説明

シアン酸エステル化合物、およびその硬化物

【課題】優れた耐熱性を有する硬化物を与えるシアン酸エステル化合物、該化合物を含む熱硬化性樹脂組成物及び該熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【解決手段】イミド環含有シアン酸エステル化合物、及びイミド環含有シアン酸エステル化合物を含む硬化性樹脂組成物及び硬化性樹脂組成物を硬化してなる、高いガラス転移温度、分解温度を有し、熱的、電気的および機械物性に優、電気絶縁材料、接着剤、積層材料、レジスト、ビルドアップ積層板材料のほか、土木・建築、電気・電子、自動車、鉄道、船舶、航空機、スポーツ用品、美術・工芸などの分野における固定材、構造部材、補強剤、型どり材、耐候性、耐燃性および高度の機械強度が要求される航空機構造部材、衛星構造部材および鉄道車両構造部材、スポーツ用の繊維強化複合材料、すなわちゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などの幅広い用途に使用することができる硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン酸エステル化合物に関し、さらに該化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物、およびそれらの硬化物に関する。かかる熱硬化性樹脂組成物は、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体封止用樹脂、プリント配線板用接着剤、電気用積層板及びプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、液晶のカラーフィルター用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤等の広範な用途に用いることができるほか、繊維強化複合材料のマトリックスに該当するシアン酸エステル化合物の硬化物を用いることもできる。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維強化複合材料の用途拡大に伴い、繊維強化複合材料には、種々の物性が要求されてきておいるが、その要求特性の一つとして耐熱性の向上が挙げられる。繊維強化複合材料にはマトリックス樹脂として、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用途に応じて使用されているが、繊維強化複合材料の耐熱性はマトリックス樹脂の耐熱性に依存する。
この改良として、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンをグリシジル化したエポキシ樹脂や(例えば特許文献1参照)、トリグリシジルアミノフェノール骨格を有するエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂にジアミノジフェニルスルホンやポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドを配合した組成物が開示されている(例えば特許文献2参照)。
シアン酸エステル樹脂は、硬化によってトリアジン環を生じ、高い弾性率や耐熱性を有するので、上記熱硬化性樹脂として好ましく、シアン酸エステル樹脂をマトリックスに用いた繊維強化複合材料の製造方法も開示されている(例えば特許文献3および特許文献4参照)。
しかしながら、近年これらの応用分野における要求性能の高度化に伴い、さらなる物性向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3573530号明細書
【特許文献2】特開昭62−297316号公報
【特許文献3】特開2003−12819号公報
【特許文献4】特開2006−70115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、硬化物が優れた耐熱性を有する新規なシアン酸エステル化合物、硬化性樹脂組成物、および該樹脂組成物を硬化させてなる硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で示されるシアン酸エステル化合物が、優れた耐熱性を有する硬化物を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.一般式(1)で示されるシアン酸エステル化合物。
【化1】

(式中、Arは炭素数6〜10の芳香環で、RxはArのすべての置換基であり、同一の基でも異なる基でもよい。Rxは水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基またはハロゲンを表す。Ryは炭素数8〜20の脂肪族テトラカルボン酸、または炭素数10〜40の芳香族テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除去した残基である。
2.一般式(1)において、Ryが
【化2】

で示される構造からなる群から選ばれる4価の有機基である、シアン酸エステル化合物。
3.上記第1項または第2項に記載のシアン酸エステル化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
4.上記第3項記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシアン酸エステル化合物は、それ自体を重合させることによってまたは他の樹脂と共重合させることによって、高いガラス転移温度、分解温度を有する硬化物を与えることから、高機能性高分子材料として極めて有用であり、熱的、電気的および機械物性に優れた材料として電気絶縁材料、接着剤、積層材料、レジスト、ビルドアップ積層板材料のほか、土木・建築、電気・電子、自動車、鉄道、船舶、航空機、スポーツ用品、美術・工芸などの分野における固定材、構造部材、補強剤、型どり材などに好ましく使用される。これらの中でも、耐候性、耐燃性および高度の機械強度が要求される航空機構造部材、衛星構造部材および鉄道車両構造部材、スポーツ用の繊維強化複合材料、すなわちゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などの幅広い用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例B1で得たビス(N−4-シアナト-2-メチルフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミドのH1−NMRチャート
【図2】実施例B2で得たビス(N−3-シアナト-4-メチルフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミドのH1−NMRチャート
【図3】実施例B3で得たビス(N−4-シアナトフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミドのH1−NMRチャート
【図4】実施例B4で得たビス(N−4-シアナト―2-メチルフェニル)-4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミドのH1-NMRチャート
【図5】実施例B5で得たビス(N−3-シアナトフェニル)-4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミドのH1−NMRチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のシアン酸エステル化合物は一般式(1)で表される。
【化3】

式中、Arは炭素数6〜10の芳香環で、RxはArのすべての置換基であり、同一の基でも異なる基でもよく、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基またはハロゲンを表す。特にArはベンゼン環であることが好ましく、Rxは炭素数1〜6のアルキル基がArに0〜2個置換したものである事が好ましい。
【0009】
Ryは炭素数8〜20の脂肪族テトラカルボン酸二無水物または炭素数10〜40の芳香族テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除去した残基である。Ryの構造には炭素以外の原子、例えば酸素、硫黄、ハロゲン等の原子を含んでいても良い。好ましくはRyは炭素数8〜15の脂環式テトラカルボン酸二無水物または炭素数10〜35の芳香族テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除去した残基である。特に、以下に示す構造からなる群から選ばれる4価の有機基から選ばれたものであると、より高耐熱性の硬化物が得られるので好ましい。
【化4】

【0010】
一般式(1)で示される化合物の製法は、特に限定されず、一般式(2)に記載されるフェノールから、シアネート合成として現存する方法により製造してもよい。なお、一般式(2)に記載されるフェノールは、定法により、テトラカルボン酸無水物とアミノフェノールの脱水環化反応により得ることができる。
【化5】

(式中、Ar、Rx、Ryおよびnは式(1)に同じ。)
【0011】
上記テトラカルボン酸無水物は、例えば、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4’―(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0012】
また、上記アミノフェノールには、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4−アミノフェノール、4−アミノ−2−フルオロフェノール、4−アミノ−2−クロロフェノール、4−アミノ−3−クロロフェノール、1−アミノ−2−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、3−アミノ−2−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、6−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、2−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−p−クレゾール、3−アミノ−o−クレゾール、3−アミノ−p−クレゾール、4−アミノ−m−クレゾール、4−アミノ−o−クレゾール、5−アミノ−o−クレゾール、6−アミノ−m−クレゾール、4−アミノ−3,5−キシレノール、3−ヒドロキシ−4−メトキシアニリン等が挙げられる。
【0013】
フェノールをシアネート化する方法としては、IAN HAMERTON,“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins”,BLACKIE ACADEMIC & PROFESSIONALには、一般的なシアネート化合物の合成法が記載されている。また、米国特許USP3553244号には溶媒中、塩基の存在下ハロゲン化シアンが常に塩基より過剰に存在するようにして反応させる方法が提供されている特開平7−53497号公報では、塩基として3級アミンを用い、これを塩化シアンよりも過剰に用いながら合成する方法が、特表2000−501138号公報には連続プラグフロー方式で、トリアルキルアミンとハロゲン化シアンを反応させる方法が、特表2001−504835号公報には、フェノールとハロゲン化シアンをtert−アミンの存在化非水溶液中反応させる際、副生するtert−アンモニウムハライドをカチオン及びアニオン交換対で処理する方法が開示されている。また、特許2991054号にはフェノール化合物を水と分液可能な溶媒の存在下、3級アミンとハロゲン化シアンを同時に添加し反応させた後、水洗分液し、得られた溶液から2級もしくは3級アルコール類、炭化水素の貧溶媒を用いて沈殿精製する方法が、また、特開2007−277102公報には、ナフトール類、ハロゲン化シアン、及び3級アミンを、水と有機溶媒の二相系溶媒中、酸性条件下で反応させることを特徴とする、シアン酸エステルの製造方法が記載されている。
【0014】
一般式(2)で示されるフェノール化合物と塩化シアンを溶媒中で、塩基性化合物存在下反応させることにより得ることができる。また、同様な一般式(2)で示されるフェノール化合物と塩基性化合物による塩を水を含有する溶液中にて形成させ、その後、塩化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法を採ることもできる。
【0015】
通常、シアン酸エステルの合成手順として、有機溶媒中、一般式(2)で示されるフェノール化合物を溶解させ、3級アミンなどの塩基性化合物を添加した後、過剰のハロゲン化シアンと反応させていく。この方式では、常にハロゲン化シアンが過剰に存在するため、フェノラートアニオンがシアン酸エステルと反応して生成するイミドカーボネートを抑制できるとされている。ただし、過剰のハロゲン化シアンと3級アミンが反応して、ジアルキルシアナミドを生成するため、反応温度を10℃以下、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下に保つ必要がある。
【0016】
上記の方法以外にも、反応における注下の順序などは任意に選択することができる。例えば、フェノール化合物を溶媒に溶解させた後、3級アミンなどの塩基性化合物とハロゲン化シアンもしくはその溶液を交互に滴下していっても良いし、同時に供給しても良い。また、フェノール化合物と3級アミンなどの塩基性化合物の混合溶液とハロゲン化シアンもしくはその溶液を同時に供給することもできる。いずれの場合も大きな発熱反応であるが、副反応を抑制するなどの目的から、反応温度を10℃以下、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下に保つ必要がある。
【0017】
反応形態はいずれの形態を用いることができ、回分式で行ってもよいし、半回分式で行っても、連続流通形式で行ってもよい。
【0018】
フェノール化合物のフェノール性水酸基に対して3級アミンなどの塩基性化合物及びハロゲン化シアンは0.1〜8倍モル、好ましくは1倍〜5倍モル加え、反応させる。特にヒドロキシル基のオルト位に立体障害のある置換基を有する場合は、置換基が存在しない場合に比べ、3級アミンなどの塩基性化合物及びハロゲン化シアン必要量が増加する。用いるハロゲン化シアンとしては、塩化シアン、臭化シアンなどを用いることができる。用いる塩基性化合物としては、有機、無機塩基いずれでもかまわないが、有機溶媒を使用する場合、溶解度の高い、有機塩基が好ましい。中でも副反応の少ない3級アミンが好ましい。3級アミンとしては、アルキルアミン、アリールアミン、シクロアルキルアミンいずれでもよく、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジブチルアミン、ジノニルメチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどが挙げられる。
【0019】
反応に用いる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶剤、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶剤、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶剤、酢酸エチル、安息香酸エチルなどのエステル系溶剤、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤などいずれも用いることができ、反応基質に合わせて、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
反応後の後処理としては、ふつう、副生した3級アミンなどの塩基性化合物の塩化水素塩をろ過するか、または、水洗により除去する。一方、水と混和する溶媒を用いた時は、得られた反応液を水に注下した後に水と混和しない有機溶剤で抽出操作を実施する、もしくは析出した結晶を濾取することで目的物を得ることができる。また、洗浄工程の際に過剰のアミン類を除去するため、うすい塩酸などの酸性水溶液を用いる方法も採られる。充分に洗浄された反応液から水分を除去するために、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムなどの一般的な方法を用いて乾燥操作をすることができる。
【0021】
それらの操作の後、濃縮、沈殿化または晶析操作を施す。濃縮の際には、シアン酸エステル化合物が不安定な構造であることから、150℃以下に抑制しながら、減圧する方法が採られる。沈殿化または晶析の際には、溶解度の低い溶媒を用いることができ、例えば、エーテル系の溶剤やヘキサン等の炭化水素系溶剤、もしくはアルコール系溶剤を反応溶液に滴下する、または逆注下する方法を採ることができる。
【0022】
得られた粗生成物を洗浄するために、反応液の濃縮物や沈殿した結晶をエーテル系の溶剤やヘキサン等の炭化水素系溶剤、またはアルコール系の溶剤で洗浄する方法を採ることができる。また、反応溶液を濃縮して得られた結晶を再度溶解させた後、再結晶させることもできる。また、晶析する場合は、反応液を単純に濃縮もしくは冷却して行なっても良い。このようにして得られた生成物から、減圧乾燥などの方法で揮発分を除去することにより、高純度なシアン酸エステル化合物を得ることができる。
【0023】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物について説明する。該硬化性樹脂組成物は、上述した本発明のシアン酸エステル化合物を含有することを特徴とするものであり、本発明のシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、および/または重合可能な不飽和基を有する化合物等を添加することも可能である。
【0024】
本発明のシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、ビスフェノールAジシアネート、ビスフェノールFジシアネート、ビスフェノールMジシアネート、ビスフェノールPジシアネート、ビスフェノールEジシアネート、フェノールノボラック型シアネート、クレゾールノボラック型シアネート、ジシクロペンタジエンノボラック型シアネート、テトラメチルビスフェノールFジシアネート、ビフェノールジシアネート等が挙げられる。これらのシアン酸エステル化合物は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0025】
シアン酸エステル化合物を硬化させる際には、公知の硬化触媒を用いることができる。例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄等の金属塩、フェノール、アルコール、アミン等の活性水酸基を有する化合物等が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0027】
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3’ −ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、OXT−101(東亞合成株式会社製商品名)、OXT−121(東亞合成株式会社製商品名)等が挙げられる。これらのオキセタン樹脂は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0028】
本発明の硬化性樹脂組成物にエポキシ樹脂および/またはオキセタン樹脂を使用する場合にはエポキシ樹脂硬化剤および/またはオキセタン樹脂硬化剤を使用することができる。該エポキシ樹脂硬化剤としては、一般に公知のものが使用でき、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、ホスフィン系はホスホニウム系のリン化合物を挙げることができる。該オキセタン樹脂硬化剤としては公知のカチオン重合開始剤が使用できる。例えば、市販のものではサンエードSI60L、サンエードSI−80L、サンエードSI100L(三新化学工業株式会社製)、CI−2064(日本曹達株式会社製)、イルガキュア261(チバ・ジャパン株式会社製)、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−150(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。カチオン重合開始剤はエポキシ樹脂硬化剤としても使用できる。これらの硬化剤は1種または2種以上組み合わせて使用される。
【0029】
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価または多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類、ベンゾシクロブテン樹脂、(ビス)マレイミド樹脂等が挙げられる。これらの不飽和基を有する化合物は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0030】
重合可能な不飽和基を有する化合物を使用する際には、必要に応じて公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0031】
本発明の硬化物は、前述の方法で得られた本発明の硬化性樹脂組成物を、熱や光などによって硬化させることにより得られる。熱硬化の場合、硬化温度は、低すぎると硬化が進まず、高すぎると硬化物の劣化が起こることから、150℃から300℃の範囲内が好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。なお、硬化物のガラス転移温度、分解温度を下記の方法により評価した。
【0033】
(1)ガラス転移温度(Tg):JIS−K7121に準拠し、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製、DSC−50)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で350℃まで昇温、昇温後350℃で10分間保持した後、冷却し、昇温速度10℃/分で再昇温した時に示差走査熱量測定を実施し、その際の中間点ガラス転移温度をガラス転位温度とした。ガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れるといえる。
(2)分解温度;JIS-K7120に準拠し、ミクロ熱重量測定装置(株式会社島津製作所製、TGA−50)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分にて熱重量測定を実施し、測定開始より5%重量が減少した温度を分解温度とした。分解温度が高温であるほど、耐熱性に優れるといえる。
【0034】
実施例A1
ビス(N−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド(OD-4ACと略記)の合成
4,4’−オキシジフタル酸無水物(和光純薬工業株式会社製)50mmolおよび4−アミノ−m−クレゾール(和光純薬工業株式会社製)110mmolをN−メチル−2−ピロリドン100mLに溶解させた後、室温で1時間撹拌した。引き続いてキシレン100mLを追加後に2時間還流し、添加したキシレンと発生した水を除去した後に185℃で2時間撹拌した。その後室温まで温度を下げた後、蒸留水中に反応液を添加し、得られた結晶を濾取した。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド−メタノールで再結晶を実施し、目的とするOD−4ACを得た。NMRスペクトルにて構造を同定した。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
2.03 (s,6H)、6.69(d,2H)、6.71(s,2H)、6.76(d,2H)、7.64(m,4H)、8.36(d,2H)、9.71(s,2H)
【0035】
実施例B1
ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド(OD−4AC CNと略記)の合成
実施例A1にて調製したOD−4AC 15 mmolと トリエチルアミン 60 mmolをN,N−ジメチルホルムアミド100mLに溶解させた( 溶液1) 。67.5 mmol の塩化シアンの塩化メチレン溶液10.5 gとN,N−ジメチルホルムアミド30mLを混合させた液に−10 ℃ で溶液1を1.5 時間かけて滴下した。30 分撹拌した後、反応の完結を確認後、蒸留水中に反応液を添加し、得られた結晶を濾取した。得られた結晶をN,N−ジメチルホルムアミド−アセトンで再結晶を実施し、目的とするOD−4AC CNを得た。NMRスペクトルにて構造を同定した。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
2.24(s,6H)、7.45(m,2H)、7.54(d,2H)、7.60(D,2H)、7.80(S,2H)、7.96(D,2H)、8.20(D,2H)
【0036】
実施例C1
実施例B1で得たシアン酸エステルOD−4AC CN25重量部とビスフェノールAジシアネート(三菱ガス化学株式会社製 商標skylex)75重量部とをナス型フラスコ中にて加熱溶融させて真空ポンプで脱気した後、オクチル酸亜鉛0.05重量部を加え1分間攪拌混合した。これをガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで250℃、9時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、シアン酸エステル化合物の硬化物を得た。得られた硬化物についてガラス転移温度と分解温度を評価した。物性の評価結果を表1に示した。
【0037】
実施例A2
ビス(N−3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド(OD−5AC と略記)の合成
4−アミノ−m−クレゾールの代わりに5−アミノ−o−クレゾール(和光純薬工業株式会社製を用いた以外は実施例A1と同様に行った。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
2.13 (s,6H)、6.70(d,2H)、6.72(s,2H)、6.76(d,2H)、7.64(m,4H)、8.38(m,4H)、9.72(s,2H)
【0038】
実施例B2
ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド(OD−5AC CNと略記)の合成
OD−4ACの代わりに実施例A2で調製したOD−5ACを用いた以外は実施例B1と同様に行った。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
2.36(s,6H)、7.41(m,2H)、7.44(d,2H)、7.55−7.70(complex),4H)、7.69(d,2H)、8.04(d,2H)
【0039】
実施例C2
実施例B2で得たシアン酸エステルOD−5AC CN33重量部とビスフェノールAジシアネート(三菱ガス化学株式会社製 商標skylex)67重量部とを混合し、ナス型フラスコ中にて加熱溶融させて真空ポンプで脱気した。これをガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで250℃、9時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、シアン酸エステル化合物の硬化物を得た。得られた硬化物についてガラス転移温度と分解温度を評価した。物性の評価結果を表1に示した。
【0040】
実施例A3
ビス(N−4−ヒドロキシフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド(OD−pAP と略記)の合成
4−アミノ−m−クレゾールの代わりにp−アミノフェノール(和光純薬工業株式会社製を用いた以外は実施例A1と同様に行った。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
6.91(dd,4H)、7.23(dd,4H)、7.62(m,4H)、8.06(m,2H)、9.79(s,2H)
【0041】
実施例B3
ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド(OD−pAP CNと略記)の合成
OD−4ACの代わりに実施例A3で調製したOD−pAPを用いた以外は実施例B1と同様に行った。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
6.87(dd,4H)、7.17(dd,4H)、7.56(dd,4H)、7.97(d,2H)、9.36(d,2H)
【0042】
実施例C3
実施例B3で得たシアン酸エステルOD−pAP CN50重量部とビスフェノールAジシアネート(三菱ガス化学株式会社製 商標skylex)50重量部とを混合し、ナス型フラスコ中にて加熱溶融させて真空ポンプで脱気した。これをガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで250℃、9時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、シアン酸エステル化合物の硬化物を得た。得られた硬化物についてガラス転移温度と分解温度を評価した。物性の評価結果を表1に示した。
【0043】
実施例A4
ビス(N−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド(6F−4ACと略記)の合成
3,3’−,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物の代わりに、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(ダイキン工業株式会社製)を用い、得られた結晶の精製を酢酸エチル-ヘキサンで実施した以外は実施例A1と同様に実施した。NMRスペクトルにて構造を同定した。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
2.04 (s,6H)、6.70(d,2H)、6.71(s,2H)、7.13(d,2H)、7.79(m,4H)、7.94(d,2H)、8.15(d,2H)、9.71(s,2H)
【0044】
実施例B4
ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド(6F−4AC CNと略記)の合成
OD−4ACの代わりに実施例A4で調製した6F−4ACを用い、N,N−ジメチルホルムアミドの代わりにテトラヒドロフランを用い、得られた結晶の精製をメタノールによる分散洗浄で実施した以外は実施例B1と同様に行った。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
2.24(s,6H)、7.44(m,2H)、7.54(d,2H)、7.60(d,2H)、7.80(s,2H)、7.97(d,2H)、8.04(d,2H)
【0045】
実施例C4
実施例B4で得たシアン酸エステル6F−4AC CN100重量部をナス型フラスコ中にて加熱溶融させて真空ポンプで脱気した。これをガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで250℃、9時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、シアン酸エステル化合物の硬化物を得た。得られた硬化物についてガラス転移温度と分解温度を評価した。物性の評価結果を表1に示した。
【0046】
実施例A5
ビス(N−3−ヒドロキシフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド(6F−mAPと略記)の合成
【0047】
4−アミノ−m−クレゾールの代わりにm−アミノフェノール(和光純薬工業株式会社製)を用いた以外は実施例A4と同様に行った。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
6.85(m,6H)、7.30(t,2H)、7.75(t,2H)、7.95(d,2H)、8.16(d,2H)、9.78(s,2H)
【0048】
実施例B5
ビス(N−3−シアナトフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド(6F−mAP CNと略記)の合成
6F−4ACの代わりに実施例A5で調製したOD−mAPを用いた以外は実施例B4と同様に行った。
1H−NMR:(270MHz、ジメチルスルホキシド−d6、内部標準TMS)
δ(ppm)
7.54(d,4h)、7.57(d,2h)、7.6−7.8(complex,4h)、7.99(d,2H)、8.23(d,2H)
【0049】
実施例C5
実施例B4で得たシアン酸エステル6F−mAP CN30重量部とビスフェノールAジシアネート(三菱ガス化学株式会社製 商標skylex)70重量部とを混合し、ナス型フラスコ中にて加熱溶融させて真空ポンプで脱気した。これをガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで250℃、9時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、シアン酸エステル化合物の硬化物を得た。得られた硬化物についてガラス転移温度と分解温度を評価した。物性の評価結果を表1に示した。
【0050】
比較例1
ビスフェノールAジシアネート(三菱ガス化学株式会社製 商標skylex)100重量部をナス型フラスコ中にて加熱溶融させて真空ポンプで脱気した後、オクチル酸亜鉛0.05重量部を加え1分間攪拌混合した。これをガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで250℃、9時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、シアン酸エステル化合物の硬化物を得た。得られた硬化物についてガラス転移温度と分解温度を評価した。物性の評価結果を表1に示した。
【0051】
比較例2
ビスフェノールEジシアネート(Huntsman社製 商標;Arocy L10)100重量部をナス型フラスコ中にて加熱させて真空ポンプで脱気した後、オクチル酸亜鉛0.05重量部を加え1分間攪拌混合した。これをガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで250℃、9時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、シアン酸エステル化合物の硬化物を得た。得られた硬化物についてガラス転移温度と分解温度を評価した。物性の評価結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1より、実施例C1〜5の硬化物は、比較例1および2に比較してガラス転移温度、ならびに分解温度が高く、耐熱性に優れた結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるシアン酸エステル化合物。
【化1】

(式中、Arは炭素数6〜10の芳香環であり、同一の基でも異なる基でもよい。RxはArのすべての置換基であり、同一の基でも異なる基でもよい。Rxは水素、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基またはハロゲンを表す。Ryは炭素数8〜20の脂肪族テトラカルボン酸二無水物または炭素数10〜40の芳香族テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除去した残基である。)
【請求項2】
Ryが
【化2】


で示される構造からなる群から選ばれる4価の有機基である、請求項1に記載のシアン酸エステル化合物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシアン酸エステル化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−180147(P2010−180147A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23415(P2009−23415)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】