金属シアノボレートの製造方法、それらの、シアノボレートアニオンおよび有機カチオンを含む塩への更なる変換、これらの塩、およびそれらのイオン性液体としての使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属シアノボレートの製造方法、それらの、シアノボレートアニオンおよび有機カチオンを含む塩への更なる変換、これらの塩、およびそれらのイオン性液体としての使用に関する。
イオン性液体または液状塩は、有機カチオンと一般的に無機のアニオンとからなるイオン種である。それらは、中性分子を含有せず、一般的に373K未満の融点を有する。イオン性液体として用いられている数多くの化合物が当業者には知られている。特に、それらは、一連の特許および特許出願の内容でもある。
【0002】
従って、溶媒フリーのイオン性液体は、一連の米国特許(US 2,446,331、US 2,446,339、およびUS 2,446,350)でHurleyおよびWierにより初めて開示された。これらの“室温で溶融された塩”は、AlClおよび多くのn-アルキルピリジニウムハライドを含んでいた。
近年、このトピックに関するいくつかの総論が公開されてきた(R. Sheldon “Catalytic reactions in ionic liquids“, Chem. Commun., 2001, 2399-2407; M.J. Earle, K.R. Seddon “Ionic liquids. Green solvent for the future”, Pure Appl. Chem., 72 (2000), 1391-1398; P. Wasserscheid, W. Keim “Ionische Fluessigkeiten - neue Loesungen fuer die Uebergangsmetallkatalyse“ [Ionic Liquids - Novel Solutions for Transition-Metal Catalysis], Angew. Chem., 112 (2000), 3926-3945; T. Welton “Room temperature ionic liquids. Solvents for synthesis and catalysis”, Chem. Rev., 92 (1999), 2071-2083; R. Hagiwara, Ya. Ito “Room temperature ionic liquids of alkylimidazolium cations and fluoroanions”, Journal of Fluorine Chem., 105 (2000), 221-227)。
【0003】
イオン性液体の性質、例えば、融点、熱的安定性および電気化学的安定性、粘性は、一般的にアニオンの性質により影響される。対照的に、極性および親水性または親油性は、カチオン/アニオン対の好適な選択を通じて変化させることができる。従って、それらの使用について、多様な性質を有し、更なる可能性を促進する新規イオン性液体に対する、基本的な需要が存在する。
イオン性液体の分野における決定的な進歩が、1-エチル−3−メチルイミダゾリウムクロロアルミネートの発見で達成された。この塩は、広範な液体範囲および3Vより大きい電気化学的窓を有するので、電気化学的目的および合成的目的のために大きな関心がある。しかしながら、その使用は、化学的不安定性、とりわけ湿気により制限される。より加水分解に安定な1-エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートの発見後に、アルキルイミダゾリウムカチオンと、無機アニオンまたは有機アニオンとの組み合わせが研究されたが、1-エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートの組み合わせが、最も特徴付けられる。
【0004】
イミダゾリウムカチオンの安定性は、比較的高く、その分解温度は、本質的にアニオンにより決定される。従って、1-エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートは300℃までしか安定でないのに対し、トリフラートおよびビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンを有する1-エチル−3−メチルイミダゾリウム塩は、400℃まで安定である。
【0005】
先行技術は、フッ素配位子をシアン化物に置換したボレートアニオン (E. Bernhardt, G. Henkel, H. Willner, Z. Anorg. Allg. Chem. 626 (2000) 560; D. Williams, B. Pleune, J. Kouvetakis, M. D. Williams, R. A. Andersen, J. Amer. Chem. Soc. 122 (2000) 7735; E. Bernhardt, M. Berkei, M. Schuermann, H. Willner, Z. Anorg. Allg. Chem. 628 (2002) 1734)およびトリフルオロメチル配位子に置換したボレートアニオンを記載している(E. Bernhardt, G. Henkel, H. Willner, G. Pawelke, H. Buerger, Chem. Eur. J. 7 (2001) 4696; G. Pawelke, H. Buerger, Coord. Chem. Rev. 215 (2001) 243)。ここでは、シアノボレートから出発して、トリフルオロメチルボレートが合成されているが、シアノボレートは入手するのが困難で、少量しか入手できない。[B(CN)]の合成は手間がかかり、小さい規模でしか行われていない。加えて、出発物質は高価である。
【0006】
本発明の目的は、イオン性液体として用いることのできる多様な性質を有する安定な新規化合物、およびそれらの製造方法を提供することである。特に、該目的は、テトラフルオロボレートアニオンを有する塩より、高い安定性を有するボレートアニオンを有する塩を提供することである。
本発明のさらなる目的は、これらのボレート塩およびそれらの前駆体の効率的および経済的な製造方法を提供することである。
この目的は、メインクレームおよびサブ−クレームの特徴を特徴つけることにより、本発明に従って達成される。
【0007】
従って、本発明は、まず、一般式(1)のアルカリ金属シアノボレート
[B(CN)- (1)
ここで、Mは、Li、Na、K、Rb、およびCsの群から選択される、
で表される前記アルカリ金属シアノボレートの製造方法に関し、
ここで、容易に入手可能な出発物質であるアルカリ金属テトラフルオロボレートM[BF](M=Li、Na、K、Rb、Cs)と、アルカリ金属シアン化物MCN(M=Li、Na、K、Rb、Cs)とを、それぞれ固相反応で反応させる。
本発明に従って用いられるアルカリ金属テトラフルオロボレートは、好ましくは、カリウムテトラフルオロボレートK[BF]、またはナトリウムテトラフルオロボレートNa[BF]であり、本発明に従って用いられるアルカリ金属シアン化物は、好ましくは、シアン化カリウムKCN、またはシアン化ナトリウムである。
【0008】
本発明の好ましい変法には、アルカリ金属テトラフルオロボレートを、ハロゲン化リチウムの存在下で、アルカリ金属シアン化物と反応させる。ここで、ハロゲン化リチウムは、LiCl、LiBr、およびLiIから選択され、特に好ましくは、塩化リチウムLiClである。
アルカリ金属シアン化物およびハロゲン化リチウムは、それぞれの場合、2つの試薬の一つを過剰にして、用いることができる。しかしながら、アルカリ金属シアン化物およびハロゲン化リチウムは、好ましくは、モル比約1:1の反応に供される。
【0009】
アルカリ金属テトラフルオロボレートおよびアルカリ金属シアン化物は、好ましくは、1:4〜1:12のモル比、特に好ましくは、約1:9のモル比で用いられる。
アルカリ金属テトラフルオロボレート:アルカリ金属シアン化物:ハロゲン化リチウムのモル比約1:9:9が、非常に好ましくは用いられる。
本発明の反応に用いられる出発物質は、特に好ましくは、アルカリ金属テトラフルオロボレートとして、カリウムテトラフルオロボレートK[BF]、およびアルカリ金属シアン化物としてシアン化カリウムKCNである。
【0010】
本発明の固相反応は、100℃と500℃との間の温度で行われる。250〜400℃、特に好ましくは、280〜340℃の温度が好ましい。
一般性を限定することなく、本発明の固相反応の内容は、一般例を参照して説明される:K[BF]、KCN、およびLiClを、1:9:9のモル比で混合し、その後に溶融反応に移行させる。反応温度は、KCN/LiCl混合物が270〜290℃で溶融する共晶を形成する一方、他方で形成したテトラシアノボレート塩がゆっくり分解する(<400〜500℃)ように、選択する。LiClを有するKCN(モル比1:1)の冷却溶融液の粉末回折グラム(diffractogram)の評価は、K(Cl,CN)タイプ(a=6.34Å、F m3m)および他の同定されてない化合物(d=4.958、2.878、2.728、2.482、2.175Å)の混合結晶を検知することを可能とする。K[B(CN)]の収率は、280〜340℃の範囲で実質的に温度に依存せず、K[BF]に基づいて約40〜60%である。更なる実験で、KCN/LiClに対するK[BF]のモル比を、1:9から1:4.5に低下させると、収率が低下することが見出された。反応混合物のラマンスペクトルは、テトラシアノボレートが、反応後にリチウム塩の形態で存在することを示す(n(CN)=2263cm−1)。
【0011】
NaCN/LiCl混合物を用いる類似反応において、(Li,Na)(Cl,CN)タイプ(a=5.50Å Fm3m)の混合結晶は、少量のLiCN(d=5.216、3.626Å、m.p.160℃)のほかに、LiClを有するNaCN(モル比1:1)の溶融液で形成する。KCN/LiClとは対照的に、共晶(120〜140℃)は、LiClを有するNaCN間で形成するが、混合結晶は360〜540℃でのみ溶融する;これは、恐らく、Na[B(CN)]の低い収率(約25%)の原因である。
【0012】
反応生成物の精製中、過剰のシアン化物を、まず消滅させなければならない。30%H水溶液を用いる、未反応のシアン化物の酸化が、最も良い精製方法であることを見出した。良好な収率だけでなく、塩の低い負担、および反応混合物中に残存するシアン化物の完全かつ迅速な分解は、たった一つの欠点である、シアン化物の激しくて制御困難な反応よりも重要である。テトラシアノボレートは、その後に水溶液から抽出され、再抽出により、K塩またはNa塩に変換される。
【0013】
固相反応生成物の精製に利用できる代替的方法は、NaOCl水溶液を用いる未反応シアン化物の酸化であり、それは非常に穏やかな条件下、数分で、即ち、反応混合物を温めたり泡立てたりせず行う。精製は、その後、Hと同様に行われる。しかしながら、このほかの精製は、塩の負担がより大きいため、手間がかかり時間も消費する。
【0014】
さらに、本発明は、一般式(2)のアルカリ金属シアノボレートの製造方法に関し、
[BF(CN)4−n- (2),
ここで、n=0、1、2、または3であり、および
Mは、Li、Na、K、Rb、およびCsから選択され、
ここで、M=Li、Na、K、Rb、Csであるアルカリ金属シアン化物MCNは、三フッ化ホウ素エーテルBFOEtと反応させる。
【0015】
粗粒のシアン化カリウムKCNおよびBFOEtの使用すると、第一の付加物K[BF(CN)]と共に、本発明の反応において、以下の式に従って、等モルのK[BF]およびK[BF(CN)]が形成される:
【数1】

【0016】
加えて、2つの塩K[BF(CN)]およびK[B(CN)]が、反応混合物が室温より高い場合には特に前者が、少量形成する。
本発明に従って、三フッ化ホウ素エーテルは、非プロトン性溶媒の存在下で、アルカリ金属シアン化物と反応させる。一般性を制限することなく、非プロトン性溶媒は、例えば、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および/またはジメトキシエタンを含むことができる。
本発明の方法で用いられるアルカリ金属シアン化物は、好ましくは、シアン化カリウムKCNである。
出発物質は、好ましくは、−80〜100℃の温度、特に好ましくは室温で、本発明に従って反応させる。
【0017】
減圧下で除去される揮発性副生成物が、反応中形成し得る。しかしながら、大部分は、用いられる溶媒に不溶であり、濾過により分離される副生成物が形成する。所望の場合、溶媒は揮発性副生成物と共に、減圧下で除去され、得られるアルカリ金属シアノボレートは、所望の場合、分離され、当業者に既知の通常の可能性で精製することができる。
【0018】
本発明の第3および第4の内容は、一般式(3)のシアノボレートアニオンを有する塩の製造方法、および対応する一般式(3)の塩の製造方法であり、
Kt [BF(CN)4−n- (3),
ここで、n=0、1、2、または3であり、およびKtは有機カチオンであり、但し、カチオンKtは、n=0に対し、[N(Cでない。
【0019】
塩の製造に対しては、MがLi、Na、K、Rb、およびCsの群から選択される、一般式のアルカリ金属シアノボレートM[B(CN)-、またはn=0、1、2、または3であり、およびMがLi、Na、K、Rb、およびCsの群から選択される、一般式のアルカリ金属シアノボレートM[BF(CN)4−n-を、XがCl、Br、およびIから選択されるハロゲンであり、およびKtが有機カチオンであり、但し、カチオンが、n=0に対し、[N(CでないKt-と反応させる。
【0020】
有機カチオンKtは、好ましくは、以下の群から選択され、
【化1】

ここで、R=
H、但し、ヘテロ原子上の少なくとも1つのRは、Hとは異なり、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個の炭素原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
2〜20個の炭素原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル
3〜7個の炭素原子を有する、飽和、部分的または完全に不飽和のシクロアルキル
ハロゲン、特にフッ素または塩素、但し、ハロゲン−ヘテロ原子結合は存在せず
-NO、但し、正に帯電したヘテロ原子への結合は存在せず、および少なくとも1つのRは、NOとは異なり、
−CN、但し、正に帯電したヘテロ原子への結合は存在せず、および少なくとも1つのRは、CNとは異なり、
ここでRは、それぞれの場合、同一かまたは異なっており、
ここでRは、単結合または二重結合で、互いに対で結合してもよく、
ここで、1つまたは2つ以上のRは、ハロゲン、特に、-Fおよび/または-Clで部分的または完全に置換されてよく、または-CNもしくは-NOで部分的に置換されてよく、但し、全てのRは完全にハロゲン化されてなく、
およびここで、Rの1つまたは2つの炭素原子は、ヘテロ原子、および/または-O-、-C(O)-、C(O)O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-S(O)O-、-N=、-P=、-NR’-、-PR’-、-P(O)(OR’)-、-P(O)(OR’)O-、-P(O)(NR’R’)-、-P(O)(NR’R’)O-、-P(O)(NR’R’)NR’-、-S(O)NR’−、および-S(O)NR’−の群から選択される原子基により置換されることができ、ここで、R’= H、非フルオロ化、部分的にフルオロ化またはペルフルオロ化されたC−〜C−アルキル、または非フルオロ化、部分的にフルオロ化またはペルフルオロ化されたフェニルである、
【0021】
本発明の目的のために、完全に不飽和の置換基は、芳香族性置換基をも意味するものとする。
水素の他に、本発明の有機カチオンの好適な置換基Rは:
−〜C20-、特にC−〜C12−アルキル基、C−〜C20-、特にC−〜C12-アルケニルまたはアルキニル基、飽和または不飽和すなわち芳香族でもある、C−〜C−シクロアルキル基、NO、CNまたはハロゲンである。しかしながら、ここで、ハロゲンに対する制限要素は、炭素原子上でのみ置換基として生じるが、ヘテロ原子上では置換基として生じない。NOおよびCNは、正に帯電したヘテロ原子の置換基として生じない;さらに、置換基全てが同時に、NOまたはCNの意味を有さない。
【0022】
置換基Rは、環状、二環式、または多環式カチオンが形成するように、対に結合することができる。置換基は、ハロゲン原子、特にFおよび/またはClで、部分的または完全に置換されることができ、またはCNもしくはNOで部分的に置換されることができ、およびO、(O)、C(O)O、S、S(O)、SO、SOO、N、P、NH、PH、NR’、PR’、P(O)(OR’)、P(O)(OR’)O、P(O)(NR’R’)、P(O)(NR’R’)O、P(O)(NR’R’)NR’、S(O)NR’、およびS(O)NR’の群から選択される、1種または2種のヘテロ原子または原子基を含有する。しかしながら、完全なハロゲン化の場合、存在する全ての置換基Rが、部分的にハロゲン化されることはなく、すなわち少なくとも1つのRがペルハロゲン化されない。
【0023】
一般性を制限することなく、本発明の有機カチオンの置換基の例は:
【化2】

【0024】
一般性を制限することなく、本発明の塩として、以下の有機カチオンが特に好ましい:
【化3】

【0025】
本発明の塩は、有利なことに、有機溶媒に非常に容易に溶解する。既知の液状塩と比較して、本発明の塩は、意外にも低い粘性を有する。本発明の塩は、有利なことに安定である。それらは室温で単離し、保管することができる。さらに、本発明の塩は、製造するのが比較的容易で、容易に入手可能な出発物質が望まれる。
【0026】
本発明の全ての化合物、および式[N(C[B(CN)-は、塩のような特徴、比較的低い融点(通常、100℃未満)を有し、イオン性液体として用いることができる。
本発明の塩および式[N(C[B(CN)-の塩は、多くの合成反応または触媒反応、例えばフリーデル・クラフトアシル化反応およびアルキル化反応、ディールス・アルダー付加環化反応、水素化反応、および酸化反応、ヘック反応のための溶媒として用いることができる。さらに、例えば、2次電池および3次電池のフッ素化溶媒も合成できる。
【0027】
本発明の塩および式[N(C[B(CN)-の塩は、液晶化合物および活性成分、とりわけ医薬および作物保護剤の製造のための前駆体として好適である。
本発明の化合物および式[N(C[B(CN)-の塩を、非水性電解質、当業者に既知の他の電解質と組み合わせて用いることも可能である。
加えて、本発明の塩および式[N(C[B(CN)-の塩は、相間移動触媒または均一系触媒の不均一化のための媒体としての、好適な反応の非水性極性物質として重要である。
【0028】
本明細書中の全ての出願、特許および刊行物の全部の開示が、参考文献として本出願に組み込まれる。
それ以上コメントせずに、当業者は広い範囲で上記の記載を利用することができると仮定する。従って、好ましい態様および例は、如何なる方法でも絶対的に制限することなく、単に説明的な開示としてみなすべきである。
【0029】
NMRスペクトルは、重水素化された溶媒中、20℃で、重水素ロックを有する5mmのH/BBブロードバンドヘッド(broad−band head)のBruker Avance DRX−300分光計で測定された。様々の原子核の周波数は:H:300.13MHz、11B:96.92MHz、13C:75.47MHz、19F:282.41MHz、および15N:30.41MHzである。参照方法は、それぞれのスペクトルまたはそれぞれのデータ・セットに対し別々に示される。
【0030】
DSC測定はNetzsch DSC 204装置で行われた。温度および感応性は、ナフタレン、安息香酸、KNO、AgNO、LiNO、およびCsClを用いて調整測定した。それぞれの場合、5〜20mgの基質を、アルミニウムるつぼに量りとり、小さい隙間をつくりアルミニウムキャップでシールした。試験は25〜500℃の温度範囲で行った。他に示さない限り、加熱割合は10Kmin−1である。測定中、サンプル空間は乾燥窒素で洗い流した。空気に敏感な基質のサンプルは、乾燥ボックスで製造され、アルゴン充満バイアルの分析装置に送られた。データ評価はNetzsch Protens 4.0プログラムを用いて行われた。
【0031】
元素分析は、HEKA-Tech GmbHからのEuro EA3000を用いて、微量分析燃焼法により行われた。空気に敏感な基質のサンプルは、乾燥ボックスで製造され、アルゴン充満バイアルの分析装置に送られた。記録された原子に対する誤差限界は:C:±0.3%、H:±0.1%、N:±0.2%である。
【0032】
例1:K[B(CN)]の合成
KCN、LiCl、およびK[BF]は粗く磨り潰し、乾燥ボックス(MBraun、Munich)中のすり鉢でそれぞれ混合する。混合物を、商業的に入手可能なコーヒー・グラインダーを用いて細かく磨り潰す。反応混合物をその後に、ニッケルるつぼ(φ内部=101mm、d=2mm、h=85mm)に移す。るつぼは、鉄のふたで緩く覆い、乾燥ボックスからマッフルファーネスに移し(VMK 93、Kontron Material und Strukturanalyse GmbH)、加熱する。反応が完結したとき、金属カバーを備えたるつぼを、まだ熱いマッフルファーネルから取り、空気中で室温まで放冷する。
【0033】
放冷したグレー/黒の多孔質の反応混合物を、るつぼからすり鉢に移し、粗く粉砕する。3lビーカー中の粉砕した固体に、150mlの水を、その後に加え、全部で350mlのH(30%の水溶液、約3mol)を、約30ml部で、恒常的に攪拌しながら30分かけて加える。激しくガスを発生させながら発熱的に始まる反応は、氷を加えることにより制御する。反応混合物(V=2.3l)を、2つの3lビーカーに分け、濃HCl(約300 ml、約3.6mol)(pH 5〜7)を用いて、ガス発生が観察されなくなるまで酸性化する。その後、残留シアン化物が混合物中に存在するかをチェックする(シアニドテスト、Merck KGaA, Darmstadt、ドイツ)。混合物をその後に濾過し、28ml(0.34mol)の濃HClを、攪拌しながら黄色溶液に加える。47g(63ml、0.33mol)のトリプロピルアミンをその後に加える。反応混合物を15分間攪拌し、ジクロロメタン(250、150、および50ml)で抽出する。集められた有機相を、200mlのHOで洗浄し、洗浄液を25mlのジクロロメタンで再び抽出する。集められたジクロロメタン相を、MgSOで乾燥し、ガラスフリット(D4)で濾過する。35g(0.63mol)のKOHを少量の水中に溶解させ、有機溶液に激しく攪拌しながら加える。ベージュ色のオイル状の物質が即座に沈殿し、さらに攪拌した後に(30分)、容器の底に塊が形成される。ジクロロメタン/トリプロピルアミン混合物を注ぎ移し、生成物を残留物からTHF(200、100、および50ml)で抽出する。集められたTHF相を、KCOを用いて乾燥させ、最後に全ての揮発性成分をロータリーエバポレーターで除去する。白色生成物をジクロロメタンで洗浄し、減圧下、室温で乾燥させる。
【0034】
【表1】

[a] Hを用いた未反応のCNの酸化
[b] NaOClを用いた未反応CNの酸化
13C{H}−NMR:δ =123.3ppm(q,4C,CN),Δ13C(10/11B)= 0.0021 ppm,J(11B,13C)= 70.9Hz;11B−NMR:δ= −38.6ppm,J(11B,13C)=71.2Hz;溶媒:CDCN 参照物質:13C−NMR 溶媒ピーク(TMSに対して)および11B−NMR 外部標準としてBF・EtO/CDCN
【0035】
NMRデータは、従来技術(E. Bernhardt, G. Henkel, H. Willner, Z. Anorg. Allg. Chem. 626 (2000) 560)と一致する。
【表2】

DSC測定によれば、塩は450℃を超えて分解する。
【0036】
例2:Na[B(CN)]の合成
170.3 g(2.62mol)のKCN、116.1g(2.74mol)のLiCl、および37.2g(0.30mol)のK[BF]を計りとり、すり鉢中で粗く磨り潰し、それぞれを混合する。更なる手順は、ジクロロメタン抽出物を得るまでは、例1(反応温度300℃、反応時間1.5時間)に記載されたものと対応する。
2等量のNaOH(約25g、0.63mol)を可能なだけ少量の水に溶解させ(約10〜20ml)、激しく攪拌させながら有機溶液に滴下する。ベージュ色のオイル状物質が即座に沈殿し、さらに攪拌した後に(少なくとも30分)、容器の底に塊が形成される。ジクロロメタン/トリプロピルアミン混合物を注ぎ移し、生成物を残留物からTHF(200、100、および50ml)で抽出する。ベージュ色の残留物が抽出により液体となる場合には、その粘性稠度は、NaCOまたはNaSOを注意深く添加することにより元に戻すことができる。
集められたTHF相を、NaCOまたはNaSOを用いて乾燥させ、最後に全ての揮発性成分をロータリーエバポレーターで除去する。アミン残留物を除去するために白色生成物をジクロロメタンで洗浄し、減圧下、60℃で乾燥する。収率25.3g(62%、0.18mol)
【0037】
【数2】

溶媒:CDCN 参照物質:13C−NMR溶媒ピーク(TMSに対して)および11B−NMR 外部標準としてBF・EtO/CDCN
【0038】
NMRデータは、従来技術(E. Bernhardt, G. Henkel, H. Willner, Z. Anorg. Allg. Chem. 626 (2000) 560)と一致する。
【表3】

【0039】
例3:リチウムテトラシアノボレート、Li[B(CN)
5g(32mmol)のK[B(CN)]を、20mlの水に溶解させ、8mlの37%塩酸(96mmol)および8mlのPrN(42mmol)と反応させる。この混合物をその後に、50mlのCHClでそれぞれ2回抽出し、MgSOを用いて有機相を乾燥させ、20mlの水に3gのLiOH・HO(72mmol)の溶液を加え、該混合物を1時間激しく攪拌する。全ての揮発性生成物を減圧下で除去する。Li[B(CN)]を、ソックスレー装置中の50mlのCHCNで残留物から抽出する。有機相をロータリーエバボレーターで濃縮する。粗生成物を水で再結晶し、50mlのCHClで洗浄し、減圧下で溶媒残留物を留去する。収率3.5g(80%、29mmol)
DSC測定によれば、塩は470℃を超えて分解する。
【0040】
例4:アンモニウムテトラシアノボレート、NH[B(CN)
0.31g(2.0mmol)のK[B(CN)]を、8mlの水に溶解させ、その後に、8mlの水に0.20g(1.1mmol)の(NH[SiF]の溶液と反応させる。全ての揮発性成分を減圧下で除去する。NH[B(CN)]を、10mlのCHCNで、残留物から抽出する。有機相をロータリーエバポレーターで濃縮する。粗生成物を、10mlのCHClで洗浄し、減圧下で乾燥する。収率0.25g(93%、1.9mmol)
DSC測定によれば、塩は300℃を超えて分解する。
【0041】
例5:トリチルテトラシアノボレート、[PhC][B(CN)
無水のアセトニトリル中、500mg(2.3mmol)のAg[B(CN)]、および726mg(2.3mmol)の(CCBrを、PTFEバルブ (Young, London)を備えた250mlガラスフラスコにおける反応に導入する。4時間後、アセトニトリルを減圧下で除去し、100mlのジクロロメタンをその後に加える。懸濁液を、シュレンクフラスコ中のCelite(登録商標)で覆われたフリットを通して濾過する。反応フラスコを、ジクロロメタン(20mlおよび10ml)で2回リンスする。溶液を減圧下で10mlまで濃縮し、無水ヘキサン70mlを加えた後に、有機固体が沈殿する。これをシュレンクフリットにより濾過し、さらに10mlのヘキサンでリンスする。有機物の[PhC][B(CN)]を、減圧下で乾燥し、乾燥ボックス中で保管する。収率は408mg(51%、1.3 mmol)である。
【0042】
【数3】

溶媒:CDCl 参照物質:H−および13C−NMR溶媒シグナル(TMSに対して)、および11B−NMR 外部標準としてBF・EtO/CDCN
【表4】

[PhC][B(CN)]は、158℃で分解して溶融する。
【0043】
例6:[HNPhMe][B(CN)
1.50g(9.7mmol)のK[B(CN)]を、50mlの水に溶解させる。まず、3ml(36mmol)の濃HCl溶液、およびその後に1.23ml(9.7mmol)のN,N−ジメチルアニリンを、攪拌しながら溶液に加えるとすぐに、白色固体が沈殿する。溶液を、ジクロロメタン(100mlおよび30ml)で2回抽出し、MgSOを用いて有機相を乾燥させ、ジクロロメタンを減圧下で除去すると、白色[HNPhMe][B(CN)]を与え、ペンタンで洗浄することにより精製する。収率2.12g(92%、8.9mmol)
【0044】
【数4】

溶媒:CDCN; 参照物質:H−および13C−NMR溶媒シグナル(TMSに対して)、11B−NMR 外部標準としてBF・EtO/CDCN、および15N−NMR 外部標準としてCDCN中の80%のCHNO
【0045】
【表5】

[HNPhMe][B(CN)]は、101℃で溶融し、246℃を超えて発熱的に分解する。
【0046】
例7:テトラエチルアンモニウムテトラシアノボレート、[EtN][B(CN)
7g(46mmol)のK[B(CN)]を、300mlの水に溶解させ、8.4g(46mmol)の[EtN]Cl・HOを、130mlの水に溶解させる。2つの溶液を混合するとすぐに、白色固体が沈殿する。30分間攪拌した後に、沈殿した物質が溶解するジクロロメタン250mlを加える。2つの相は分離し、有機相をMgSOで乾燥する。ジクロロメタンをロータリーエバポレーターで除去し、白色固体をペンタンで何回も洗浄し、その後に減圧下で乾燥する。収率10.5g(96%、43mmol)
【0047】
【数5】

溶媒:CDCN 参照物質: H−および13C−NMR 溶媒ピーク(TMSに対して)、および11B−NMR 外部標準としてBF・EtO/CDCN
【表6】

[EtN][B(CN)]は230℃で溶融する。さらなる可逆的な相変換が145℃の温度で生じる。塩は360℃を超えて分解する。
【0048】
例8: 1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート[C15][B(CN)
0.35g(2.3mmol)のK[B(CN)]を、20mlの水に溶解させる。20mlの水中、0.53g(3.0mmol)の[C15]Clを、攪拌しながら加える。溶液をジクロロメタン(30mlおよび20ml)で2回抽出し、有機相を水(20ml)で洗浄し、MgSOを用いて乾燥し、ジクロロメタンをその後に、減圧下で除去する。収率0.50g(87%、2.0mmol)
【表7】

[C15][B(CN)]は-50℃未満で溶融し、410℃を超えて吸熱的に分解する。
【0049】
例9:1-エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート[C11][B(CN)
[C11][B(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表8】

[C11][B(CN)]は、-50℃未満で溶融し、420℃を超えて吸熱的に分解する。
【0050】
例10:p-メチルブチルピリジニウムテトラシアノボレート[C1016N][B(CN)
[C1016N][B(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表9】

[C1016N][B(CN)]は、-25℃で凝固し、42℃で溶融し、390℃を超えて発熱的に分解する。
【0051】
例11:K[BF(CN)]の調整
変法A:5.88g(41mmol)のBFラOEt、および30mlのCHCNを、PTFEバルブを備えた50mlフラスコ中の4.12g(63mmol)のKCNと濃縮する。反応混合物を室温で3時間攪拌し、全ての揮発性成分をその後に、減圧下で除去し、残留物を約50mlのCHCNに溶解させ、濾過によりKCNおよびK[BF]を除く。減圧下でアセトニトリルを除去した後、2.66g(19mmol)のK[BF(CN)](11B−および19F−NMR:93%の[BF(CN)-、0.3%の[BF(CN)]、および約7%の不明のもの)が、水での再結晶により得られる。収率:92%。純粋無色のK[BF(CN)]が水での再結晶により得られる。単離収率:2.08g(72%、15 mmol)
【0052】
変法B:65g(1.0mol)のKCNおよび200mlのCHCNを、最初に、滴下漏斗を備えた500mlの丸底フラスコに導入する。50ml(56g、0.4mol)のBFラOEtを、室温で攪拌しながら30分間にわたり滴下する。添加中、温度を50℃まで昇温させる。さらに室温で攪拌後(1.5時間)、溶液を濾過し、濾過残留物を(KCNおよびK[BF])を約300mlのCHCNで洗浄する。集められたアセトニトリル相を、ロータリーエバポレーターで濃縮すると、20gの不純なK[BF(CN)]を粗生成物として与える。粗生成物を、200mlの水中で、30mlの濃HClおよび35ml(25g、170mmol)のトリプロピルアミンと反応させ、200mlのジクロロメタンで、トリプロピルアンモニウム塩として抽出する。MgSOを用いて、ジクロロメタン相を乾燥し、激しく攪拌しながら、可能なだけ少量の水に溶解した25gのKOHと反応させる。粘性の水相を分離し、ジクロロメタンで洗浄する。生成物を、約300mlのCHCNで残留物から抽出し、KCOを用いて、溶液を乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮する。白色生成物をジクロロメタンで洗浄し、減圧下で乾燥する。収率:17g(60%、120mmol)。11B-NMRによれば、物質は、98%の[BF(CN)を含有する。
【0053】
例12: 1-エチル−3−メチルイミダゾリウムトリシアノフルオロボレート[C11][BF(CN)
[C11][BF(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表10】

[C11][BF(CN)]は室温で液体である。
【0054】
例13: 1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリシアノフルオロボレート[C15][BF(CN)
[C15][BF(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表11】

[C15][BF(CN)]は、-50℃未満で溶融し、300℃を超えて発熱的に分解する。
【0055】
例14: p-メチルブチルピリジニウムトリシアノフルオロボレート[C1016N][BF(CN)
[C1016N][BF(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表12】

[C1016N][BF(CN)]は、-50℃未満で溶融し、260℃を超えて発熱的に分解する。
【0056】
例15: 1-エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノジフルオロボレート[C11][BF(CN)
[C11][BF(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表13】

[C11][BF(CN)]は、-50℃未満で溶融し、200℃を超えて発熱的に分解する。
【0057】
例16: 1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアノジフルオロボレート[C15][BF(CN)
[C15][BF(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表14】

[C15][BF(CN)]は、-50℃未満で溶融し、210℃を超えて発熱的に分解する。
【0058】
例17: p-メチルブチルピリジニウムジシアノジフルオロボレート[C1016N][BF(CN)
[C1016N][BF(CN)]を、[C15][B(CN)]と同様にして、同収率で調製する。
【表15】

[C1016N][BF(CN)]は、-50℃未満で溶融し、190℃を超えて発熱的に分解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
[B(CN)- (1)
ここで、Mは、Li、Na、K、Rb、およびCsの群から選択される、前記式のアルカリ金属シアノボレートの製造方法であって、M=Li、Na、K、Rbであるアルカリ金属テトラフルオロボレートM[BF]と、M=Li、Na、K、Rbであるアルカリ金属シアン化物MCNを、固相反応で反応させることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
アルカリ金属テトラフルオロボレートがK[BF]、またはNa[BF]であり、アルカリ金属シアン化物がKCN、またはNaCNであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属テトラフルオロボレートを、LiCl、LiBr、およびLiIから選択されるリチウムハロゲン化物、好ましくはLiClの存在下で、アルカリ金属シアン化物と反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
アルカリ金属シアン化物およびリチウムハロゲン化物が、モル比1:1で用いられることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
アルカリ金属シアン化物およびリチウムハロゲン化物が、モル比1:4〜1:12、好ましくはモル比1:9で用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
用いられるアルカリ金属テトラフルオロボレートがK[BF]であり、用いられるアルカリ金属シアン化物がKCNであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
反応が、100℃から500℃の間の温度、好ましくは250〜400℃、特に好ましくは280〜340℃で行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
一般式(2)
[BF(CN)4−n- (2)
ここで、n=0、1、2または3であり、およびMはLi、Na、K、Rb、およびCsの群から選択される、前記式のアルカリ金属シアノボレートの製造方法であって、
アルカリ金属シアン化物MCNを、三フッ化ホウ素エーテルBFOEtと反応させることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項9】
アルカリ金属シアン化物を、非プロトン性溶媒の存在下で、三フッ化ホウ素エーテルBFOEtと反応させることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および/またはジメトキシエタンの存在下で、アルカリ金属シアン化物を、三フッ化ホウ素エーテルと反応させることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
用いられるアルカリ金属シアン化物が、シアン化カリウムKCNであることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
反応が、-80〜100℃の間の温度、好ましくは室温で行われることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
一般式(3)
Kt [BF(CN)4−n- (3)
ここで、n=0、1、2または3であり、およびKtが有機カチオンであり、但し、カチオンKtが、n=0に対し、[N(Cではない、前記式の塩の製造方法であって、
MがLi、Na、K、RbおよびCsの群から選択され、請求項1〜7のいずれかにより製造される、一般式M[B(CN)-のアルカリ金属シアノボレート、
またはn=0、1、2、または3であり、およびMが、Li、Na、K、Rb、およびCsの群から選択され、請求項8〜12のいずれかにより製造される、一般式M[BF(CN)4−n-のアルカリ金属シアノボレートを、
Xは、Cl、Br、およびIから選択されるハロゲンであり、およびKtが有機カチオンであり、但し、カチオンKtが、n=0に対し、[N(Cでない、Kt-と反応させることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項14】
有機カチオンKtが、以下の群から選択されることを特徴とする製造方法であって、
【化1】

ここで、R=
H、但し、ヘテロ原子上の少なくとも1つのRは、Hとは異なり、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個の炭素原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
2〜20個の炭素原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル
3〜7個の炭素原子を有する、飽和、部分的または完全に不飽和のシクロアルキル
ハロゲン、特にフッ素または塩素、但し、ハロゲン−ヘテロ原子結合は存在せず、
-NO、但し、正に帯電したヘテロ原子への結合は存在せず、および少なくとも1つのRは、NOとは異なり、
−CN、但し、正に帯電したヘテロ原子への結合は存在せず、および少なくとも1つのRは、CNとは異なる、
であり、ここで、1つまたは2つ以上のRは、ハロゲン、特に、-Fおよび/または-Clで部分的または完全に置換されてよく、または-CNもしくは-NOで部分的に置換されてよく、但し、全てのRは完全にハロゲン化されてなく、
およびここで、Rの1つまたは2つの炭素原子は、ヘテロ原子、および/または-O-、-C(O)-、C(O)O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-S(O)O-、-N=、-P=、-NR’-、-PR’-、-P(O)(OR’)-、-P(O)(OR’)O-、-P(O)(NR’R’)-、-P(O)(NR’R’)O-、-P(O)(NR’R’)NR’-、-S(O)NR’−、および-S(O)NR’−の群から選択される原子基により置換されることができ、ここで、R’=H、非フルオロ化、部分的にフルオロ化またはペルフルオロ化されたC−〜C−アルキル、または非フルオロ化、部分的にフルオロ化またはペルフルオロ化されたフェニルである、
請求項13に記載の前記製造方法。
【請求項15】
有機カチオンKtが、以下の群から選択されることを特徴とする、請求項13または14に記載の製造方法。
【化2】

【請求項16】
一般式(3)
Kt [BF(CN)4−n- (3)
ここで、n=0、1、2、または3であり、およびKtは有機カチオンであり、但し、カチオンKtは、n=0に対し、[N(Cではない
で表される前記一般式の塩。
【請求項17】
有機カチオンKtが、以下の群から選択され、
【化3】

ここで、R=
H、但し、ヘテロ原子上の少なくとも1つのRは、Hとは異なり、
1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個の炭素原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
2〜20個の炭素原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル
3〜7個の炭素原子を有する、飽和、部分的または完全に不飽和のシクロアルキル
ハロゲン、特にフッ素または塩素、但し、ハロゲン−ヘテロ原子結合は存在せず
-NO、但し、正に帯電したヘテロ原子への結合は存在せず、および少なくとも1つのRは、NOとは異なり、
−CN、但し、正に帯電したヘテロ原子への結合は存在せず、および少なくとも1つのRは、CNとは異なる、
であり、ここでRは、それぞれの場合、同一かまたは異なっており、
ここでRは、単結合または二重結合で、互いに対で結合してもよく、
ここで、1つまたは2つ以上のRは、ハロゲン、特に、-Fおよび/または-Clで部分的または完全に置換されてよく、または-CNもしくは-NOで部分的に置換されてよく、但し、全てのRは完全にハロゲン化されてなく、
およびここで、Rの1つまたは2つの炭素原子は、ヘテロ原子、および/または-O-、-C(O)-、C(O)O-、-S-、-S(O)-、-SO-、-S(O)O-、-N=、-P=、-NR’-、-PR’-、-P(O)(OR’)-、-P(O)(OR’)O-、-P(O)(NR’R’)-、-P(O)(NR’R’)O-、-P(O)(NR’R’)NR’-、-S(O)NR’−、および-S(O)NR’−の群から選択される原子基により置換されることができ、ここで、R’= H、非フルオロ化、部分的にフルオロ化またはペルフルオロ化されたC−〜C−アルキル、または非フルオロ化、部分的にフルオロ化またはペルフルオロ化されたフェニルである、ことを特徴とする、
請求項16に記載の塩。
【請求項18】
有機カチオンKtが、以下の群から選択されることを特徴とする、請求項16または17に記載の塩。
【化4】

【請求項19】
請求項16〜18のいずれかに記載の塩、または式[N(C[B(CN)-の塩のイオン性液体としての使用。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれかに記載の塩、または式[N(C[B(CN)-の塩の非水性電解液としての使用。
【請求項21】
請求項16〜18のいずれかに記載の塩、または式[N(C[B(CN)-の塩の相間移動触媒としての使用。
【請求項22】
請求項16〜18のいずれかに記載の塩、または式[N(C[B(CN)-の塩の、液晶化合物または活性成分、特に医薬または作物保護剤の合成中間体としての使用。

【公表番号】特表2006−517546(P2006−517546A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501548(P2006−501548)
【出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000231
【国際公開番号】WO2004/072089
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】